説明

清掃体及び清掃用具

【課題】 被清掃面の清掃を行う清掃体を備える清掃用具において、製造コスト低減を図るのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る清掃用具10は、不織布及び繊維束が積層状に重ねられた層構造の清掃体100を備えるとともに、この清掃体100においてホルダ200の保持部210を収容する筒状部101の収容空間102に配設される繊維束110に硬化処理がなされた構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用具に係り、詳しくは室内や車内の被清掃面を清掃するための清掃体を備える清掃用具の構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被清掃面の拭き清掃を行うシート状の清掃体を備える清掃用具が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、清掃布と、この清掃布に設けられた収容空間に挿設されたこの清掃布を着脱自在に保持する柄を備える構成の清掃用具が開示されている。この清掃用具は、柄を介して保持された清掃布を用いることによって被清掃面の拭き清掃を行う可能性を有するが、清掃体や当該清掃体を備えるこの種の清掃用具の設計に際しては、とりわけ製造に関するコスト低減を図る技術に対する要請がある。
【特許文献1】特開平9−154791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被清掃面の清掃を行う清掃体を備える清掃用具において、製造コスト低減を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。これら各請求項に記載の発明は、一戸建て、マンション、ビル、工場、車両等の屋内や屋外における被清掃面(床面、壁面、天井面、外壁面、家具面、衣類、カーテン、寝具、家電品など)や、人体の各構成部位における被清掃面等を清掃するための清掃用具の構成に適用され得る。これら各種の被清掃面は、平面として構成されてもよいし、或いは曲面、凹凸面、段差面として構成されてもよい。
【0005】
(本発明の第1発明)
前記課題を解決する本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの清掃体である。請求項1に記載のこの清掃体は、不織布及び繊維束が積層状に重ねられた層構造の清掃体であって、筒状部、収容空間、刷毛部、硬化処理部を少なくとも備える。本発明における不織布は、機械的、化学的、熱的などの処理によって繊維を固着したり絡み合わせたりして作られるシート状の構成物であり、典型的には熱可塑性繊維を一部に含み融着(溶着)が可能な不織布として構成される。
【0006】
なお、本発明における「繊維」とは、糸、織物などの構成単位であり、太さに比して十分な長さを持つ、細くてたわみやすい形態のものとして規定され、典型的には長い連続状の繊維が長繊維(フィラメント)とされ、短い繊維が短繊維(ステープル)とされる。本発明における「繊維束」とは、上述の繊維による単一の繊維構造体や、上述の繊維が長さ方向および/または径方向にそろった繊維構造体(撚糸、紡績糸、複数の長繊維が部分的に接続された糸材など)、ないし当該繊維構造体の集合体とされる。典型的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、レーヨンなどを材質とし、実用上はトウを開繊することによって得られる長繊維(フィラメント)の集合体が繊維束として多用される。
【0007】
本発明の筒状部は、清掃体の繊維束側が内側となるように筒状に折り返されて形成された長尺状の部位として構成される。この筒状部の断面形状に関しては、円形、楕円形、三角形、方形、多角形等種々の形状のものを広く含む。また、この筒状部は、その断面形状が閉じた形状であってもよいし、或いは完全には閉じていない形状であってもよい。
【0008】
