説明

温冷治療器

【課題】鍼,加温冷却,指圧等による壺療法を一つの器具で行うことが出来同時に施術に際し薬効成分を患部に吹き当てることも可能な熱治療器を得ることを目的とする。
【解決手段】内部を加熱又は冷却室とした中空体よりなるにぎり部2の下部に、生薬室8を有する突出部3を設け、該突出部3から下方向に向け円錐形キャップ体4を突出して螺合し、該キャップ体4には、前記生薬室8と連通している押圧子挿入用小室11を設け、キャップ体4の頭頂部14には押圧子挿入用小室11と連通する吹出口15を設けてなる。この構成によって、にぎり部2内の加熱又は冷却室内6に熱源となる加熱材或いは冷却手段となる冷媒を挿入することにより器具全体を加熱又は冷却し、にぎり部2をにぎってキャップ体4の頭頂部14を患部に押し当てることで患部に温冷却効果を与え、また、加熱時には生薬の薬効成分を揮発させ指圧効果と薬効効果とを得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍼,加温冷却,指圧マッサージ等による経穴療法或はオイルの塗布を一つの器具で行うことが出来同時に施術に際し薬効成分を患部に吹き当てることも可能な温冷治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
鍼,灸等の温熱治療は、一般に各治療を目的とした器具により行われており、例えば鍼を皮膚に刺し込むような器具にあっては、筒状体の外筒内に挿入した内筒の先端部に装着した鍼を、内筒を皮膚に押し当てることにより皮膚を刺激し(特許文献1参照)ているが、文献1の用具では皮膚に鍼を刺す以外のことは出来ない。また、温灸器にあっては、底部に通気孔を有する蓋付の容器の内部に薬草,蓄熱材等を入れ、容器の底を患部に当てて発生した蒸気を容器下部の穴から吹き出し患部を温める(特許文献2参照)ものがあるが、この温灸器も温灸作用のみが行えるもので鍼,指圧の効果は得られない。
即ち、いずれの装置にあっても特定された1つの操作しか行うこは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−291839号公報
【特許文献2】特開2007−144082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の点に鑑みて、本発明は1つの治療器であっても必要に応じ鍼による治療,患部経絡の温冷却,患部への指圧マッサージ等の処置、薬効成分を加熱により揮発する生薬の薬効成分の患部への供与を行なうことが出来る治療器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の温冷治療器は、内部を加熱又は冷却室とした中空体よりなるにぎり部の下部に、生薬室を有する突出部を設け、該突出部から下方向に向け円錐形キャップ体を突出し前記突出部と円錐形キャップ体とを一体に螺合し、該円錐形キャップ体内には、前記生薬室と円錐形キャップ体頭頂部の吹出口とに連通している押圧子挿入用小室を設け、該押圧子挿入用小室には、摺動体と突子とよりなる押圧子を配し、該押圧子を突子先端が吹出口より円錐形キャップ体外部に突出するよう付勢して設けてなる。この構成によって、にぎり部内の加熱又は冷却室内に熱源となる加熱材或いは冷却手段となる冷媒を挿入することにより器具全体を加熱又は冷却し、にぎり部をにぎって円錐形キャップ体の頭頂部を患部に押し当てマッサージすることで患部に温冷却効果を与え、また、患部を強く押すことで指圧効果を発揮させることになる。
【0006】
また、本発明温冷治療器は、突子先端が頭頂部の吹出口より円錐形キャップ体外部に突出するよう付勢して押圧子挿入用小室内に押圧子を配してなり、押圧子の皮膚に対する鍼作用に加え突子先端のキャップ体の内外部への出没動作による押圧子のポンプ作用により、前記小室内に充満した薬効成分,芳香成分等の皮膚への吹き当て等を行うことを特徴とする
【発明の効果】
【0007】
本発明温冷治療器は、内部を加熱又は冷却室とした中空体よりなるにぎり部の下部に、生薬室を有する突出部を設け、該突出部から下方向に向け円錐形キャップ体を突出し前記突出部と円錐形キャッブ体とを一体に螺合し、該円錐形キャップ体内には、前記生薬室と円錐形キャップ体頭頂部の吹出口とに連通している押圧子挿入用小室を設け、該押圧子挿入用小室には、摺動体と突子とよりなる押圧子を配し、該押圧子を突子先端が吹出口より円錐形キャップ体外部に突出するよう付勢して設けてなるものであるため、温冷却に使用するときは、にぎり部内に熱源或いは冷却源を入れることで治療器全体を温め或いは冷却し、にぎり部を持って円錐形キャップ体を患部に押し当てることで患部を温め或いは冷却することが出来、指圧器として使用するときはにぎり部を持って円錐形キャップ体の頭頂部を指圧と同様に患部に押し当てることで治療を行う。指で患部を押すことによる指圧療法では、力を入れることによって指を痛めることがあるが、本発明品を用いるときは、にぎり部を手の掌で押さえる状態で患部を押すために、充分に患部に対し力を加えることが出来るばかりでなく指を痛めることもない。
