説明

温室用暖房装置

【課題】温室内を二重壁構造とし、その内側を暖房用配管の輻射熱により、清浄に暖房しうるとともに、外側に排熱を導いて、内室と外気との中間層を暖房することにより、暖房効果を高め、ランニングコストを低減できるようにした温室用暖房装置を提供する。
【解決手段】温室1内に、培地Gを覆う内室Aとその外側の外室Bとを仕切る開閉可能な遮蔽装置3を設けるとともに、内室A内に、気体の熱媒体を流通させることにより、内室A内を暖房する暖房用配管11を設け、この暖房用配管の端末を、外室Bに開放し、熱媒体を、外室Bに導入しうるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室用暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温室内を効率よく暖房する手段として、温室内の上部に配設したエアダクトから、暖気を下方の栽培作物に向けて吹き付けるとともに、培地に埋設した培地配管に熱媒体を流通させて培地を暖房し、上記暖気と培地配管に流通させる熱媒体とを、共通の熱源発生装置から取り出すようにしたもの(例えば特許文献1参照)や、温室専用の暖房装置の他に、他の施設の廃熱を利用する廃熱暖房装置とを並設し、この廃熱暖房装置を優先的に利用するようにしたもの(例えば特許文献1参照)等がある。
【特許文献1】特開2006−325516号公報
【特許文献2】特開2006−204161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような従来の暖房装置では、寒冷地等における夜間に、温室の外壁から放散される熱量が大きく、ランニングコストが高騰する原因となっている。
【0004】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、温室内を二重壁構造とし、その内側を暖房用配管の輻射熱により、清浄に暖房しうるとともに、外側に排熱を導いて、内室と外気との中間層を暖房することにより、暖房効果を高め、ランニングコストを低減できるようにした温室用暖房装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1)温室内に、培地を覆う内室とその外側の外室とを仕切る開閉可能な遮蔽装置を設けるとともに、前記内室内に、熱媒体としての気体を流通させることにより、内室内を暖房する暖房用配管を設け、この暖房用配管の端末を、前記外室に開放し、前記熱媒体を、外室に導入しうるようにする。
【0006】
(2)上記(1)項において、暖房用配管の端末部に、熱媒体を外室と温室外とに選択的に導くダンパを設ける。
【0007】
(3)上記(1)または(2)項において、暖房用配管の基端を、温風発生装置に接続し、熱媒体を、温風発生装置より発生する温風とする。
【0008】
(4)上記(3)項において、温風発生装置を、灯油を燃焼し、その燃焼ガスを温風とする灯油燃焼式のものとする。
【0009】
(5)上記(3)または(4)項において、外気温を測定する外気温センサと、内室内の温度を測定する室温センサと、前記各センサに接続され、かつ外気温センサおよび室温センサが、それぞれについて予め定めた設定温度より低い温度を検知したとき、遮蔽装置を閉じ、かつ温風発生装置を作動させるように制御する制御装置とを設ける。
【0010】
(6)上記(5)項において、制御装置に日照センサを接続し、制御装置において、日照センサが夜間であることを検知し、かつ外気温センサおよび室温センサが、それぞれについて予め定めた設定温度より低い温度を検知したとき、遮蔽装置を閉じ、かつ温風発生装置を作動させるように制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によると、遮蔽装置により、温室内を内室と外室とに仕切った状態で暖房装置を作動させることにより、内室内は、熱媒体が流通する暖房用配管の輻射熱により、清浄な状態で暖房され、しかも、暖房用配管の端末から排出される熱媒体としての気体が外室に導入され、排熱により外室が暖められることによって、内室内の暖かい空気が外気によって直接冷却されることがなくなり、暖房効果を高め、ランニングコストを低減することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によると、遮蔽装置を開いた状態で、温室内全体を清浄に暖房したい場合に、ダンパの切り替えにより、熱媒体をすべて温室外に排出し、温室内全体を清浄に保つことができる。