説明

温度検出装置および温度検出方法

【課題】製造コストの高騰を招くことなく、温度条件を満たす温度となっている部位を確実かつ容易に特定し得る温度検出装置を提供する。
【解決手段】複数の検出素子が配列されて各検出素子によって検出した温度を示すセンサ信号S1を出力する二次元温度センサ2と、センサ信号S1に基づいて温度分布画像の画像データを生成するデータ生成部(制御部8)とを備えた温度検出装置1であって、画像データを記憶する記憶部3と、予め規定された温度条件を満たす温度を示すセンサ信号S1が出力されたときにそのセンサ信号S1に基づいて生成した画像データを記憶部3に記憶させる記憶制御処理を実行する制御部8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元温度センサからのセンサ信号に基づいて温度分布画像の画像データを生成する温度検出装置および温度検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の温度検出装置として、熱画像(温度分布画像)を表示可能に構成された赤外線放射温度測定装置(以下、「測定装置」ともいう)が実開平5−27636号公報に開示されている。この測定装置では、赤外線検出器から出力された温度信号がアンプによって増幅された後に信号処理回路によって補正処理されて温度データとして高速演算制御部およびメモリに出力される。これに応じて、高速演算制御部が、出力された温度データの最大値、最小値および平均値を演算し、その演算結果と、温度データに基づく熱画像のデータとを表示装置に出力する。これにより、被写体の温度に応じた熱画像と、上記の最大値、最小値および平均値などが表示装置によってリアルタイムに表示される。
【0003】
この場合、この測定装置では、演算した最大値、最小値および平均値等が所定の基準を超えたときに、高速演算制御部が、LED等の点灯や、ブザー等による報知音の出力などを実行して、その旨を報知する(アラームを出力する)。また、この測定装置では、上記のリアルタイム表示に代えて、高速演算制御部が、メモリに記憶されている温度データの最大値、最小値および平均値を演算し、その演算結果と、温度データに基づく熱画像のデータとを表示装置に出力して、熱画像、最大値、最小値および平均値などを任意のタイミングで表示装置に表示させることができるように構成されている。
【特許文献1】特開平5−27636号公報(第5−7頁、第1,2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の測定装置には、以下の問題点がある。すなわち、従来の測定装置では、信号処理回路から順次出力される温度データの最大値、最小値および平均値等が基準温度を超えたときに高速演算制御部によってアラームが出力される構成が採用されている。この場合、この種の測定装置(温度検出装置)では、温度を検出する対象体(被写体)が大きいときや、複数の対象体が相互に離間して広い領域に点在しているときに、装置を例えば手に持って、温度センサ(従来の測定装置における赤外線検出器)を向ける方向を変化させるように装置を移動させることで、対象体の端から他の端まで(或いは、対象物が点在する領域の端から他の端まで)順次観察するといった使用形態が採用されることがある。このような使用形態(熱画像をリアルタイム表示させつつらセンサ部を向ける向きを順次変化させる使用形態)において、従来の測定装置では、異常発熱部位が検出されて、高速演算制御部による演算結果(最大値、最小値および平均値のいずれか)が基準温度を超えたときには、上記したようにアラームが出力される。
【0005】
しかしながら、従来の測定装置では、信号処理回路から順次出力される温度データに基づく熱画像等のリアルタイム表示を実行しつつ、センサ部(赤外線検出器)を向ける向きを変化させているときに、表示装置には、その時点においてセンサ部を向けている部位の熱画像が表示される構成が採用されている。したがって、センサ部を向ける向きを変化させている最中に、高速演算制御部によって異常発熱部位が検出されてアラームが出力されたときには、センサ部が異常発熱部位とは相違する方向に向けられた状態となって、アラーム出力の要因となった異常発熱部位が表示装置の熱画像内に存在しない状態となることがある。このため、従来の測定装置には、センサ部の向きを順次変化させつつ熱画像をリアルタイム表示させるといった使用形態において、基準温度を超える温度が検出されたときにアラームが出力される構成を採用しているにも拘わらず、いずれの部位の温度が基準温度を超えているのかを特定するのが困難となっているという問題点がある。
【0006】
