説明

温度情報計測方法

【課題】 放電によるプラズマ発光下や化学発光等の外乱光がある場合でも被検体の温度情報を高精度に求めることが温度情報計測方法を得ること。
【解決手段】 3つの波長λ1、λ2、λ3を選択する波長選択工程と、被検体の同一領域から放射される放射量及び外乱光の総合の放射量を波長λ1、λ2、λ3において該検出手段で検出する検出工程と、該検出手段からの出力値より、該3つの波長のうち任意の2つの波長における放射量の比を用いて比温度計算をして該被検体の温度情報を求める式を少なくとも2式作成する温度情報作成工程と、少なくとも2式に対して、該総合の放射量から、任意の放射量を段階的に順次、差し引いて該少なくとも2式より温度情報を演算する演算工程と、該演算工程で求めた2式の温度情報が互いに等しくなるか又は予め設定した許容範囲内の値となったか否かを判断する判断工程と、を利用していること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の温度情報を2色温度法を利用して簡易にかつ迅速に計測するのに好適な温度情報計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より被検体(物体)の温度情報を計測するのに2色温度法(比温度)を利用した計測装置が種々と提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
一般に、物体の放射温度から真温度を知るためには、物体の放射率や測定物体までの透過率等による補正が必要になる。しかしながら放射率は物体により、又測定波長により、その他物体の置かれた環境により種々と異なる値を示すため、それを正確に知ることが極めて困難である。
【0004】
これに対して、2色温度法は、物体から放射される放射量のうちから二つの波長(波長域)における放射を計測し、両者の比を算出して、同じ値を示す黒体の温度をその物体の温度としている。
【0005】
この2色温度法は、両波長における放射率が同値であれば物体の温度を正確に計測することができる。この放射率が同値であるという条件が成り立つ限り、2色温度法は放射率による補正の必要も、又透過率による補正の必要もないという特徴がある。
【特許文献1】特開2001−272278号公報
【特許文献2】特開平05−165534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被検体の温度情報を2色温度法を用いて求める場合、被検体から放射される放射光のみが検出手段に入射すれば、検出手段で得られた信号を用いて直ちに被検体の温度情報を求めることができる。
【0007】
しかしながら多くの場合、被検体以外の物体から放射される放射光(外乱光)が検出手段に入射する場合がある。
【0008】
このような場合には、まず被検体からの熱発光(放射光)がない状態で外乱光の放射量の強さを計測しておく。そして、被検体からの放射光と外乱光が重畳した放射量の強さ(検出値)から、先に取得した外乱光の放射量の強さを差し引いて被検体からの放射量を求めるという処理方法が利用されている。
【0009】
しかしながら外乱光が生ずる原因として、例えば水銀灯の電極の温度や溶接電極温度のような放電現象では、被検体からの放射量と外乱光を分けて計測することが困難である。
【0010】
この結果、被検体の温度情報を精度良く求めることができない場合があった。
【0011】
本発明は、放電によるプラズマ発光下や化学発光等の外乱光がある場合でも被検体の温度情報を高精度に求めることができる温度情報計測方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の温度情報計測方法は、
3つの波長λ1、λ2、λ3を選択する波長選択工程と、
被検体の同一領域から放射される放射量及び外乱光があるときは、その放射量とともに総合の放射量を波長λ1、λ2、λ3において検出手段で検出する検出工程と、
該検出手段からの出力値より、該3つの波長のうち任意の2つの波長における放射量の比を用いて比温度計算をして該被検体の温度情報を求める式を異なった2つの波長の組に関して少なくとも2式作成する温度情報作成工程と、
該温度情報作成工程で作成された少なくとも2式に対して、該総合の放射量から、任意の放射量を段階的に順次、差し引いて該少なくとも2式より温度情報を演算する演算工程と、該演算工程で求めた2式の温度情報が互いに等しくなるか又は予め設定した許容範囲内の値となったか否かを判断する判断工程と、
