説明

温度依存ハイブリダイゼーションを使用した核酸配列の同定及び区別

同一または同様の検出特性を伴うレポーター標識を有する、同じプローブによってまたは異なるプローブによって1を超える標的配列の検出を可能にする、温度依存方式における、異なる標的核酸配列にハイブリダイズすることが可能な、オリゴヌクレオチドプローブが提供される。また、温度依存方式において前記配列にハイブリダイズすることが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用する、または同一もしくは同様の検出特性を伴うレポーター標識を有する異なるプローブを使用する標的核酸配列の検出方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、本明細書において参照により組み込まれる、2008年12月10日出願の米国仮出願番号61/193,609の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
一本鎖核酸産物を産生する核酸増幅技術が存在する。これらの増幅産物の検出は、典型的には、増幅された核酸産物(「標的配列」)により特定の核酸配列を認識するであろうプローブを必要とする。そのような検出は、しばしば、厳しい条件下で特定の標的核酸配列にハイブリダイズし、特定の標的配列の検出を可能とする、オリゴヌクレオチドプローブを用いて行われる。
【0003】
厳しいハイブリダイゼーション条件は、当該技術分野において周知であり、一般に、一定のイオン強度およびpHにおいて、特定の配列に対する熱融解点(T)よりも約5℃低く選択される。其のTは、(一定のイオン強度およびpH下で)50%の塩基対が解離する温度である。配列依存的ではあるが、厳しい条件は、典型的に、pH7.0〜8.3および温度が40℃〜72℃の間における塩濃度が少なくとも約1.5〜6.0mMであるものであろう。配列特異的プローブが使用される場合、各標的核酸配列は一般に、各標的配列に対して異なるレポーター標識を伴う異なるプローブを必要とする。異なる標的配列およびレポーター標識を有する複数のプローブの使用は、費用を増加させ、結果として複雑なプローブ間相互作用(inter−probe interactions)を生じる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
従って、当該技術分野において、温度依存様式において複数の増幅産物の同定が可能な核酸プローブの必要性が残されている。
【0005】
これらのおよび他の必要性に取り組むため、温度依存方式において異なる核酸標的配列にハイブリダイズすることが可能であり、同じプローブによって1を超える標的核酸配列の検出を可能とするオリゴヌクレオチドプローブが提供される。
【0006】
1つの実施態様は、標的核酸配列を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブであって、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブが第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを提供する。
【0007】
別の実施態様は、2以上の標的核酸配列の検出方法を提供する。前記方法は、(a)1以上の標的核酸配列とオリゴヌクレオチドプローブとを、第1温度において接触させること、(b)第2温度に到達するように温度を変更すること、および(c)プローブが、第1温度、第2温度、または両方の温度において標的核酸配列にハイブリダイズするかどうかを判定することを含み、ここで、前記第1温度が第1標的核酸配列に相互関連づけられ得、前記第2温度が第2核酸配列に相互関連づけられ得る。
【0008】
別の実施態様は、2つの標的核酸配列を検出するための少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを提供し、ここで、各オリゴヌクレオチドは、例えば、同じレポーター分子であるが異なる温度においてハイブリダイズするように設計された、同じまたは同様の検出特性を有するレポーター分子を有する。1つのオリゴヌクレオチドプローブは、第1温度において第1標的核酸配列にハイブリダイズすることができ、第2プローブは、第2温度において第2標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。2つのハイブリダイゼーション事象の区別は、それぞれのプローブに関連する温度におけるレポーター分子シグナルの増加によって判定され得る。
【0009】
別の実施態様は、例えば、同じレポーター分子であるが異なる温度においてそれらそれぞれの標的にハイブリダイズするように設計された、同様または同一の検出特性を有するレポーター分子によって標識された、2以上のオリゴヌクレオチドプローブを用いた、2以上の標的核酸配列の検出方法を提供する。前記方法は、(a)1以上の標的核酸配列とレポーター標識オリゴヌクレオチドプローブとを、第1温度において接触させること、(b)第2温度に到達するように温度を変更すること、および(c)同じレポーター標識を有する第2プローブが、第2温度においてその標的核酸配列にハイブリダイズするかどうかを判定することを含み、ここで、第1温度における前記シグナルは第1標的核酸配列に相互関連づけられ得、第2温度における前記シグナルは第2核酸配列に相互関連づけられ得る。ある実施態様において、追加のレポーター標識プローブが使用されてもよく、各プローブは一定の温度において標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。
