説明

清涼飲料の製造方法及びその利用

本発明は、容易に栽培できるカッパフィカス属アルバレジ種(Kappaphycus alvarezzi
)海藻の液汁から作られる、栄養があり、味が良く、購入しやすい飲料について開示している。前記飲料は、外見及び味においてココナッツ水に類似しており、カリウムが豊富に含まれている。また、鉛やクロムのような有害成分が低い濃度であるとともに、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、亜鉛、リン、鉄等その他多くの有用なミネラルに加えて、1日に必要なヨウ素の適切な割合が含まれている。液汁の精製工程によって、十分な貯蔵寿命の付与に加えて、海藻飲料は飲みやすいものとし、広く受け入れられるものとすることができる。本製造方法は、カラギーナンと植物栄養剤の製造が一体となったものであり、それにより、海藻を最適に使用し、無駄を最小限にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッパフィカス属アルバレジ種(Kappaphycus alvarezzi)から生じる魚臭
のない、清涼且つ味の良い飲料に関する。
【0002】
さらに詳細には、本発明は、清涼で、味の良い、且つ栄養価の高い飲料の原料となるカッパフィカス属アルバレジ種から得られる液汁の利用に関する。
【0003】
また、本発明は、カッパフィカス属アルバレジ種(Kappaphycus alvarezzi)を用いた
清涼且つ味の良い飲料の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
高まる健康志向と現代のライフスタイルは、栄養価が高く、且つおいしく飲むことの出来る飲料や食品の需要に拍車をかけている。
【0005】
非特許文献、リチャーズ―ラジャドゥライ氏による論文(Richards-Rajadurai(1990), RAS/90/002.FAO/UNDP Seafarming Project, Philippines. 149-180)には、国際連合食糧農業機関(FAO)によれば、30カ国を越す世界各国で、年間約3.1−3.8百万ト
ンの湿重量の海藻が収穫され、この合計量の半分が人間の消費用に、残りは寒天、カラギーナンやアルギン酸化合物等、工業的に重要なフィココロイド(Phycocolloids)の生産
用に供される、とある。
【0006】
非特許文献、「海藻とその利用」(Chapman, V. J. & Chapman, D. J. (1980), Seaweeds and their uses Chapman & Hall, London)には、幅広い種類の海藻とそれらの利用方法の詳細が提供されている。幾つかの海藻抽出物はまた、植物成長を改善するための葉面散布剤として有用であると報告されている。
【0007】
非特許文献、「海藻養殖と海洋牧場」(Critchley, A. T. (1993)(Seaweed Cultivation and Marine Ranching), M.Ohno and A. T. Critchley(eds), Kanagawa International Fisheries Training Center, Japan International Co-operation Agency, Yokosuka, Japan pp.1-6)には、ラミナリア(Laminaria)、ウンダリア(Undaria)、ポルフィラ(Porphyra)、ヒトエグサ属(Monostroma)等が食用海藻の主な種類として列挙されている。極東の国々(日本、中国、フィリピン、インドネシア、韓国)では、海藻は、栄養食品/サプリメントとして豊富に利用され、諸国々の食生活を営む上で重要な部分を占めている。具体的に、アマノリ属(海苔としてよく知られている)、ラミナリア(昆布)及びウンダリア(ワカメ)は、特に人気があり、大量に消費される。
野菜のように、海藻は、超酸化物不均化酵素(superoxide dismutase)とアスコルビン酸を含む、全種類のビタミン及び抗酸化物質を有している。海藻は、対応する野菜と比較しても、豊富なビタミンB群−特にビタミンB12−を含んでいる。海藻中のビタミンA含有量は、ほうれん草のビタミンA含有量の半分もある。アマノリ属の乾燥シートは、生オレンジと比較して、ビタミンCを高い割合で含んでいる(Nisizawa et al., Hydrobiologia 151/152, 1987, 5-29)。
