説明

温度センサユニット

【課題】取り付けや取り外し等を容易に行うことのできる温度センサユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】温度センサユニット10は、熱を発するコイルの内周部分と中央部における温度を検出するセンサアダプタ30およびセンターセンサ50が一体に備えられたユニットとされ、センサアダプタ30は、中央部に配置されたホルダ20に対し、着脱可能に設ける構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鍋等の炊事具をIH(Induction Heating)クッキングヒータ等の上に搭載した状態で、炊事具の底面の温度を検出するための温度センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
IHクッキングヒータ等の誘導加熱式の調理器においては、調理器の天板上に炊事具である鍋等を載せた状態で炊事具を加熱することで調理を行う。このとき、調理器に備えた温度センサによって鍋底の温度を検出し、その温度をコントローラで監視することで、調理中に鍋の内部が調理に適当な温度状態になっているか否か、あるいは、鍋底が異常な高温になっていないか、等をモニタリングし、加熱度合いの調整や、加熱の停止等を制御することが行われている。
このような目的に用いられる温度センサは、サーミスタ式が主流となっていて、従来から、種々の形式のものが提案されている。
【0003】
ところで、ガスコンロのように鍋を載せる五徳のないIHクッキングヒータにおいては、鍋を置く位置の目安として、天板の加熱コイルに対応した位置に円形の線が描かれているものの、線から鍋がずれたとしても、ガスコンロのように五徳から鍋が落ちそうになって不安定になることもない。このため、鍋が天板の円形の線から大きくずれたままとなることがある。すると、温度センサで鍋底の温度を検出することができなくなることがある。その結果、いくら鍋を加熱しても、温度センサでの検出温度が上がらないために加熱し続けてしまい、鍋を加熱し過ぎてしまう可能性がある。
そこで、近年、IHクッキングヒータにおいて、温度センサを複数箇所に設け、鍋の温度を確実に検出することが行われつつある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−4212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の温度センサを設ける場合、温度センサの取り付けに手間が掛かり、IHクッキングヒータの製造コスト上昇に繋がる。
また、いずれかの温度センサが壊れた場合も、IHクッキングヒータのフレームやブラケットに取り付けられた温度センサそのものを取り外すだけでなく、温度センサに接続されたリード線を、IHクッキングヒータのコントローラ側のコネクタから取り外さなければならない。このため、故障時においても、その対応に手間とコストが掛かることになる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、取り付けや取り外し等を容易に行うことのできる温度センサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもとになされた本発明は、通電されることにより磁場を発生して調理容器を加熱する環状のコイルを備えた誘導加熱調理器に用いられる温度センサユニットであって、コイルの内方に配置されるホルダと、ホルダの外周部に対して装着される1以上のセンサアダプタと、センサアダプタの表面に設けられ、コイルで加熱される調理容器の温度を検出する温度検出素子と、を備えることを特徴とする。
このように、温度検出素子を備えたセンサアダプタを、ホルダに装着してユニット化を図ることで、誘導加熱調理器への組付けをユニットごと容易に行える。
また、ホルダに対し、センサアダプタを取り付けることで、温度検出素子を位置のばらつきなく設けることができる。
加えて、センサアダプタとして、長さの異なるものを複数種類を用意しておくことで、温度検出素子の位置をコイルの径方向に異ならせた複数種の温度センサユニットを構成できる。
【0007】
このような温度センサユニットは、ホルダの表面に、コイルの内方の空間の中央部に位置する第二の温度検出素子を設けることができる。
【0008】
ここで、ホルダの裏面に、当該ホルダを誘導加熱調理器に固定するための取付部を形成しておくのが好ましい。
【0009】
センサアダプタの温度検出素子は、コイルの内周側の上方に配置されるよう、センサアダプタの長さが設定されるのが好ましい。
【0010】
センサアダプタが複数備えられる場合、これらセンサアダプタの温度検出素子に接続されたリード線は、一つのコネクタに接続するのが好ましい。これにより、リード線の接続の手間を軽減するとともに、誤配線を防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温度検出素子を備えたセンサアダプタを、ホルダに装着してユニット化をはかることで、誘導加熱調理器への組付けをユニットごと容易に行え、誘導加熱調理器の組立の効率化を図ることができる。