【0008】
また、鍼治療を行う際には、突子先端が吹出口より円錐形キャップ体外部に突出するよう付勢し押圧子挿入用小室内に押圧子を配し、前記押圧子先端を患部に押し当て或いは押圧子先端を鍼とし皮膚内に刺すことにより治療が出来る。
よって、本発明治療器は1つの器具で鍼治療,温冷却治療,指圧マッサージ治療,皮膚面へのオイルの塗布等の複数種の治療を行うことが出来る。その手段として、別途キャップ体には吹出口15に挿入された押圧子が組込まれており、押圧子を随意に差し替えることで、ソフトにまた皮膚面にオイルが浸され滑らかにマッサージが行える。
【0009】
更に上記指圧,鍼等の加熱治療等の際に生薬室内に植物由来のもの,動物由来のもの,菌由来のもの,鉱物由来のもの等の生薬の内、加熱により薬効成分を揮発出来る生薬を封入しておくことにより生薬の薬効成分を揮発させることが出来、上記治療中に押圧子のポンピング作用により上記成分が頭頂部通気孔等から治療器外に流出し皮膚に触れ薬効を発揮する。生薬の代りに芳香剤を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明温熱治療器の側面図。
【図2】同平面図。
【図3】同底面図。
【図4】図2のA−A線縦断面図。
【図5】図1に示す温熱治療器の断面図。
【図6】円錐形キャップの他の例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明温冷治療器の実施形態を図面と共に次に説明する。
本発明温冷治療器1は、片方の手で把握して患部に押し当て治療操作をすることを可能にしたもので、患部の温冷却,指圧マッサージ,鍼等のツボ療法を1つの器具で行うことが出来、かつ、加熱時には生薬の薬効成分を揮発させ得、またオイル等を皮膚に塗布することも出来る温熱冷却式の治療器である。
【0012】
本発明温冷治療器1は、にぎり部2及び、にぎり部2に一体に設けた突出部3から突出して設けた円錐形キャップ体4及びキャップ体4に内装した押圧子5を有する。にぎり部2は底部材2aと蓋部材2bとを螺合し、内部を加熱又は冷却室6とした球状体をなし、内部に加熱剤或いは冷却剤を封入することで、にぎり部2を加熱又は冷却すると共に温冷治療器1全体を加熱又は冷却する。7は通気孔である。
【0013】
にぎり部2の底部材2aから下方に突出させた突出部3には円錐形キャップ体4を螺合固定する。突出部3内部には生薬室8を設け、加熱することで薬効成分を発散させようとする生薬を封入出来るようにしている。生薬は植物由来のもの,動物由来のもの,菌由来のもの,鉱物由来のもの等適宜使用する。9は生薬室8の蓋体を兼ねた目皿で、後述のスプリング10の受部材ともなっている。
【0014】
突出部3に螺合固定した円錐形キャップ体4には、押圧子挿入用小室11が設けられ小室11内内部に押圧子5及びスプリング10が封入されている。押圧子5は円板状の摺動体12の中央下部に突出させた突子13を円錐形キャップ体4の頭頂部14の吹出口15から頭頂部14外に突出させ、目皿9と摺動体12との間に介在するスプリング10の弾発力により突子13が常に突出する方向に付勢されている。
【0015】
本発明温熱治療器1を温灸治療として使用する場合、にぎり部2の加熱又は冷却室6内に適宜の熱源、例えば、2種以上の化学物質の混合により所定時間所定温度に発熱するような発熱剤或いは懐炉灰などを入れ発熱させ、にぎり部2を発熱させる。この際、温度の高まりに応じて、断熱のためにぎり部2を布で被う或いは袋を着けるなどする。
【0016】
にぎり部2の熱は温冷治療器1全体に及び円錐形キャップ体4が所定の温度になったときに治療を開始する。即ち、にぎり部2を持ち、円錐形キャップ体4の頭頂部14を押圧子5の突子13と共に患部に押し当てる。押し当てる際の力の入れようは患者の状態に応じて適宜変更される。押圧子5の突子13を患部の狭い範囲を攻めることになり、その押圧力はスプリング10の弾発力により所定の範囲に決められる。然し、それ以上の力を加えたときは押圧子5は円錐形キャップ体4の内部に引き込むことになり押圧子5による押圧は限度があるが、それ以上に圧力を加えれば円錐形キャップ体4の頭頂部14が患部に直接当接することになり患部を広い範囲で圧迫することになる。
【0017】
上記の突子13と円錐形キャップ体4の頭頂部14とによる施術において、にぎり部2の加熱を行なわずに患部の押圧を行うことにより指圧治療と同等の効果を得ることが出来る。
更に、にぎり部2の加熱又は冷却室6への加熱剤又は冷却剤の封入は、治療の目的によりいずれでも適宜に行なえる。また、キャップ体内装スプリング或は押圧子は状況により脱着可能である。
【0018】
鍼治療の際は、押圧子5の突子13を先端の鋭い刀状となったものに変更して治療することも或いは図示の如く先端が鋭利でないもので行うこともどちらでも可能である。