【0010】
1つの実施態様は、1以上の標的核酸配列を増幅するための少なくとも1つのプライマー、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含有する増幅試薬混合物を含むキットを提供し、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズする。さらなる実施態様は、1以上の標的核酸配列を増幅するための少なくとも1つのプライマー、および、例えば、同じレポーター標識を包含する同様または同一の検出特性を有するレポーター標識をそれぞれ有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを含有する増幅試薬混合物を含むキットを提供し、ここで、第1オリゴヌクレオチドプローブは、第1温度において第1標的核酸配列にハイブリダイズし、第2プローブは第2温度において第2標的核酸配列にハイブリダイズする。少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブは、2、3、4、5、6、7、8、10まで、または11、12、15もしくは20個を超えるプローブであってもよい。
【0011】
別の実施態様において、標的核酸配列の検出用オリゴヌクレオチドプローブを含むプローブが存在し、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは、第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズする。
【0012】
別の実施態様において、2以上の標的核酸配列の検出方法が存在し、前記方法は:
a.1以上の標的核酸配列とオリゴヌクレオチドプローブとを、第1温度において接触させること、
b.第2温度に到達するように温度を変更すること;および
c.プローブが、第1温度、第2温度、または両方の温度において標的核酸配列にハイブリダイズするかどうかを判定すること、を含む。
【0013】
別の実施態様において、前述および/または後述される方法が存在し、ここで、第1温度は第1標的核酸配列に相互関連づけられ、第2温度は第2核酸配列に相互関連づけられる。
【0014】
別の実施態様において、前述および/または後述される方法が存在し、ここで、第1温度は第1核酸配列に相互関連づけ可能であり、第2温度は第2核酸配列に相互関連づけ可能である。
【0015】
別の実施態様において、1以上の標的核酸配列を増幅するための一対以上のプライマー、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含有する増幅試薬混合物を含むキットが存在し、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズする。
【0016】
別の実施態様において、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを含む組成物が存在し、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは、同一および/または同様の検出特性を伴うレポーター標識を有し、ここで、第1オリゴヌクレオチドプローブは第1温度において第1標的核酸配列にハイブリダイズし、第2オリゴヌクレオチドプローブは第2温度において第2標的核酸配列にハイブリダイズし、ここで、第1標的核酸配列は第1温度において検出され、第2核酸配列は第2温度において検出され、ならびに、ここで、第1温度における前記レポーター標識の検出が第1標的核酸配列の存在を示し、第2温度における前記レポーター標識の検出が第2標的核酸配列の存在を示す。
【0017】
別の実施態様において、同一および同様の検出特性のうち少なくとも1つを有するレポーター分子によって標識された2以上のオリゴヌクレオチドプローブを用いた2以上の標的核酸配列の検出方法であって:
(i)1以上の標的核酸配列とレポーター標識オリゴヌクレオチドプローブとを第1温度において接触させること;
(ii)第2温度に到達するように温度を変更すること;
(iii)レポーター標識を伴う第2プローブが、第2温度において標的核酸配列にハイブリダイズするかどうかを判定すること、を含む検出方法が存在する。
【0018】
前記および/または下記に開示される別の実施態様において、第1温度におけるシグナルが第1標的核酸配列に相互関連づけ可能であり、第2温度におけるシグナルが第2核酸配列に相互関連づけ可能である方法が存在する。
【0019】
前記および/または下記に開示される別の実施態様において、第1温度におけるシグナルを第1標的核酸配列に相互関連づけること、および第2温度における第2シグナルを第2核酸配列に相互関連づけることを含む方法が存在する。
【0020】