この場合、前述したように、従来の測定装置では、信号処理回路から出力された温度データをメモリに順次記憶させる構成が採用されている。このため、上記の例のようにセンサ部の向きを順次変化させつつ熱画像をリアルタイム表示させている最中にアラームが出力されたときに、メモリに記憶されている温度データを読み出して、熱画像、最大値、最小値および平均値などを表示装置に表示させて、基準温度を超えている部位を特定することが可能となっている。しかしながら、従来の測定装置では、基準温度以下の部位についての温度データを含んで大量の温度データがメモりに記憶されているため、アラームが出力された時点の温度データを見つけ出して所望の熱画像を表示装置に表示させるのが非常に煩雑となっているという問題点がある。また、このように大量の温度データを記憶可能とするために、大容量のメモリを搭載する必要が生じることから、従来の測定装置には、その製造コストの高騰を招いているという問題点もある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストの高騰を招くことなく、温度条件を満たす温度となっている部位を確実かつ容易に特定し得る温度検出装置および温度検出方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の温度検出装置は、複数の検出素子が配列されて当該各検出素子によって検出した温度を示すセンサ信号を出力する二次元温度センサと、当該センサ信号に基づいて温度分布画像の画像データを生成するデータ生成部とを備えた温度検出装置であって、前記画像データを記憶する記憶部と、予め設定された温度条件を満たす前記温度を示す前記センサ信号が出力されたときにそのセンサ信号に基づいて生成された前記画像データを前記記憶部に記憶させる記憶制御処理を実行する制御部とを備えている。この場合、本発明における「予め設定された温度条件を満たす温度」には、「予め設定された設定温度以上の温度」、「予め設定された設定温度を超える温度」、「予め設定された設定温度以下の温度」、「予め設定された設定温度未満の温度」、「予め設定された設定温度範囲内の温度」および「予め設定された設定温度範囲外の温度」などが含まれる。
【0009】
また、請求項2記載の温度検出装置は、請求項1記載の温度検出装置において、前記制御部が、前記各検出素子が配列された温度検出領域における中央部に規定された判定領域内の当該検出素子から前記温度条件を満たす温度を示す前記センサ信号が出力されたときにのみ前記記憶制御処理を実行する。
【0010】
さらに、請求項3記載の温度検出装置は、請求項1または2記載の温度検出装置において、前記温度分布画像を表示する表示部を備え、前記制御部が、予め設定された警告表示開始条件が満たされたときに前記記憶部に記憶されている前記画像データに基づく前記温度分布画像を前記表示部に表示させる。
【0011】
また、請求項4記載の温度検出装置は、請求項1から3のいずれかに記載の温度検出装置において、前記データ生成部が、前記温度条件を満たす温度を検出した前記検出素子の位置に対応する画素を強調して前記画像データを生成する。
【0012】
さらに、請求項5記載の温度検出装置は、請求項4記載の温度検出装置において、前記データ生成部が、前記温度条件を満たす温度を検出した前記検出素子の位置に対応する前記画素の周囲の所定数の画素も強調して前記画像データを生成する。
【0013】
また、請求項6記載の温度検出方法は、複数の検出素子が配列されて当該各検出素子によって検出した温度を示すセンサ信号を出力する二次元温度センサからの当該センサ信号に基づいて温度分布画像の画像データを生成すると共に、予め設定された温度条件を満たす前記温度を示す前記センサ信号が出力されたときにそのセンサ信号に基づいて生成した前記画像データを記憶部に記憶させる温度検出方法。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の温度検出装置および請求項6記載の温度検出方法によれば、複数の検出素子が配列されて各検出素子によって検出した温度を示すセンサ信号を出力する二次元温度センサからのセンサ信号に基づいて温度分布画像の画像データを生成すると共に、予め設定された温度条件を満たす温度を示すセンサ信号が出力されたときにそのセンサ信号に基づいて生成した画像データを記憶部に記憶させる記憶制御処理を実行することにより、いずれかの部位が温度条件を満たす温度なっている温度分布画像を見逃してしまったとしても、記憶部に記憶させた画像データに基づいて、見逃した温度分布画像を表示部に表示させて温度条件を満たす温度となっている部位を確実かつ容易に特定することができる。また、この温度検出装置および温度検出方法によれば、いずれかの検出素子によって検出した温度が温度条件を満たす温度となったときにのみ画像データを記憶部に記憶させる記憶制御処理を実行することにより、信号処理回路から出力される温度データのすべてをメモリに記憶させる構成の従来の測定装置と比較して、記憶部に記憶させる画像データのデータ量が少なくて済む分だけ、少容量のメモリで記憶部を構成することができる結果、温度検出装置の製造コストを十分に低減することができる。また、大量の温度データの中から温度条件を満たす温度となっている部位についての温度データを検索する必要がないため、所望の温度分布画像を短時間で容易に表示部に表示させたり、外部装置に出力したりすることができる。