また、このダンパを、外室に導く熱媒体の量を調節できるタイプのものとすると、余剰の熱媒体は、温室の外部に排出することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によると、温風発生装置より発生する温風を、熱媒体として使用するので、温室内全体を清浄に暖房することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によると、温風発生装置を、灯油を燃焼し、その燃焼ガスを温風とする灯油燃焼式のものとしてあるので、ランニングコストを低減することができるとともに、灯油の燃焼時に生じる炭酸ガスを、植物の生育に用いることもできる。
【0015】
請求項5記載の発明によると、外気温センサと室温センサと制御装置とにより、外気温と室温とがそれぞれ予め定めた設定温度より低い温度まで低下すると、自動的に遮蔽装置を閉じ、かつ温風発生装置を作動させて、適切な暖房を図ることができる。
【0016】
請求項6記載の発明によると、日照センサを制御ファクタの一つとして導入して制御するようにしてあるので、遮蔽装置を閉じた状態での温風発生装置の作動を、夜間のみに限定することができ、日照のある昼間の太陽エネルギーを有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1および図2は、本発明の一実施形態を備える温室を示している。なお、図1における左下が前方、同じく右上が後方である。
温室1は、稜線が前後方向を向く切り妻形屋根を有し、かつ建屋の外形を構成すべく枠組みされたサッシ枠と、サッシ枠間に張設された透明ガラス、または透明ビニールシートなどの透光性の部材により構成された建屋躯体2と、温室1内を、培地Gを覆う内室Aとその外側の外室Bとを仕切る開閉可能な遮蔽装置3とを備えており、培地Gに耕作した複数の畝上に、植物を植設し、温室栽培を行うことができるようになっている。また、建屋躯体2の天井部には、天窓4が開閉可能に設けられ、昼間時などの比較的外気温が高い時間帯に、天窓4を開いて温室1の内部に新鮮な外気を取入れるようにしている。
【0018】
建屋躯体2の長手方向一端部の外側には、これに隣接して暖房用の温風発生装置5が配設されている。温風発生装置5は、灯油を燃焼し、その燃焼ガスを温風とする灯油燃焼式のものであり、本体部6と、本体部6の一側部に接続した灯油タンク7と、本体部6の他側部に連結したバーナ8と、本体部6の上部に設けられた初期排気用の煙突9と、煙突9の基部に設けられ、かつ本体部6より発生する燃焼ガスを、煙突9側と温室1側とに選択的に切換えて供給するダンパ10と、このダンパ10の温室1側出口に接続され、かつ温室1の内室A内の両側部に分岐して配設された暖房用配管11と、暖房用配管11の各分岐部の基部に設けられた強制循環用のファン12とを備えている。
【0019】
暖房用配管11は、本体部6より発生する燃焼ガスが熱媒体として流通することにより、表面が加熱され、その輻射熱により、内室A内を暖房するようにしたもので、図示の例では、内室A内の培地G上の両側部に1対配設しただけのものとしてあるが、例えば、それらを畝に沿って蛇行するように配設したり、畝内に埋設したり、または3枝以上に分岐して配設したりすることもできる。
【0020】
内室Aを出た1対の暖房用配管11は、温室1の側端部における外室B内において立上り、さらに上端部が互いに内方に向かって折曲されている。
【0021】
図2に示すように、遮蔽装置3は、温室1内の両側下部に配設した1対の巻取軸13、13に巻き取られた遮蔽カーテン3aを、案内手段であるガイドローラ14、15により、上方に向かった後、互いに内方に向かう正面視倒立L字状に引き出されるように案内するとともに、各遮蔽カーテン3aの先端に止着したワイヤ16を、各遮蔽カーテン3aが巻かれている巻取軸13と反対側の内室A内の側部に配設した巻取軸17により巻き取るようにしてある。
各遮蔽カーテン3aは、遮熱性の透明なビニールシート、キャンバス地、または布等により形成するのが好ましい。
【0022】