本発明の収容空間は、筒状部の内方に形成されて、清掃体保持用の保持部を着脱自在に収容する領域(空間部分)として構成される。この清掃体保持用の保持部が収容空間に収容された装着状態において、この保持部によって清掃体が保持される。また、必要に応じて清掃体を保持部から取り外すことによって、清掃体の交換などが可能となる。本発明における清掃体は、一回使用を目安とした使い捨てタイプのものや、被清掃面から除去したごみや埃を刷毛部において保持しつつ複数回の使用を目安として交換を行う使い捨てタイプのものであってもよいし、或いは洗濯などを行ったうえで繰り返し使用することが可能なタイプのものであってもよい。
【0009】
本発明の刷毛部は、筒状部以外において刷毛状の清掃部位を形成する構成とされる。この刷毛部では、内方に繊維束が配設され、外方(表面)に不織布が配設されることとなる。このような構成の刷毛部は、被清掃面のごみや埃を掃き出すのに効果的である。この刷毛部における不織布は、短冊片として構成されるのが好ましく、更には短冊部分をジクザグ状として、ごみを引っ掛けて捕捉し易い形状のものを用いるのが好ましい。
【0010】
ところで、本発明のように収容空間に繊維束が配設される構成を用いる場合には、この繊維束がばらける現象が発生することが想定される。このような現象が発生すると、保持部を収容空間に収容する際の動作が妨げられ、清掃体の使用性が低下する。
そこで、本発明では、清掃体に硬化処理部を設ける構成を採用している。この硬化処理部は、収容空間に配設される繊維束にて硬化処理がなされた部位として構成される。この硬化処理部を用いて収容空間を構成することによって、ばらける現象が本来生じ易い繊維束の保形性を向上させることができ、これにより保持部を収容空間に収容する際の収容動作の円滑化を図ることが可能となる。ここでいう「硬化処理」に関しては、繊維束がばらける現象を適切に防止することができればよく、繊維束の硬化の度合いを問わない。すなわち、硬化処理がなされた後の繊維束は、硬質化された状態であってよいし、或いはある程度の柔軟性を有していてもよい。この硬化処理は、熱処理(加熱、溶着)や、接着剤の塗布処理などによって適宜行うことが可能とされる。この硬化処理を、収容空間の内壁面の全体または一部分において連続状或いは断続状に施すことができる。収容空間の内壁面に部分的に硬化処理を施す際の施工箇所に関しては、筒状部の端部、収容空間の内壁面の上下部分、収容空間の内壁面の或いは左右部分などを必要に応じて適宜選択することができる。
【0011】
従って、請求項1に記載の清掃体のこのような構成によれば、当該清掃体が硬化処理部を備えることによって、収容空間の内壁面を他の硬質素材を用いることなく繊維束自体によって形成することができる。これにより、清掃体の層構造を構成する素材の数を抑えることができ、製造コストを低減させた合理的な構成の清掃体を提供することが可能となる。
【0012】
(本発明の第2発明)
前記課題を解決する本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの清掃体である。請求項2に記載のこの清掃体では、請求項1に記載の刷毛部は、保持部の延在方向に沿って延在する長尺状の筒状部から当該筒状部の延在方向と交差する方向に延在する構成とされる。ここでいう「刷毛部の延在方向」は、典型的には、刷毛部を形成する繊維束の繊維がのびる方向として規定される。この刷毛部の延在方向に関しては、筒状部の延在方向と交差すればよく、筒状部の延在方向と直交する方向のみならず、筒状部の延在方向に対し所定の角度をもって傾斜する方向が広く包含される。
【0013】
請求項2に記載の清掃体のこのような構成によれば、筒状部が水平状に配設された場合に、この筒状部から垂直下向きに刷毛部を配設することが可能となるため、刷毛部の毛足を清掃のために効果的に使用することができ、これによって被清掃面のごみや埃を掃き出す動作を容易に行うことが可能とされる。
【0014】
(本発明の第3発明)
前記課題を解決する本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりの清掃体である。請求項3に記載のこの清掃体は、請求項1または請求項2に記載の構成において、刷毛部の被清掃面側に繊維束が面し、この刷毛部のうち被清掃面と反対側の面上に筒状部が配設される構成とされる。
【0015】
請求項3に記載の清掃体のこのような構成によれば、刷毛部を挟んで被清掃面と反対側に筒状部が配設された清掃体が提供される。
【0016】
(本発明の第4発明)
