説明

減温器蒸気熱回収設備

【課題】汽力発電プラントに設けられ、ボイラ起動後、通常負荷運転時まで減温器から送出される蒸気の熱を回収し有効利用する実用的な減温器蒸気熱回収設備を提供する。
【解決手段】汽力発電プラントに設けられ、ボイラ起動後、通常負荷運転時まで減温器55から送出される蒸気の熱を回収する減温器蒸気熱回収設備であって、減温器55とボイラ給水系統とを結び、減温器55から送出される蒸気をボイラ給水の加熱用蒸気として脱気器30に送出するボイラ給水加熱蒸気系統41と、減温器55と復水器21とを結び、減温器55から送出される蒸気及び/又はドレンを復水器21に送出する復水回収系統42と、ボイラ給水加熱蒸気系統41及び/又は復水回収系統42へ減温器55から送出される蒸気を導くように前記2つの系統を切替え可能で、前記2つの系統への蒸気量を分配する三方弁43を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汽力発電プラントにおいて、ボイラ起動後、通常負荷運転時まで減温器から送出される蒸気の熱を回収する減温器蒸気熱回収設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な汽力発電プラントは、石炭、重油、LNG等を燃料としボイラで蒸気を発生させ、発生した蒸気を蒸気タービンに導き発電機を駆動し発電する。蒸気タービンを駆動した蒸気は、海水を冷却媒体とする復水器で冷却され復水となる。この復水はボイラ給水となり低圧給水加熱器で加熱され、さらに脱気器で給水中の溶存酸素等が除去された後、高圧給水加熱器で加熱されボイラに送られる。低圧給水加熱器、脱気器及び高圧給水加熱器の加熱には、蒸気タービンの抽気蒸気が使用される。
【0003】
汽力発電プラントを起動する際には、ボイラの火炉水冷壁を保護するため、ボイラ定格給水量の25%程度の給水を行う必要がある。一方でボイラを起動しても発生する蒸気を直ちに蒸気タービンに供給することはできない。蒸気タービンに蒸気を供給するには蒸気を規定の温度、圧力とする必要があり、さらに蒸気タービンに供給後も蒸気量を徐々に増加させ、最終的に発生蒸気の全量を蒸気タービンに供給することとなる。このように汽力発電プラントの起動時にはボイラの給水量と蒸気タービンへの蒸気供給量とが異なるため、汽力発電プラントには起動バイパス装置が設けられ、余剰の蒸気はフラッシュタンクを経由して復水器へ導かれる。
【0004】
これまで汽力発電プラントにおいて、発電効率の向上、エネルギーの有効利用、省エネルギー、さらにはランニングコストの低減に関する多くの提案がなされている。このようなエネルギーの有効利用等に対する提案は、通常運転に対応するもののみならず、起動バイパス運転に対応するものもある。例えば、汽力発電プラントの起動時には、ボイラを点火し発生させた蒸気を起動バイパス装置を用い、徐々に主蒸気管など各所に送り所定の温度まで昇温させるウォーミング操作が必要となる。従来、このウォーミングに使用した蒸気は有効利用されることなく外部に排出されていたが、このウォーミングに使用した蒸気を有効に利用するための提案がなされている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−7954号公報
【特許文献2】特開2009−293871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
汽力発電プラントにおいて、発電効率の向上、ランニングコストの低減等は、永遠の課題と言うべきものであり、今後も更なる改善が期待されている。例えば起動バイパス装置を備える汽力発電プラントでは、起動時、起動バイパス装置を用い主蒸気管などのウォーミング操作を行うが、従来の汽力発電プラントでは、主蒸気管をウォーミングした蒸気は、減温器に導かれここで所定の温度に減温された後、復水器に送られ復水とされる。このような排気蒸気の処理方法は、簡便な処理方法であるが有効利用にはつながっていない。主蒸気管をウォーミングし排気される蒸気などは、温度が高く有効利用可能であるが、これまで減温器に排気される蒸気及び減温器から送出される蒸気については、殆ど着目されておらず、有効利用方法も提案されていない。
【0007】
