説明

減速装置

【課題】 突起部の位置が異なる交換用のキャリアを用いる場合でも、プレートの交換を不要にする。
【解決手段】 遊星歯車減速機構16を構成する1枚のプレート21に、キャリア20の各突起部20Bが挿嵌される第1の突起部挿嵌孔22と、交換用のキャリア25の各突起部25Bが挿嵌される第2の突起部挿嵌孔24とを設ける。これにより、キャリア20と交換用のキャリア25とを交換して用いる場合でも、プレート21に設けた第1の突起部挿嵌孔22をキャリア20の各突起部20Bに挿嵌し、プレート21に設けた第2の突起部挿嵌孔24を交換用のキャリア25の各突起部25Bに挿嵌することにより、キャリア20に支持された遊星歯車18と、交換用のキャリア25に支持された遊星歯車26とを、1枚の共通なプレート21によって軸方向に抜止めすることができ、部品点数の削減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械に搭載される旋回装置、走行装置等に好適に用いられる減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル、油圧クレーン等の旋回式の建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とにより大略構成されている。そして、下部走行体を走行させる走行装置、上部旋回体を旋回させる旋回装置等には、回転源の出力を増大するための遊星歯車式の減速装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−337400号公報
【0004】
この種の従来技術による減速装置は、内周側に内歯が設けられた筒状のハウジングと、該ハウジング内に設けられ回転源の回転を減速する遊星歯車減速機構とを備え、該遊星歯車減速機構は、太陽歯車と、該太陽歯車とハウジングの内歯とに噛合し太陽歯車の周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車と、該各遊星歯車を回転可能に支持する複数の突起部が設けられたキャリアと、該キャリアの突起部に取付けられ各遊星歯車を軸方向に抜止めするプレートとにより構成されている。
【0005】
この場合、キャリアに設けられた各突起部の先端面には雌ねじ穴が螺設され、プレートには各突起部の雌ねじ穴に対応する複数のボルト挿通孔が形成されている。そして、キャリアの各突起部に軸受を介して遊星歯車を取付けた状態で、各突起部の先端面にボルトを用いてプレートを固定することにより、このプレートによって各遊星歯車を軸方向に抜止めする構成となっている。
【0006】
そして、モータ等によって太陽歯車を回転させると、太陽歯車の周囲を各遊星歯車が自転しつつ公転し、この遊星歯車の公転力がキャリアに伝わることにより、太陽歯車の回転を減速し、大きなトルクをもってキャリアを回転させることができる。この場合、太陽歯車の歯数と各遊星歯車の歯数との歯数比に応じて、遊星歯車減速機構の減速比率が設定され、所望のトルクをもってキャリアを回転させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来技術による減速装置では、1枚のプレートに対し、キャリアに設けられた複数の突起部と同じ数だけのボルト挿通孔が形成されている。このため、太陽歯車と遊星歯車との歯数比を変えて遊星歯車減速機構の減速比率を変化させるため、各突起部の位置が異なる交換用のキャリアを用いる場合には、この交換用のキャリアに設けられた各突起部の雌ねじ穴に対応するボルト挿通孔をもった他のプレートを用いる必要がある。従って、太陽歯車と遊星歯車との歯数比を変えるときには、キャリアのみならず、プレートも同時に交換しなければならず、部品点数が増大してしまうという問題がある。
【0008】
また、従来技術による減速装置では、キャリアに設けられた各突起部の先端面にボルトを用いてプレートを固定し、各突起部に支持された遊星歯車をプレートによって軸方向に抜止めしている。この場合、減速装置の作動時において、各遊星歯車は、通常、軸方向への微小な移動を生じながら太陽歯車の周囲を自転しつつ公転しており、プレートには各遊星歯車からの軸方向への力が常に作用している。このため、プレートを固定するボルトに対して軸方向への力が繰返し作用することにより、このボルトが緩みを生じ、キャリア(各突起部)からプレートが離脱してしまうという問題がある。
【0009】
さらに、従来技術による減速装置では、キャリアの各突起部に軸受を介して遊星歯車を支持した状態で、各突起部の先端面にプレートを固定することにより、プレートによって軸受が全周に亘って覆われることになる。このため、例えば減速装置の保守、点検時に軸受に対する給脂作業を行うときには、キャリアの各突起部からプレートを取外して軸受を露出させる必要があり、この軸受に対する給脂作業の作業性が低下してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、太陽歯車と遊星歯車との歯数比を変えるために各突起部の位置が異なる交換用のキャリアを用いる場合でも、プレートの交換を不要にでき、部品点数を削減することができる減速装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため本発明は、内周側に内歯が設けられた筒状のハウジングと、該ハウジング内に設けられ回転源の回転を減速する遊星歯車減速機構とを備え、該遊星歯車減速機構は、太陽歯車と、該太陽歯車と前記内歯とに噛合し前記太陽歯車の周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車と、該各遊星歯車を回転可能に支持する複数の突起部が設けられたキャリアと、該キャリアの各突起部に取付けられ前記各遊星歯車を軸方向に抜止めするプレートとにより構成してなる減速装置に適用される。
