説明

減速機

【課題】従来の出力軸が中空形状及び中実形状の減速機においては、それぞれ支持する軸受や嵌合する歯車が別部品で構成されている。特に、中実軸形状の減速機においては、右側や左側あるいは左右両側など出力軸の突出する方向が様々である。このため、同じサイズの減速機で、中空及び中実形状の出力軸に適用する減速機を製造する場合、少なくとも4機種の減速機が必要であった。
【解決手段】外周面にギヤーを有しギヤーケース内に回転自在に支承された中空軸、及びこの中空軸に回り止めを施し嵌挿された中実軸アダプターを備え、中実軸アダプターは、両端部、又は何れか一方の端部が中空軸の外部に突出されると共に固定機構で中空軸に固定されることにより出力軸を構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動機の入力軸方向と減速機の出力軸方向が直交する構造の減速機において、出力軸が中実である減速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直交型減速機には、特許文献1に示すように出力軸が中空形状の機種(特許文献1、2参照)及び中実形状の機種(特許文献3参照)がある。又、従来例として図5〜図8に示す同じサイズの減速機においては、それぞれ支持する軸受や嵌合する歯車が別部品からなる構成をしており、それぞれ中空出力軸機種や中実出力軸機種に適用する減速機を各々製造していた。
【0003】
【特許文献1】特開2002−39284号公報
【特許文献2】特開2006−207828号公報
【特許文献3】特開2001−258207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の出力軸が中空形状(中空出力軸モデル)及び中実形状(中実出力軸モデル)の減速機においては、上述したようにそれぞれ支持する軸受や嵌合する歯車が別部品で構成されている。特に、中実出力軸モデルの減速機においては、右側や左側あるいは左右両側など出力軸の突出する方向が様々である。このため、同じサイズの減速機で、中空及び中実形状の出力軸に適用する減速機を製造する場合、図5〜図8に示すように少なくとも4機種の減速機が必要であった。
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、第一の目的は出力軸周りの部品の共用化であり、また、第二の目的は、製造における製造機種の削減を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる減速機は、外周面にギヤーを有しギヤーケース内に回転自在に支承された中空軸、及びこの中空軸に回り止めを施し嵌挿された中実軸アダプターを備え、上記中実軸アダプターは、両端部、又は何れか一方の端部が上記中空軸の外部に突出されると共に固定機構で上記中空軸に固定されることにより出力軸を構成したものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明の減速機によれば、中空出力軸モデルの減速機を一機種製造し、中実アダプターを追加部品として製造することで、例えば上述の4機種を取り揃えることができる。すなわち、同一仕様の中空出力軸と、同一仕様の中実出力軸とで、出力軸の取り出し方向を両端取り出し、何れか片方取り出し等選択し得る多仕様対応、標準化に優れた減速機を提供できる。また、この発明では、中実アダプターの固定機構を新たに設ける必要があるが、実用上の直交型減速電動機は、中空出力軸モデルの機種が使用数の大半を占めるため、この発明のような固定機構(部材)を新たに使用するとしても従来の直交型減速電動機以上の効果が期待でき、製造機種削減の効率化、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいて、この発明の各実施の形態を説明する。
なお、各図間において、同一符号は同一あるいは相当部分を示す。