前記課題を解決する本発明の第4発明は、請求項4に記載されたとおりの清掃体である。請求項4に記載のこの清掃体では、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の長尺状の筒状部は、当該筒状部を長尺方向の所定の箇所にて折り曲げて形成されたU字状とされ、当該筒状部の端部にて保持部を収容する二つの収容空間を備える構成とされる。この二つの収容空間を、二つの保持部を収容する空間として用いることによって、保持体が収容空間から抜け難い構造を実現することが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の清掃体のこのような構成によれば、長尺状の筒状部がU字状とされ、当該筒状部の端部にて保持部を収容する二つの収容空間を備える清掃体が提供される。
【0018】
(本発明の第5発明)
前記課題を解決する本発明の第5発明は、請求項5に記載されたとおりの清掃用具である。請求項5に記載のこの清掃用具は、清掃体、収容空間、保持部、把持部を少なくとも備える。更に、本発明における清掃体は、更に筒状部、刷毛部及び硬化処理部を少なくとも備える。
本発明の清掃体は、不織布及び繊維束が積層状に重ねられた層構造の清掃体として構成される。本発明の収容空間は、清掃体に設けられる収容空間として構成される。本発明の保持部は、清掃体の収容空間に着脱自在に収容されてこの清掃体を保持する部位として構成される。本発明の把持部は、保持部に連接して配設されて作業者によって把持される部位として構成される。
特に、本発明の清掃体は、繊維束側が内側となるように筒状に折り返されて前記の収容空間を形成する長尺状の筒状部と、筒状部以外において刷毛状の清掃部位を形成する刷毛部と、収容空間に配設される前記繊維束にて硬化処理がなされた硬化処理部を備える構成とされる。この清掃体は、請求項1に記載の清掃体と同様の構成要素を備える。
【0019】
従って、請求項5に記載の清掃用具のこのような構成によれば、硬化処理部を備える清掃体を用いることによって、収容空間の内壁面を他の硬質素材を用いることなく繊維束自体によって形成することができる。これにより、清掃体の層構造を構成する素材の数を抑えることができ、製造コストを低減させた合理的な構成の清掃用具を提供することが可能となる。
【0020】
(本発明の第6発明)
前記課題を解決する本発明の第6発明は、請求項6に記載されたとおりの清掃用具である。請求項6に記載のこの清掃用具では、請求項5に記載の保持部、把持部及び筒状部の延在方向が概ね合致する構成とされる。また、請求項5に記載の清掃体の刷毛部は、長尺状の筒状部から当該筒状部の延在方向と交差する方向に延在する構成とされる。すなわち、刷毛部は、保持部、把持部及び筒状部のいずれに対しても交差状に延在する。この清掃体は、請求項2に記載の清掃体と同様の構成要素を備える。
【0021】
従って、請求項6に記載の清掃用具のこのような構成によれば、保持部、把持部及び筒状部が水平状に配設された場合に、この筒状部から垂直下向きに刷毛部を配設することが可能となるため、刷毛部の毛足を清掃のために効果的に使用することができ、これによって被清掃面のごみや埃を掃き出す動作を容易に行うことが可能とされる。
【0022】
(本発明の第7発明)
前記課題を解決する本発明の第7発明は、請求項7に記載されたとおりの清掃用具である。請求項7に記載のこの清掃用具は、請求項5または請求項6に記載の構成において、清掃体の刷毛部の被清掃面側に繊維束が面し、この刷毛部のうち被清掃面と反対側の面上に筒状部が配設される構成とされる。この清掃体は、請求項3に記載の清掃体と同様の構成要素を備える。
【0023】
従って、請求項7に記載の清掃用具のこのような構成によれば、刷毛部を挟んで被清掃面と反対側に筒状部が配設された清掃体を備える清掃用具が提供される。
【0024】
(本発明の第8発明)
前記課題を解決する本発明の第8発明は、請求項8に記載されたとおりの清掃用具である。請求項8に記載のこの清掃用具では、請求項5〜請求項7のいずれかに記載の清掃体の長尺状の筒状部は、当該筒状部を長尺方向の所定の箇所にて折り曲げて形成されたU字状とされ、当該筒状部の端部にて保持部を収容する二つの収容空間を備える構成とされる。この清掃体は、請求項4に記載の清掃体と同様の構成要素を備える。
【0025】