【0015】
また、請求項2記載の温度検出装置によれば、各検出素子が配列された温度検出領域における中央部に規定された判定領域内の検出素子から温度条件を満たす温度を示すセンサ信号が出力されたときにのみ記憶制御処理を実行することにより、二次元温度センサの向きを変えるようにして温度検出装置を移動させるような使用形態において、各検出素子のうちの端部の検出素子によって検出した温度が温度条件を満たす温度となり、この検出素子に対応する画素(温度分布画像における端部の画素)についての画像データ(いずれの部位が温度条件を満たす温度となっているかの特定が困難な画像データ)が記憶部に記憶される事態を回避して、温度条件を満たす温度となっている部位に対応する画素が温度分布画像の中央部に位置するような画像データを記憶部に記憶させることができる。
【0016】
さらに、請求項3記載の温度検出装置によれば、制御部が、予め設定された警告表示開始条件が満たされたときに記憶部に記憶されている画像データに基づく温度分布画像を表示部に表示させることにより、表示部に表示された温度分布画像を見て、いずれの部位が温度条件を満たす温度となっているかを容易に特定させることができる。
【0017】
また、請求項4記載の温度検出装置によれば、データ生成部が、温度条件を満たす温度を検出した検出素子の位置に対応する画素を強調して画像データを生成することにより、いずれの部位が温度条件を満たす温度となっているかを一層容易に特定させることができる。
【0018】
さらに、請求項5記載の温度検出装置によれば、データ生成部が、温度条件を満たす温度を検出した検出素子の位置に対応する画素の周囲の所定数の画素も強調して画像データを生成することにより、対応する1つの画素のみを強調表示する温度分布画像と比較して、いずれの部位が温度条件を満たす温度となっているかをさらに容易に特定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る温度検出装置および温度検出方法の最良の形態について説明する。
【0020】
最初に、二次元放射温度計1の構成について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1に示す二次元放射温度計1は、本発明に係る温度検出装置の一例であって、センサ部2、記憶部3、操作部4、表示部5、ブザー6、データ出力部7および制御部8を備えて、本発明に係る温度検出方法に従って温度検出対象体の温度を検出可能に構成されている。センサ部2は、本発明における二次元温度センサの一例であって、図2に示すように、検出素子EAa〜EPp(以下、区別しないときには「検出素子E」ともいう)が配列されて各検出素子Eによって検出した温度を示すセンサ信号S1を制御部8に出力する。なお、同図では、本発明についての理解を容易とするために、縦方向に16列、横方向に16列の合計256個の検出素子Eを有するセンサ部2を図示しているが、実際には、一例として、縦方向に64列、横方向に64列の合計4096個の検出素子Eが配列されてセンサ部2が構成されている。
【0022】
この場合、図2に示すように、この二次元放射温度計1では、一例として、検出素子EAa〜EPpが配列された温度検出領域における中央部に判定領域Aを規定し、この判定領域A内の検出素子E(同図の例では、検出素子ECc〜ENnの144個)のいずれかが設定値を超える温度を検出した旨を示すセンサ信号S1を出力したときに、警告音が発せられると共に、そのセンサ信号S1に基づいて生成される画像データD1が記憶部3に記憶される構成が採用されている。なお、この二次元放射温度計1では、利用者が上記の判定領域Aを任意の大きさに設定することが可能に構成されている。この場合、検出素子EAa〜EPpのすべてに占める判定領域Aの大きさの割合が50%以上90%以下の範囲内となるように判定領域Aの大きさを規定するのが好ましい。
【0023】
