説明

温度情報計測方法

【課題】 計測システムにおける非線形な検出手段からの出力値を予め求めた仮想1次関数に置き換えることにより、簡易にしかも迅速に被検体の温度情報を計測することができる温度情報計測方法を得ること。
【解決手段】放射率と透過率が波長λ1と波長λ2で等しくなる2つの波長λ1、λ2を選択する波長選択工程と、
検出手段に入力する放射量と、該検出手段からの出力値とから入出力特性を求める入出力特性検出工程と、
該入出力特性値から入射放射量に対する出力値との関係に基づく仮想1次関数の勾配と仮想原点を求め、該仮想原点を通る仮想1次式を求める算出工程と、
被検体の同一領域から放射される放射量を波長λ1と波長λ2において検出し、該仮想1次式を用いて放射量を求める計測工程と、
該計測工程で求めた放射量の比を用いて温度情報を求める温度情報計測工程と、
を利用していること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の温度情報を2色温度法を利用して簡易にかつ迅速に計測するのに好適な温度情報計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より被検体(物体)の温度情報を計測するのに2色温度法(比温度)を利用した計測装置が種々と提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
一般に、物体の放射温度から真温度を知るためには、物体の放射率や測定物体までの透過率等による補正が必要になる。しかしながら放射率は物体により、又測定波長により、その他物体の置かれた環境により種々と異なる値を示すため、それを正確に知ることが極めて困難である。
【0004】
これに対して、2色温度法は、物体から放射される放射量のうちから二つの波長(波長域)における放射を計測し、両者の比を算出して、同じ値を示す黒体の温度をその物体の温度としている。
【0005】
この2色温度法は、両波長における放射率が同値であれば物体の温度を正確に計測することができる。この放射率が同値であるという条件が成り立つ限り、2色温度法は放射率による補正の必要も、又透過率による補正の必要もないという特徴がある。
【特許文献1】特開2001−272278号公報
【特許文献2】特開平05−165534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被検体の温度情報を2色温度法を用いて計測するのには、放射光量(入力値)と検出手段からの出力値との関係を示す入出力特性の直線性が良い検出器またはカメラ(撮像装置)を選択して使用することが重要である。従来より2色温度法では、入射光量が0の場合の出力値を採取し、その値を全ての出力値から差し引く方法が多く取られている。
【0007】
この方法はブラックレベルの設定等と称されている。この方法は入出力特性が非線形であるときの補正ができない。
【0008】
厳密な計測を実行する場合は、標準光源を用い、放射光量が0から検出手段の飽和値までの全領域において入出力値に関するルックアップテーブルを作成し、計測に際して該当出力に対する索引補正を行う方法がある。
【0009】
しかしながらこの方法は計測値の補正をするのが大変面倒で、かつ時間もかかるという問題がある。
【0010】
特に、入射光量に対する出力値が非線形な検出手段を用いて複数の入射光量からその相関関係を計算する場合、その処理は極めて煩雑となる。
【0011】
