説明

温度測定方法および温度測定装置

【課題】こてはんだ付けの際の温度を正確に測定することができる温度測定方法と、温度測定装置とを提供する。
【解決手段】温度測定装置50では、こて先めっき7bとリードめっき6bとを熱電対として、接触部分12において発生する起電力を測定することによって、接触部分12の温度が算出される。起電力は電圧計10によって測定され、接触部分12の温度は、電圧値に基づいて算出される。こて先めっき7bは、鉄(Fe)からなり、リードめっき6bは、スズ(Sn)からなる。こて先めっき7bと電圧計10とは、鉄(Fe)から形成された第1の導線8によって電気的に接続され、リード線6と電圧計10とは、それぞれスズ(Sn)から形成されたコネクタ部4と第2の導線9とによって電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定方法および温度測定装置に関し、特に、はんだこてと糸はんだによる、こてはんだ付けの際の温度を測定する温度測定方法と、それに用いられる温度測定装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
母材を溶接する手法の一つに、はんだを用いて溶接するこてはんだ付けがある。こてはんだ付けでは、信頼性の高いはんだ付けを行うために、はんだ付けの際の温度を把握することが重要とされる。こてはんだ付けの際の温度を測定する手法として、一般的に、所定の箇所に熱電対を固定して温度を測定する手法が知られている。
【0003】
ここで、こてはんだ付けとして、プリント配線板にリード線をこてはんだ付けする場合について説明する。プリント配線板として、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させた基材が用いられる。その基材の所定の位置に、リード線をこてはんだ付けするスルーホールが形成されている。スルーホールは、基材に貫通孔を形成し、その貫通孔の側壁(面)を銅めっきの導電層によって被覆することによって形成されている。また、スルーホールの周辺には、銅めっきの導電層に電気的に接続されるランドが形成されている。
【0004】
リード線のこてはんだ付けは次のように行われる。まず、リード線をスルーホールに挿通させる。次に、こて先のこて先めっきをリード線のリードめっきとランドとに接触させて、リード線とランドとを加熱する。次に、ランドまたはリードめっきへ糸はんだを供給して糸はんだを溶融し、スルーホール内にはんだを充填する。その後、はんだを冷却することによって、リード線がプリント基板にはんだ付けされる。
【0005】
この一連のこてはんだ付けの作業において、熱電対を固定する手法として、テープで貼り付ける手法、接着剤にて接着する手法、あるいは、高温はんだを用いる手法がある。まず、テープで熱電対を固定する手法では、熱電対を容易に固定できるという利点があるものの、温度の測定中にテープが剥がれて熱電対が外れてしまい、温度測定を安定に行なうことができないことがある。
【0006】
また、接着剤によって熱電対を固定する手法では、接着剤として、一般に樹脂系の接着剤が使用される。ところが、樹脂は熱伝導性が比較的低いため、そのような樹脂系の接着剤が熱電対と測定対象物との間に入り込むと、温度を正確に測定できないことがある。
【0007】
そして、高温はんだを用いる手法では、テープにて熱電対を固定する手法および接着剤にて熱電対を固定する手法と比べると、金属材料を用いることで熱伝導性が良好であり、熱電対を確実に固定することができる。ところが、熱電対を測定対象箇所に高温はんだにて固定する作業はきわめて難しく、作業に熟練を要する。
【0008】
このような問題点を解消する手法として、特許文献1では、熱電対を表面に設けた金属リングをはんだこてのこて先に装着して、こての先の温度を検知する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−236056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した手法では次のような問題点があった。こてはんだ付けの際の温度測定は、こて先のこて先めっきとリード線のリードめっきとの接触部分の温度を正確に測定することが求められる。