本発明の目的は、汽力発電プラントに設けられ、ボイラ起動後、通常負荷運転時まで減温器から送出される蒸気の熱を回収し有効利用する実用的な減温器蒸気熱回収設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ボイラと、前記ボイラから送出される蒸気で駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンの排気蒸気を復水にする復水器と、低圧給水加熱器、脱気器及び高圧給水加熱器を備え、前記復水器から送出される復水を加熱し前記ボイラに給水するボイラ給水系統と、前記ボイラ起動後、前記蒸気タービンに所定の蒸気が供給され通常負荷運転に切替わるまで水及び/又は蒸気を流通させ、排気される蒸気及び/又はドレンを減温器を経由させ前記復水器に送出し復水とする起動バイパス装置と、を備える汽力発電プラントに設けられ、前記ボイラ起動後、通常負荷運転時まで前記減温器から送出される蒸気の熱を回収する減温器蒸気熱回収設備であって、前記減温器と前記ボイラ給水系統とを結び、前記減温器から送出される蒸気をボイラ給水の加熱用蒸気として前記ボイラ給水系統に送出するボイラ給水加熱蒸気系統と、前記減温器と前記復水器とを結び、前記減温器から送出される蒸気及び/又はドレンを前記復水器に送出する復水回収系統と、前記ボイラ給水加熱蒸気系統及び/又は復水回収系統へ前記減温器から送出される蒸気を導くように前記2つの系統を切替え可能で、前記2つの系統への蒸気量を分配可能な系統制御手段と、を備えることを特徴とする減温器蒸気熱回収設備である。
【0009】
また本発明は、前記減温器蒸気熱回収設備において、前記ボイラ給水加熱蒸気系統は、前記減温器と前記脱気器又は前記脱気器の下流側のボイラ給水系統とを結ぶことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記減温器蒸気熱回収設備において、前記ボイラ給水加熱蒸気系統は、途中で複数に分岐し、分岐した先端部が前記ボイラ給水系統の複数の箇所に接続し、前記ボイラ給水系統の1以上の箇所に蒸気を送出可能に形成され、さらに前記ボイラ給水加熱蒸気系統の蒸気送出先を制御する制御装置を備えることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記減温器蒸気熱回収設備において、前記制御装置は、前記複数の蒸気送出先の中から、送出先のボイラ給水温度が送出される蒸気温度以下で該蒸気温度に一番近い蒸気送出先を選定し、該蒸気送出先に蒸気を送出するように前記ボイラ給水加熱蒸気系統を制御することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記減温器蒸気熱回収設備において、前記汽力発電プラントが、週末起動停止(WSS)運転又は深夜起動停止(DSS)運転対応の汽力発電プラントであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の減温器蒸気熱回収設備は、ボイラ起動後、通常負荷運転時まで減温器から送出される蒸気をボイラ給水系統に送出可能なボイラ給水加熱蒸気系統を備えるので、前記蒸気でボイラ給水を加熱可能であり、減温器から送出される蒸気を有効利用することができる。また減温器からの送出蒸気を復水器に送出可能な系統、2つの系統を切替え可能で、2つの系統への蒸気量を分配可能な系統制御手段を備えるので、減温器から送出される蒸気のうちボイラ給水加熱蒸気系統に送出されない蒸気は復水器に送出することができる。これにより減温器から送出される全ての蒸気を確実に処理することができ、汽力発電プラントの起動運転を支障なく行うことができる。
【0014】
また本発明によれば、前記ボイラ給水加熱蒸気系統は、脱気器又は脱気器の下流側のボイラ給水系統に減温器からの送出蒸気を導くことができるので、送出される蒸気をボイラ給水と直接接触させるか、又はボイラ給水と熱交換し生成するドレンを脱気器に投入することで脱気器の水位が上昇する。この結果、脱気器への送水量が低下し、ボイラ給水を送水する復水ポンプ、復水昇圧ポンプの負荷が低下し、これらのランニングコストが低下する。
【0015】
また本発明によれば、前記ボイラ給水加熱蒸気系統は、途中で複数に分岐し、ボイラ給水系統の1以上の箇所に蒸気を送出可能に形成され、さらに前記ボイラ給水加熱蒸気系統の蒸気送出先を制御する制御装置を備えるので、ボイラ給水系統の複数個所に減温器から送出される蒸気を送ることが可能である。ボイラ給水系統の複数個所に蒸気を送出することで蒸気消費量が増加し、復水器に送出する蒸気量が低下するので、減温器から送出される蒸気をより有効に利用することができる。