従って、請求項8に記載の清掃用具のこのような構成によれば、長尺状の筒状部がU字状とされ、当該筒状部の端部にて保持部を収容する二つの収容空間を備える清掃体を有する清掃用具が提供される。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、被清掃面の清掃を行う清掃体を備える清掃用具において、特に清掃体の収容空間に配設される繊維束にて硬化処理がなされた硬化処理部を設けることによって、清掃体の層構造を構成する素材の数を抑えることができ、これによって製造コストを低減させた合理的な構成の清掃体及び清掃用具を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、図1及び図2を用いて、本発明における「清掃用具」の一実施の形態である清掃用具10の構成につき説明する。この清掃用具10を用いて清掃される被清掃面としては、一戸建て、マンション、ビル、工場、車両等の屋内や屋外における被清掃面(床面、壁面、天井面、外壁面、家具面、衣類、カーテン、寝具、家電品等)や、人体の各構成部位における被清掃面等が挙げられる。これら各種の被清掃面は、平面として構成されてもよいし、或いは曲面、凹凸面、段差面として構成されてもよい。
【0028】
本実施の形態の清掃用具10の概要を示す斜視図が図1に示され、図1中の清掃用具10のA−A線断面における断面構造が図2に示される。図1に示すように、清掃用具10は、清掃体100及びホルダ200に大別される。
【0029】
図1及び図2に示すように、本実施の形態の清掃体100は、いずれもシート状の繊維束110及び不織布120が、積層状に重ねられて接合線140,141,142,143,144,145にて接合されることによって形成されている。この清掃体100は、筒状部101及び刷毛部103を備える。この清掃体100が本発明における「清掃体」に相当し、筒状部101及び刷毛部103が、本発明における「筒状部」及び「刷毛部」に相当する。筒状部101は、中空筒状の収容空間102(「内部空間」ともいう)を備える構成とされる。この収容空間102が、本発明における「収容空間」に相当する。刷毛部103は、筒状部101以外の部分において刷毛状の清掃部位を形成する。これら筒状部101及び刷毛部103のいずれにおいても、内方に繊維束110が配設され、外方(表面)に不織布120が配設されるようになっている。また、本実施の形態の清掃体100では、刷毛部103の被清掃面側に繊維110束が面し、この刷毛部103のうち被清掃面と反対側の面上に筒状部101が配設される。
【0030】
なお、本実施の形態の刷毛部103は、ホルダ200が水平状に延在する状態、すなわち後述する保持部210及び把持部220が概ね水平に延在する状態において、筒状部101から垂直下向きに延在する構成とされる。ホルダ200が水平状に延在するこの状態は、作業者がホルダ200の把持部(後述する把持部220)を把持して清掃作業を行う状態と合致する。従って、この刷毛部103は、清掃作業時において下向きに延在し易く、毛足を十分に使えるため、被清掃面のごみや埃を掃き出す動作を行うのに有効である。
【0031】
(繊維束110の構成)
繊維束110は、繊維による単一の繊維構造体や、繊維が長さ方向および/または径方向にそろった繊維構造体(撚糸、紡績糸、複数の長繊維が部分的に接続された糸材など)、ないし当該繊維構造体の集合体とされ、熱可塑性繊維を一部に含み融着(「溶着」ともいう)が可能な繊維束として構成される。この繊維束110を形成する繊維とは、糸、織物などの構成単位であり、太さに比して十分な長さを持つ、細くてたわみやすい形態のものとして規定され、典型的には長い連続状の繊維が長繊維(フィラメント)とされ、短い繊維が短繊維(ステープル)とされる。この繊維束110が、本発明における「繊維束」に相当する。この繊維束110は、典型的にはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、レーヨンなどを材質とし、実用上はトウを開繊することによって得られる長繊維(フィラメント)の集合体がこの繊維束110として多用される。特には、芯部分がポリプロピレン(PP)或いはポリエチレンテレフタレート(PET)であり、この芯部分の外面を覆う鞘部分がポリエチレン(PE)の複合繊維を用いて繊維束110が構成されるのが好ましい。また、繊維束110を形成する長繊維の繊度は、1〜50dtexのものが好ましく、更には2〜10dtexのものが好ましい。また、各繊維束は概ね同様の繊度の繊維から構成されてもよいし、或いは各繊維束が異なる繊度の繊維を含む構成であってもよい。なお、清掃時の掃き出し機能を向上させるためには、剛性の高い繊維、すなわち繊度が高い繊維を含む繊維束を用いるのが好ましい。
