説明

温度測定装置および温度測定方法

【課題】複数の熱画像の間で撮像視野がずれている場合であっても、信頼性が高い差画像を容易に生成することが可能な温度測定装置および温度測定方法を提供する。
【解決手段】鋳造用金型1の熱画像10における特徴点41・42・43を抽出し、特徴点41・42・43の座標および予め撮像された基準熱画像30において設定された基準特徴点61・62・63の座標に基づき特徴点41・42・43が対応する基準特徴点61・62・63に重なるように熱画像10に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施して補正熱画像20を生成し、補正熱画像20における補正特徴点51・52・53が対応する基準特徴点61・62・63に重なるように補正熱画像20と基準熱画像30とを重ね、補正熱画像20と基準熱画像30との差分たる差画像40を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準となる対象物について予め撮像された熱画像(基準熱画像)、および測定の対象となる対象物について撮像された熱画像に基づいて生成された差画像を用いる温度測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線サーモグラフィ等、対象物の熱画像を撮像することにより対象物の表面温度の分布を非接触で測定する技術は公知となっている。
このような非接触の温度分布測定技術は、一般に接触式の温度測定技術に比べるとリアルタイムかつ詳細な温度分布の測定を行うことが容易であること、測定装置(特にセンサ等の検出部)が対象物に接触しないことから熱や衝撃等による測定装置の破損や消耗が少なくメンテナンスが容易であること、といった利点を有する。
【0003】
また、対象物の表面温度の分布に基づいて対象物の良否判定を行う(対象物が正常な状態であるか異常な状態であるか、あるいは良品であるか不良品であるかを判定する)技術として、(1)基準となる対象物(正常な状態の対象物または良品である対象物)の熱画像を予め撮像しておき、(2)次に測定対象となる対象物の熱画像を撮像し、(1)および(2)でそれぞれ得られた二つの熱画像を比較する技術も知られている。
【0004】
上記基準熱画像と熱画像とを比較する技術のうち、最も簡便なものは二つの熱画像を同時に並べて表示し、判定を行う者(作業者等)が両者を見比べて相違点を見いだすものであるが、この技術では二つの熱画像の間の微妙な相違点を見いだすことが困難であること、判定を行う者の習熟度によって判定結果がばらつくこと、といった問題を有する。
上記基準熱画像と熱画像とを比較する他の技術としては、二つの熱画像における相互に対応する画素がそれぞれ有する温度情報に基づいて対応する画素間の温度情報の「温度差」を算出し、当該温度差の分布を表す画像、すなわち「差画像」を生成し、当該差画像に基づいて良否判定を行う技術が知られている。
例えば、特許文献1および特許文献2に記載の如くである。
【0005】
特許文献1に記載の技術は、コンクリート構造物の初期温度の状態における熱画像(基準となる熱画像)を撮像し、次にコンクリート構造物を加熱した状態における熱画像(判定の対象となる熱画像)を撮像し、二つの熱画像を比較することにより対象物の欠陥(空洞、ひび割れ、ジャンカ等)を判定するものである。
しかし、特許文献1に記載の技術は、基準となる熱画像を撮像するときと判定の対象となる熱画像を撮像するときとで対象物(の撮像部位)と赤外線カメラ等の撮像機器との位置関係(距離、姿勢等)を一定に保持することができない場合(例えば、固定する治具の位置決め精度が良くない場合、風や振動により対象物または撮像機器が動いてしまう場合、撮像機器のカメラを固定位置から一度取り外して再度取り付けた場合等)には、二つの熱画像を正確に重ね合わせる(二つの熱画像に写っている対象物同士を相互にずれないように重ね合わせる)ことが困難となり、その結果として差画像の信頼性(差画像の温度情報の信頼性)が低下するという問題がある。
特に、対象物と撮像機器との間の距離(撮像方向における距離)が変化した場合、あるいは対象物に対して撮像機器の視野が撮像方向に平行な軸を中心に回転した場合等、対象物と撮像機器との間に三次元的なずれが生じた場合には、二つの熱画像を正確に重ね合わせることが困難となる。
従って、特許文献1に記載の技術を用いて信頼性の高い差画像を得るためには、例えば赤外線カメラ等の撮像機器を予め所定の構造体に強固に固定し、撮像時には対象物を固定するための治具等を用いて撮像機器に対して一定の距離および姿勢を保持するといった一連の煩雑な作業を行わなければならないといった問題がある。
また、一般に赤外線カメラ等の撮像機器は定期的に放射率等の校正を行う必要があるが、このような校正を行うためにはこれらの撮像機器を通常は所定の構造体から取り外して行う。そのため、校正後に撮像機器を所定の構造体に固定すると、その撮像視野が校正前とずれてしまう場合があり、信頼性の高い差画像を得ることが困難であるという問題がある。
従って、差画像を設備の温度管理等の用途に用いることは、従来は設備の構造等の観点から信頼性の高い差画像を得ることが容易な特定の場合に限定されるという問題があった。
【0006】
特許文献2に記載の技術は、対象物の熱画像を「所定時間」毎に撮像し、ある時刻に撮像された熱画像と当該時刻から所定時間経過後に撮像された熱画像との間で差画像を生成し、当該差画像を表示することにより、対象物の温度変化をリアルタイムで計測可能とするものである。
しかし、特許文献2に記載の技術における「所定時間」は、その用途から長くとも数秒程度であると考えられ、撮像機器と対象物との間の位置関係が所定時間内に大きく変化しないことを前提とした構成であり、仮に当該位置関係を短時間で大きく変化させた場合には信頼性の高い差画像を得ることが困難である。
【0007】
また、同一視野の可視光による画像と熱画像とを同時に撮像する技術も知られている。例えば特許文献3および特許文献4に記載の如くである。
【0008】
特許文献3および特許文献4に記載の技術は、同一視野から入射してくる可視光および赤外光を、ハーフミラーやプリズム等を用いてそれぞれ可視光用の撮像素子と赤外光用の撮像素子に振り分けることにより、同一視野の可視光による画像と熱画像とを同時に撮像するものである。
しかし、特許文献3および特許文献4に記載の技術は、そもそも同時(同時刻)に同一視野の可視光による画像と熱画像とを撮像することにより二つの画像を重ね合わせる際の精度を確保(ずれを防止)するものである。従って、異なる時間(時刻)に撮像されて相互に撮像視野がずれている二つの熱画像を正確に重ね合わせることは、その性質上不可能である。
【特許文献1】特開2005−172683号公報
【特許文献2】実開平5−27637号公報
【特許文献3】特開2003−270049号公報
【特許文献4】特開平4−283634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑み、複数の熱画像の間で撮像視野がずれている場合であっても、当該複数の熱画像を用いて信頼性(温度情報の精度)が高い差画像を容易に生成することが可能な温度測定装置および温度測定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、
対象物の熱画像における単数または複数の特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、
前記特徴点抽出手段により抽出された前記熱画像における単数または複数の特徴点の座標および予め撮像された対象物の基準熱画像において設定された単数または複数の基準特徴点の座標に基づき、前記熱画像における単数または複数の特徴点が前記基準熱画像における対応する前記単数または複数の基準特徴点に重なるように、前記熱画像に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施して補正熱画像を生成する補正熱画像生成手段と、
前記補正熱画像生成手段により生成された補正熱画像における単数または複数の特徴点が前記基準熱画像における対応する単数または複数の基準特徴点に重なるように前記補正熱画像と前記基準熱画像とを重ね、前記補正熱画像と前記基準熱画像との差分たる差画像を生成する差画像生成手段と、