を利用して、被検体の温度情報を求めることを特徴としている。
【0013】
この他、本発明の温度情報計測方法は、
被検体からの放射率が波長λ1、λ2、λ3において等しく、かつ被検体から撮像装置の検出手段に至るまでの透過率が波長λ1、λ2、λ3で等しくなる3つの波長λ1、λ2、λ3を選択する波長選択工程と、
被検体の同一領域から放射される放射量及び外乱光があるときは、その放射量とともに総合の放射量を波長λ1、λ2、λ3において該検出手段で検出する検出工程と、
該検出手段からの出力値より、該3つの波長のうち任意の2つの波長における放射量の比を用いて比温度計算をして該被検体の温度情報を求める式を異なった2つの波長の組に関して少なくとも2式作成する温度情報作成工程と、
該温度情報作成工程で作成された少なくとも2式に対して、該総合の放射量から、任意の放射量を段階的に順次、差し引いて該少なくとも2式より温度情報を演算する演算工程と、該演算工程で求めた2式の温度情報が互いに等しくなるか又は予め設定した許容範囲内の値となったか否かを判断する判断工程と、
を利用して、被検体の温度情報を求めることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放電によるプラズマ発光下や化学発光等の外乱光がある場合でも被検体の温度情報を高精度に求められる温度情報計測方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の温度情報計測方法では、被検体(物体)の温度情報を計測するのにCCD等のフォトダイオード・アレイ・センサー等を用いたカメラを検出手段として用いる。そして、物体から放射される光束(放射量)として二つの波長における放射量を捕捉し、その比から被検体の温度情報を計測する二色温度計測方法(2色温度法)を用いる。
【0016】
次に、本実施例において被検体の温度情報を計測するときに利用する2色温度法(比温度計測法)の計測原理について説明する。
【0017】
高温度の被検体の計測では、被計測物体(被検体)から放射される放射量の強さを測定することによって、被検体の温度を算出することができる。
【0018】
具体的な計測では、Planckの方程式や、Wienの近似式を拠り所にした放射温度計や輝度温度計(単波長放射温度計)を用いるのが一般的である。しかしながら、被計測物体の放射率が未知な場合や被計測物体と計測装置との間に介在するガラス等の透過率の影響を避けたい場合は、二色温度法(Ratio Temperature)による計測が有効である。二色温度法は、被計測物体から放射される放射量のうち二つの波長における放射量の強さの比から温度を知るものである。波長λにおける放射量Mλは、Wineの近似式からの展開では以下のようになる。
【0019】
【数1】

【0020】
c:第一放射定数=3.741844X10-16[Wm2]
λ :波長 μm
c:第二放射定数=1.438769X10-2[m K]
T :絶対温度(Kelvin)
τ:透過率
ε:放射率
波長λおよびλにおける放射エネルギー(放射量)をM1、M2とすると2つの波長λ、λにおける放射量M、Mの強さの比Rは
【0021】
【数2】

【0022】
となる。
【0023】
ここで、放射率ε1、ε2がほぼ等しくε/ε2=1となり、透過率τ1、τ2がτ1/τ2=1となる場合、この条件を(3)式に適応すると、
【0024】
【数3】

【0025】
となり、2波長の放射量の比Rは、温度Tと関数関係にある。また物体の放射率と、介在物の透過率に影響されないことになる。
【0026】
(4)式を変形すると、
【0027】
【数4】

【0028】
となる。
【0029】
2色温度法では、このときの2波長における放射量Mの比Rを求めることによって、被検体の温度情報Tを計測する方法である。
【0030】
具体的には検出手段で波長λ1、λ2における放射量Mを検出し、検出信号の出力信号Mλ1、Mλ2の比
【0031】
【数5】

【0032】
を用いて(4a)式より被検体の温度情報Taを求めている。
【0033】
即ち、
【0034】
【数6】

【0035】
より温度情報Taを求めている。
【0036】
尚、検出手段の検出感度に波長λ1、λ2において分光特性がなければ、検出手段からの出力信号Mλ1、Mλ2をそのまま用いて(4a)式より真温度Taを求めることができる。