本発明は、計測システムにおける非線形な検出手段からの出力値を予め求めた仮想1次関数に置き換えることにより、簡易にしかも迅速に被検体の温度情報を計測することができる温度情報計測方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の温度情報計測方法は、被検体からの放射率が波長λ1と波長λ2において等しく、かつ被検体から検出器または撮像装置の検出手段に至るまでの透過率が波長λ1と波長λ2で等しくなる2つの波長λ1、λ2を選択する波長選択工程と、
標準光源から放射される放射量を該検出手段で検出し、該検出手段に入力する放射量と、該検出手段からの出力値とから入出力特性を求める入出力特性検出工程と、
該入出力特性値から入射放射量に対する出力値との関係に基づく仮想1次関数の勾配と仮想原点を求め、該仮想原点を通る仮想1次式を求める算出工程と、
被検体の同一領域から放射される放射量を波長λ1と波長λ2において該検出手段で検出し、該検出手段からの出力値より、該仮想1次式を用いて放射量を求める計測工程と、
該計測工程で求めた波長λ1、λ2における放射量の比を用いて該被検体の温度情報を求める温度情報計測工程と、
を利用して、被検体の温度情報を求めることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入出力特性が非線形な検出手段を用いても、それからの出力値を容易に、線形出力として扱うことができるので、被検体の温度情報を簡易に、かつ短い処理時間で計測するのが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず本発明において被検体の温度(温度情報)の計測に先立って、検出器や撮像装置(カメラ)で得られる信号(計測値)の補正リファレンスを取得するときの事前作業について説明する。
【0015】
図1は被検体の温度計測に先立って、予めカメラを用いて、被検体を計測するときの計測波長λ1、λ2におけるリニアリティー(直線性)を計測しておく検出装置の要部概略図である。
【0016】
図1において11は出力光量が可変な光量可変型の標準光源である。12は干渉フィルター等バンドパスフィルターであり、中心波長λ1と中心波長λ2の狭帯域の光を通過させるフィルターを有している。13はCCDカメラである。標準光源11からの光をバンドパスフィルター12を介しCCDカメラ13で撮影し、その出力(放射量)をパソコン14でキャプチャーする。
【0017】
標準光源11からの出力はフォトダイオード等で監視されており、その出力はパソコン12にキャプチャーされる。
【0018】
本実施例の作業手順は以下の通りである。
【0019】
(A1):標準光源11から放射される光量を、0からCCDカメラ13で検出される光量の飽和点まで次第に増加させる。
【0020】
(A2):標準光源11から放射される光量とそれに対応するCCDカメラ13からの出力を、セットでパソコン14に記録する。
【0021】
(A3):標準光源11から放射される光量をx1、それに対応するCCDカメラ13からの出力y1、それより大きい光量をx2、それに対応する出力をy2、さらに大きい光量をx3、それに対応する出力をy3とする。
【0022】
(A4):以下の条件が成立する光量と出力の範囲を探索することにより光量と出力に関する仮想の1次関数の勾配aを得る。
【0023】
a=(y2−y1)/(x2−x1)=(y3−y2)/(x3−x2)
これは
a=(y2−y1)/(x2−x1)=(y3−y1)/(x3−x1)
等としてもよい。
【0024】
(A5):以下の式により、計測用の勾配aと仮想新原点を算出する。
【0025】
勾配=(y2―y1)/(x2―x1)=a
【0026】
【数1】