を具備するものである。
【0012】
請求項2においては、
前記熱画像を撮像する熱画像撮像手段を具備するものである。
【0013】
請求項3においては、
前記熱画像における単数または複数の特徴点のうちの少なくとも一つは、前記熱画像を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、前記熱画像について予め設定された単数または複数の領域内においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものであり、
前記基準熱画像における単数または複数の基準特徴点のうちの少なくとも一つは、前記基準熱画像を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、前記基準熱画像について予め設定された単数または複数の領域内においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものであるものである。
【0014】
請求項4においては、
前記対象物は鋳造用の金型であるものである。
【0015】
請求項5においては、
対象物の熱画像を撮像する熱画像撮像工程と、
前記熱画像撮像工程において撮像された対象物の熱画像における単数または複数の特徴点を抽出する特徴点抽出工程と、
前記特徴点抽出工程において抽出された前記熱画像における単数または複数の特徴点の座標および予め撮像された対象物の基準熱画像において設定された単数または複数の基準特徴点の座標に基づき、前記熱画像における単数または複数の特徴点が前記基準熱画像における対応する前記単数または複数の基準特徴点に重なるように、前記熱画像に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施して補正熱画像を生成する補正熱画像生成工程と、
前記補正熱画像生成工程において生成された補正熱画像における単数または複数の特徴点が前記基準熱画像における対応する単数または複数の基準特徴点に重なるように前記補正熱画像と前記基準熱画像とを重ね、前記補正熱画像と前記基準熱画像との差分たる差画像を生成する差画像生成工程と、
を具備するものである。
【0016】
請求項6においては、
前記熱画像における単数または複数の特徴点のうちの少なくとも一つは、前記熱画像を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、前記熱画像について予め設定された単数または複数の領域内においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものであり、
前記基準熱画像における単数または複数の基準特徴点のうちの少なくとも一つは、前記基準熱画像を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、前記基準熱画像について予め設定された単数または複数の領域内においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものであるものである。
【0017】
請求項7においては、
前記対象物は鋳造用の金型であるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、基準となる熱画像と測定の対象となる熱画像の間で撮像視野がずれている場合であっても、これらの熱画像を用いて信頼性が高い差画像を容易に生成することが可能である、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下では、図1乃至図6を用いて本発明に係る温度測定装置の実施の一形態である温度測定装置100について説明する。
図1に示す如く、温度測定装置100は、主として赤外線カメラ110、制御装置120を具備する。
【0020】
赤外線カメラ110は本発明に係る熱画像撮像手段の実施の一形態であり、鋳造用金型1の熱画像10を撮像するものである。
赤外線カメラ110は5μm〜15μm程度の波長の赤外線を検出可能なHgCdTeからなる二次元アレイ型の半導体素子からなる検出素子を有し、赤外線カメラ110の視野内の所定領域における赤外線の強度の分布(ひいては、視野内の所定領域における温度分布)を検出することが可能である。
なお、本実施例の赤外線カメラ110における検出素子はHgCdTeからなる二次元アレイ型の半導体素子であるが、本発明はこれに限定されず、他の検出素子を用いても良い。
【0021】
鋳造用金型1は本発明に係る対象物の実施の一形態である。鋳造用金型1は所定の形状の鋳造品を成形するための金型であり、その内部には当該鋳造品の形状に対応する形状の空間であるキャビティが形成される。
鋳造用金型1の内部には冷却水経路やヒータが設けられる。冷却水経路には冷却水が流通され、鋳造用金型1の鋳造用金型1の各部を冷却して破損や変形を防止するとともに所望の温度に制御する。ヒータは鋳造用金型1の各部を加熱して所望の温度に制御する。
【0022】
制御装置2は鋳造用金型1に接続され、鋳造用金型1の各部の動作を制御する(例えば、鋳造用金型1の内部に設けられたヒータの温度を調整する、鋳造用金型1の開閉を行う油圧シリンダを伸長または収縮する、鋳造用金型1に溶湯を供給するスリーブに摺接可能に設けられたプランジャを摺動させる油圧シリンダを伸長または収縮する等)ものであり、プログラマブルコントローラ(Programmable Logic Controller;PLC)からなる。
なお、本実施例の制御装置2はPLCからなるが、本発明はこれに限定されず、市販のパーソナルコンピュータやワークステーションに所定のプログラムを格納したもので達成することも可能である。
【0023】
図2に示す如く、熱画像10は本発明に係る熱画像の実施の一形態であり、赤外線カメラ110の撮像視野における温度分布を示す画像である。本実施例の熱画像10は横方向(Y軸方向)にm個、縦方向(Y軸方向)にn個並んだ格子状の画素群からなる。熱画像を構成する各画素は画像中における座標(X,Y)を特定可能であるとともに、各画素は温度情報を有する。
【0024】
「温度情報」は熱画像撮像手段の視野内の各部分の表面温度に係る情報であり、当該情報を熱画像を構成する画素群のそれぞれが有する。温度情報は温度そのものを表す情報でも良いが、通常は熱画像撮像手段の撮像素子の対応する部分が検出した所定の波長帯の赤外線のエネルギー(の大きさ)を表す情報である。
熱画像を構成する画素の縦方向の画素数(m個)、横方向の画素数(n個)および総画素数((m×n)個)については、本発明に係る温度測定装置の用途や対象物の性質等に応じて適宜選択することが可能である。
熱画像を構成する各画素の座標(X,Y)を特定する(熱画像に係るデータを取り扱う)方法は、各画素について座標(X,Y)に係る情報と温度情報とを関連付ける構成としても良く、温度情報を羅列した一連の情報列とし、当該情報列における先頭からの順序と座標(X,Y)とを関連付ける(例えば、CSV(Comma Separated Value)形式のデータとする)構成としても良い。
【0025】
本実施例の場合、熱画像10を構成する各画素が有する温度情報に基づいて熱画像10における各画素に対応する部分の温度が算出される。
熱画像10を後述する表示部123に表示する際には、図2に示す如く、熱画像10における各画素の温度が予め設定された4つの温度域11・12・13・14のいずれに属するかが判定される。4つの温度域11・12・13・14は高温側から低温側に互いに重複することなく連続して設定され、4つの温度域11・12・13・14にはそれぞれ異なる色が割り当てられる(図2では便宜上異なるハッチングで表される)。
熱画像10を後述する表示部123に表示する際には、各画素が4つの温度域11・12・13・14のうち、自己が属する温度域に割り当てられた色で表示される。上記熱画像10の表示における一連の画像処理は、後述する制御装置120により行われる。
なお、本実施例では4つの温度域11・12・13・14を設定する構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、本実施例よりもさらに細かく細分化された温度域を設定する構成としても良い。