別の実施態様において、1以上の標的核酸配列を増幅するための少なくとも1つのプライマー、および同一または同様の検出特性を有するレポーター標識をそれぞれ有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを含有する増幅試薬混合物を含むキットが存在し、ここで、前記第1オリゴヌクレオチドプローブは第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、前記第2プローブは第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズする。
【0021】
上記および他の特徴は、以下の詳細な説明によって例示される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
温度依存方式において異なる増幅産物にハイブリダイズすることが可能なオリゴヌクレオチドプローブ(「ミスマッチ耐性プローブ」または「温度依存性プローブ」)を持つことは有用である。ミスマッチ耐性プローブを使用することおよび様々な温度において前記プローブのハイブリダイゼーションを計測することにより、標的増幅配列の推測的な理解に基づいて特定の標的配列の存在を判定する。温度依存性プローブは、標的核酸配列の多重検出、同定および識別に対する利点を提供することができる。他に指定のない限り、全ての技術的および科学的用語は、一般的な技術的使用に従った方式において使用される。一般に、細胞培養、分子遺伝学および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションにおける、本明細書の命名および記載された実験室の手法は、それぞれ、当該技術分野において周知であり、かつ一般に採用されている。標準的技術が、組換え核酸法、オリゴヌクレオチド合成、微生物培養、細胞培養、組織培養、形質転換、形質移入、形質導入、分析化学、有機合成化学、化学合成、化学解析ならびに薬学的処方および輸送について使用される。一般に、酵素反応ならびに精製および/または単離工程は、製造者の仕様書に従って行われる。逆の指示がない限り、問題の技術および手法は、例えば、Sambrook et al.、MOLECULAR CLONING A LABORATORY MANUAL,2d ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)、およびCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,1989)に開示される様な従来の方法論に従って行われる。「配列同一性」は、当該技術分野において承認されている意味を有し、公開された技術を用いて計算することが可能である。COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY,Lesk,ed.(Oxford University Press,1988)、BIOCOMPUTING:INFORMATICS AND GENOME PROJECTS,Smith,ed.(Academic Press,1993)、COMPUTER ANALYSIS OF SEQUENCE DATA,PART I,Griffin & Griffin,eds.,(Humana Press,1994)、SEQUENCE ANALYSIS IN MOLECULAR BIOLOGY,Von Heinje ed.,Academic Press(1987)、SEQUENCE ANALYSIS PRIMER,Gribskov & Devereux,eds.(Macmillan Stockton Press,1991)、およびCarillo & Lipton,SIAM J.Applied Math.48:1073(1988)を参照。2つの配列間の同一性または類似性を判定するために一般に採用される方法は、GUIDE TO HUGE COMPUTERS,Bishop,ed.,(Academic Press,1994)およびCarillo & Lipton,上記を参照、に開示されるものを包含するが、これらに限定されない。同一性および類似性を判定する方法は、コンピュータプログラム中に体系化される。2つの配列間の同一性および類似性を判定するための好ましいコンピュータプログラム法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al.、Nucleic Acids Research 12:387(1984))、BLASTP,BLASTN,FASTA(Atschul et al.、J.Mol.Biol.215:403(1990))、およびFASTDB(Brutlag et al.、Comp.App.Biosci.6:237(1990))を包含するが、これに限定されない。
【0023】
1つの実施態様は、ヌクレオチド配列中の変異を伴う標的核酸を検出および同定することが可能な、核酸増幅および検出アッセイ用オリゴヌクレオチドプローブを提供する。これらのオリゴヌクレオチドプローブは、ミスマッチ耐性プローブであってもよく、温度依存様式において1を超える標的核酸配列にハイブリダイズすることが可能である。第2の実施態様は、異なる温度において特定の標的にハイブリダイズするであろう別々のプローブを設計することを含む。この実施態様は、ハイブリダイゼーション温度による多重化(multiplexing)とみなされ得る。
【0024】