【0008】
非特許文献、ライアン ドラム(Ryan Drum)氏による、「食用及び医薬用海洋野菜」
(Sea Vegetables for Food and Medicine)(www.ryandrum.com.seazpan1.html)という標題の記事を挙げる。記事には、海藻は、賢いダイエットに欠かせない要素として最もよく取り入れられる、と記載されている。海洋野菜は古くからずっと、沿岸地域の人々により、習慣的に消費されてきている。特有の、収獲、生産、貯蔵、そして食用形式は、地元
の需要に合わせ、発展した。日表における海洋野菜の乾燥はたやすく、完全に乾燥した際の固有の長期安定性は、安全な長期保存を可能とし、個人及び商用輸送設備の双方を可能にし、そして、完全に乾燥貯蔵し、光を当てずに保存すれば、ほぼ限りなく貯蔵が可能である。該参考文献にはさらに、全ての海藻は食用である一方、その多くが、口に合わないものである、と記載されている。また、該参考文献には、ツノマタ属トチャカ(Irish moss)のような藻を使用した飲料についても記載されている。
【0009】
非特許文献、片岡氏らによる「栄養ドリンク剤の味とにおいの評価」(Evaluation of the taste and smell of bottled nutritive drinks)(Int. Jour. of Pharmaceutics, 305, 2005, 13-21)が挙げられ、該記事には、飲料の全体的な飲みやすさは、酸味強度と果物味に正の相関が認められ、苦味強度と薬用植物の味には、逆の相関関係があると開示されている。
さらに、酸味と苦味強度は味センサによって予測可能である一方、果物味は、匂いセンサで予測可能であり、味センサと匂いセンサは、飲料の飲みやすさを評価する際に組み合わせることにより有用であることが記載されている。
【0010】
特許文献、特開昭60−102179号公報には、高橋直喜氏により、海藻から海藻飲料を製造する方法が開示されている。海藻特有の不快な匂いを有さず、高い栄養価を含有する蛋白質、ペプチド、アミノ酸、多糖類、無機塩等々を多く含む飲料について、権利主張がなされており、その飲料は、もずく等の海藻類を、100−110℃で5−12時間、大量(海藻1重量部に対して10−60重量部)の酸、又はアルカリ溶液で加水分解し、加水分解物溶液に甘味料と酸味料を加え、製造される。
主な難点は、大量の酸とアルカリが工程内で必要になることである。さらに、そのような飲料は、海藻からわずか1個の製品を生産するため、大抵高価となる。飲料製造のために、直接的に海藻液汁を使用することに関しては、記載されていない。
【0011】
特許文献、米国特許第6,573,250号公報では、梅田芳久氏らにより、海藻抽出物から製造されるフコイダンを含む食料または飲料の製造方法について開示されており、そこでは海藻の匂いは活性炭素により効果的に除去されている。
【0012】
特許文献、米国特許第4,328,118号公報では、自然湿式での藻類の処理工程について開示されている。飲料への適用に関しては、記載されていない。
【0013】
特許文献、米国特許第4,581,233号公報では、エルヴ(Herve)氏らにより、
海藻の外部原形質、中でも藻類の処理について、冷凍され、その後低温研摩(例えば液体窒素のもとで2つのグラインダーを直列に用いて)を受け、それから回転操作(例えば、シリンダー機械で)され、最終的には均質化されることによって得られる、と開示されている。このように、構成粒子が約6−20μの間である「母パルプ」が得られる。該母パルプは、「藻類のクリーム(algae cream)」とも呼ばれる。該母パルプは、デカンター
を高速度で通し、2つの生成物即ち1つは、」藻類基体(algae base)」と呼ばれる固形物又はケーキと、もう一方は、“藻類の外部原形質(protoexoplasma of algae)“と呼
ばれる傾瀉された液体又はジュースを与えることができる。アスコヒルム属ノードスム(Ascophyllum Nodosum)の外部原形質(protoexoplasma)は、人体のガンマ−グロブリン
レベルを増加させ得ることが権利主張されている。
【0014】