【0032】
また、繊維束110として、フィルムをテープ状にスリットし、縦方向へ延伸させたフラットヤーンや、スプリットヤーンと称呼される熱可塑性フィルム樹脂を樹脂の配向方向と直交する方向にかきわけて、繊維状となったフィルムが網目状に接合されているものを使用してもよい。或いは、繊維束110として、エアースルー不織布などの嵩高で繊維密度の低い不織布を使用してもよい。
【0033】
また、繊維束110を形成する繊維は、捲縮繊維を用いて構成されるのが好ましい。ここでいう捲縮繊維は、所定の巻き縮み処理が付与された繊維として構成される。このような捲縮繊維を用いると、繊維束が嵩高となり、更に捲縮部分にごみを取り込み易い構造とされる。本構造は、特にトウ繊維から形成された捲縮繊維を用いることによって実現され得る。
【0034】
本実施の形態の清掃体100は、上記構成の繊維束110を備えることによって、使用時に繊維間や繊維の捲縮部分に汚れが絡まることとなり高い清掃機能を発揮する。
【0035】
(不織布120の構成)
不織布120は、機械的、化学的、熱的などの処理によって繊維を固着したり絡み合わせたりして作られるシート状の構成物であって、熱可塑性繊維を一部に含み融着(溶着)が可能な不織布とされ、複数の短冊片を有する形状の不織布として構成される。この不織布120が、本発明における「不織布」に相当する。この不織布120としては、スパンボンドやエアースルー法で形成されたものや、サーマルボンド、スパンレース、ポイントボンド、メルトブロー、ステッチボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチなどで形成された不織布が用いられる。なお、清掃時の掃き出し機能を向上させるためには、剛性の高い不織布を用いるのが好ましい。この不織布120の短冊部分は、ジクザグ状、曲線状など種々の形状とすることができるが、清掃機能を高めるためには、短冊部分をジクザグ状として、ごみを引っ掛けて捕捉し易い形状のものを用いるのが好ましい。
また、不織布に代えて或いは加えて、ウレタン、スポンジ、職布、ネット、ワリフなどの素材を短冊状に加工したものを用いることもできる。
【0036】
本実施の形態の清掃体100は、上記構成の不織布120を備えることによって、使用時に短冊片間や短冊面に汚れが付着することとなり高い清掃機能を発揮する。また、この不織布120は、繊維束110よりも剛性が高く、これによって繊維束110同士が固まったり絡まったりするのを防止する機能を発揮する。なお、この不織布120として、捲縮繊維によって構成された不織布を用いれば、筒状部101の表面に配設された不織布120にも、清掃機能を付与することが可能となる。
【0037】
一方、ホルダ200は、上記構成の清掃体100を保持するホルダとしての機能を有し、いずれも長尺状の保持部210及び把持部220を少なくとも備える構成とされる。保持部210は、把持部220の先端に配設されるとともに、清掃体100の筒状部101に形成された収容空間102に着脱自在に収容されてこの清掃体100を保持する部位とされる。図1に示す実施の形態では、この保持部210が一本の棒状、或いは一片の板状の部位として構成される。把持部220は、保持部210の後方に連接して延在して、清掃作業時や清掃体交換作業時などにおいて、作業者が手で掴んで把持する部位とされる。本実施の形態では、これら保持部210及び把持部220の延在方向は概ね合致するように構成されている。なお、これら保持部210及び把持部220は、互いに別体として成型されたものを組み付けるように構成されてもよいし、或いは一体成型されたものとして構成されてもよい。必要に応じて清掃体100を保持部210から取り外すことによって、清掃体100の交換などが可能となる。この清掃体100は、一回使用を目安とした使い捨てタイプのものや、被清掃面から除去したごみや埃を刷毛部において保持しつつ複数回の使用を目安として交換を行う使い捨てタイプのものであってもよいし、或いは洗濯などを行ったうえで繰り返し使用することが可能なタイプのものであってもよい。
