説明

添加剤を含む液晶組成物及びその使用方法ならびに液晶表示素子

【課題】本発明は駆動電圧や応答速度を良好にするための添加剤を含む液晶組成物及びその使用方法並びに当該液晶組成物を含む液晶表示素子を提供する。
【解決手段】液晶分子に対する包接能を有するホスト化合物が金属酸化物ナノ粒子に結合した複合体及び一般式(1−0)(式中、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し;A及びAは各々独立的に1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロへキシレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表し、該1,4−フェニレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基は非置換又は置換基として1個又は2個以上のF若しくはClを有しており;Z1及びZは各々独立的に単結合、−COO−、−CFO−、又は−(CH)−を表し;X及びXは各々独立的にH、F、Cl、CF又はOCFを表し;mは0、1又は2を表す)で表される化合物を含有する液晶組成物。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加剤を含む液晶組成物及びその使用方法ならびに液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子は液晶TV、コンピュータ用モニター及び携帯電話・情報端末・ゲーム等のモバイルといった画像表示装置に広く用いられている。しかし、液晶表示素子での動画像を表示する速度は、液晶分子の配向変化が印加波形から遅れるために遅くなる。
【0003】
この遅れを解消し、動画像表示速度を高めるために、本件発明者らは、液晶分子に金属ナノ粒子を混合させた液晶層を用いる技術を開発した(特許文献1参照。)。液晶層中に金属ナノ粒子が分散されていることにより、誘電率が上がる結果、液晶分子の配向変化の遅れが解消し、高速応答が可能となる。
【0004】
本件発明者らは、さらに、液晶添加剤として、液晶分子に対して包接能を有するホスト化合物と金属ナノ粒子とが結合した複合体を開発し、報告している(特許文献2、非特許文献1参照)。かかる液晶添加剤では、金属ナノ粒子によって誘電率が上昇するとともに、液晶分子に対する包接能を有するホスト化合物によって粘度が低減することによって、液晶分子の配向変化遅延が解消し、応答速度を高めることができる。
【0005】
特許文献2、非特許文献1に示される液晶分子とシクロデキストリンとの包接化合物を液晶層に添加するといった技術により、液晶分子の配向変化の遅れが改善されるものの、更に高い液晶表示特性が求められている。また、添加剤を含む液晶材料に求められる性能としては、液晶表示素子に使用される液晶材料に対して長期に安定した分散を示すことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−148705号公報
【特許文献2】特開2009−053243号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】白石幸英、岡村伸明、小林駿介、戸嶋直樹、「シクロデキストリンポリマー保護Rhナノ粒子を添加した液晶表示素子の電気光学特性」、「Polymer Preprint」,Japan,Vol.56,No.1,p.1919(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、駆動電圧や応答速度を良好にするための添加剤を含む液晶組成物及びその使用方法、ならびに当該液晶組成物を含む液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、従来の金属ナノ粒子を金属酸化物ナノ粒子に変え、この金属酸化物ナノ粒子と、液晶分子に対して包接能を有するホスト化合物とが結合した複合体を、液晶表示素子の液晶層に添加することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下の液晶組成物等を提供する。
【0010】
(1)液晶分子に対する包接能を有するホスト化合物が金属酸化物ナノ粒子に結合した複合体及び一般式(1−0)
【化1】