【0016】
また本発明によれば、制御装置が複数の蒸気送出先の中から、送出先のボイラ給水温度が送出される蒸気温度以下で該蒸気温度に一番近い蒸気送出先に蒸気を送出するようにボイラ給水加熱蒸気系統を制御するので、減温器から送出される蒸気の熱をボイラ給水の加熱により効率的に利用することができる。温度の低いボイラ給水は、温度の低い蒸気でも加熱できるが、温度の高いボイラ給水は、温度の低い蒸気では加熱できないことを考えれば、可能な限り温度の近いボイラ給水を加熱することが効率的である。
【0017】
また本発明によれば、本発明の減温器蒸気熱回収設備は、汽力発電プラントの起動時に排気される蒸気の処理に関するものであるから、起動停止の多い週末起動停止(WSS)運転、深夜起動停止(DSS)運転を行う汽力発電プラントに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態としての減温器蒸気熱回収設備を備える汽力発電プラントの概略的構成を示すプロセスフロー図である。
【図2】本発明の第2実施形態としての減温器蒸気熱回収設備の概略的構成を示すプロセスフロー図である。
【図3】本発明の第3実施形態としての減温器蒸気熱回収設備の概略的構成を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態としての減温器蒸気熱回収設備を備える汽力発電プラントの概略的構成を示すプロセスフロー図である。まず汽力発電プラントの全体構成を通常運転(通常負荷運転)時の蒸気及び復水・給水の流れに従って説明し、その後、起動バイパス装置の構成、汽力発電プラント起動時の運転要領と減温器蒸気熱回収設備の使用方法を説明する。
【0020】
ボイラ1は、燃料であるLNG(液化天然ガス)を燃焼させる火炉2、燃焼ガスによりボイラ給水を加熱する節炭器3、水冷壁4、ゲージ壁5さらには飽和蒸気を過熱蒸気とする1次過熱器6及び2次過熱器7を備える。2次加熱器7から送出される過熱蒸気は、主蒸気止弁11及び蒸気加減弁12が設けられた主蒸気管13を通じて高圧タービン14に送られ高圧タービン14を駆動する。高圧タービン14を駆動した蒸気は、ボイラの再熱器(図示を省略)で再加熱された後、図示を省略した中圧タービン及び低圧タービンを駆動する。発電機(図示を省略)は、高圧タービン14、中圧タービン、低圧タービンと連結しこれらタービンにより駆動され発電を行う。
【0021】
低圧タービンから排出される蒸気は、復水器21で冷却され凝縮し復水となる。復水は、復水ポンプ22を介して脱塩装置23に送られ、復水中の塩類が除去される。塩類が除去された復水は、復水昇圧ポンプ24で昇圧された後、復水熱交換器25で軸冷水と熱交換し温度を上昇させる。その後、復水は、空気抽出装置26のクーラーの冷媒として使用され、グランドコンデンサ27、ドレンクーラ28の順に送られ、さらに低圧給水加熱器29で加熱された後、脱気器30に送られる。
【0022】
低圧給水加熱器29は、表面接触式の熱交換器であり、低圧タービン(LP)の抽気蒸気で加熱される。低圧給水加熱器29は、3基直列に設けられており、図1では1基のみ示した。脱気器30に送られた給水は、中圧タービンの抽気蒸気(脱気用蒸気)で加熱され、給水中の溶存酸素等不凝縮性ガスが除去された後、ボイラ給水ポンプ31により昇圧された後、高圧給水加熱器32に送られ、ここで高圧タービン14の抽気蒸気によりさらに加熱される。高圧給水加熱器32(32a、32b、32c)は、表面接触式の熱交換器であり、高圧タービン14の抽気蒸気で加熱された給水は、節炭器3に送られる。復水器21から節炭器3に至るまでの系統が、復水・給水系統である。
【0023】
