説明

温度センサ

【課題】 温度センサにおいて、回路基板上の電子部品から離間して実装されても高精度に該電子部品の温度測定が可能にすること。
【解決手段】 回路基板上の電子部品から離間して回路基板上に実装され電子部品の温度を測定する温度センサ1であって、チップ状の基体3と、該基体3の表面にサーミスタ薄膜4で別々に形成された基準部5及び検出部6と、基体3に形成され基準部5及び検出部6にそれぞれ接続された複数の電極9と、を備え、基準部5が、遮光膜7で覆われ、検出部6が、回路基板上に実装された状態で電子部品から放射される赤外線を透明部材8を介して検出可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板上の電子部品の温度を非接触で測定可能な温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、回路基板上に実装された電子部品のうち、発熱するICやパワートランジスタ等の温度を測定して、当該電子部品の温度管理が行われている。
このような回路基板上の電子部品について温度を測定するために、従来、回路基板上にサーミスタ素子を温度センサとして実装しているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子回路基板に雰囲気の温度検知を行うサーミスタ素子である温度検知素子を実装し、熱伝導抑制手段により電子回路基板の周辺回路と温度検知素子との熱伝導を抑制する電子回路基板が提案されている。この電子回路基板では、測定対象である電子部品が実装される同じ電子回路基板にサーミスタ素子を実装し、雰囲気を温度検知することで、温度管理を行うものである。なお、熱伝導抑制手段としては、サーミスタ素子の配線パターンを除いて回路基板の各層で配線パターンに用いられる銅箔等の金属膜を削除した構造が採用されている。
【0004】
また、特許文献2には、被検知体の表面温度を非接触で測定するサーミスタ素子を用いた温度センサが提案されている。この温度センサは、例えば電子写真システムのヒートローラ等の被検知体に対して裏面側に赤外線吸収性ガラスで溶封されたサーミスタ素子を被検知体に近接配置し、赤外線輻射によって非接触で被検知体の温度測定を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−141622号公報
【特許文献2】特開2004−205417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1では、測定対象の電子部品が実装される同じ回路基板上に温度センサであるサーミスタ素子を実装して雰囲気の温度を測定しているが、この場合、回路基板上に実装されている特定の電子部品の温度を個別に測定することができない。
また、回路基板に実装される電子部品の中には、発熱により高温になることから放熱のために金属膜による放熱面に接触させて実装されたものがある。この場合、放熱面があるため、温度センサを測定対象の電子部品に近接させて実装させることができない。したがって、特許文献2に記載の温度センサのように、被検知体に近接させて実装させることができず、温度センサを電子部品から距離を空けて実装しなければならず、温度測定の誤差が大きくなってしまう不都合があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、回路基板上の電子部品から離間して実装されても高精度に該電子部品の温度測定が可能な温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の温度センサは、回路基板上の電子部品から離間して前記回路基板上に実装され前記電子部品の温度を測定する温度センサであって、チップ状の基体と、該基体の表面にサーミスタ薄膜で別々に形成された基準部及び検出部と、前記基体に形成され前記基準部及び前記検出部にそれぞれ接続された複数の電極と、を備え、前記基準部が、遮光膜で覆われ、前記検出部が、前記回路基板上に実装された状態で前記電子部品から放射される赤外線を直接又は光学部材を介して検出可能とされていることを特徴とする。
【0009】
この温度センサでは、検出部が回路基板上に実装された状態で電子部品から放射される赤外線を直接又は光学部材を介して検出可能とされているので、検出部を直接又は光学部材を介して測定対象である電子部品に向けて実装することで、電子部品から放射される赤外線のみを検出部で検出する。また、遮光膜で覆われて赤外線を遮断した基準部で測定した温度を、回路基板から伝導された熱による温度上昇分として考慮し、検出部と基準部との差分を求めることで、電子部品の正確な温度測定が可能になる。また、チップ状の基体に基準部と検出部とが形成されているため、電子部品に対して検出部又は光学部材の向きを設定した状態で回路基板上に容易に表面実装可能である。
【0010】
また、本発明の温度センサは、前記基体の下面が前記回路基板上への実装面とされていると共に前記基体の上面に前記基準部と前記検出部とが形成され、前記検出部の表面に、前記光学部材として透明部材が固定され、該透明部材の露出表面のうち、一つの側面以外が遮光膜で覆われていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、検出部の表面に、光学部材として透明部材が固定され、透明部材の露出表面のうち、一つの側面以外が遮光膜で覆われているので、透明部材の遮光膜で覆われていない側面を電子部品に向けることで、電子部品からの赤外線を該側面から入射させると共に透明部材の下面から検出部へ導いて温度検出を行うことができる。このように、透明部材の遮光膜で覆われていない側面を窓部とすることで、赤外線検出に指向性を持たせることができ、検出部が上面に形成されていても、正確に測定対象の電子部品の温度測定が可能になる。
【0011】
また、本発明の温度センサは、前記基体の下面が前記回路基板上への実装面とされていると共に前記基体の一つの側面に前記基準部と前記検出部とが形成されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、基体の下面が回路基板上への実装面とされていると共に基体の一つの側面に基準部と検出部とが形成されているので、側面に形成された検出部を直接電子部品に向けて実装することで、電子部品からの赤外線を指向性を持って検出部へ入射させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、基準部が、遮光膜で覆われ、検出部が回路基板上に実装された状態で電子部品から放射される赤外線を直接又は光学部材を介して検出可能とされているので、遮光された基準部と電子部品からの赤外線が入射可能な検出部との差分から電子部品の正確な温度を離間した位置で測定可能になる。
したがって、本発明の温度センサでは、回路基板上に広い放熱面が必要とされる電子部品であっても、放熱面を避けて同じ回路基板上に表面実装可能であると共に、電子部品から離間した位置でも非接触で温度測定可能となる。これにより、温度センサの回路基板に対する実装自由度が向上すると共に、電子部品の温度管理を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る温度センサの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態において、温度センサを示す分解斜視図である。
【図3】第1実施形態において、温度センサの等価回路図である。
【図4】第1実施形態において、回路基板上に温度センサが実装された状態を示す要部の斜視図である。
【図5】本発明に係る温度センサの第2実施形態において、回路基板上に温度センサが実装された状態を示す要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る温度センサの第1実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0015】
本実施形態の温度センサ1は、図1から図4に示すように、回路基板2上の電子部品Eから離間して回路基板2上に実装され電子部品Eの温度を測定するチップ型温度センサであって、チップ状の基体3と、該基体3の表面にサーミスタ薄膜4で別々に形成された基準部5及び検出部6と、基体3に形成され基準部5及び検出部6にそれぞれ接続された複数の電極(金属電極9、共通電極端子部9a及び個別電極端子部9b)と、を備えている。
【0016】
上記電子部品Eは、例えば通電時に発熱を伴うICやパワートランジスタ等である。
また、上記回路基板2上には、電子部品Eから発生した熱を放熱させるための銅箔等の金属膜で形成された放熱面2aが形成され、該放熱面2aに電子部品Eが接触状態に実装されている。
【0017】
上記基体3は、例えばSi基板であり、下面が回路基板2上への実装面とされていると共に上面に基準部5と検出部6とが形成されている。
この基体3の上面には、下地層としてSiO層(図示略)が形成されている。
上記基準部5及び検出部6は、それぞれSiO層上に成膜されたサーミスタ薄膜4と、サーミスタ薄膜4及びSiO層上にパターン形成された金属電極9と、SiO層、金属電極9及びサーミスタ薄膜4を覆うパッシベーション膜(図示略)と、を備えたサーミスタ素子である。
【0018】
上記サーミスタ薄膜4は、例えばMn−Co系複合金属酸化物(例えば、Mn−Co系複合金属酸化物)又はMn−Co系複合金属酸化物にNi、Fe、Cuの少なくとも一種類を含む複合金属酸化物(例えば、Mn−Co−Fe系複合金属酸化物)からなる複合金属酸化物膜である。
上記金属電極9は、櫛形電極等の電気抵抗測定用の金属電極である。なお、図中は、簡略化して図示している。
上記パッシベーション膜は、例えばSiO膜からなる。なお、絶縁性を有して外部雰囲気を遮断可能であれば、SiO膜の代わりにガラス、セラミックス、耐熱樹脂等の絶縁性膜でも構わない。
【0019】
上記基準部5は、リファレンス用であって、表面が遮光膜7で覆われている。
また、上記検出部6は、赤外線検出用センサ部であって、光学部材として透明部材8が表面に固定され、回路基板2上に実装された状態で電子部品Eから放射される赤外線を透明部材8を介して検出可能とされている。
該透明部材8は、直方体形状の透明ガラスで形成されていると共に露出表面のうち、一つの側面8a以外が遮光膜7で覆われている。
【0020】
上記遮光膜7は、赤外線を遮光可能であれば種々の膜材料を用いることができ、例えばアルミニウム蒸着膜や黒体となる窒化アルミニウムなどが採用可能である。
上記基準部5及び検出部6の金属電極9は、サーミスタ薄膜4の外部に延在され、図3に示すように、互いに共通した共通電極端子部9aと、個別に設けられた2つの個別電極端子部9bと、に接続されている。なお、共通電極端子部9a及び個別電極端子部9bは、例えば基体3の下面又は側面に形成され、図示しないスルーホール又は表面若しくは側面の電極パターンを介して上記各金属電極9と電気的に接続されている。
【0021】
この温度センサ1を回路基板2上に実装する際、図4に示すように、放熱面2aを隔てて電子部品Eから離間した位置に温度センサ1が設置される。このとき、透明部材8の遮光膜7で覆われていない側面8aを測定対象の電子部品Eに向けて温度センサ1を実装する。
【0022】
このように本実施形態の温度センサ1では、検出部6が回路基板2上に実装された状態で電子部品Eから放射される赤外線を透明部材8を介して検出可能とされているので、検出部6を透明部材8を介して測定対象である電子部品Eに向けて実装することで、電子部品Eから放射される赤外線のみを検出部6で検出する。
【0023】
すなわち、検出部6の表面に、光学部材として透明部材8が固定され、透明部材8の露出表面のうち、一つの側面8a以外が遮光膜7で覆われているので、透明部材8の遮光膜7で覆われていない側面8aを電子部品Eに向けることで、電子部品Eからの赤外線を該側面8aから入射させると共に透明部材8の下面から検出部6へ導いて温度検出を行うことができる。このように、透明部材8の遮光膜7で覆われていない側面8aを窓部とすることで、赤外線検出に指向性を持たせることができ、検出部6が上面に形成されていても、正確に測定対象の電子部品Eの温度測定が可能になる。
【0024】
また、遮光膜7で覆われて赤外線を遮断した基準部5で測定した温度を、回路基板2から伝導された熱による温度上昇分として考慮し、検出部6と基準部5との差分を求めることで、電子部品Eの正確な温度測定が可能になる。
さらに、チップ状の基体3に基準部5と検出部6とが形成されているため、電子部品Eに対して透明部材8の向きを設定した状態で回路基板2上に容易に表面実装可能である。
なお、検出部6と基準部5とがどちらもサーミスタ薄膜4で形成されているので、熱容量が小さく、高い応答性を得ることができる。
【0025】
次に、本発明に係る温度センサの第2実施形態について、図5を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0026】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、表面実装された基体3の上面に基準部5及び検出部6が形成されているのに対し、第2実施形態の温度センサ11では、図5に示すように、基体13の下面が回路基板2上への実装面とされていると共に基体13の一つの側面13aに基準部5と検出部6と金属電極9とが形成され、電子部品Eからの赤外線を検出部6で直接検出する点である。
【0027】
すなわち、第2実施形態では、検出部6に透明部材8が固定されておらず、直接側面13aに露出している。
また、基準部5及び検出部6の外側の各端部には、それぞれ側面に形成された個別電極端子部9bに接続された金属電極9が形成されている。さらに、基準部5と検出部6との互いに対向する各端部には、下面に形成された同一の共通電極端子部9aに接続された金属電極9が形成されている。
【0028】
なお、基体13の下面、すなわち実装面の面積が、側面13aに基準部5及び検出部6を形成する基体13の作製工程上又は構造上、十分に確保できない場合、側面13aの反対側の側面に実装面のより広いサブマウント部材を接着して全体として十分な実装面を確保して接着固定しても構わない。
【0029】
このように第2実施形態の温度センサ11では、基体13の下面が回路基板2上への実装面とされていると共に基体13の一つの側面13aに基準部5と検出部6とが形成されているので、側面13aに形成された検出部6を直接電子部品Eに向けて実装することで、電子部品Eからの赤外線を指向性を持って検出部6へ直接入射させることができる。
また、チップ状の基体13の側面13aに基準部5と検出部6とが形成されているため、電子部品Eに対して検出部6の向きを設定した状態で回路基板2上に容易に表面実装可能である。
【0030】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記第1実施形態では、側方に位置する電子部品からの赤外線を基体上面の検出部に導く光学部材として直方体形状の透明ガラスからなる透明部材を用いているが、他の形状や材料による光学部材を採用しても構わない。例えば、窓部となる側面の反対側の側面が検出部側に傾斜した傾斜面とされた透明部材を光学部材として採用してもよい。この場合、窓部の側面から入射された赤外線を反対側の側面で下面の検出部に向けて反射させることができ、より効率的に検出することが可能になる。
【符号の説明】
【0031】
1,11…温度センサ、2…回路基板、3,13…基体、4…サーミスタ薄膜、5…基準部、6…検出部、7…遮光膜、8…透明部材(光学部材)、8a…透明部材の側面、9…金属電極、9a…共通電極端子部、9b…個別電極端子部、13a…基体の側面、E…電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上の電子部品から離間して前記回路基板上に実装され前記電子部品の温度を測定する温度センサであって、
チップ状の基体と、
該基体の表面にサーミスタ薄膜で別々に形成された基準部及び検出部と、
前記基体に形成され前記基準部及び前記検出部にそれぞれ接続された複数の電極と、を備え、
前記基準部が、遮光膜で覆われ、
前記検出部が、前記回路基板上に実装された状態で前記電子部品から放射される赤外線を直接又は光学部材を介して検出可能とされていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記基体の下面が前記回路基板上への実装面とされていると共に前記基体の上面に前記基準部と前記検出部とが形成され、
前記検出部の表面に、前記光学部材として透明部材が固定され、
該透明部材の露出表面のうち、一つの側面以外が遮光膜で覆われていることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記基体の下面が前記回路基板上への実装面とされていると共に前記基体の一つの側面に前記基準部と前記検出部とが形成されていることを特徴とする温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−197162(P2010−197162A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41193(P2009−41193)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】