温室用換気装置
【課題】意図しない作動機構の動作によって一定の開角度で換気部材の開放状態が保持されるという誤動作を防止し得る温室用換気装置を提供する。
【解決手段】本発明の温室用換気装置は、作動機構2の本体部2b内に設けられ、本体部2b内において、本体部2bと独立して昇降動作可能な可動部材9と、可動部材9と本体部2bとの間に介在し、可動部材9を下降方向に付勢する押しばね11と、係止部材6の前端部に設けられるガイドピン7と、可動部材9に形成され、ガイドピン7が移動可能に挿通される通路10とを有し、通路10が、ガイドピン7がはまり込むことにより係止部材6の一方向への回転を阻止し得る第1領域10aと、第1領域10aと連通し、第1領域10aから脱出したガイドピン7を回動させ得る第2領域10bとを有し、さらに、可動部材9に連結され、引っ張ることにより、可動部材9を上昇方向へ移動させ得る第1線状部材12を有して構成される。
【解決手段】本発明の温室用換気装置は、作動機構2の本体部2b内に設けられ、本体部2b内において、本体部2bと独立して昇降動作可能な可動部材9と、可動部材9と本体部2bとの間に介在し、可動部材9を下降方向に付勢する押しばね11と、係止部材6の前端部に設けられるガイドピン7と、可動部材9に形成され、ガイドピン7が移動可能に挿通される通路10とを有し、通路10が、ガイドピン7がはまり込むことにより係止部材6の一方向への回転を阻止し得る第1領域10aと、第1領域10aと連通し、第1領域10aから脱出したガイドピン7を回動させ得る第2領域10bとを有し、さらに、可動部材9に連結され、引っ張ることにより、可動部材9を上昇方向へ移動させ得る第1線状部材12を有して構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室に用いられる換気装置に関し、より詳細には、一定の開角度で換気部材の開放状態を保持し得る温室用換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、換気部材を人力により開閉させる手動機構と、駆動部材の駆動力により開閉させる自動機構とを有するとともに、両機構を切換可能にする切換機構を備えた温室用換気装置が開示されている。かかる温室用換気装置は、また、手動機構により換気部材を開閉させる際に、任意の角度で換気部材の開放状態を保持し得る保持機構を有する。
【0003】
しかしながら、かかる保持機構は、人力で引っ張ることにより換気部材を開動作させ得るワイヤと、ワイヤを引っ掛けることができる引っ掛け部とからなり、引っ掛け部にワイヤを引っ掛けることで、任意の角度で換気部材の開放状態を保持し得るものである。したがって、かかる保持機構によれば、ワイヤを操作する度に換気部材の開角度にばらつきが生じる。
【0004】
そこで、一定の開角度で換気部材の開放状態を保持し得る温室用換気装置として、図15に示した構造を有するものが考え得る。すなわち、ガイド部材100に沿って移動する本体部101を有し、本体部101が上昇方向へ移動するときに換気部材102を開動作させ、本体部101が下降方向へ移動するときに換気部材102を閉動作させる作動機構103と、本体部101に設けた支持軸104に回転可能に支持される係止部材105と、一方向(図15において、時計回り方向)へ回転した係止部材105を回転前の状態に復帰させる戻しばね106と、ガイド部材100に設けられるロックピン107とを有し、係止部材105の後端部がロックピン107に当接した状態で本体部101を意図的に上昇方向へ移動させることにより係止部材105を一方向(時計回り方向)へ回転させ、係止部材105の後端部がロックピン107を乗り越えると、戻しばね106の作用により、係止部材105が回転前の状態に復帰して、係止部材105の後端部がロックピン107に係合し、本体部101の下降方向への移動を阻止し得る温室用換気装置。
【0005】
かかる温室用換気装置によれば、係止部材105の後端部とロックピン107とが係合状態となったときに換気部材102の開放状態が保持されるため、一定の開角度で換気部材102の開放状態を保持し得る。
【0006】
しかしながら、かかる温室用換気装置では、例えば、換気部材102が突風を受けることにより、意図しない開動作をするときにも、本体部101が上昇方向へ移動し、係止部材105の後端部がロックピン107を乗り越えて、係止部材105の後端部とロックピン107とが係合状態となるため、この場合にも、一定の開角度で換気部材102の開放状態が保持されるという誤動作が生じ得る。
【0007】
【特許文献1】特開2003−333938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、意図しない作動機構の動作によって一定の開角度で換気部材の開放状態が保持されるという誤動作を防止し得る温室用換気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の温室用換気装置を提供する。
ガイド部材に沿って移動する本体部を有し、前記本体部が上昇方向へ移動するときに換気部材を開動作させ、前記本体部が下降方向へ移動するときに前記換気部材を閉動作させる作動機構と、
前記本体部に設けた支持軸に回転可能に支持される係止部材と、
一方向へ回転した前記係止部材を回転前の状態に復帰させる戻しばねと、
前記ガイド部材に設けられるロックピンとを有し、
前記係止部材の後端部が前記ロックピンに当接した状態で前記本体部を意図的に上昇方向へ移動させることにより前記係止部材を一方向へ回転させ、前記係止部材の後端部が前記ロックピンを乗り越えると、前記戻しばねの作用により、前記係止部材が回転前の状態に復帰して、前記係止部材の後端部が前記ロックピンに係合し、前記本体部の下降方向への移動を阻止し得る温室用換気装置であって、
前記本体部内に設けられ、前記本体部内において、前記本体部と独立して昇降動作可能な可動部材と、
前記可動部材と前記本体部との間に介在し、前記可動部材を下降方向に付勢する押しばねと、
前記係止部材の前端部に設けられるガイドピンと、
前記可動部材に形成され、前記ガイドピンが移動可能に挿通される通路とを有し、
前記通路が、前記ガイドピンがはまり込むことにより前記係止部材の一方向への回転を阻止し得る第1領域と、前記第1領域と連通し、前記第1領域から脱出した前記ガイドピンを回動させ得る第2領域とを有し、
さらに、前記可動部材に連結され、引っ張ることにより、前記可動部材を上昇方向へ移動させ得る第1線状部材を有することを特徴とする温室用換気装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の温室用換気装置によれば、意図しない作動機構の動作によって、係止部材の後端部がロックピンに当接した状態で本体部が上昇方向へ移動しようとしても、押しばねの付勢力により可動部材の上昇方向への移動が抑制されるとともに、可動部材に形成された通路の第1領域に係止部材の前端部に設けられたガイドピンがはまり込んでいるため、係止部材の一方向への回転が阻止される。その結果、係止部材の後端部がロックピンを乗り越えられず、係止部材の後端部がロックピンに係合できない。したがって、意図しない作動機構の動作によって一定の開角度で換気部材の開放状態が保持されるという誤動作を防止することが可能になる。