特許文献1に記載された手法では、熱電対を表面に設けた金属リングをはんだこてのこて先に装着することによってこて先の温度を検知しているものの、当該接触部分の温度を正確に測定するという点では十分ではなく難しいという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、こてはんだ付けの際の温度を正確に測定することができる温度測定方法を提供することであり、他の目的は、そのような温度測定に用いられる温度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る温度測定方法は、こてはんだ付けによってリード線を所定の基材にはんだ付けする際の温度測定方法であって、以下のステップを備えている。互いに接触するはんだこてのこて先の部分とリード線の部分とを熱電対として、こて先とリード線との接触部分において発生する起電力を測定する。測定された起電力に基づいて、接触部分の温度を算出する。
【0013】
本発明に係る温度測定装置は、こてはんだ付けによってリード線を所定の基材にはんだ付けする際の温度を測定するための温度測定装置であって、電圧測定部と温度算出部とを備えている。電圧測定部は、互いに接触するはんだこてのこて先の部分とリード線の部分とを熱電対として、こて先とリード線との接触部分において発生する起電力を測定する。温度算出部は、測定された起電力に基づいて、接触部分の温度を算出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る温度測定方法によれば、互いに接触するはんだこてのこて先の部分とリード線の部分とを熱電対として、その接触部分において発生する起電力を測定することで、こて先とリード線との接触部分の温度をより正確に求めることができる。
【0015】
本発明に係る温度測定装置によれば、電圧測定部において、互いに接触するはんだこてのこて先の部分とリード線の部分とを熱電対として、その接触部分において発生する起電力が測定され、温度算出部において、その測定された起電力に基づいて温度が算出される。これにより、こて先とリード線との接触部分の温度をより正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る温度測定装置を示す、一部断面を含む側面図である。
【図2】同実施の形態において、温度測定装置によるこてはんだ付けの際の温度測定方法を説明するための一工程を示す、一部断面を含む側面図である。
【図3】同実施の形態において、図2に示すステップの後に行われるステップを示す、一部断面を含む側面図である。
【図4】同実施の形態において、図3に示すステップの後に行われるステップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る温度測定装置として、図1に示すように、プリント配線板1のスルーホール2に挿通されたリード線6を、こてはんだ付けによってランド3にはんだ付けする際の温度を測定する温度測定装置50について説明する。
【0018】
温度測定装置50では、互いに接触する、こて先めっき7bとリードめっき6bとを熱電対として、こて先めっき7bとリードめっき6bとの接触部分12において発生する起電力を測定することによって、接触部分12の温度が算出される。起電力を測定するために電圧計10が設けられ、測定された電圧値に基づいて接触部分12の温度を算出するために温度算出部11が設けられている。また、リード線6を下方から支持するコネクタ部4が設けられている。
【0019】
こて先めっき7bは、たとえば、鉄(Fe)からなり、はんだこてのこて先7のこて先本体7aの表面を覆うように形成されている。こて先本体7aは、たとえば、銅(Cu)から形成されている。リードめっき6bは、たとえば、スズ(Sn)からなり、リード線6のリード線本体6aの表面を覆うように形成されている。こて先めっき7bとリードめっき6bとを熱電対として起電力を測定するために、こて先めっき7bと電圧計10とを、こて先めっき7bと同じ材料の部材によって電気的に接続するとともに、リードめっき6bと電圧計10とを、リードめっき6bと同じ材料の部材によって電気的に接続している。
【0020】
本実施の形態に係る温度測定装置50では、こて先めっき7bと電圧計10とは第1の導線8によって電気的に接続され、第1の導線8は鉄(Fe)から形成されている。一方、リード線6と電圧計10とは、リード線6の下端部に装着されるコネクタ部4と第2の導線9とによって電気的に接続され、リードめっき6bに接触するコネクタ部4の装着部4aと第2の導線9はそれぞれスズ(Sn)から形成されている。
【0021】