特許文献、特開昭64−2562号公報では、アロエ、海藻、ニンニク等を粉砕したものを、アルコール、玄米酢等の混合液体物質中に攪拌し、透明な飲料を得るためにろ過することで得られる、健康に有益且つ強壮剤に適した飲料及び固形食品の製造方法が、安定夫氏により開示されている。飲料の製造のために、直接的に海藻液汁を使用することについては記載されていない。さらに、製品があまりにも多くの成分を必要とするという事実
に加え、アルコールの使用は多くの消費者にとって受け入れ難いであろう。
【0015】
特許文献、米国公開第2005/217596号公報の萩野浩志氏と佐藤志保氏により、アマノリ属海藻及びワカメ類海藻の海藻粉末を使用した、海藻を含む新規健康飲食品の製造方法が開示されている。該文献には、海藻の魚臭を効果的に軽減または抑制させるとともに、海藻の豊富な栄養成分と健康機能性成分を含む顆粒に製造することが権利主張されている。飲料の製造のために、直接的に海藻液汁を使用することに関しては、記載されていない。
【0016】
参考として、モーリシャス共和国で販売されている寒天ファルーダ(agar alouda)と
いう名の海藻ゼリー飲料を挙げることができる。
【0017】
非特許文献、2002年10月2日に発行された「Seacoastline」内、“Jamaican cafe spices things up“というタイトルの記事には、「アイリッシュ・モス」という名称の海藻飲料が記載されている。その飲料はエッグノッグのような味であると報告されている。
【0018】
非特許文献、「ケルピービール(www.bostonphoenix.com/boston/food_dronk/noshing/documents/02556527.htm)というタイトルの記事には、「ケルピー」という名称の500mLの海藻飲料が4.95ドル(USD)で販売されている、と記載されている。
【0019】
参考として、レプシャージュ社(www.repechage.com)より販売されている、疲労回復
に役立つと推定される海藻飲料が挙げられる。1本10mLの15本のチューブが37.00ドル(USD)で販売されている、と記載されている。
【0020】
しかしながら、海藻が栄養製品の生産目的のみに利用される場合には、生産にかかる全ての海藻のコストを負担しなければならないため、海藻から栄養製品を生産できるものの、それらの製品は非常に高価になる傾向にあることがよく知られている。海藻から製造される栄養製品は、より購入しやすく、理想的には、あらゆる海藻からそのような製品を大量に得られるような生産を可能にすることが、非常に望ましいであろう。
【0021】
熱帯地方の水中で成長する、紅藻(カッパフィカス属アルバレジ種(Kappaphycus alvarezzi))は、κ−カラギーナンの原材料(a source of κ-carrageenan)としてフィリ
ピンやインドネシア等の国々で広範囲にわたり栽培されている。文献、「海藻と人間生活」((Algae and Human Affairs, C, A. Lembi and J.R.Waaland, Eds., Cambridge University Press, 5 Cambridge.,1990;pp.218)の中で、ルイス氏とギスト氏(J.G Lewis, N.F.Stanley and G.G Guist)は、精錬、及び半精製されたκ−カラギーナンの種々の応用について論評している。サーケルセン氏(C.H.Thirkelsen(in: Industrial Gums-Polysaccharides and their Deriivatives, R.L.Whistler and J.N BeMiller, Eds., 3rd Edition, Academic Press Inc., New York, 1993, pp 145-180))もまた、カラギーナンの種
々の応用について記載している。κ−カラギーナンは、ペットフード、フルーツジャム、歯磨き粉、アイスクリームの等、数多くの用途に、増粘剤として利用されている。海藻から製造される飲料に関しては、記載されていない。
【0022】
非特許文献、ファヤズ氏(M.Fayaz)らによる“Chemical composition, iron bioavailability and antioxidant activity of Kappaphycus alvarezzi(DOTY)“(Journal of agricultural and Food Chemistry, 53[3](2005)792-797)というタイトルの記事によ