(式中、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し;A及びAは各々独立的に1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロへキシレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表し、該1,4−フェニレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基は非置換又は置換基として1個又は2個以上のF若しくはClを有しており;Z1及びZは各々独立的に単結合、−COO−、−CFO−、又は−(CH)−を表し;X及びXは各々独立的にH、F、Cl、CF又はOCFを表し;mは0、1又は2を表す。)で表される化合物を含有する液晶組成物。
(2)前記ホスト化合物が、シクロデキストリン、アミロペクチン、クラウンエーテル、シクロファン、カリックスアレン、ククルビツリル、イソグアニン、シクロトリホスファゼン及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(1)記載の液晶組成物。
(3)前記金属酸化物ナノ粒子が、二酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム及びジルコン酸バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する前記(2)又は(3)記載の液晶組成物。
(4)少なくとも一方が透明な2枚の基板間に液晶層が狭持された構造を有し、該液晶層に前記(1)から(3)の何れか一つに記載の液晶組成物を含むことを特徴とする液晶表示素子。
(5)前記基板間の距離(d)が2〜5μmの範囲である前記(4)記載の液晶表示素子。
(6)前記液晶組成物の複屈折(Δn)と前記基板間の距離(d)の積が0.3〜0.4μmの範囲である前記(5)記載の液晶表示素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶組成物は、駆動電圧や応答速度を良好な性能に変えることができる。このため、該液晶組成物を用いることにより、高速応答の液晶表示素子を実現することができる。また、本発明の液晶組成物は、従来の金属ナノ粒子とホスト化合物の複合体を含む液晶組成物よりも、複合体の液晶組成物に対する分散が、より改善されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のホスト化合物と金属酸化物ナノ粒子との複合体及び複合体が添加された液晶表示素子の製造方法の一態様を示す概念図である。
【図2】本発明の液晶表示素子の一態様を示す概念図である。液晶分子は、基板に設けられた配向膜と基板に設けられた電極に電気を印加して、配向を状態A又は状態Bに制御される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0014】
[液晶表示素子]
図2は、液晶層に、液晶分子(図2中、「NLC」)に対する包接能を有するホスト化合物と金属酸化物ナノ粒子との複合体(図2中、「PγCyD−BaTiO」)を含有する液晶組成物を含む液晶表示素子の一態様を示す概念図である。本液晶表示素子は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に液晶層が狭持された構造を有している。液晶分子は、基板に設けられた配向膜と基板に設けられた電極に電気を印加して、配向を状態A又は状態Bに制御する。偏光板、位相差フィルムなどを具備させることにより、この状態A、B及び両者の中間の状態を利用して表示をさせる。液晶表示素子としては、TN、STN、VA、IPS及びECBに適用できるが、TNが特に好ましい。一対の基板間に介在する液晶層中に本発明に係る液晶添加剤が分散しているが、本発明は、ナノ粒子を金属から金属酸化物にすること、及び前記一般式(1−0)で表される液晶化合物を含有させることにより、好ましい分散性を示す。
【0015】
本液晶表示素子の基板間の距離(d)は、2〜5μmの範囲が好ましく、3.5μm以下が更に好ましい。液晶組成物の複屈折(Δn)と基板間の距離(d)の積は、0.3〜0.4μmの範囲が特に好ましく、0.30〜0.35μmの範囲が更に好ましく、0.31〜0.33μmの範囲が特に好ましい。液晶表示素子の基板間の距離(d)及び液晶組成物の複屈折(Δn)と基板間の距離(d)の積をそれぞれ上記範囲内とすることにより、高速応答で色再現性が好ましい表示を得ることが出来る。
【0016】
[複合体]