減温器蒸気熱回収設備は、ボイラ1起動後、通常負荷運転時まで後述の起動バイパス装置の減温器55から送出される蒸気をボイラ給水の加熱に使用するための設備である。減温器蒸気熱回収設備は、起動バイパス装置の減温器55から送出される蒸気を脱気器30に導くボイラ給水加熱蒸気系統41、減温器55から送出されるドレン及び/又は蒸気を復水器21に導く復水回収系統42、減温器55から送出される蒸気をボイラ給水加熱蒸気系統41及び/又は復水回収系統42に導く三方弁43を備える。減温器55の出口部と三方弁43の入口部とが管路44で、三方弁43の一方の出口と脱気器30とが管路45で、三方弁43の他方の出口と復水器21とが管路46で結ばれ、三方弁43を間に挟み管路44と管路45とでボイラ給水加熱蒸気系統41が形成され、三方弁43を間に挟み管路44と管路46とで復水回収系統42が形成されている。三方弁43は、汽力発電プラントの運転を制御する運転制御装置(図示を省略)からの指令に基づき、脱気器30内の給水温度が所定の温度となるようにボイラ給水加熱蒸気系統41に送出する蒸気量を調整する。なお、三方弁43に代え、管路45及び管路46に流量調整弁を設け、ボイラ給水加熱蒸気系統41及び復水回収系統42への蒸気量を調整してもよい。
【0024】
上記汽力発電プラントには、起動する際に使用する起動バイパス装置が設けられている。起動バイパス装置は、1次過熱器6をバイパスする1次過熱器バイパス系統51、2次過熱器7をバイパスする2次過熱器バイパス系統52、1次過熱器バイパス系統51及び2次過熱器バイパス系統52と接続し、1次過熱器6をバイパスするように配置されたフラッシュタンク53、高圧タービン14の上流側に配置されたタービンバイパス系統54、フラッシュタンク53から排気される余剰の蒸気及びタービンバイパス系統54から排気される蒸気を減温する減温器55を備える。
【0025】
1次過熱器バイパス系統51は、1次過熱器6の上流側とフラッシュタンク53とを結ぶ1次過熱器バイパス管56を有し、管路の途中に調整弁57を備える。2次過熱器バイパス系統52も1次過熱器バイパス系統51と同様に、2次過熱器7の上流側とフラッシュタンク53とを結ぶ2次過熱器バイパス管58を有し、管路の途中に調整弁59を備える。さらに2次過熱器バイパス系統52は、フラッシュタンク53から送出される蒸気で2次過熱器7をウォーミングする、加熱器通気弁60が介装された2次加熱器ウォーミング管61を備える。
【0026】
フラッシュタンク53は、1次過熱器バイパス管56及び2次過熱器バイパス管58を通じて排気される蒸気を受け入れ、蒸気を所定の圧力に調整する圧力容器であり、蒸気を2次過熱器7に送出すると共に、ボイラ給水を加熱する調整弁67、68が設けられた加熱蒸気管62を介して脱気器30及び高圧給水加熱器32cに加熱蒸気を送る。フラッシュタンク53には、所定の圧力以上で開き蒸気を逃すダンプ蒸気弁63が設けられ、ダンプ蒸気は、減温器55と接続する遮断弁69が設けられたダンプ蒸気送出管64を通じて減温器55に送られる。加熱蒸気管62は、ダンプ蒸気弁63の上流側でダンプ蒸気送出管64に接続する。さらにフラッシュタンク53は、発生したドレンを復水器21及び脱気器30に送出する調整弁70、71が設けられたドレン送出管65、66を備える。またドレン送出管65にはブロータンクと連絡する調整弁72を備える分岐管73が設けられている。
【0027】
タービンバイパス系統54は、タービンバイパス弁75が設けられたタービンバイパス管76を有し、一端を主蒸気止弁11の上流側の主蒸気管13に他端を減温器55に接続する。
【0028】
減温器55は、フラッシュタンク53のダンプ蒸気及びタービンバイパス管76を通じて排気される主蒸気管13のウォーミング蒸気を減温する装置である。減温器55には、復水昇圧ポンプ24の出口部に設けられた、調整弁78を有する減温水供給管77を介して減温用の水として復水が供給される。減温器55には温度検出器80が装着され、調整弁78は、温度検出器80と接続する温度調節器81からの信号により減温水量を調整する。これにより減温器55から排出される蒸気を所定の温度に調整する。
【0029】
次に汽力発電プラント起動時の運転要領と減温器55から送出される蒸気によるボイラ給水加熱方法を説明する。なお、以下の説明に使用する数値は例示であり、本発明はこの数値に拘束されるものではない。
【0030】
汽力発電プラントを起動する際には、ボイラ1の水冷壁4を保護するため、ボイラ定格給水量の25%程度の給水を行う必要がある。一方でボイラ1を起動しても発生する蒸気を直ちに蒸気タービンに供給することはできないので、起動バイパス装置を使用した起動バイパス運転により汽力発電プラントが起動される。ボイラ1には、起動バイパス運転が終了するまでボイラ定格給水量の25%程度の給水が行われる。
【0031】