また、交換の際も、温度センサユニットごと交換すればよいので、これも容易に行える。
さらに、長さの異なるセンサアダプタを複数種類用意しておくことで、温度検出素子の位置をコイルの径方向に異ならせた複数種の温度センサユニットを構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態における調理器の構成を示す断面図である。
【図2】温度センサユニットの斜視図である。
【図3】(a)はホルダの平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)はホルダの側面図、(d)はホルダの底面図である。
【図4】ホルダの要部を示す斜視図である。
【図5】センサアダプタを示す斜視図である。
【図6】(a)はセンサアダプタの平面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)はセンサアダプタの側面図、(d)はセンサアダプタの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における温度センサユニット10の構成を説明するための図である。
図1に示すように、IHクッキングヒータ誘導加熱調理器100には、その上面を形成する天板101の下面側に近接して、環状に形成されて天板101と平行な面内に位置するコイル110が設けられている。
温度センサユニット10は、環状のコイル110の中央の開口部110a内に配置されている。
【0014】
図1、図2に示すように、温度センサユニット10は、中央部に位置するホルダ20と、ホルダ20の外周部に着脱自在に装着されたセンサアダプタ30と、ホルダ20の中央部に設けられたセンターセンサ50と、から構成されている。本実施形態において、センサアダプタ30は、ホルダ20の外周部に、周方向に等間隔に3個設けられている。もちろん、その数はこれに限るものではない。
【0015】
図3、図4に示すように、ホルダ20は、樹脂等から形成され、略円板状で、その下面20aに、IHクッキングヒータ100の図示しないブラケットに保持される保持部(取付部)21が形成されている。
【0016】
ホルダ20の外周部には、センサアダプタ30が装着されるセンサ装着部22が形成されている。このセンサ装着部22には、互いに平行で所定長を有した一対のガイド溝23、23が形成されている。これらガイド溝23、23間には、ホルダ20の下面20a側に開口する保持溝24が形成されている。すなわち、ガイド溝23、23間は、保持溝24の側面および底面を形成する断面略逆U字状の保持部25が形成されている。
【0017】
また、ガイド溝23、23の外側には、ホルダ20の上面20bよりも低く、ガイド溝23、23の底面よりも高く形成された平面状の段部26、26が形成されている。段部26、26の所定位置には、後述する係合爪45が係合する係合溝27、27が形成されている。段部26、26には、係合溝27、27に連続して、ホルダ20の外周側に向けて延びるスライド溝28、28が形成されている。スライド溝28、28は、係合溝27、27よりも浅く形成され、ホルダ20の外周部に臨む部分においては、ホルダ20の外周側にいくに従い、その深さが漸次拡大する傾斜面28aとされている。
【0018】
図5、図6に示すように、センサアダプタ30は、平面視矩形の板状とされ、その一端側が温度検出部31とされている。温度検出部31は、センサアダプタ30をホルダ20に装着した状態で、IHクッキングヒータ100の天板101側に臨む面に形成され、天板101の下面に押し付けられる。この温度検出部31は、樹脂製のユニット本体32の上面に、クッション性を有するセラミックペーパ(セラミック系材料を繊維状としたもの)等からなる緩衝層33と、サーミスタ素子(温度検出素子)34と、サーミスタ素子34を覆うように設けられ、例えばゴム系材料からなる感熱層35と、これら緩衝層33、サーミスタ素子34、感熱層35を覆う保護層36と、が積層されることで形成されている。緩衝層33は、そのクッション性により、サーミスタ素子34を天板101の下面に押しつける。感熱層35は、天板101の下面側の熱を吸収することで、サーミスタ素子34における感温性能を向上させるためのものである。保護層36は、粘着テープによって形成することができ、この粘着テープをユニット本体32に巻き付けて貼着することで形成できる。
【0019】
前記のサーミスタ素子34の両極にはデュメット線37、37の一端が接続されている。このデュメット線37、37は、他端が、センサアダプタ30の他端側の下面に設けられた金属板38、38にそれぞれ溶接されている。
【0020】
そして、金属板38、38には、リード線39、39の一端が溶接され、これによってデュメット線37、37とリード線39、39が電気的に接続されている。
【0021】