本発明における複合体とは、図1に示されるように、液晶分子に対する包接能を有するホスト化合物(図1中、「PγCyD」)と少なくとも1種の金属酸化物ナノ粒子(図1中、「BaTiO」)から構成されている。金属酸化物ナノ粒子とホスト化合物とは配位結合等により相互作用している。本発明では、このホスト化合物との結合により、金属酸化物ナノ粒子が外部要因による変質から保護されることが好ましい。金属酸化物ナノ粒子の変質を抑制することにより、誘電率の低下が防止できるからである。本発明では、従来の金属ナノ粒子に比して安定性に優れる金属酸化物ナノ粒子を用いるため、誘電率の低下をより防止できると考えられる。
【0017】
複合体の形成には、金属酸化物ナノ粒子1モルに対し、ホスト化合物0.1モル以上あればよく、好ましくは0.1〜50モルである。なお、ホスト化合物がポリマーである場合には、そのモノマー単位当たりのモル数に換算して使用量を決定すればよい。
【0018】
液晶層における複合体の含有量は、用途に応じて適宜選択すればよく、通常、ゲスト液晶に対して、0.1質量%以下、好ましくは0.08質量%以下である。
【0019】
[金属酸化物ナノ粒子]
本発明における金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、より小さな粒径の微粒子であれば、特に限定されないが、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下、さらにより好ましくは10nm以下である。下限はないが、好ましくは1nm以上である。なお、金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定することができる。
【0020】
金属酸化物ナノ粒子の金属種は、特に限定されるものではなく、例えば、珪素、チタン、ジルコニア、バリウム等が挙げられる。これらの中でも、珪素、チタン及びジルコニアが調製容易という点において好ましい。金属酸化物ナノ粒子の金属種を上記元素から選択することによって、液晶に対する分散性や広い周波数変調範囲での誘電率向上を実現することができる。なお、これらの金属種は、本発明の目的を損なわない範囲において、単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。2種類以上を組み合わせることにより、用途に応じた周波数変調範囲を自由に選択することができ、汎用性を向上させることができる。
【0021】
[ホスト化合物]
本発明においてホスト化合物とは、包接能のある化合物をいう。本発明では、ホスト化合物は、ゲスト液晶の液晶分子にあわせて適宜、選択すればよいが、好ましくはシクロデキストリン、アミロペクチン、クラウンエーテル、シクロファン、カリックスアレン、ククルビツリル、イソグアニン、シクロトリホスファゼン及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはシクロデキストリンである。シクロデキストリンは、水や他の溶媒に対する溶解性に優れるので、ホスト液晶への分散性が良好となる点において好ましい。なお、シクロデキストリンとしては、例えば、α−、β−、γ−シクロデキストリン等の天然のシクロデキストリン;グルコシル及びマルトシル等の分岐シクロデキストリン等が挙げられる。また、シクロデキストリンは、モノマーであっても、ポリマーであってもよい。
【0022】
ホスト化合物とゲストである液晶分子との包接化合物の形成には、液晶分子の官能基とホスト化合物の空孔部との大きさ、形状が適合することが重要である。ゲストである液晶分子がホスト化合物によって包接されることで、液晶組成物の分子間の自由体積が増大し、液晶の粘度が低下するからである。液晶の粘度低下は、ホスト化合物に保護された金属酸化物ナノ粒子の良好な分散や、液晶分子の配向変化遅延の解消を可能とする。上記ホスト化合物は、それぞれが広い範囲の液晶分子種に対する適合性を有するので、2種以上を組み合わせることで、さらに適合性を高めることができる。よって、ホスト化合物を種々の液晶分子に応じて、上記から適宜選択することで、汎用性を向上できる。
【0023】
[ゲスト液晶]
本発明の液晶組成物は、前記複合体に加えて、ゲスト液晶を含む。ゲスト液晶としては、既存の液晶に限られるものではなく、室温で動作できる液晶であればよい。例えば、ネマティック液晶、スメクテック液晶、カイラルネマティック液晶、カイラルスメクテック液晶等である。
【0024】
本発明の液晶組成物は、ゲスト液晶として、一般式(1−0)で表される液晶化合物を含有する。
【0025】
【化2】

【0026】