【0038】
なお、本実施の形態では、収容空間102を構成する繊維束110の内面に硬化処理が施された硬化処理部104が設けられている。この硬化処理部104が、本発明における「硬化処理部」に相当する。この硬化処理部104を用いて収容空間102を構成することによって、ばらける現象が本来生じ易い繊維束110の保形性を向上させることができ、これにより保持部210を収容空間102に収容する際の収容動作の円滑化を図ることが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態では、保持部210が収容空間102に収容された使用状態で抜け難くするように、筒状部101のうち収容空間102の両端部に伸縮素材130,130が取り付けられている。各伸縮素材130は、熱可塑性繊維を少なくとも一部に含む不織布、或いは熱可塑性樹脂フィルムであって、且つ伸縮機能を有する素材からなるもの、エラストマー素材を配合した不織布、エラストマー、ウレタン、ゴムなどで形成されたものを用いて構成される。
【0040】
ここで、上記構成の清掃体100の製造方法に関し、図3及び図4を参照しながら説明する。本実施の形態の清掃体100の製造過程が図3及び図4に示される。この製造方法において、以下の第1の接合工程、硬化処理工程、折り返し工程、第2の接合工程を少なくとも順次遂行することによって、図1に示す清掃体100を製造し得る。
【0041】
(第1の接合工程)
図3に示すように、本実施の形態では、前記構成の繊維束110と、短冊片状の不織布120を積層状に重ねて互いに接合する。具体的には、これら繊維束110及び不織布120を、まず接合線140,141にて融着接合する。また、これら繊維束110及び不織布120を、接合線140と接合線141とで囲まれた不織布120上に、接合線142にてパターン状に溶着接合する。この接合線142を、接合線140と接合線141と平行状に形成された接合線とすることもできる。更に、これら繊維束110及び不織布120の両端面同士を、接合線143,144にて融着接合する。これにより、繊維束110及び不織布120からなる二層構造の繊維シートが形成される。更に、不織布120の両端部に伸縮素材130,130を接合する。
【0042】
(硬化処理工程)
次に、第1の接合工程において得られた繊維シートのうち、収容空間102を構成する繊維束110の内面全体に硬化処理(熱処理)を施すことによって硬化処理部104を設ける。これにより、繊維束110及び不織布120からなる二層構造の繊維シートであって、硬化処理部104を備える繊維シートが形成される。この硬化処理に関しては、熱処理にかえて接着剤の塗布処理などを用いることもできる。また、本発明では、この硬化処理を、収容空間102の内壁面の全体または一部分において連続状或いは断続状に施すことができる。収容空間102の内壁面に部分的に硬化処理を施す際の施工箇所に関しては、筒状部101の端部、収容空間102の内壁面の上下部分、収容空間102の内壁面の或いは左右部分などを必要に応じて適宜選択することができる。
【0043】
(折り返し工程)
次に、図4に示すように、硬化処理工程において得られた繊維シートを、繊維束110側が内側となるように接合線140,141にて筒状に折り返す(或いは折り曲げる)。これにより、繊維束110及び不織布120からなる二層構造の折り返し繊維シートが形成される。
【0044】
(第2の接合工程)
その後、折り返し工程において得られた折り返し繊維シートの折り返し部分を接合線145にて溶着接合する。これにより、閉じた形状の収容空間102を有する中空筒状の筒状部101と、筒状部101以外の刷毛部103を備える、図1に示すような形態の清掃体100が得られることとなる。なお、上記接合線140〜145の形状に関しては、連続状の直線或いは曲線、断続状の直線或いは曲線とすることができる。
上述のように、本実施の形態の清掃体100は、繊維束110及び不織布120からなる二層構造であるため、部品点数を抑えて製造コスト低減を図るのに有効である。
【0045】