【0026】
以下では、図1を用いて制御装置120について説明する。
制御装置120は主として制御部121、入力部122、表示部123等を具備する。
【0027】
制御部121は温度測定装置100の一連の動作を制御するものである。
制御部121は、実体的には、種々のプログラム等(例えば、後述する撮像動作制御プログラム、特徴点抽出プログラム、補正熱画像生成プログラム、差画像生成プログラム、判定プログラム等)を格納する格納手段、これらのプログラム等を展開する展開手段、これらのプログラム等に従って所定の演算を行う演算手段、演算結果等を保管する保管手段(記憶手段)等を具備する。
【0028】
制御部121は、より具体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であっても良い。
本実施例の制御部121は専用品であるが、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等に上記プログラム等を格納したもので達成することも可能である。
【0029】
制御部121は赤外線カメラ110に接続され、赤外線カメラ110を動作させるための信号(トリガ信号)を送信可能であるとともに、赤外線カメラ110により撮像された熱画像10に係る情報(画像データ)を受信(取得)することが可能である。
また、制御部121は鋳造用金型1の動作を制御する制御装置2に接続され、鋳造用金型1の熱画像を撮像するタイミングを示す信号(タイミング信号)を取得することが可能である。
【0030】
入力部122は制御部121に接続され、制御部121に温度測定装置100の動作に係る種々の情報・指示等を入力するものである。
本実施例の入力部122は専用品であるが、市販のキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
【0031】
表示部123は温度測定装置100の動作状況、入力部122から制御部121への入力内容、温度測定装置100による測定結果等を表示するものである。
本実施例の表示部123は専用品であるが、市販のモニターや液晶ディスプレイ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
【0032】
以下では、制御部121の詳細構成について説明する。
制御部121は、機能的には撮像動作制御部121a、特徴点抽出部121b、補正熱画像生成部121c、差画像生成部121d、判定部121e等を具備する。
【0033】
以下では図1を用いて撮像動作制御部121aについて説明する。
撮像動作制御部121aは赤外線カメラ110による熱画像10の撮像動作を制御するものである。
実体的には、制御部121が、その格納手段に格納された撮像動作制御プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、撮像動作制御部121aとしての機能を果たす。
鋳造用金型1の動作を制御する制御装置2は鋳造用金型1の熱画像を撮像するタイミングを示す信号であるタイミング信号を制御部121(より厳密には、撮像動作制御部121a)に送信する。
撮像動作制御部121aは制御装置2からタイミング信号を取得すると、赤外線カメラ110にトリガ信号を送信する。
赤外線カメラ110は、撮像動作制御部121aからトリガ信号を取得すると鋳造用金型1の熱画像10を撮像し、熱画像10に係る情報(画像データ)を制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に送信する。
【0034】
以下では図1および図2を用いて特徴点抽出部121bについて説明する。
特徴点抽出部121bは本発明に係る特徴点抽出手段の実施の一形態であり、鋳造用金型1の熱画像10における特徴点41・42・43を抽出するものである。
実体的には、制御部121が、その格納手段に格納された特徴点抽出プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、特徴点抽出部121bとしての機能を果たす。
【0035】
図2に示す如く、特徴点41・42は本発明に係る特徴点の実施の一形態であり、熱画像10を構成する画素群(本実施例の場合、(m×n)個の画素)のうちの(a)単数の画素、または(b)複数の画素の集合体(クラスター)、である。
「特徴点」は、対象物の性質上または対象物に所定の処置を施すことにより、当該対象物の熱画像に含まれる複数の画素(画素群)から画素の有する温度情報に基づいて周囲と区別して抽出することが可能な単数の画素または複数の画素の集合体を指す。
【0036】
本実施例の場合、対象物たる鋳造用金型1は、その内部にヒーターを有しており、鋳造前の加熱過程において鋳造用金型1の表面のうち周囲に比べて高温となることが予め分かっている部位が存在する。
また、鋳造後の鋳造用金型1はその内部を流通する冷却水により冷却されるが、冷却水の流通経路の形状等により冷却過程における鋳造用金型1の表面の温度分布は一定とはならない。従って、鋳造用金型1の表面のうち周囲より高温となる部位または低温となることが予め分かっている部位が存在する。
このように、鋳造用金型1はその性質上、周囲よりも高温となる特定の部位を有することから、当該部位に対応する単一の画素または複数の画素の集合体を特徴点として抽出可能である。
【0037】
本実施例では、鋳造用金型1の上記性質を利用し、赤外線カメラ110に対して所定の距離および姿勢となる位置に鋳造用金型1を配置して赤外線カメラ110により鋳造用金型1の熱画像10を撮像した場合に予め高温となることが分かっている部位に対応する画素の領域21・22が予め設定され、領域21・22を示す座標情報が制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶される。
そして、特徴点抽出部121bは、制御部121の記憶手段に記憶された「領域21・22を示す座標情報」および制御部121の記憶手段に記憶された「熱画像10に係る情報(画像データ)」に基づいて、領域21に含まれる複数の画素の中で最も表示温度(画素の有する温度情報に基づいて算出される温度)が高い単数の画素または複数の画素の集合体(クラスター)を特徴点41として抽出し、領域22に含まれる複数の画素の中で最も表示温度が高い単数の画素または複数の画素の集合体(クラスター)を特徴点42として抽出する。
なお、特徴点41・42が複数の画素の集合体である場合は、当該集合体に含まれる複数の画素の表示温度の平均値、中間値、最低値または最高値を「集合体の表示温度」として用いることができる。
【0038】
特徴点43は特徴点41・42と異なり、鋳造用金型1と赤外線カメラ110との撮像時の幾何学的な位置関係(距離、姿勢)や鋳造用金型1および赤外線カメラ110の固定方法等の条件から撮像毎に「ずれ」を起こすことがないことが予め分かっている点である。
特徴点43は熱画像10の内部(範囲内)に設定しても良く、本実施例の如く熱画像10の外部(範囲外)の仮想的な点として設定しても良い。
【0039】
本実施例では熱画像10について予め設定された領域21・22においてそれぞれ表示温度が最も高い単数の画素または複数の画素の集合体を特徴点41・42として抽出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、対象物の性質等によっては熱画像について予め設定された単数または複数の領域においてそれぞれ表示温度が最も低い単数の画素または複数の画素の集合体を特徴点として抽出する構成としても良い。
また、対象物の性質等によっては対象物の表面にピンポイントで(微小な面積の)温度が高い部分や低い部分が現れない場合や、周囲との温度差があまり大きくない場合等、特徴点をうまく抽出することが困難な場合もある。このような場合には、例えば対象物の所定の部分(できれば複数の部分)にヒーター等の熱源を設けて周囲よりも高温となるように発熱させる等の「所定の処置を施す」ことにより、対象物の表面に意図的に特徴点となり得る部分を作り出すことも可能である。
【0040】