式(1−0)中、Rは炭素原子数2〜4のアルキル基が好ましく、又は炭素原子数2〜4のアルケニル基が好ましい。A及びAは、各々独立的に1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロへキシレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表す。該1,4−フェニレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基は、非置換、又は置換基として1個又は2個以上のF若しくはClを有することができる。また、Z1及びZは、各々独立的に単結合、−CFO−、又は−(CH)−である。X及びXは、各々独立的にF、CF又はOCFである。mは0、1又は2を表す。
【0027】
本発明においては、下記一般式(1−1)又は(1−2)で表される化合物の少なくともいずれかを含有する液晶組成物であることが更に好ましい。一般式(1−1)及び(1−2)中、R、A、A、Z1、Z、X、及びXは、上記一般式(1−0)と同じである。
【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
本発明の液晶組成物中、一般式(1−1)で表される化合物は、0〜30wt%含有することが好ましい。一般式(1−2)で表される化合物は、5〜70wt%含有することが好ましい。一般式(1−1)と(1−2)で表される化合物の合計は、5〜70wt%含有することが好ましい。一般式(1−0)で表される化合物の合計は、15〜70wt%含有することが好ましい。XがF又はOCFである化合物は、金属酸化物ナノ粒子の好ましい分散を示す。
【0031】
[複合体の形成方法]
複合体は、例えば、溶媒中でホスト化合物と金属酸化物と混合した後、当該溶媒に超音波やマイクロ波を照射する等により、微粒子化した後、溶媒を除去することによって形成することができる。溶媒へはホスト化合物と金属酸化物のいずれを先に添加してもよいが、保護剤であるホスト化合物を分散させた溶媒に金属酸化物を添加することが好ましい。
【0032】
複合体を形成する際に用いる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のエチレングリコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0033】
複合体では、金属酸化物ナノ粒子は金属イオンを構成しており、金属イオンとするためには、金属のハロゲン化物等の金属塩を出発原料として用いるとよい。
【0034】
より具体的には、例えば、以下の方法により複合体を形成することができる。保護剤であるホスト化合物を水に分散してから金属酸化物と混合し、これにテトラエチレングリコールをさらに添加した後、窒素雰囲気中で超音波とマイクロ波とを同時照射する。その後、この溶液中の水とテトラエチレングリコールとを減圧留去し、真空乾燥を行い、複合体を得ることができる。なお、超音波とマイクロ波を照射した後の溶液中のテトラエチレングリコールをエタノールに置換した後、エタノールを減圧留去し、真空乾燥を行ってもよい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0036】
(合成例1)PγCyD−BaTiOナノ粒子複合体
攪拌子を入れた300mlの一口ナス型フラスコに、γ−シクロデキストリンポリマー(PγCyD)(純正化学(株)製)0.0171g(0.014mmol)を入れ、これに水15mlを加え、磁気攪拌機を用いて1時間攪拌した。その後、チタンテトラエトキシド(和光純薬工業(株)製)0.0301g(0.14 mmol)、ジエトキシバリウムを加え(和光純薬工業(株)製)0.0300g(0.14mmol)、さらに30分間攪拌した。次いで、テトラエチレングリコール185mlを加え、紫外・可視分光光度計にて紫外・可視吸収スペクトルを測定し、チタンイオンのピーク消失を確認した後、反応器に移し替えた。そして、反応器の空気部分を窒素置換し、還元雰囲気とした。
【0037】
磁気攪拌機を用いて十分に攪拌した後、マイクロ波・超音波照射装置(製品名:マイクロ波反応装置、四国計測工業(株)製)にて、240℃にて30分間、マイクロ波(出力:1.5kW)と超音波(周波数:20kHz、照射強度:150W)とを同時照射した。照射により溶液は無色から黒褐色に変化し、γ−シクロデキストリンポリマーがチタン酸バリウムナノ粒子に結合した複合体(PγCyD−BaTiOナノ粒子複合体)分散液が得られた。ウルトラフィルター(Ultrafiltration Membranes NMML5000、Millipore社製)を用い、テトラエチレングリコールをエタノールに置換し、余分なイオンなどを限外濾過した。この溶液中のエタノールをロータリーエバポレーターにて減圧留去し、真空乾燥機にて一晩真空乾燥を行い、PγCyD−BaTiOナノ粒子複合体を得た。