【0012】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記プレートには、所定の直径を有する円周上に配置され前記キャリアの各突起部が挿嵌される複数の第1の突起部挿嵌孔と、該第1の突起部挿嵌孔が配置された円周とは異なる直径を有する円周上に配置され交換用のキャリアに設けられた複数の突起部が挿嵌される複数の第2の突起部挿嵌孔とを設けたことにある。
【0013】
請求項2の発明は、前記第2の突起部挿嵌孔は、前記第1の突起部挿嵌孔に前記キャリアの突起部を挿嵌した状態で当該突起部と前記遊星歯車との間に設けられた軸受の一部を覗くことができる位置に設ける構成としたことにある。
【0014】
請求項3の発明は、前記第1の突起部挿嵌孔の周縁部には、前記キャリアの突起部と遊星歯車との間に設けられた軸受の一部を覗くことができる切欠部を設け、前記第2の突起部挿嵌孔の周縁部には、前記交換用のキャリアに設けられた突起部と遊星歯車との間に設けられる軸受の一部を覗くことができる切欠部を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、キャリアに設けられた各突起部をプレートの第1の突起部挿嵌孔に挿嵌することにより、これら各突起部に支持された遊星歯車をプレートによって軸方向に抜止めすることができる。また、太陽歯車と遊星歯車との歯数比を変えるため、突起部の位置が異なる交換用のキャリアを用いた場合には、当該交換用のキャリアに設けられた各突起部をプレートの第2の突起部挿嵌孔に挿嵌することにより、遊星歯車を軸方向に抜止めすることができる。このように、太陽歯車と遊星歯車との歯数比を変るために、突起部の位置が異なる2種類のキャリアを交換して用いる場合でも、これら2種類のキャリアの突起部に支持された遊星歯車を、それぞれ1枚の共通なプレートによって軸方向に抜止めすることができるので、例えば2種類のキャリアに対応する2枚のプレートを用意する必要がなく、この分、部品点数の削減を図ることができる。
【0016】
また、第1の突起部挿嵌孔をキャリアの各突起部に挿嵌したときには、第2の突起部挿嵌孔に作業者の指等を挿入することによりプレートを確実に把持することができ、第2の突起部挿嵌孔を交換用のキャリアの各突起部に挿嵌したときには、第1の突起部挿嵌孔に作業者の指を挿入することによりプレートを確実に把持することができる。これにより、ハウジング内に遊星歯車減速機構を組付けるときに、第1の突起部挿嵌孔、または第2の突起部挿嵌孔を利用してプレートを確実に把持し、遊星歯車減速機構全体を安定して保持することができるので、組付け作業の作業性を高めることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、プレートの第1の突起部挿嵌孔をキャリアの突起部に挿嵌したときには、キャリアの突起部と遊星歯車との間に設けられた軸受の一部を、第2の突起部挿嵌孔を通じて覗くことができる。このため、第2の突起部挿嵌孔を通じて軸受に潤滑油を供給することにより、軸受の寿命を延ばすことができ、減速装置の信頼性を高めることができる。また、軸受に対する給脂を行うときにプレートを取外す必要がないので、この給脂作業の作業性を高めることができる。
【0018】
一方、プレートの第2の突起部挿嵌孔を交換用のキャリアの突起部に挿嵌したときには、交換用のキャリアの突起部と遊星歯車との間に設けられた軸受の一部を、第1の突起部挿嵌孔を通じて覗くことができるので、第1の突起部挿嵌孔を通じて軸受に潤滑油を供給することにより、軸受の寿命を延ばすことができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、第1の突起部挿嵌孔の周縁部に切欠部を設けることにより、例えばキャリアの突起部と遊星歯車との間に設けられた軸受に対し、切欠部を通じて潤滑油を給脂することができる。また、第2の突起部挿嵌孔の周縁部に切欠部を設けることにより、例えば他のキャリアの突起部と遊星歯車との間に設けられた軸受に対し、切欠部を通じて潤滑油を供給することができる。このため、軸受を常時適正に潤滑することにより、軸受の寿命を延ばすことができ、減速装置の信頼性を高めることができる。また、プレートを取外すことなく軸受に対する給脂を行うことができるので、この給脂作業の作業性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る減速装置の実施の形態を、油圧ショベルの旋回装置に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
まず、図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示し、図中、1は油圧ショベルの下部走行体と上部旋回体(いずれも図示せず)との間に設けられた旋回輪を示している。ここで、旋回輪1は、下部走行体側の丸胴2に固着された内輪1Aと、上部旋回体側の旋回フレーム3に固着された外輪1Bと、内輪1Aと外輪1Bとの間に配設された複数の鋼球1C(1個のみ図示)とからなり、内輪1Aの内周側には全周に亘って内歯1Dが形成されている。そして、旋回フレーム3に固着された外輪1Bが内輪1Aの周囲を回転することにより、上部旋回体が下部走行体上で旋回する構成となっている。
【0022】
4は下部走行体と上部旋回体との間に設けられた旋回装置で、該旋回装置4は、旋回輪1に回転力を伝達することにより上部旋回体(旋回フレーム3)を下部走行体(丸胴2)上で旋回させるものである。ここで、旋回装置4は、回転源としての油圧モータ5と、該油圧モータ5のモータ軸5Aの回転を減速し、旋回輪1に大きな回転力(トルク)を伝達する後述の減速装置11とにより大略構成されている。