更に、特ににぎり部2を加熱したような場合、生薬室8に例えば薬草ハーブ等を挿入してあると加熱により薬効エキスが生薬室より円錐形キャップ体内にこもり、それが円錐形キャップ体4の吹出口15から外部に放出され、施術している患部の皮膚に付着し該部に薬効効果を与え、或いは外部に芳香を払散するという働きをもする。
【0019】
本発明温熱治療器の第2の使用例を図5と共に次に説明する。
前述の使用法の1つに生薬室8に生薬を装填しておき、加熱室6からの加熱により、生薬成分を揮発させ生薬成分をキャップ体4から放出させて身体皮膚部に生薬成分を付着させることが行われたが、以下に示す例は身体皮膚面にオイル等の流動性を有する変動成分を塗布することを可能にしている。
その一例を図5に示す。使用する温熱治療器1は、前記した使用例と同一であるが、円錐形キャップ4に設けて小室11内にオイル等吸収材16を装填する。オイル等吸収材16には薬用効果或は美容効果を発揮することが可能な諸成分を有する液状体を吸収させておく。
【0020】
図示の例では押圧子5の突子13を押圧しているスプリング10内にオイル等吸収材16を挿入してあり、使用に際して、突子13を所望の箇所に押し当てることで、突子13を円錐形キャップ4内に押し込むと共に、摺動体12でオイル等吸収材16を圧縮し、それに含まれているオイル等を吸収材16から侵出させ、円錐形キャップ4の先端の吹出口15から治療器1外に流出させ所望範囲にそれを塗布する。
【0021】
図6に示すその他の例は、にぎり部2の突出部3に螺合した円錐形キャップ4の内部に、突出部3と円錐形キャップ4とに連なって連続室17を設け、その内部にオイル或は液体化粧料等を吸収するオイル等吸収材16を挿入する。そしてオイル等吸収材16の上には目皿18を乗せ、更にその上位に設けたスプリング19により常時目皿18を加圧し、オイル吸収材16を圧迫している。そして、連続室17には通気孔20及び滲出孔21を設けている。
【0022】
図6に示す実施例にあっては、使用に際して、にぎり部2の突出部3から円錐形キャップを外し、連続室17内にオイル等の吸収材16を配すると共に、オイル等の吸収材16にオイル或は所望の化粧料を含浸させて目皿18を介してスプリング19により常時オイル等の吸収材16を圧迫するようにし、オイル等を滲出孔21から円錐形キャップ4外に
滲出させる。オイル等の滲出状態にある円錐形キャップ4をにぎり部2を持って所望の身体部位に押し当てれば突子13が皮膚を刺戟すると共にオイル等のコーティングを行うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明温熱治療器は、にぎり部内に発熱体を入れるばかりではなく、発熱体に代えて冷却媒体を入れることによって治療器を冷却し、患部を冷却しつつ施術することも可能で、温冷いずれの処置を施すことも自由であり、また、発熱体冷却媒体を使用せずに常温状態での施術も行なえる。更に、にぎり部を患部に押し当てマッサージ施術も行える。
【符号の説明】
【0024】
1 温冷治療器
2 にぎり部
2a 底部材
2b 蓋部材
3 突出部
4 キャップ体
5 押圧子
6 加熱又は冷却室
7 通気孔
8 生薬室
9 目皿
10 スプリング
11 押圧子挿入用小室
12 摺動体
13 突子
14 頭頂部
15 吹出口
16 オイル等吸収材
17 連続室
18 目皿
19 スプリング
20 通気孔
21 滲出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を加熱又は冷却室とした中空体よりなるにぎり部の下部に、生薬室を有する突出部を設け、該突出部から下方向に向け円錐形キャップ体を突出し前記突出部と円錐形キャッブ体とを一体に螺合し、該円錐形キャップ体内には、前記生薬室と円錐形キャップ体頭頂部の吹出口とに連通している押圧子挿入用小室を設け、該押圧子挿入用小室には、摺動体と突子とよりなる押圧子を配し、該押圧子を突子先端が吹出口より円錐形キャップ体外部に突出するよう設けてなる温熱治療器。
【請求項2】
突子先端が頭頂部の吹出口より円錐形キャップ体外部に突出するよう付勢して押圧子挿入用小室内に押圧子を配してなり、突子先端のキャップ体の内外部への出没動作による押圧子のポンプ作用により、前記小室内の換気を行うことを特徴とするる請求項1記載の温熱治療器。
【請求項3】
円錐形キャップ体先端に固定させて突子を設けたことを特徴とする請求項1記載の温熱治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−182908(P2011−182908A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50180(P2010−50180)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(593069886)
【出願人】(510063580)
【出願人】(599117657)
【Fターム(参考)】