一方、意図的に一定の開角度で換気部材の開放状態を保持させるときには、第1線状部材を引っ張り、可動部材を上昇方向へ移動させ、ガイドピンを通路の第1領域から脱出させる。この状態で、係止部材の後端部がロックピンに当接したならば、可動部材をさらに上昇方向へ移動させて本体部に当接させ、この状態で、可動部材をさらに上昇方向へ移動させることにより、本体部を上昇方向へ移動させる。これにより、係止部材が一方向へ回転するとともに、ガイドピンが通路の第2領域内で係止部材の回転に伴って回動するため、係止部材の後端部がロックピンを乗り越えることが可能になる。係止部材の後端部がロックピンを乗り越えた後は、戻しばねの作用により、係止部材が回転前の状態に復帰して、係止部材の後端部がロックピンに係合する。その結果、一定の開角度で換気部材の開放状態が保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例に係る温室用換気装置を示す図である。この図に示したように、本実施例に係る温室用換気装置は、換気部材1、作動機構2、ロックピン3、長孔4、可動ピン5、係止部材6、ガイドピン7、戻しばね8、可動部材9、通路10、押しばね11、第1線状部材12、滑車13、駆動部材14及び第2線状部材15を有して構成される。
【0013】
換気部材1は、基端部1aを中心として自由端1b側が回転することにより開閉する窓からなる。換気部材1としては、温室の屋根、妻面又は側面のいずれに取り付けられる窓であってもよい。換気部材1の自由端1bには、内側に突出する係止部1cが設けられている。
【0014】
作動機構2は、ガイド部材2a、本体部2b及びリンク機構2cを有して構成される。ガイド部材2aは、本体部2bを支持するガイドレール2dを有する。ガイド部材2aには、ロックピン3が設けられる。ガイド部材2aには、また、長孔4が形成され、長孔4には、可動ピン5が移動可能に設けられる。本体部2bは、ガイドレール2d上を走行可能に設けられる。リンク機構2cは、換気部材1と本体部2bとの間に介在して、本体部2bがガイド部材2aに沿って上昇方向へ移動したときは、換気部材1を開動作させ、本体部2bがガイド部材2aに沿って下降方向へ移動したときには、換気部材1を閉動作させる働きをするものであり、複数のアーム2g〜2jが組み合わされて構成される。
【0015】
図2は、本体部2bの内部構造を示す図である。この図に示したように、係止部材6は、板状であって、本体部2bに設けられた支持軸2eに支持されている。係止部材6は、支持軸2eを中心として前端部及び後端部が回転し得る。係止部材6の前端部には、ガイドピン7が設けられている。係止部材6の後端部は、常態において、本体部2bの外側に突出している。また、係止部材6の前端部が常態位置から逆方向(図2において、反時計回り方向)へ回転することを防止するため、係止部材6の前端部の下方にストッパ2fが設けられている。
【0016】
戻しばね8は、係止部材6と本体部2bとの間に介在して、一方向(図2において、時計回り方向)へ回転した係止部材6を回転前の状態に復帰させる働きをするものである。戻しばね8としては、引っ張りコイルばねなどを用いることができる。図1及び図2には、常態位置に存し、一方向へ回転する前の係止部材6が示されている。
【0017】
可動部材9は、本体部2b内において、本体部2b内に設けられたガイドバー2k上を走行可能に設けられる。可動部材9は、本体部2b内において、本体部2bと独立して昇降動作可能である。可動部材9には、係止部材6の前端部に設けたガイドピン7が移動可能に挿通される通路10が形成される。通路10は、図2及び図3に示したように、第1乃至第3領域10a〜10cを有する大略J字状に形成される。第1領域10aは、ガイドピン7がはまり込むことにより係止部材6の一方向への回転を阻止する働きをするものである。第2領域10bは、第1領域10aと連通し、第1領域10aから脱出したガイドピン7を係止部材6の回転に伴って回動させ得る空間を有する。第3領域10cは、第2領域10bと連通し、ガイドピン7がはまり込むことにより、一方向へ回転した係止部材6の逆方向への回転を阻止し、係止部材6の回動を停止させる働きをするものである。可動部材9には、また、図2示したように、換気部材1に設けた係止部1cに取り外し可能に結合し得る結合部9aが設けられている。
【0018】
押しばね11は、図2に示したように、可動部材9と本体部2bとの間に介在するように設けられる。押しばね11は、可動部材9を下降方向に付勢している。押しばね11としては、圧縮コイルばねなどを用いることができる。
【0019】
第1線状部材12は、図1及び図3に示したように、一端が可動部材9に連結され、他端が自由端となっている。第1線状部材12は、他端側を把持して、それを引っ張ることにより、可動部材9を上昇方向へ移動させる働きをするものである。本実施例に係る温室用換気装置は、図1に示したように、第1線状部材12が掛けられる複数の滑車13を有して構成される。各滑車13は、可動部材9を上昇方向へ移動させるために必要な第1線状部材12を引っ張る力を減少させる働きをする。
【0020】
駆動部材14は、本体部2bを上昇方向へ移動させる駆動力を発生するものである。駆動部材14としては、図1に示したように、温度に対応して体積が変化する駆動材料が充填されるシリンダ14aと、シリンダ14a内において、駆動材料の体積変化によって動作するピストン(図示せず)と、ピストンに連結され、シリンダ14aの外に突出するピストンロッド14bと、駆動材料が温度の低下により収縮したときに、ピストンロッド14bをシリンダ14a内に収容する方向へ付勢する弾性部材14cとを有して構成されるアクチュエータを用いることが好ましい。駆動部材14のピストンロッド14bの先端側には、可動ピン5が配置され、温度が上昇することによって駆動材料が膨張したときには、ピストンロッド14bがシリンダ14aから伸びる。これにより、ピストンロッド14bが可動ピン5に当接し、可動ピン5がピストンロッド14bに押圧されることにより長孔4に沿って上昇方向へ移動するようになっている。一方、温度が低下することによって駆動材料が収縮したときには、弾性部材14cの作用により、ピストンロッド14bがシリンダ14a内に収容されていき、また、可動ピン5が長孔4に沿って下降方向へ移動するようになっている。
【0021】