記憶部3は、本発明における温度条件を特定可能な基準値データD0を記憶すると共に、後述するように、制御部8によって生成される画像データD1を記憶する。操作部4は、後述する温度測定処理10(図3参照)の開始/終了を指示するスタート/ストップスイッチ、温度条件を設定するためのテンキー、温度条件を満たす温度(一例として、設定温度以上の温度)が検出された部位を含む温度分布画像の表示を開始するための表示開始スイッチ、およびその温度分布画像の表示を終了させるための表示終了スイッチ(リセットスイッチ)などの各種操作スイッチを備え(いずれも図示せず)、スイッチ操作に応じた操作信号S2を制御部8に出力する。表示部5は、制御部8によって生成された画像データD1に基づく温度分布画像P1,P2(図4,5参照)を表示する。ブザー6は、制御部8から出力される制御信号S3に応じて警告音(ブザー音)を出力する。データ出力部7は、制御部8の制御に従って記憶部3に記憶されている画像データD1を外部装置9(一例として、パーソナルコンピュータや、データ回収器など)に出力する。
【0024】
制御部8は、二次元放射温度計1の各部を総括的に制御する。この制御部8は、本発明におけるデータ生成部および本発明における制御部に相当し、図3に示す温度測定処理10を実行して、センサ部2から出力されたセンサ信号S1に基づいて上記の温度分布画像P1,P2の画像データD1を生成して表示部5に出力する。また、制御部8は、操作部4のテンキー操作によって設定された温度条件を基準値データD0として記憶部3に記憶させると共に、記憶部3に記憶されている基準値データD0に基づいて特定される温度条件を満たす温度(設定温度を超える温度)のセンサ信号S1がセンサ部2から出力されたときに、そのセンサ信号S1に基づいて生成する画像データD1を表示部5および記憶部3の双方に出力する(画像データD1に基づく温度分布画像P2の表示、および画像データD1を記憶部3に記憶させる記憶制御処理の実行)と共に、ブザー6に制御信号S3を出力して警告音を出力させる。この場合、この二次元放射温度計1では、制御部8が、センサ部2から出力されるセンサ信号S1に対して所定時間間隔で平均化処理を実行することで、一例として、±0.5℃程度の範囲内での小刻みな温度変化を相殺する構成が採用されている。
【0025】
次に、二次元放射温度計1の使用方法について、図面を参照して説明する。なお、操作部4のテンキー操作によって温度条件が「200℃以上」に予め設定(規定)されているものとして、以下、説明する。
【0026】
まず、センサ部2を温度検出の対象体に向けた状態において、操作部4のスタート/ストップスイッチを操作する。この際には、制御部8が操作部4からの操作信号S2に応じて、センサ部2に対してセンサ信号S1の出力を開始させる(温度検出処理を開始させる)と共に、図3に示す温度測定処理10を開始する。この温度測定処理10では、制御部8は、後述するようにして操作部4の表示開始スイッチが操作されていない(警告表示開始操作が行われていない)と判別し(ステップ11)、センサ部2から出力されるセンサ信号S1と記憶部3に記憶されている基準値データD0とに基づき、前述した判定領域A内の各検出素子Eによって検出した温度が設定温度以上(この例では、200℃以上)となっているか否かを判別する(ステップ12)。
【0027】
この際に、センサ部2を向けた方向に設定温度以上の発熱部位が存在しないときには、制御部8は、センサ部2から出力されたセンサ信号S1に基づいて画像データD1を生成すると共に(ステップ13)、生成したセンサ信号S1を表示部5に出力する。これにより、図4に示すように、センサ部2によって検出された温度を示す温度分布画像P1が表示部5に表示される(ステップ14)。なお、同図および後に参照する図5〜9における画素PAa〜PPp(以下、区別しないときには「画素P」ともいう)は、センサ部2の各検出素子EAa〜EPpにそれぞれ対応する画素を示している。この場合、各図において、白色で示している画素Pは、設定温度未満であって比較的低温であることを示し、左下がりの斜線で示している画素Pは、設定温度未満であって比較的高温であることを示し、網線で示している画素P(図5等参照)は、設定温度以上の温度であることを示している。また、図4,5,8,9における領域Apは、前述したようにセンサ部2に対して規定された判定領域A内の各検出素子Eにそれぞれ対応する各画素の領域(判定領域Aに対応する画素領域)を表している。
【0028】
一方、センサ部2を向けた方向に設定温度以上の発熱部位が存在するときには、制御部8は、センサ部2から出力されるセンサ信号S1と記憶部3に記憶されている基準値データD0とに基づき、判定領域A内の所定の検出素子E(一例として、図2に示す検出素子EHi)によって検出した温度が温度条件を満たす温度(設定温度以上の温度)となっていると判別する(本発明における「予め設定された警告表示開始条件」が満たされた状態の一例:ステップ12)。次いで、制御部8は、センサ部2から出力されたセンサ信号S1に基づいて画像データD1を生成する(ステップ15)。この際に、制御部8は、設定温度以上の温度を検出した検出素子E(この例では、検出素子EHi)の位置に対応する画素P(この例では、画素PHi)と、その周囲の8つの画素P(本発明における「所定数の画素」が8つの例:この例では、画素PGh〜PGj,PHh,PHj,PIh〜PIjの8つ)とを強調すべく、これら9つの画素Pが点滅表示されるような画像データD1を生成する。