【0023】
11は油圧モータ5(モータ軸5A)の回転を減速する減速装置で、該減速装置11は、後述のハウジング12、各遊星歯車減速機構16,27、出力軸32等により構成されている。
【0024】
12は減速装置11の外殻をなす筒状のハウジングで、該ハウジング12は、旋回フレーム3の上面側にボルト13を用いて固着された段付き円筒状の下側ハウジング12Aと、該下側ハウジング12A上にボルト14を用いて固着された段付き円筒状の上側ハウジング12Bとにより大略構成されている。
【0025】
そして、上側ハウジング12Bの上端側には径方向の外側に突出するブラケット部12Cが設けられ、このブラケット部12Cにボルト15を用いて油圧モータ5のケーシング5Bが取付けられる構成となっている。また、上側ハウジング12Bの内周側には、全周に亘って内歯(リングギヤ)12Dが形成され、この内歯12Dは後述の各遊星歯車18、各遊星歯車29が噛合するものである。
【0026】
16は油圧モータ5の下側に位置してハウジング12内に設けられた1段目の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構16は、後述の太陽歯車17、各遊星歯車18、キャリア20、プレート21等により構成されている。
【0027】
17は油圧モータ5のモータ軸5Aにスプライン結合された太陽歯車で、該太陽歯車17は、後述の太陽歯車28上に回転可能に配置されている。そして、太陽歯車17は、油圧モータ5のモータ軸5Aと一体に回転し、この回転を後述の各遊星歯車18に伝達するものである。
【0028】
18は太陽歯車17とハウジング12の内歯12Dとに噛合する3個の遊星歯車で、これら各遊星歯車18は、後述するキャリア20の各突起部20Bに、軸受19を介して回転可能に支持されている。そして、各遊星歯車18は、太陽歯車17が回転することにより、該太陽歯車17の周囲を自転しつつ公転するものである。
【0029】
20は各遊星歯車18を回転可能に支持するキャリアで、該キャリア20は、図2ないし図4に示すように、内歯12Dの歯先円径よりも小径な円板状の支持板20Aと、該支持板20Aの上面側に突設された円柱状の3本の突起部20Bとにより構成され、これら各突起部20Bは、基端側(下端側)のみが支持板20Aによって片持ち支持されている。また、各突起部20Bの先端側(上端側)には、全周に亘って環状溝20Cが形成され、この環状溝20Cには後述の止め輪23が取付けられる構成となっている。
【0030】
一方、支持板20Aの中心部には穴スプライン部20Dが形成され、この穴スプライン部20Dは後述の太陽歯車28にスプライン結合される構成となっている。そして、キャリア20は、各突起部20Bによって遊星歯車18を回転可能に支持し、各遊星歯車18が太陽歯車17の周囲を公転することにより回転し、この回転を太陽歯車28に伝達するものである。
【0031】
21はキャリア20の各突起部20Bの先端側に取付けられたプレートで、該プレート21は、各突起部20Bに支持された遊星歯車18を軸方向に抜止めするものである。ここで、プレート21は、図2ないし図4に示すように、キャリア20の支持板20Aよりも僅かに小径な円板として形成され、その中心部には、モータ軸5Aが挿通される軸挿通孔21Aが穿設されている。また、プレート21には、後述する第1の突起部挿嵌孔22と第2の突起部挿嵌孔24とが、軸挿通孔21Aを取囲んで形成されている。
【0032】
22,22,…はプレート21に穿設された複数(例えば3個)の第1の突起部挿嵌孔で、これら第1の突起部挿嵌孔22は、キャリア20に設けられた各突起部20Bの先端側が挿嵌されるものである。ここで、図3に示すように、各第1の突起部挿嵌孔22は、プレート21に設けられた軸挿通孔21Aの孔中心Oを中心とする直径D1の円周C1上に配置され、周方向に均等な間隔(例えば120度)をもって形成されている。
【0033】
そして、キャリア20の各突起部20Bに、軸受19を介して遊星歯車18を回転可能に取付けた状態で、プレート21に穿設された各第1の突起部挿嵌孔22が、各突起部20Bの先端側に挿嵌される構成となっている。
【0034】
23,23,…はキャリア20の各突起部20Bに形成された環状溝20Cに設けられた止め輪で、これらの止め輪23は、例えばC型止め輪により構成され、キャリア20の各突起部20Bに対し、プレート21を軸方向に抜止めするものである。この場合、環状溝20Cと止め輪23との間には、止め輪23を容易に装着するために軸方向に僅かな隙間が形成され、この隙間分だけプレート21が軸方向に僅かに移動することにより、各遊星歯車18からプレート21に作用する軸方向の力を吸収することができる構成となっている。
【0035】
このため、例えば従来技術のように、キャリアの突起部先端にボルトを用いてプレートを固定する場合に比較して、ボルトの緩みによってキャリアからプレートが離脱する不具合を回避することができ、止め輪23によってプレート21をキャリア20に対して軸方向に確実に抜止めすることができる構成となっている。
【0036】
24,24,…は各第1の突起部挿嵌孔22とは異なる位置でプレート21に穿設された複数(例えば3個)の第2の突起部挿嵌孔で、これら第2の突起部挿嵌孔24は、後述する交換用のキャリア25に設けられた各突起部25Bの先端側が挿嵌されるものである。ここで、図3に示すように、各第2の突起部挿嵌孔24は、プレート21に設けられた軸挿通孔21Aの孔中心Oを中心とし、第1の突起部挿嵌孔22が配置された円周C1の直径D1よりも大きな直径D2を有する円周C2上に配置され、周方向に均等な間隔(例えば120度)をもって形成されている。
【0037】