【0037】
検出感度に分光特性がある場合で、分光特性が既知であれば、検出手段からの出力信号Mλ1’、Mλ2’を分光特性に応じて補正すれば良い。
【0038】
このことは、後述する3つの波長λ1、λ2、λ3に基づく放射量を検出手段で検出する場合も同じである。
【0039】
図2は、例として波長450nm、550nmと650nmにおける黒体の温度変化Tによる輝度(放射の強さ)Mの変化を示したものである。
【0040】
放射の強さMは、温度が高くなるに従って急激に増加する。温度T1は両波長の放射の強さ比の逆数と関数関係にある。放射の強さMを測定するセンサー(受光手段)には、入射光に対する高い感度分解能と再現性が求められる。
【0041】
また、センサーの入射光に対する出力特性が線形でない(一次関数の関係にない)場合は、センサー出力から入射光を知るためには複雑な計算が必要なため、センサーの入出力特性には高度な直線性が求められる。
【0042】
被検体の温度分布を求める場合は、センサーを機械的にスキャンすることが基本であるが、高速性が要求される場合はセンサーアレイを使用することになる。可視光域でのセンサーアレイとしては、シリコンやInGaAs半導体などによるフォトダイオード・アレイであるCCDまたはC-MOSセンサーが一般的である。
【0043】
二色温度法では2波長における放射の強さを計測して、先に示したRatio計算式により温度を算出するのであるが、2波長ではなく3波長の放射の強さを計測する場合は、3組のRatio計算が可能となる。先の例で波長450nmにおける放射の強さをB、波長550nmにおける放射の強さをG、波長650nmにおける放射の強さをRとする。このとき、B/G、B/RおよびG/Rから温度を算出でき、得られた温度を各々TB/G、TB/R、TG/Rとすると
T=TB/G=TB/R=TG/R
となり、それぞれの値が真温度を示す。図3はその状況の説明図である。
【0044】
図3の縦軸は放射強度比B/G、B/R、G/Rから算出した温度Taである。
【0045】
検出手段で放射量を計測するとき、被検体以外からの放射エネルギー(外乱光)がノイズ光として検出手段に入射する場合がある。
【0046】
例えば放電灯の電極や溶接・溶断材のように強い外部光(外乱光)が検出手段に入射する場合がある。
【0047】
このとき検出手段で得られる出力信号Mλ1、Mλ2をそのまま用いたのでは真温度を得ることができない。
【0048】
本実施例の温度計測方法は、このときの外乱光の影響を排除し、被検体の真温度を求めることができるものである。
【0049】
具体的には次の各工程を用いている。
【0050】
被検体からの放射率が波長λ1、λ2、λ3において等しく、かつ被検体から撮像装置の検出手段に至るまでの透過率が波長λ1、λ2、λ3で等しくなる3つの波長λ1、λ2、λ3を選択する波長選択工程と、
被検体の同一領域から放射される放射量及び外乱光があるときは、その放射量とともに総合の放射量を波長λ1、λ2、λ3において該検出手段で検出する検出工程と、
該検出手段からの出力値より、該3つの波長のうち任意の2つの波長における放射量の比を用いて比温度計算をして該被検体の温度情報を求める式を異なった2つの波長の組に関して少なくとも2式作成する温度情報作成工程と、該温度情報作成工程で作成された少なくとも2式に対して、該総合の放射量から、任意の放射量を段階的に順次、差し引いて該少なくとも2式より温度情報を演算する演算工程と、該演算工程で求めた2式の温度情報が互いに等しくなるか又は予め設定した許容範囲内の値となったか否かを判断する判断工程と、を利用している。これらの各工程を用いて、被検体の温度情報を求めている。
【0051】
図1は本発明の温度情報計測方法で用いる温度計測システム(温度計測装置)の要部概略図である。
【0052】
温度計測装置は、回転切替バンドパス・フィルター装置11、計測用のCCDカメラ12およびパソコン等の演算手段13を有している。
【0053】
14は被検体(被測定発熱源)である。
【0054】
回転バンドパス・フィルター装置11は、1台のカメラで多波長(本実施例では波長λ1、λ2、λ3)の入射画像を得るためのものである。
【0055】
回転バンドパス・フィルター装置11は被検体14からの放射量のうち主に波長λ1、λ2、λ3の各々の光束が通過する3つの光学フィルター(干渉フィルター)を有し、このうち1つの光学フィルターが光軸上に回動し、位置するような回動機構を有している。