ホルダ200構成に関しては、図1に示すように保持部210が一本の棒状、或いは一片の板状とされた構成以外に、二本以上の保持部を有するホルダを用いることもできる。ここで、図5には、互いに平行状な二本の保持部310,310が把持部320の先端に配設された構成のホルダ300を備える清掃用具20の斜視図が示される。
【0046】
図5に示すようなホルダ300を用いる場合には、上記清掃体100における収容空間102が2箇所必要となる。そこで、上記第2の接合工程にて得られた清掃体100の筒状部101を用い、更にこの筒状部101の中央部分を図5中の矢印方向へと押圧していく。そして、この筒状部101の1つの筒状部分を2つの筒状部分に分割した状態で中央部分を接合する。このような方法を用いることによって、図5中の実線で示すような状態、すなわち2つの収容空間102a,102bを備える状態の筒状部101が形成された清掃体100が得られることとなる。この清掃体100の収容空間102a,102b(本発明における「収容空間」或いは「二つの収容空間」に相当する)の各々に、把持部320(本発明における「把持部」に相当する)の先端に連接する各保持部310(本発明における「保持部」に相当する)を収容することによって、図5に示す清掃用具20(本発明における「清掃用具」に相当する)が形成されることとなる。このような構成のホルダ300は、保持部の数が増えることによって使用時において保持状態の清掃体100が外れにくいという有利な効果を奏する。
【0047】
なお、筒状部101に2つの収容空間102a,102bを設ける方法に関しては、図5に示すように筒状部101の1つの筒状部分を2つの筒状部分に分割する方法にかえて、図6及び図7に示すような別の方法を採用することもできる。ここで、図6及び図7には、いずれも図5に示す例とは別の方法を用いて形成された清掃体100であって、筒状部101に2つの収容空間102a,102bを備える清掃体100の斜視図である。
【0048】
図6に示す方法では、図1に示す清掃体100を中央領域105において180度折り曲げて筒状部101をU字状とする。これによって筒状部101の両端部を収容空間102a,102bとして用いることが可能となる。また、図7に示す方法では、図1に示す清掃体100を2つ準備して、これら2つの清掃体100を並置する。これにより、一方の清掃体100の収容空間を収容空間102aとし、他方の清掃体100の収容空間を収容空間102bとすることが可能となる。図6や図7に示す方法を用いることによって、図5に示す方法を用いるのと同様に、使用時において保持状態の清掃体100が外れにくいという作用効果を奏する。また、図7に示す方法を用いる場合には、更に刷毛部103の量(ボリューム)が増えることとなり、清掃機能を高めることが可能となる。
【0049】
なお、上記実施の形態の清掃体100は、繊維束110及び不織布120からなる二層構造としたが、これら繊維束110及び不織布120に更なる繊維層が付加された多層構造とすることもできる。例えば、繊維束110の両面が不織布120によって挟み込まれた三層構造を採用することもできる。このような構成によれば、繊維間に空気を含み易い繊維束110を不織布120によって挟み込むことで、繊維束110内部の空気を極力追い出しながら三層の溶着を行うことができるため、溶着性能向上を図ることが可能となる。
【0050】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0051】
上記実施の形態では、ホルダ200が水平状に延在する状態において、清掃体100の刷毛部103が筒状部101から垂直下向きに延在する構成について記載したが、本発明においては、この刷毛部103の延在方向は種々変更可能である。例えば、刷毛部103が筒状部101の延在方向に対し所定の角度をもって傾斜する構成や、刷毛部103が筒状部101の両側面から横向きに延在する構成などを採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施の形態の清掃用具10の概要を示す斜視図である。
【図2】図1中の清掃用具10のA−A線断面における断面構造を示す図である。
【図3】本実施の形態の清掃体100の製造過程を示す図である。
【図4】本実施の形態の清掃体100の製造過程を示す図である。