【0027】
(A6):仮想新原点xと勾配aから入射に対する出力の一次関数式を作成する。
【0028】
y=a(x−x1)+y1
(A7):各入射点(放射量)に対する1次関数の算出の出力と実測出力Qの差を算出し、リファレンス値のルックアップテーブルとしてパソコンのHDD等に記憶させる。
【0029】
本実施例において被検体の温度計測時の処理について説明する。
【0030】
図2は温度計測時の具体的なシステム構成の概略図である。
【0031】
(B1):撮像装置としてCCD/C-MOSを用いたカメラ21は、2波長における同一画像が必要なため、単板式のカラーカメラを使用するのが簡易である。
【0032】
厳密な計測を行うためには、モノクロ用のカメラの対物レンズの物体側又は像側に波長λ1と波長λ2の光束を通過させるフィルターを含む切替式バンドパスフィルター・ホイールを設置するのが良い。
【0033】
又は対物レンズに入射後の光束を2分岐して各バンドパスフィルターを通した後、同一センサーに結像させる等の方法が適用できる。
【0034】
(B2):CCDカメラまたはC-MOSカメラ21で撮影された被写体の画像はパソコン22のインターフェース23を介してメモリー24に取り込む。
【0035】
(B3):メモリー23に取り込まれた各画素の出力信号は、CPU26によりHDD25から呼び出されたリファレンス値と比較され加算された後、輝度信号値としてメモリー24に再記憶される。
【0036】
(B4):2波長の輝度信号値は、各画素単位で、後述する計算式(4)により演算され、温度分布表として出力され、または温度分布擬似カラー画像としてとして出力回路27より出力される。その後ディスプレイ28に表示される。
【0037】
本発明は、被検体(物体)の温度情報を計測するのにポイント検出器の他にCCD等のフォトダイオード・アレイ・センサー等を用いたカメラを検出手段として用いる。そして、物体から放射される光束(放射量)として二つの波長における放射量を捕捉し、その比から被検体の温度情報を計測する二色温度計測方法を用いる。
【0038】
具体的には、次の工程を用いている。
【0039】
被検体からの放射率が波長λ1と波長λ2において等しく(±5%以内)、かつ被検体から撮像装置の検出手段に至るまでの透過率が波長λ1と波長λ2で等しく(±5%以内)なる2つの波長λ1、λ2を選択する波長選択工程と、
標準光源から放射される放射量を該検出手段で検出し、該検出手段に入力する放射量と、該検出手段からの出力値とから入出力特性を求める入出力特性検出工程と、
該入出力特性値から入射放射量に対する出力値との関係に基づく仮想1次関数の勾配と仮想原点を求め、該仮想原点を通る仮想1次式を求める算出工程と、
被検体の同一領域から放射される放射量を波長λ1と波長λ2において該検出手段で検出し、該検出手段からの出力値より、該仮想1次式を用いて放射量を求める計測工程と、
該計測工程で求めた波長λ1、λ2における放射量の比を用いて該被検体の温度情報を求める温度情報計測工程と、を用いている。
【0040】
次に、本実施例において被検体の温度情報を計測するときに利用する2色温度法(比温度計測法)の計測原理について説明する。
【0041】
高温度の被検体の計測では、被計測物体(被検体)から放射される放射量の強さを測定することによって、被検体の温度を算出することができる。
【0042】
具体的な計測では、Planckの方程式や、Wienの近似式を拠り所にした放射温度計や輝度温度計(単波長放射温度計)を用いるのが一般的である。しかしながら、被計測物体の放射率が未知な場合や被計測物体と計測装置との間に介在するガラス等の透過率の影響を避けたい場合は、二色温度法(Ratio Temperature)による計測が有効である。二色温度法は、被計測物体から放射される放射量のうち二つの波長における放射量の強さの比から温度を知るものである。波長λにおける放射量Mλは、Wineの近似式からの展開では以下のようになる。
【0043】
【数2】