このように、プレート21に設けられた第1の突起部挿嵌孔22と第2の突起部挿嵌孔24とは、それぞれ軸挿通孔21Aの孔中心Oを中心とし直径が異なる同心状の円周C1、C2上に配置され、互いに均等な角度間隔(例えば60度)をもって交互に配置されている。
【0038】
25は交換用のキャリアで、交換用のキャリア25は上述のキャリア20と同様に構成され、図5及び図6に示すように、円板状の支持板25Aと、円柱状の3本の突起部25Bとからなっている。また、各突起部25Bの先端側には全周溝25Cが形成され、支持板25Aの中心部には穴スプライン部25Dが形成されている。
【0039】
ここで、交換用のキャリア25の各突起部25Bには、上述した遊星歯車18とは歯数が異なる遊星歯車26が、軸受19を介して回転可能に支持されるようになっている。そして、上述のキャリア20に支持された遊星歯車18と太陽歯車17との歯数比を、交換用のキャリア25に支持された遊星歯車26と太陽歯車(図示せず)との歯数比に変えることにより、1段目の遊星歯車減速機構16の減速比率を変えることができる構成となっている。
【0040】
そして、キャリア20に代えて交換用のキャリア25を用いたときには、図5に示すように、交換用のキャリア25の各突起部25Bに、軸受19を介して遊星歯車26を回転可能に取付けた状態で、プレート21に穿設された各第2の突起部挿嵌孔24が、各突起部25Bの先端側に挿嵌される。この状態で、各突起部25Bの先端側に止め輪23を取付けることにより、遊星歯車26をプレート21によって軸方向に抜止めすることができる。
【0041】
このように、1段目の遊星歯車減速機構16の減速比率を変えるため、キャリア20と交換用のキャリア25とを交換して用いる場合でも、プレート21に設けた第1の突起部挿嵌孔22をキャリア20の各突起部20Bに挿嵌し、プレート21に設けた第2の突起部挿嵌孔24を交換用のキャリア25の各突起部25Bに挿嵌することにより、キャリア20に支持された遊星歯車18と、交換用のキャリア25に支持された遊星歯車26とを、1枚の共通なプレート21によって軸方向に抜止めすることができる構成となっている。
【0042】
そして、図3に示すように、プレート21に設けられた第1の突起部挿嵌孔22を、遊星歯車18を支持するキャリア20の各突起部20Bに挿嵌したときには、第2の突起部挿嵌孔24内に、作業者の指等を挿入して引掛けることができる。これにより、図7に示すように、太陽歯車17、遊星歯車18、キャリア20、プレート21等からなる1段目の遊星歯車減速機構16をハウジング12内に組付けるときに、作業者は、第2の突起部挿嵌孔24を利用してプレート21を把持し、遊星歯車減速機構16全体を持上げることにより、この遊星歯車減速機構16の組付作業を容易に行うことができる構成となっている。
【0043】
一方、図5に示すように、プレート21に設けられた第2の突起部挿嵌孔24を、遊星歯車26を支持する交換用のキャリア25の各突起部25Bに挿嵌したときには、作業者は、プレート21の第1の突起部挿嵌孔22内に指等を挿入して引掛けることにより、プレート21を把持することができる構成となっている。
【0044】
27は1段目の遊星歯車減速機構16の下側に位置してハウジング12内に設けられた2段目(最終段)の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構27は、後述の太陽歯車28、各遊星歯車29、キャリア30等により構成されている。
【0045】
28は1段目のキャリア20の穴スプライン部20Dにスプライン結合された太陽歯車で、該太陽歯車28は、後述する出力軸32上に回転可能に配置されている。そして、太陽歯車28は、1段目のキャリア20と一体に回転し、この回転を後述の各遊星歯車29に伝達するものである。
【0046】
29は後述のキャリア30によって回転可能に支持された複数個(1個のみ図示)の遊星歯車で、これら各遊星歯車29は、ハウジング12の内歯12Dと太陽歯車28とに噛合している。そして、各遊星歯車29は、太陽歯車28が回転することにより、該太陽歯車28の周囲を自転しつつ公転するものである。
【0047】
30は各遊星歯車29を回転可能に支持するキャリアで、該キャリア30は、各遊星歯車29を軸方向から挟む上,下の支持板30A,30Bを有し、下側の支持板30Bの中心部には、穴スプライン部30Cが形成されている。そして、キャリア30の上,下の支持板30A,30Bには、複数本(1本のみ図示)のピン31の軸方向の両端側がそれぞれ固定されている。
【0048】
そして、キャリア30は各ピン31によって遊星歯車29を回転可能に支持し、各遊星歯車29が太陽歯車28の周囲を自転しつつ公転することにより、この遊星歯車29の公転力を出力軸32に伝達するものである。
【0049】
32はハウジング12内を軸方向に伸長して設けられた出力軸で、該出力軸32は、上側軸受33、下側軸受34を介して下側ハウジング12Aに回転可能に取付けられ、油圧モータ5の回転を、各遊星歯車減速機構16,27によって2段減速して出力するものである。
【0050】
ここで、出力軸32の軸方向の一側(上側)には、上側軸受33から上方に突出する軸スプライン部32Aが一体に設けられ、この軸スプライン部32Aは、2段目のキャリア30に設けられた穴スプライン部30Cにスプライン結合されるものである。また、出力軸32の軸スプライン部32Aと上側軸受33の内輪との間には、環状の与圧リング35が設けられ、該与圧リング35は、上側軸受33、下側軸受34を軸方向に与圧すると共に、上側軸受33に対して出力軸32を軸方向に抜止めするものである。
【0051】
36は出力軸32の下端側に一体に設けられたピニオンで、該ピニオン36は、ハウジング12から下方に突出し、旋回輪1の内歯1Dに噛合している。そして、ピニオン36は、遊星歯車減速機構16,27によって2段減速された出力軸32の回転を、旋回輪1の内輪1Aに伝達するものである。