ワイヤ16は、案内手段であるガイドローラ18、19により、遮蔽カーテン3aと同様に、巻取軸17から上方に向かった後、互いに内方に向かう正面視倒立L字状に引き出されるように案内されている。
【0023】
左右に隣接するワイヤ16巻き取り用の巻取軸17と、遮蔽カーテン3a巻き取り用の巻取軸13とは、巻掛け連動手段である無端ベルト20が掛け回されることにより、互いに同期して連動されている。
【0024】
したがって、いずれか一方の巻取軸17(または巻取軸13)を、モータ21により、予め定めた一方向に回転させることにより、左右の巻取軸17、17は同期して回転させられ、両ワイヤ16を同期して巻き取り、それによって、遮蔽カーテン3a、3aは、左右の巻取軸13から繰り出されて、図2に示すように、両先端部が温室1内の上部中央において互いに上下に重合また近接する閉止位置まで閉じられる。
【0025】
この状態で、内室Aの両側面と上面とが閉塞される。
なお、内室Aの前後の端面は、透光性のビニールシート等により常時閉塞しておく。
【0026】
モータ21を逆転させて、いずれかの巻取軸17を、上記と逆の方向に回転させると、上記と逆の作用で、左右の遮蔽カーテン3a、3aは、両巻取軸13、13に巻き取られ、遮蔽装置3は開かれる(開いた状態は図示略)。
【0027】
左右の暖房用配管11、11の端末部には、送られてきた燃焼ガスを、外室B内の上部に導く内向き配管22と、建屋躯体2の壁面を貫通して、燃焼ガスを温室1外に導く外向き配管23とに選択的に供給するアクチュエータ付きのダンパ24が、それぞれ設けられている。
【0028】
ダンパ24は、図3に示すように、暖房用配管11の先端部に接続されたハウジング24aと、駆動用サーボモータ(または電磁ソレノイド等)からなるアクチュエータ(または手動操作ハンドル)に連結されるとともに、ハウジング24a内に回動可能に設けられたダンパ板24bとを備えており、後述するような制御装置の作動により、ダンパ板24bが、図3(a)に示すように、燃焼ガスを外向き配管23を介して外部に放出する第1切換位置と、図3(b)に示すように、燃焼ガスを内向き配管22を介して外室B内に放出する第2切換位置と、図3(c)に示すように、燃焼ガスを適宜の割合で分配して内向き配管22と外向き配管23との両方に供給する中間切換位置とのいずれかに切り換えられる。
【0029】
上記遮蔽装置3におけるモータ21、ダンパ24、および温風発生装置5等は、例えば押しボタンスイッチなどの手動操作により個別に駆動されるほか、図4に示すような制御装置25により自動的に制御されるようにするのが好ましい。
【0030】
この制御装置25は、外気温を測定する外気温センサ26と、内室A内の温度を測定する室温センサ27と、日照センサ28と、上記の遮蔽装置3におけるモータ21、ダンパ24、および温風発生装置5にそれぞれ接続され、図5のフローチャートに示すように、日照センサ28が夜間であることを検知(ST1)し、かつ外気温センサ26および室温センサ27が、それぞれについて予め定めた設定温度より低い温度を検知したとき(ST2、ST3)、モータ21を正転させて、遮蔽装置3を閉じ(ST4)、ダンパ24を図3(b)に示す第2切換位置に自動的に切り換え(ST5)、かつ温風発生装置5を作動させる(ST6)ようになっている。
【0031】
この制御装置25の作動により、遮蔽装置3が閉じられた状態で、温風発生装置5より発生する燃焼ガスが、熱媒体として、暖房用配管11に供給され、内室A内は、暖房用配管11の輻射熱により、清浄な状態で暖房され、しかも、暖房用配管11の先端からから出た燃焼ガスは、ダンパ24および内向き配管22を通って、外室Bに導入され、この燃焼ガスの余熱により外室Bが暖められる。
したがって、内室A内の暖かい空気が、外気によって直接冷却されることがなくなり、暖房効果を高め、ランニングコストを低減することができる。
【0032】
外室B内に導入された燃焼ガスは、天窓4その他の隙間から外部に放出されるが、建屋躯体2の気密性が高い場合には、ダンパ24の第2切換位置への切り換えに連動して、天窓4を自動的に開くようにするか、または建屋躯体2に設けた排気用ファン(図示略)を作動させるようにするのがよい。
【0033】