【0044】
c:第一放射定数=3.741844X10-16[Wm2]
λ :波長 μm
c:第二放射定数=1.438769X10-2[m K]
T :絶対温度(Kelvin)
τ:透過率
ε:放射率
波長λおよびλにおける放射エネルギー(放射量)をM1、M2とすると2つの波長λ、λにおける放射量M、Mの強さの比Rは
【0045】
【数3】

【0046】
となる。
【0047】
ここで、放射率ε1、ε2がほぼ等しくε/ε2=1となり、透過率τ1、τ2がτ1/τ2=1となる場合、この条件を(3)式に適応すると、
【0048】
【数4】

【0049】
となり、2波長の放射量の比Rは、温度Tと関数関係にある。また物体の放射率と、介在物の透過率に影響されないことになる。
【0050】
2色温度法では、このときの2波長における放射量Mの比Rを求めることによって、被検体の温度情報Tを計測する方法である。
【0051】
次に二色温度法の計測に要求される要件について説明する。
【0052】
図3は、例として波長550nmと波長650nmにおける黒体の温度変化による輝度(放射量)(放射の強さ)の変化を示したものである。
【0053】
放射量の強さは、温度が高くなるにつれて急激に増加する。温度は両波長の放射量の強さを得ることにより算出することができる。このため、放射量の強さを測定するセンサー(検出手段)には、入射光に対する高い感度分解能と再現性が求められる。また、センサーの入射光に対する出力特性が線形でない(一次関数の関係にない)場合は、センサーからの出力から入射光を知るためには複雑な計算が必要となる。このため、センサ−の入出力特性には高度な直線性が求められる。
【0054】
尚、被検体の温度分布を求める場合は、センサーを機械的にスキャンすれば良い。この他、高速性が要求される場合はセンサーアレイを使用すれば良い。
【0055】
可視光域でのセンサーアレイとしては、シリコンやInGaAs半導体などによるフォトダイオード・アレイであるCCDまたはC-MOSセンサーが一般的である。
【0056】
これらのセンサーを使用する場合は、そのセンサーの持つ特性を掌握しておくことが必要である。
【0057】
CCD/C-MOSセンサーを用いたカメラを被検体の温度計測に使用する場合には、次の問題点がある。
【0058】
シリコン半導体(Si)やインヂューム・ガリューム砒素(InGaAs)半導体を使用したフォトダイオードは、光量(放射量)を電気信号に変換するためのセンサーとして使用される。
【0059】
フォトダイオード単体の入射光量に対する出力特性は、優れた直線性を示し温度計測センサーとし好適である。このフォトダイオードを2次元アレイ状に配置したCCDやC−MOS素子は、ディジカメやムービーカメラの撮像素子として多用されている。これらセンサーを用いたカメラは、被検体の光量分布(温度分布)とその時間的変化を計測記録する測定装置としても使用できる。しかし、CCD、C−MOSセンサーを使用したカメラを光量の計測に使用する場合は、フォトダイオード単体に比べて、多くの場合、入射光量に対する出力の直線性が悪く、そのままでは高精度に温度測定をするのが難しい。
【0060】
図4は、一般的な計測用のフォトダイオードの入射光量Mに対する出力値Sを図示したものである。理想的には破線のように、入射光量の無い状態から上限無しに直線(1次関数)的に出力することである。しかしながら、フォトダイオードの容量に上限があるので、実線のようにクリッピングされる。CCD/C−MOSを用いたカメラにとっては、図4は理想的カメラの入出力特性である。
【0061】
このような理想的なカメラは、それより得られる出力値を入射光量として簡単に計算処理することができる。即ち、入出力が「0」を示す点を原点として、飽和値(8Bitでは255)を示す点を結ぶ1次関数式を用いることによって、このカメラの入射光量に対する出力値Sを算出することができる。
【0062】
このようなリニアリティー特性(1次関数特性)は、同一被検体を、波長を変えて撮影し、両画像の光量比から被検体の諸情報を得るような場合に極めて重要である。
【0063】
しかし現実のカメラにおいては、フォトダイオードの物理的雑音や、出力増幅器の歪等により、入射量に対する出力値は理想的な一次関数の関係とはならず、例えば図5のようになる。
【0064】
このような特性を持つ現実のカメラでは、出力値が「0」を示す点を原点として、飽和値(8Bitでは255)を示す点を結ぶ1次関数式Laでこのカメラの入射量に対する出力値を算出すると、出力値には大きな誤差を含むことになる。
【0065】
本発明ではCCD/C-MOSを用いたカメラを被検体の温度を計測する計測装置として用いた場合の前述した誤差を次のようにして除去している。
【0066】
一般的なカメラの入射/出力特性に注意すると、全体的には複雑な関数でしか表現できなくとも、限られた領域においては低次関数で表現できることが多い。例えば図5の例では、出力値が100を越え230に達しない領域では、入射量と出力値は1次関数の関係にあるとすることができる。
【0067】
ここで、一次関数関係を持つとできる領域での入射量と出力値を計測し、計算式を求め、図示すると図6のようになる。
【0068】
ここで図7に示すように直線部分の入射量が小さい方の入射光量をx1、出力値をy1、入射量が大きい方の入射光量をx2、出力値をy2とする。そうすると、直線部分(仮想1次関数式)の勾配と仮想原点は次式で求めることができる。
【0069】
勾配=(y2―y1)/(x2―x1)=a
仮想新原点=x2−y2×(x2-x1)/(y2-y1)
y−y2=a(x−x2)
y=a(x−x2)+y2
ここで新原点はy=0のときのxの値である。
【0070】
x=x2−y2/a
本実施例において、前述の算出工程では、標準光源から放射される放射量Rと、検出主端から出力される出力値Qとの対(R、Q)を3組以上求め、これらのうち任意の3組の対を(R1、Q1)、(R2、Q2)(R3、Q3)とするとき
【0071】
【数5】