【0052】
本実施の形態による減速装置11は上述の如き構成を有するもので、油圧モータ5のモータ軸5Aが回転すると、このモータ軸5Aの回転が遊星歯車減速機構16,27によって2段減速されて出力軸32に伝わり、ピニオン36は大きな回転力(トルク)をもって回転する。
【0053】
そして、ピニオン36が旋回輪1の内輪1Aに設けた内歯1Dと噛合しつつ内輪1Aに沿って公転し、このピニオン36の公転力がハウジング12を介して旋回フレーム3に伝わることにより、旋回フレーム3が丸胴2上で旋回する。
【0054】
ここで、図1に示す如く1段目の遊星歯車減速機構16に遊星歯車18を用いる場合には、図3に示すように、キャリア20の各突起部20Bに軸受19を介して遊星歯車18を取付ける。そして、プレート21に設けた第1の突起部挿嵌孔22を突起部20Bの先端側に挿嵌し、プレート21から突出した突起部20Bの先端側に止め輪23を取付けることにより、プレート21によって各遊星歯車18を軸方向に抜止めすることができる。
【0055】
一方、1段目の遊星歯車減速機構16の減速比率を変えるときには、キャリア20に支持された遊星歯車18とは歯数が異なる遊星歯車26を用いる。この場合には、図5に示すように、交換用のキャリア25の各突起部25Bに軸受19を介して遊星歯車26を取付ける。そして、プレート21に設けた第2の突起部挿嵌孔24を突起部25Bの先端側に挿嵌し、プレート21から突出した突起部25Bの先端側に止め輪23を取付けることにより、プレート21によって各遊星歯車26を軸方向に抜止めすることができる。
【0056】
このように、本実施の形態によれば、1枚のプレート21に、キャリア20の各突起部20Bが挿嵌される第1の突起部挿嵌孔22と、交換用のキャリア25の各突起部25Bが挿嵌される第2の突起部挿嵌孔24とを設ける構成としている。これにより、1段目の遊星歯車減速機構16の減速比率を変えるため、キャリア20と交換用のキャリア25とを交換して用いる場合でも、プレート21に設けた第1の突起部挿嵌孔22をキャリア20の各突起部20Bに挿嵌し、プレート21に設けた第2の突起部挿嵌孔24を交換用のキャリア25の各突起部25Bに挿嵌することにより、キャリア20に支持された遊星歯車18と、交換用のキャリア25に支持された遊星歯車26とを、1枚の共通なプレート21によって軸方向に抜止めすることができる。従って、キャリア20に対応するプレートと、交換用のキャリア25に対応するプレートとの2種類のプレートを別個に用意する必要がなく、この分、部品点数の削減を図ることができる。
【0057】
次に、本実施の形態では、1枚のプレート21に第1の突起部挿嵌孔22と第2の突起部挿嵌孔24とを設けることにより、1段目の遊星歯車減速機構16をハウジング12に組付けるときの作業性が向上できるようになっており、以下、この遊星歯車減速機構16の組付け作業について説明する。
【0058】
まず、1段目の遊星歯車減速機構16を組付ける前作業として、図7に示すように、ハウジング12の下側ハウジング12Aに、上側軸受33、下側軸受34を用いて出力軸32を回転可能に取付けた後、2段目の遊星歯車減速機構27を上側ハウジング12B内に挿入する。そして、遊星歯車減速機構27の各遊星歯車29を上側ハウジング12Bの内歯12Dに噛合させると共に、キャリア30の穴スプライン部30Cを出力軸32の軸スプライン部32Aに噛合(スプライン結合)させた後、太陽歯車28を上側ハウジング12B内に挿入し、各遊星歯車29に噛合させる。
【0059】
このようにして、ハウジング12内に出力軸32、2段目の遊星歯車減速機構27等を組付けた後、1段目の遊星歯車減速機構16を上側ハウジング12B内に挿入する。このとき、図3に示すように、遊星歯車減速機構16の各遊星歯車18を支持するキャリア20の各突起部20Bは、プレート21に設けられた第1の突起部挿嵌孔22に挿嵌されており、第2の突起部挿嵌孔24は空いている。
【0060】
このため、図7に示すように、作業者は、プレート21に設けられた第2の突起部挿嵌孔24に指等を挿入し、該プレート21を径方向から挟込むように把持する。これにより、遊星歯車減速機構16を上側ハウジング12Bの上方に持上げた状態で、各遊星歯車18をハウジング12の内歯12Dに噛合させることができる。この場合、遊星歯車減速機構16は、各遊星歯車18がハウジング12の内歯12Dに噛合した瞬間に、自重によって上側ハウジング12B内に落下しようとするが、作業者は、プレート21の第2の突起部挿嵌孔24に指等を引掛けることにより、遊星歯車減速機構16全体を保持することができるので、遊星歯車減速機構16が急激に落下して太陽歯車28等に衝突することがなく、これら遊星歯車減速機構16、太陽歯車28等を衝撃から保護することができる。
【0061】
そして、各遊星歯車18を上側ハウジング12Bの内歯12Dに噛合させた後には、キャリア20に設けた穴スプライン部20Dを太陽歯車28に噛合させるため、作業者は、第2の突起部挿嵌孔24を利用してプレート21を把持し、遊星歯車減速機構16全体を、上側ハウジング12B内で回転させつつ下方へと下ろしていく。
【0062】
このとき、作業者は、プレート21に設けた第2の突起部挿嵌孔24に指等を挿入して把持することにより、遊星歯車減速機構16全体を確実に保持することができるので、遊星歯車減速機構16を上側ハウジング12B内で回転させる作業と、上側ハウジング12B内に下ろす作業とを容易にかつ安全に行なうことができる。
【0063】
このようにして、遊星歯車減速機構16全体を上側ハウジング12B内で回転させ、キャリア20の穴スプライン部20Dを太陽歯車28に噛合させることにより、ハウジング12に対する遊星歯車減速機構16の組付作業が終了し、減速装置11を組立てることができる。