ると、カッパフィカス属アルバレジ種海藻の栄養的側面について議論されている。しかしながら、その研究は乾燥海藻に通じた研究であって、植物全体から、または液汁から飲料を製造することに関しては、記載されていない。
【0023】
カリウム塩−多くの果物、野菜そして乾燥エンドウや豆類のような豆果に見られるミネラル−が、高血圧から身を守ることは、よく知られている。低ナトリウム塩におけるカリウムの存在によりってナトリウム起因の高血圧症が抑制される。非特許文献として、マグローヒル社より、H.J.ハインツ社向けに出版された、バートン氏(Benjamin T. Burton)による、“The Heinz Handbook of Nutrition“second edition, page 132-133)を
挙げることができ、そこには、1日に必要なカリウムの量は、そのナトリウムの量とほぼ同じであることが言及されている。また、筋肉の弱体化、緊張感の増加や短気になりやすくなること、精神が不安定になること、そして心臓の不規則な動きは、カリウム不足の証しである。多くの人々、特に貧しい国々の人々は、充分な量の新鮮な果物や野菜が手に入らないため、1日に必要なカリウムは代替手段によって満たされなければならないという結果になる。
【0024】
非特許文献、アディカリー氏(Adhikary)らによる「Deacidification of Fruit Juices by Electrodialysis-Part II(Ind. J. Technol.25, 1987, 24-27)」というタイトル
の記事には、ぶどう、パイナップル、オレンジジュースには、3173ppm、1500ppm、3150ppmの塩化カリウムが含まれ、特筆すべきはその一方で塩化ナトリウム濃度はこれら全てにおいて、非常に低い数値(<100ppm)であると報告されている。塩化カリウムは、つまり、フルーツジュースが含む、重要な栄養素であるが、多くの国々の貧しい人々には、そのようなジュースを購入する余裕がない。
【0025】
特許文献としては、米国特許付与前公報第2005/0220975号及び国際出願番号PCT/IB04/03678号が挙げられ、そこではゴーシュ(Ghosh)氏らによっ
て、塩化ナトリウムが豊富な塩性植物や、塩化カリウムが豊富なカッパフィカス属アルバレジ種海藻を使用して、植物由来の低ナトリウム塩を製造することが開示されている。乾燥海藻は大部分が塩化カリウムである塩を精製するために打ちつけ処理がなされ、低ナトリウム塩を生産する目的で精製されうる。海藻から健康飲料を製造することについては記載されていない。
【0026】
非特許文献としては、微量栄養素としてのヨウ素の重要性について論じられている、ヨウ素を対象とした標準的参考書を挙げることができる。ヨウ素の1日に必要な量は、1日あたり50−150μgで変動し、ヨウ素はヨウ化塩、ヨウ素を豊富に有する動植物製品、そしてヨウ化水の形態のような様々な形で提供されうる(http://www.extention.umn.edu/,ミネソタ大学エクステンション活動ホームページ)、とある。海藻は、ヨウ素において特に豊富な源であり(Mairh氏らによる,植物科学,28(12),3307-3310,1989)、ヨウ素不足による不調を妨げるのに役立つが、海藻が必要以上のヨウ素の量はもたらさないことを確認することに留意しなければならない。
【0027】
非特許文献、クーク氏(T.Cooke)による「重金属、水と健康(Heavy Metals, Water and Health)」(www.envirotechpubs.com/articles/iet200511 040.pdf)というタイトルの記事では、ヨーロッパの飲料における特定の有毒な重金属の許容レベル(アンチモン,5ppb、砒素,10ppb、カドミウム、5ppb、クロム、50ppb、鉛、10ppb、水銀、1ppb)が提供されている。
【0028】
特許文献としては、米国特許第6,893,479号公報が挙げられ、そこでは、新鮮なカッパフィカス属アルバレジ種海藻からκ−カラギーナンおよび液体の植物栄養剤を製造するための合成方法が、エスワラン氏(Eswaran)らによって開示されている。この方
法では新鮮に収穫された海藻−水の重量が90%以上を占めている−は、摩擦によって液状化し、海藻に元々存在するκ−カラギーナン全てを含む植物液汁と残渣を生産するために合成物懸濁液をろ過する。その液汁は、植物の新鮮な状態での重量の80%以上が生産