【0072】
となる3組選択し、これより入出力特性の直線領域を求めた後に、3組の対(R1、Q1)、(R2、Q2)(R3、Q3)を通過した直線と出力値Qが0となる放射量の値を仮想原点とし、これらの点を通る1次関数式を求めている。
【0073】
この仮想1次関数式より、カメラにおける出力値の仮想(新)原点を求めると図8のようになる。
【0074】
また、1次関数関係の領域外の出力値については、入射量に対する実測の出力値と前記1次関数数値の差を算出したルックアップテーブルを作成し、計測に際しては入力値対応する補正値を加算することにより補正が可能となる。これにより全域の正確な計測が可能となる。図9はカメラからの出力値(現実出力)に加算すべき補正値を示した例である。
【0075】
このような補正を行う場合は、入出力特性の直線性が維持できる区間は、必ずしも広くなくてもよいことになる。
【0076】
入射量に対する出力値が非線形のCCD/C-MOSを用いたカメラであっても、上記のような仮想一次関数と仮想原点とを求めたうえ、撮影画像の出力データを補正することにより、精度の高い温度計測を行うことができる。
【0077】
具体的には1次関数式を用いて次の方法で被検体の温度情報を求めている。
【0078】
仮想原点をRとする。
【0079】
検出手段からの出力値をQ、放射量をRとし、仮想原点Rを通る1次関数式を
Q=a・R
とする。
【0080】
出力値Qが検出手段の入出力特性の直線領域内のとき、図9では出力値Qが
<Q<Q
のときで、出力値QがQであったとする。
【0081】
このとき被検体からの放射量R
【0082】
【数6】

【0083】
として直ちに求められる。
【0084】
ここでRは仮想原点の値であり、図7より有限の値(52)である。
【0085】
そして波長λ1と波長λ2における検出手段からの出力値Qcλ1、Qcλ2より波長λ1と波長λ2における放射量Rcλ1、Rcλ2
【0086】
【数7】

【0087】
より求めている。
【0088】
そして、このときの放射量の比
【0089】
【数8】

【0090】
は黒体温度で一定の値をとる。
【0091】
これより、2色温度法を用いて被検体の温度情報を求めている。
【0092】
尚、更に好ましくは、前述の算出工程において、放射量Rとの対を4組以上求め、入出力特性値が直線領域では黒体との関係を求めるのが良い。
【0093】
一方、入出力特性検出工程において求めた入出力特性値が直線的でない領域においては1次関数式からの差を補正値として記憶手段に記憶する記憶工程を用いる。そして直線的でない領域においては、計測工程において、検出手段で求めた出力値に該記憶手段に記憶した補正値を加えた後に、1次関数式より放射量を求めている。
【0094】
具体的には、図9に示すように波長λ1又は波長λ2での検出手段からの出力値Qが検出手段の入出力特性の非直線領域であったとする。
【0095】
例えば、
<Q<Q
のときで出力値がQc’のときは次のような方法を用いる。
【0096】
ルックアップテーブルより補正値qを加算し、
=Qc’+q
を得る。これより放射量Rcを
【0097】
【数9】

【0098】
として求めれば良い。
【0099】
これより前述した方法により被検体の温度情報を求めることができる。
【0100】
次に本実施例において、被検体の温度情報を計測する方法について説明する。
【0101】
被検体からの放射量をカメラによって検出するとき波長λ1、λ2における放射率をε1、ε2とし、波長λ1、λ2における透過率をτ1、τ2とする。
【0102】
このとき
ε1=ε2
τ1=τ2
とみなせる2つの波長λ1、λ2を選択する。
【0103】
波長λ1における放射量をR1、
波長λ2における放射量をR2
とするとき、双方の放射量の比R=R2/R1は黒体温度に対して固有で1つの数値しかない。
【0104】
本実施例ではこの2色温度法を利用してこのときの比Rを求めて被検体の温度情報を計測している。
【0105】
例えば図3において、
黒体温度がT°(k)のときの波長λ1での放射量をR1、
黒体温度がT°(k)のときの波長λ2での放射量をR2、
黒体温度がT°(k)のときの波長λ1での放射量をR1’、
黒体温度がT°(k)のときの波長λ2での放射量をR2’
とする。
【0106】
このときT°(k)における放射量の比R=R2/R1は一定である。
【0107】
又、T°(k)における放射量の比R=R2’/R1は一定である。
【0108】
前述した方法で放射量Rとカメラからの出力値Qとの関係を示す仮想1次関数を求めておく。
【0109】
そしてカメラからの出力値Qが
Qa≦Q≦Qb
のときは、出力値Qから放射量Rを仮想1次関数式
【0110】
【数10】