本発明における特徴点が複数の画素の集合体(クラスター)である場合、その形状の例としては、(a)計4個の画素からなり、縦に2個、横に2個並んだ正方形状、(b)計5個の画素からなり、一個の画素を中心として上下左右に画素が隣接する十字状、(c)計9個の画素からなり、縦に3個、横に3個並んだ正方形状、等が挙げられる。
ただし、後述する補正熱画像の生成や差画像の生成における精度(信頼性)を確保する観点からは、特徴点は極力小さい(特徴点を構成する画素の数が少ない)ことが望ましい。
【0041】
本実施例では抽出される3個の特徴点41・42・43のうち、2個の特徴点41・42についてはそれぞれ領域21・22の中から温度情報に基づいて抽出され、特徴点43については鋳造用金型1と赤外線カメラ110との撮像時の幾何学的な位置関係や鋳造用金型1および赤外線カメラ110の固定方法等の条件から撮像毎に「ずれ」を起こすことがないことが予め分かっている点の中から抽出される構成としたが、本発明はこれに限定されず、(a)3個の特徴点の全てがそれぞれ対応する領域の中から温度情報に基づいて抽出される構成、あるいは(b)3個の特徴点のうちの1個は対応する領域の中から温度情報に基づいて抽出され、残りの2個は対象物と熱画像撮像手段との撮像時の幾何学的な位置関係や対象物および熱画像撮像手段の固定方法等の条件から撮像毎に「ずれ」を起こすことがないことが予め分かっている点から抽出される構成、とすることも可能である。
すなわち、単数または複数の特徴点のうち、少なくとも一つが対応する領域の中から温度情報に基づいて抽出される構成とすれば良い。
【0042】
以下では、図1、図3、図4および図5を用いて補正熱画像生成部121cについて説明する。
なお、図3乃至図5では説明の便宜上、熱画像10、補正熱画像20、基準熱画像30上にはそれぞれ同一視野において可視光を検出するカメラで撮像した場合の鋳造用金型1の輪郭線を表示している。
【0043】
補正熱画像生成部121cは本発明に係る補正熱画像生成手段の実施の一形態であり、特徴点抽出部121bにより抽出された熱画像10における特徴点41の座標(X11,Y11)、特徴点42の座標(X12,Y12)、特徴点43の座標(X13,Y13)、および予め撮像された鋳造用金型1の基準熱画像30において設定された基準特徴点61の座標(X01,Y01)、基準特徴点62の座標(X02,Y02)、基準特徴点63の座標(X03,Y03)に基づき、熱画像10における特徴点41・42・43が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・62に重なるように、熱画像10に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施して補正熱画像20を生成するものである。
実体的には、制御部121が、その格納手段に格納された補正熱画像生成プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、補正熱画像生成部121cとしての機能を果たす。
【0044】
制御部121は、予め撮像された鋳造用金型1の基準熱画像30において設定された基準特徴点61の座標(X01,Y01)、基準特徴点62の座標(X02,Y02)、基準特徴点63の座標(X03,Y03)に係る情報を記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶している。
【0045】
「基準熱画像」は(i)測定の対象となる対象物と全く同一の対象物が正常な状態(異常がない状態)であることが分かっているときに当該対象物を基準対象物として撮像された熱画像、または、(ii)測定の対象となる同じ形状の対象物が複数ある場合に、当該複数の対象物のうち予め良品である(正常である)ことが分かっている対象物の一つを基準対象物として撮像された熱画像である。
【0046】
本実施例の場合、対象物たる鋳造用金型1は何度も繰り返し使用されるものであることから、基準熱画像30は上記(i)のケースに該当する。
本実施例の鋳造用金型1の「正常な状態」は任意に設定することが可能であるが、例えば「鋳造用金型1の冷却水経路の詰まりや漏水が起こっておらず、ヒーターが故障しておらず、鋳造用金型1のキャビティ面の損耗や破損等が起こっていないことにより、撮像時において鋳造用金型1の各部が望ましい温度分布を達成している状態」を正常な状態として設定することが可能である。
【0047】
上記(ii)に該当する基準熱画像が用いられるケースとしては、例えば、同じ金型で鋳造される複数の鋳造品対象物として、順次略同じ場所に略同じ姿勢で固定(載置)して熱画像を撮像する場合が挙げられる。
【0048】
本実施例の基準熱画像30は一度だけ撮像されたものであるが、本発明に係る基準熱画像はこれに限定されず、複数回撮像された熱画像の対応する各画素の温度情報の平均値を算出し、これと座標情報とを関連づけたものを基準画像とする構成としても良い。
【0049】
「基準特徴点」は基準熱画像における特徴点を指す。すなわち、基準対象物の性質上または基準対象物に所定の処置を施すことにより、当該基準対象物の熱画像に含まれる複数の画素(画素群)から画素の有する温度情報に基づいて周囲と区別して抽出することが可能な単数の画素または複数の画素の集合体を指す。
【0050】
以下では、本実施例における基準特徴点61・62・63の座標情報の登録の手法について説明する。
図3に示す如く、鋳造用金型1の実際の測定に先立って温度測定装置100の赤外線カメラ110により鋳造用金型1の基準熱画像30が撮像され、基準熱画像30が制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶(登録)される。
【0051】
次に、制御部121は基準熱画像30に基づいて基準特徴点61・62・63を選定する。基準特徴点61・62・63を選定する手法は特徴点抽出部121bが特徴点41・42・43を抽出する手法と略同じ手法である。
すなわち、基準特徴点61・62については、制御部121の記憶手段に記憶された「領域21・22を示す座標情報」および制御部121の記憶手段に記憶された「基準熱画像30に係る情報(画像データ)」に基づいて、領域21に含まれる複数の画素の中で最も表示温度が高い単数の画素または複数の画素の集合体(クラスター)を基準特徴点61として選定し、領域22に含まれる複数の画素の中で最も表示温度が高い単数の画素または複数の画素の集合体(クラスター)を基準特徴点62として選定する。なお、本実施例では、熱画像10における領域21・22の座標情報と基準熱画像30における領域21・22の座標情報とは全く同一である。
また、基準特徴点63については、特徴点43の座標と同じ座標の点を基準特徴点63として選定する。
【0052】
基準特徴点61・62・63が選定されると、制御部121は基準特徴点61の座標(X01,Y01)、基準特徴点62の座標(X02,Y02)、基準特徴点63の座標(X03,Y03)を算出し、これらの座標に係る情報を制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶(登録)する。
【0053】
以下では、補正熱画像生成部121cによる補正熱画像20の生成の詳細について説明する。
まず、補正熱画像生成部121cは、特徴点抽出部121bにより抽出された熱画像10における特徴点41の座標(X11,Y11)、特徴点42の座標(X12,Y12)、特徴点43の座標(X13,Y13)をそれぞれ算出(確認)する。
【0054】
次に、補正熱画像生成部121cは、特徴点抽出部121bにより抽出された熱画像10における特徴点41の座標(X11,Y11)、特徴点42の座標(X12,Y12)、特徴点43の座標(X13,Y13)、および、制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶された基準特徴点61の座標(X01,Y01)、基準特徴点62の座標(X02,Y02)、基準特徴点63の座標(X03,Y03)を比較する(図3、図4参照)。