【0056】
回転バンドパス・フィルター装置11はミラーやプリズム等により多波長の入射画像が得られる構成の波長分岐システムであってもよい。
【0057】
カメラ12は撮像素子としてC−MOSを用いても良い。
【0058】
尚、カメラ12は被検体14に関して温度情報(温度分布)を必要としない場合は撮像素子としてフォトダイオードのような単一センサーを用いても良い。
【0059】
本実施例では、被検体(被測発熱源)14からの放射光と外乱光が重畳した光束をバンドパス・フィルター装置11の1つの光学フィルターを通してカメラ12で撮影し、A/D変換された出力信号をパソコン13でキャプチャーしている。
【0060】
例えばメモリ又はハードディスク7に記憶している。
【0061】
続いてバンドパス・フィルター装置11の他の光学フィルターを通してカメラ12で撮影し、同様にして出力信号をパソコン13でキャプチャーする。
【0062】
これを3つの波長λ1、λ2、λ3について行う。そして得られた信号より後述する方法を用いて被検体14の温度情報を求めている。
【0063】
次に本実施例において外乱光の影響を排除して被検体の温度情報を求める方法について説明する。
【0064】
外乱光があると、被測物からの放射量に外部光が重畳する。外乱光のうち波長λ1、λ2における放射エネルギーをΔMλ1、ΔMλ2とする。
【0065】
このとき検出手段で検出される波長λ1、λ2における出力信号は(Mλ1+ΔMλ1)(Mλ2+ΔMλ2)となる。
【0066】
この出力信号の比より温度情報を(4b)式から求めると、
【0067】
【数7】

【0068】
となる。
【0069】
ここでTa≠Tbであり、(4c)式から正しい温度情報Taを求めることができない。
【0070】
ΔMλ1、ΔMλ2は被測物の位置おける検出手段(カメラ)側から見た外乱光の波長λ1、λ2における放射量の強さである。
【0071】
放電灯電極や溶接部位のように一般的に被測物からの外乱光による放射量ΔMλ1、ΔMλ2を単独に測定することは不可能である。(4c)式には未知数がTとΔMλ1、ΔMλ2が存在することになり単独では解くことができない。
【0072】
そこで本実施例では、二色温度計測(Ratio Temperature)を2波長による一組ではなく、3波長による3組を計測し、それより外乱光の影響を排除している。
【0073】
次に本実施例において外乱光の影響を排除して被検体の真温度Taを求める方法を説明する。
【0074】
(イ)被検体から放射される放射量を3つの波長λ1、λ2、λ3について検出する。
3つの波長の選択は、3つの波長λ1、λ2、λ3に関して被検体からの放射率をελ1、ελ2、ελ3が互いに等しく、かつ被検体から検出手段に至る光路の透過率τλ1、τλ2、τλ3が互いに等しい波長とする(波長選択工程)。
【0075】
(ロ)3つの波長λ1、λ2、λ3において被検体から放射される放射量M1、M2、M3を検出手段で検出する(検出工程)。このとき外乱光のうち波長λ1、λ2、λ3における放射量を各々ΔMλ1、ΔMλ2、ΔMλ3とする。
【0076】
外乱光の分光特性は図4に示すものであるとする。
【0077】
そして外乱光の放射量ΔMλ1、ΔMλ2、ΔMλ3は図4に示すように原因となる光源により、その分光特性が既知なものである。
【0078】
ここで外乱光ΔMλ1を基準として、係数kλ2、kλ3を用いて外乱光ΔMλ2、ΔMλ3が、
ΔMλ2=kλ2・ΔMλ1
ΔMλ3=kλ3・ΔMλ1
で表されるものとする。
【0079】
尚、外乱光の分光特性が一様なときは
λ2=kλ3=1
となる。
【0080】
(ハ)検出手段で検出される波長λ1、λ2、λ3における出力信号は各々
λ1+ΔMλ1=Mλ1+ΔMλ1 ・・・・・・・・・・・(4d)
λ2+ΔMλ2=Mλ2+kλ2・ΔMλ1 ・・・・・(4e)
λ3+ΔMλ3=Mλ3+kλ3・ΔMλ1 ・・・・・(4f)
である。
【0081】
2波長の放射量の比より、温度情報を(4b)式より求めると、
【0082】
【数8】

【0083】
となる(温度情報作成工程)。
【0084】
ここで検出手段で検出される放射量は(4d)、(4e)、(4f)で表される量であり、個々の値Mλ1、Mλ2、Mλ3、ΔMλ1を計測することができない。
【0085】