【0038】
得られたPγCyD−BaTiOナノ粒子複合体分散液を透過型電子顕微鏡用銅グリッド上に滴下後乾燥し、透過型電子顕微鏡により分析した結果、PγCyD−BaTiOナノ粒子複合体の平均粒径は5.0nmであった。
【0039】
(合成例2)PβCyD−TiOナノ粒子複合体
攪拌子を入れた300mlの一口ナス型フラスコに、β−シクロデキストリンポリマー(PβCyD)(純正化学(株)製)0.3746g(0.33mmol)を入れ、これに水15mlを加え、80℃のオイルバス中にて磁気攪拌機を用いて30分間攪拌した。その後、チタニウムテトライソプロポキシド(和光純薬工業(株)製)0.0375g(0.132mmol)を加え、さらに80℃のオイルバス中にて30分間攪拌した。次いで、テトラエチレングリコール185mlを加え、紫外・可視分光光度計にて紫外・可視吸収スペクトルを測定し、チタンイオンのピークを確認した後、反応器に移し替えた。そして、反応器の空気部分を窒素置換し、還元雰囲気とした。
【0040】
磁気攪拌機を用いて十分に攪拌した後、マイクロ波・超音波照射装置(製品名:マイクロ波反応装置、四国計測工業(株)製)にて、240℃にて30分間、マイクロ波(出力:1.5kW)と超音波(周波数:20kHz、照射強度:150W)とを同時照射した。照射により溶液は無色から黒褐色に変化し、β−シクロデキストリンポリマーが二酸化チタンナノ粒子に結合した複合体(PβCyD−TiOナノ粒子複合体)分散液が得られた。ウルトラフィルター(Ultrafiltration Membranes NMML5000、Millipore社製)を用い、テトラエチレングリコールをエタノールに置換し、余分なイオン等を限外濾過した。この溶液中のエタノールをロータリーエバポレーターにて減圧留去し、真空乾燥機にて一晩真空乾燥を行い、PβCyD−TiOナノ粒子複合体を得た。
【0041】
得られたPβCyD−TiOナノ粒子複合体分散液を透過型電子顕微鏡用銅グリッド上に滴下後乾燥し、透過型電子顕微鏡により分析した結果、PβCyD−TiOナノ粒子複合体の平均粒径は16.0nmであった。
【0042】
(合成例3)PβCyD−SiOナノ粒子複合体
攪拌子を入れた300mlの一口ナス型フラスコに、β−シクロデキストリンポリマー(PβCyD)(純正化学(株)製)0.4540g(0.4mmol)を入れ、これに水15mlを加え、磁気攪拌機を用いて1時間攪拌した。その後、四塩化珪素(和光純薬工業(株)製)0.6796g(4.0mmol)を加え、さらに30分間攪拌した。次いで、テトラエチレングリコール185mlを加え、紫外・可視分光光度計にて紫外・可視吸収スペクトルを測定し、珪素イオンのピーク消失を確認した後、反応器に移し替えた。そして、反応器の空気部分を窒素置換し、還元雰囲気とした。
【0043】
磁気攪拌機を用いて十分に攪拌した後、マイクロ波・超音波照射装置(製品名:マイクロ波反応装置、四国計測工業(株)製)にて、240℃にて30分間、マイクロ波(出力:1.5kW)と超音波(周波数:20kHz、照射強度:150W)とを同時照射した。照射により溶液は無色から黒褐色に変化し、β−シクロデキストリンポリマーが二酸化珪素ナノ粒子に結合した複合体(PβCyD−SiOナノ粒子複合体)分散液が得られた。ウルトラフィルター(Ultrafiltration Membranes NMML5000、Millipore社製)を用い、テトラエチレングリコールをエタノールに置換し、余分なイオンなどを限外濾過した。この溶液中のエタノールをロータリーエバポレーターにて減圧留去し、真空乾燥機にて一晩真空乾燥を行い、PβCyD−SiOナノ粒子複合体を得た。
【0044】
得られたPβCyD−SiOナノ粒子複合体分散液を透過型電子顕微鏡用銅グリッド上に滴下後乾燥し、透過型電子顕微鏡により分析した結果、PβCyD−SiOナノ粒子複合体の平均粒径は6.2nmであった。
【0045】
(合成例4)βCyD−SiOナノ粒子複合体