【0064】
かくして、本実施の形態によれば、遊星歯車減速機構16を構成する1枚のプレート21に、キャリア20の各突起部20Bが挿嵌される第1の突起部挿嵌孔22と、交換用のキャリア25の各突起部25Bが挿嵌される第2の突起部挿嵌孔24とを設ける構成としている。
【0065】
このため、遊星歯車減速機構16の減速比率を変えるため、キャリア20と交換用のキャリア25とを交換して用いる場合でも、プレート21に設けた第1の突起部挿嵌孔22をキャリア20の各突起部20Bに挿嵌し、プレート21に設けた第2の突起部挿嵌孔24を交換用のキャリア25の各突起部25Bに挿嵌することにより、キャリア20に支持された遊星歯車18と、交換用のキャリア25に支持された遊星歯車26とを、1枚の共通なプレート21によって軸方向に抜止めすることができる。従って、キャリア20に対応するプレートと、交換用のキャリア25に対応するプレートとの2種類のプレートを別個に用意する必要がなく、この分、部品点数の削減を図ることができる。
【0066】
また、キャリア20を用いる場合に、プレート21に設けた第1の突起部挿嵌孔22をキャリア20の突起部20Bに挿嵌したときには、作業者は、第2の突起部挿嵌孔24を利用してプレート21を把持することができる。一方、交換用のキャリア25を用いる場合に、プレート21に設けた第2の突起部挿嵌孔24を交換用のキャリア25の突起部25Bに挿嵌したときには、作業者は、第1の突起部挿嵌孔22を利用してプレート21を把持することができる。
【0067】
このため、ハウジング12内に1段目の遊星歯車減速機構16を組付けるときに、作業者は、プレート21に設けた第1の突起部挿嵌孔22または第2の突起部挿嵌孔24を利用して、遊星歯車減速機構16全体を安定して保持することができるので、ハウジング12に遊星歯車減速機構16を組付けるときの作業性を高めることができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、キャリア20の各突起部20Bに回転可能に支持された遊星歯車18をプレート21によって軸方向に抜止めした状態で、各突起部20Bの先端側に設けた環状溝20Cに止め輪23を取付けることにより、この止め輪23によってプレート21を軸方向に抜止めする構成としている。
【0069】
この場合、突起部20Bの環状溝20Cと止め輪23との間には、止め輪23を容易に装着するために軸方向に僅かな隙間が形成されているので、この隙間分だけプレート21が軸方向に僅かに移動することができる。このため、減速装置11の作動時に、各遊星歯車18からプレート21に対して軸方向への力が作用したとしても、この力をプレート21の移動によって吸収することができる。
【0070】
このため、例えば従来技術のように、キャリアの突起部先端にボルトを用いてプレートを固定する場合に比較して、ボルトの緩みによってキャリアからプレートが離脱する不具合を回避することができ、止め輪23によってプレート21をキャリア20に対して軸方向に確実に抜止めすることができる。
【0071】
次に、図8及び図9は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、第2の突起部挿嵌孔を、キャリアの突起部と遊星歯車との間に設けられた軸受の一部を覗くことができる位置に設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0072】
図中、41は本実施の形態によるプレートで、該プレート41は、第1の実施の形態によるプレート21と同様に、図1に示す1段目の遊星歯車減速機構16の一部を構成し、キャリア20の各突起部20Bに支持された遊星歯車18を軸方向に抜止めするものである。
【0073】
ここで、プレート41は、第1の実施の形態によるプレート21とほぼ同様に、キャリア20の支持板20Aよりも僅かに小径な円板として形成され、その中心部には軸挿通孔41Aが穿設されている。そして、プレート41には、軸挿通孔41Aを取囲んで後述する第1の突起部挿嵌孔42と第2の突起部挿嵌孔43とが形成されている。
【0074】
42,42,…はプレート41に穿設された複数(例えば3個)の第1の突起部挿嵌孔で、これら第1の突起部挿嵌孔42は、キャリア20に設けられた各突起部20Bの先端側が挿嵌されるものである。ここで、図8に示すように、各第1の突起部挿嵌孔42は、プレート41に設けられた軸挿通孔41Aの孔中心Oを中心とする直径D1の円周C1上に配置され、周方向に均等な間隔(例えば120度)をもって形成されている。
【0075】
43,43,…は各第1の突起部挿嵌孔42とは異なる位置でプレート41に穿設された複数(例えば3個)の第2の突起部挿嵌孔で、これら第2の突起部挿嵌孔43は、図6に示す交換用のキャリア25に設けられた各突起部25Bの先端側が挿嵌されるものである。そして、各第2の突起部挿嵌孔43は、プレート41に設けられた軸挿通孔41Aの孔中心Oを中心とし、第1の突起部挿嵌孔42が配置された円周C1の直径D1よりも大きな直径D2を有する円周C2上に配置され、周方向に均等な間隔(例えば120度)をもって形成されている。
【0076】
ここで、各第2の突起部挿嵌孔43は、それぞれ第1の突起部挿嵌孔42に近接した位置に配置されている。即ち、図8に示すように、第2の突起部挿嵌孔43は、第1の突起部挿嵌孔42にキャリア20の突起部20Bを挿嵌した状態で、突起部20Bと遊星歯車18との間に設けられた軸受19の一部を覗くことができ、また、遊星歯車18の歯先18Aとの間に径方向の隙間44が形成される位置に設けられている。
【0077】