第2線状部材15は、図1及び図3に示したように、一端が係止部材6に連結され、他端が自由端となっている。第2線状部材15は、他端側を把持して、それを引っ張ることにより、係止部材6を一方向(図1において、時計回り方向)へ回転させ、通路10の第1領域10aから脱出したガイドピン7を第2領域10b内で回動させる働きをする。
【0022】
上記のように構成される温室用換気装置は、作動機構2が換気部材1の窓枠又は温室の骨組み材に固定され、使用される。
【0023】
図4は、自動運転時において、換気部材1が全閉した状態を示す。このとき、係止部材6の後端部は可動ピン5に係合している。また、係止部材6の前端部側がストッパ2fに当接しているため、係止部材6が常態位置から逆方向へ回転せず、係止部材6の前端部に設けたガイドピン7が可動部材9に形成された通路10の第1領域10aにはまり込んだ状態で維持される。
【0024】
この状態で、温室内温度が上昇すると、駆動部材14のシリンダ14a内で駆動材料が膨張し、ピストンを押し上げることにより、ピストンロッド14bがシリンダ14aの外へ伸長し、それに従って、可動ピン5が長孔4に沿って上昇方向へ移動する(図5参照)。これにより、可動ピン5に係合する係止部材6が押し上げられるとともに、支持軸2eを介して係止部材6に連結された本体部2bが上昇方向へ移動する(図5参照)。本体部2bに連結されたリンク機構2cは、本体部2bが上昇方向へ移動することにより換気部材1を開動作させるように構成されるため、本体部2bが上昇方向へ移動することにより、換気部材1が開放される(図5参照)。さらに温度が上昇し、シリンダ14a内の駆動材料が膨張すると、図6に示したように、ピストンロッド14bがさらに伸長し、可動ピン5が長孔4に沿ってさらに上昇方向へ移動することによって、可動ピン5に係合する係止部材6がさらに押し上げられるとともに、本体部2bがさらに上昇方向へ移動する。これにより、換気部材1は、さらに開角度が増して、自動運転時における全開状態になる。
【0025】
一方、温度が低下し、シリンダ14a内の駆動材料が収縮すると、弾性部材14cの作用によりピストンロッド14bがシリンダ14a内に収容される方向に移動して縮む。これにより、可動ピン5が長孔4に沿って下降方向へ移動する。このとき、本体部2bは、可動ピン5が下降方向へ移動するに従って、下降動作する。リンク機構2cは、本体部2bが下降方向へ移動することにより換気部材1を閉動作させるように構成されるため、本体部2bが下降方向へ移動するに従って、換気部材1が閉鎖していく。
【0026】
本実施例に係る温室用換気装置は、ガイド部材2aに設けられる長孔4と、長孔4内に移動可能に挿通される可動ピン5と、可動ピン5を温度に対応して移動させ得る駆動部材14とを有し、係止部材6の後端部が可動ピン5に係合することにより、駆動部材14の駆動力によって本体部2bを上昇方向へ移動させ得る構成であるため、上記したように、温度に対応して換気部材1の開角度を制御できる。また、本実施例のように、駆動部材14として、温度に対応して体積が変化する駆動材料を用いたアクチュエータを採用することにより、電気を必要とせず、また、電動の場合のように制御盤も不要であるため、設置コスト及びランニングコストを低減させることができる。さらに、電源確保のために設置場所を制限されることもないので、設置場所選定の自由度が高い。
【0027】
上記した自動運転時における換気部材1の全閉状態では、駆動部材14の駆動力によって換気部材1を開動作させるために、換気部材1の自由端1bがいずれにも固定されていない(図4参照)。したがって、換気部材1が風圧等を受けると、換気部材1の自由端1b側が振動し、窓枠と衝突して異音を生じ易くなる。かかる問題を解決するため、本実施例では、まず、自動運転を解除し、手動運転に切り換える。この切換操作は、以下の手順で行われる。すなわち、まず、第1線状部材12を引っ張り、第1線状部材12の一端が連結された可動部材9を本体部2b内で上昇方向へ移動させる。このとき、可動部材9は、押しばね11を圧縮しながら移動する。これにより、ガイドピン7が通路10の第1領域10aから脱出し、第2領域10bに位置することになる(図3参照)。次に、この状態で、第2線状部材15を引っ張り、第2線状部材15の一端が連結された係止部材6を一方向へ回転させる(図7参照)。図3に示したように、通路10の第2領域10b内では、ガイドピン7が移動可能であるため、上記のように係止部材6の一方向(時計回り方向)への回転が許容される。係止部材6を一方向へ回転させることにより、係止部材6の後端部が可動ピン5に接触しない位置に配置される(図7参照)。これにより、自動運転が解除され、手動運転に切り換わる。なお、このとき係止部材6は、戻しばね8の作用により、回転前の状態に復帰しようとするため、これを阻止するために、第2線状部材15を引っ張り続けてもよい。しかし、それでは負担になるので、本実施例では、第1線状部材12の引っ張りを緩めて、可動部材9を下降方向へ移動させ、ガイドピン7を通路10の第3領域10cに進入させる(図8参照)。これにより、第2線状部材15を引っ張り続けなくても、係止部材6の逆方向(反時計回り方向)への回転が阻止され、係止部材6の回動が停止することになる。手動運転に切り換えたならば、可動部材9は、押しばね11の付勢力によって下降方向へ移動し、図8に示したように、可動部材9に設けた結合部9aが換気部材1の自由端1bに設けた係止部1cに結合する。これにより、換気部材1の自由端1bが固定されるため、換気部材1が風圧等を受けた場合でも、換気部材1の自由端1b側の振動が抑制され、異音が生じ難くなる。
【0028】
本実施例に係る温室用換気装置は、可動部材9に、換気部材1の自由端1bに設けた係止部1cに取り外し可能に結合し得る結合部9aが設けられた構成であるため、上記のように、全閉状態の換気部材1が風圧等を受けた場合でも、換気部材1の自由端1b側の振動を抑制し、異音の発生を防ぐことができる。また、本実施例に係る温室用換気装置は、可動部材9に形成される通路10が、第2領域10bと連通し、ガイドピン7がはまり込むことにより一方向へ回転した係止部材6の逆方向への回転を阻止し、係止部材6の回動を停止させ得る第3領域10cを有する構成であるため、上記のように、切換操作の負担を軽減させることができる。また、本実施例に係る温室用換気装置は、係止部材6に連結され、引っ張ることにより、係止部材6を一方向へ回転させ、第1領域10aから脱出したガイドピン7を第2領域10b内で回動させ得る第2線状部材15を有する構成であるため、上記したように、換気部材1の自由端1bを手動により固定する操作が可能になる。また、本実施例に係る温室用換気装置は、可動部材9を上昇方向へ移動させるために必要な引っ張り力を減少させ得るように、第1線状部材12が掛けられる滑車13が設けられた構成であるため、小さな力で可動部材9を上昇動作させることができ、操作負担を軽減させることができる。
【0029】