本明細書において使用される場合、オリゴヌクレオチドは、包括的であり、ポリデオキシリボヌクレオチド、ポリリボヌクレオチド、ならびに、二本鎖および一本鎖DNA及び二本鎖および一本鎖RNAを包含する、プリンもしくはピリミジン塩基のN−グリコシド、または修飾プリンまたはピリミジン塩基である、他のあらゆるタイプのポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0025】
オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは、標的核酸配列にハイブリダイズ可能である。「ハイブリダイゼーション」は、相補的塩基対による2つの一本鎖核酸による二本鎖構造の形成を指す。ハイブリダイゼーションは、相補的核酸鎖間、または小さなミスマッチ領域を含有する核酸鎖間で生じ得る。完全な相補的核酸鎖がハイブリダイズするであろう条件は、「厳しいハイブリダイゼーション条件」と呼ばれる。小さなミスマッチ領域以外で相補的な2つの一本鎖核酸は、「実質的に相補的」と呼ばれる。実質的に相補的な配列の安定な二本鎖は、あまりストリンジェントでないハイブリダイゼーションの条件下で達成され得る。核酸技術分野における当業者は、例えば、オリゴヌクレオチドの長さおよび組成、イオン強度、ならびにミスマッチ塩基対の発生頻度およびタイプを包含する多数の変数を経験的に考慮して、二本鎖安定性を決定することができる。
【0026】
1つの実施態様において、温度依存性プローブは、互いに少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも96、少なくとも97、少なくとも98、または少なくとも99%の配列相同性を持つ1つの標的核酸により、2以上の標的核酸にハイブリダイズする。
【0027】
増幅された標的核酸配列の検出および同定は、増幅核酸産物とミスマッチ耐性および/または温度依存性プローブとを接触させ、そしてハイブリッド二本鎖の形成を検出することによって達成され得る。ハイブリダイゼーションは、様々な温度において生じ得る。例えば、ハイブリダイゼーションは、10℃〜90℃の温度において行われ得る。
【0028】
1つの実施態様において、試料中の1以上の標的核酸配列が増幅され、ハイブリダイゼーションが第1温度において観察され、その後、ハイブリダイゼーションが第1温度とは異なる1以上の温度において観察される。様々な標的配列がハイブリダイズするであろう温度の推測的な知識を使用して、どの標的核酸配列が存在するか判定することができる。別の実施態様において、温度は検出および同定工程の間、上昇または下降させられる。オリゴヌクレオチドプローブは、あらゆる生物学的試料由来の標的核酸を検出するために使用され得る。生物学的試料は、例えば、真核性、原核性またはウイルス起源の生物学的材料を包含し得る。
【0029】
細菌は、グラム陰性、グラム陽性細菌または古細菌であってもよい。グラム陰性細菌は、例えば、Vibrio、Salmonella、Shigella、Pseudomonas、Escherichia、Klebsiella、Proteus、Enterobacter、Serratia、Moraxella、Legionella、Bordetella、Gardnerella、Haemophilus、Neisseria、Brucella、Yersinia、Pasteurella、Bacteroids、およびHelicobacterを包含するが、これらに限定されない。グラム陽性細菌は、例えば、Bacillus、Clostridium、Arthrobacter、Micrococcus、Staphylococcus、Streptococcus、Listeria、Corynebacteria、Planococcus、Mycobacterium、Nocardia、RhodococcusおよびMycobacterium等の抗酸菌を包含するが、これらに限定されない。古細菌は、例えば、Methanogens、halophiles、thermophiles、psychrophiles、crenarchaeota、euryarchaeotaおよびkorarchaeotaを包含するが、これらに限定されない。1つの実施態様において、B.anthracis、B.cereus、B.circulans、B.subtilisおよびB.megateriumを包含するが、これらに限定されないBacillusを不活性化するためにナノエマルジョン組成物が使用されてもよい。また、ナノエマルジョン組成物は、Clostridium、例えば、C.botulinum、C.perfringensおよびC.tetaniを不活性化するために使用されてもよい。ナノエマルジョンによって不活性化され得る他の細菌は、H.influenzae、N.gonorrhoeae、S.agalactiae、S.pneumonia、S.pyogenesおよびV.cholerae(classicalおよびEltor)および、Y.pestis、Y.enterocoliticaおよびY.pseudotuberculosis包含するYersiniaを包含するが、これらに限定されない。別の実施態様において、細菌はB.anthracisである。別の実施態様において、細菌はMycobaterium tuberculosisである。
【0030】