攪拌子を入れた300mlの一口ナス型フラスコに、β−シクロデキストリン(βCyD)(東京化成工業(株)製)0.4540g(0.4mmol)を入れ、これに水15mlを加え、磁気攪拌機を用いて1時間攪拌した。その後、四塩化珪素(和光純薬工業(株)製)0.6786g(4.0mmol)を加え、さらに30分間攪拌した。次いで、テトラエチレングリコール185mlを加え、紫外・可視分光光度計にて紫外・可視吸収スペクトルを測定し、珪素イオンのピーク消失を確認した後、反応器に移し替えた。そして、反応器の空気部分を窒素置換し、還元雰囲気とした。
【0046】
磁気攪拌機を用いて十分に攪拌した後、マイクロ波・超音波照射装置(製品名:マイクロ波反応装置、四国計測工業(株)製)にて、240℃にて30分間、マイクロ波(出力:1.5kW)と超音波(周波数:20kHz、照射強度:150W)とを同時照射した。照射により溶液は無色から黒褐色に変化し、β−シクロデキストリンが二酸化珪素ナノ粒子に結合した複合体(βCyD−SiOナノ粒子複合体)分散液が得られた。ウルトラフィルター(Ultrafiltration Membranes NMML5000,Millipore社製)を用い、テトラエチレングリコールをエタノールに置換し、余分なイオンなどを限外濾過した。この溶液中のエタノールロータリーエバポレーターにて減圧留去し、真空乾燥機にて一晩真空乾燥を行い、βCyD−SiOナノ粒子複合体を得た。
【0047】
得られたβCyD−SiOナノ粒子複合体分散液を透過型電子顕微鏡用銅グリッド上に滴下後乾燥し、透過型電子顕微鏡により分析した結果、βCyD−SiOナノ粒子複合体の平均粒径は8.4nmであった。
【0048】
(合成例5)PγCyD−ZrOナノ粒子複合体
攪拌子を入れた300mlの一口ナス型フラスコに、γ−シクロデキストリンポリマー(PγCyD)(純正化学(株)製)0.0171g(0.014mmol)を入れ、これに水15mlを加え、磁気攪拌機を用いて30分間攪拌した。その後、ジルコニウムテトラエトキシド(和光純薬工業(株)製)0.038g(0.14mmol)を加え、さらに30分間攪拌した。次いで、テトラエチレングリコール185mlを加え、紫外・可視分光光度計にて紫外・可視吸収スペクトルを測定し、ジルコニウムイオンのピーク消失を確認した後、反応器に移し替えた。そして、反応器の空気部分を窒素置換し、還元雰囲気とした。
【0049】
磁気攪拌機を用いて十分に攪拌した後、マイクロ波・超音波照射装置(製品名:マイクロ波反応装置、四国計測工業(株)製)にて、240℃にて30分間、マイクロ波(出力:1.5kW)と超音波(周波数:20kHz、照射強度:150W)とを同時照射した。照射により溶液は無色から黒褐色に変化し、γ−シクロデキストリンポリマーが酸化ジルコニウム粒子に結合した複合体(PγCyD−ZrOナノ粒子複合体)分散液が得られた。ウルトラフィルター(Ultrafiltration Membranes NMML5000,Millipore社製)を用い、テトラエチレングリコールをエタノールに置換し、余分なイオンなどを限外濾過した。この溶液中のエタノールをロータリーエバポレーターにて減圧留去し、真空乾燥機にて一晩真空乾燥を行い、PγCyD−ZrOナノ粒子複合体を得た。
【0050】
得られたPγCyD−ZrOナノ粒子複合体分散液を透過型電子顕微鏡用銅グリッド上に滴下後乾燥し、透過型電子顕微鏡により分析した結果、PγCyD−ZrOナノ粒子複合体の平均粒径は 7.2nmであった。
【0051】
(実施例1)
合成例5記載のPγCyD−ZrOナノ粒子複合体0.0013gを、ゲスト液晶であるNTN−01(DIC(株)製)1gに溶解させた。次いで、シリンジフィルター(Millex,Millipore社製,孔径0.45μm)を用いて濾過した後、液晶セルに充填し、各種の液晶表示素子を作製した。さらに、基板間の距離(d)が5μm、3μm、2.5μmのTNセルを作製した。大塚電子(株)製のLCD−5200を用いて液晶表示特性を測定した。
【0052】
ゲスト液晶NTN−01の物性は、転移温度が76℃、△εが3.5、△nが0.125である。また一般式(1−1)で表される化合物を7wt%、一般式(1−2)で表される化合物を16wt%含有する。
【0053】
(実施例2)
合成例1〜4記載の金属酸化物ナノ粒子複合体を、実施例1記載の方法でゲスト液晶であるNTN−01(DIC(株)製)1gに溶解させ、各種TNセルなどの液晶表示素子を作製し液晶表示特性を測定した。
【0054】
(実施例3)
合成例1〜5記載の金属酸化物ナノ粒子複合体を、実施例1記載の方法でゲスト液晶A1gに溶解させ、各種TNセルなどの液晶表示素子を作製し液晶表示特性を測定した。ゲスト液晶Aの物性は、転移温度が80℃、△εが4.6、△nが0.122である。また一般式(1−1)で表される化合物を0wt%、一般式(1−2)で表される化合物を10wt%、一般式(1−0)においてm=2で表される化合物を10wt%、含有する。