より具体的には、補正熱画像生成部121cは対応する基準特徴点と特徴点との間の座標のずれを算出する。本実施例では基準特徴点61と特徴点41とが対応し、基準特徴点62と特徴点42とが対応し、基準特徴点63と特徴点43とが対応することから、基準特徴点61と特徴点41との間の座標のずれ(X11−X01,Y11−Y01)、基準特徴点62と特徴点42との間の座標のずれ(X12−X02,Y12−Y02)、基準特徴点63と特徴点43との間の座標のずれ(X13−X03,Y13−Y03)、がそれぞれ算出される。
【0055】
続いて、補正熱画像生成部121cは、対応する基準特徴点と特徴点との間の座標のずれの有無を判定する。
より具体的には、(α)補正熱画像生成部121cは基準特徴点61と特徴点41との間の座標のずれ(X11−X01,Y11−Y01)=(0,0)、かつ基準特徴点62と特徴点42との間の座標のずれ(X12−X02,Y12−Y02)=(0,0)、かつ基準特徴点63と特徴点43との間の座標のずれ(X13−X03,Y13−Y03)=(0,0)である場合には基準特徴点と特徴点との間の座標のずれが無いと判定する。
また、(β)補正熱画像生成部121cは、上記(α)以外の場合、すなわち6個の算出値X11−X01,Y11−Y01,X12−X02,Y12−Y02,X13−X03,Y13−Y03のうちの一つ以上にゼロでない値が含まれる場合には基準特徴点と特徴点との間の座標のずれが有ると判定する。
【0056】
補正熱画像生成部121cは、対応する基準特徴点と特徴点との間の座標のずれが無いと判定した場合には、熱画像10には特に画像処理を施すことなく、熱画像10が補正熱画像20であるとみなす。
【0057】
補正熱画像生成部121cは、対応する基準特徴点と特徴点との間の座標のずれが有ると判定した場合には、熱画像10における特徴点41・42・43が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・62に重なるように、必要に応じて熱画像10に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施す。
【0058】
「回転処理」は熱画像を当該画像面に垂直な回転軸を中心として回転させる画像処理を指す。なお、回転処理の回転軸は熱画像の範囲内にあっても範囲外にあっても良い。
「平行移動処理」は熱画像を当該画像面に平行な方向に移動させる画像処理を指す。
「拡大・縮小処理」は熱画像を所定の基準点を中心に拡大または縮小させる画像処理を指す。なお、拡大・縮小処理の所定の基準点は熱画像の範囲内にあっても範囲外にあっても良い。
上記回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施す手法としては、例えば既知の画像処理手法であるアフィン変換(線形変換)等の幾何補正を用いることが可能である。
【0059】
補正熱画像生成部121cは、上記画像処理後の熱画像10を補正熱画像20とみなす。
図5に示す如く、補正熱画像20における補正特徴点51・52・53はそれぞれ熱画像10における特徴点41・42・43にそれぞれ対応するものである。補正特徴点51の座標(X21,Y21)、補正特徴点62の座標(X22,Y22)、補正特徴点63の座標(X23,Y23)は、それぞれ基準特徴点61の座標(X01,Y01)、基準特徴点62の座標(X02,Y02)、基準特徴点63の座標(X03,Y03)と同じである(すなわち、(X21,Y21)=(X01,Y01)、(X22,Y22)=(X02,Y02)、および(X23,Y23)=(X03,Y03)の関係が成り立つ)。
【0060】
このようにして、補正熱画像生成部121cは補正熱画像20を生成し、補正熱画像20を制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶する。
【0061】
本実施例の補正熱画像生成部121cは、上記画像処理における回転処理の回転角度が所定の閾値より大きい場合、上記画像処理における平行移動の距離が所定の閾値より大きい場合、上記画像処理における拡大・縮小処理の倍率が所定の範囲(通常は1.0倍を含む範囲)から外れている場合、のいずれかに該当する場合には、基準熱画像30を撮像したときと比べて熱画像10を撮像したときの赤外線カメラ110と鋳造用金型1と間の相対的な距離および姿勢の変化が過大であることが推認されるので、後述する差画像の信頼性を確保する観点から「測定不能」と判定し、以後の差画像の生成を行わないものとする。
上記回転角度の所定の閾値、上記平行移動の距離の所定の閾値、上記拡大・縮小処理の倍率の所定の範囲(倍率の上限値および下限値)については、熱画像撮像手段や対象物の性質、撮像環境等を考慮して適宜選択する必要がある。
【0062】
本実施例では、補正熱画像生成部121cにおける画像処理を一義的に決定する(画像処理の解を一つに決定する)観点から、熱画像10上(熱画像10と面一の仮想平面上も含む)において一直線上にない3個の特徴点41・42・43を抽出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、4個以上の特徴点を抽出し、任意の3個の特徴点を用いて画像処理を施す、または最小二乗法を用いて画像処理の最適解を導出する(4個以上の特徴点のうち3個の特徴点を選択する最適な組み合わせを決定する)構成としても良い。
4個以上の特徴点を抽出することの利点としては、例えば本実施例の対象物である鋳造用金型1は、繰り返し使用する過程で特徴点に対応する部分に鋳物のバリ等の異物が付着すると当該部分の表面温度が周囲と比べて十分に高温とならない場合があり得ることから、4個以上の特徴点を抽出することにより一部の特徴点がうまく抽出できない場合でも必要数の特徴点を抽出することが可能となること、が挙げられる。
【0063】
また、対象物と熱画像撮像手段との撮像時の幾何学的な位置関係(距離、姿勢)や対象物および熱画像撮像手段の固定方法等の条件から補正熱画像の生成を行う際に平行移動処理しか行わないことが予め分かっている場合には、1個の特徴点のみ抽出する(または2個以上の特徴点から補正熱画像の生成を行う際に用いる1個の特徴点を選択する)構成とすることも可能である。この場合にも、対象物の表面への異物の付着等を考慮して2個以上の特徴点を抽出した上で当該2個以上の特徴点の中から任意の一つを特徴点として用いる構成としても良い。
【0064】
以下では図1および図6を用いて差画像生成部121dについて説明する。
差画像生成部121dは本発明に係る差画像生成手段の実施の一形態であり、補正熱画像生成部121cにより生成された補正熱画像20における複数の特徴点(補正特徴点51・52・53)が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・63に重なるように補正熱画像20と基準熱画像30とを重ね、補正熱画像20と基準熱画像30との差分たる差画像40を生成するものである。
「差画像」は補正熱画像と基準熱画像との差分、より厳密には補正熱画像と基準熱画像との間の対応する(同じ座標の)画素の温度差の分布を表す画像である。
【0065】
図6に示す如く、差画像生成部121dは補正熱画像生成部121cにより生成された補正熱画像20における複数の特徴点(補正特徴点51・52・53)が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・63に重なるように補正熱画像20と基準熱画像30とを重ねた場合に、実際に補正熱画像20と基準熱画像30とが重なる部分(図6中の太い実線で囲まれた部分)を差画像40の「有効領域」として設定する。
差画像生成部121dは、補正熱画像20および基準熱画像30を構成する画素のうち、有効領域内にある各画素について、互いに重なり合う(同じ座標の)補正熱画像20の画素の温度情報および基準熱画像30の画素の温度情報に基づき、これら二つの画素の間の「温度差(温度情報から算出される温度の差)」を算出する。
そして、「有効領域」内にある画素の座標情報と温度差情報(先に算出された温度差に係る情報)とを関連づけたものとして差画像40を生成する。
【0066】