ミスマッチ耐性プローブによって検出され得るウイルスは、Baculoviridae、Herpesviridae、Iridoviridae、Poxviridae、「アフリカ豚コレラウイルス」、Adenoviridae、Caulimoviridae、Myoviridae、Phycodnaviridae、Tectiviridae、Papovaviridae、Circoviridae、Parvoviridae、Hepadnaviridae、Cystoviridae、Birnaviridae、Reoviridae、Coronaviridae、Flaviviridae、Togaviridae、「アルテリウイルス」、Astroviridae、Caliciviridae、Picornaviridae、Potyviridae、Retroviridae、Orthomyxoviridae、Filoviridae、Paramyxoviridae、Rhabdoviridae、Arenaviridae、およびBunyaviridaeファミリーのあらゆるウイルスを包含するが、これらに限定されない。1つの実施態様において、ウイルスは、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パピローマウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、肝炎ウイルス、センダイウイルス、シンドビスウイルスおよびワクシニアウイルス、西ナイル熱ウイルス、ハンタウイルスおよび一般的な風邪を引き起こすウイルスである。1つの実施態様において、プローブはコクサッキーウイルスを検出する。
【0031】
1つの実施態様において、真菌は、例えば、Trichophyton rubrum、Trichophyton mentagrophytes、Microsporum canis、Microsporum gypseumおよびEpiderophyton floccosum等のアスペルギルス種または皮膚糸状菌、、ならびにそれらの型(types)その他を包含するが、これらに限定されない、様々な種のCandida(例、Candida albicans)または、糸状酵母(filamentous yeast)等の酵母である。追加の実施態様は、原生動物、藻類、植物および動物核酸を包含するが、これらに限定されない、真核生物を包含する。
【0032】
オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの機能または使用を包含する、多数の因子に依存する、あらゆる好適なサイズであってもよい。オリゴヌクレオチドは、例えば、クローニング、大きなヌクレオチドの酵素制限、およびNarang et al.、Meth.Enzymol.68:90−9(1979)のホスホトリエステル法、Brown et al.、Meth.Enzymol.68:109−51(1979)のホスホジエステル法、Beaucage et al.、Tetrahedron Lett.22:1859−62(1981)のジエチルホスホラミダイト法、および米国特許第4,458,066号の固体支持法等の方法による直接的な化学合成を包含する、あらゆる好適な方法によって調製されてもよい。合成方法の総説は、Goodchild,Bioconjugate Chemistry 1:165−87(1990)において提供される。
【0033】
ミスマッチ耐性プローブおよび/または温度依存性プローブは、キット中に供給され得る。キットは、必要な試薬のいくつかまたは全てを包含してもよい。キットは、単一のプライマーまたは1以上のプライマーセット、および1以上のオリゴヌクレオチドプローブを包含してもよい。
【0034】
用語「プライマー」は、天然または合成に関わらず、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下でのDNA合成の開始点として作用することが可能なオリゴヌクレオチドを指す。例えば、そのような条件は、適切な緩衝溶液中の4つの異なるヌクレオシド三リン酸および重合用試薬(すなわち、DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)の包含(inclusion)および好適な温度を包含する。プライマーは、一本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドであってもよい。プライマーの長さは変化してもよく、プライマーの意図された使用に依存する。1つの実施態様において、プライマーは6〜40ヌクレオチドの範囲にある。
【0035】
プライマーは、テンプレートの正確な配列を反映する必要はないが、テンプレートとハイブリダイズするために十分に相補的であるべきである。プライマーは、プライマーの検出または固定を可能とする追加の特徴を組み込んでもよいが、DNA合成の開始点として作用するためのプライマーの基本的な能力を変更しない。
【0036】
オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは、増幅混合物中で使用され得る。用語「増幅反応混合物」は、核の増幅反応を実施するために好適な試薬の組み合わせを指す。反応混合物は、典型的には、好適な緩衝溶液中の、オリゴヌクレオチドプライマー、ヌクレオチド三リン酸(dNTP)、および例えば、熱安定性ポリメラーゼ、ヘリカーゼ、RNAポリメラーゼまたはリガーゼ等の核酸処理酵素(nucleic acid processing enzyme)からなる。好適なポリメラーゼは、例えば、米国特許第4,889,818号に記載される。あらゆる好適なヘリカーゼおよびRNAポリメラーゼが使用され得、多くは先行技術において公知である。好適なヘリカーゼおよびRNAポリメラーゼは、例えば、欧州特許第0629706号および米国特許第5654142号に記載される。
【0037】
増幅された核酸は、あらゆる好適な方法を使用して検出され得る。例えば、1つの実施態様において、二本鎖DNAは、一本鎖DNAへの結合に比べて、二本鎖DNAに結合した場合により多い蛍光を呈する、YO−PRO(登録商標)、YoYo(登録商標)およびSYBR(登録商標)染料等の非配列特異的検出システムを使用して検出され得る。
【0038】
別の実施態様において、核酸領域に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ、「ハイブリダイゼーションプローブ」が使用され得る。多数の異なるハイブリダイゼーションプローブが存在するが、ハイブリダイゼーションプローブを使用する方法の中心的な特徴は、増幅された標的DNAまたはRNAへのオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションを検出することによる、試料中に存在する核酸の同定である。
【0039】
核酸ハイブリダイゼーション技術において有用なプローブは、1以上のタイプの化学結合を介して、通常、水素結合形成により相補塩基対合を介して、相補配列の標的核酸に結合することが可能である。プローブは、天然塩基(すなわち、A、G、U、CまたはT)または修飾塩基(7−デアザグアノシン、イノシン等)を包含してもよい。加えて、核酸は、ハイブリダイゼーションに干渉しない限り、ホスホジエステル結合以外の結合によって連結されてもよい。従って、プローブは、構成塩基がホスホジエステル結合よりもむしろペプチド結合によって連結される、ペプチド核酸であってもよい。
【0040】
オリゴヌクレオチドプローブは、当該技術分野において公知のあらゆる手段によって調製され得る。プローブは、好ましくは、少なくとも6、12、14、16、18、20、22、24、30または40ヌクレオチドである。
【0041】
オリゴヌクレオチドプローブは、任意に、プローブの検出または固定化を可能とするが、プローブのハイブリダイゼーション特性を変更しない分子に結合されてもよい。当業者は、一般に、オリゴヌクレオチドプローブの補体(complement)もまた、プローブとして好適であることを認識するであろう。
【0042】
所定の標的核酸に相補的なプローブは、化学的に合成されてもよく、制限酵素を使用してより長いヌクレオチドから作出されてもよく、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の技術を使用して得られてもよい。プローブは、例えば、放射性、ビオチン化、または蛍光タグで標識されてもよい。
【0043】
1つの実施態様において、配列特異的プローブは、検出手段として、2つの蛍光染料間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を採用してもよい。配列特異的オリゴヌクレオチドプローブは、公知の標識化学を使用して、例えば、フルオレセイン、ローダミンおよひシアニン染料で標識される。DABCYLまたはメチルレッド等のアクセプター染料は、アクセプター(またはクエンチャー)染料として使用されてもよい。
【0044】
さらなる別の実施態様において、分子標識(molecular beacon)、へパリン二次構造ならびに5‘および3’末端においてドナー−アクセプター対を有するオリゴヌクレオチドプローブは、増幅された核酸領域にプローブが結合することを可能にする相補配列によって作出され得る。例えば、TyagiおよびKramer,Nat.Biotechnol.14:303−8(1996)およびTyagi et al.、Nat.Biotechnol.18:1191−6(2000)を参照。
【0045】
追加の実施態様において、例えば、Lee et al.、Anal.Chim.Acta 457:61−70(2002)に記載されるオリゴヌクレオチドプローブは、増幅された核酸領域の検出のために使用され得る。
【0046】
当業者は、異なる検出アッセイ標識または固定化方法の使用は条件および/またはプローブ配列において小さな最適化を必要とする可能性があることを認識するであろう。特定の適用は、どのプローブが使用されるかを決定するであろう。
【0047】
増幅反応は、較正および標的核酸の存在の確認のための内部標準をさらに包含してもよい。あらゆる好適な内部標準が使用され得る。内部標準の使用により、二重増幅が行われ(run)、標的核酸および内部標準核酸の両方の増幅産物がモニターされる。
【0048】
また、増幅反応は、目的の他の核酸に対して特異的なプライマーおよびプローブを包含し得る。例えば、増幅反応は、他の生物学的な危険と関連する遺伝子を増幅及び検出するために多重化され得る。
【0049】
増幅産物の検出は、エンドポイント決定等のあらゆる好適な方法によって行われ得る。
【0050】