ボイラ1の水張り後、ボイラ1、1次過熱器バイパス系統51、フラッシュタンク53、復水・給水系統を通じた系統水循環が行われる。このとき1次過熱器6と2次過熱器7とを連絡する過熱器止弁8、過熱器加減弁9、2次過熱器バイパス系統52は閉止されている。ボイラ点火後、蒸気を1次過熱器バイパス系統51を通じてフラッシュタンク53へ送り、1次過熱器6の入口温度が160℃に達すると2次過熱器バイパス系統52の調整弁59が開き、1次過熱器6が加熱される。以降、フラッシュタンク53に送られる蒸気のうち、ウォーミング等に使用される以外の蒸気は、一部がドレンとなり復水器21、脱気器30に送られ、余剰の蒸気は、脱気器30、高圧給水過熱器32に送られ、ボイラ給水の加熱に使用される。さらにフラッシュタンク圧力が3.5MPaを超えるとダンプ蒸気弁63が開き、余剰の蒸気は減温器55へ送られる。
【0032】
フラッシュタンク圧力が0.98MPaになると、加熱器通気弁60及びタービンバイパス弁75が開き、2次過熱器7及び主蒸気管13に蒸気が流れ込みこの部分がウォーミングされる。この主蒸気管13のウォーミングは、フラッシュタンク圧力が約3.5MPaとなるまで継続される。主蒸気管13をウォーミングした蒸気は、タービンバイパス管76から減温器55に送られる。
【0033】
主蒸気管13のウォーミングが終了すると、タービンバイパス弁75は閉止し、蒸気は蒸気タービン14に送られ並列される。蒸気タービン並列後、過熱器減圧弁9を開け、過熱器減圧弁9を経由し蒸気を供給し、徐々に加熱器減圧弁9の開度を増し、主蒸気圧力を15.576MPaとする。この操作をランピング操作と言う。なお、この状態でも蒸気の一部はフラッシュタンク53へ送られている。この操作の段階で過熱器止弁8が全開となる。その後、蒸気の制御を主蒸気止弁11から蒸気加減弁12により行う弁切替が行われ、蒸気は全て高圧タービン14に送られる。この時点で起動バイパス系統に蒸気を流す必要はなくなるので、1次過熱器バイパス系統51の調整弁57が閉じ、起動バイパス運転が終了し通常運転(通常負荷運転)へと移行する。起動バイパス系統を使用する運転をローロードオペレーションとも言う。
【0034】
減温器55に送られるフラッシュタンク53からの余剰蒸気及びタービンバイパス管76から送られ主蒸気管13をウォーミングした蒸気は、蒸気温度が減温器55の設定温度を超えるときは、減温器55で設定温度、例えば170℃に調整された後、ボイラ給水加熱蒸気系統41を通じて脱気器30に送られ、給水を設定された温度に加熱する。脱気器30の給水の加熱に必要な蒸気量が少なく、減温器55から送出される蒸気を全て脱気器30に送出できないときは、余剰の蒸気は復水回収系統42を通じて復水器21に送られ復水になる。ボイラ給水加熱蒸気系統41、復水回収系統42への蒸気の送出の調整は、三方弁43が行い、減温器55から送出される蒸気は全て、ボイラ給水加熱蒸気系統41及び/又は復水回収系統42を通じて処理される。
【0035】
主蒸気管13のウォーミングの初期などには、減温器55に送られる蒸気の温度が低い、又は蒸気がドレンとなり減温器55に送られる場合もある。減温器55の温度と脱気器30内の給水温度を比較して、減温器55の温度が低い場合には、減温器55に送られる蒸気及び/又はドレンを全て復水器21に送出するように三方弁43を切り替える。
【0036】
従来の汽力発電プラントでは、起動バイパス運転時に減温器55に排気される蒸気は、最終的に全て復水器21に送られ復水とされ、熱回収は行われていなかった。これに対して、本実施形態に示す汽力発電プラントでは、起動バイパス運転時に減温器55に排気され必要に応じて減温された、減温器55から送出される蒸気を給水加熱に使用するので、排気蒸気の保有する熱エネルギーを有効利用することができる。また脱気器30に送られる蒸気は、減温器55で温度が調整された蒸気であり、さらにフラッシュタンク53のダンプ蒸気及びタービンバイパス管76を通じて排気される主蒸気管13のウォーミング蒸気を、減温器55を経由し脱気器30に送出することで蒸気流量の変動も緩和され、脱気器30の給水加熱の制御性も容易となる。また脱気器30の給水の加熱に必要な蒸気量が少ない場合には、余剰の蒸気は復水器21に送られるので、汽力発電プラントの起動バイパス運転を支障なく行える。また脱気器30は、直接加熱式ゆえ、脱気器30に送られた蒸気は給水で冷却され復水となる。この結果、脱気器30の水位が上昇し、脱気器30への送水量が低下する。これにより脱気器30に給水を送る復水ポンプ22、復水昇圧ポンプ24の負荷が低下し、これらのランニングコストが低下する。