自動運転時において、開放された換気部材1が突風を受けることにより、換気部材1の開角度が増すと、それに伴って本体部2bが上昇方向へ移動することになる。このように意図しない作動機構2の動作によって、係止部材6の後端部がロックピン3に当接した状態で本体部2bが上昇方向へ移動しようとする場合、本実施例によれば、押しばね11の付勢力により可動部材9の上昇方向への移動が抑制されるとともに、図9に示したように、可動部材9に形成された通路10の第1領域10aに係止部材6の前端部に設けられたガイドピン7がはまり込んでいるため、係止部材6の一方向(図9において、時計回り方向)への回転が阻止される。その結果、係止部材6の後端部がロックピン3を乗り越えられず、係止部材6の後端部がロックピン3に係合できない。したがって、意図しない作動機構2の動作によって一定の開角度で換気部材1の開放状態が保持されるという誤動作を確実に防止することができる。
【0030】
一方、本実施例によれば、自動運転を解除して手動運転により、一定の角度で換気部材1の開放状態を保持することができる。この操作は、以下の手順で行われる。すなわち、まず、第1線状部材12を引っ張り、可動部材9を上昇方向へ移動させ、ガイドピン7を通路10の第1領域10aから脱出させる(図10参照)。次に、この状態で、図11に示したように、係止部材6の後端部がロックピン3に当接したならば、第1線状部材12をさらに引っ張り、可動部材9をさらに上昇方向へ移動させて本体部2bに当接させ、この状態で、可動部材9をさらに上昇方向へ移動させることにより、本体部2bを上昇方向へ移動させる(図12参照)。このとき、係止部材6は、後端部上部がロックピン3に当接した状態で本体部2bが上昇方向へ移動するため、一方向へ回転することになる(図12参照)。また、ガイドピン7は、通路10の第2領域10b内で係止部材6の回転に伴って回動する(図12参照)。これにより、係止部材6の後端部がロックピン3を乗り越えることが可能になる(図13参照)。係止部材6の後端部がロックピン3を乗り越えた後は、戻しばね8の作用により、係止部材6が回転前の状態に復帰して、係止部材6の後端部がロックピン3に係合する。その結果、図14に示したように、一定の開角度で換気部材1の開放状態が保持されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例に係る温室用換気装置を示す図である。
【図2】本体部の内部構造を示す図である。
【図3】温室用換気装置の一部分を示す図である。
【図4】自動運転時において、換気部材が全閉した状態を示す図である。
【図5】自動運転時において、換気部材が開放された状態を示す図である。
【図6】自動運転時における換気部材の全開状態を示す図である。
【図7】第2線状部材の作用を説明するための図である。
【図8】可動部材の結合部が換気部材の係止部に結合した状態を示す図である。
【図9】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図10】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図11】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図12】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図13】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図14】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図15】従来の温室用換気装置を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 換気部材
1a 基端部
1b 自由端
1c 係止部
2 作動機構
2a ガイド部材
2b 本体部
2c リンク機構
2d ガイドレール
2e 支持軸
2f ストッパ
2g〜2j アーム
2k ガイドバー
3 ロックピン
4 長孔
5 可動ピン
6 係止部材
7 ガイドピン
8 戻しばね
9 可動部材
9a 結合部
10 通路
10a 第1領域
10b 第2領域
10c 第3領域
11 押しばね
12 第1線状部材
13 滑車
14 駆動部材
14a シリンダ
14b ピストンロッド
14c 弾性部材
15 第2線状部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室に用いられる換気装置に関し、より詳細には、一定の開角度で換気部材の開放状態を保持し得る温室用換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、換気部材を人力により開閉させる手動機構と、駆動部材の駆動力により開閉させる自動機構とを有するとともに、両機構を切換可能にする切換機構を備えた温室用換気装置が開示されている。かかる温室用換気装置は、また、手動機構により換気部材を開閉させる際に、任意の角度で換気部材の開放状態を保持し得る保持機構を有する。
【0003】
しかしながら、かかる保持機構は、人力で引っ張ることにより換気部材を開動作させ得るワイヤと、ワイヤを引っ掛けることができる引っ掛け部とからなり、引っ掛け部にワイヤを引っ掛けることで、任意の角度で換気部材の開放状態を保持し得るものである。したがって、かかる保持機構によれば、ワイヤを操作する度に換気部材の開角度にばらつきが生じる。
【0004】
そこで、一定の開角度で換気部材の開放状態を保持し得る温室用換気装置として、図15に示した構造を有するものが考え得る。すなわち、ガイド部材100に沿って移動する本体部101を有し、本体部101が上昇方向へ移動するときに換気部材102を開動作させ、本体部101が下降方向へ移動するときに換気部材102を閉動作させる作動機構103と、本体部101に設けた支持軸104に回転可能に支持される係止部材105と、一方向(図15において、時計回り方向)へ回転した係止部材105を回転前の状態に復帰させる戻しばね106と、ガイド部材100に設けられるロックピン107とを有し、係止部材105の後端部がロックピン107に当接した状態で本体部101を意図的に上昇方向へ移動させることにより係止部材105を一方向(時計回り方向)へ回転させ、係止部材105の後端部がロックピン107を乗り越えると、戻しばね106の作用により、係止部材105が回転前の状態に復帰して、係止部材105の後端部がロックピン107に係合し、本体部101の下降方向への移動を阻止し得る温室用換気装置。
【0005】
かかる温室用換気装置によれば、係止部材105の後端部とロックピン107とが係合状態となったときに換気部材102の開放状態が保持されるため、一定の開角度で換気部材102の開放状態を保持し得る。
【0006】