図6に示す如く、差画像40を構成する各画素における温度差(の値)が、予め設定された5つの温度域71・72・73・74・75のいずれに属するかが判定される。5つの温度域71・72・73・74・75は高温側から低温側に互いに重複することなく連続して設定され、5つの温度域71・72・73・74・75にはそれぞれ異なる色が割り当てられる(図6では便宜上異なるハッチングで表される)。
差画像40を表示部123に表示する際には、差画像40を構成する各画素は、温度域71・72・73・74・75のうち、自己が属する温度域に割り当てられた色で表示される。
【0067】
なお、本実施例では5つの温度域71・72・73・74・75を設定する構成としたが、本発明はこれに限定されず、より細かく細分化された温度域を設定しても良い。
また、本実施例では差画像40の有効領域内にある画素の全てを差画像40に含む構成としたが、本発明に係る差画像はこれに限定されず、有効領域の周縁部等を適宜トリミング等したものを差画像としても良い。
【0068】
以下では図1を用いて判定部121eについて説明する。
判定部121eは差画像40に基づいて鋳造用金型1の状態を判定するものである。
実体的には、制御部121が、その格納手段に格納された判定プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、判定部121eとしての機能を果たす。
【0069】
判定部121eは、差画像40の所定領域(任意に設定可能)に含まれる各画素の有する温度差情報に基づき、差画像40の所定領域(任意に設定可能)における「温度差」の最高値および最低値がいずれも「所定の範囲」内である場合には鋳造用金型1が正常な状態である(鋳造用金型1に異常が発生していない)と判定する。
また、判定部121eは、差画像40の所定領域(任意に設定可能)における「温度差」の最高値または最低値の少なくとも一方が「所定の範囲」外である場合には鋳造用金型1が異常な状態である(鋳造用金型1に異常が発生している)と判定する。
判定部121eは、判定結果を表示部123に表示するとともに、制御装置120の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶する。
なお、本実施例における差画像を用いた判定の手法はあくまでも一例であって、本発明がこれに限定されるものではない。すなわち、差画像を用いた判定の手法は対象物の性質等に応じて適宜選択することが可能である。
【0070】
以上の如く、温度測定装置100は、
鋳造用金型1の熱画像10における特徴点41・42・43を抽出する特徴点抽出部121bと、
特徴点抽出部121bにより抽出された熱画像10における特徴点41・42・43の座標および予め撮像された鋳造用金型1の基準熱画像30において設定された基準特徴点61・62・63の座標に基づき、熱画像10における特徴点41・42・43が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・63に重なるように、熱画像10に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施して補正熱画像20を生成する補正熱画像生成部121cと、
補正熱画像生成部121cにより生成された補正熱画像20における特徴点(補正特徴点51・52・53)が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・63に重なるように補正熱画像20と基準熱画像30とを重ね、補正熱画像20と基準熱画像30との差分たる差画像40を生成する差画像生成部121dと、
を具備するものである。
このように構成することにより、基準熱画像30および熱画像10の間で撮像視野がずれている場合であっても、熱画像10および基準熱画像30の画像データに含まれる情報である特徴点41・42・43の座標情報および基準特徴点61・62・63の座標情報に基づいて熱画像10を幾何学的に補正し、基準熱画像30に精度良く重ね合わせることが可能である。
従って、信頼性が高い(温度情報の精度が高い)差画像40を容易に生成することが可能である。
【0071】
また、温度測定装置100は、
熱画像を撮像する赤外線カメラ110を具備するものである。
このように構成することにより、基準熱画像30の撮像時と熱画像10の撮像時とで鋳造用金型1と赤外線カメラ110との間の位置関係(距離、姿勢等)が変化し、基準熱画像30および熱画像10の間で撮像視野がずれている場合であっても、熱画像10および基準熱画像30の画像データに含まれる情報である特徴点41・42・43の座標情報および基準特徴点61・62・63の座標情報に基づいて熱画像10を幾何学的に補正し、基準熱画像30に精度良く重ね合わせることが可能である。
従って、信頼性が高い(温度情報の精度が高い)差画像40を容易に生成することが可能である。
【0072】
また、温度測定装置100の熱画像10における特徴点41・42・43のうちの少なくとも一つ(本実施例の場合、特徴点41・42の二つ)は、熱画像10を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、熱画像10について予め設定された領域21・22内においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものであり、
温度測定装置100の基準熱画像30における基準特徴点61・62・63のうちの少なくとも一つ(本実施例の場合、基準特徴点61・62の二つ)は、基準熱画像30を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、基準熱画像30について予め設定された領域21・22においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものである。
このように構成することにより、基準熱画像30の撮像時と熱画像10の撮像時とで鋳造用金型1と赤外線カメラ110との間の位置関係(距離、姿勢等)に係る情報等を必要とせず、熱画像10の画像データのみに基づいて特徴点41・42を容易に抽出することが可能であるとともに、基準熱画像30の画像データのみに基づいて基準特徴点61・62を容易に抽出することが可能である。
従って、基準熱画像30の撮像時と熱画像10の撮像時とで鋳造用金型1と赤外線カメラ110との間の位置関係を高い精度で保持しなくても信頼性が高い(温度情報の精度が高い)差画像40を容易に生成することが可能であり、作業性に優れる。
【0073】
また、温度測定装置100の対象物は鋳造用の金型(鋳造用金型1)である。
このように構成することにより、繰り返し使用される鋳造用金型1が正常な状態であるか異常な状態であるかを差画像40に基づいて容易に判定することが可能であり、鋳造工程の管理の質の向上および管理に要する労力(あるいは管理コスト)の軽減に寄与する。
【0074】
以下では、図7を用いて本発明に係る温度測定方法の実施の一形態について説明する。
本発明に係る温度測定方法の実施の一形態は、温度測定装置100を用いて差画像40を生成する方法であり、実際の測定を行う工程(測定画像処理工程)としては、主として熱画像撮像工程S1100、特徴点抽出工程S1200、補正熱画像生成工程S1300、差画像生成工程S1400等を具備する。また、本発明に係る温度測定方法の実施の一形態は、その前段階として、予め基準熱画像30に基づいて基準特徴点61・62・63を登録する工程(基準画像処理工程)を具備する。
【0075】
以下では、予め基準熱画像30に基づいて基準特徴点61・62・63を登録する工程(基準画像処理工程)の詳細について説明する。
予め基準熱画像30に基づいて基準特徴点61・62・63を登録する工程は、基準熱画像撮像工程S100、基準特徴点選定工程S200、基準特徴点登録工程S300等を具備する。
【0076】
基準熱画像撮像工程S100は鋳造用金型1の基準熱画像30を撮像する工程である。
基準熱画像撮像工程S100において、温度測定装置100の赤外線カメラ110により鋳造用金型1の基準熱画像30が撮像され、基準熱画像30が制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶(登録)される。
基準熱画像撮像工程S100が終了したら、基準特徴点選定工程S200に移行する。
【0077】