【0037】
図2は、本発明の第2実施形態としての減温器蒸気熱回収設備の概略的構成を示すプロセスフロー図である。第1実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
第2実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備も第1実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備と同様、起動バイパス運転時、起動バイパス装置の減温器55に排気され必要に応じて減温された、減温器55から送出される蒸気を給水加熱に使用するための設備であり、ボイラ給水加熱蒸気系統47、復水回収系統42及び三方弁43を備える。但し、第2実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備では、ボイラ給水加熱蒸気系統47が複数設けられ、複数のボイラ給水加熱蒸気系統47への蒸気の送出を制御する制御装置100を備える点が第1実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備と異なる。以下、第1実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備との相違点を中心に説明する。
【0039】
ボイラ給水加熱蒸気系統47は、三方弁43の出口部の管路45が4つに分岐し、分岐した先端部に第1から第4の管路49a、49b、49c、49dが設けられ、4つのボイラ給水加熱蒸気系統47a、47b、47c、47dが形成されている。第1の管路49aは、端部に遮断弁50aを備え、遮断弁50aを介して管路45と接続し、他端部を脱気器30と接続する。第2の管路49bは、端部に遮断弁50bを備え、遮断弁50bを介して管路45と接続し、他端部を高圧給水加熱器32aと接続する。第3の管路49cは、端部に遮断弁50cを備え、遮断弁50cを介して管路45と接続し、他端部を高圧給水加熱器32bと接続する。第4の管路49dは、端部に遮断弁50dを備え、遮断弁50dを介して管路45と接続し、他端部を高圧給水加熱器32cと接続する。ボイラ給水加熱蒸気系統47aは、三方弁43を挟み管路44、管路45、遮断弁50a及び管路49aで形成されている。他のボイラ給水加熱蒸気系統47b、47c、47dも同様であり、三方弁43を挟む管路44及び管路45は共用部分である。遮断弁50(50a、50b、50c、50d)は、制御装置100からの信号で開閉する。
【0040】
制御装置100は、汽力発電プラントの運転を制御する運転制御装置(図示を省略)と信号を送受信可能に接続し、運転制御装置と協働し、複数のボイラ給水加熱蒸気系統47(47a、47b、47c、47d)の中から蒸気を供給するボイラ給水加熱蒸気系統47を選定し、選定したボイラ給水加熱蒸気系統47に蒸気を送出するように三方弁43及び遮断弁50を制御する。制御装置100は、運転制御装置から温度データを取得し、この温度データから送出先の給水温度が、減温器55以下の温度でかつ減温器55に一番近いボイラ給水加熱蒸気系統47a、47b、47c、47dを選定し、このボイラ給水加熱蒸気系統47に蒸気を送出するように制御する。さらに先に選定したボイラ給水加熱蒸気系統47のみに蒸気を供給しても、減温器55から送出される蒸気が余るときは、減温器55以下の温度でかつ次に減温器55に近い給水温度のボイラ給水加熱蒸気系統47を選定し、このボイラ給水加熱蒸気系統47へも蒸気を送出するように制御する。以下同様に、第3、第4番目のボイラ給水加熱蒸気系統47に蒸気を送出するように制御することもできる。なお、減温器55から送出される蒸気を全て脱気器30及び/又は高圧給水加熱器32a、32b、32cに送出できないときは、余剰の蒸気を復水回収系統42に送出する点は第1実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備と同様である。
【0041】