【図5】互いに平行状な二本の保持部310,310が把持部320の先端に配設された構成のホルダ300を備える清掃用具20の斜視図である。
【図6】図5に示す例とは別の方法を用いて形成された清掃体100であって、筒状部101に2つの収容空間102a,102bを備える清掃体100の斜視図である。
【図7】図5に示す例とは別の方法を用いて形成された清掃体100であって、筒状部101に2つの収容空間102a,102bを備える清掃体100の斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
10,20…清掃用具
100…清掃体
101…筒状部
102,102a,102b…収容空間
103…刷毛部
104…硬化処理部
105…中央領域
110…繊維束
120…不織布
130…伸縮素材
140,141,142,143,144,145…接合線
200,300…ホルダ
210,310…保持部
220,320…把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布及び繊維束が積層状に重ねられた層構造の清掃体であって、
当該清掃体の繊維束側が内側となるように筒状に折り返されて形成された長尺状の筒状部と、
前記筒状部の内方に形成されて、清掃体保持用の保持部を着脱自在に収容する収容空間と、
前記筒状部以外において刷毛状の清掃部位を形成する刷毛部と、
前記収容空間に配設される前記繊維束にて硬化処理がなされた硬化処理部と、
を備える構成であることを特徴とする清掃体。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃体であって、
前記刷毛部は、前記保持部の延在方向に沿って延在する前記長尺状の筒状部から当該筒状部の延在方向と交差する方向に延在する構成であることを特徴とする清掃体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の清掃体であって、
前記刷毛部の被清掃面側に前記繊維束が面し、この刷毛部のうち被清掃面と反対側の面上に前記筒状部が配設される構成であることを特徴とする清掃体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の清掃体であって、
前記長尺状の筒状部は、当該筒状部を長尺方向の所定の箇所にて折り曲げて形成されたU字状とされ、当該筒状部の端部にて前記保持部を収容する二つの収容空間を備える構成であることを特徴とする清掃体。
【請求項5】
不織布及び繊維束が積層状に重ねられた層構造の清掃体と、
前記清掃体に設けられる収容空間と、
前記清掃体の収容空間に着脱自在に収容されてこの清掃体を保持する保持部と、
前記保持部に連接して配設されて作業者によって把持される把持部と、
を有する清掃用具であって、
前記清掃体は、繊維束側が内側となるように筒状に折り返されて前記収容空間を形成する長尺状の筒状部と、前記筒状部以外において刷毛状の清掃部位を形成する刷毛部と、前記収容空間に配設される前記繊維束にて硬化処理がなされた硬化処理部を備える構成であることを特徴とする清掃用具。
【請求項6】
請求項5に記載の清掃用具であって、
前記保持部、把持部及び筒状部の延在方向が概ね合致する構成であり、
前記清掃体の前記刷毛部は、前記長尺状の筒状部から当該筒状部の延在方向と交差する方向に延在する構成であることを特徴とする清掃用具。
【請求項7】
請求項5または6に記載の清掃用具であって、
前記清掃体の前記刷毛部の被清掃面側に前記繊維束が面し、この刷毛部のうち被清掃面と反対側の面上に前記筒状部が配設される構成であることを特徴とする清掃用具。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の清掃用具であって、
前記清掃体の前記長尺状の筒状部は、当該筒状部を長尺方向の所定の箇所にて折り曲げて形成されたU字状とされ、当該筒状部の端部にて前記保持部を収容する二つの収容空間を備える構成であることを特徴とする清掃用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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