基準特徴点選定工程S200は、基準熱画像30に基づいて基準特徴点61・62・63を選定する工程である。
基準特徴点選定工程S200において、制御部121は、基準特徴点61・62については、制御部121の記憶手段に記憶された「領域21・22を示す座標情報」および制御部121の記憶手段に記憶された「基準熱画像30に係る情報(画像データ)」に基づいて、領域21に含まれる複数の画素の中で最も表示温度が高い単数の画素または複数の画素の集合体(クラスター)を基準特徴点61として選定し、領域22に含まれる複数の画素の中で最も表示温度が高い単数の画素または複数の画素の集合体(クラスター)を基準特徴点62として選定する。
基準特徴点選定工程S200が終了したら、基準特徴点登録工程S300に移行する。
【0078】
基準特徴点登録工程S300は基準特徴点61の座標(X01,Y01)、基準特徴点62の座標(X02,Y02)、基準特徴点63の座標(X03,Y03)を制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶(登録)する工程である。
基準特徴点登録工程S300において、制御部121は基準特徴点61の座標(X01,Y01)、基準特徴点62の座標(X02,Y02)、基準特徴点63の座標(X03,Y03)を算出し、これらの座標に係る情報を制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶(登録)する。
【0079】
以下では、本発明に係る温度測定方法の実施の一形態における実際の測定を行う工程(測定画像工程)の詳細について説明する。
【0080】
熱画像撮像工程S1100は鋳造用金型1の熱画像10を撮像する工程である。
熱画像撮像工程S1100において、赤外線カメラ110は、撮像動作制御部121aからトリガ信号を取得すると鋳造用金型1の熱画像10を撮像し、熱画像10に係る情報(画像データ)を制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に送信する。
熱画像撮像工程S1100が終了したら、特徴点抽出工程S1200に移行する。
【0081】
特徴点抽出工程S1200は熱画像撮像工程S1100において撮像された鋳造用金型1の熱画像10における特徴点41・42・43を抽出する工程である。
特徴点抽出工程S1200において、特徴点抽出部121bは制御部121の記憶手段に記憶された「領域21・22を示す座標情報」および制御部121の記憶手段に記憶された「熱画像10に係る情報(画像データ)」に基づいて、領域21に含まれる複数の画素の中で最も表示温度(画素の有する温度情報に基づいて算出される温度)が高い単数の画素または複数の画素の集合体(クラスター)を特徴点41として抽出し、領域22に含まれる複数の画素の中で最も表示温度が高い単数の画素または複数の画素の集合体(クラスター)を特徴点42として抽出する。また、特徴点抽出部121bは鋳造用金型1と赤外線カメラ110との撮像時の幾何学的な位置関係や鋳造用金型1および赤外線カメラ110の固定方法等の条件から撮像毎に「ずれ」を起こすことがないことが予め分かっている点の中から特徴点43を抽出する。
特徴点抽出工程S1200が終了したら、補正熱画像生成工程S1300に移行する。
【0082】
補正熱画像生成工程S1300は特徴点抽出部121bにより抽出された熱画像10における特徴点41の座標(X11,Y11)、特徴点42の座標(X12,Y12)、特徴点43の座標(X13,Y13)、および予め撮像された鋳造用金型1の基準熱画像30において設定された基準特徴点61の座標(X01,Y01)、基準特徴点62の座標(X02,Y02)、基準特徴点63の座標(X03,Y03)に基づき、熱画像10における特徴点41・42・43が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・62に重なるように、熱画像10に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施して補正熱画像20を生成する工程である。
【0083】
補正熱画像生成工程S1300において、補正熱画像生成部121cは特徴点抽出部121bにより抽出された熱画像10における特徴点41の座標(X11,Y11)、特徴点42の座標(X12,Y12)、特徴点43の座標(X13,Y13)をそれぞれ算出し、確認する(図7のS1310参照)。
【0084】
次に、補正熱画像生成部121cは算出された熱画像10における特徴点41の座標(X11,Y11)、特徴点42の座標(X12,Y12)、特徴点43の座標(X13,Y13)、および、制御部121の記憶手段(ハードディスク等の記憶媒体)に記憶された基準特徴点61の座標(X01,Y01)、基準特徴点62の座標(X02,Y02)、基準特徴点63の座標(X03,Y03)を比較する(図7のS1320参照)。
【0085】
続いて、補正熱画像生成部121cは、対応する基準特徴点(基準特徴点61・62・63)と特徴点(特徴点41・42・43)との間の座標のずれの有無を判定する(図7のS1330参照)。
その結果、(α)対応する基準特徴点と特徴点との間の座標のずれが無いと判定した場合には、補正熱画像生成部121cは熱画像10には特に画像処理を施すことなく熱画像10が補正熱画像20であるとみなす。そして、補正熱画像生成工程S1300が終了して差画像生成工程S1400に移行する。
また、(β)対応する基準特徴点と特徴点との間の座標のずれが有ると判定した場合には、補正熱画像生成部121cは熱画像10における特徴点41・42・43が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・62に重なるように、必要に応じて熱画像10に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施し、これらの画像処理が施された後の熱画像10を補正熱画像20とみなす。そして、補正熱画像生成工程S1300が終了して差画像生成工程S1400に移行する。
【0086】
差画像生成工程S1400は補正熱画像生成工程S1300において生成された補正熱画像20における複数の特徴点(補正特徴点51・52・53)が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・63に重なるように補正熱画像20と基準熱画像30とを重ね、補正熱画像20と基準熱画像30との差分たる差画像40を生成する工程である。
【0087】
以上の如く、本発明に係る温度測定方法の実施の一形態は、
鋳造用金型1の熱画像10を撮像する熱画像撮像工程S1100と、
熱画像撮像工程S1100において撮像された鋳造用金型1の熱画像10における特徴点41・42・43を抽出する特徴点抽出工程S1200と、
特徴点抽出部121bにより抽出された熱画像10における特徴点41の座標(X11,Y11)、特徴点42の座標(X12,Y12)、特徴点43の座標(X13,Y13)、および予め撮像された鋳造用金型1の基準熱画像30において設定された基準特徴点61の座標(X01,Y01)、基準特徴点62の座標(X02,Y02)、基準特徴点63の座標(X03,Y03)に基づき、熱画像10における特徴点41・42・43が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・62に重なるように、熱画像10に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施して補正熱画像20を生成する補正熱画像生成工程S1300と、
補正熱画像生成工程S1300において生成された補正熱画像20における複数の特徴点(補正特徴点51・52・53)が基準熱画像30における対応する基準特徴点61・62・63に重なるように補正熱画像20と基準熱画像30とを重ね、補正熱画像20と基準熱画像30との差分たる差画像40を生成する差画像生成工程S1400と、
を具備するものである。