温度の低い給水は、温度の低い蒸気でも加熱できるが、温度の高い給水は、温度の低い蒸気では加熱できないことは改めて言うまでもない。温度の高い給水は、それ以上の温度を有する蒸気でなければ加熱できないのであるから、本実施形態に示すボイラ給水の加熱方法は効率的な方法と言える。さらに本実施形態のように送出先の給水温度が減温器55以下の温度でかつ減温器55に一番近いボイラ給水加熱系統47に蒸気を供給すると、給水温度と蒸気温度との温度差が小さく、温度差に伴う装置への悪影響、例えば熱変形等を回避又は抑制することができ好ましい。また同時に2つ以上のボイラ給水加熱蒸気系統47、例えば、脱気器30と高圧給水加熱器32aとに同時に蒸気を送るように制御してもよいので、蒸気送出量が増加し、復水器21に逃がす蒸気を減少させることができ、送出蒸気をより有効に利用することができる。
【0042】
図3は、本発明の第3実施形態としての減温器蒸気熱回収設備の概略的構成を示すプロセスフロー図である。第1実施形態及び第2実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
第3実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備も第1実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備と同様、起動バイパス運転時、起動バイパス装置の減温器55に排気され必要に応じて減温された、減温器55から送出される蒸気を給水加熱に使用するための設備であり、ボイラ給水加熱蒸気系統41、復水回収系統42、三方弁43を備える。但し、第3実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備では、ボイラ給水ポンプ31と高圧給水加熱器32aとの間に新たに熱回収用の熱交換器90を設け、この熱交換器90に減温器55から送出される蒸気を導くようにボイラ給水加熱蒸気系統41を設ける。以下、第1実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備との相違点を中心に説明する。
【0044】
熱交換器90は、表面接触式の熱交換器であり、ボイラ給水加熱蒸気系統41を通じて送られた蒸気は、ボイラ給水を加熱し、ドレンとなりドレンタンク91に送られる。ドレンタンク91にはドレンを、ドレン加熱器28を経由して復水器21に送るドレン管93が接続する。ドレン管93にはドレンポンプ92、流量調整弁94が設けられ、ドレンは、ドレン加熱器28で給水と熱交換し、給水を加熱した後、復水器21に送られる。減温器55から送出される蒸気の熱交換器90への供給要領、ボイラ給水加熱蒸気系統41の構成なども第1実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備と変わるところはない。
【0045】
第3実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備は、第1実施形態及び第2実施形態に示す減温器蒸気熱回収設備と異なり、脱気器30又は高圧給水加熱器32に蒸気を供給しないので、これら機器を改造する必要がなく、また運転要領も変更する必要がない。
【0046】
上記実施形態で示すように本発明に係る減温器蒸気熱回収設備は、汽力発電プラントの起動時に減温器から送出される蒸気をボイラの給水加熱に有効利用することができると共に、ボイラの給水加熱に利用できないときは復水として回収する系統も備えるので、起動バイパス運転に支障を与えることもなく実用的な設備である。また構成も比較的簡単なので、新設の汽力発電プラントはもちろん、既設の汽力発電プラントにも容易に適用することができる。
【0047】
深夜起動停止(DSS)運転、週末起動停止(WSS)運転を頻繁に行う汽力発電プラントでは、通常運転に対する起動バイパス運転の割合が大きく、減温器55に排気される蒸気量も多くなるので、このような汽力発電プラントに対して本発明の減温器蒸気熱回収設備を設けることは効果的である。
【0048】