センサアダプタ30の他端側は、ホルダ20のセンサ装着部22に着脱自在に装着可能とされたホルダ装着部41とされている。ホルダ装着部41は、ガイド溝23、23に挿入可能な断面形状とされた、互いに平行に延びる第一ガイド部42、42と、第一ガイド部42、42間に形成されて保持溝24に挿入可能な断面形状とされた第二ガイド部43とを有する。
【0022】
第一ガイド部42、42は、ガイド溝23、23に挿入するときに、保持部25との干渉を避けるため、その先端部の角部42a、42aが面取りされている。
【0023】
第二ガイド部43は、その先端部43aの一定長が、保持溝24に対応した断面形状とされている。第二ガイド部43の基端部43b側は先端部43aよりも断面積が拡大することで、段部44が形成されている。
【0024】
第一ガイド部42、42から、センサアダプタ30の短手方向外方に向けて、前記の金属板38、38が突出し、その先端部が下方に折曲されることで、断面L字状の係合爪45、45が形成されている。係合爪45は、下方への突出高さが、センサアダプタ30の他端側側から一端側に向けて漸次拡大し、センサ装着部22への挿入時に、スライド溝28、28の傾斜面28a、28aへの乗り上げ・スライドが容易に行えるようになっている。
【0025】
また、第一ガイド部42、42と、第二ガイド部43との間に形成されたスリット46、46には、リード線39、39が通され、センサアダプタ30の下方に向けて導かれている。
【0026】
このようなセンサアダプタ30は、ホルダ20のセンサ装着部22に対し、ホルダ装着部41を、センサアダプタ30の長手方向に沿って挿入する。すると、第一ガイド部42、42がスライド溝23、23上をスライドし、第二ガイド部43が、保持溝24の下側に挿入される。この状態で、第一ガイド部42、42の下面がスライド溝23、23にサポートされ、第二ガイド部43の上面が保持溝24にサポートされることで、センサアダプタ30は、上下方向に回動しないよう拘束される。また、第一ガイド部42、42、第二ガイド部43の側面がスライド溝23、23、保持溝24に当たることで、センサアダプタ30がホルダ20の表面に沿った面内で回動しないよう拘束される。
また、段部44が保持部25に突き当たることで、センサアダプタ30のセンサ装着部22への挿入量が規制される。
【0027】
また、上記のようにセンサアダプタ30のホルダ装着部41をホルダ20のセンサ装着部22に挿入していくと、係合爪45、45が、段部26に形成されたスライド溝28、28の傾斜面28a、28aに乗り上げ、上方に向けて弾性変形する。さらにセンサアダプタ30を押し込んでいくと、係合爪45、45は、スライド溝28、28にスライドしていく。そして、段部44が保持部25に突き当たるときに、係合爪45、45が係合溝27、27にはまり込み、これによってセンサアダプタ30がホルダ20から容易には脱落しないようになっている。
【0028】
また、段部44が保持部25に突き当たった状態で、保持部25とスリット46、46の端部との隙間から、リード線39、39が下方に導出するようになっている。
【0029】
このようにしてホルダ20に装着されたセンサアダプタ30は、先端側を上方にひねるようにすると、係合爪45、45と係合溝27、27との係合が解除でき、そのままセンサアダプタ30を引き抜くことで、ホルダ20から取り外すことができる。
【0030】
図2および図4に示したように、センターセンサ50は、センサアダプタ30の温度検出部31と同様の構成とすることができる。すなわち、樹脂製のセンサ本体52の上面に、クッション性を有するセラミックペーパ(セラミッック系材料を繊維状としたもの)等からなる緩衝層53と、サーミスタ素子(第二の温度検出素子)54と、サーミスタ素子54を覆うように設けられ、例えばゴム系材料からなる感熱層55と、これら緩衝層53、サーミスタ素子54、感熱層55を覆う保護層56と、が積層されることで形成されている。
【0031】
緩衝層53は、そのクッション性により、サーミスタ素子54を天板101の下面に押しつける。感熱層55は、天板101の下面側の熱を吸収することで、サーミスタ素子54における感温性能を向上させるためのものである。保護層56は、粘着テープによって形成することができ、この粘着テープをセンサ本体52に貼り付けることで形成できる。
【0032】
このセンターセンサ50は、センサ本体52が、ホルダ20の上面中央部に形成された凹部29にはめ込まれて接着されることで固定されている。
【0033】
前記のサーミスタ素子54の両極にはデュメット線57、57の一端が接続されている。このデュメット線57、57は、他端が、ホルダ20の上面の外周部に設けられた金属板58、58にそれぞれ溶接されている。
そして、金属板58、58には、リード線59、59の一端が溶接され、これによってデュメット線57、57とリード線59、59とが電気的に接続されている。
【0034】
リード線59、59は、ホルダ20に形成された貫通孔60を通して、ホルダ20の下面側に導かれている。
【0035】
そして、ホルダ20の下面側において、各センサアダプタ30のリード線39、39と、センターセンサ50のリード線59、59は、一つのコネクタ(図示無し)に接続されている。
【0036】