【0029】
次いで、制御部8は、生成した画像データD1を表示部5に出力して、図5に示すように、温度分布画像P2を表示させると共に(ステップ16)、ブザー6に対して制御信号S3を出力して警告音を出力させる(ステップ17)。これにより、表示部5に表示された温度分布画像P2を見たり、ブザー6からの警告音を聞いた利用者は、センサ部2を向けている方向に設定温度を超える発熱部位が存在することを認識する。続いて、制御部8は、生成した画像データD1(図5に示す温度分布画像P2の画像データ)を記憶部3に記憶させる(ステップ18)。この後、制御部8は、判定領域A内の検出素子Eによって検出した温度が設定温度以上か否かに応じて、図4,5に示す温度分布画像P1,P2のいずれかを表示部5に表示させる処理(ステップ14,16)を継続して実行する。
【0030】
この場合、上記の例において、利用者が、ブザー6からの警告音を聞いたものの、表示部5に表示された温度分布画像P2を見逃してしまったときには、操作部4の表示開始スイッチを操作する。この際には、制御部8は、操作部4からの操作信号S2に基づき、表示開始スイッチが操作された(警告表示開始操作が行われた)と判別し(本発明における「警告表示開始条件」が満たされた状態の他の一例:ステップ11)、記憶部3に画像データD1が記憶されているか否かを判別する(ステップ19)。この際に、例えば、上記の表示開始スイッチの操作時点まで設定温度以上の温度が検出されなかったときなどは、記憶部3に画像データD1が記憶されていないため、制御部8は、上記のステップ11以降の処理を実行する。
【0031】
一方、記憶部3に画像データD1が記憶されているときには、制御部8は、記憶部3から画像データD1を読み出して表示部5に出力することで、図5に示すように、温度分布画像P2を表示させる(ステップ20)。これにより、温度分布画像P2を見逃してしまった利用者に対して、記憶部3に記憶されている画像データD1に基づく温度分布画像P2を参照させることが可能となる。この後、制御部8は、操作部4のリセットスイッチが操作されたか否かを監視して(ステップ21)、リセットスイッチが操作されたときには、記憶部3内の画像データD1を消去して(ステップ22)、上記のステップ11以降の処理を実行する。これにより、前述したようにして、温度分布画像P1の表示(ステップ14)または温度分布画像P2の表示(ステップ16)が繰り返して実行される。
【0032】
この二次元放射温度計1では、前述したように、予め設定した判定領域A内の検出素子Eによって検出した温度が温度条件を満たす温度(この例では、設定温度以上の温度(200°以上の温度))のときに、ブザー6から警告音が出力されると共に、温度分布画像P2の画像データD1が記憶部3に記憶される構成が採用されている。この場合、上記の判定領域Aを規定することなく、検出素子EAa〜EPpのいずれかによって検出した温度が温度条件を満たす温度となったときに、ブザー6から警告音を出力させると共に温度分布画像P2の画像データD1を記憶部3に記憶させる構成を採用したときには、二次元放射温度計1を例えば手に持って使用する際に、温度条件を満たしていない部位(この例では、設定温度を超える発熱部位)の特定がやや困難となるおそれがある。
【0033】
具体的には、図5に示す温度分布画像P2によって示されている発熱部位に対して、二次元放射温度計1を右側から左側に向かって水平に移動させたときには、例えば、センサ部2における最も左側の列に位置する検出素子E(一例として検出素子EHa)によって検出した温度が温度条件を満たす温度(設定温度以上の温度)になったときに、ブザー6から警告音が出力されると共にその時点においてセンサ部2から出力されているセンサ信号S1に基づく画像データD1が記憶部3に記憶される。この結果、図6に示すように、上記の例における検出素子EHaに対応する画素PHaとその周囲の画素Pとが強調された温度分布画像P2xが表示部5に表示される結果、発熱部位の左側が温度分布画像P2x内に存在しないことで、その発熱部位がいずれの場所を示しているのかを温度分布画像P2xに基づいて特定するのが困難となる。
【0034】