しかしながら、かかる温室用換気装置では、例えば、換気部材102が突風を受けることにより、意図しない開動作をするときにも、本体部101が上昇方向へ移動し、係止部材105の後端部がロックピン107を乗り越えて、係止部材105の後端部とロックピン107とが係合状態となるため、この場合にも、一定の開角度で換気部材102の開放状態が保持されるという誤動作が生じ得る。
【0007】
【特許文献1】特開2003−333938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、意図しない作動機構の動作によって一定の開角度で換気部材の開放状態が保持されるという誤動作を防止し得る温室用換気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の温室用換気装置を提供する。
ガイド部材に沿って移動する本体部を有し、前記本体部が上昇方向へ移動するときに換気部材を開動作させ、前記本体部が下降方向へ移動するときに前記換気部材を閉動作させる作動機構と、
前記本体部に設けた支持軸に回転可能に支持される係止部材と、
一方向へ回転した前記係止部材を回転前の状態に復帰させる戻しばねと、
前記ガイド部材に設けられるロックピンとを有し、
前記係止部材の後端部が前記ロックピンに当接した状態で前記本体部を意図的に上昇方向へ移動させることにより前記係止部材を一方向へ回転させ、前記係止部材の後端部が前記ロックピンを乗り越えると、前記戻しばねの作用により、前記係止部材が回転前の状態に復帰して、前記係止部材の後端部が前記ロックピンに係合し、前記本体部の下降方向への移動を阻止し得る温室用換気装置であって、
前記本体部内に設けられ、前記本体部内において、前記本体部と独立して昇降動作可能な可動部材と、
前記可動部材と前記本体部との間に介在し、前記可動部材を下降方向に付勢する押しばねと、
前記係止部材の前端部に設けられるガイドピンと、
前記可動部材に形成され、前記ガイドピンが移動可能に挿通される通路とを有し、
前記通路が、前記ガイドピンがはまり込むことにより前記係止部材の一方向への回転を阻止し得る第1領域と、前記第1領域と連通し、前記第1領域から脱出した前記ガイドピンを回動させ得る第2領域とを有し、
さらに、前記可動部材に連結され、引っ張ることにより、前記可動部材を上昇方向へ移動させ得る第1線状部材を有することを特徴とする温室用換気装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の温室用換気装置によれば、意図しない作動機構の動作によって、係止部材の後端部がロックピンに当接した状態で本体部が上昇方向へ移動しようとしても、押しばねの付勢力により可動部材の上昇方向への移動が抑制されるとともに、可動部材に形成された通路の第1領域に係止部材の前端部に設けられたガイドピンがはまり込んでいるため、係止部材の一方向への回転が阻止される。その結果、係止部材の後端部がロックピンを乗り越えられず、係止部材の後端部がロックピンに係合できない。したがって、意図しない作動機構の動作によって一定の開角度で換気部材の開放状態が保持されるという誤動作を防止することが可能になる。
一方、意図的に一定の開角度で換気部材の開放状態を保持させるときには、第1線状部材を引っ張り、可動部材を上昇方向へ移動させ、ガイドピンを通路の第1領域から脱出させる。この状態で、係止部材の後端部がロックピンに当接したならば、可動部材をさらに上昇方向へ移動させて本体部に当接させ、この状態で、可動部材をさらに上昇方向へ移動させることにより、本体部を上昇方向へ移動させる。これにより、係止部材が一方向へ回転するとともに、ガイドピンが通路の第2領域内で係止部材の回転に伴って回動するため、係止部材の後端部がロックピンを乗り越えることが可能になる。係止部材の後端部がロックピンを乗り越えた後は、戻しばねの作用により、係止部材が回転前の状態に復帰して、係止部材の後端部がロックピンに係合する。その結果、一定の開角度で換気部材の開放状態が保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例に係る温室用換気装置を示す図である。この図に示したように、本実施例に係る温室用換気装置は、換気部材1、作動機構2、ロックピン3、長孔4、可動ピン5、係止部材6、ガイドピン7、戻しばね8、可動部材9、通路10、押しばね11、第1線状部材12、滑車13、駆動部材14及び第2線状部材15を有して構成される。
【0013】
換気部材1は、基端部1aを中心として自由端1b側が回転することにより開閉する窓からなる。換気部材1としては、温室の屋根、妻面又は側面のいずれに取り付けられる窓であってもよい。換気部材1の自由端1bには、内側に突出する係止部1cが設けられている。
【0014】
作動機構2は、ガイド部材2a、本体部2b及びリンク機構2cを有して構成される。ガイド部材2aは、本体部2bを支持するガイドレール2dを有する。ガイド部材2aには、ロックピン3が設けられる。ガイド部材2aには、また、長孔4が形成され、長孔4には、可動ピン5が移動可能に設けられる。本体部2bは、ガイドレール2d上を走行可能に設けられる。リンク機構2cは、換気部材1と本体部2bとの間に介在して、本体部2bがガイド部材2aに沿って上昇方向へ移動したときは、換気部材1を開動作させ、本体部2bがガイド部材2aに沿って下降方向へ移動したときには、換気部材1を閉動作させる働きをするものであり、複数のアーム2g〜2jが組み合わされて構成される。
【0015】
図2は、本体部2bの内部構造を示す図である。この図に示したように、係止部材6は、板状であって、本体部2bに設けられた支持軸2eに支持されている。係止部材6は、支持軸2eを中心として前端部及び後端部が回転し得る。係止部材6の前端部には、ガイドピン7が設けられている。係止部材6の後端部は、常態において、本体部2bの外側に突出している。また、係止部材6の前端部が常態位置から逆方向(図2において、反時計回り方向)へ回転することを防止するため、係止部材6の前端部の下方にストッパ2fが設けられている。
【0016】
戻しばね8は、係止部材6と本体部2bとの間に介在して、一方向(図2において、時計回り方向)へ回転した係止部材6を回転前の状態に復帰させる働きをするものである。戻しばね8としては、引っ張りコイルばねなどを用いることができる。図1及び図2には、常態位置に存し、一方向へ回転する前の係止部材6が示されている。
【0017】