ここで外乱光がなければ、ΔMλ1=0となり、(5a)、(5b)、(5c)式は(4a)式と一致する。
【0086】
又、前述した2色温度法の計測原理より、(5a)、(5b)、(5c)式は、
12=T13=T23
となる。
【0087】
しかしながら外乱光があると(5a)、(5b)、(5c)しきは
12≠T13≠T23
となる。
【0088】
真温度Tを求めるには、未知数ΔMλ1を知る必要があるが、これは計算式が複雑で困難である。
【0089】
そこで本実施例では以下の方法により、真温度Tを容易に求めている。
【0090】
本実施例では、検出手段で検出された3つの波長λ1、λ2、λ3における計測値より(5a)、(5b)、(5c)で求めた温度情報T12、T13、T23を基にして外乱光として放射量が0から−Maまで、負の放射量を適切な段数で段階的に(5a)、(5b)、(5c)に与えて、その都度温度情報Txをコンピュータで計算していく(演算工程)。
【0091】
例えば負の放射量をΔMaとし、(5a)、(5b)、(5c)のΔMλ1の代わりに
ΔMλ1→(ΔMλ1−ΔMa)
を代入する。
【0092】
そして(5a)、(5b)、(5c)式に基づく温度情報を計算する。
【0093】
負の放射量ΔMaを順次増大しながら同様の計算をする。
【0094】
そして(5a)、(5b)、(5c)式が
12=T13=T23
となる放射量Maが外乱光による放射量であり、このとき(5a)、(5b)、(5c)式は(4b)式と一致する。
【0095】
これより被検体の真温度Tを求めることができる。
【0096】
本実施例において、温度情報作成工程では、任意の2つの波長における放射量の比を用いて前記被検体の温度情報を求める式を異なった2つの波長の組に対して3式作成しており、前記演算工程では該温度情報作成工程で作成された3式に対して、前記総合の放射量から、任意の放射量を段階的に順次、差し引いて該3式より温度情報を演算しており、
前記判断工程では、温度情報が互いに等しくなるか又は予め設定した許容範囲内の値となったか否かを判断している。
【0097】
尚、このとき(5a)、(5b)、(5c)式が一致しなくても2式が一致するときを真温度としても良い。
【0098】
例えば、
12=T13 又は T13=T23 又は T12=T23
である。
【0099】
3つの式が一致した条件とすれば真温度を高精度に求めることができる。
【0100】
以上のように本実施例では、外乱光がない場合はΔMλ1=0なので、(4a)式より被検体の真温度Tを知ることができる。
【0101】
又、外乱光がある場合は、(5a)、(5b)、(5c)式の3つの式より得られるT12、T13、T23のうち少なくとも2つの式が等しくなるよう負の外乱光ΔMaを0から逐次増加させていく。そして少なくとも2式が等しくなった時の温度が真温度であることができる。
【0102】
負の外乱光ΔMaを逐次増加させて3式を比較することは手計算では煩雑であるが、コンピュータによれば短時間に容易に実行することができる。
【0103】
またこの関係は3波長に限るものではなく、4以上の波長においても成り立つ。4波長にすれば8組のRatio温度が得られ、8波長にすれば16組のRatio温度が得られる。
【0104】
Ratio計算の波長間隔を短くし、この処理を4波長以上で実行することにより、放射率の変化による誤差を減少することができる他、外乱光に分光特性がある場合は多波長化により、より精度の高い温度が得られる。
【0105】
被検体から放射される放射量を、2つの波長を1組とし、3組以上を選択する。そして2つの波長での放射量の強さを各組毎に検出する。そして2波長での放射量の強さの比から温度を得るとき、前述の方法を用いて、外乱光の影響を排除している。即ち、測定した各放射値から各波長に相当する放射量の数値を逐次加算または減算しながら比温度計算を実行する。そして2つ以上の式より求まる温度値が許容範囲内に達した時の温度を被検物の温度としている。
【0106】
尚、本実施例においては、波長λ1、λ2、λ3において、放射率や透過率が異なっていても良い。このときは外乱光に相当する放射量の値を加算または減算する数値を各波長における対象物の放射率により補正するのが良い。
【0107】
互いに異なる2つの波長を1組としたとき、4組以上用いても良い。そして4組以上の計測波長を持ち、黒体の各波長における放射値の比と一致した時の温度をもってその対象物の温度としても良い。