同様にして、図5に示す温度分布画像P2によって示されている発熱部位に対して、二次元放射温度計1を下側から上側に向かって垂直に移動させたときには、例えば、センサ部2における最も下側の列に位置する検出素子E(一例として検出素子EPi)によって検出した温度が温度条件を満たす温度(設定温度以上の温度)になったときに、ブザー6から警告音が出力されると共にその時点においてセンサ部2から出力されているセンサ信号S1に基づく画像データD1が記憶部3に記憶される。この結果、図7に示すように、上記の例における検出素子EPiに対応する画素PPiとその周囲の画素Pとが強調された温度分布画像P2xが表示部5に表示される結果、発熱部位の下側が温度分布画像P2x内に存在しないことで、その発熱部位がいずれの場所を示しているのかを温度分布画像P2xに基づいて特定するのが困難となる。
【0035】
これに対して、この二次元放射温度計1では、図5に示す温度分布画像P2によって示されている発熱部位に対して、二次元放射温度計1を右側から左側に向かって水平に移動させたときに、例えば、センサ部2における判定領域A内の最も左側の列に位置する検出素子E(この例では、検出素子EHc)によって検出した温度が温度条件を満たす温度(設定温度以上の温度)になったときに、ブザー6から警告音が出力されると共にその時点においてセンサ部2から出力されているセンサ信号S1に基づく画像データD1が記憶部3に記憶される。この結果、図8に示すように、上記の例における検出素子EHcに対応する画素PHcとその周囲の画素Pとが強調されると共に発熱部位の大半を含んだ温度分布画像P2が表示部5に表示される結果、その発熱部位がいずれの場所を示しているのかを容易に特定することが可能となる。
【0036】
また、この二次元放射温度計1では、図5に示す温度分布画像P2によって示されている発熱部位に対して、二次元放射温度計1を下側から上側に向かって垂直に移動させたときに、例えば、センサ部2における判定領域A内の最も下側の列に位置する検出素子E(この例では、検出素子ENi)によって検出した温度が温度条件を満たす温度(設定温度以上の温度)になったときに、ブザー6から警告音が出力されると共にその時点においてセンサ部2から出力されているセンサ信号S1に基づく画像データD1が記憶部3に記憶される。この結果、図9に示すように、上記の例における検出素子ENiに対応する画素PNiとその周囲の画素Pとが強調されると共に発熱部位の大半を含んだ温度分布画像P2が表示部5に表示される結果、その発熱部位がいずれの場所を示しているのかを容易に特定することが可能となる。
【0037】
一方、この二次元放射温度計1では、上記のような警告表示用の温度分布画像P2の表示部5への表示に代えて、またはその表示と共に、記憶部3に記憶されている画像データD1を外部装置9に出力することが可能に構成されている。具体的には、上記の温度測定処理10におけるステップ17においてブザー6から警告音が出力された際に、操作部4の所定のスイッチを操作することで、画像データD1(警告表示用の温度分布画像P2のデータ)の出力を指示する。この際に、制御部8は、操作部4からの操作信号S2の出力に応じて、記憶部3から画像データD1を読み出し、読み出した画像データD1を外部装置9にデータ出力部7を介して出力する。これにより、外部装置9(一例として、パーソナルコンピュータ)によって、二次元放射温度計1から出力された画像データD1に基づく温度分布画像P2の表示が可能となる。
【0038】
このように、この二次元放射温度計1および二次元放射温度計による温度検出方法によれば、複数の検出素子Eが配列されて各検出素子Eによって検出した温度を示すセンサ信号S1を出力するセンサ部2からのセンサ信号S1に基づいて温度分布画像P1,P2の画像データD1を生成すると共に、予め設定された温度条件を満たす温度(この例では、設定温度以上の温度)を示すセンサ信号S1が出力されたときにそのセンサ信号S1に基づいて生成した画像データD1を記憶部3に記憶させる記憶制御処理を実行することにより、いずれかの部位が温度条件を満たす温度となっている温度分布画像P2を見逃してしまったとしても、記憶部3に記憶させた画像データD1に基づいて、見逃した温度分布画像P2を表示部5に表示させて温度条件を満たす温度となっている発熱部位を確実かつ容易に特定することができる。また、この二次元放射温度計1および二次元放射温度計による温度検出方法によれば、いずれかの検出素子Eによって検出した温度が温度条件を満たす温度となったときにのみ画像データD1を記憶部3に記憶させる記憶制御処理を実行することにより、信号処理回路から出力される温度データのすべてをメモリに記憶させる構成の従来の測定装置と比較して、記憶部3に記憶させる画像データD1のデータ量が少なくて済む分だけ、少容量のメモリで記憶部3を構成することができる結果、二次元放射温度計1の製造コストを十分に低減することができる。また、大量の温度データの中から異常発熱部位についての温度データを検索する必要がないため、所望の温度分布画像P2を短時間で容易に表示部5に表示させたり、外部装置9に出力したりすることができる。