可動部材9は、本体部2b内において、本体部2b内に設けられたガイドバー2k上を走行可能に設けられる。可動部材9は、本体部2b内において、本体部2bと独立して昇降動作可能である。可動部材9には、係止部材6の前端部に設けたガイドピン7が移動可能に挿通される通路10が形成される。通路10は、図2及び図3に示したように、第1乃至第3領域10a〜10cを有する大略J字状に形成される。第1領域10aは、ガイドピン7がはまり込むことにより係止部材6の一方向への回転を阻止する働きをするものである。第2領域10bは、第1領域10aと連通し、第1領域10aから脱出したガイドピン7を係止部材6の回転に伴って回動させ得る空間を有する。第3領域10cは、第2領域10bと連通し、ガイドピン7がはまり込むことにより、一方向へ回転した係止部材6の逆方向への回転を阻止し、係止部材6の回動を停止させる働きをするものである。可動部材9には、また、図2示したように、換気部材1に設けた係止部1cに取り外し可能に結合し得る結合部9aが設けられている。
【0018】
押しばね11は、図2に示したように、可動部材9と本体部2bとの間に介在するように設けられる。押しばね11は、可動部材9を下降方向に付勢している。押しばね11としては、圧縮コイルばねなどを用いることができる。
【0019】
第1線状部材12は、図1及び図3に示したように、一端が可動部材9に連結され、他端が自由端となっている。第1線状部材12は、他端側を把持して、それを引っ張ることにより、可動部材9を上昇方向へ移動させる働きをするものである。本実施例に係る温室用換気装置は、図1に示したように、第1線状部材12が掛けられる複数の滑車13を有して構成される。各滑車13は、可動部材9を上昇方向へ移動させるために必要な第1線状部材12を引っ張る力を減少させる働きをする。
【0020】
駆動部材14は、本体部2bを上昇方向へ移動させる駆動力を発生するものである。駆動部材14としては、図1に示したように、温度に対応して体積が変化する駆動材料が充填されるシリンダ14aと、シリンダ14a内において、駆動材料の体積変化によって動作するピストン(図示せず)と、ピストンに連結され、シリンダ14aの外に突出するピストンロッド14bと、駆動材料が温度の低下により収縮したときに、ピストンロッド14bをシリンダ14a内に収容する方向へ付勢する弾性部材14cとを有して構成されるアクチュエータを用いることが好ましい。駆動部材14のピストンロッド14bの先端側には、可動ピン5が配置され、温度が上昇することによって駆動材料が膨張したときには、ピストンロッド14bがシリンダ14aから伸びる。これにより、ピストンロッド14bが可動ピン5に当接し、可動ピン5がピストンロッド14bに押圧されることにより長孔4に沿って上昇方向へ移動するようになっている。一方、温度が低下することによって駆動材料が収縮したときには、弾性部材14cの作用により、ピストンロッド14bがシリンダ14a内に収容されていき、また、可動ピン5が長孔4に沿って下降方向へ移動するようになっている。
【0021】
第2線状部材15は、図1及び図3に示したように、一端が係止部材6に連結され、他端が自由端となっている。第2線状部材15は、他端側を把持して、それを引っ張ることにより、係止部材6を一方向(図1において、時計回り方向)へ回転させ、通路10の第1領域10aから脱出したガイドピン7を第2領域10b内で回動させる働きをする。
【0022】
上記のように構成される温室用換気装置は、作動機構2が換気部材1の窓枠又は温室の骨組み材に固定され、使用される。
【0023】
図4は、自動運転時において、換気部材1が全閉した状態を示す。このとき、係止部材6の後端部は可動ピン5に係合している。また、係止部材6の前端部側がストッパ2fに当接しているため、係止部材6が常態位置から逆方向へ回転せず、係止部材6の前端部に設けたガイドピン7が可動部材9に形成された通路10の第1領域10aにはまり込んだ状態で維持される。
【0024】
この状態で、温室内温度が上昇すると、駆動部材14のシリンダ14a内で駆動材料が膨張し、ピストンを押し上げることにより、ピストンロッド14bがシリンダ14aの外へ伸長し、それに従って、可動ピン5が長孔4に沿って上昇方向へ移動する(図5参照)。これにより、可動ピン5に係合する係止部材6が押し上げられるとともに、支持軸2eを介して係止部材6に連結された本体部2bが上昇方向へ移動する(図5参照)。本体部2bに連結されたリンク機構2cは、本体部2bが上昇方向へ移動することにより換気部材1を開動作させるように構成されるため、本体部2bが上昇方向へ移動することにより、換気部材1が開放される(図5参照)。さらに温度が上昇し、シリンダ14a内の駆動材料が膨張すると、図6に示したように、ピストンロッド14bがさらに伸長し、可動ピン5が長孔4に沿ってさらに上昇方向へ移動することによって、可動ピン5に係合する係止部材6がさらに押し上げられるとともに、本体部2bがさらに上昇方向へ移動する。これにより、換気部材1は、さらに開角度が増して、自動運転時における全開状態になる。
【0025】
一方、温度が低下し、シリンダ14a内の駆動材料が収縮すると、弾性部材14cの作用によりピストンロッド14bがシリンダ14a内に収容される方向に移動して縮む。これにより、可動ピン5が長孔4に沿って下降方向へ移動する。このとき、本体部2bは、可動ピン5が下降方向へ移動するに従って、下降動作する。リンク機構2cは、本体部2bが下降方向へ移動することにより換気部材1を閉動作させるように構成されるため、本体部2bが下降方向へ移動するに従って、換気部材1が閉鎖していく。
【0026】
本実施例に係る温室用換気装置は、ガイド部材2aに設けられる長孔4と、長孔4内に移動可能に挿通される可動ピン5と、可動ピン5を温度に対応して移動させ得る駆動部材14とを有し、係止部材6の後端部が可動ピン5に係合することにより、駆動部材14の駆動力によって本体部2bを上昇方向へ移動させ得る構成であるため、上記したように、温度に対応して換気部材1の開角度を制御できる。また、本実施例のように、駆動部材14として、温度に対応して体積が変化する駆動材料を用いたアクチュエータを採用することにより、電気を必要とせず、また、電動の場合のように制御盤も不要であるため、設置コスト及びランニングコストを低減させることができる。さらに、電源確保のために設置場所を制限されることもないので、設置場所選定の自由度が高い。
【0027】