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1である直交型減速機の減速機出力軸部分の構造を示した断面図である。
図1において、減速機の出力軸は、図5に示す従来構造の直交型減速機と同様に中空出力軸(以下「中空軸」という)5をベースにして、この中空軸5に後述の加工を施すことにより片方突出型中実出力軸を構成するものである。
すなわち、実施の形態1の出力軸は、ギヤーケース1及び2の左右両側に設けた軸受3、軸受4により回転自在に支承された中空軸5と、この中空軸5に右方から嵌挿された中実軸アダプター6とによりが構成されている。
中実軸アダプター6は、右側端部が突出するよう中空軸5に嵌挿され、キー60により中空軸5に対し回り止めが施されている。また、中実軸アダプター6は、次の固定機構によって中空軸5に装着されている。
実施の形態1の固定機構は、中実軸アダプター6の突出端部側に設けられ中空軸5の開口部で係止された係合鍔部61、中実軸アダプター6の挿入端部側の中空軸内壁5aに設けられたC型止め輪62で係止されたスペーサ63、このスペーサを介し中空軸内に挿入され中実軸アダプター6の内端面6aに螺入されたボルト64などから構成され、中実軸アダプター6は、ボルト64の締め付けにより係合鍔部61とスペーサ63間で挟持され中空軸5への装着が行われている。なお、中空軸5の外径部分には、電動機の回転力を伝達するギヤー7が設けられている。
図1では、中実軸アダプター6が右方へ突出する場合を示したが、中実軸アダプター6は、キー60、C型止め輪62の取り付け位置を変えることにより左右どちらの方向にも突出するよう組立てることができる。
【0009】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2である直交型減速機の減速機出力軸部分の構造を示した断面図である。
実施の形態1では、中空軸5の内部にスペーサ63を配置したが、実施の形態2では、図2に示すようにC型止め輪62を廃止し、スペーサ63は中空軸5の開口部の外側に配置され、かつ実軸アダプター6は、次の固定機構で中空軸5に装着され片方突出型中実出力軸を構成するものである。
すなわち、実施の形態2の固定機構は、実施の形態1と同様に中実軸アダプターの突出端部に設けられ中空軸5の一方の開口部で係止された係合鍔部61、C型止め輪が廃止され中空軸5の他方の開口部で係止されたスペーサ63、このスペーサを介し中空軸内に挿入され中実軸アダプターの内端面6aに螺入されたボルト64などから構成され、中実軸アダプター6は、ボルト64の締め付けにより係合鍔部61とスペーサ63間で挟持され中空軸5への装着が行われる。
このようにすれば、C型止め輪62を廃止できること、ボルト64の締め付けが外部作業となることから作業性が良くなるなどの新たな効果が発生する。
なお、図2では、中実軸アダプター6が右方へ突出する場合を示したが、中実軸アダプター6の取り付け位置を変えることにより左右どちらの方向にも突出するよう組立てることができる。
【0010】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3である直交型減速機の減速機出力軸部分の構造を示した断面図である。
実施の形態3では、中実軸アダプター6の固定機構を、実施の形態1、実施の形態2に比べ更に簡素化したものである。
すなわち、実施の形態3の固定機構は、係合鍔部61を残して、その他のC型止め輪62、スペーサ63、及びボルト64などを廃止し、中実軸アダプター6は、その内端部側を中空軸5の開口部から中空軸5に嵌合圧入することにより中空軸5に固定し、片方突出型の出力軸を構成するものである。
このように、中実軸アダプター6を、中空軸5へ圧入嵌合し固定することで、スペーサやボルトなどが必要としない構造とすることができる。
なお、図3では、中実軸アダプター6が右方へ突出する場合を示したが、中実軸アダプター6の取り付け位置を変えることにより左右どちらの方向にも突出するよう組立てることができる。
【0011】
実施の形態4.