【0039】
また、この二次元放射温度計1によれば、各検出素子Eが配列された温度検出領域における中央部に規定された判定領域A内の検出素子Eから温度条件を満たす温度(設定温度以上の温度)を示すセンサ信号S1が出力されたときにのみ本発明における記憶制御処理を実行することにより、センサ部2の向きを変えるようにして二次元放射温度計1を移動させるような使用形態において、各検出素子Eのうちの端部の検出素子Eによって検出した温度が温度条件を満たす温度となり、この検出素子Eに対応する画素P(温度分布画像P2における端部の画素P)についての画像データD1(いずれの部位が異常発熱しているかの特定が困難な画像データD1)が記憶部3に記憶される事態を回避して、異常発熱部位に対応する画素Pが温度分布画像P2の中央部に位置するような画像データD1を記憶部3に記憶させることができる。
【0040】
さらに、この二次元放射温度計1によれば、制御部8が、予め設定された警告表示開始条件が満たされたときに記憶部3に記憶されている画像データD1に基づく温度分布画像P2を表示部5に表示させることにより、表示部5に表示された温度分布画像P2を見て、いずれの部位が異常発熱しているかを容易に特定させることができる。
【0041】
また、この二次元放射温度計1によれば、制御部8(本発明におけるデータ生成部)が、温度条件を満たす温度(設定温度以上の温度)を検出した検出素子Eの位置に対応する画素Pを強調して画像データD1を生成することにより、いずれの部位が異常発熱しているかを一層容易に特定させることができる。
【0042】
さらに、この二次元放射温度計1によれば、制御部8(本発明におけるデータ生成部)が、温度条件を満たす温度(設定温度以上の温度)を検出した検出素子Eの位置に対応する画素Pの周囲の所定数の画素P(この例では、周囲の8個の画素P)も強調して画像データD1を生成することにより、対応する1つの画素Pのみを強調表示する温度分布画像と比較して、いずれの部位が異常発熱しているかをさらに容易に特定させることができる。
【0043】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、本発明における「予め設定された温度条件を満たす温度」は、上記した「予め設定された設定温度以上の温度」に限定されない。この場合、本発明における「予め設定された温度条件を満たす温度」として「予め設定された設定温度を超える温度」を示すセンサ信号S1が出力されたときにそのセンサ信号S1に基づいて生成した画像データD1を記憶部3に記憶させる記憶制御処理を実行する構成を採用することにより、上記の二次元放射温度計1および二次元放射温度計による温度検出方法と同様にして、温度条件を満たす温度となっている発熱部位を確実かつ容易に特定することができる。
【0044】
また、本発明における「予め設定された温度条件を満たす温度」として「予め設定された設定温度以下の温度」または「予め設定された設定温度未満の温度」を示すセンサ信号S1が出力されたときにそのセンサ信号S1に基づいて生成した画像データD1を記憶部3に記憶させる記憶制御処理を実行する構成を採用することにより、例えば、稼働中であるべき設備が停止していることによって設定温度まで温度上昇していないときに、その未稼働の設備を確実かつ容易に特定することができる。さらに、本発明における「予め設定された温度条件を満たす温度」として「予め設定された設定温度範囲内の温度」を示すセンサ信号S1が出力されたときにそのセンサ信号S1に基づいて生成した画像データD1を記憶部3に記憶させる記憶制御処理を実行する構成を採用することにより、温度条件を満たす温度となっている発熱部位や、正常稼働の設備を確実かつ容易に特定することができる。また、本発明における「予め設定された温度条件を満たす温度」として「予め設定された設定温度範囲外の温度」を示すセンサ信号S1が出力されたときにそのセンサ信号S1に基づいて生成した画像データD1を記憶部3に記憶させる記憶制御処理を実行する構成を採用することにより、高温異常および低温異常の双方を確実かつ容易に特定することができる。
【0045】