物として得られ、無機微量栄養素と同様に高い濃度の塩化カリウムを含み、また、植物の生長に有利な効果を示す有用な有機栄養素を含む。しかしながら、この目的のために液汁から健康飲料を製造すること、またはその目的のために液汁が利用できる可能性については記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の主な目的は、カッパフィカス属アルバレジ種から生じる魚臭のない清涼且つ味の良い飲料を提供することである。
【0030】
本発明の他の目的は、清涼且つ味の良い飲料の製造方法を提供することである。
【0031】
本発明のさらに他の目的は、清涼であり、味が良く、且つ栄養のある飲料の原料としてのカッパフィカス属アルバレジ種から生じる液汁の利用を提供することである。
【0032】
本発明のさらに他の目的は、ヨウ素を含む必須微量栄養素の一日に必要な実質的な量を提供できる清涼であり、味が良い飲料を提供することである。
【0033】
本発明のさらに他の目的は、純粋液汁を他の飲料と混合させ、または塩、ライム、ハーブ、スパイス、炭酸等々のような材料を合わせて異なる味同士を調整するために、異なる風味を備えた清涼飲料、且つ味の良い飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、カッパフィカス属アルバレジ種海藻の液汁から得られる栄養のある、および清涼な飲料を扱うものであり、その液汁は、従来技術で報告されているように、新鮮な海藻から機械作業により抽出され、食品基準化学保存剤または保存の他の形態で保存される。その液汁は、カリウム、および、ヨウ素を含む様々な微量栄養素に富んでおり、遠心分離のような物理的手段または凝縮剤の添加のような化学的手段によって精製される。その後、その液汁はさらに木炭で処理され、またはカーボンフィルターを通過させられ、その後、魚臭さやその他の不快な匂い/味のない無色液体を得るために高分子あるいはセラミック膜ろ過にかけられる。精製された液汁は、消費直前まで封入され貯蔵され、使用する時に、適量の甘味水で薄められ、その味はココナッツ水の味とある程度似ている。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、カッパフィカス属アルバレジ種から生じる魚臭のない清涼且つ味の良い飲料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
従って、本発明は、米国特許第6,893,479号に開示されているカッパフィカス属アルバレジ種から得られる液汁の利用を提供し、前記飲料は以下の成分を含む。
a)2500−5000mg/Lのカリウム、1000−2000μg/Lのヨウ素、そして、150−200mg/Lのナトリウム、750−1250mg/Lのマグネシウム、250−350mg/Lのカルシウム、25−35mg/Lのリン、50−100mg/Lの鉄、3−6mg/Lの亜鉛、1.5−2.5mg/Lのマンガンを含む群から選択されるその他必須ミネラル
b)0.75−1.0g/Lの蛋白質、15−25g/Lの炭水化物、0.2−0.3ppmのチアミン、0.1−0.2のppmリボフラビン、そして総エネルギー70−100kcal/Lの微量の脂肪
c)<6μg/Lの鉛と<40μg/Lのクロム
【0037】
本発明の実施の形態においては、前記液汁は清涼且つ味の良い飲料の製造に有用である。
【0038】
本発明の他の実施の形態においては、前記液汁は、カリウム、ヨウ素、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、鉄、亜鉛、マンガンから選択される様々な必須微量栄養素の1日に必要な量を満たすことができる。
【0039】
さらに、本発明はまた、
a)米国特許第6,893,479号に開示されているカッパフィカス属アルバレジ種から得られる液汁を提供する工程、
b)保存剤を工程(a)から得られる液汁に任意に加える工程、
c)工程(a)または(b)から得られる液汁を、魚臭を除去し、且つ快適さを向上させるために活性炭粉末または炭素フィルターで処理する工程、
d)目に見えない微小有機体を全て分離し、所望の飲料を得るために殺菌によってコロイド状不純物を取り除くために、工程(c)から得られる液汁を膜ろ過にかける工程、