オリゴヌクレオチドは、予め包装された消耗品等のシステムに含有される試薬として供給され得る。例えば、消耗品は、核酸等の生物学的微粒子を捕捉するためのフィルターを有する材料の細片の形態であってもよい。また、細片は、標的ヌクレオチドの増幅および/または検出を実施するための他の試薬を含有してもよい。フィルターおよび試薬は、材料の細片上に配置され、縦方向に延びてもよい。別の実施態様において、オリゴヌクレオチドは、プランジャハウジングに取り外し可能に接続された緩衝溶液容器ハウジング内に含有されてもよい。この装置を使用して、プランジャの末端に取り付けられたスワブは、リシン毒素等の生物兵器剤について解析される標本の試料を採取する。スワブおよびプランジャは、プランジャハウジングへ挿入され、緩衝溶液容器は緩衝溶液容器ハウジング内部に配置され、緩衝溶液容器ハウジングおよびプランジャハウジングが取り付けられる。緩衝溶液はスワブを通り、試料を溶出させ、そして試料は試薬と混合する。調製された試料は、ホイッピング動作(whipping action)によって反応チューブ中へ移される。
【0051】
1以上のミスマッチ耐性および温度依存性プローブが、キットの一部として提供され得る。キットは、1以上の標的核酸配列を増幅するための1つ以上のプライマー対を含有する増幅試薬混合物を包含し得る。時として、オリゴヌクレオチドプローブおよび/またはプライマーは、マイクロウェルプレート等の適切な支持メンブレン上に供給されるか、または消耗品容器、包装もしくは細片上またはそれらの中に凍結乾燥され得る。キットの他の任意成分は、例えば、プライマー伸長産物の合成を触媒するための薬剤、基質ヌクレオシド三リン酸、増幅およびハイブリダイゼーション反応のための適切な緩衝溶液、および検出方法を行うための指示書を包含する。
【0052】
ミスマッチ耐性および/または温度依存性プローブは、病原性微生物、植物および動物を包含する、微生物由来の遺伝学的材料の検出のために使用されてもよい。病原性微生物は、細菌、ウイルス、真菌、原生動物またはこれらの組み合わせを包含するが、これらに限定されない。
【0053】
例示的な実施態様において、標的核酸配列の検出用オリゴヌクレオチドプローブが存在し、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは、第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズする。
【0054】
別の例示的な実施態様において、2以上の標的核酸配列の検出方法が存在し、前記方法は:
a.1以上の標的核酸配列とオリゴヌクレオチドプローブとを、第1温度において接触させること、
b.第2温度に到達するように温度を変更すること;および
c.プローブが、第1温度、第2温度、または両方の温度において標的核酸配列にハイブリダイズするかどうかを判定すること、
を含み、
ここで、第1温度は第1標的核酸配列に相互関連づけられ得、第2温度は第2核酸配列に相互関連づけられ得る。
【0055】
別の実施態様において、1以上の標的核酸配列を増幅するための1つ以上のプライマー対、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含有する増幅試薬混合物を含むキットが存在し、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズする。
【0056】
別の実施態様において、少なくとも2つのオリゴヌクレオチド、プローブを含む組成物が存在し、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは同一または同様の検出特性を伴うレポーター標識を有し、ならびに、ここで、第1オリゴヌクレオチドプローブは第1温度において第1標的核酸配列にハイブリダイズし、第2オリゴヌクレオチドプローブは第2温度において第2標的核酸配列にハイブリダイズし、ここで、前記第1標的核酸配列は第1温度において検出され、前記第2核酸配列は第2温度において検出され、ならびに、ここで、前記第1温度における前記レポーター標識の検出が第1標的核酸配列の存在を示し、前記第2温度における前記レポーター標識の検出が第2標的核酸配列の存在を示す。
【0057】
別の実施態様において、同一または同様の検出特性を有するレポーター分子によって標識された2以上のオリゴヌクレオチドプローブを用いて2以上の標的核酸配列を検出する方法であって:
(i)1以上の標的核酸配列とレポーター標識オリゴヌクレオチドプローブとを第1温度において接触させること;
(ii)第2温度に到達するように温度を変更すること;および
(iii)レポーター標識を伴う第2プローブが、第2温度において標的核酸配列にハイブリダイズするかどうかを判定することを含む方法が存在し、ここで、第1温度におけるシグナルは第1標的核酸配列に相互関連づけられ得、第2温度におけるシグナルは第2核酸配列に相互関連づけられ得る。
【0058】
別の実施態様において、1以上の標的核酸配列を増幅するための少なくとも1つのプライマー、および同一または同様の検出特性を有するレポーター標識をそれぞれ有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを含有する増幅試薬混合物を含むキットが存在し、ここで、前記第1オリゴヌクレオチドプローブは第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、前記第2プローブは第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズする。