また、上記の二次元放射温度計1では、画像データD1の記憶部3への記憶が完了した状態において操作部4の表示開始スイッチを操作することで、その画像データD1に基づく温度分布画像P2を表示部5に表示させ、リセットスイッチを操作するまで、その状態を維持する構成を採用しているが、一例として、画像データD1の記憶と平行して表示部5に温度分布画像P2を表示させ、リセットスイッチを操作するまで温度分布画像P2を表示させた状態を維持する構成を採用することができる。さらに、温度条件を満たす温度(例えば、設定温度以上の温度)を検出した検出素子Eの位置に対応する画素Pと、その周囲の8つの画素Pとを強調すべく、これら9つの画素Pが点滅表示されるような画像データD1を生成する例について説明したが、これらの画素Pを強調する方法は、点滅表示に限定されるものではなく、例えば、他の画素Pとは相違する表示色で表示させることで、上記の各画素Pを強調する方法を採用することができる。また、温度条件を満たす温度(設定温度以上の温度)を検出した検出素子Eの位置に対応する画素Pのみを強調させてもよいのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】二次元放射温度計1の構成を示すブロック図である。
【図2】センサ部2の平面図である。
【図3】温度測定処理10のフローチャートである。
【図4】二次元放射温度計1によって通常状態において表示される温度分布画像P1の一例を示す表示画面図である。
【図5】二次元放射温度計1によって警告時に表示される温度分布画像P2の一例を示す表示画面図である。
【図6】他の二次元放射温度計によって警告時に表示される温度分布画像P2xの一例を示す表示画面図である。
【図7】他の二次元放射温度計によって警告時に表示される温度分布画像P2xの他の一例を示す表示画面図である。
【図8】二次元放射温度計1によって警告時に表示される温度分布画像P2の他の一例を示す表示画面図である。
【図9】二次元放射温度計1によって警告時に表示される温度分布画像P2のさらに他の一例を示す表示画面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 二次元放射温度計
2 センサ部
3 記憶部
4 操作部
5 表示部
6 ブザー
7 データ出力部
8 制御部
9 外部装置
10 温度測定処理
A 判定領域
Ap 領域
D0 基準値データ
D1 画像データ
P1,P2,P2x 温度分布画像
EAa〜EPp 検出素子
PAa〜PPp 画素
S1 センサ信号
S2 操作信号
S3 制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出素子が配列されて当該各検出素子によって検出した温度を示すセンサ信号を出力する二次元温度センサと、当該センサ信号に基づいて温度分布画像の画像データを生成するデータ生成部とを備えた温度検出装置であって、
前記画像データを記憶する記憶部と、
予め設定された温度条件を満たす前記温度を示す前記センサ信号が出力されたときにそのセンサ信号に基づいて生成された前記画像データを前記記憶部に記憶させる記憶制御処理を実行する制御部とを備えている温度検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記各検出素子が配列された温度検出領域における中央部に規定された判定領域内の当該検出素子から前記温度条件を満たす温度を示す前記センサ信号が出力されたときにのみ前記記憶制御処理を実行する請求項1記載の温度検出装置。
【請求項3】
前記温度分布画像を表示する表示部を備え、
前記制御部は、予め設定された警告表示開始条件が満たされたときに前記記憶部に記憶されている前記画像データに基づく前記温度分布画像を前記表示部に表示させる請求項1または2記載の温度検出装置。
【請求項4】
前記データ生成部は、前記温度条件を満たす温度を検出した前記検出素子の位置に対応する画素を強調して前記画像データを生成する請求項1から3のいずれかに記載の温度検出装置。
【請求項5】
前記データ生成部は、前記温度条件を満たす温度を検出した前記検出素子の位置に対応する前記画素の周囲の所定数の画素も強調して前記画像データを生成する請求項4記載の温度検出装置。
【請求項6】
複数の検出素子が配列されて当該各検出素子によって検出した温度を示すセンサ信号を出力する二次元温度センサからの当該センサ信号に基づいて温度分布画像の画像データを生成すると共に、予め設定された温度条件を満たす前記温度を示す前記センサ信号が出力されたときにそのセンサ信号に基づいて生成した前記画像データを記憶部に記憶させる温度検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−63411(P2009−63411A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231270(P2007−231270)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】