上記した自動運転時における換気部材1の全閉状態では、駆動部材14の駆動力によって換気部材1を開動作させるために、換気部材1の自由端1bがいずれにも固定されていない(図4参照)。したがって、換気部材1が風圧等を受けると、換気部材1の自由端1b側が振動し、窓枠と衝突して異音を生じ易くなる。かかる問題を解決するため、本実施例では、まず、自動運転を解除し、手動運転に切り換える。この切換操作は、以下の手順で行われる。すなわち、まず、第1線状部材12を引っ張り、第1線状部材12の一端が連結された可動部材9を本体部2b内で上昇方向へ移動させる。このとき、可動部材9は、押しばね11を圧縮しながら移動する。これにより、ガイドピン7が通路10の第1領域10aから脱出し、第2領域10bに位置することになる(図3参照)。次に、この状態で、第2線状部材15を引っ張り、第2線状部材15の一端が連結された係止部材6を一方向へ回転させる(図7参照)。図3に示したように、通路10の第2領域10b内では、ガイドピン7が移動可能であるため、上記のように係止部材6の一方向(時計回り方向)への回転が許容される。係止部材6を一方向へ回転させることにより、係止部材6の後端部が可動ピン5に接触しない位置に配置される(図7参照)。これにより、自動運転が解除され、手動運転に切り換わる。なお、このとき係止部材6は、戻しばね8の作用により、回転前の状態に復帰しようとするため、これを阻止するために、第2線状部材15を引っ張り続けてもよい。しかし、それでは負担になるので、本実施例では、第1線状部材12の引っ張りを緩めて、可動部材9を下降方向へ移動させ、ガイドピン7を通路10の第3領域10cに進入させる(図8参照)。これにより、第2線状部材15を引っ張り続けなくても、係止部材6の逆方向(反時計回り方向)への回転が阻止され、係止部材6の回動が停止することになる。手動運転に切り換えたならば、可動部材9は、押しばね11の付勢力によって下降方向へ移動し、図8に示したように、可動部材9に設けた結合部9aが換気部材1の自由端1bに設けた係止部1cに結合する。これにより、換気部材1の自由端1bが固定されるため、換気部材1が風圧等を受けた場合でも、換気部材1の自由端1b側の振動が抑制され、異音が生じ難くなる。
【0028】
本実施例に係る温室用換気装置は、可動部材9に、換気部材1の自由端1bに設けた係止部1cに取り外し可能に結合し得る結合部9aが設けられた構成であるため、上記のように、全閉状態の換気部材1が風圧等を受けた場合でも、換気部材1の自由端1b側の振動を抑制し、異音の発生を防ぐことができる。また、本実施例に係る温室用換気装置は、可動部材9に形成される通路10が、第2領域10bと連通し、ガイドピン7がはまり込むことにより一方向へ回転した係止部材6の逆方向への回転を阻止し、係止部材6の回動を停止させ得る第3領域10cを有する構成であるため、上記のように、切換操作の負担を軽減させることができる。また、本実施例に係る温室用換気装置は、係止部材6に連結され、引っ張ることにより、係止部材6を一方向へ回転させ、第1領域10aから脱出したガイドピン7を第2領域10b内で回動させ得る第2線状部材15を有する構成であるため、上記したように、換気部材1の自由端1bを手動により固定する操作が可能になる。また、本実施例に係る温室用換気装置は、可動部材9を上昇方向へ移動させるために必要な引っ張り力を減少させ得るように、第1線状部材12が掛けられる滑車13が設けられた構成であるため、小さな力で可動部材9を上昇動作させることができ、操作負担を軽減させることができる。
【0029】
自動運転時において、開放された換気部材1が突風を受けることにより、換気部材1の開角度が増すと、それに伴って本体部2bが上昇方向へ移動することになる。このように意図しない作動機構2の動作によって、係止部材6の後端部がロックピン3に当接した状態で本体部2bが上昇方向へ移動しようとする場合、本実施例によれば、押しばね11の付勢力により可動部材9の上昇方向への移動が抑制されるとともに、図9に示したように、可動部材9に形成された通路10の第1領域10aに係止部材6の前端部に設けられたガイドピン7がはまり込んでいるため、係止部材6の一方向(図9において、時計回り方向)への回転が阻止される。その結果、係止部材6の後端部がロックピン3を乗り越えられず、係止部材6の後端部がロックピン3に係合できない。したがって、意図しない作動機構2の動作によって一定の開角度で換気部材1の開放状態が保持されるという誤動作を確実に防止することができる。
【0030】
一方、本実施例によれば、自動運転を解除して手動運転により、一定の角度で換気部材1の開放状態を保持することができる。この操作は、以下の手順で行われる。すなわち、まず、第1線状部材12を引っ張り、可動部材9を上昇方向へ移動させ、ガイドピン7を通路10の第1領域10aから脱出させる(図10参照)。次に、この状態で、図11に示したように、係止部材6の後端部がロックピン3に当接したならば、第1線状部材12をさらに引っ張り、可動部材9をさらに上昇方向へ移動させて本体部2bに当接させ、この状態で、可動部材9をさらに上昇方向へ移動させることにより、本体部2bを上昇方向へ移動させる(図12参照)。このとき、係止部材6は、後端部上部がロックピン3に当接した状態で本体部2bが上昇方向へ移動するため、一方向へ回転することになる(図12参照)。また、ガイドピン7は、通路10の第2領域10b内で係止部材6の回転に伴って回動する(図12参照)。これにより、係止部材6の後端部がロックピン3を乗り越えることが可能になる(図13参照)。係止部材6の後端部がロックピン3を乗り越えた後は、戻しばね8の作用により、係止部材6が回転前の状態に復帰して、係止部材6の後端部がロックピン3に係合する。その結果、図14に示したように、一定の開角度で換気部材1の開放状態が保持されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例に係る温室用換気装置を示す図である。
【図2】本体部の内部構造を示す図である。
【図3】温室用換気装置の一部分を示す図である。
【図4】自動運転時において、換気部材が全閉した状態を示す図である。
【図5】自動運転時において、換気部材が開放された状態を示す図である。
【図6】自動運転時における換気部材の全開状態を示す図である。
【図7】第2線状部材の作用を説明するための図である。
【図8】可動部材の結合部が換気部材の係止部に結合した状態を示す図である。
【図9】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図10】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図11】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図12】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図13】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図14】温室用換気装置の作用を説明するための図である。
【図15】従来の温室用換気装置を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 換気部材
1a 基端部
1b 自由端
1c 係止部
2 作動機構
2a ガイド部材
2b 本体部
2c リンク機構
2d ガイドレール
2e 支持軸
2f ストッパ
2g〜2j アーム
2k ガイドバー
3 ロックピン
4 長孔
5 可動ピン
6 係止部材
7 ガイドピン
8 戻しばね
9 可動部材
9a 結合部
10 通路
10a 第1領域
10b 第2領域
10c 第3領域