【0111】
より直ちに求めることができる。
【0112】
このときの放射量を波長λ1と波長λ2について光学フィルター(干渉フィルター)を用いて求める。
【0113】
そして、このときの波長λ1、λ2における放射量R1、R2の比
R=R2/R1
より被検体の温度情報を求めている。
【0114】
以上のようにカメラの入出力特性が直線的でない領域が含まれていると計測値に誤差が発生する。
【0115】
そこで本発明では、このときの誤差を前述の如く比較的簡易な方法で補正し、計測値の制度の向上を行っている。
【0116】
尚、本発明において波長λ1とλ2における放射率または透過率が等しくない場合に、これを補正する手段を用いて補正すれば良い。
【0117】
尚、本発明は、二色温度計測に限らず、例えばバイオメディカルにおける蛍光画像の計測やその他の計測にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明においてリファレンス値を計測するための計測装置の要部概略図
【図2】本発明に係る温度計測におけるシステム図
【図3】温度変化に対する輝度の変化の説明図
【図4】理想的なカメラの入出力特性の説明図
【図5】現実のカメラの入出力特性の説明図
【図6】現実のカメラの入出力特性のうちの直線部分の説明図
【図7】入出力特性の直線部分と勾配との説明図
【図8】直線部分に基づく新原点の計測の説明図
【図9】本発明に係る検出手段からの出力値の補正方法の説明図
【符号の説明】
【0119】
11 標準光源
12 バンドパスフィルター
13、21 CCDカメラ
14 パソコン及びディスプレイ
22 パソコン
28 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体からの放射率が波長λ1と波長λ2において等しく、かつ被検体から検出器または撮像装置の検出手段に至るまでの透過率が波長λ1と波長λ2で等しくなる2つの波長λ1、λ2を選択する波長選択工程と、
標準光源から放射される放射量を該検出手段で検出し、該検出手段に入力する放射量と、該検出手段からの出力値とから入出力特性を求める入出力特性検出工程と、
該入出力特性値から入射放射量に対する出力値との関係に基づく仮想1次関数の勾配と仮想原点を求め、該仮想原点を通る仮想1次式を求める算出工程と、
被検体の同一領域から放射される放射量を波長λ1と波長λ2において該検出手段で検出し、該検出手段からの出力値より、該仮想1次式を用いて放射量を求める計測工程と、
該計測工程で求めた波長λ1、λ2における放射量の比を用いて該被検体の温度情報を求める温度情報計測工程と、
を利用して、被検体の温度情報を求めることを特徴とする温度情報計測方法。
【請求項2】
前記算出工程では、前記標準光源から放射される放射量Rと、
前記検出主端から出力される出力値Qとの対(R、Q)を3組以上求め、これらのうち任意の3組の対を(R1、Q1)、(R2、Q2)(R3、Q3)とするとき
【数1】


となる3組選択し、これより入出力特性の直線領域を求めた後に、3組の対(R1、Q1)、(R2、Q2)(R3、Q3)を通過した直線と出力値Qが0となる放射量の値を仮想原点とし、これらの点を通る1次関数式を求めていることを特徴とする請求項1の温度情報計測方法。
【請求項3】
前記入出力特性検出工程において求めた入出力特性値が直線的でない領域においては1次関数式からの差を補正値として記憶手段に記憶する記憶工程を有し、
前記計測工程では、直線的でない領域においては、前記計測工程において、前記検出手段で求めた出力値に該記憶手段に記憶した補正値を加えた後に、前記1次関数式より放射量を求めていることを特徴とする請求項2の温度情報計測方法。
【請求項4】
前記算出工程では、前記放射量Rとの対を4組以上求め、入出力特性値が直線領域では最小2乗法を用いて前記1次関数式を求めていることを特徴とする請求項2又は3の温度情報計測方法。
【請求項5】
波長λ1とλ2における放射率または透過率が等しくない場合に、これを補正する手段を有することを特徴とする請求項3の温度情報計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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