本実施の形態による減速装置は上述の如きプレート41を有するもので、本実施の形態においても、1枚のプレート41に、キャリア20の各突起部20Bが挿嵌される第1の突起部挿嵌孔42と、交換用のキャリア25の各突起部25Bが挿嵌される第2の突起部挿嵌孔43とを設けることにより、キャリア20に対応するプレートと、交換用のキャリア25に対応するプレートとの2種類のプレートを別個に用意する必要がなく、部品点数の削減を図ることができる。
【0078】
しかも、本実施の形態によれば、プレート41に設けた第1の突起部挿嵌孔42をキャリア20の突起部20Bに挿嵌した状態で、当該突起部20Bと遊星歯車18との間に設けた軸受19の一部を、第2の突起部挿嵌孔43を通じて覗くことができる。このため、第2の突起部挿嵌孔43を通じて軸受19に潤滑油を供給することにより、軸受19の寿命を延ばすことができ、減速装置全体の信頼性を高めることができる。
【0079】
この場合、第2の突起部挿嵌孔43を通じて軸受19に対する給脂を行うことができるので、給脂作業時にキャリア20からプレート41を取外す必要がなく、給脂作業の作業性をも高めることができる。
【0080】
さらに、キャリア20の突起部20Bに支持された遊星歯車18の歯先18Aと、第2の突起部挿嵌孔43との間に径方向の隙間44が形成されるので、この隙間44内に作業者の指、治具等を挿入して第2の突起部挿嵌孔43の周縁部に引掛けることにより、プレート41を把持することができる。これにより、図1に示すハウジング12内に遊星歯車減速機構を組付けるときに、プレート41に設けた第2の突起部挿嵌孔43を利用して遊星歯車減速機構全体を保持することができ、この組付け作業の作業性を高めることができる。
【0081】
次に、図10ないし図12は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、第1の突起部挿嵌孔の周縁部と第2の突起部挿嵌孔の周縁部とに、軸受の一部を覗くことができる切欠部を設けたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0082】
図中、51は本実施の形態によるプレートで、該プレート51は、第1の実施の形態によるプレート21と同様に、図1に示す1段目の遊星歯車減速機構16の一部を構成し、キャリア20の各突起部20Bに支持された遊星歯車18を軸方向に抜止めするものである。
【0083】
ここで、プレート51は、第1の実施の形態によるプレート21とほぼ同様に、キャリア20の支持板20Aよりも僅かに小径な円板として形成され、その中心部には軸挿通孔51Aが穿設されている。そして、プレート51には、軸挿通孔51Aを取囲んで後述する第1の突起部挿嵌孔52と第2の突起部挿嵌孔53とが形成されている。
【0084】
52,52,…はプレート51に穿設された複数(例えば3個)の第1の突起部挿嵌孔で、これら第1の突起部挿嵌孔52は、キャリア20に設けられた各突起部20Bの先端側が挿嵌されるものである。ここで、図10に示すように、各第1の突起部挿嵌孔52は、プレート51に設けられた軸挿通孔51Aの孔中心Oを中心とする直径D1の円周C1上に配置され、周方向に均等な間隔(例えば120度)をもって形成されている。
【0085】
また、第1の突起部挿嵌孔52の周縁部には、軸挿通孔51Aの孔中心Oに向けて突出する半円形状の切欠部52Aが設けられている。これにより、図10に示すように、プレート51に設けた第1の突起部挿嵌孔52をキャリア20の突起部20Bに挿嵌した状態で、当該突起部20Bと遊星歯車18との間に設けられた軸受19の一部を、切欠部52Aを通じて覗くことができ、この切欠部52Aを通じて軸受19に潤滑油を供給することができる構成となっている。
【0086】
53,53,…は各第1の突起部挿嵌孔52とは異なる位置でプレート51に穿設された複数(例えば3個)の第2の突起部挿嵌孔で、これら第2の突起部挿嵌孔53は、図6に示す交換用のキャリア25に設けられた各突起部25Bの先端側が挿嵌されるものである。ここで、各第2の突起部挿嵌孔53は、プレート51に設けられた軸挿通孔51Aの孔中心Oを中心とし、第1の突起部挿嵌孔52が配置された円周C1の直径D1よりも大きな直径D2を有する円周C2上に配置され、周方向に均等な間隔(例えば120度)をもって形成されている。
【0087】
このように、プレート51に設けられた第1の突起部挿嵌孔52と第2の突起部挿嵌孔53とは、それぞれ軸挿通孔51Aの孔中心Oを中心とし直径が異なる同心状の円周C1、C2上に配置され、互いに均等な角度間隔(例えば60度)をもって交互に配置されている。
【0088】
また、第2の突起部挿嵌孔53の周縁部には、軸挿通孔51Aの孔中心Oに向けて突出する半円形状の切欠部53Aが設けられている。これにより、図12に示すように、プレート51に設けた第2の突起部挿嵌孔53を、交換用のキャリア25の突起部25Bに挿嵌した状態で、当該突起部25Bと遊星歯車26との間に設けられた軸受19の一部を、切欠部53Aを通じて覗くことができ、この切欠部53Aを通じて軸受19に潤滑油を供給することができる構成となっている。
【0089】
本実施の形態による減速装置は上述の如きプレート51を有するもので、1枚のプレート51にキャリア20の各突起部20Bが挿嵌される第1の突起部挿嵌孔52と、交換用のキャリア25の各突起部25Bが挿嵌される第2の突起部挿嵌孔53とを設けることによる基本的作用については、上述した第1の実施の形態と格別差異はない。
【0090】
然るに、本実施の形態によれば、図10に示すように、プレート51に設けた第1の突起部挿嵌孔52をキャリア20の突起部20Bに挿嵌した状態では、当該突起部20Bと遊星歯車18との間に設けた軸受19の一部を、第1の突起部挿嵌孔52に設けた切欠部52Aを通じて覗くことができる。このため、この切欠部52Aを通じて軸受19に潤滑油を供給することにより、軸受19の寿命を延ばすことができ、減速装置全体の信頼性を高めることができる。