【0108】
又、4組以上の計測波長を持ち、対象物の分光放射値から計算した放射の強さ比と一致した時の温度をもってその対象物の温度としても良い。
【0109】
以上のように本実施例によれば、CCD等のフォトダイオード・アレイ・センサーを有した撮像装置(カメラ)を検出手段として用い、物体(被検体)から放射される放射量を二つの波長において計測している。そして、その比から温度を知る二色温度計測方法を用いて、物体からの熱放射に、外乱光が重畳してカメラに入射した場合であっても、外乱光の影響を除去して真温度を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明に係る温度計測におけるシステム図
【図2】温度変化に対する輝度の変化の説明図
【図3】温度と放射強度比の説明図
【図4】外乱光と波長との関係の説明図
【符号の説明】
【0111】
11 回転バンドパス・フィルター装置
12 CCDカメラ
13 パソコン
14 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの波長λ1、λ2、λ3を選択する波長選択工程と、
被検体の同一領域から放射される放射量及び外乱光があるときは、その放射量とともに総合の放射量を波長λ1、λ2、λ3において検出手段で検出する検出工程と、
該検出手段からの出力値より、該3つの波長のうち任意の2つの波長における放射量の比を用いて比温度計算をして該被検体の温度情報を求める式を異なった2つの波長の組に関して少なくとも2式作成する温度情報作成工程と、
該温度情報作成工程で作成された少なくとも2式に対して、該総合の放射量から、任意の放射量を段階的に順次、差し引いて該少なくとも2式より温度情報を演算する演算工程と、該演算工程で求めた2式の温度情報が互いに等しくなるか又は予め設定した許容範囲内の値となったか否かを判断する判断工程と、
を利用して、被検体の温度情報を求めることを特徴とする温度情報計測方法。
【請求項2】
被検体の放射率が波長λ1、λ2、λ3において等しく、かつ被検体から撮像装置の検出手段に至るまでの透過率が波長λ1、λ2、λ3で等しくなる3つの波長λ1、λ2、λ3を選択する波長選択工程と、
被検体の同一領域から放射される放射量及び外乱光があるときは、その放射量とともに総合の放射量を波長λ1、λ2、λ3において該検出手段で検出する検出工程と、
該検出手段からの出力値より、該3つの波長のうち任意の2つの波長における放射量の比を用いて比温度計算をして該被検体の温度情報を求める式を異なった2つの波長の組に関して少なくとも2式作成する温度情報作成工程と、
該温度情報作成工程で作成された少なくとも2式に対して、該総合の放射量から、任意の放射量を段階的に順次、差し引いて該少なくとも2式より温度情報を演算する演算工程と、該演算工程で求めた2式の温度情報が互いに等しくなるか又は予め設定した許容範囲内の値となったか否かを判断する判断工程と、
を利用して、被検体の温度情報を求めることを特徴とする温度情報計測方法。
【請求項3】
前記温度情報作成工程では、任意の2つの波長における放射量の比を用いて前記被検体の温度情報を求める式を異なった2つの波長の組に対して3式作成しており、前記演算工程では該温度情報作成工程で作成された3式に対して、前記総合の放射量から、任意の放射量を段階的に順次、差し引いて該3式より温度情報を演算しており、
前記判断工程では、温度情報が互いに等しくなるか又は予め設定した許容範囲内の値となったか否かを判断していることを特徴とする請求項1又は2の温度情報計測方法。
【請求項4】
前記撮像装置は、波長選択可能な光学系と2次元フォトダイオードアレイから成る画像検出機構と、画像検出機構から出力されるアナログ出力をディジタル信号に変換しコンピュータに出力するインターフェース機構と、を有していることを特徴とする請求項1、2又は3の温度情報計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−268106(P2008−268106A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113976(P2007−113976)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(507130934)有限会社三井オプトロニクス (3)
【Fターム(参考)】