次に、上述した温度測定装置50を用いて、リード線6をプリント配線板1にはんだ付けする際の温度を測定する方法について説明する。図2に示すように、リード線6がはんだ付けされるプリント配線板1では、プリント配線板1として、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させた基材が用いられている。プリント配線板1における所定の位置には、プリント配線板1を貫通する貫通孔の側壁に銅めっき層の導電層を被覆したスルーホール2が形成されている。スルーホール2の周辺にはランド3が形成されている。
【0022】
まず、はんだ付けすべきリード線6を所定のスルーホール2に挿通し、リード線6の下端部をコネクタ部4によって下方から支持する。次に、はんだこてのこて先7を、リード線6とランド3とに接触させてこて先7の熱を伝導させ、リード線6とランド3とを加熱する。そして、互いに接触するこて先めっき7bとリードめっき6bとを熱電対として、そのこて先めっき7bとリードめっき6bとの接触部分12に発生する熱起電力を、電圧計10によって測定する。
【0023】
このとき、温度測定装置50では、こて先めっき7bから電圧計10に至る電流経路が、こて先めっき7bと同じ材料の部材(第1の導線8)によって形成され、また、リードめっき6bから電圧計10に至る電流経路が、リードめっき6bと同じ材料の部材(コネクタ部4の表面部分4aおよび第2の導線9)によって形成されている。これにより、こて先めっき7bとリードめっき6bとが互いに異種金属として接触する接触部分12に発生する熱起電力をより正確に測定することができる。
【0024】
次に、温度算出部11において、電圧計10によって測定された電圧値と、あらかじめ取得された電圧値と温度との関係とに基づいて、接触部分12の温度が算出される。次に、図3に示すように、算出される温度が所定の温度(たとえば、360℃)に達した状態で、糸はんだ15を接触部分12に供給する。糸はんだ15として、たとえば、一般的な鉛フリーはんだであるSn−Ag−Cu系の糸はんだが使用される。また、糸はんだに含まれるフラックスとしては、標準的なRMA(Mildly Activated Rosin base)タイプのものが使用される。
【0025】
供給された糸はんだ15は、所定の温度に達した接触部分12の熱によって溶融する。溶融したはんだは、毛細管現象によってリード線6とスルーホール2との隙間に入り込み、はんだが隙間に充填される。その後、図4に示すように、はんだこてとコネクタ部を外してプリント配線板1を冷却することによって溶融したはんだが固化し、リード線6がはんだ16によってプリント配線板1のランド3にはんだ付けされる。こうして、リード線6のプリント配線板1へのはんだ付けの一連の作業が完了する。
【0026】
上述した温度測定装置を用いたはんだ付けの際の温度測定方法では、従来の手法と比較して次のような効果が得られる。
【0027】
リード線のプリント配線場へのはんだ付け作業において、従来の手法では、熱電対を表面に設けた金属リングをはんだこてのこて先に装着することによってこて先の温度を検知している。このため、こて先とリード線とが互いに接触する部分の温度を測定するには限界があった。これに対して、上述した温度測定装置を用いたはんだ付けでは、こて先めっき7bから電圧計10に至る電流経路を、こて先めっき7bと同じ材料の部材(第1の導線8)によって形成するとともに、リードめっき6bから電圧計10に至る電流経路を、リードめっき6bと同じ材料の部材(コネクタ部4の表面部分4aおよび第2の導線9)によって形成することで、こて先めっき7bとリードめっき6bとだけが異種の金属として接触することになる。
【0028】
これにより、こて先めっき7bとリードめっき6bとを熱電対として、こて先めっき7bとリードめっき6bとの接触部分12において発生する起電力をより正確に測定することができる。接触部分12において発生する起電力が測定されることで、その接触部分12の温度をより正確に求めることができる。その結果、はんだこてによるはんだ付けをより正確に行うことができて、信頼性の高いプリント配線板を得ることができ、ひいては、信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【0029】
また、コネクタ部4を設けて、下方からリード線6を保持することで、プリント配線板1に対するリード線6の相対的な位置(高さ)を合わせながら、はんだ付け作業をより容易に行うことができる。
【0030】