なお本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で種々の実施形態に変更し使用することができる。上記実施形態では、減温器55に減温水を供給し、減温器55から送出される蒸気を所定の温度に調整した後に送出する例を示したが、必要に応じて減温水の供給を停止し、温度の高い蒸気をボイラ給水加熱蒸気系統に送るようにしてもよい。さらに低圧給水加熱器29に蒸気を送るボイラ給水加熱蒸気系統を設け、ここで熱回収するようにしてもよい。また上記実施形態では、減温器55に排気される蒸気がフラッシュタンク53からの余剰蒸気及びタービンバイパス系統54からの排気蒸気であったが、減温器55に排気される蒸気はこれに限定されるものではない。例えば、空気抽出装置26に蒸気エゼクタを使用する場合、通常、蒸気エゼクタに主蒸気管13から駆動用蒸気を送るエゼクタ主蒸気管が設けられ、このエゼクタ主蒸気管は、起動バイパス運転時、蒸気ブローが行われる。このブロー蒸気が減温器55に排気される汽力発電プラントでは、このような排気蒸気も本発明に係る減温器蒸気熱回収設備で熱回収し有効利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ボイラ
14 高圧タービン
21 復水器
29 低圧給水加熱器
30 脱気器
32、32a、32b、32c、32d 高圧給水加熱器
41 ボイラ給水加熱蒸気系統
42 復水回収系統
43 三方弁
44 管路
45 管路
46 管路
47、47a、47b、47c、47d ボイラ給水加熱蒸気系統
49a、49b、49c、49d 管路
50a、50b、50c、50d 遮断弁
55 減温器
77 減温水供給管
78 調整弁
80 温度検出器
81 温度調節器
90 熱交換器
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラと、
前記ボイラから送出される蒸気で駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンの排気蒸気を復水にする復水器と、
低圧給水加熱器、脱気器及び高圧給水加熱器を備え、前記復水器から送出される復水を加熱し前記ボイラに給水するボイラ給水系統と、
前記ボイラ起動後、前記蒸気タービンに所定の蒸気が供給され通常負荷運転に切替わるまで水及び/又は蒸気を流通させ、排気される蒸気及び/又はドレンを減温器を経由させ前記復水器に送出し復水とする起動バイパス装置と、
を備える汽力発電プラントに設けられ、前記ボイラ起動後、通常負荷運転時まで前記減温器から送出される蒸気の熱を回収する減温器蒸気熱回収設備であって、
前記減温器と前記ボイラ給水系統とを結び、前記減温器から送出される蒸気をボイラ給水の加熱用蒸気として前記ボイラ給水系統に送出するボイラ給水加熱蒸気系統と、
前記減温器と前記復水器とを結び、前記減温器から送出される蒸気及び/又はドレンを前記復水器に送出する復水回収系統と、
前記ボイラ給水加熱蒸気系統及び/又は復水回収系統へ前記減温器から送出される蒸気を導くように前記2つの系統を切替え可能で、前記2つの系統への蒸気量を分配可能な系統制御手段と、
を備えることを特徴とする減温器蒸気熱回収設備。
【請求項2】
前記ボイラ給水加熱蒸気系統は、前記減温器と前記脱気器又は前記脱気器の下流側のボイラ給水系統とを結ぶことを特徴とする請求項1に記載の減温器蒸気熱回収設備。
【請求項3】
前記ボイラ給水加熱蒸気系統は、途中で複数に分岐し、分岐した先端部が前記ボイラ給水系統の複数の箇所に接続し、前記ボイラ給水系統の1以上の箇所に蒸気を送出可能に形成され、
さらに前記ボイラ給水加熱蒸気系統の蒸気送出先を制御する制御装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の減温器蒸気熱回収設備。
【請求項4】
前記制御装置は、前記複数の蒸気送出先の中から、送出先のボイラ給水温度が送出される蒸気温度以下で該蒸気温度に一番近い蒸気送出先を選定し、該蒸気送出先に蒸気を送出するように前記ボイラ給水加熱蒸気系統を制御することを特徴とする請求項3に記載の減温器蒸気熱回収設備。
【請求項5】
前記汽力発電プラントが、週末起動停止(WSS)運転又は深夜起動停止(DSS)運転対応の汽力発電プラントであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の減温器蒸気熱回収設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−102711(P2012−102711A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254307(P2010−254307)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】