このように構成することにより、基準熱画像30および熱画像10の間で撮像視野がずれている場合であっても、熱画像10および基準熱画像30の画像データに含まれる情報である特徴点41・42・43の座標情報および基準特徴点61・62・63の座標情報に基づいて熱画像10を幾何学的に補正し、基準熱画像30に精度良く重ね合わせることが可能である。
従って、信頼性が高い(温度情報の精度が高い)差画像40を容易に生成することが可能である。
【0088】
また、本発明に係る温度測定方法の実施の一形態の熱画像10における特徴点41・42・43のうちの少なくとも一つ(本実施例の場合、特徴点41・42の二つ)は、熱画像10を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、熱画像10について予め設定された領域21・22内においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものであり、
本発明に係る温度測定方法の実施の一形態の基準熱画像30における基準特徴点61・62・63のうちの少なくとも一つ(本実施例の場合、基準特徴点61・62の二つ)は、基準熱画像30を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、基準熱画像30について予め設定された領域21・22においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものである。
このように構成することにより、基準熱画像30の撮像時と熱画像10の撮像時とで鋳造用金型1と熱画像撮像手段(本実施例の場合、赤外線カメラ110)との間の位置関係(距離、姿勢等)に係る情報等を必要とせず、熱画像10の画像データのみに基づいて特徴点41・42を容易に抽出することが可能であるとともに、基準熱画像30の画像データのみに基づいて基準特徴点61・62を容易に抽出することが可能である。
従って、基準熱画像30の撮像時と熱画像10の撮像時とで鋳造用金型1と熱画像撮像手段(本実施例の場合、赤外線カメラ110)との間の位置関係を高い精度で保持しなくても信頼性が高い(温度情報の精度が高い)差画像40を容易に生成することが可能であり、作業性に優れる。
【0089】
また、本発明に係る温度測定方法の実施の一形態の対象物は鋳造用の金型(鋳造用金型1)である。
このように構成することにより、繰り返し使用される鋳造用金型1が正常な状態であるか異常な状態であるかを差画像40に基づいて容易に判定することが可能であり、鋳造工程の管理の質の向上および管理に要する労力(あるいは管理コスト)の軽減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係る温度測定装置の実施の一形態を示す図。
【図2】熱画像の一例を示す図。
【図3】基準熱画像を示す模式図。
【図4】熱画像を示す模式図。
【図5】補正熱画像を示す模式図。
【図6】差画像を示す模式図。
【図7】本発明に係る温度測定方法の実施の一形態を示すフロー図。
【符号の説明】
【0091】
1 鋳造用金型(対象物)
10 熱画像
20 補正熱画像
30 基準熱画像
40 差画像
41・42・43 特徴点
51・52・53 補正特徴点
61・62・63 基準特徴点
100 温度測定装置
121b 特徴点抽出部(特徴点抽出手段)
121c 補正熱画像生成部(補正熱画像生成手段)
121d 差画像生成部(差画像生成手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の熱画像における単数または複数の特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、
前記特徴点抽出手段により抽出された前記熱画像における単数または複数の特徴点の座標および予め撮像された対象物の基準熱画像において設定された単数または複数の基準特徴点の座標に基づき、前記熱画像における単数または複数の特徴点が前記基準熱画像における対応する前記単数または複数の基準特徴点に重なるように、前記熱画像に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施して補正熱画像を生成する補正熱画像生成手段と、
前記補正熱画像生成手段により生成された補正熱画像における単数または複数の特徴点が前記基準熱画像における対応する単数または複数の基準特徴点に重なるように前記補正熱画像と前記基準熱画像とを重ね、前記補正熱画像と前記基準熱画像との差分たる差画像を生成する差画像生成手段と、
を具備する温度測定装置。
【請求項2】
前記熱画像を撮像する熱画像撮像手段を具備する請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記熱画像における単数または複数の特徴点のうちの少なくとも一つは、前記熱画像を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、前記熱画像について予め設定された単数または複数の領域内においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものであり、
前記基準熱画像における単数または複数の基準特徴点のうちの少なくとも一つは、前記基準熱画像を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、前記基準熱画像について予め設定された単数または複数の領域内においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものである請求項1または請求項2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記対象物は鋳造用の金型である請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の温度測定装置。
【請求項5】
対象物の熱画像を撮像する熱画像撮像工程と、
前記熱画像撮像工程において撮像された対象物の熱画像における単数または複数の特徴点を抽出する特徴点抽出工程と、
前記特徴点抽出工程において抽出された前記熱画像における単数または複数の特徴点の座標および予め撮像された対象物の基準熱画像において設定された単数または複数の基準特徴点の座標に基づき、前記熱画像における単数または複数の特徴点が前記基準熱画像における対応する前記単数または複数の基準特徴点に重なるように、前記熱画像に回転処理、平行移動処理または拡大・縮小処理のいずれか一つまたは二つ以上を施して補正熱画像を生成する補正熱画像生成工程と、
前記補正熱画像生成工程において生成された補正熱画像における単数または複数の特徴点が前記基準熱画像における対応する単数または複数の基準特徴点に重なるように前記補正熱画像と前記基準熱画像とを重ね、前記補正熱画像と前記基準熱画像との差分たる差画像を生成する差画像生成工程と、
を具備する温度測定方法。
【請求項6】
前記熱画像における単数または複数の特徴点のうちの少なくとも一つは、前記熱画像を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、前記熱画像について予め設定された単数または複数の領域内においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものであり、
前記基準熱画像における単数または複数の基準特徴点のうちの少なくとも一つは、前記基準熱画像を構成する画素群のうちの単数の画素または複数の画素の集合体であって、前記基準熱画像について予め設定された単数または複数の領域内においてそれぞれ表示温度が最も高いまたは表示温度が最も低いものである請求項5に記載の温度測定方法。
【請求項7】
前記対象物は鋳造用の金型である請求項5または請求項6に記載の温度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−249637(P2008−249637A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94122(P2007−94122)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591172054)株式会社明和eテック (24)
【Fターム(参考)】