e)塩、ライム、ハーブ、スパイス、炭酸等々を含む群から選択される商業的に利用可能な他の飲料、風味、あるいは成分を、飲料の風味を増すよう混合して、工程(d)から得られる飲料に任意に加える工程、
とを有する、カッパフィカス属アルバレジ種から清涼および味の良い飲料を製造する方法を提供する。
【0040】
本発明の実施の形態においては、使用されるカッパフィカス属アルバレジ種は、インドのタミルナドゥおよびグジャラートの沿岸部で、いかだ栽培されている。
【0041】
本発明の他の実施の形態においては、使用される保存剤は、保存剤の濃度が0.2−0.4%(w/v)の範囲で使用され、安息香酸、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メチルパラベンそしてプロピルパラベン単独またはそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0042】
さらに、本発明の他の実施の形態においては、ろ過に使用される膜は、圧力4kg/cmで切り出された原子質量単位200−300の高スルホン酸限外濾過膜、または圧力1kg/cmで操作された19−チャンネルセラミック微小ろ過膜を含む群から選択される。
【0043】
また、本発明の他の実施の形態においては、殺菌は、熱、放射線またはオゾン化を使用して行われる。
【0044】
また、本発明の他の実施の形態においては、膜ろ過後に得られる生産物による未透過流れは、植物栄養剤として有用である。
【0045】
また、本発明の他の実施の形態においては、前記飲料は、塩、砂糖、レモン、炭酸等々を含む群から選択される添加物を含む、全体の2分の1から4分の1の水で、前記液汁を希釈化することによって製造される。
【0046】
また、本発明の他の実施の形態においては、4−6%(w/v)スクロースを含む水を全体の3分の1として希釈化し、好ましくは冷却状態で加えるとき、前記飲料は、外見、香りおよび味がココナッツ水に類似する精製液汁から製造される。
【0047】
また、本発明の他の実施の形態においては、封入された液汁または飲料は環境条件下で保存され得るが、さらに好ましくは2−10℃で冷蔵状態下である。
【0048】
また、本発明の他の実施の形態においては、前記飲料は、以下の特徴を有している。
a)魚臭がない
b)外見と味がココナッツ水に類似している
c)環境温度で安定であり、さらに好ましくは摂氏2−10度の範囲である。
【0049】
本発明は、以下の要点に基づいている。
a)カッパフィカス属アルバレジ種の液汁は、従来技術に開示されているように、カリウムおよび様々な他のミネラルに富んでおり、栄養飲料の原料として役に立つという知見を得たこと。
b)その後、液汁が不快なものであったとしても、いやな匂いを取り除き、その味を向上させ、美的外観を向上させることにより快適なものにすることが可能であると推測したこと。
c)その後、飲料の自然らしさを保持すると共に、前記(b)の目的を達成するために、液汁の処理の主に物理的方法について改良したこと。
d)精製後でさえ液汁が不快な性質を有するのは、過度の塩濃度が原因であると考えたこと、そしてその後、ココナッツ水に似させる清涼飲料且つ快適な飲料を生産するために、水および甘味料で味を適切に調整すること。
e)食品基準化学保存剤、さらに好ましくは非化学的な保存手段を用いて液汁の貯蔵寿命を延ばすこと。
f)また、液汁の精製工程から生じた残渣は植物栄養剤として利用を見いだせるという知見を得たこと。
【0050】
以下の実施例は、説明の方法として提供されるので、本発明の範囲を制限するものと解釈するべきでない。
【実施例1】
【0051】
収穫後45日経過したカッパフィカス属アルバレジ種植物25kgは、8月に、インドのグジャラート州のオカア海岸にあるSMCRIの試験収穫場で新鮮に収穫されたものである。液汁18.0kgが、米国特許第6,893,479号に開示されているように綿モスリンでろ過後得られた。残渣はκ−カラギーナンの製造のためにとっておいた。保存剤(液汁1リットルに対し安息香酸1g)の添加後、加工前液汁は、まだ微妙に固体のままであり、それを10,000rpm(15900xg force)で30分遠心分離した。ピンク色がかった透明上澄み液が得られ、それは不快な魚臭を有していた。
【実施例2】
【0052】
実施例1に記載された加工前液汁は、水性溶液形態中で異なる量のみょうばん(400−1000ppm)で処理された。1000ppmのみょうばんにて3時間処理した後に簡単に定常状態になったが、400ppmのみょうばんだと定常状態になるまでに15時間要した。