【0059】
本明細書における開示を前提として、当該技術分野に精通するものは、本発明の範囲および精神のうちの他の実施態様および修正が存在することを理解するであろう。従って、本発明の範囲および精神のうちの、当該技術分野に精通するものによって達成可能な全ての本開示からの修正は、本発明のさらなる実施態様として包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸配列の検出用オリゴヌクレオチドプローブを含み、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズする、プローブ。
【請求項2】
2以上の標的核酸配列の検出方法であって、
a.1以上の標的核酸配列とオリゴヌクレオチドプローブとを、第1温度において接触させること、
b.第2温度に到達するように温度を変更すること;および
c.プローブが、第1温度、第2温度、または両方の温度において標的核酸配列にハイブリダイズするかどうかを判定すること、
を含む、方法。
【請求項3】
前記第1温度が第1標的核酸配列に相互関連づけられ、前記第2温度が第2核酸配列に相互関連づけられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1温度が第1標的核酸配列に相互関連づけ可能であり、前記第2温度が第2核酸配列に相互関連づけ可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
1以上の標的核酸配列を増幅するための一対以上のプライマー、および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含有する増幅試薬混合物を含み、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブが第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズする、キット。
【請求項6】
少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを含む組成物であって、ここで、前記オリゴヌクレオチドプローブは同一および/または同様の検出特性を伴うレポーター標識を有し、ここで、第1オリゴヌクレオチドプローブは第1温度において第1標的核酸配列にハイブリダイズし、第2オリゴヌクレオチドプローブは第2温度において第2標的核酸配列にハイブリダイズし、ここで、前記第1標的核酸配列は第1温度において検出され、前記第2核酸配列は第2温度において検出され、ならびに、ここで、前記第1温度における前記レポーター標識の検出が第1標的核酸配列の存在を示し、前記第2温度における前記レポーター標識の検出が第2標的核酸配列の存在を示す、組成物。
【請求項7】
同一または同様の検出特性のうち少なくとも1つを有するレポーター分子で標識された2以上のオリゴヌクレオチドプローブを用いた2以上の標的核酸配列の検出方法であって:
(i)1以上の標的核酸配列とレポーター標識オリゴヌクレオチドプローブとを第1温度において接触させること;
(ii)第2温度に到達するように温度を変更すること;
(iii)レポーター標識を伴う第2プローブが、第2温度において標的核酸配列にハイブリダイズするかどうかを判定すること、
を含む方法。
【請求項8】
前記第1温度におけるシグナルが第1標的核酸配列に相互関連づけ可能であり、前記第2温度におけるシグナルが第2核酸配列に相互関連づけ可能である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1温度におけるシグナルを第1標的核酸配列に相互関連づけること、および第2温度におけるシグナルを第2核酸配列に相互関連づけることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
1以上の標的核酸配列を増幅するための少なくとも1つのプライマー、および同一または同様の検出特性を有するレポーター標識をそれぞれ有する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを含有する増幅試薬混合物を含み、ここで、前記第1オリゴヌクレオチドプローブが第1温度において第1核酸配列にハイブリダイズし、前記第2プローブが第2温度において第2核酸配列にハイブリダイズする、キット。

【公表番号】特表2012−511328(P2012−511328A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540795(P2011−540795)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/066924
【国際公開番号】WO2010/068576
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(506197945)スミスズ ディテクション インコーポレイティド (6)
【Fターム(参考)】