【0091】
一方、図12に示すように、プレート51に設けた第2の突起部挿嵌孔53を交換用のキャリア25の突起部25Bに挿嵌した状態では、当該突起部25Bと遊星歯車26との間に設けた軸受19の一部を、第2の突起部挿嵌孔53に設けた切欠部53Aを通じて覗くことができる。このため、この切欠部53Aを通じて軸受19に潤滑油を供給することにより、軸受19の寿命を延ばすことができ、減速装置全体の信頼性を高めることができる。
【0092】
また、第1の突起部挿嵌孔52に設けた切欠部52A、または第2の突起部挿嵌孔53に設けた切欠部53Aを通じて軸受19に対する給脂を行うことができるので、給脂作業時にキャリア20からプレート51を取外す必要がなく、給脂作業の作業性をも高めることができる。
【0093】
なお、上述した各実施の形態では、キャリア20に、遊星歯車18を支持する円柱状の突起部20Bを一体形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばキャリアとは別部材からなる円柱状のピンを板状のキャリアに固定する構成としてもよい。
【0094】
また、上述した各実施の形態では、ハウジング12内に2段の遊星歯車減速機構16,27を設けた減速装置11を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばハウジング内に1段の遊星歯車減速機構を設ける構成としてもよく、ハウジング内に3段以上の遊星歯車減速機構を設ける構成としてもよい。
【0095】
さらに、上述した各実施の形態では、減速装置を油圧ショベルの旋回装置に適用した場合を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、例えば油圧ショベル等の下部走行体に搭載される走行装置、あるいは油圧クレーン等に搭載されるロープウインチ等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施の形態による減速装置を油圧ショベルの旋回装置に適用した状態で示す縦断面図である。
【図2】遊星歯車減速機構のキャリア、遊星歯車、プレート等を示す要部拡大の断面図である。
【図3】第1の実施の形態によるプレート、キャリア、遊星歯車等を図2中の矢示III―III方向からみた平面図である。
【図4】プレートとキャリアとを示す分解斜視図である。
【図5】プレート、交換用のキャリア、遊星歯車等を示す図3と同様な平面図である。
【図6】プレートと交換用のキャリアとを示す分解斜視図である。
【図7】ハウジング内に1段目の遊星歯車減速機構を組付ける状態を示す断面図である。
【図8】第2の実施の形態によるプレート、キャリア、遊星歯車等を示す図3と同様な平面図である。
【図9】プレートとキャリアとを示す分解斜視図である。
【図10】第3の実施の形態によるプレート、キャリア、遊星歯車等を示す図3と同様な平面図である。
【図11】プレートとキャリアとを示す分解斜視図である。
【図12】プレート、交換用のキャリア、遊星歯車等を示す図10と同様な平面図である。
【符号の説明】
【0097】
11 減速装置
12 ハウジング
12D 内歯
16,27 遊星歯車減速機構
17,28 太陽歯車
18,26,29 遊星歯車
19 軸受
20,30 キャリア
20B 突起部
21,41,51 プレート
22,42,52 第1の突起部挿嵌孔
24,43,53 第2の突起部挿嵌孔
25 交換用のキャリア
25B 突起部
44 隙間
52A,53A 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側に内歯が設けられた筒状のハウジングと、該ハウジング内に設けられ回転源の回転を減速する遊星歯車減速機構とを備え、該遊星歯車減速機構は、太陽歯車と、該太陽歯車と前記内歯とに噛合し前記太陽歯車の周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車と、該各遊星歯車を回転可能に支持する複数の突起部が設けられたキャリアと、該キャリアの各突起部に取付けられ前記各遊星歯車を軸方向に抜止めするプレートとにより構成してなる減速装置において、
前記プレートには、所定の直径を有する円周上に配置され前記キャリアの各突起部が挿嵌される複数の第1の突起部挿嵌孔と、該第1の突起部挿嵌孔が配置された円周とは異なる直径を有する円周上に配置され交換用のキャリアに設けられた複数の突起部が挿嵌される複数の第2の突起部挿嵌孔とを設ける構成としたことを特徴とする減速装置。
【請求項2】
前記第2の突起部挿嵌孔は、前記第1の突起部挿嵌孔に前記キャリアの突起部を挿嵌した状態で当該突起部と前記遊星歯車との間に設けられた軸受の一部を覗くことができる位置に設ける構成としてなる請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記第1の突起部挿嵌孔の周縁部には、前記キャリアの突起部と遊星歯車との間に設けられた軸受の一部を覗くことができる切欠部を設け、前記第2の突起部挿嵌孔の周縁部には、前記交換用のキャリアに設けられた突起部と遊星歯車との間に設けられる軸受の一部を覗くことができる切欠部を設ける構成としてなる請求項1に記載の減速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−228843(P2009−228843A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76934(P2008−76934)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】