図1に示したように、このような温度センサユニット10は、ホルダ20の外周部にセンサアダプタ30が装着された状態で、IHクッキングヒータ100の図示しないブラケットに保持部21をはめ込むことで、IHクッキングヒータ100に装着される。そして、コネクタ(図示無し)が、IHクッキングヒータ100の図示しないコントローラ側のコネクタに接続される。
この状態で、センターセンサ50が、IHクッキングヒータ100のコイル110の内方の空間の中央部に位置し、ホルダ20から外周に突出する各センサアダプタ30は、コイル110の上方に張り出し、温度検出部31がコイル110の内周側の上方に位置するようになっている。
【0037】
IHクッキングヒータ100のコントローラでは、各センサアダプタ30およびセンターセンサ50のサーミスタ素子34、54を天板101の下面に押し付けて温度を検出することで、IHクッキングヒータ100の天板101上の調理容器の底の温度を検出し、加熱温度の制御を行う。
【0038】
上述した温度センサユニット10は、熱を発するコイル110の内周部分と中央部における温度を検出するセンサアダプタ30およびセンターセンサ50が一体に備えられたユニットとされているので、IHクッキングヒータ100への組付けを容易かつ効率よく行うことが可能となる。
また、故障等により部品を交換するときも、温度センサユニット10ごとユニット交換すればよいので、これも容易に行える。
【0039】
また、複数のセンサアダプタ30のリード線39、39と、センターセンサ50のリード線59、59とが、一つのコネクタ(図示無し)に接続されているので、温度センサユニット10の組付け時に誤配線を防ぐことができる。
【0040】
さらに、ホルダ20に対し、センサアダプタ30をワンタッチで取り付けることができるので、温度センサユニット10の組立も容易で、各センサアダプタ30のサーミスタ素子34も位置のばらつきなく設けることができる。
【0041】
加えて、センサアダプタ30として、長さの異なるものを複数種類用意しておくことで、センサアダプタ30の種類を変更するだけで、サーミスタ素子34の位置(径)が異なる複数種の温度センサユニット10を構成できる。これにより、IHクッキングヒータ100に備えられるコイル110の径に応じて、最適なサイズの温度センサユニット10を提供できる。
コイル110の径の種類が増えても、長さの異なるセンサアダプタ30を用意すればよいので、低コストでこれに対応することが可能となる。
【0042】
なお、上記実施の形態では、温度センサユニット10の各部の構成を詳細に説明したが、センサアダプタ30の数や形状、センサアダプタ30とホルダ20とを装着するための構造等は、適宜他の構成とすることができる。
また、センサアダプタ30の温度検出部31や、センターセンサ50における温度検出方式も、適宜他の方式とすることも可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10…温度センサユニット、20…ホルダ、21…保持部(取付部)、22…センサ装着部、30…センサアダプタ、31…温度検出部、34…サーミスタ素子(温度検出素子)、39、59…リード線、50…センターセンサ、54…サーミスタ素子(第二の温度検出素子)、100…IHクッキングヒータ(誘導加熱調理器)、101…天板、110…コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電されることにより磁場を発生して調理容器を加熱するための環状のコイルを備えた誘導加熱調理器に用いられる温度センサユニットであって、
前記コイルの内方に配置されるホルダと、
前記ホルダの外周部に対して装着される1以上のセンサアダプタと、
前記センサアダプタの表面に設けられ、前記コイルで加熱される前記調理容器の温度を検出する温度検出素子と、
を備えることを特徴とする温度センサユニット。
【請求項2】
前記ホルダの表面に、前記コイルの内方の空間の中央部に位置する第二の温度検出素子が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の温度センサユニット。
【請求項3】
前記ホルダの裏面に、当該ホルダを前記誘導加熱調理器に固定するための取付部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の温度センサユニット。
【請求項4】
前記センサアダプタの前記温度検出素子が、前記コイルの内周側の上方に配置されるよう、前記センサアダプタの長さが設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の温度センサユニット。
【請求項5】
前記センサアダプタが複数備えられ、これら前記センサアダプタの前記温度検出素子に接続されたリード線が、一つのコネクタに接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の温度センサユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate