温度センサ
【課題】物体の温度の検出精度を向上させることが可能な温度センサを提供する。
【解決手段】物体400から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイル30aにより構成される感温部(熱電変換部)30を有する赤外線センサ100と、赤外線センサ100の出力に基づいて物体400の温度を演算する演算部124とを備える。演算部124は、赤外線センサ100の出力電圧が、プランクの放射則に従って表され物体400の温度に依存する赤外線センサ100の吸収エネルギ密度と、ステファン−ボルツマンの法則に従って表され赤外線センサ100の温度に依存する赤外線センサ100の放射エネルギ密度との差分に比例すると仮定して求められた演算式を用いて物体400の温度を演算する。
【解決手段】物体400から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイル30aにより構成される感温部(熱電変換部)30を有する赤外線センサ100と、赤外線センサ100の出力に基づいて物体400の温度を演算する演算部124とを備える。演算部124は、赤外線センサ100の出力電圧が、プランクの放射則に従って表され物体400の温度に依存する赤外線センサ100の吸収エネルギ密度と、ステファン−ボルツマンの法則に従って表され赤外線センサ100の温度に依存する赤外線センサ100の放射エネルギ密度との差分に比例すると仮定して求められた演算式を用いて物体400の温度を演算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図25および図26に示す構成の赤外線センサ100’が提案されている(特許文献1)。この赤外線センサ100’は、赤外線を吸収する赤外線吸収部33’の温度変化に応じた出力電圧を発生する熱電対型の感温部(熱電変換部)30’を具備する熱型赤外線検出部3’とMOSトランジスタ4’とを有する画素部2’を備えている。また、この赤外線センサ100’は、a×b個(図26の例では、4×4個)の画素部2’が、ベース基板201の一表面側において2次元アレイ状に配置されている。ここで、ベース基板201は、n形のシリコン基板201aを用いて形成されている。
【0003】
上述の赤外線センサ100’を備えた赤外線センサモジュールでは、MOSトランジスタ4’が順次オン状態になるように各画素選択用のパッドPselの電位を制御することで各画素部2’の出力電圧を出力用のパッドPoutから順次読み出すことができる。
【0004】
また、特許文献1には、図27に示すように、赤外線センサ100’と、当該赤外線センサ100’の出力信号である出力電圧を信号処理する信号処理ICチップ220’と、赤外線センサ100’および信号処理ICチップ220’が実装されたパッケージ本体230’とを備えた赤外線センサモジュールが記載されている。なお、パッケージ本体230’は、一面開口した矩形箱状に形成されており、内底面に赤外線センサ100’および信号処理ICチップ220’が搭載され、赤外線センサ100’における熱型赤外線検出部3’の赤外線吸収部33’へ赤外線を収束するレンズを備えたパッケージ蓋(図示せず)が覆着されている。
【0005】
ここで、特許文献1には、信号処理ICチップ220’に、図28に示すように、赤外線センサ100’の複数(図示例では、4つ)の出力用のパッドPoutそれぞれがボンディングワイヤからなる配線80を介して各別に電気的に接続される複数(図示例では、4つ)の入力用のパッドPin、入力用のパッドPinの出力電圧を増幅する増幅回路AMP、複数の入力用のパッドPinの出力電圧を択一的に増幅回路AMPに入力するマルチプレクサMUXなどを設ければ、赤外線画像を得ることができることが記載されている。
【0006】
また、従来から、図29に示すように、測定対象物(例えば、火災による火、人)から放射される赤外線を検知して測定対象物の温度Tbbに対応する電圧Vbb(信号S11)を出力する赤外線センサ311と、当該赤外線センサ311の温度Tthを検出し当該温度Tthに対応する電圧Vth(信号S12)を出力するサーミスタ312とを備えた温度検出装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
この温度検出装置は、赤外線センサ311およびサーミスタ312それぞれから出力される電圧Vbb,Vthを各別に増幅する2つのアンプ402a,402bと、各アンプ402a,402bの出力をアナログ−ディジタル変換するA/D変換器403と、A/D変換器403の出力に基づいて測定対象物の温度Tbbを演算し当該温度Tbbを示す信号Soutを出力する温度演算部404と、温度演算部404での演算に用いる後述の係数A,Bおよびオフセット値R1、後述の(2)式の演算式などを記憶したメモリ405とを備えている。
【0008】
また、赤外線センサ311およびサーミスタ312は、金属製のパッケージ(図示せず)に収納されている。このパッケージには、赤外線センサ311が赤外線を受光できるような窓が形成されている。
【0009】
上述の温度演算部404は、下記(1)式に従って測定対象物の温度Tbbを演算する。
【0010】
【数1】
この(1)式を測定対象物の温度Tbbを求める式に変形すると、下記(2)式となる。
【0011】
【数2】
(1)式、(2)式において、Voは赤外線センサ311の出力電圧〔V〕、Tbbは測定対象物の温度〔K〕、Aは測定対象物の温度を電圧に換算するための係数、Tthは赤外線センサ311の温度〔K〕、B(≠A)は赤外線センサ311の温度を電圧に換算するための係数、R1はオフセット値である。ここにおいて、温度Tbbは、赤外線センサ311の視野に入った赤外線エネルギを黒体の温度に換算した値である。また、係数Aは、ステファン−ボルツマン定数、エミッション係数、アンプ402aの増幅率などにより決まる値である。また、係数Bは、ステファン−ボルツマン定数、エミッション係数、アンプ402bの増幅率などにより決まる値である。なお、係数A、Bに含まれているステファン−ボルツマン定数は、測定対象物と赤外線センサ311とで同じ値である。しかし、エミッション係数は、測定対象物と赤外線センサ311とで異なる値になる。
【0012】
温度演算部404は、(2)式に示す演算式に基づいて、測定対象物の温度Tbbを取得し、この温度Tbbを示す信号Soutを出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−78451号公報
【特許文献2】特開2007−198745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、測定対象物などの物体から放射された赤外線は、赤外線センサに到達するまでに大気中の水蒸気や二酸化炭素などによって吸収され減衰する(吸収率は波長によって異なる)。また、赤外線センサの前方にレンズなどの赤外線透過部材が配置されている場合、物体から放射された赤外線は、赤外線透過部材での反射や吸収などによっても減衰する(反射率や透過率は波長によって異なる)。
【0015】
しかしながら、上記特許文献2に開示された温度検出装置では、ステファン−ボルツマンの法則に従って(2)式が求められているものと考えられ、測定対象物の温度Tbbの検出精度が、赤外線センサの周囲環境の影響で低下してしまう懸念がある。
【0016】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、物体の温度の検出精度を向上させることが可能な温度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の温度センサは、物体から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイルにより構成される熱電変換部を有する赤外線センサと、前記赤外線センサの出力電圧に基づいて前記物体の温度を演算する演算部とを備え、前記演算部は、前記赤外線センサの出力電圧が、プランクの放射則に従って表され前記物体の温度に依存する前記赤外線センサの吸収エネルギ密度と、ステファン−ボルツマンの法則に従って表され前記赤外線センサの温度に依存する前記赤外線センサの放射エネルギ密度との差分に比例すると仮定して求められた演算式を用いて前記物体の温度を演算することを特徴とする。
【0018】
この温度センサにおいて、前記赤外線センサの温度を測定するサーミスタを備え、前記物体の温度をTo〔K〕、前記赤外線センサの出力電圧をVout〔V〕、前記赤外線センサの温度をTs〔K〕とするとき、前記演算式は、
【0019】
【数3】
で表されることが好ましい。
【0020】
この温度センサにおいて、前記赤外線センサの温度を一定温度に保つペルチェ素子を備え、前記物体の温度をTo〔K〕、前記赤外線センサの出力電圧をVout〔V〕とするとき、前記演算式は、
【0021】
【数4】
で表されることが好ましい。
【0022】
この温度センサにおいて、前記赤外線センサは、前記物体の温度の上昇に伴い出力電圧が低下する負特性を有することが好ましい。
【0023】
この温度センサにおいて、前記赤外線センサは、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであることが好ましい。
【0024】
この温度センサにおいて、前記演算式の係数を記憶する記憶部を有し、前記赤外線センサが、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであり、前記記憶部は、前記係数が、前記赤外線センサの前記各画素部ごとに対応付けて記憶されてなることが好ましい。
【0025】
この温度センサにおいて、前記演算式の係数を記憶する記憶部を有し、前記赤外線センサが、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであり、前記記憶部は、前記係数として、前記各画素部ごとに個別に設定された1つの個別係数と、前記各画素部に共通に設定された複数の共通係数とを記憶していることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の温度センサにおいては、物体の温度の検出精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態の温度センサに関し、(a)は概略断面図、(b)は赤外線センサの要部概略断面図、(c)は回路ブロック図である。
【図2】同上の温度センサにおける赤外線センサの等価回路図である。
【図3】同上における赤外線センサの要部等価回路図である。
【図4】同上における赤外線センサの平面レイアウト図である。
【図5】同上における赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。
【図6】同上における赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。
【図7】同上における赤外線センサの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図8】同上における赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図9】同上における赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図10】同上における赤外線センサの冷接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図11】同上における赤外線センサの温接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図12】同上における赤外線センサの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図13】同上における赤外線センサの画素部の要部の概略断面図である。
【図14】同上における赤外線センサの画素部の要部の概略断面図である。
【図15】同上における赤外線センサの要部説明図である。
【図16】同上における赤外線センサに関し、(a)は要部の平面レイアウト図、(b)は、(a)のツェナダイオードの拡大図、(c)はツェナダイオードの概略断面図である。
【図17】同上における赤外線センサの特性説明図である。
【図18】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図19】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図20】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図21】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図22】同上における赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図23】同上における赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図24】同上における赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図25】従来例における赤外線センサを示し、(a)は画素部の平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図26】同上を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は等価回路図である。
【図27】同上の赤外線センサを備えた赤外線センサモジュールの要部概略平面図である。
【図28】同上の赤外線センサを備えた赤外線センサモジュールの要部説明図である。
【図29】同上の赤外線センサモジュールの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本実施形態の温度センサについて図1〜図17を参照しながら説明する。
【0029】
本実施形態の温度センサは、赤外線センサ100と、サーミスタ110と、IC素子120とが、1つのパッケージ133に収納されている。
【0030】
赤外線センサ100は、物体(例えば、人体など)400から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイル30aにより構成される熱電変換部である感温部30を有している。また、赤外線センサ100は、感温部30および感温部30の出力電圧を取り出すためのMOSトランジスタ4を具備するa×b個(図4の例では、8×8個)の画素部2が、半導体基板1の一表面側においてa行b列(図4の例では、8行8列)の2次元アレイ状に配置されている。なお、図4の例では、a=8、b=8としてあるが、a≧2、b≧2であればよい。
【0031】
上述のMOSトランジスタ4は、図1(b)、図7、図14に示すように、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形のウェル領域41内で、第2の導電形のソース領域44と第2導電形のドレイン領域43とが離間して形成されている。本実施形態では、ウェル領域がチャネル形成用領域を構成している。なお、図2には、第1導電形をp形、第2導電形をn形としてMOSトランジスタ4をnチャネルMOSトランジスタとした場合の等価回路図を示してある。この図2の等価回路図では、感温部30を抵抗の図記号で表してある。
【0032】
赤外線センサ100は、各列のb個(8個)の画素部2の感温部30の一端がMOSトランジスタ4のソース領域44−ドレイン領域43を介して各列ごとに共通接続されたb個(8個)の第1の配線101を備えている。
【0033】
また、赤外線センサ100は、各行の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続されたa個(8個)の第2の配線102と、各行のMOSトランジスタ4のウェル領域41が各列ごとに共通接続されたb個(8個)の第3の配線103と、各列のa個(8個)の感温部30の他端が各列ごとに共通接続されたb個(図示例では、8個)の第4の配線104とを備えている。
【0034】
上述の赤外線センサ100は、第1の配線101が各別に接続された出力用のb個の第1のパッドVout1〜Vout8と、第2の配線102が各別に接続された画素部選択用のa個の第2のパッドVsel1〜Vsel8と、各第3の配線103が共通接続された第3のパッドVchと、第4の配線104が共通接続された基準バイアス用の第4のパッドVrefinとを備えている。しかして、赤外線センサ100は、全ての感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。すなわち、MOSトランジスタ4が、順次、オン状態になるように各画素部2を選択するための第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位を制御することで各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。
【0035】
サーミスタ110は、赤外線センサ100の温度を検出するためのものであり、パッケージ133内において赤外線センサ100に近接して配置され、赤外線センサ100の温度に応じたアナログの出力電圧を発生する。なお、サーミスタ110は、一端がプルアップ抵抗(図示せず)を介して電源(図示せず)に接続され、他端がグランド(図示せず)に接続されている。
【0036】
IC素子120は、赤外線センサ100とサーミスタ110との各出力電圧に基づいて物体400の温度を演算する演算部124を有している。
【0037】
パッケージ133は、赤外線センサ100、サーミスタ110およびIC素子120が実装されたパッケージ本体134と、パッケージ本体134との間に赤外線センサ100、サーミスタ110およびIC素子120を囲む形でパッケージ本体134に気密的に接合されたパッケージ蓋135とで構成されている。
【0038】
パッケージ本体134は、IC素子120と赤外線センサ100とが横並びで実装されている。一方、パッケージ蓋135は、赤外線センサ100での検知対象の赤外線を透過する機能および導電性を有している。
【0039】
パッケージ蓋135は、パッケージ本体134の上記一表面側に覆着されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152において赤外線センサ100に対応する部位に形成された開口窓152aを閉塞し且つ赤外線を透過する赤外線透過部材153とで構成されている。要するに、赤外線センサ100の前方に、赤外線透過部材153が配置されている。本実施形態では、赤外線透過部材153をレンズにより構成してあり、赤外線透過部材153が、赤外線センサ100へ赤外線を収束する機能を有している。なお、赤外線透過部材153は、レンズに限らず、例えば、平板状のものでもよい。
【0040】
以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0041】
赤外線センサ100は、感温部30が埋設された熱型赤外線検出部3とMOSトランジスタ4とを有する複数(a×b個)の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側において2次元アレイ状に配置されている。ここで、半導体基板1の上記一表面は、Si(100)面としてある。感温部30は、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30a(図5参照)を直列接続することにより構成されている。
【0042】
各画素部2の熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の形成用領域A1(図7参照)に形成されている。また、各画素部2のMOSトランジスタ4は、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2(図7参照)に形成されている。
【0043】
赤外線センサ100は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成されている。熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備えている。第1の薄膜構造部3aは、赤外線を吸収する赤外線吸収部33を備えている。ここで、第1の薄膜構造部3aは、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、隣接する第2の薄膜構造部3aa同士を連結する連結片3c(図5参照)とを有している。なお、図5の例の熱型赤外線検出部3では、複数の線状のスリット13を設けることにより、第1の薄膜構造部3aが6つの第2の薄膜構造部3aaに分離されている。以下では、赤外線吸収部33(第1の赤外線吸収部33と称する)のうち第2の薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を第2の赤外線吸収部33aと称する。
【0044】
熱型赤外線検出部3は、第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられている。ここで、サーモパイル30aは、温接点T1が、第2の薄膜構造部3aaに設けられ、冷接点T2が、支持部3dに設けられている。要するに、温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる領域に形成され、冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない領域に形成されている。
【0045】
また、熱型赤外線検出部3の感温部30は、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で、全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。図5の例では、感温部30は、6個のサーモパイル30aを直列接続してある。ただし、上述の接続関係は、複数個のサーモパイル30aの全てを直列接続する接続関係に限らない。例えば、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続すれば、6個のサーモパイル30aが並列接続されている場合や、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて、感度を高めることができる。また、6個のサーモパイル30aの全てが直列接続されている場合に比べて、感温部30の抵抗値を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。
【0046】
ここで、熱型赤外線検出部3では、第2の薄膜構造部3aaごとに、支持部3dと第2の赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の周方向に離間して形成されている。この熱型赤外線検出部3では、2つのブリッジ部3bb,3bbと第2の赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視U字状のスリット14が形成されている。熱型赤外線検出部3のうち、平面視において第1の薄膜構造部3aを囲む部位である支持部3dは、矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、上述の各スリット13,14により、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dそれぞれとの連結部位以外の部分が、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dと空間的に分離されている。ここで、第2の薄膜構造部3aaは、支持部3dからの延長方向の寸法を93μm、この延長方向に直交する幅方向の寸法を75μmとし、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
【0047】
第1の薄膜構造部3aは、半導体基板1の上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜1bと、当該シリコン酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、当該シリコン窒化膜32上に形成された感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。層間絶縁膜50は、BPSG膜により構成してある。パッシベーション膜60は、PSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜により構成してあるが、これに限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
【0048】
上述の熱型赤外線検出部3では、シリコン窒化膜32のうち第1の薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が第1の赤外線吸収部33を構成している。また、支持部3dは、シリコン酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とで構成されている。
【0049】
また、赤外線センサ100は、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、半導体基板1の上記一表面側において、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されており、この積層膜のうち、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が赤外線吸収膜70(図7(b)参照)を兼ねている。ここで、赤外線吸収膜70の屈折率をn2、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4n2に設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n2=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を0.5μm、NSG膜の膜厚を0.5μm)としてある。
【0050】
また、各画素部2では、空洞部11の内周形状が矩形状であり、連結片3cは、平面視X字状に形成されており、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
【0051】
サーモパイル30aは、シリコン窒化膜32上で第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨って形成されたn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との一端部同士を第2の赤外線吸収部33aの赤外線入射面側で金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部36により電気的に接続した複数個(図5に示した例では、9個)の熱電対を有している。また、サーモパイル30aは、半導体基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部37により接合され電気的に接続されている。ここで、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と接続部36とで温接点T1を構成している。また、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と接続部37とで冷接点T2を構成している。なお、本実施形態における赤外線センサ100では、サーモパイル30aの各n形ポリシリコン層34および各p形ポリシリコン層35それぞれにおいて、上述のブリッジ部3bb,3bbに形成されている部位および半導体基板1の上記一表面側のシリコン窒化膜32上に形成されている部位でも赤外線を吸収することができる。
【0052】
また、赤外線センサ100は、空洞部11の形状が、四角錘状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっている。そこで、赤外線センサ100は、第1の薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように、各画素部2におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。すなわち、図5の上下方向における真ん中の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図5および図8に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向に沿って温接点T1を並べて配置してあるのに対し、当該上下方向における上側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図5および図9に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してあり、当該上下方向における下側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図5に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。しかして、赤外線センサ100は、図5の上下方向における上側、下側の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置が、真ん中の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上できる。なお、本実施形態では、空洞部11の最深部の深さを所定深さdp(図7(b)参照)とするとき、所定深さdpを200μmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。
【0053】
また、第2の薄膜構造部3aaは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制するとともに赤外線を吸収するn形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39が形成されている。また、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cには、当該連結片3cを補強するn形ポリシリコン層からなる補強層39b(図12参照)が設けられている。ここで、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。しかして、赤外線センサ100では、連結片3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止でき、また、製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。なお、本実施形態では、図12に示す連結片3cの長さ寸法L1を24μm、幅寸法L2を5μm、補強層39bの幅寸法L3を1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、本実施形態のように半導体基板1としてシリコン基板を用いており、補強層39bがn形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、補強層39bの幅寸法は、連結片3cの幅寸法よりも小さく設定し、平面視において補強層39bの両側縁が連結片3cの両側縁よりも内側に位置する必要がある。
【0054】
また、赤外線センサ100は、図12および図15(b)に示すように、連結片3cの両側縁と第2の薄膜構造部3aaの側縁との間にそれぞれ面取り部3d,3dが形成され、X字状の連結片3cの略直交する側縁間にも面取り部3eが形成されている。しかして、赤外線センサ100では、図15(a)に示すように面取り部が形成されていない場合に比べて、連結片3cと第2の薄膜構造部3aaとの連結部位での応力集中を緩和でき、製造時に発生する残留応力を低減できるとともに製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。また、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止できる。なお、図12に示した例では、各面取り部3d,3eをR(アール)が3μmのR面取り部としてあるが、R面取り部に限らず、例えば、C面取り部としてもよい。
【0055】
また、赤外線センサ100は、各熱型赤外線検出部3に、支持部3dと一方のブリッジ部3bbと第2の赤外線吸収部33aと他方のブリッジ部3bbと支持部3dとに跨るように引き回されたn形ポリシリコン層からなる故障診断用配線(故障診断用のヒータ)139を設けて、全ての故障診断用配線139を直列接続してある。しかして、赤外線センサ100では、a×b個の故障診断用配線139の直列回路へ通電することで、ブリッジ部3bbの折れなどの破損の有無を検出することができる。
【0056】
要するに、赤外線センサ100は、製造途中での検査時や使用時において、a×b個の故障診断用配線139の直列回路への通電の有無によって、ブリッジ部3bbの折れや故障診断用配線139の断線などを検出することができる。また、赤外線センサ100では、上述の検査時や使用時において、a×b個の故障診断用配線139の直列回路へ通電して各感温部30の出力を検出することにより、感温部30の断線の有無や感度のばらつき(感温部30の出力のばらつき)などを検知することが可能となる。ここにおいて、感度のばらつきに関しては、画素部2ごとの感度のばらつきを検知することが可能であり、例えば、第1の薄膜構造部3aの反りや第1の薄膜構造部3aの半導体基板1へのスティッキングなどに起因した感度のばらつきを検知することが可能となる。ここで、本実施形態における赤外線センサ100では、平面視において、故障診断用配線139を複数の温接点T1の群の付近において折り返され蛇行した形状としてある。したがって、故障診断用配線139へ通電することにより発生するジュール熱によって、各温接点T1を効率良く温めることができる。上述の故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35と同一平面上に同一厚さで形成されている。
【0057】
上述の赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34と同時に形成されている。また、p形ポリシリコン層35は、p形不純物として例えばボロンを採用すればよく、不純物濃度を例えば1018〜1020cm−3程度の範囲で適宜設定すればよい。本実施形態では、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減できてサーモパイル30aの抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図れる。なお、赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、p形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてもよい。
【0058】
ところで、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139の屈折率をn1、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの厚さt1をλ/4n1に設定するようにしている。しかして、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n1=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
【0059】
また、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であるので、赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することができて、感温部30の出力のS/N比を高めることができる。また、赤外線吸収層39および故障診断用配線139をn形ポリシリコン層34と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
【0060】
ここで、感温部30の接続部36と接続部37とは、半導体基板1の上記一表面側において、層間絶縁膜50によって絶縁分離されている(図10および図11参照)。すなわち、温接点T1側の接続部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a1,50a2を通して、両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続されている。また、冷接点T2側の接続部37は、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a3,50a4を通して、両ポリシリコン層34,35の上記各他端部と電気的に接続されている。
【0061】
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。
【0062】
MOSトランジスタ4は、図7および図14に示すように、半導体基板1の上記一表面側に第1導電形であるp形(p+)のウェル領域41が形成され、ウェル領域41内に、第2導電形であるn形(n+)のドレイン領域43と第2導電形であるn形(n+)のソース領域44とが離間して形成されている。さらに、ウェル領域41内には、ドレイン領域43とソース領域44とを囲む第1導電形であるp形(p++)のチャネルストッパ領域42が形成されている。
【0063】
ウェル領域41においてドレイン領域43とソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。
【0064】
また、ドレイン領域43上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、ソース領域44上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。
【0065】
ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50によって絶縁分離されている。ここで、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してソース領域44と電気的に接続されている。
【0066】
赤外線センサ100の各画素部2では、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が第4の配線104に電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が、第1の配線101と電気的に接続され、ゲート電極46が、n形ポリシリコン配線からなる第2の配線102と電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のチャネルストッパ領域42上に、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる電極49が形成されている。しかして、ウェル領域41は、チャネルストッパ領域42および電極49を介して、第3の配線103と電気的に接続されている。なお、電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してチャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
【0067】
また、赤外線センサ100は、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止するために各第2の配線102それぞれにカソードが接続された複数のツェナダイオードZDを備えている。ここで、ツェナダイオードZDは、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形の第1拡散領域81内に第2導電形の第2拡散領域82が形成されたものである。
【0068】
上述のツェナダイオードZDは、図16に示すように、第1拡散領域81上にアノード電極83が形成され、第2拡散領域82上に2つのカソード電極84a,84bが形成されている。このツェナダイオードZDは、アノード電極83が、第5のパッドVzdと電気的に接続され、一方のカソード電極84aが、1つの第2の配線102を介して当該第2の配線102に接続されたMOSトランジスタ4のゲート電極46と電気的に接続され、他方のカソード電極84bが、当該第2の配線102に接続された第2のパッドVsel1〜Vsel8の1つと電気的に接続されている。
【0069】
また、赤外線センサ100は、半導体基板1が接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備えている。
【0070】
上述の赤外線センサ100によれば、通電されることにより発生するジュール熱によって温接点T1を温める故障診断用配線139を備えているので、故障診断用配線139へ通電してサーモパイル30aの出力を測定することにより、サーモパイル30aの断線などの故障の有無を判断することが可能となって、信頼性の向上を図れ、しかも、故障診断用配線139は、熱型赤外線検出部3において半導体基板1の空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されているので、故障診断用配線139によるサーモパイル30aの温接点T1の熱容量の増大を防止でき、感度および応答速度の向上を図れる。
【0071】
ここで、赤外線センサ100は、使用時において自己診断を行わない通常時において、故障診断用配線139も外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。なお、赤外線センサ100では、赤外線吸収層39および補強層39bも外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。また、赤外線センサ100の使用時の自己診断は、IC素子120に設けられた自己診断回路(図示せず)により定期的に行われるが、必ずしも定期的に行う必要はない。
【0072】
また、赤外線センサ100は、第1の薄膜構造部3aが、複数の線状のスリット13を設けることによって、空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位である支持部3dから内方へ延長された複数の第2の薄膜構造部3aaに分離されている。そして、赤外線センサ100では、各第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aの温接点T1が設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されているので、応答速度および感度の向上を図れる。しかも、赤外線センサ100では、全ての第2の薄膜構造部3aaに跨って故障診断用配線139が形成されているので、熱型赤外線検出部3の全てのサーモパイル30aを一括して自己診断することが可能となる。また、赤外線センサ100では、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されていることにより、各第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
【0073】
また、赤外線センサ100は、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と補強層39bと故障診断用配線139とが同一の厚さに設定されているので、第2の薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制することができ、製品ごとの感度のばらつきや、画素部2ごとの感度のばらつきを低減できる。
【0074】
また、赤外線センサ100は、故障診断用配線139が、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34もしくは第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ材料により形成されているので、故障診断用配線139を第1の熱電要素もしくは第2の熱電要素と同時に形成することが可能となり、製造プロセスの簡略化による低コスト化を図れる。
【0075】
また、赤外線センサ100は、赤外線吸収部33および故障診断用配線139を備えた複数の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側で2次元アレイ状に設けられているので、製造時や使用時の自己診断に際して各画素部2それぞれの故障診断用配線139に通電することにより、各画素部2それぞれの感温部30の感度のばらつきを把握することが可能となる。
【0076】
以下、赤外線センサ100の基本的な製造方法の一例について図18〜図21を参照して説明する。
【0077】
まず、第2の導電形のシリコン基板からなる半導体基板1の上記一表面側に第1の所定膜厚(例えば、0.3μm)の第1のシリコン酸化膜31と第2の所定膜厚(例えば、0.1μm)のシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して当該絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域A2に対応する部分をエッチング除去する絶縁層パターニング工程を行うことによって、図18(a)に示す構造を得る。ここにおいて、シリコン酸化膜31は、半導体基板1を所定温度(例えば、1100℃)で熱酸化することにより形成し、シリコン窒化膜32は、LPCVD法により形成している。
【0078】
上述の絶縁層パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側に第1導電形であるp形(p+)のウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行い、続いて、半導体基板1の上記一表面側におけるウェル領域41内に第1導電形であるp形(p++)のチャネルストッパ領域42を形成するチャネルストッパ領域形成工程を行うことによって、図18(b)に示す構造を得る。ここで、ウェル領域形成工程では、まず、半導体基板1の上記一表面側の露出部位を所定温度で熱酸化することにより第2のシリコン酸化膜(熱酸化膜)51を選択的に形成する。その後、ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン酸化膜51をパターニングする。続いて、第1導電形の不純物(ここでは、p形の不純物であり、例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、ウェル領域41を形成する。また、チャネルストッパ領域形成工程では、半導体基板1の上記一表面側を所定温度で熱酸化することにより第3のシリコン酸化膜(熱酸化膜)52を選択的に形成する。その後、チャネルストッパ領域42を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第3のシリコン酸化膜52をパターニングする。続いて、第1導電形の不純物(ここでは、p形の不純物であり、例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、チャネルストッパ領域42を形成する。なお、第1のシリコン酸化膜31と第2のシリコン酸化膜51と第3のシリコン酸化膜52とで、半導体基板1の上記一表面側のシリコン酸化膜1bを構成している。
【0079】
上述のチャネルストッパ領域形成工程の後、第2導電形であるn形(n+)のドレイン領域43および第2導電形であるn形(n+)のソース領域44を形成するソース・ドレイン形成工程を行う。このソース・ドレイン形成工程では、ウェル領域41におけるドレイン領域43およびソース領域44それぞれの形成予定領域に第2導電形の不純物(ここでは、n形の不純物であり、例えば、リンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブを行うことによって、ドレイン領域43およびソース領域44を形成する。
【0080】
ソース・ドレイン形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側に例えば熱酸化により所定膜厚(例えば、600Å)のシリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側の全面にゲート電極46、第2の配線102(図5参照)、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139の基礎となる所定膜厚(例えば、0.69μm)のノンドープポリシリコン層をLPCVD法により形成するポリシリコン層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記ノンドープポリシリコン層のうちゲート電極46、第2の配線102、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139それぞれに対応する部分が残るようにパターニングするポリシリコン層パターニング工程を行う。続いて、上記ノンドープポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35に対応する部分にp形の不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりp形ポリシリコン層35を形成するp形ポリシリコン層形成工程を行う。その後、上記ノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および第2の配線102に対応する部分にn形の不純物例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および第2の配線102を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図19(a)に示す構造を得る。なお、p形ポリシリコン層形成工程とn形ポリシリコン層形成工程との順序は逆でもよい。
【0081】
上述のp形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程が終了した後、半導体基板1の上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して層間絶縁膜50に各コンタクトホール50a1,50a2,50a3,50a4,50d,50e,50f(図10、図11、図14参照)を形成するコンタクトホール形成工程を行うことによって、図19(b)に示す構造を得る。層間絶縁膜形成工程では、半導体基板1の上記一表面側に所定膜厚(例えば、0.8μm)のBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された層間絶縁膜50を形成する。
【0082】
上述のコンタクトホール形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側の全面に接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、第4の配線104、第1の配線101、第3の配線103、各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsuなど(図1(a)参照)の基礎となる所定膜厚(例えば、2μm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法などにより形成する金属膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることで接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、第4の配線104、第1の配線101、第3の配線103、各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsuなどを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図20(a)に示す構造を得る。なお、金属膜パターニング工程におけるエッチングは、RIEにより行っている。また、この金属膜パターニング工程を行うことにより、温接点T1および冷接点T2が形成される。
【0083】
上述の金属膜パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)に所定膜厚(例えば、0.5μm)のPSG膜と所定膜厚(例えば、0.5μm)のNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60をCVD法により形成するパッシベーション膜形成工程を行うことによって、図20(b)に示す構造を得る。
【0084】
上述のパッシベーション膜形成工程の後、シリコン酸化膜31、シリコン窒化膜32、層間絶縁膜50、パッシベーション膜60などを備え、感温部30などが埋設された積層構造部をパターニングすることにより、第2の薄膜構造部3aaおよび連結片3cを形成する積層構造部パターニング工程を行うことによって、図21(a)に示す構造を得る。なお、積層構造部パターニング工程において、各スリット13,14を形成している。
【0085】
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して各パッドパッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsuを露出させる開口部(図示せず)を形成する開口部形成工程を行う。次に、各スリット13,14をエッチング液導入孔としてエッチング液を導入し半導体基板1を異方性エッチング(結晶異方性エッチング)することにより半導体基板1に空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことで、図21(b)に示す構造の赤外線センサ100を得る。ここで、開口部形成工程におけるエッチングは、RIEにより行っている。また、空洞部形成工程では、エッチング液として所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液を用いているが、エッチング液はTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、KOH溶液など)を用いてもよい。なお、空洞部形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサ100に分離する分離工程を行えばよい。また、上述の説明から分かるように、MOSトランジスタ4の製造方法に関してみれば、周知の一般的なMOSトランジスタの製造方法を採用しており、熱酸化による熱酸化膜の形成、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術による熱酸化膜のパターニング、不純物のイオン注入、ドライブイン(不純物の拡散)の基本工程を繰り返すことにより、ウェル領域41、チャネルストッパ領域42、ドレイン領域43とソース領域44を形成している。また、上述の製造方法では、ツェナダイオードZDの製造工程について説明を省略したが、周知の一般的なツェナダイオードの製造方法を適宜採用すればよい。
【0086】
上述の赤外線センサ100では、半導体基板1として上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いて、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより形成する空洞部11を四角錘状の形状としてあるが、四角錘状の形状に限らず、四角錘台状の形状でもよい。また、半導体基板1の上記一表面の面方位は特に限定するものではなく、例えば、半導体基板1として上記一表面がSi(110)面の単結晶のシリコン基板を用いてもよい。
【0087】
IC素子120は、ASIC(:Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されている。また、IC素子120としてベアチップを用いている。しかして、本実施形態では、IC素子120がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べて、パッケージ133の小型化を図れる。
【0088】
IC素子120は、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,Vzdそれぞれと電気的に接続される複数のパッド(図示せず)を備えている。そして、IC素子120は、赤外線センサ100の出力電圧を増幅する第1の増幅回路122aと、サーミスタ110の出力電圧を増幅する第2の増幅回路122bと、赤外線センサ100のb個の第1のパッドVout1〜Vout8の出力電圧を択一的に第1の増幅回路122aに入力するマルチプレクサ121とを備える。また、IC素子120は、第1の増幅回路122aにて増幅された赤外線センサ100の出力電圧、および第2の増幅回路122bにて増幅されたサーミスタ110の出力電圧をディジタル値に変換するA/D変換回路123を備えている。IC素子120の演算部124は、赤外線センサ100とサーミスタ110との各出力電圧に対応してA/D変換回路123から出力されるディジタル値を用いて物体400の温度を演算する。この演算部124については、後述する。また、IC素子120は、演算部124での演算に利用するデータなどを記憶する記憶部であるメモリ125と、赤外線センサ100を制御する制御回路126とを備えている。なお、IC素子120は、上述の自己診断回路も備えている。
【0089】
本実施形態の温度センサは、パッケージ本体134とパッケージ蓋135とで構成されるパッケージ133の内部空間(気密空間)165を、ドライ窒素雰囲気としてあるが、これに限らず、例えば、真空雰囲気としてもよい。
【0090】
パッケージ本体134は、絶縁材料からなる基体134aに、金属材料からなる配線パターン(図示せず)および電磁シールド層144が形成されており、電磁シールド層144により電磁シールド機能を有している。一方、パッケージ蓋135は、赤外線透過部材153が導電性を有し、この赤外線透過部材153がメタルキャップ152に導電性材料により接合されているので、導電性を有している。そして、パッケージ蓋135は、パッケージ本体134の電磁シールド層144と電気的に接続されている。しかして、本実施形態では、パッケージ本体134の電磁シールド層144とパッケージ蓋135とを同電位とすることができる。その結果、パッケージ133は、赤外線センサ100とIC素子120と上記配線パターンと後述のボンディングワイヤ(図示せず)と含んで構成されるセンサ回路(図示せず)への外来の電磁ノイズを防止する電磁シールド機能を有している。
【0091】
パッケージ本体134は、赤外線センサ100およびIC素子120が一表面側に実装される平板状のセラミック基板により構成してある。要するに、パッケージ本体134は、基体134aが絶縁材料であるセラミックスにより形成されており、配線パターンのうち基体134aの一表面側に形成された部位に、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,VzdおよびIC素子120の上記パッドが、適宜、ボンディングワイヤを介して接続されている。なお、赤外線センサ100とIC素子120とは、ボンディングワイヤなどを介して電気的に接続されている。各ボンディングワイヤとしては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いることが好ましい。
【0092】
本実施形態では、パッケージ本体134の絶縁材料としてセラミックスを採用しているので、上記絶縁材料としてエポキシ樹脂などの有機材料を採用する場合に比べて、パッケージ本体134の耐湿性および耐熱性を向上させることができる。ここで、絶縁材料のセラミックスとして、アルミナを採用すれば、窒化アルミニウムや炭化珪素などを採用する場合に比べて、上記絶縁材料の熱伝導率が小さく、IC素子120やパッケージ133の外部からの熱に起因した赤外線センサ100の温度上昇を抑制できる。
【0093】
また、パッケージ本体134は、上述の配線パターンの一部により構成される外部接続電極(図示せず)が、基体134aの他表面と側面とに跨って形成されている。しかして、本実施形態の温度センサでは、回路基板などへの2次実装後において、回路基板などとの接合部の外観検査を容易に行うことができる。
【0094】
また、赤外線センサ100は、パッケージ本体134に対して、第1のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる複数の接合部115を介して実装されている。また、IC素子120は、パッケージ本体134に対して、第2のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる接合部118を介して実装されている。各ダイボンド剤としては、低融点ガラスやエポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの絶縁性接着剤、半田(鉛フリー半田、Au−Sn半田など)や銀ペーストなどの導電性接着剤を用いればよい。また、各ダイボンド剤を用いずに、例えば、常温接合法や、Au−Sn共晶もしくはAu−Si共晶を利用した共晶接合法などにより接合してもよい。
【0095】
上述の温度センサは、赤外線センサ100が複数の接合部115を介してパッケージ本体134に実装されているので、赤外線センサ100の裏面の全体が接合部115を介してパッケージ本体134に接合される場合に比べて、赤外線センサ100とパッケージ本体134との間の空間116が断熱部として機能することと、接合部115の断面積の低減とにより、パッケージ本体134から赤外線センサ100へ熱が伝達しにくくなる。
【0096】
この接合部115の数は、特に限定するものではないが、赤外線センサ100の外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)の場合には、例えば、3つが好ましい。この場合には、赤外線センサ100の外周形状に基づいて規定した仮想三角形の3つの頂点に対応する3箇所に設けることにより、パッケージ本体134への実装時などの温度変化に起因したパッケージ本体134の変形が赤外線センサ100の傾きとして伝わるから、赤外線センサ100が変形するのを抑制することができ、赤外線センサ100に生じる応力を低減することが可能となる。なお、本実施形態では、赤外線センサ100の外周形状が例えば正方形状の場合、赤外線センサ100の外周の1辺の両端の2箇所と、当該1辺に平行な辺の1箇所との3箇所に頂点を有する仮想三角形を規定しているが、仮想三角形の頂点の位置は、赤外線センサ100の外周形状、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,Vzdへのワイヤボンディング時の接合信頼性(言い換えれば、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,Vzdの位置)を考慮して規定することが好ましい。接合部115には、赤外線センサ100とパッケージ本体134との距離を規定するスペーサを混入させてもよく、このようなスペーサを混入させておけば、温度センサの製品間での赤外線センサ100とパッケージ本体134との間の熱絶縁性能のばらつきを低減可能となる。ただし、赤外線センサ100の裏面全体を、接合部115を介してパッケージ本体134に接合してもよい。
【0097】
また、IC素子120は、外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)であり、裏面全体が接合部118を介してパッケージ本体134に接合されている。
【0098】
パッケージ蓋135は、パッケージ本体134側の一面が開放された箱状に形成され赤外線センサ100に対応する部位に開口窓152aが形成されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152の開口窓152aを閉塞する形でメタルキャップ152に接合された赤外線透過部材153とで構成されており、メタルキャップ152の上記一面がパッケージ本体134により閉塞される形でパッケージ本体134に気密的に接合されている。ここで、パッケージ本体134の上記一表面の周部には、パッケージ本体134の外周形状に沿った枠状の金属パターン147(図1(a)参照)が全周に亘って形成されている。そして、パッケージ133は、パッケージ蓋135とパッケージ本体134の金属パターン147とが、シーム溶接(抵抗溶接法)により金属接合されており、気密性および電磁シールド効果を高めることができる。なお、パッケージ蓋135のメタルキャップ152は、コバールにより形成されており、Niめっきが施されている。また、パッケージ本体134の金属パターン147は、コバールにより形成され、Niのめっきが施され、さらにAuのめっきが施されている。
【0099】
パッケージ蓋135とパッケージ本体134の金属パターン147との接合方法は、シーム溶接に限らず、他の溶接(例えば、スポット溶接)や、導電性樹脂により接合してもよい。ここで、導電性樹脂として異方導電性接着剤を用いれば、樹脂(バインダー)中に分散された導電粒子の含有量が少なく、接合時に加熱・加圧を行うことでパッケージ蓋135とパッケージ本体134との接合部の厚みを薄くできるので、外部からパッケージ133内へ水分やガス(例えば、水蒸気、酸素など)が侵入するのを抑制できる。また、導電性樹脂として、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させたものを用いてもよい。
【0100】
なお、パッケージ本体134およびパッケージ蓋135の外周形状は矩形状としてあるが、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、パッケージ蓋135のメタルキャップ152は、パッケージ本体134側の端縁から全周に亘って外方に延設された鍔部152bを備えており、鍔部152bが全周に亘ってパッケージ本体134と接合されている。
【0101】
赤外線透過部材153を構成するレンズは、平凸型の非球面レンズである。しかして、本実施形態の温度センサでは、赤外線透過部材153の薄型化を図りながらも、赤外線センサ100での赤外線の受光効率の向上による高感度化を図れる。また、本実施形態の温度センサでは、赤外線センサ100の検知エリアを赤外線透過部材153により設定することが可能となる。赤外線透過部材153は、赤外線センサ100の半導体基板1とは別の半導体基板(半導体ウェハ)を用いて形成されている。なお、この種の非球面レンズからなるレンズは、例えば、陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法(例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報など参照)により形成することができる。
【0102】
本実施形態では、赤外線センサ100の検知エリアを上述の半導体レンズからなるレンズにより構成される赤外線透過部材153により設定することができ、また、レンズとして、球面レンズよりも短焦点で且つ開口径が大きく収差が小さな半導体レンズを採用することができるから、短焦点化により、パッケージ133の薄型化を図れる。本実施形態の温度センサは、物体400として、人体を想定しているので、赤外線センサ100の検知対象の赤外線としては、人体から放射される10μm付近の波長帯(8μm〜13μm)の赤外線を想定している。なお、物体400は、人体に限定するものではなく、赤外線センサ100での検知対象の赤外線の波長も、特に限定するものではない。
【0103】
また、赤外線透過部材153は、メタルキャップ152における開口部152aの周部に導電性接着剤(例えば、鉛フリー半田、銀ペーストなど)からなる接合部158により固着されている。本実施形態では、接合部158の材料として導電性接着剤を採用することにより、赤外線透過部材153が、接合部158およびメタルキャップ152を介してパッケージ本体134の電磁シールド層144に電気的に接続されるので、電磁ノイズに対するシールド性を高めることができ、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を防止することができる。
【0104】
上述の赤外線透過部材153には、赤外線センサ100での検知対象の赤外線の波長を含む所望の波長域の赤外線を透過し当該波長域以外の赤外線を反射する光学多層膜(多層干渉フィルタ膜)からなるフィルタ部(図示せず)を設けることが好ましい。このようなフィルタ部を設けることにより、所望の波長域以外の不要な波長域の赤外線や可視光をフィルタ部によりカットすることが可能となり、太陽光などによるノイズの発生を抑制することができ、高感度化を図れる。
【0105】
また、本実施形態では、パッケージ本体134が平板状に形成されているので、パッケージ本体134への赤外線センサ100およびIC素子120の実装が容易になるとともに、パッケージ本体134の低コスト化が可能となる。また、パッケージ本体134が平板状に形成されているので、パッケージ本体134を、一面が開放された箱状の形状として、多層セラミック基板により構成し、パッケージ本体134の内底面に赤外線センサ100を実装する場合に比べて、パッケージ本体134の上記一表面側に配置される赤外線センサ100と赤外線透過部材153との間の距離の精度を高めることができ、より一層の高感度化を図れる。なお、以下では、パッケージ本体134において、赤外線センサ100を実装する領域を第1の領域140、IC素子120を実装する領域を第2の領域142と称する。
【0106】
本実施形態の温度センサでは、パッケージ本体134において、第1の領域140に比べて、第2の領域142の厚みを薄くしてある。ここで、パッケージ本体134の第2の領域142は、基体134aの上記一表面に凹部134bを設けることにより、第1の領域140よりも厚みを薄くしてある。また、パッケージ本体134の第2の領域142では、電磁シールド層144が露出している。
【0107】
また、パッケージ本体134の第2の領域142では、金属材料(例えば、Cuなど)からなる複数のビア(サーマルビア)145が基体134aの厚み方向に貫設されており、各ビア145が電磁シールド層144と接して熱結合されている。
【0108】
ここで、IC素子120は、第2の領域142において電磁シールド層144に接合部118を介して実装されている。しかして、IC素子120で発生した熱を電磁シールド層144におけるIC素子120の直下の部位およびビア145を通してパッケージ133の外側へ効率良く放熱させることが可能となり、IC素子120の熱が赤外線センサ100に与える影響を低減することが可能となる。
【0109】
ところで、第1のパッドVout1〜Vout8の電位をVout、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位をVs、第3のパッドVchの電位をVwell、第4のパッドVrefinの電位をVref、感温部30の出力電圧をVoとすれば、IC素子120において赤外線センサ100を制御する制御回路126は、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVon、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッド102の電位VsをVoffとし、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVonとしたときに、VrefとVwellとの電位差に起因して第4のパッドVrefin−感温部30−ソース領域44−ウェル領域(チャネル形成用領域)41−第3のパッドVchを通る経路で流れるリーク電流が、A/D変換回路123における入力値(入力電圧)の分解能を感温部30の抵抗値と第1の増幅回路122aの増幅率との積により除した値以下となるように予め設定されたVwell、Vrefの条件で赤外線センサ100を制御する。
【0110】
したがって、本実施形態の温度センサでは、例えば、制御回路126が、第4のパッドVrefinの電位Vrefを1.2V、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2V、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVonを5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧(Vout=Vref+Vo)を読み出すことが可能となり、画素部2の出力電圧に、上述のリーク電流と感温部30の抵抗値との積により決まるオフセット電圧が生じるのを抑制することが可能となる。要するに、本実施形態の温度センサでは、オフセット電圧と第1の増幅回路122aの増幅率との積を、A/D変換回路123における入力値の分解能よりも小さくすることが可能となり、物体400の温度の検出精度を向上させることが可能となる。また、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVoffを0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧は読み出されない。
【0111】
本実施形態の温度センサでは、制御回路126が、Vref=Vwellとすることが好ましく、これにより、上述のリーク電流を略ゼロとして、オフセット電圧を略ゼロとすることが可能となり、物体400の温度の検出精度を向上させることが可能となる。
【0112】
また、本実施形態の温度センサでは、MOSトランジスタ4がnMOSトランジスタの場合、チャネル形成用領域であるウェル領域41とソース領域44とで構成される第1の寄生ダイオードおよびウェル領域41とドレイン領域43とで構成される第2の寄生ダイオードのしきい値電圧をVtとすれば、制御回路126が、
−Vt<{Vwell−(Vref+Vo)}<Vt
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で赤外線センサ100を制御すれば、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードにリーク電流が流れるのを抑制することができ、S/N比の向上を図れる。すなわち、本実施形態の温度センサでは、MOSトランジスタ4がオンのときに、チャネル形成用領域であるウェル領域41を通るリーク電流が流れるのを抑制することができ、S/N比の向上を図れる。
【0113】
また、温度センサにおいて、MOSトランジスタ4がpMOSトランジスタの場合には、制御回路126が、
−Vt<{(Vref+Vo)−Vwell}<Vt
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で赤外線センサ100を制御すれば、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードにリーク電流が流れるのを抑制することができ、S/N比の向上を図れる。
【0114】
本実施形態では、半導体基板1として、第2導電形のシリコン基板を用いており、Vtが0.6V〜0.7V程度となる。なお、半導体基板1は、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板を用いてもよく、この場合には、Vtが0.2V〜0.3V程度となる。
【0115】
また、本実施形態の温度センサは、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止するために各第2の配線102それぞれにカソード(カソード電極84a)が接続された複数のツェナダイオードZDを備えているので、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止することができ、ゲート絶縁膜45の絶縁破壊を防止することが可能となる。
【0116】
また、本実施形態の温度センサは、上述のツェナダイオードZDが、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形の第1拡散領域81内に第2導電形の第2拡散領域82が形成されたものであり、各ツェナダイオードZDの第1拡散領域81が共通接続された第5のパッドVzdを備え、第5のパッドVzdの電位をVhogoとするとき、制御回路126が、VhogoとVwellとを異ならせるので、MOSトランジスタ4のゲート絶縁膜45を保護しつつS/N比の向上を図れる。ここで、制御回路126は、例えば、上述のように、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2Vとする場合、第5のパッドVzdの電位Vhogoを0Vとする。
【0117】
また、温度センサは、赤外線センサ100において、半導体基板1が接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備えており、第6のパッドVsuの電位をVsubとするとき、制御回路126が、Vwell=Vsubとする。すなわち、制御回路126は、例えば、上述のように、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2Vとする場合、第6のパッドVsuの電位Vsubを1.2Vとする。なお、図3の等価回路図には、ウェル領域41と半導体基板1とで構成される第3の寄生ダイオードD3、第1拡散領域81と半導体基板1とで構成される第4の寄生ダイオードD4も記載してある。
【0118】
また、本実施形態の温度センサでは、半導体基板1の導電形が第2導電形であり、半導体基板1が接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備え、第6のパッドVsuの電位をVsubとするとき、制御回路126が、第3のパッドVchの電位Vwellと第6のパッドVsuの電位Vsubとを等しくする、すなわち、Vwell=Vsubとするので、チャネル形成用領域であるウェル領域41と半導体基板1との電位差をなくすことが可能となり、ウェル領域41と半導体基板1とで構成される第3の寄生ダイオードD3(図3参照)にリーク電流が流れるのを抑制することが可能となる。この場合、赤外線センサ100において、第4のパッドVrefinと第3のパッドVchと第6のパッドVsuとを1個に共通化すれば、パッド数の低減を図れるとともに、制御回路126の回路構成の簡略化を図れる。
【0119】
また、本実施形態の温度センサは、半導体基板1の導電形が第2導電形であって、第1導電形がp形、第2導電形がn形であり、制御回路126が、Vhogo≦Voff、且つ、Vhogo≦Vsubとすることにより、ツェナダイオードZDのリーク電流を抑制することができる。
【0120】
また、本実施形態の温度センサについて、ここまでは、第1導電形がp形、第2導電形がn形である一例(この一例では、MOSトランジスタ4は、nMOSトランジスタである)について説明したが、第1導電形がn形、第2導電形がp形でもよく、この場合(この場合、MOSトランジスタ4は、pMOSトランジスタである)、制御回路126が、Vhogo≧Voff、且つ、Vhogo≦Vsubとすることにより、ツェナダイオードZDのリーク電流を抑制することができる。
【0121】
要するに、半導体基板1の導電形は、n形に限らず、例えば、図22〜図24に示すようにp形でもよい。図22は、p形の半導体基板1がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をn形(n+)とする例である。また、図23は、p形の半導体基板1に形成したp形(p+)のウェル領域41がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をn形(n+)とする例である。また、図24は、p形の半導体基板1に形成したn形のウェル領域41がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をp形(p+)とする例である。
【0122】
以下、IC素子120の演算部124において物体400の温度を演算する演算式について説明する。
【0123】
物体400から放射される電磁波(主に赤外線)のエネルギ密度は、ステファン−ボルツマンの法則によれば、電磁波のエネルギ密度をP0〔W/m2〕、物体400の放射率をε0、物体400の絶対温度をTo〔K〕、ステファン−ボルツマン定数をσ〔W/(m2・K4)〕とするとき、
【0124】
【数5】
で表される。
【0125】
しかしながら、物体400から放射された赤外線は、赤外線センサ100に到達するまでに大気中の水蒸気や二酸化炭素などによって吸収され減衰し、しかも、吸収率が波長により異なる。また、赤外線センサ100の前方に赤外線透過部材153が配置されているので、物体400から放射された赤外線は、赤外線透過部材153での反射や吸収などによっても減衰する。
【0126】
したがって、物体400から放射される電磁波のエネルギ密度をステファン−ボルツマンの法則に従って表し、この電磁波のエネルギ密度を赤外線センサ100の吸収エネルギ密度と仮定した場合には、赤外線センサ100の吸収エネルギ密度の誤差が大きくなってしまう。
【0127】
そこで、本願発明者らは、赤外線センサ100の吸収エネルギ密度を導出するにあたって、まず、物体400から放射される電磁波のエネルギ密度について、プランクの放射則により表すことを考えた。
【0128】
物体400から放射される電磁波のエネルギ密度は、プランクの放射則によれば、電磁波のエネルギ密度をW(λ)〔W/m2〕、プランク定数をh〔J・s〕、光束をc〔m/s〕、波長をλ〔m〕、ボルツマン定数をk〔J/K〕、物体400の絶対温度をTo〔K〕、物体400の放射率をη0とするとき、
【0129】
【数6】
で表される。
【0130】
ここで、物体400から放射され赤外線センサ100に吸収される電磁波(主に赤外線)のエネルギ密度(吸収エネルギ密度)は、吸収エネルギ密度をP1〔W/m2〕、波長をλ〔m〕、赤外線センサ100の吸収率をε(λ)、大気の波長別の透過率をηair(λ)、赤外線透過部材153の波長別の透過率をηtra(λ)、赤外線透過部材153であるレンズの明るさをFとするとき、
【0131】
【数7】
で表される。
【0132】
一方、赤外線センサ100からは、赤外線センサ100の温度に応じた電磁波(主に、赤外線)が放射される。赤外線センサ100から放射される電磁波については、大気や赤外線透過部材153での吸収を考慮する必要がない。そこで、赤外線センサ100から放射される電磁波のエネルギ密度(放射エネルギ密度)については、ステファン−ボルツマンの法則により表すことを考えた。
【0133】
赤外線センサ100の放射エネルギ密度は、ステファン−ボルツマンの法則によれば、放射エネルギ密度をP2〔W/m2〕、赤外線センサ100の放射率をεs、赤外線センサ100の温度をTs〔K〕、ステファン−ボルツマン定数をσ〔W/(m2・K4)〕とするとき、
【0134】
【数8】
で表される。
【0135】
ここで、赤外線センサ100におけるエネルギ収支(吸収エネルギと放射エネルギとの差分)は、赤外線センサ100の吸収エネルギ密度と赤外線センサ100の放射エネルギ密度との差分に比例するので、赤外線センサ100におけるエネルギ収支をΔQ〔W〕、赤外線センサ100の面積をAse〔m2〕とすると、
【0136】
【数9】
で表される。なお、本実施形態における赤外線センサ100では、赤外線の吸収、赤外線の放射が、ほとんど、上述の半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aで行われるので、赤外線センサ100の面積Aseの値を、第1の薄膜構造部3aの面積の値とすればよい。また、赤外線センサ100の放射率εsについては、赤外線センサ100の第1の薄膜構造部3aに関してFT−IR(フーリエ変換赤外分光法)により測定した吸収率の値を用いればよい。
【0137】
そして、赤外線センサ100の出力電圧は、当該赤外線センサ100のエネルギ収支に比例するので、赤外線センサ100の出力電圧をVout〔V〕、比例係数をLとすると、
【0138】
【数10】
で表される。ここで、本願発明者らは、実験、シミュレーションなどを繰り返して行った結果、物体400の温度Toおよび赤外線センサ100の温度Tsが、253K(−20℃)〜373K(100℃)の範囲内であれば、上記(8)式を下記(9)式で示す2次方程式での近似により、99%以上の相関係数が得られるという知見を得た。
【0139】
【数11】
上記(9)式において、係数Cと係数Fとを合わせて係数Gとすれば、上記(9)式は、下記(10)式のように表すことができる。
【0140】
【数12】
ここで、(10)式について、物体400の温度Toを未知数とすれば、解の公式により、物体400の温度Toは、下記(11)式のようになる。
【0141】
【数13】
温度センサは、上述の演算部124において、(11)式の演算式を用いて物体400の温度Toを演算する。ここで、演算部124は、メモリ125に予め記憶された係数A,B,D,E,Gの値(データ)と、赤外線センサ100の出力電圧Voutおよびサーミスタ110により測定された赤外線センサ100の温度Tsとを利用して(11)式の演算を行う。なお、赤外線センサ100の出力電圧Voutは、第1の増幅回路122aにて増幅されA/D変換回路123にてディジタル値に変換されて演算部124に入力される。また、赤外線センサ100の温度Tsは、当該温度Tsに対応するサーミスタ110の出力電圧が第2の増幅回路122bにて増幅されA/D変換回路123にてディジタル値に変換されて演算部124に入力される。また、係数A,B,D,E,Gの一例を下記表1に示す。
【0142】
【表1】
以上説明した本実施形態の温度センサは、物体400から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイル30aにより構成される感温部(熱電変換部)30を有する赤外線センサ100と、赤外線センサ100の出力電圧Voutに基づいて物体400の温度Toを演算する演算部124とを備え、演算部124は、赤外線センサ100の出力電圧Voutが、プランクの放射則に従って表され物体400の温度Toに依存する赤外線センサ100の吸収エネルギ密度と、ステファン−ボルツマンの法則に従って表され赤外線センサ100の温度Tsに依存する赤外線センサ100の放射エネルギ密度との差分に比例すると仮定して求められた演算式を用いて物体400の温度Toを演算するので、物体400の温度Toの検出精度を向上させることが可能となる。
【0143】
また、本実施形態の温度センサは、赤外線センサ100の温度を測定するサーミスタ110を備え、演算式として上記(11)式を用いるので、物体400の温度Toを、容易に且つ高精度に検出することが可能となる。すなわち、物体400の温度Toの検出精度の低下を抑制しつつ演算部124での演算時間を短縮することが可能となる。
【0144】
ところで、上記(11)式で示した演算式の導出にあたっては、上記(5)式を利用しているが、赤外線透過部材153がレンズではなく平板状の形状の場合には、赤外線センサ100に吸収される電磁波(主に赤外線)のエネルギ密度P1〔W/m2〕は、下記(12)式で表され、係数A,B,D,E,Gの値は上記表1の値とは異なった値となる。
【0145】
【数14】
また、赤外線透過部材153が無い場合には、赤外線センサ100に吸収される電磁波(主に赤外線)のエネルギ密度P1〔W/m2〕は、下記(13)式で表され、係数A,B,D,E,Gの値は上記表1の値とは異なった値となる。
【0146】
【数15】
また、本実施形態の温度センサにおいて、赤外線センサ100は、図17に示すように、物体400の温度の上昇に伴い出力電圧Voutが低下する負特性を有することが好ましい。赤外線センサ100は、MOSトランジスタ4がオンのときに感温部30において第1の配線101に電気的に接続される熱電要素をn形ポリシリコン層34とし、第4の配線104に電気的に接続される熱電要素をp形ポリシリコン層35とすることにより、図17に示すような負特性を有することとなる。
【0147】
本実施形態の温度センサでは、赤外線センサ100が図17に示すような負特性を有していることにより、物体400の温度Toが高くなるほど出力電圧Voutが低くなり、逆に、物体400の温度Toが低くなるほど出力電圧Voutが高くなるが、図17の負特性は、上に凸の二次方程式で表される。言い換えれば、図17の負特性は、上記(10)式で近似した場合、係数Aがマイナスの値となる(表1参照)。本実施形態の温度センサでは、赤外線センサ100が図17に示すような負特性を有していることにより、出力電圧Voutの最大値が上記(10)式の二次方程式で表される二次曲線の頂点の値となるので、赤外線センサ100の出力電圧Voutのダイナミックレンジを決めることができ、A/D変換回路123の入力範囲および分解能を適切に決めることが可能となる。例えば、第1の増幅回路122aで増幅されA/D変換回路123に入力される電圧の範囲が0〜1Vであるとし、必要な分解能が1mVであれば、分解能を10ビットとして、1024分割すればよい。
【0148】
また、本実施形態の温度センサは、赤外線センサ100が、熱電変換部である感温部30を有する複数の画素部2が半導体基板1の上記一表面側においてアレイ状(ここでは、二次元アレイ状)に配置されたものなので、物体400の高精度な温度分布測定が可能となる。
また、本実施形態の温度センサは、上述の演算式の係数A,B,D,E,Gを記憶する記憶部としてのメモリ125を有しているが、赤外線センサ100として複数の画素部2が半導体基板1の一表面側においてアレイ状に配置されたものなので、メモリ125においては、係数A,B,D,E,Gが、赤外線センサ100の各画素部2ごとに対応付けて記憶されていることが好ましい。言い換えれば、予め赤外線センサ100の各画素部2ごとに独立して係数A,B,D,E,Gを求めてメモリ125に記憶させておき、演算部124にて画素部2ごとに物体400の温度Toを演算する際に、各画素部2ごとに対応付けられた係数A,B,D,E,Gを読み出して演算を行うことによって、より高精度な温度分布測定が可能となる。
【0149】
ところで、感温部30において直列に接続されている熱電対の数をn、サーモパイル30aの熱電要素であるn形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35のゼーベック係数をSc〔V/K〕、赤外線センサ100が赤外線を吸収したことによる赤外線センサ100の温度変化をΔTs〔K〕とすれば、赤外線センサ100の出力電圧Voutは、下記(14)式でも表すことができる。
【0150】
【数16】
上記(14)式において、n、Scは赤外線センサ100の各画素部2で同じであるが、ΔTsは赤外線センサ100の画素部2によって異なる可能性がある。ここで、赤外線センサ100の感度係数S〔V/K〕を画素部2ごとにあらかじめ求めて、赤外線センサ100の出力電圧Voutを下記(15)式で近似するようにしてもよい。
【0151】
【数17】
なお、感度係数Sは、例えば、物体400の温度が298K(25℃)、328K(55℃)それぞれの場合の赤外線センサ100の出力電圧Voutを測定して、出力電圧Voutの変化量を温度の変化量で除することにより求めればよい。
【0152】
赤外線センサ100の出力電圧Voutを上記(15)式で近似する場合には、メモリ125に、演算式で用いる係数として、係数Sを各画素部2ごとに個別に設定された1つの個別係数として記憶させ、係数a,b,d,e,gを、各画素部2に共通に設定された複数の共通係数として記憶させることが好ましい。これにより、メモリ125の記憶容量を低減させることができ、低コストおよび小型化を図ることが可能となる。メモリ125の記憶容量を減らさない場合には、各係数S,a,b,d,e,gのビット数を増やすことによって、より高精度な演算が可能となる。なお、個別係数および共通係数それぞれの数は特に限定するものではなく、適宜変更してもよい。
【0153】
ところで、上述の温度センサは、赤外線センサ100の温度を測定するサーミスタ110を備えている例について説明したが、これに限らず、赤外線センサ100の温度を一定温度に保つペルチェ素子を備えている場合には、当該ペルチェ素子により赤外線センサ100の温度を一定温度に保つことができるので、サーミスタ110を設ける必要はなく、赤外線センサ100の出力電圧Voutを下記(16)式により近似することにより、物体400の温度Toが、253K(−20℃)〜373K(100℃)の範囲内であれば、99%以上の相関係数が得られるので、この場合の演算式としては、下記(17)式を用いればよい。
【0154】
【数18】
【0155】
【数19】
この場合の温度センサも、物体400から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイル30aにより構成される感温部(熱電変換部)30を有する赤外線センサ100と、赤外線センサ100の出力電圧Voutに基づいて物体400の温度Toを演算する演算部124とを備え、演算部124は、赤外線センサ100の出力電圧Voutが、プランクの放射則に従って表され物体400の温度Toに依存する赤外線センサ100の吸収エネルギ密度と、ステファン−ボルツマンの法則に従って表され赤外線センサ100の温度Tsに依存する赤外線センサ100の放射エネルギ密度との差分に比例すると仮定して求められた演算式を用いて物体400の温度Toを演算するので、物体400の温度Toの検出精度を向上させることが可能となる。
【0156】
上述の赤外線センサ100において、半導体基板1の空洞部11は、半導体基板1の厚み方向に貫通する形で形成してもよく、この場合は、空洞部11を形成する空洞部形成工程において、半導体基板1の上記一表面とは反対の他表面側から、半導体基板1における空洞部11の形成予定領域を、例えば誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置を用いた異方性エッチング技術を利用して形成すればよい。また、赤外線センサ100は、熱電変換部である感温部30を具備する複数の画素部2が半導体基板1の一表面側においてアレイ状に配置されたものに限らず、感温部30が1つだけのものでもよく、この場合は、MOSトランジスタ4を設ける必要はない。また、感温部30を構成するサーモパイル30aの数も複数に限らず、1つでもよい。また、赤外線センサ100は、半導体基板1を用いて形成したものに限らず、他の基板を用いて形成されたものでもよい。
【符号の説明】
【0157】
1 半導体基板
2 画素部
30 感温部(熱電変換部)
30a サーモパイル
100 赤外線センサ
110 サーミスタ
124 演算部
125 メモリ(記憶部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図25および図26に示す構成の赤外線センサ100’が提案されている(特許文献1)。この赤外線センサ100’は、赤外線を吸収する赤外線吸収部33’の温度変化に応じた出力電圧を発生する熱電対型の感温部(熱電変換部)30’を具備する熱型赤外線検出部3’とMOSトランジスタ4’とを有する画素部2’を備えている。また、この赤外線センサ100’は、a×b個(図26の例では、4×4個)の画素部2’が、ベース基板201の一表面側において2次元アレイ状に配置されている。ここで、ベース基板201は、n形のシリコン基板201aを用いて形成されている。
【0003】
上述の赤外線センサ100’を備えた赤外線センサモジュールでは、MOSトランジスタ4’が順次オン状態になるように各画素選択用のパッドPselの電位を制御することで各画素部2’の出力電圧を出力用のパッドPoutから順次読み出すことができる。
【0004】
また、特許文献1には、図27に示すように、赤外線センサ100’と、当該赤外線センサ100’の出力信号である出力電圧を信号処理する信号処理ICチップ220’と、赤外線センサ100’および信号処理ICチップ220’が実装されたパッケージ本体230’とを備えた赤外線センサモジュールが記載されている。なお、パッケージ本体230’は、一面開口した矩形箱状に形成されており、内底面に赤外線センサ100’および信号処理ICチップ220’が搭載され、赤外線センサ100’における熱型赤外線検出部3’の赤外線吸収部33’へ赤外線を収束するレンズを備えたパッケージ蓋(図示せず)が覆着されている。
【0005】
ここで、特許文献1には、信号処理ICチップ220’に、図28に示すように、赤外線センサ100’の複数(図示例では、4つ)の出力用のパッドPoutそれぞれがボンディングワイヤからなる配線80を介して各別に電気的に接続される複数(図示例では、4つ)の入力用のパッドPin、入力用のパッドPinの出力電圧を増幅する増幅回路AMP、複数の入力用のパッドPinの出力電圧を択一的に増幅回路AMPに入力するマルチプレクサMUXなどを設ければ、赤外線画像を得ることができることが記載されている。
【0006】
また、従来から、図29に示すように、測定対象物(例えば、火災による火、人)から放射される赤外線を検知して測定対象物の温度Tbbに対応する電圧Vbb(信号S11)を出力する赤外線センサ311と、当該赤外線センサ311の温度Tthを検出し当該温度Tthに対応する電圧Vth(信号S12)を出力するサーミスタ312とを備えた温度検出装置が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
この温度検出装置は、赤外線センサ311およびサーミスタ312それぞれから出力される電圧Vbb,Vthを各別に増幅する2つのアンプ402a,402bと、各アンプ402a,402bの出力をアナログ−ディジタル変換するA/D変換器403と、A/D変換器403の出力に基づいて測定対象物の温度Tbbを演算し当該温度Tbbを示す信号Soutを出力する温度演算部404と、温度演算部404での演算に用いる後述の係数A,Bおよびオフセット値R1、後述の(2)式の演算式などを記憶したメモリ405とを備えている。
【0008】
また、赤外線センサ311およびサーミスタ312は、金属製のパッケージ(図示せず)に収納されている。このパッケージには、赤外線センサ311が赤外線を受光できるような窓が形成されている。
【0009】
上述の温度演算部404は、下記(1)式に従って測定対象物の温度Tbbを演算する。
【0010】
【数1】
この(1)式を測定対象物の温度Tbbを求める式に変形すると、下記(2)式となる。
【0011】
【数2】
(1)式、(2)式において、Voは赤外線センサ311の出力電圧〔V〕、Tbbは測定対象物の温度〔K〕、Aは測定対象物の温度を電圧に換算するための係数、Tthは赤外線センサ311の温度〔K〕、B(≠A)は赤外線センサ311の温度を電圧に換算するための係数、R1はオフセット値である。ここにおいて、温度Tbbは、赤外線センサ311の視野に入った赤外線エネルギを黒体の温度に換算した値である。また、係数Aは、ステファン−ボルツマン定数、エミッション係数、アンプ402aの増幅率などにより決まる値である。また、係数Bは、ステファン−ボルツマン定数、エミッション係数、アンプ402bの増幅率などにより決まる値である。なお、係数A、Bに含まれているステファン−ボルツマン定数は、測定対象物と赤外線センサ311とで同じ値である。しかし、エミッション係数は、測定対象物と赤外線センサ311とで異なる値になる。
【0012】
温度演算部404は、(2)式に示す演算式に基づいて、測定対象物の温度Tbbを取得し、この温度Tbbを示す信号Soutを出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−78451号公報
【特許文献2】特開2007−198745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、測定対象物などの物体から放射された赤外線は、赤外線センサに到達するまでに大気中の水蒸気や二酸化炭素などによって吸収され減衰する(吸収率は波長によって異なる)。また、赤外線センサの前方にレンズなどの赤外線透過部材が配置されている場合、物体から放射された赤外線は、赤外線透過部材での反射や吸収などによっても減衰する(反射率や透過率は波長によって異なる)。
【0015】
しかしながら、上記特許文献2に開示された温度検出装置では、ステファン−ボルツマンの法則に従って(2)式が求められているものと考えられ、測定対象物の温度Tbbの検出精度が、赤外線センサの周囲環境の影響で低下してしまう懸念がある。
【0016】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、物体の温度の検出精度を向上させることが可能な温度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の温度センサは、物体から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイルにより構成される熱電変換部を有する赤外線センサと、前記赤外線センサの出力電圧に基づいて前記物体の温度を演算する演算部とを備え、前記演算部は、前記赤外線センサの出力電圧が、プランクの放射則に従って表され前記物体の温度に依存する前記赤外線センサの吸収エネルギ密度と、ステファン−ボルツマンの法則に従って表され前記赤外線センサの温度に依存する前記赤外線センサの放射エネルギ密度との差分に比例すると仮定して求められた演算式を用いて前記物体の温度を演算することを特徴とする。
【0018】
この温度センサにおいて、前記赤外線センサの温度を測定するサーミスタを備え、前記物体の温度をTo〔K〕、前記赤外線センサの出力電圧をVout〔V〕、前記赤外線センサの温度をTs〔K〕とするとき、前記演算式は、
【0019】
【数3】
で表されることが好ましい。
【0020】
この温度センサにおいて、前記赤外線センサの温度を一定温度に保つペルチェ素子を備え、前記物体の温度をTo〔K〕、前記赤外線センサの出力電圧をVout〔V〕とするとき、前記演算式は、
【0021】
【数4】
で表されることが好ましい。
【0022】
この温度センサにおいて、前記赤外線センサは、前記物体の温度の上昇に伴い出力電圧が低下する負特性を有することが好ましい。
【0023】
この温度センサにおいて、前記赤外線センサは、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであることが好ましい。
【0024】
この温度センサにおいて、前記演算式の係数を記憶する記憶部を有し、前記赤外線センサが、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであり、前記記憶部は、前記係数が、前記赤外線センサの前記各画素部ごとに対応付けて記憶されてなることが好ましい。
【0025】
この温度センサにおいて、前記演算式の係数を記憶する記憶部を有し、前記赤外線センサが、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであり、前記記憶部は、前記係数として、前記各画素部ごとに個別に設定された1つの個別係数と、前記各画素部に共通に設定された複数の共通係数とを記憶していることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の温度センサにおいては、物体の温度の検出精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態の温度センサに関し、(a)は概略断面図、(b)は赤外線センサの要部概略断面図、(c)は回路ブロック図である。
【図2】同上の温度センサにおける赤外線センサの等価回路図である。
【図3】同上における赤外線センサの要部等価回路図である。
【図4】同上における赤外線センサの平面レイアウト図である。
【図5】同上における赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。
【図6】同上における赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。
【図7】同上における赤外線センサの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図8】同上における赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図9】同上における赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図10】同上における赤外線センサの冷接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図11】同上における赤外線センサの温接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図12】同上における赤外線センサの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図13】同上における赤外線センサの画素部の要部の概略断面図である。
【図14】同上における赤外線センサの画素部の要部の概略断面図である。
【図15】同上における赤外線センサの要部説明図である。
【図16】同上における赤外線センサに関し、(a)は要部の平面レイアウト図、(b)は、(a)のツェナダイオードの拡大図、(c)はツェナダイオードの概略断面図である。
【図17】同上における赤外線センサの特性説明図である。
【図18】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図19】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図20】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図21】同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図22】同上における赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図23】同上における赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図24】同上における赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図25】従来例における赤外線センサを示し、(a)は画素部の平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図26】同上を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は等価回路図である。
【図27】同上の赤外線センサを備えた赤外線センサモジュールの要部概略平面図である。
【図28】同上の赤外線センサを備えた赤外線センサモジュールの要部説明図である。
【図29】同上の赤外線センサモジュールの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本実施形態の温度センサについて図1〜図17を参照しながら説明する。
【0029】
本実施形態の温度センサは、赤外線センサ100と、サーミスタ110と、IC素子120とが、1つのパッケージ133に収納されている。
【0030】
赤外線センサ100は、物体(例えば、人体など)400から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイル30aにより構成される熱電変換部である感温部30を有している。また、赤外線センサ100は、感温部30および感温部30の出力電圧を取り出すためのMOSトランジスタ4を具備するa×b個(図4の例では、8×8個)の画素部2が、半導体基板1の一表面側においてa行b列(図4の例では、8行8列)の2次元アレイ状に配置されている。なお、図4の例では、a=8、b=8としてあるが、a≧2、b≧2であればよい。
【0031】
上述のMOSトランジスタ4は、図1(b)、図7、図14に示すように、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形のウェル領域41内で、第2の導電形のソース領域44と第2導電形のドレイン領域43とが離間して形成されている。本実施形態では、ウェル領域がチャネル形成用領域を構成している。なお、図2には、第1導電形をp形、第2導電形をn形としてMOSトランジスタ4をnチャネルMOSトランジスタとした場合の等価回路図を示してある。この図2の等価回路図では、感温部30を抵抗の図記号で表してある。
【0032】
赤外線センサ100は、各列のb個(8個)の画素部2の感温部30の一端がMOSトランジスタ4のソース領域44−ドレイン領域43を介して各列ごとに共通接続されたb個(8個)の第1の配線101を備えている。
【0033】
また、赤外線センサ100は、各行の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続されたa個(8個)の第2の配線102と、各行のMOSトランジスタ4のウェル領域41が各列ごとに共通接続されたb個(8個)の第3の配線103と、各列のa個(8個)の感温部30の他端が各列ごとに共通接続されたb個(図示例では、8個)の第4の配線104とを備えている。
【0034】
上述の赤外線センサ100は、第1の配線101が各別に接続された出力用のb個の第1のパッドVout1〜Vout8と、第2の配線102が各別に接続された画素部選択用のa個の第2のパッドVsel1〜Vsel8と、各第3の配線103が共通接続された第3のパッドVchと、第4の配線104が共通接続された基準バイアス用の第4のパッドVrefinとを備えている。しかして、赤外線センサ100は、全ての感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。すなわち、MOSトランジスタ4が、順次、オン状態になるように各画素部2を選択するための第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位を制御することで各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。
【0035】
サーミスタ110は、赤外線センサ100の温度を検出するためのものであり、パッケージ133内において赤外線センサ100に近接して配置され、赤外線センサ100の温度に応じたアナログの出力電圧を発生する。なお、サーミスタ110は、一端がプルアップ抵抗(図示せず)を介して電源(図示せず)に接続され、他端がグランド(図示せず)に接続されている。
【0036】
IC素子120は、赤外線センサ100とサーミスタ110との各出力電圧に基づいて物体400の温度を演算する演算部124を有している。
【0037】
パッケージ133は、赤外線センサ100、サーミスタ110およびIC素子120が実装されたパッケージ本体134と、パッケージ本体134との間に赤外線センサ100、サーミスタ110およびIC素子120を囲む形でパッケージ本体134に気密的に接合されたパッケージ蓋135とで構成されている。
【0038】
パッケージ本体134は、IC素子120と赤外線センサ100とが横並びで実装されている。一方、パッケージ蓋135は、赤外線センサ100での検知対象の赤外線を透過する機能および導電性を有している。
【0039】
パッケージ蓋135は、パッケージ本体134の上記一表面側に覆着されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152において赤外線センサ100に対応する部位に形成された開口窓152aを閉塞し且つ赤外線を透過する赤外線透過部材153とで構成されている。要するに、赤外線センサ100の前方に、赤外線透過部材153が配置されている。本実施形態では、赤外線透過部材153をレンズにより構成してあり、赤外線透過部材153が、赤外線センサ100へ赤外線を収束する機能を有している。なお、赤外線透過部材153は、レンズに限らず、例えば、平板状のものでもよい。
【0040】
以下、各構成要素についてさらに説明する。
【0041】
赤外線センサ100は、感温部30が埋設された熱型赤外線検出部3とMOSトランジスタ4とを有する複数(a×b個)の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側において2次元アレイ状に配置されている。ここで、半導体基板1の上記一表面は、Si(100)面としてある。感温部30は、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30a(図5参照)を直列接続することにより構成されている。
【0042】
各画素部2の熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の形成用領域A1(図7参照)に形成されている。また、各画素部2のMOSトランジスタ4は、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2(図7参照)に形成されている。
【0043】
赤外線センサ100は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成されている。熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備えている。第1の薄膜構造部3aは、赤外線を吸収する赤外線吸収部33を備えている。ここで、第1の薄膜構造部3aは、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、隣接する第2の薄膜構造部3aa同士を連結する連結片3c(図5参照)とを有している。なお、図5の例の熱型赤外線検出部3では、複数の線状のスリット13を設けることにより、第1の薄膜構造部3aが6つの第2の薄膜構造部3aaに分離されている。以下では、赤外線吸収部33(第1の赤外線吸収部33と称する)のうち第2の薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を第2の赤外線吸収部33aと称する。
【0044】
熱型赤外線検出部3は、第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられている。ここで、サーモパイル30aは、温接点T1が、第2の薄膜構造部3aaに設けられ、冷接点T2が、支持部3dに設けられている。要するに、温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる領域に形成され、冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない領域に形成されている。
【0045】
また、熱型赤外線検出部3の感温部30は、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で、全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。図5の例では、感温部30は、6個のサーモパイル30aを直列接続してある。ただし、上述の接続関係は、複数個のサーモパイル30aの全てを直列接続する接続関係に限らない。例えば、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続すれば、6個のサーモパイル30aが並列接続されている場合や、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて、感度を高めることができる。また、6個のサーモパイル30aの全てが直列接続されている場合に比べて、感温部30の抵抗値を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。
【0046】
ここで、熱型赤外線検出部3では、第2の薄膜構造部3aaごとに、支持部3dと第2の赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の周方向に離間して形成されている。この熱型赤外線検出部3では、2つのブリッジ部3bb,3bbと第2の赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視U字状のスリット14が形成されている。熱型赤外線検出部3のうち、平面視において第1の薄膜構造部3aを囲む部位である支持部3dは、矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、上述の各スリット13,14により、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dそれぞれとの連結部位以外の部分が、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dと空間的に分離されている。ここで、第2の薄膜構造部3aaは、支持部3dからの延長方向の寸法を93μm、この延長方向に直交する幅方向の寸法を75μmとし、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
【0047】
第1の薄膜構造部3aは、半導体基板1の上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜1bと、当該シリコン酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、当該シリコン窒化膜32上に形成された感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。層間絶縁膜50は、BPSG膜により構成してある。パッシベーション膜60は、PSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜により構成してあるが、これに限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
【0048】
上述の熱型赤外線検出部3では、シリコン窒化膜32のうち第1の薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が第1の赤外線吸収部33を構成している。また、支持部3dは、シリコン酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とで構成されている。
【0049】
また、赤外線センサ100は、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、半導体基板1の上記一表面側において、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されており、この積層膜のうち、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が赤外線吸収膜70(図7(b)参照)を兼ねている。ここで、赤外線吸収膜70の屈折率をn2、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4n2に設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n2=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を0.5μm、NSG膜の膜厚を0.5μm)としてある。
【0050】
また、各画素部2では、空洞部11の内周形状が矩形状であり、連結片3cは、平面視X字状に形成されており、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
【0051】
サーモパイル30aは、シリコン窒化膜32上で第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨って形成されたn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との一端部同士を第2の赤外線吸収部33aの赤外線入射面側で金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部36により電気的に接続した複数個(図5に示した例では、9個)の熱電対を有している。また、サーモパイル30aは、半導体基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部37により接合され電気的に接続されている。ここで、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と接続部36とで温接点T1を構成している。また、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と接続部37とで冷接点T2を構成している。なお、本実施形態における赤外線センサ100では、サーモパイル30aの各n形ポリシリコン層34および各p形ポリシリコン層35それぞれにおいて、上述のブリッジ部3bb,3bbに形成されている部位および半導体基板1の上記一表面側のシリコン窒化膜32上に形成されている部位でも赤外線を吸収することができる。
【0052】
また、赤外線センサ100は、空洞部11の形状が、四角錘状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっている。そこで、赤外線センサ100は、第1の薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように、各画素部2におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。すなわち、図5の上下方向における真ん中の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図5および図8に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向に沿って温接点T1を並べて配置してあるのに対し、当該上下方向における上側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図5および図9に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してあり、当該上下方向における下側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図5に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。しかして、赤外線センサ100は、図5の上下方向における上側、下側の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置が、真ん中の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上できる。なお、本実施形態では、空洞部11の最深部の深さを所定深さdp(図7(b)参照)とするとき、所定深さdpを200μmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。
【0053】
また、第2の薄膜構造部3aaは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制するとともに赤外線を吸収するn形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39が形成されている。また、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cには、当該連結片3cを補強するn形ポリシリコン層からなる補強層39b(図12参照)が設けられている。ここで、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。しかして、赤外線センサ100では、連結片3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止でき、また、製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。なお、本実施形態では、図12に示す連結片3cの長さ寸法L1を24μm、幅寸法L2を5μm、補強層39bの幅寸法L3を1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、本実施形態のように半導体基板1としてシリコン基板を用いており、補強層39bがn形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、補強層39bの幅寸法は、連結片3cの幅寸法よりも小さく設定し、平面視において補強層39bの両側縁が連結片3cの両側縁よりも内側に位置する必要がある。
【0054】
また、赤外線センサ100は、図12および図15(b)に示すように、連結片3cの両側縁と第2の薄膜構造部3aaの側縁との間にそれぞれ面取り部3d,3dが形成され、X字状の連結片3cの略直交する側縁間にも面取り部3eが形成されている。しかして、赤外線センサ100では、図15(a)に示すように面取り部が形成されていない場合に比べて、連結片3cと第2の薄膜構造部3aaとの連結部位での応力集中を緩和でき、製造時に発生する残留応力を低減できるとともに製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。また、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止できる。なお、図12に示した例では、各面取り部3d,3eをR(アール)が3μmのR面取り部としてあるが、R面取り部に限らず、例えば、C面取り部としてもよい。
【0055】
また、赤外線センサ100は、各熱型赤外線検出部3に、支持部3dと一方のブリッジ部3bbと第2の赤外線吸収部33aと他方のブリッジ部3bbと支持部3dとに跨るように引き回されたn形ポリシリコン層からなる故障診断用配線(故障診断用のヒータ)139を設けて、全ての故障診断用配線139を直列接続してある。しかして、赤外線センサ100では、a×b個の故障診断用配線139の直列回路へ通電することで、ブリッジ部3bbの折れなどの破損の有無を検出することができる。
【0056】
要するに、赤外線センサ100は、製造途中での検査時や使用時において、a×b個の故障診断用配線139の直列回路への通電の有無によって、ブリッジ部3bbの折れや故障診断用配線139の断線などを検出することができる。また、赤外線センサ100では、上述の検査時や使用時において、a×b個の故障診断用配線139の直列回路へ通電して各感温部30の出力を検出することにより、感温部30の断線の有無や感度のばらつき(感温部30の出力のばらつき)などを検知することが可能となる。ここにおいて、感度のばらつきに関しては、画素部2ごとの感度のばらつきを検知することが可能であり、例えば、第1の薄膜構造部3aの反りや第1の薄膜構造部3aの半導体基板1へのスティッキングなどに起因した感度のばらつきを検知することが可能となる。ここで、本実施形態における赤外線センサ100では、平面視において、故障診断用配線139を複数の温接点T1の群の付近において折り返され蛇行した形状としてある。したがって、故障診断用配線139へ通電することにより発生するジュール熱によって、各温接点T1を効率良く温めることができる。上述の故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35と同一平面上に同一厚さで形成されている。
【0057】
上述の赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34と同時に形成されている。また、p形ポリシリコン層35は、p形不純物として例えばボロンを採用すればよく、不純物濃度を例えば1018〜1020cm−3程度の範囲で適宜設定すればよい。本実施形態では、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減できてサーモパイル30aの抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図れる。なお、赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、p形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてもよい。
【0058】
ところで、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139の屈折率をn1、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの厚さt1をλ/4n1に設定するようにしている。しかして、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n1=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
【0059】
また、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であるので、赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することができて、感温部30の出力のS/N比を高めることができる。また、赤外線吸収層39および故障診断用配線139をn形ポリシリコン層34と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
【0060】
ここで、感温部30の接続部36と接続部37とは、半導体基板1の上記一表面側において、層間絶縁膜50によって絶縁分離されている(図10および図11参照)。すなわち、温接点T1側の接続部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a1,50a2を通して、両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続されている。また、冷接点T2側の接続部37は、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a3,50a4を通して、両ポリシリコン層34,35の上記各他端部と電気的に接続されている。
【0061】
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。
【0062】
MOSトランジスタ4は、図7および図14に示すように、半導体基板1の上記一表面側に第1導電形であるp形(p+)のウェル領域41が形成され、ウェル領域41内に、第2導電形であるn形(n+)のドレイン領域43と第2導電形であるn形(n+)のソース領域44とが離間して形成されている。さらに、ウェル領域41内には、ドレイン領域43とソース領域44とを囲む第1導電形であるp形(p++)のチャネルストッパ領域42が形成されている。
【0063】
ウェル領域41においてドレイン領域43とソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。
【0064】
また、ドレイン領域43上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、ソース領域44上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。
【0065】
ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50によって絶縁分離されている。ここで、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してソース領域44と電気的に接続されている。
【0066】
赤外線センサ100の各画素部2では、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が第4の配線104に電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が、第1の配線101と電気的に接続され、ゲート電極46が、n形ポリシリコン配線からなる第2の配線102と電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のチャネルストッパ領域42上に、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる電極49が形成されている。しかして、ウェル領域41は、チャネルストッパ領域42および電極49を介して、第3の配線103と電気的に接続されている。なお、電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してチャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
【0067】
また、赤外線センサ100は、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止するために各第2の配線102それぞれにカソードが接続された複数のツェナダイオードZDを備えている。ここで、ツェナダイオードZDは、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形の第1拡散領域81内に第2導電形の第2拡散領域82が形成されたものである。
【0068】
上述のツェナダイオードZDは、図16に示すように、第1拡散領域81上にアノード電極83が形成され、第2拡散領域82上に2つのカソード電極84a,84bが形成されている。このツェナダイオードZDは、アノード電極83が、第5のパッドVzdと電気的に接続され、一方のカソード電極84aが、1つの第2の配線102を介して当該第2の配線102に接続されたMOSトランジスタ4のゲート電極46と電気的に接続され、他方のカソード電極84bが、当該第2の配線102に接続された第2のパッドVsel1〜Vsel8の1つと電気的に接続されている。
【0069】
また、赤外線センサ100は、半導体基板1が接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備えている。
【0070】
上述の赤外線センサ100によれば、通電されることにより発生するジュール熱によって温接点T1を温める故障診断用配線139を備えているので、故障診断用配線139へ通電してサーモパイル30aの出力を測定することにより、サーモパイル30aの断線などの故障の有無を判断することが可能となって、信頼性の向上を図れ、しかも、故障診断用配線139は、熱型赤外線検出部3において半導体基板1の空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されているので、故障診断用配線139によるサーモパイル30aの温接点T1の熱容量の増大を防止でき、感度および応答速度の向上を図れる。
【0071】
ここで、赤外線センサ100は、使用時において自己診断を行わない通常時において、故障診断用配線139も外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。なお、赤外線センサ100では、赤外線吸収層39および補強層39bも外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。また、赤外線センサ100の使用時の自己診断は、IC素子120に設けられた自己診断回路(図示せず)により定期的に行われるが、必ずしも定期的に行う必要はない。
【0072】
また、赤外線センサ100は、第1の薄膜構造部3aが、複数の線状のスリット13を設けることによって、空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位である支持部3dから内方へ延長された複数の第2の薄膜構造部3aaに分離されている。そして、赤外線センサ100では、各第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aの温接点T1が設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されているので、応答速度および感度の向上を図れる。しかも、赤外線センサ100では、全ての第2の薄膜構造部3aaに跨って故障診断用配線139が形成されているので、熱型赤外線検出部3の全てのサーモパイル30aを一括して自己診断することが可能となる。また、赤外線センサ100では、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されていることにより、各第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
【0073】
また、赤外線センサ100は、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と補強層39bと故障診断用配線139とが同一の厚さに設定されているので、第2の薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制することができ、製品ごとの感度のばらつきや、画素部2ごとの感度のばらつきを低減できる。
【0074】
また、赤外線センサ100は、故障診断用配線139が、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34もしくは第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ材料により形成されているので、故障診断用配線139を第1の熱電要素もしくは第2の熱電要素と同時に形成することが可能となり、製造プロセスの簡略化による低コスト化を図れる。
【0075】
また、赤外線センサ100は、赤外線吸収部33および故障診断用配線139を備えた複数の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側で2次元アレイ状に設けられているので、製造時や使用時の自己診断に際して各画素部2それぞれの故障診断用配線139に通電することにより、各画素部2それぞれの感温部30の感度のばらつきを把握することが可能となる。
【0076】
以下、赤外線センサ100の基本的な製造方法の一例について図18〜図21を参照して説明する。
【0077】
まず、第2の導電形のシリコン基板からなる半導体基板1の上記一表面側に第1の所定膜厚(例えば、0.3μm)の第1のシリコン酸化膜31と第2の所定膜厚(例えば、0.1μm)のシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して当該絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域A2に対応する部分をエッチング除去する絶縁層パターニング工程を行うことによって、図18(a)に示す構造を得る。ここにおいて、シリコン酸化膜31は、半導体基板1を所定温度(例えば、1100℃)で熱酸化することにより形成し、シリコン窒化膜32は、LPCVD法により形成している。
【0078】
上述の絶縁層パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側に第1導電形であるp形(p+)のウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行い、続いて、半導体基板1の上記一表面側におけるウェル領域41内に第1導電形であるp形(p++)のチャネルストッパ領域42を形成するチャネルストッパ領域形成工程を行うことによって、図18(b)に示す構造を得る。ここで、ウェル領域形成工程では、まず、半導体基板1の上記一表面側の露出部位を所定温度で熱酸化することにより第2のシリコン酸化膜(熱酸化膜)51を選択的に形成する。その後、ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン酸化膜51をパターニングする。続いて、第1導電形の不純物(ここでは、p形の不純物であり、例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、ウェル領域41を形成する。また、チャネルストッパ領域形成工程では、半導体基板1の上記一表面側を所定温度で熱酸化することにより第3のシリコン酸化膜(熱酸化膜)52を選択的に形成する。その後、チャネルストッパ領域42を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第3のシリコン酸化膜52をパターニングする。続いて、第1導電形の不純物(ここでは、p形の不純物であり、例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、チャネルストッパ領域42を形成する。なお、第1のシリコン酸化膜31と第2のシリコン酸化膜51と第3のシリコン酸化膜52とで、半導体基板1の上記一表面側のシリコン酸化膜1bを構成している。
【0079】
上述のチャネルストッパ領域形成工程の後、第2導電形であるn形(n+)のドレイン領域43および第2導電形であるn形(n+)のソース領域44を形成するソース・ドレイン形成工程を行う。このソース・ドレイン形成工程では、ウェル領域41におけるドレイン領域43およびソース領域44それぞれの形成予定領域に第2導電形の不純物(ここでは、n形の不純物であり、例えば、リンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブを行うことによって、ドレイン領域43およびソース領域44を形成する。
【0080】
ソース・ドレイン形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側に例えば熱酸化により所定膜厚(例えば、600Å)のシリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側の全面にゲート電極46、第2の配線102(図5参照)、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139の基礎となる所定膜厚(例えば、0.69μm)のノンドープポリシリコン層をLPCVD法により形成するポリシリコン層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記ノンドープポリシリコン層のうちゲート電極46、第2の配線102、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139それぞれに対応する部分が残るようにパターニングするポリシリコン層パターニング工程を行う。続いて、上記ノンドープポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35に対応する部分にp形の不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりp形ポリシリコン層35を形成するp形ポリシリコン層形成工程を行う。その後、上記ノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および第2の配線102に対応する部分にn形の不純物例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および第2の配線102を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図19(a)に示す構造を得る。なお、p形ポリシリコン層形成工程とn形ポリシリコン層形成工程との順序は逆でもよい。
【0081】
上述のp形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程が終了した後、半導体基板1の上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して層間絶縁膜50に各コンタクトホール50a1,50a2,50a3,50a4,50d,50e,50f(図10、図11、図14参照)を形成するコンタクトホール形成工程を行うことによって、図19(b)に示す構造を得る。層間絶縁膜形成工程では、半導体基板1の上記一表面側に所定膜厚(例えば、0.8μm)のBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された層間絶縁膜50を形成する。
【0082】
上述のコンタクトホール形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側の全面に接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、第4の配線104、第1の配線101、第3の配線103、各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsuなど(図1(a)参照)の基礎となる所定膜厚(例えば、2μm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法などにより形成する金属膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることで接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、第4の配線104、第1の配線101、第3の配線103、各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsuなどを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図20(a)に示す構造を得る。なお、金属膜パターニング工程におけるエッチングは、RIEにより行っている。また、この金属膜パターニング工程を行うことにより、温接点T1および冷接点T2が形成される。
【0083】
上述の金属膜パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)に所定膜厚(例えば、0.5μm)のPSG膜と所定膜厚(例えば、0.5μm)のNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60をCVD法により形成するパッシベーション膜形成工程を行うことによって、図20(b)に示す構造を得る。
【0084】
上述のパッシベーション膜形成工程の後、シリコン酸化膜31、シリコン窒化膜32、層間絶縁膜50、パッシベーション膜60などを備え、感温部30などが埋設された積層構造部をパターニングすることにより、第2の薄膜構造部3aaおよび連結片3cを形成する積層構造部パターニング工程を行うことによって、図21(a)に示す構造を得る。なお、積層構造部パターニング工程において、各スリット13,14を形成している。
【0085】
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して各パッドパッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsuを露出させる開口部(図示せず)を形成する開口部形成工程を行う。次に、各スリット13,14をエッチング液導入孔としてエッチング液を導入し半導体基板1を異方性エッチング(結晶異方性エッチング)することにより半導体基板1に空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことで、図21(b)に示す構造の赤外線センサ100を得る。ここで、開口部形成工程におけるエッチングは、RIEにより行っている。また、空洞部形成工程では、エッチング液として所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液を用いているが、エッチング液はTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、KOH溶液など)を用いてもよい。なお、空洞部形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサ100に分離する分離工程を行えばよい。また、上述の説明から分かるように、MOSトランジスタ4の製造方法に関してみれば、周知の一般的なMOSトランジスタの製造方法を採用しており、熱酸化による熱酸化膜の形成、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術による熱酸化膜のパターニング、不純物のイオン注入、ドライブイン(不純物の拡散)の基本工程を繰り返すことにより、ウェル領域41、チャネルストッパ領域42、ドレイン領域43とソース領域44を形成している。また、上述の製造方法では、ツェナダイオードZDの製造工程について説明を省略したが、周知の一般的なツェナダイオードの製造方法を適宜採用すればよい。
【0086】
上述の赤外線センサ100では、半導体基板1として上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いて、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより形成する空洞部11を四角錘状の形状としてあるが、四角錘状の形状に限らず、四角錘台状の形状でもよい。また、半導体基板1の上記一表面の面方位は特に限定するものではなく、例えば、半導体基板1として上記一表面がSi(110)面の単結晶のシリコン基板を用いてもよい。
【0087】
IC素子120は、ASIC(:Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されている。また、IC素子120としてベアチップを用いている。しかして、本実施形態では、IC素子120がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べて、パッケージ133の小型化を図れる。
【0088】
IC素子120は、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,Vzdそれぞれと電気的に接続される複数のパッド(図示せず)を備えている。そして、IC素子120は、赤外線センサ100の出力電圧を増幅する第1の増幅回路122aと、サーミスタ110の出力電圧を増幅する第2の増幅回路122bと、赤外線センサ100のb個の第1のパッドVout1〜Vout8の出力電圧を択一的に第1の増幅回路122aに入力するマルチプレクサ121とを備える。また、IC素子120は、第1の増幅回路122aにて増幅された赤外線センサ100の出力電圧、および第2の増幅回路122bにて増幅されたサーミスタ110の出力電圧をディジタル値に変換するA/D変換回路123を備えている。IC素子120の演算部124は、赤外線センサ100とサーミスタ110との各出力電圧に対応してA/D変換回路123から出力されるディジタル値を用いて物体400の温度を演算する。この演算部124については、後述する。また、IC素子120は、演算部124での演算に利用するデータなどを記憶する記憶部であるメモリ125と、赤外線センサ100を制御する制御回路126とを備えている。なお、IC素子120は、上述の自己診断回路も備えている。
【0089】
本実施形態の温度センサは、パッケージ本体134とパッケージ蓋135とで構成されるパッケージ133の内部空間(気密空間)165を、ドライ窒素雰囲気としてあるが、これに限らず、例えば、真空雰囲気としてもよい。
【0090】
パッケージ本体134は、絶縁材料からなる基体134aに、金属材料からなる配線パターン(図示せず)および電磁シールド層144が形成されており、電磁シールド層144により電磁シールド機能を有している。一方、パッケージ蓋135は、赤外線透過部材153が導電性を有し、この赤外線透過部材153がメタルキャップ152に導電性材料により接合されているので、導電性を有している。そして、パッケージ蓋135は、パッケージ本体134の電磁シールド層144と電気的に接続されている。しかして、本実施形態では、パッケージ本体134の電磁シールド層144とパッケージ蓋135とを同電位とすることができる。その結果、パッケージ133は、赤外線センサ100とIC素子120と上記配線パターンと後述のボンディングワイヤ(図示せず)と含んで構成されるセンサ回路(図示せず)への外来の電磁ノイズを防止する電磁シールド機能を有している。
【0091】
パッケージ本体134は、赤外線センサ100およびIC素子120が一表面側に実装される平板状のセラミック基板により構成してある。要するに、パッケージ本体134は、基体134aが絶縁材料であるセラミックスにより形成されており、配線パターンのうち基体134aの一表面側に形成された部位に、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,VzdおよびIC素子120の上記パッドが、適宜、ボンディングワイヤを介して接続されている。なお、赤外線センサ100とIC素子120とは、ボンディングワイヤなどを介して電気的に接続されている。各ボンディングワイヤとしては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いることが好ましい。
【0092】
本実施形態では、パッケージ本体134の絶縁材料としてセラミックスを採用しているので、上記絶縁材料としてエポキシ樹脂などの有機材料を採用する場合に比べて、パッケージ本体134の耐湿性および耐熱性を向上させることができる。ここで、絶縁材料のセラミックスとして、アルミナを採用すれば、窒化アルミニウムや炭化珪素などを採用する場合に比べて、上記絶縁材料の熱伝導率が小さく、IC素子120やパッケージ133の外部からの熱に起因した赤外線センサ100の温度上昇を抑制できる。
【0093】
また、パッケージ本体134は、上述の配線パターンの一部により構成される外部接続電極(図示せず)が、基体134aの他表面と側面とに跨って形成されている。しかして、本実施形態の温度センサでは、回路基板などへの2次実装後において、回路基板などとの接合部の外観検査を容易に行うことができる。
【0094】
また、赤外線センサ100は、パッケージ本体134に対して、第1のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる複数の接合部115を介して実装されている。また、IC素子120は、パッケージ本体134に対して、第2のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる接合部118を介して実装されている。各ダイボンド剤としては、低融点ガラスやエポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの絶縁性接着剤、半田(鉛フリー半田、Au−Sn半田など)や銀ペーストなどの導電性接着剤を用いればよい。また、各ダイボンド剤を用いずに、例えば、常温接合法や、Au−Sn共晶もしくはAu−Si共晶を利用した共晶接合法などにより接合してもよい。
【0095】
上述の温度センサは、赤外線センサ100が複数の接合部115を介してパッケージ本体134に実装されているので、赤外線センサ100の裏面の全体が接合部115を介してパッケージ本体134に接合される場合に比べて、赤外線センサ100とパッケージ本体134との間の空間116が断熱部として機能することと、接合部115の断面積の低減とにより、パッケージ本体134から赤外線センサ100へ熱が伝達しにくくなる。
【0096】
この接合部115の数は、特に限定するものではないが、赤外線センサ100の外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)の場合には、例えば、3つが好ましい。この場合には、赤外線センサ100の外周形状に基づいて規定した仮想三角形の3つの頂点に対応する3箇所に設けることにより、パッケージ本体134への実装時などの温度変化に起因したパッケージ本体134の変形が赤外線センサ100の傾きとして伝わるから、赤外線センサ100が変形するのを抑制することができ、赤外線センサ100に生じる応力を低減することが可能となる。なお、本実施形態では、赤外線センサ100の外周形状が例えば正方形状の場合、赤外線センサ100の外周の1辺の両端の2箇所と、当該1辺に平行な辺の1箇所との3箇所に頂点を有する仮想三角形を規定しているが、仮想三角形の頂点の位置は、赤外線センサ100の外周形状、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,Vzdへのワイヤボンディング時の接合信頼性(言い換えれば、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,Vzdの位置)を考慮して規定することが好ましい。接合部115には、赤外線センサ100とパッケージ本体134との距離を規定するスペーサを混入させてもよく、このようなスペーサを混入させておけば、温度センサの製品間での赤外線センサ100とパッケージ本体134との間の熱絶縁性能のばらつきを低減可能となる。ただし、赤外線センサ100の裏面全体を、接合部115を介してパッケージ本体134に接合してもよい。
【0097】
また、IC素子120は、外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)であり、裏面全体が接合部118を介してパッケージ本体134に接合されている。
【0098】
パッケージ蓋135は、パッケージ本体134側の一面が開放された箱状に形成され赤外線センサ100に対応する部位に開口窓152aが形成されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152の開口窓152aを閉塞する形でメタルキャップ152に接合された赤外線透過部材153とで構成されており、メタルキャップ152の上記一面がパッケージ本体134により閉塞される形でパッケージ本体134に気密的に接合されている。ここで、パッケージ本体134の上記一表面の周部には、パッケージ本体134の外周形状に沿った枠状の金属パターン147(図1(a)参照)が全周に亘って形成されている。そして、パッケージ133は、パッケージ蓋135とパッケージ本体134の金属パターン147とが、シーム溶接(抵抗溶接法)により金属接合されており、気密性および電磁シールド効果を高めることができる。なお、パッケージ蓋135のメタルキャップ152は、コバールにより形成されており、Niめっきが施されている。また、パッケージ本体134の金属パターン147は、コバールにより形成され、Niのめっきが施され、さらにAuのめっきが施されている。
【0099】
パッケージ蓋135とパッケージ本体134の金属パターン147との接合方法は、シーム溶接に限らず、他の溶接(例えば、スポット溶接)や、導電性樹脂により接合してもよい。ここで、導電性樹脂として異方導電性接着剤を用いれば、樹脂(バインダー)中に分散された導電粒子の含有量が少なく、接合時に加熱・加圧を行うことでパッケージ蓋135とパッケージ本体134との接合部の厚みを薄くできるので、外部からパッケージ133内へ水分やガス(例えば、水蒸気、酸素など)が侵入するのを抑制できる。また、導電性樹脂として、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させたものを用いてもよい。
【0100】
なお、パッケージ本体134およびパッケージ蓋135の外周形状は矩形状としてあるが、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、パッケージ蓋135のメタルキャップ152は、パッケージ本体134側の端縁から全周に亘って外方に延設された鍔部152bを備えており、鍔部152bが全周に亘ってパッケージ本体134と接合されている。
【0101】
赤外線透過部材153を構成するレンズは、平凸型の非球面レンズである。しかして、本実施形態の温度センサでは、赤外線透過部材153の薄型化を図りながらも、赤外線センサ100での赤外線の受光効率の向上による高感度化を図れる。また、本実施形態の温度センサでは、赤外線センサ100の検知エリアを赤外線透過部材153により設定することが可能となる。赤外線透過部材153は、赤外線センサ100の半導体基板1とは別の半導体基板(半導体ウェハ)を用いて形成されている。なお、この種の非球面レンズからなるレンズは、例えば、陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法(例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報など参照)により形成することができる。
【0102】
本実施形態では、赤外線センサ100の検知エリアを上述の半導体レンズからなるレンズにより構成される赤外線透過部材153により設定することができ、また、レンズとして、球面レンズよりも短焦点で且つ開口径が大きく収差が小さな半導体レンズを採用することができるから、短焦点化により、パッケージ133の薄型化を図れる。本実施形態の温度センサは、物体400として、人体を想定しているので、赤外線センサ100の検知対象の赤外線としては、人体から放射される10μm付近の波長帯(8μm〜13μm)の赤外線を想定している。なお、物体400は、人体に限定するものではなく、赤外線センサ100での検知対象の赤外線の波長も、特に限定するものではない。
【0103】
また、赤外線透過部材153は、メタルキャップ152における開口部152aの周部に導電性接着剤(例えば、鉛フリー半田、銀ペーストなど)からなる接合部158により固着されている。本実施形態では、接合部158の材料として導電性接着剤を採用することにより、赤外線透過部材153が、接合部158およびメタルキャップ152を介してパッケージ本体134の電磁シールド層144に電気的に接続されるので、電磁ノイズに対するシールド性を高めることができ、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を防止することができる。
【0104】
上述の赤外線透過部材153には、赤外線センサ100での検知対象の赤外線の波長を含む所望の波長域の赤外線を透過し当該波長域以外の赤外線を反射する光学多層膜(多層干渉フィルタ膜)からなるフィルタ部(図示せず)を設けることが好ましい。このようなフィルタ部を設けることにより、所望の波長域以外の不要な波長域の赤外線や可視光をフィルタ部によりカットすることが可能となり、太陽光などによるノイズの発生を抑制することができ、高感度化を図れる。
【0105】
また、本実施形態では、パッケージ本体134が平板状に形成されているので、パッケージ本体134への赤外線センサ100およびIC素子120の実装が容易になるとともに、パッケージ本体134の低コスト化が可能となる。また、パッケージ本体134が平板状に形成されているので、パッケージ本体134を、一面が開放された箱状の形状として、多層セラミック基板により構成し、パッケージ本体134の内底面に赤外線センサ100を実装する場合に比べて、パッケージ本体134の上記一表面側に配置される赤外線センサ100と赤外線透過部材153との間の距離の精度を高めることができ、より一層の高感度化を図れる。なお、以下では、パッケージ本体134において、赤外線センサ100を実装する領域を第1の領域140、IC素子120を実装する領域を第2の領域142と称する。
【0106】
本実施形態の温度センサでは、パッケージ本体134において、第1の領域140に比べて、第2の領域142の厚みを薄くしてある。ここで、パッケージ本体134の第2の領域142は、基体134aの上記一表面に凹部134bを設けることにより、第1の領域140よりも厚みを薄くしてある。また、パッケージ本体134の第2の領域142では、電磁シールド層144が露出している。
【0107】
また、パッケージ本体134の第2の領域142では、金属材料(例えば、Cuなど)からなる複数のビア(サーマルビア)145が基体134aの厚み方向に貫設されており、各ビア145が電磁シールド層144と接して熱結合されている。
【0108】
ここで、IC素子120は、第2の領域142において電磁シールド層144に接合部118を介して実装されている。しかして、IC素子120で発生した熱を電磁シールド層144におけるIC素子120の直下の部位およびビア145を通してパッケージ133の外側へ効率良く放熱させることが可能となり、IC素子120の熱が赤外線センサ100に与える影響を低減することが可能となる。
【0109】
ところで、第1のパッドVout1〜Vout8の電位をVout、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位をVs、第3のパッドVchの電位をVwell、第4のパッドVrefinの電位をVref、感温部30の出力電圧をVoとすれば、IC素子120において赤外線センサ100を制御する制御回路126は、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVon、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッド102の電位VsをVoffとし、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVonとしたときに、VrefとVwellとの電位差に起因して第4のパッドVrefin−感温部30−ソース領域44−ウェル領域(チャネル形成用領域)41−第3のパッドVchを通る経路で流れるリーク電流が、A/D変換回路123における入力値(入力電圧)の分解能を感温部30の抵抗値と第1の増幅回路122aの増幅率との積により除した値以下となるように予め設定されたVwell、Vrefの条件で赤外線センサ100を制御する。
【0110】
したがって、本実施形態の温度センサでは、例えば、制御回路126が、第4のパッドVrefinの電位Vrefを1.2V、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2V、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVonを5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧(Vout=Vref+Vo)を読み出すことが可能となり、画素部2の出力電圧に、上述のリーク電流と感温部30の抵抗値との積により決まるオフセット電圧が生じるのを抑制することが可能となる。要するに、本実施形態の温度センサでは、オフセット電圧と第1の増幅回路122aの増幅率との積を、A/D変換回路123における入力値の分解能よりも小さくすることが可能となり、物体400の温度の検出精度を向上させることが可能となる。また、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVoffを0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧は読み出されない。
【0111】
本実施形態の温度センサでは、制御回路126が、Vref=Vwellとすることが好ましく、これにより、上述のリーク電流を略ゼロとして、オフセット電圧を略ゼロとすることが可能となり、物体400の温度の検出精度を向上させることが可能となる。
【0112】
また、本実施形態の温度センサでは、MOSトランジスタ4がnMOSトランジスタの場合、チャネル形成用領域であるウェル領域41とソース領域44とで構成される第1の寄生ダイオードおよびウェル領域41とドレイン領域43とで構成される第2の寄生ダイオードのしきい値電圧をVtとすれば、制御回路126が、
−Vt<{Vwell−(Vref+Vo)}<Vt
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で赤外線センサ100を制御すれば、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードにリーク電流が流れるのを抑制することができ、S/N比の向上を図れる。すなわち、本実施形態の温度センサでは、MOSトランジスタ4がオンのときに、チャネル形成用領域であるウェル領域41を通るリーク電流が流れるのを抑制することができ、S/N比の向上を図れる。
【0113】
また、温度センサにおいて、MOSトランジスタ4がpMOSトランジスタの場合には、制御回路126が、
−Vt<{(Vref+Vo)−Vwell}<Vt
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で赤外線センサ100を制御すれば、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードにリーク電流が流れるのを抑制することができ、S/N比の向上を図れる。
【0114】
本実施形態では、半導体基板1として、第2導電形のシリコン基板を用いており、Vtが0.6V〜0.7V程度となる。なお、半導体基板1は、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板を用いてもよく、この場合には、Vtが0.2V〜0.3V程度となる。
【0115】
また、本実施形態の温度センサは、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止するために各第2の配線102それぞれにカソード(カソード電極84a)が接続された複数のツェナダイオードZDを備えているので、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止することができ、ゲート絶縁膜45の絶縁破壊を防止することが可能となる。
【0116】
また、本実施形態の温度センサは、上述のツェナダイオードZDが、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形の第1拡散領域81内に第2導電形の第2拡散領域82が形成されたものであり、各ツェナダイオードZDの第1拡散領域81が共通接続された第5のパッドVzdを備え、第5のパッドVzdの電位をVhogoとするとき、制御回路126が、VhogoとVwellとを異ならせるので、MOSトランジスタ4のゲート絶縁膜45を保護しつつS/N比の向上を図れる。ここで、制御回路126は、例えば、上述のように、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2Vとする場合、第5のパッドVzdの電位Vhogoを0Vとする。
【0117】
また、温度センサは、赤外線センサ100において、半導体基板1が接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備えており、第6のパッドVsuの電位をVsubとするとき、制御回路126が、Vwell=Vsubとする。すなわち、制御回路126は、例えば、上述のように、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2Vとする場合、第6のパッドVsuの電位Vsubを1.2Vとする。なお、図3の等価回路図には、ウェル領域41と半導体基板1とで構成される第3の寄生ダイオードD3、第1拡散領域81と半導体基板1とで構成される第4の寄生ダイオードD4も記載してある。
【0118】
また、本実施形態の温度センサでは、半導体基板1の導電形が第2導電形であり、半導体基板1が接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備え、第6のパッドVsuの電位をVsubとするとき、制御回路126が、第3のパッドVchの電位Vwellと第6のパッドVsuの電位Vsubとを等しくする、すなわち、Vwell=Vsubとするので、チャネル形成用領域であるウェル領域41と半導体基板1との電位差をなくすことが可能となり、ウェル領域41と半導体基板1とで構成される第3の寄生ダイオードD3(図3参照)にリーク電流が流れるのを抑制することが可能となる。この場合、赤外線センサ100において、第4のパッドVrefinと第3のパッドVchと第6のパッドVsuとを1個に共通化すれば、パッド数の低減を図れるとともに、制御回路126の回路構成の簡略化を図れる。
【0119】
また、本実施形態の温度センサは、半導体基板1の導電形が第2導電形であって、第1導電形がp形、第2導電形がn形であり、制御回路126が、Vhogo≦Voff、且つ、Vhogo≦Vsubとすることにより、ツェナダイオードZDのリーク電流を抑制することができる。
【0120】
また、本実施形態の温度センサについて、ここまでは、第1導電形がp形、第2導電形がn形である一例(この一例では、MOSトランジスタ4は、nMOSトランジスタである)について説明したが、第1導電形がn形、第2導電形がp形でもよく、この場合(この場合、MOSトランジスタ4は、pMOSトランジスタである)、制御回路126が、Vhogo≧Voff、且つ、Vhogo≦Vsubとすることにより、ツェナダイオードZDのリーク電流を抑制することができる。
【0121】
要するに、半導体基板1の導電形は、n形に限らず、例えば、図22〜図24に示すようにp形でもよい。図22は、p形の半導体基板1がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をn形(n+)とする例である。また、図23は、p形の半導体基板1に形成したp形(p+)のウェル領域41がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をn形(n+)とする例である。また、図24は、p形の半導体基板1に形成したn形のウェル領域41がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をp形(p+)とする例である。
【0122】
以下、IC素子120の演算部124において物体400の温度を演算する演算式について説明する。
【0123】
物体400から放射される電磁波(主に赤外線)のエネルギ密度は、ステファン−ボルツマンの法則によれば、電磁波のエネルギ密度をP0〔W/m2〕、物体400の放射率をε0、物体400の絶対温度をTo〔K〕、ステファン−ボルツマン定数をσ〔W/(m2・K4)〕とするとき、
【0124】
【数5】
で表される。
【0125】
しかしながら、物体400から放射された赤外線は、赤外線センサ100に到達するまでに大気中の水蒸気や二酸化炭素などによって吸収され減衰し、しかも、吸収率が波長により異なる。また、赤外線センサ100の前方に赤外線透過部材153が配置されているので、物体400から放射された赤外線は、赤外線透過部材153での反射や吸収などによっても減衰する。
【0126】
したがって、物体400から放射される電磁波のエネルギ密度をステファン−ボルツマンの法則に従って表し、この電磁波のエネルギ密度を赤外線センサ100の吸収エネルギ密度と仮定した場合には、赤外線センサ100の吸収エネルギ密度の誤差が大きくなってしまう。
【0127】
そこで、本願発明者らは、赤外線センサ100の吸収エネルギ密度を導出するにあたって、まず、物体400から放射される電磁波のエネルギ密度について、プランクの放射則により表すことを考えた。
【0128】
物体400から放射される電磁波のエネルギ密度は、プランクの放射則によれば、電磁波のエネルギ密度をW(λ)〔W/m2〕、プランク定数をh〔J・s〕、光束をc〔m/s〕、波長をλ〔m〕、ボルツマン定数をk〔J/K〕、物体400の絶対温度をTo〔K〕、物体400の放射率をη0とするとき、
【0129】
【数6】
で表される。
【0130】
ここで、物体400から放射され赤外線センサ100に吸収される電磁波(主に赤外線)のエネルギ密度(吸収エネルギ密度)は、吸収エネルギ密度をP1〔W/m2〕、波長をλ〔m〕、赤外線センサ100の吸収率をε(λ)、大気の波長別の透過率をηair(λ)、赤外線透過部材153の波長別の透過率をηtra(λ)、赤外線透過部材153であるレンズの明るさをFとするとき、
【0131】
【数7】
で表される。
【0132】
一方、赤外線センサ100からは、赤外線センサ100の温度に応じた電磁波(主に、赤外線)が放射される。赤外線センサ100から放射される電磁波については、大気や赤外線透過部材153での吸収を考慮する必要がない。そこで、赤外線センサ100から放射される電磁波のエネルギ密度(放射エネルギ密度)については、ステファン−ボルツマンの法則により表すことを考えた。
【0133】
赤外線センサ100の放射エネルギ密度は、ステファン−ボルツマンの法則によれば、放射エネルギ密度をP2〔W/m2〕、赤外線センサ100の放射率をεs、赤外線センサ100の温度をTs〔K〕、ステファン−ボルツマン定数をσ〔W/(m2・K4)〕とするとき、
【0134】
【数8】
で表される。
【0135】
ここで、赤外線センサ100におけるエネルギ収支(吸収エネルギと放射エネルギとの差分)は、赤外線センサ100の吸収エネルギ密度と赤外線センサ100の放射エネルギ密度との差分に比例するので、赤外線センサ100におけるエネルギ収支をΔQ〔W〕、赤外線センサ100の面積をAse〔m2〕とすると、
【0136】
【数9】
で表される。なお、本実施形態における赤外線センサ100では、赤外線の吸収、赤外線の放射が、ほとんど、上述の半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aで行われるので、赤外線センサ100の面積Aseの値を、第1の薄膜構造部3aの面積の値とすればよい。また、赤外線センサ100の放射率εsについては、赤外線センサ100の第1の薄膜構造部3aに関してFT−IR(フーリエ変換赤外分光法)により測定した吸収率の値を用いればよい。
【0137】
そして、赤外線センサ100の出力電圧は、当該赤外線センサ100のエネルギ収支に比例するので、赤外線センサ100の出力電圧をVout〔V〕、比例係数をLとすると、
【0138】
【数10】
で表される。ここで、本願発明者らは、実験、シミュレーションなどを繰り返して行った結果、物体400の温度Toおよび赤外線センサ100の温度Tsが、253K(−20℃)〜373K(100℃)の範囲内であれば、上記(8)式を下記(9)式で示す2次方程式での近似により、99%以上の相関係数が得られるという知見を得た。
【0139】
【数11】
上記(9)式において、係数Cと係数Fとを合わせて係数Gとすれば、上記(9)式は、下記(10)式のように表すことができる。
【0140】
【数12】
ここで、(10)式について、物体400の温度Toを未知数とすれば、解の公式により、物体400の温度Toは、下記(11)式のようになる。
【0141】
【数13】
温度センサは、上述の演算部124において、(11)式の演算式を用いて物体400の温度Toを演算する。ここで、演算部124は、メモリ125に予め記憶された係数A,B,D,E,Gの値(データ)と、赤外線センサ100の出力電圧Voutおよびサーミスタ110により測定された赤外線センサ100の温度Tsとを利用して(11)式の演算を行う。なお、赤外線センサ100の出力電圧Voutは、第1の増幅回路122aにて増幅されA/D変換回路123にてディジタル値に変換されて演算部124に入力される。また、赤外線センサ100の温度Tsは、当該温度Tsに対応するサーミスタ110の出力電圧が第2の増幅回路122bにて増幅されA/D変換回路123にてディジタル値に変換されて演算部124に入力される。また、係数A,B,D,E,Gの一例を下記表1に示す。
【0142】
【表1】
以上説明した本実施形態の温度センサは、物体400から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイル30aにより構成される感温部(熱電変換部)30を有する赤外線センサ100と、赤外線センサ100の出力電圧Voutに基づいて物体400の温度Toを演算する演算部124とを備え、演算部124は、赤外線センサ100の出力電圧Voutが、プランクの放射則に従って表され物体400の温度Toに依存する赤外線センサ100の吸収エネルギ密度と、ステファン−ボルツマンの法則に従って表され赤外線センサ100の温度Tsに依存する赤外線センサ100の放射エネルギ密度との差分に比例すると仮定して求められた演算式を用いて物体400の温度Toを演算するので、物体400の温度Toの検出精度を向上させることが可能となる。
【0143】
また、本実施形態の温度センサは、赤外線センサ100の温度を測定するサーミスタ110を備え、演算式として上記(11)式を用いるので、物体400の温度Toを、容易に且つ高精度に検出することが可能となる。すなわち、物体400の温度Toの検出精度の低下を抑制しつつ演算部124での演算時間を短縮することが可能となる。
【0144】
ところで、上記(11)式で示した演算式の導出にあたっては、上記(5)式を利用しているが、赤外線透過部材153がレンズではなく平板状の形状の場合には、赤外線センサ100に吸収される電磁波(主に赤外線)のエネルギ密度P1〔W/m2〕は、下記(12)式で表され、係数A,B,D,E,Gの値は上記表1の値とは異なった値となる。
【0145】
【数14】
また、赤外線透過部材153が無い場合には、赤外線センサ100に吸収される電磁波(主に赤外線)のエネルギ密度P1〔W/m2〕は、下記(13)式で表され、係数A,B,D,E,Gの値は上記表1の値とは異なった値となる。
【0146】
【数15】
また、本実施形態の温度センサにおいて、赤外線センサ100は、図17に示すように、物体400の温度の上昇に伴い出力電圧Voutが低下する負特性を有することが好ましい。赤外線センサ100は、MOSトランジスタ4がオンのときに感温部30において第1の配線101に電気的に接続される熱電要素をn形ポリシリコン層34とし、第4の配線104に電気的に接続される熱電要素をp形ポリシリコン層35とすることにより、図17に示すような負特性を有することとなる。
【0147】
本実施形態の温度センサでは、赤外線センサ100が図17に示すような負特性を有していることにより、物体400の温度Toが高くなるほど出力電圧Voutが低くなり、逆に、物体400の温度Toが低くなるほど出力電圧Voutが高くなるが、図17の負特性は、上に凸の二次方程式で表される。言い換えれば、図17の負特性は、上記(10)式で近似した場合、係数Aがマイナスの値となる(表1参照)。本実施形態の温度センサでは、赤外線センサ100が図17に示すような負特性を有していることにより、出力電圧Voutの最大値が上記(10)式の二次方程式で表される二次曲線の頂点の値となるので、赤外線センサ100の出力電圧Voutのダイナミックレンジを決めることができ、A/D変換回路123の入力範囲および分解能を適切に決めることが可能となる。例えば、第1の増幅回路122aで増幅されA/D変換回路123に入力される電圧の範囲が0〜1Vであるとし、必要な分解能が1mVであれば、分解能を10ビットとして、1024分割すればよい。
【0148】
また、本実施形態の温度センサは、赤外線センサ100が、熱電変換部である感温部30を有する複数の画素部2が半導体基板1の上記一表面側においてアレイ状(ここでは、二次元アレイ状)に配置されたものなので、物体400の高精度な温度分布測定が可能となる。
また、本実施形態の温度センサは、上述の演算式の係数A,B,D,E,Gを記憶する記憶部としてのメモリ125を有しているが、赤外線センサ100として複数の画素部2が半導体基板1の一表面側においてアレイ状に配置されたものなので、メモリ125においては、係数A,B,D,E,Gが、赤外線センサ100の各画素部2ごとに対応付けて記憶されていることが好ましい。言い換えれば、予め赤外線センサ100の各画素部2ごとに独立して係数A,B,D,E,Gを求めてメモリ125に記憶させておき、演算部124にて画素部2ごとに物体400の温度Toを演算する際に、各画素部2ごとに対応付けられた係数A,B,D,E,Gを読み出して演算を行うことによって、より高精度な温度分布測定が可能となる。
【0149】
ところで、感温部30において直列に接続されている熱電対の数をn、サーモパイル30aの熱電要素であるn形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35のゼーベック係数をSc〔V/K〕、赤外線センサ100が赤外線を吸収したことによる赤外線センサ100の温度変化をΔTs〔K〕とすれば、赤外線センサ100の出力電圧Voutは、下記(14)式でも表すことができる。
【0150】
【数16】
上記(14)式において、n、Scは赤外線センサ100の各画素部2で同じであるが、ΔTsは赤外線センサ100の画素部2によって異なる可能性がある。ここで、赤外線センサ100の感度係数S〔V/K〕を画素部2ごとにあらかじめ求めて、赤外線センサ100の出力電圧Voutを下記(15)式で近似するようにしてもよい。
【0151】
【数17】
なお、感度係数Sは、例えば、物体400の温度が298K(25℃)、328K(55℃)それぞれの場合の赤外線センサ100の出力電圧Voutを測定して、出力電圧Voutの変化量を温度の変化量で除することにより求めればよい。
【0152】
赤外線センサ100の出力電圧Voutを上記(15)式で近似する場合には、メモリ125に、演算式で用いる係数として、係数Sを各画素部2ごとに個別に設定された1つの個別係数として記憶させ、係数a,b,d,e,gを、各画素部2に共通に設定された複数の共通係数として記憶させることが好ましい。これにより、メモリ125の記憶容量を低減させることができ、低コストおよび小型化を図ることが可能となる。メモリ125の記憶容量を減らさない場合には、各係数S,a,b,d,e,gのビット数を増やすことによって、より高精度な演算が可能となる。なお、個別係数および共通係数それぞれの数は特に限定するものではなく、適宜変更してもよい。
【0153】
ところで、上述の温度センサは、赤外線センサ100の温度を測定するサーミスタ110を備えている例について説明したが、これに限らず、赤外線センサ100の温度を一定温度に保つペルチェ素子を備えている場合には、当該ペルチェ素子により赤外線センサ100の温度を一定温度に保つことができるので、サーミスタ110を設ける必要はなく、赤外線センサ100の出力電圧Voutを下記(16)式により近似することにより、物体400の温度Toが、253K(−20℃)〜373K(100℃)の範囲内であれば、99%以上の相関係数が得られるので、この場合の演算式としては、下記(17)式を用いればよい。
【0154】
【数18】
【0155】
【数19】
この場合の温度センサも、物体400から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイル30aにより構成される感温部(熱電変換部)30を有する赤外線センサ100と、赤外線センサ100の出力電圧Voutに基づいて物体400の温度Toを演算する演算部124とを備え、演算部124は、赤外線センサ100の出力電圧Voutが、プランクの放射則に従って表され物体400の温度Toに依存する赤外線センサ100の吸収エネルギ密度と、ステファン−ボルツマンの法則に従って表され赤外線センサ100の温度Tsに依存する赤外線センサ100の放射エネルギ密度との差分に比例すると仮定して求められた演算式を用いて物体400の温度Toを演算するので、物体400の温度Toの検出精度を向上させることが可能となる。
【0156】
上述の赤外線センサ100において、半導体基板1の空洞部11は、半導体基板1の厚み方向に貫通する形で形成してもよく、この場合は、空洞部11を形成する空洞部形成工程において、半導体基板1の上記一表面とは反対の他表面側から、半導体基板1における空洞部11の形成予定領域を、例えば誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置を用いた異方性エッチング技術を利用して形成すればよい。また、赤外線センサ100は、熱電変換部である感温部30を具備する複数の画素部2が半導体基板1の一表面側においてアレイ状に配置されたものに限らず、感温部30が1つだけのものでもよく、この場合は、MOSトランジスタ4を設ける必要はない。また、感温部30を構成するサーモパイル30aの数も複数に限らず、1つでもよい。また、赤外線センサ100は、半導体基板1を用いて形成したものに限らず、他の基板を用いて形成されたものでもよい。
【符号の説明】
【0157】
1 半導体基板
2 画素部
30 感温部(熱電変換部)
30a サーモパイル
100 赤外線センサ
110 サーミスタ
124 演算部
125 メモリ(記憶部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイルにより構成される熱電変換部を有する赤外線センサと、前記赤外線センサの出力電圧に基づいて前記物体の温度を演算する演算部とを備え、前記演算部は、前記赤外線センサの出力電圧が、プランクの放射則に従って表され前記物体の温度に依存する前記赤外線センサの吸収エネルギ密度と、ステファン−ボルツマンの法則に従って表され前記赤外線センサの温度に依存する前記赤外線センサの放射エネルギ密度との差分に比例すると仮定して求められた演算式を用いて前記物体の温度を演算することを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記赤外線センサの温度を測定するサーミスタを備え、前記物体の温度をTo〔K〕、前記赤外線センサの出力電圧をVout〔V〕、前記赤外線センサの温度をTs〔K〕とするとき、前記演算式は、
【数1】
で表されることを特徴とする請求項1記載の温度センサ。
【請求項3】
前記赤外線センサの温度を一定温度に保つペルチェ素子を備え、前記物体の温度をTo〔K〕、前記赤外線センサの出力電圧をVout〔V〕とするとき、前記演算式は、
【数2】
で表されることを特徴とする請求項1記載の温度センサ。
【請求項4】
前記赤外線センサは、前記物体の温度の上昇に伴い出力電圧が低下する負特性を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記赤外線センサは、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記演算式の係数を記憶する記憶部を有し、前記赤外線センサが、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであり、前記記憶部は、前記係数が、前記赤外線センサの前記各画素部ごとに対応付けて記憶されてなることを特徴とする請求項2または請求項3記載の温度センサ。
【請求項7】
前記演算式の係数を記憶する記憶部を有し、前記赤外線センサが、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであり、前記記憶部は、前記係数として、前記各画素部ごとに個別に設定された1つの個別係数と、前記各画素部に共通に設定された複数の共通係数とを記憶していることを特徴とする請求項1記載の温度センサ。
【請求項1】
物体から放射された赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換するサーモパイルにより構成される熱電変換部を有する赤外線センサと、前記赤外線センサの出力電圧に基づいて前記物体の温度を演算する演算部とを備え、前記演算部は、前記赤外線センサの出力電圧が、プランクの放射則に従って表され前記物体の温度に依存する前記赤外線センサの吸収エネルギ密度と、ステファン−ボルツマンの法則に従って表され前記赤外線センサの温度に依存する前記赤外線センサの放射エネルギ密度との差分に比例すると仮定して求められた演算式を用いて前記物体の温度を演算することを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記赤外線センサの温度を測定するサーミスタを備え、前記物体の温度をTo〔K〕、前記赤外線センサの出力電圧をVout〔V〕、前記赤外線センサの温度をTs〔K〕とするとき、前記演算式は、
【数1】
で表されることを特徴とする請求項1記載の温度センサ。
【請求項3】
前記赤外線センサの温度を一定温度に保つペルチェ素子を備え、前記物体の温度をTo〔K〕、前記赤外線センサの出力電圧をVout〔V〕とするとき、前記演算式は、
【数2】
で表されることを特徴とする請求項1記載の温度センサ。
【請求項4】
前記赤外線センサは、前記物体の温度の上昇に伴い出力電圧が低下する負特性を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記赤外線センサは、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記演算式の係数を記憶する記憶部を有し、前記赤外線センサが、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであり、前記記憶部は、前記係数が、前記赤外線センサの前記各画素部ごとに対応付けて記憶されてなることを特徴とする請求項2または請求項3記載の温度センサ。
【請求項7】
前記演算式の係数を記憶する記憶部を有し、前記赤外線センサが、前記熱電変換部を有する複数の画素部が半導体基板の一表面側においてアレイ状に配置されたものであり、前記記憶部は、前記係数として、前記各画素部ごとに個別に設定された1つの個別係数と、前記各画素部に共通に設定された複数の共通係数とを記憶していることを特徴とする請求項1記載の温度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2012−13517(P2012−13517A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149730(P2010−149730)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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