【実施例3】
【0053】
20kgのカッパフィカス属アルバレジ種海藻がマンダパム海岸から収穫され、それは実施例1の方法に従い、15リットルの液汁を産出した。1g/Lの安息香酸保存剤を加えた後、加工前液汁は8000rpmで遠心分離され、その後、5μポリプロピレンワインドカートリッジフィルターを通過させた。処理後液汁7Lを、薄い黄味がかった色を有しており、6%スクロースと1g/L安息香酸を含む水21Lで希釈化した。残渣物は、炭酸塩化し、藻類学会に集まった聴衆に対して、冷やして配布した。
【実施例4】
【0054】
実施例3の液汁は、原子質量単位250,000(細孔サイズ0.05−0.06μ)まで減らされた分子量を有するポリスルホン酸塩基の限外濾過膜カートリッジを通過させた。残渣液汁は、完全に無色であり、魚臭は完全に除去されたわけではないものの、ほぼなくなっていた。
【実施例5】
【0055】
実施例3の液汁は、カーボンフィルターカートリッジを通過させ、その後、実施例4のUF膜カートリッジを通過させた。魚臭のない無色の液汁が得られた。その後、実施例3に記載されたように、その液汁を甘味水で希釈し、研究所の所員と研究所の訪問者から、その液汁についての感想を再度調べた。その飲料は、味が良い、清涼である、その飲料はココナッツ水の味に似ていることを示唆する様々な反応があった。この製品の栄養素のデータを下記表1に示す。
【表1】

【実施例6】
【0056】
新鮮な液状海藻を、布を使って粗ろ過し、液汁に保存剤を加えた。加工前の濁った液汁4Lは、不快な魚臭を有しており、食品基準ステンレス鋼で作られた実験装置の食糧タンクに入れられた。液汁は0.5時間、異なる量の活性炭(0.0−1.0%w/v)で処理された(メルク(インド)社(Merck (India) Ltd.)製;200メッシュでふるいにかけ、1時間100℃で乾燥させた)。その後、冷却器を使用して食糧タンクを12℃に維持するとともに、膜厚を1.0kg/cmまで徐々に増加させることにより、液汁を、0.054mのろ過領域を有する19−チャンネルセラミック MF部材でろ過した。膜ろ過された液汁の濁度は、活性炭での事前の処理によって変化した。1ロットに加えられる活性炭が0.5%の場合、最良の結果が得られた。透過流束は9.1L/m/hであった。被流入物と透過物のデータを下記の表2に示す。
【表2】

【0057】
表2からわかるように、外見が濁り、不快な魚臭を有する加工前液汁は、パールグリーン色を有し、緑ココナッツの香りを有する透明な透過物に劣る一方、前記表のTDS(総溶解固形物(Total dissolved solids))データから明らかなように塩分は本質的には変化がないままであった。透過物の栄養データは表3に提供される。甘味水で希釈化され、飲料として提供されうる。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0058】
1.本液汁は精製され、保存され、外見においてはココナッツ水に類似し、魚臭がない。2.本液汁はガラスボトルやプラスチックボトルや封止されたポーチやステンレス鋼やプラスチックでできた大きな閉コンテナに封入されうる。
3.液汁から分離される残渣物は、従来技術に開示された新鮮な海藻の同重量から製造された乾燥海藻から得られるのと同じ程度に、κ−カラギーナンを産出することができる。4.膜ろ過後に得られる生産物による未透過流れは、植物栄養剤として有用である。
5.栄養飲料および液体植物栄養剤が、κ−カラギーナンに加えて、前記工程によって得
られる。
6.加工前液汁のコストが1リットル当たり0.07ドル(USD)であるとき、前記液汁
の生産コストは1リットル当たり0.25ドル(USD)より少ない。そのコストは、乾燥
カッパフィカス属アルバレジ種の1トン当たりの価格500ドル(USD)の価格に基づい
た新鮮な海藻の1トン当たりの価格0.50ドル(USD)を仮定しており、その価格は、
新鮮な海藻の重量と乾燥海藻重量の比が10:1であり、新鮮な海藻から液汁の回復率が70%(w/w)であり、液汁単体に新鮮な海藻全体価格を上乗せして想定している。
7.前記飲料は、1ヘクタールあたりのカッパフィカス属アルバレジ種の新鮮な重量の100トンを控えめに仮定しても、外海でのいかだ栽培面積1ヘクタールあたり100mLを1人前とすると2−4百万人前程度生産されうる。