11 押しばね
12 第1線状部材
13 滑車
14 駆動部材
14a シリンダ
14b ピストンロッド
14c 弾性部材
15 第2線状部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド部材に沿って移動する本体部を有し、前記本体部が上昇方向へ移動するときに換気部材を開動作させ、前記本体部が下降方向へ移動するときに前記換気部材を閉動作させる作動機構と、
前記本体部に設けた支持軸に回転可能に支持される係止部材と、
一方向へ回転した前記係止部材を回転前の状態に復帰させる戻しばねと、
前記ガイド部材に設けられるロックピンとを有し、
前記係止部材の後端部が前記ロックピンに当接した状態で前記本体部を意図的に上昇方向へ移動させることにより前記係止部材を一方向へ回転させ、前記係止部材の後端部が前記ロックピンを乗り越えると、前記戻しばねの作用により、前記係止部材が回転前の状態に復帰して、前記係止部材の後端部が前記ロックピンに係合し、前記本体部の下降方向への移動を阻止し得る温室用換気装置であって、
前記本体部内に設けられ、前記本体部内において、前記本体部と独立して昇降動作可能な可動部材と、
前記可動部材と前記本体部との間に介在し、前記可動部材を下降方向に付勢する押しばねと、
前記係止部材の前端部に設けられるガイドピンと、
前記可動部材に形成され、前記ガイドピンが移動可能に挿通される通路とを有し、
前記通路が、前記ガイドピンがはまり込むことにより前記係止部材の一方向への回転を阻止し得る第1領域と、前記第1領域と連通し、前記第1領域から脱出した前記ガイドピンを回動させ得る第2領域とを有し、
さらに、前記可動部材に連結され、引っ張ることにより、前記可動部材を上昇方向へ移動させ得る第1線状部材を有することを特徴とする温室用換気装置。
【請求項2】
前記ガイド部材に設けられる長孔と、
前記長孔内に移動可能に挿通される可動ピンと、
前記可動ピンを温度に対応して移動させ得る駆動部材とを有し、
前記係止部材の後端部と前記可動ピンとが係合状態にあるときに、前記本体部を前記駆動部材の駆動力により上昇方向へ移動させ得ることを特徴とする請求項1記載の温室用換気装置。
【請求項3】
前記可動部材に、前記換気部材の自由端に設けた係止部に取り外し可能に結合し得る結合部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の温室用換気装置。
【請求項4】
前記通路が、前記第2領域と連通し、前記ガイドピンがはまり込むことにより一方向へ回転した前記係止部材の逆方向への回転を阻止し、前記係止部材の回動を停止させ得る第3領域を有することを特徴とする請求項1記載の温室用換気装置。
【請求項5】
前記係止部材に連結され、引っ張ることにより、前記係止部材を一方向へ回転させ、前記第1領域から脱出した前記ガイドピンを前記第2領域内で回動させ得る第2線状部材を有することを特徴とする請求項1記載の温室用換気装置。
【請求項6】
前記可動部材を上昇方向へ移動させるために必要な引っ張り力を減少させ得るように、前記第1線状部材が掛けられる滑車が設けられていることを特徴とする請求項1記載の温室用換気装置。
【請求項1】
ガイド部材に沿って移動する本体部を有し、前記本体部が上昇方向へ移動するときに換気部材を開動作させ、前記本体部が下降方向へ移動するときに前記換気部材を閉動作させる作動機構と、
前記本体部に設けた支持軸に回転可能に支持される係止部材と、
一方向へ回転した前記係止部材を回転前の状態に復帰させる戻しばねと、
前記ガイド部材に設けられるロックピンとを有し、
前記係止部材の後端部が前記ロックピンに当接した状態で前記本体部を意図的に上昇方向へ移動させることにより前記係止部材を一方向へ回転させ、前記係止部材の後端部が前記ロックピンを乗り越えると、前記戻しばねの作用により、前記係止部材が回転前の状態に復帰して、前記係止部材の後端部が前記ロックピンに係合し、前記本体部の下降方向への移動を阻止し得る温室用換気装置であって、
前記本体部内に設けられ、前記本体部内において、前記本体部と独立して昇降動作可能な可動部材と、
前記可動部材と前記本体部との間に介在し、前記可動部材を下降方向に付勢する押しばねと、
前記係止部材の前端部に設けられるガイドピンと、
前記可動部材に形成され、前記ガイドピンが移動可能に挿通される通路とを有し、
前記通路が、前記ガイドピンがはまり込むことにより前記係止部材の一方向への回転を阻止し得る第1領域と、前記第1領域と連通し、前記第1領域から脱出した前記ガイドピンを回動させ得る第2領域とを有し、
さらに、前記可動部材に連結され、引っ張ることにより、前記可動部材を上昇方向へ移動させ得る第1線状部材を有することを特徴とする温室用換気装置。
【請求項2】
前記ガイド部材に設けられる長孔と、
前記長孔内に移動可能に挿通される可動ピンと、
前記可動ピンを温度に対応して移動させ得る駆動部材とを有し、
前記係止部材の後端部と前記可動ピンとが係合状態にあるときに、前記本体部を前記駆動部材の駆動力により上昇方向へ移動させ得ることを特徴とする請求項1記載の温室用換気装置。
【請求項3】
前記可動部材に、前記換気部材の自由端に設けた係止部に取り外し可能に結合し得る結合部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の温室用換気装置。
【請求項4】
前記通路が、前記第2領域と連通し、前記ガイドピンがはまり込むことにより一方向へ回転した前記係止部材の逆方向への回転を阻止し、前記係止部材の回動を停止させ得る第3領域を有することを特徴とする請求項1記載の温室用換気装置。
【請求項5】
前記係止部材に連結され、引っ張ることにより、前記係止部材を一方向へ回転させ、前記第1領域から脱出した前記ガイドピンを前記第2領域内で回動させ得る第2線状部材を有することを特徴とする請求項1記載の温室用換気装置。
【請求項6】
前記可動部材を上昇方向へ移動させるために必要な引っ張り力を減少させ得るように、前記第1線状部材が掛けられる滑車が設けられていることを特徴とする請求項1記載の温室用換気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−118893(P2008−118893A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305321(P2006−305321)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(390010814)株式会社誠和 (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(390010814)株式会社誠和 (31)
【Fターム(参考)】
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