【0055】
(実施例4)
実施例1で作製したd=2.5μmのTNセルの応答速度の結果(表1中、「NTN−01+ナノ粒子」)を表1に示す。比較のために金属酸化物ナノ粒子複合体を含まない結果(表1中、「NTN−01」)も示す。応答時間は、駆動電圧が5Vの場合と6Vの場合の各々で測定した。本発明の液晶表示素子は、測定温度が0℃でも25℃でも応答時間を改善した。実施例1〜3で作製した他のTNセルも同様の評価であった。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例5)
実施例1で作製したd=2.5μm、3μm、5μmのTNセルの駆動電圧を測定した。本発明のTNセルの駆動電圧は、金属酸化物ナノ粒子複合体を含まないTNセルに比べ、低減された。d=2.5μm、3μmのTNセルは、d=5μmのTNセルに比べ、応答速度と駆動電圧を良好にした。また波長分散が小さい光の透過性を示し、フルカラー表示に有用な特性を示した。実施例1〜3で作製した他のTNセルも同様の評価であった。
【0058】
(実施例6)
実施例1で作製した金属酸化物ナノ粒子複合体を添加した液晶層を、金属ナノ粒子複合体を添加した液晶層と目視で比較したところ、金属酸化物ナノ粒子複合体の方が液晶層に対する分散性が良好であった。実施例1〜3で作製した他のTNセルも同様の評価であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶分子に対する包接能を有するホスト化合物が金属酸化物ナノ粒子に結合した複合体及び一般式(1−0)
【化1】

(式中、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し;A及びAは各々独立的に1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロへキシレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表し、該1,4−フェニレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基は非置換又は置換基として1個又は2個以上のF若しくはClを有しており;Z1及びZは各々独立的に単結合、−COO−、−CFO−、又は−(CH)−を表し;X及びXは各々独立的にH、F、Cl、CF又はOCFを表し;mは0、1又は2を表す。)
で表される化合物を含有する液晶組成物。
【請求項2】
前記ホスト化合物が、シクロデキストリン、アミロペクチン、クラウンエーテル、シクロファン、カリックスアレン、ククルビツリル、イソグアニン、シクロトリホスファゼン及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物ナノ粒子が、二酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム及びジルコン酸バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1又は2記載の液晶組成物。
【請求項4】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間に液晶層が狭持された構造を有し、該液晶層に請求項1から3の何れか一項に記載の液晶組成物を含むことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項5】
前記基板間の距離(d)が2〜5μmの範囲である請求項4記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記液晶組成物の複屈折(Δn)と前記基板間の距離(d)の積が0.3〜0.4μmの範囲である請求項5記載の液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−57038(P2012−57038A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201092(P2010−201092)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、文部科学省地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】