また、温風発生装置5の作動の初期には、不完全燃焼の燃焼ガスが発生するが、その時期だけ、燃焼ガスがすべて煙突9より外部に排気されるように、ダンパ10を切り換えておくか、または、不完全燃焼の燃焼ガスもすべて暖房用配管11に供給し、温風発生装置5の作動の初期だけ、ダンパ24を第1切換位置へ切り換えておき、暖房用配管11を通った不完全燃焼の燃焼ガスを、すべて外向き配管23より外部に排気させるようにするのがよい。
【0034】
温風発生装置5の安定作動時には、燃焼ガスには、人体に影響のない程度の微量の炭酸ガスが含まれるが、この炭酸ガスは、遮蔽装置3が閉じられていることにより、内室B内に洩れるおそれは少なく、万一洩れたとしても、植物の生育を助長することはあっても、害となることはない。
【0035】
なお、本発明は、上記の実施形態のみに制限されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、変形した態様での実施が可能である。
例えば、日照センサ28を省略して実施したり、制御装置25そのものを省略して、すべて手動で操作することもできる。
温風発生装置5は、燃料ガスや重油を燃焼させて、その燃焼ガスを温風とする型式のものとすることができる(重油燃焼式の場合は、燃焼ガスの浄化装置を並設するのが好ましい)。
また、暖房用配管11に供給する熱媒体は、温風発生装置5から発生する燃焼ガスに限られるものではなく、例えば、ボイラーから発生する蒸気、その他の高温の気体とすることができる。
さらに、遮蔽装置3における遮蔽カーテン3aの開閉機構は、どのような構造のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態を備える温室の外観斜視図である。
【図2】同じく、概略縦断正面図である。
【図3】(a)〜(c)は、ダンパの異なる切換状態を示す横断平面図である。
【図4】制御装置とその接続関係を示す説明図である。
【図5】制御態様を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1 温室
2 建屋躯体
3 遮蔽装置
3a遮蔽カーテン
4 天窓
5 温風発生装置
6 本体部
7 灯油タンク
8 バーナ
9 煙突
10 ダンパ
11 暖房用配管
12 ファン
13 巻取軸
14、15 ガイドローラ
16 ワイヤ
17 巻取軸
18、19 ガイドローラ
20 無端ベルト
21 モータ
22 内向き配管
23 外向き配管
24 ダンパ
24aハウジング
24bダンパ板
25 制御装置
26 外気温センサ
27 室温センサ
28 日照センサ
A 内室
B 外室
G 培地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室内に、培地を覆う内室とその外側の外室とを仕切る開閉可能な遮蔽装置を設けるとともに、前記内室内に、熱媒体としての気体を流通させることにより、内室内を暖房する暖房用配管を設け、この暖房用配管の端末を、前記外室に開放し、前記熱媒体を、外室に導入しうるようにしたことを特徴とする温室用暖房装置。
【請求項2】
暖房用配管の端末部に、熱媒体を外室と温室外とに選択的に導くダンパを設けた請求項1記載の温室用暖房装置。
【請求項3】
暖房用配管の基端を、温風発生装置に接続し、熱媒体を、温風発生装置より発生する温風とした請求項1または2記載の温室用暖房装置。
【請求項4】
温風発生装置を、灯油を燃焼し、その燃焼ガスを温風とする灯油燃焼式のものとした請求項3記載の温室用暖房装置。
【請求項5】
外気温を測定する外気温センサと、内室内の温度を測定する室温センサと、前記各センサに接続され、かつ外気温センサおよび室温センサが、それぞれについて予め定めた設定温度より低い温度を検知したとき、遮蔽装置を閉じ、かつ温風発生装置を作動させるように制御する制御装置とを設けた請求項3または4記載の温室用暖房装置。
【請求項6】
制御装置に日照センサを接続し、制御装置において、日照センサが夜間であることを検知し、かつ外気温センサおよび室温センサが、それぞれについて予め定めた設定温度より低い温度を検知したとき、遮蔽装置を閉じ、かつ温風発生装置を作動させるように制御するようにした請求項5記載の温室用暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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