なお、上述した実施の形態では、糸はんだとして、Sn−Ag−Cu系の糸はんだを例に挙げて説明した。糸はんだとしては、この他に、Sn−Cu系、Sn−Bi系、Sn−In系、Sn−Sb系、あるいは、Sn−Pb系の糸はんだを適用してもよい。また、こて先本体7aの材料として銅(Cu)を例に挙げて説明したが、この他に、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックを適用してもよい。
【0031】
さらに、リードめっき6bとしてスズ(Sn)を例に挙げて説明したが、この他に、金(Au)を適用してもよい。リードめっき6bとして金(Au)を適用した場合には、第1の導線8の材料として、金(Au)を適用することが好ましい。また、こて先めっき7bとして鉄(Fe)を例に挙げて説明したが、この他に、クロム(Cr)を適用してもよい。こて先めっきとしてクロム(Cr)を適用した場合には、第2の導線9の材料として、クロム(Cr)を適用することが好ましい。これらの場合にも、こて先めっきの材料とリードめっきの材料とに対応した、起電力と温度との関係のデータをあらかじめ取得しておくことで、こて先とリードめっきとの接触部分の温度を正確に算出することができる。
【0032】
また、上述した実施の形態では、プリント配線板1にリード線6をはんだ付けする場合を例に挙げて説明した。上述した手法は、これに限られず、こてはんだ付けによって溶接する技術に広く適用することが可能である。
【0033】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、こてはんだ付けに有効に利用される。
【符号の説明】
【0035】
1 プリント配線板、2 スルーホール、3 ランド、4 コネクタ部、4a 装着部、6 リード線、6a リード線本体、6b リードめっき、7 こて先、7a こて先本体、7b こて先めっき、8 第1の導線、9 第2の導線、10 電圧計、11 温度算出部、12 接触部分、15 糸はんだ、16 はんだ、50 温度測定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
こてはんだ付けによってリード線を所定の基材にはんだ付けする際の温度測定方法であって、
互いに接触するはんだこてのこて先の部分とリード線の部分とを熱電対として、こて先とリード線との接触部分において発生する起電力を測定するステップと、
測定された前記起電力に基づいて、前記接触部分の温度を算出するステップと
を備えた、温度測定方法。
【請求項2】
前記こて先の部分の第1の材料と前記リード線の部分の第2の材料とは異なる材料であり、
前記こて先の部分から電圧計までは、前記第1の材料と同じ材料の導体によって電気的に接続され、
前記リード線の部分から前記電圧計までは、前記第2の材料と同じ材料の導体によって電気的に接続された、請求項1記載の温度測定方法。
【請求項3】
こてはんだ付けによってリード線を所定の基材にはんだ付けする際の温度を測定するための温度測定装置であって、
互いに接触するはんだこてのこて先の部分とリード線の部分とを熱電対として、こて先とリード線との接触部分において発生する起電力を測定する電圧測定部と、
測定された前記起電力に基づいて、前記接触部分の温度を算出する温度算出部と
を備えた、温度測定装置。
【請求項4】
前記こて先の前記部分は、所定の第1の材料によって形成され、
前記リード線の前記部分は、前記第1の材料とは異なる第2の材料によって形成され、
前記電圧測定部は、
前記こて先の前記部分から前記電圧測定部までを電気的に接続する、前記第1の材料と同じ材料の第1の導体と、
前記リード線の前記部分から前記電圧測定部までを電気的に接続する、前記第2の材料と同じ材料の第2の導体と
を有する、請求項3記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記電圧測定部は、前記リード線の一端部に装着されるコネクタ部を有し、
前記第2の導体は、
前記コネクタ部における、前記一端部に接触する装着部と、
前記装着部と前記電圧測定部とを電気的に接続する部分と
を含む、請求項4記載の温度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−78208(P2012−78208A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223782(P2010−223782)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】