8.本飲料は、現在ある方法を使用することにより多量に生産され、普通の人によって供給され得る。
9.食用目的で精製された海藻液汁の本製造方法は、栄養液汁を含む他の海藻にも適用できる。
10.本飲料は清涼であり、味が良く、そして栄養があり、1日に必要なヨウ素を含む全ての必須微量栄養素を満たすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分を含む、カッパフィカス属アルバレジ種海草類から得られる液汁の利用。
a)2500−5000mg/Lのカリウム、1000−2000μg/Lのヨウ素、そして、150−200mg/Lのナトリウム、750−1250mg/Lのマグネシウム、250−350mg/Lのカルシウム、25−35mg/Lのリン、50−100mg/Lの鉄、3−6mg/Lの亜鉛、1.5−2.5mg/Lのマンガンを含む群から選択されるその他必須ミネラル
b)0.75−1.0g/Lの蛋白質、15−25g/Lの炭水化物、0.2−0.3ppmのチアミン、0.1−0.2のppmリボフラビン、そして総エネルギー70−100Kcal/Lの微量の脂肪
c)<6μg/Lの鉛と<40μg/Lのクロム
【請求項2】
前記液汁は、清涼飲料且つ味の良い飲料の製造に有用である、請求項1に記載の液汁の利用。
【請求項3】
a)カッパフィカス属アルバレジ種から得られる液汁を提供する工程、
b)保存剤を工程(a)から得られる液汁に任意に加える工程、
c)工程(a)または(b)から得られる液汁を、魚臭を除去し、且つ快適さを向上させるために活性炭粉末または炭素フィルターで処理する工程、
d)工程(c)から得られる液汁を、目に見えない微少有機体を全て分離し、所望の飲料を得るために殺菌によってコロイド状不純物を取り除くために膜ろ過にかける工程、
e)塩、ライム、ハーブ、スパイス、炭酸等々を含む群から選択される商業的に利用可能な他の飲料、風味、あるいは成分を、飲料の風味を増すよう混合して、工程(d)から得られる飲料に任意に加える工程、
とを有する、カッパフィカス属アルバレジ種を用いた清涼飲料及び味の良い飲料の製造方法。
【請求項4】
使用される保存剤は、保存剤の濃度が0.2−0.4%(w/v)の範囲で使用され、安息香酸、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、メチルパラベンそしてプロピルパラベン単独またはそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
ろ過に使用される膜は、圧力4kg/cmで切り出された 原子質量単位200−300の高スルホン酸限外濾過膜、または圧力1kg/cmで操作された19−チャンネルセラミック微小ろ過部材を含む群から選択される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
殺菌は、熱、放射線またはオゾン化を使用して行われる、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
膜ろ過後に得られる生産物による未透過流れは、植物栄養素として有用である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記飲料は、以下の特徴を有している、請求項3に記載の製造方法。
a)魚臭がない。
b)外見と味がココナッツ水に類似している。
c)環境温度が一定であり、より好ましくは摂氏2−10度の範囲である。

【公表番号】特表2010−500046(P2010−500046A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524309(P2009−524309)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/IN2007/000338
【国際公開番号】WO2008/020457
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(596020691)カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (42)
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
【Fターム(参考)】