図4は、この発明の実施の形態4である直交型減速機の減速機出力軸部分の構造を示した断面図である。
この実施の形態4は、出力軸が左右両側へ突出するタイプの機種に適用されるものである。
すなわち、実施の形態4の固定機構は、中実軸アダプター6の一方の突出端部に設けられ中空軸5の一方の開口部で係止された係合鍔部61、中実軸アダプター5の他方の突出端外周部に設けられ中空軸5の他方の開口部で係止されたC型止め輪62などから構成され、中実軸アダプター6は、係合鍔部61とスペーサ63間で挟持され中空軸5への装着が行われる。
このように構成することにより、図8に示された従来の両方突出型中実形状の出力軸と同様の両方突出型出力軸が構成され、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1である直交型減速機の減速機出力軸部分の構造を示した断面図である。
【図2】この発明の実施の形態2である直交型減速機の減速機出力軸部分の構造を示した断面図である。
【図3】この発明の実施の形態3である直交型減速機の減速機出力軸部分の構造を示した断面図である。
【図4】この発明の実施の形態4である直交型減速機の減速機出力軸部分の構造を示した断面図である。
【図5】従来の直交型減速機の中空出力軸を採用した機種の構造図である。
【図6】従来の直交型減速機の中実出力軸で出力軸が右側へ突出した機種の構造図である。
【図7】従来の直交型減速機の中実出力軸で出力軸が左側へ突出した機種の構造図である。
【図8】従来の直交型減速機の中実出力軸で出力軸が左右両側へ突出した機種の構造図である。
【符号の説明】
【0013】
1 ケース 2 ケース
3 軸受 4 軸受
5 中空軸 6 中実軸アダプター
60 キー 61 係合鍔部
62 C型止め輪 63 スペーサ
64 ボルト 7 ギヤー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にギヤーを有しギヤーケース内に回転自在に支承された中空軸、及びこの中空軸に回り止めを施し嵌挿された中実軸アダプターを備え、上記中実軸アダプターは、両端部、又は何れか一方の端部が上記中空軸の外部に突出されると共に固定機構で上記中空軸に固定されることにより出力軸を構成したことを特徴とする減速機。
【請求項2】
外周面にギヤーを有しギヤーケース内に回転自在に支承された中空軸、及びこの中空軸に何れか一方の端部が上記中空軸の外部に突出するよう嵌挿され固定機構により上記中空軸に固定された中実軸アダプターを備え、上記固定機構は、上記中実軸アダプターの突出端部に設けられ上記中空軸の開口部で係止された係合鍔部と、上記中実軸アダプターの挿入端部側の中空軸内に設けられたスペーサと、このスペーサを介し上記中空軸内に挿入され上記中実軸アダプターの内端面に螺入されたボルトとを有し、上記ボルトの締め付けにより上記係合鍔部と上記スペーサ間で上記中実軸アダプターを上記中空軸に固定して、片方突出型の出力軸を構成したことを特徴とする減速機。
【請求項3】
外周面にギヤーを有しギヤーケース内に回転自在に支承された中空軸、及びこの中空軸に何れか一方の端部が上記中空軸の外部に突出するよう嵌挿され固定機構により上記中空軸に固定された中実軸アダプターを備え、上記固定機構は、上記中実軸アダプターの突出端部に設けられ上記中空軸の一方の開口部で係止された係合鍔部と、上記中空軸の他方の開口部で係止されたスペーサと、このスペーサを介し上記中空軸内に挿入され上記中実軸アダプターの内端面に螺入されたボルトとを有し、上記ボルトの締め付けにより上記係合鍔部と上記スペーサ間で上記中実軸アダプターを上記中空軸に固定して、片方突出型の出力軸を構成したことを特徴とする減速機。
【請求項4】
外周面にギヤーを有しギヤーケース内に回転自在に支承された中空軸、及びこの中空軸に何れか一方の端部が上記中空軸の外部に突出するよう嵌挿され固定機構により上記中空軸に固定された中実軸アダプターを備え、上記固定機構は、上記中実軸アダプターの突出端部に設けられ上記中空軸の開口部で係止された係合鍔部を有し、上記中実軸アダプターを上記中空軸の開口部から上記中空軸に嵌合圧入することにより上記中実軸アダプターを上記中空軸に固定して、片方突出型の出力軸を構成したことを特徴とする減速機。
【請求項5】
外周面にギヤーを有しギヤーケース内に回転自在に支承された中空軸、及びこの中空軸に両端部が上記中空軸の両端外部に突出するよう嵌挿され固定機構により上記中空軸に固定された中実軸アダプターを備え、上記固定機構は、上記中実軸アダプターの一方の突出端部に設けられ上記中空軸の一方の開口部で係止された係合鍔部と、上記中実軸アダプターの他方の突出端部に設けられ上記中空軸の他方の開口部で係止されたC型止め輪とを有し、上記係合鍔部と上記C型止め輪とにより上記中実軸アダプターを上記中空軸に固定して、両方突出型の出力軸を構成したことを特徴とする減速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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