説明

温度計測システム

【課題】デジタル温度検出信号の精度が向上する温度計測システムを提供することを目的とする。
【解決手段】温度に応じた電圧の温度検出信号を出力するサーミスタ21と、サーミスタが出力する温度検出信号をアナログ/デジタル変換するADコンバータ19とを有し、デジタル化した温度検出信号をマイクロコンピュータ15に取り込む温度計測システムであって、電池から供給される電源を用いて基準電圧を生成するリファレンス回路14と、基準電圧を用いてサーミスタ21の動作電圧を生成する第1のレギュレータ16と、基準電圧を用いてADコンバータの動作電圧を生成する第2のレギュレータ13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーミスタを用いた温度計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、サーミスタを用いて温度を計測し、計測温度をデジタル化してマイクロコンピュータに取り込み、温度制御等に利用することが行われている。
【0003】
図3は従来の温度計測システムの一例の回路構成図を示す。図3において、サーミスタ1の一端は電池2に接続され、サーミスタ1の他端はブリーダ抵抗3を介して接地されている。サーミスタ1とブリーダ抵抗3の接続点はADコンバータ4に接続されており、サーミスタ1で検出した温度検出信号がADコンバータ4に供給される。
【0004】
レギュレータ5は電池2から供給される直流電圧を安定化してADコンバータ4及びマイクロコンピュータ6に供給している。ADコンバータ4は温度検出信号をアナログ/デジタル変換してマイクロコンピュータ6に供給する。マイクロコンピュータ6はデジタルの温度検出信号を取り込んで、この温度検出信号に基づいた処理を実行し、例えば図示しない駆動回路等を制御する。
【0005】
ところで、サーミスタを用いてその抵抗値に応じた検知電圧Vsを生成し、検知電圧Vsをアナログデジタル変換して検知電圧データDvsを生成し、検知電圧データDvsを用いてテーブルメモリ104のアドレスを生成し、そのアドレスに対応する温度データDtに基づいて、所定の判定条件が成立したことを検知して熱検知報知信号OUTを出力し、熱検知報知信号OUTに応じて熱検知信号を出力する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−251852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の温度計測システムでは、マイクロコンピュータ6が図示しないイグナイタ等の駆動回路を起動する際に、駆動回路が大電流を消費するために電池2の電圧が一時的に低下する場合等がある。さらには、使用時間が長くなるにつれて電池2の電圧は徐々に低下する。
【0008】
電池電圧が低下すると、温度が一定であってもサーミスタ1とブリーダ抵抗3の接続点の電圧は低下する。これに対し、ADコンバータ4にはレギュレータ5から一定電圧に安定化された電圧が供給されているために、ADコンバータ4は電池電圧の低下とはほとんど関係なく通常動作を行い、この結果、電池電圧が低下したときのADコンバータ4が出力するデジタル温度検出信号の値は、電池電圧が低下していない通常動作時に比して小さな値となり、デジタル温度検出信号の精度が悪化するという問題があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、デジタル温度検出信号の精度が向上する温度計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施態様による温度計測システムは、温度に応じた電圧の温度検出信号を出力するサーミスタ(21)と、前記サーミスタが出力する温度検出信号をアナログ/デジタル変換するADコンバータ(19)とを有し、デジタル化した温度検出信号をマイクロコンピュータ(15)に取り込む温度計測システムであって、
電池から供給される電源を用いて基準電圧を生成するリファレンス回路(14)と、
前記基準電圧を用いて前記サーミスタ(21)の動作電圧を生成する第1のレギュレータ(16)と、
前記基準電圧を用いて前記ADコンバータ(19)の動作電圧を生成する第2のレギュレータ(13)と、を有する。
【0011】
好ましくは、前記サーミスタ(21)は、一端に前記第1のレギュレータ(16)で生成した動作電圧を供給され、前記サーミスタ(21)の他端はブリーダ抵抗(R11)を介して接地され、前記サーミスタ(21)と前記ブリーダ抵抗(R11)の接続点から温度検出信号を出力する。
【0012】
好ましくは、前記サーミスタは複数設けられており、
前記複数のサーミスタ(21〜23)が出力する温度検出信号のいずれか1つを選択して前記ADコンバータ(19)に供給するマルチプレクサ(20)を有する。
【0013】
好ましくは、前記複数のサーミスタ(21〜23)は、複数のガスバーナで加熱される鍋底の温度を測定する。
【0014】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、デジタル温度検出信号の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の温度計測システムの一実施形態の回路構成図である。
【図2】アナログ回路用のレギュレータの一実施形態の回路図である。
【図3】従来の温度計測システムの一例の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0018】
<温度計測システムの構成>
図1は本発明の温度計測システムの一実施形態の回路構成図を示す。図1において、電池11は温度計測システム10の全体に電源VCCを供給する。電池11は負極を接地され、正極をデジタル回路用のレギュレータ12とアナログ回路用のレギュレータ13とリファレンス回路14に接続されている。
【0019】
デジタル回路用のレギュレータ12は電池11から供給される電源VCCを安定化し電源電圧Vcc1としてマイクロコンピュータ15に供給する。アナログ回路用のレギュレータ13は電池11から電源VCCを供給されると共にリファレンス回路14から基準電圧Vrefを供給されており、基準電圧Vrefに応じて電源電圧Vcc2(例えば2,0V)を生成し、この電源電圧Vcc2をサーミスタ用レギュレータ16,17,18及びADコンバータ19に供給する。
【0020】
このように、デジタル回路用のレギュレータ12とアナログ回路用のレギュレータ13を分離しているのは、デジタル回路つまりマイクロコンピュータ15で発生した高周波ノイズがリファレンス回路14やサーミスタ用レギュレータ16,17,18やADコンバータ19に混入することをできるだけ防止するためである。
【0021】
リファレンス回路14は電池11から供給される電源VCCを安定化して基準電圧Vref(例えば1.5V)を発生し、この基準電圧Vrefをアナログ回路用のレギュレータ13及びサーミスタ用レギュレータ16,17,18に供給する。
【0022】
図2にアナログ回路用のレギュレータ13の一実施形態の回路図を示す。レギュレータ13は演算増幅器OP0とpチャネルMOSトランジスタM0と直列接続された抵抗Ra,Rbで構成されている。演算増幅器OP0の非反転入力端子に基準電圧Vrefが供給され、演算増幅器OP0の反転入力端子は抵抗Ra,Rbの接続点に接続されている。演算増幅器OP0の出力端子はMOSトランジスタM0のゲートに接続されている。
【0023】
MOSトランジスタM0のソースには電池11から電源VCCが供給され、MOSトランジスタM0のドレインに抵抗Raの一端が接続され、抵抗Rbの他端は接地されている。演算増幅器OP0は抵抗Ra,Rbの接続点からフィードバックされる電圧が基準電圧Vrefと同一になるように動作することで、MOSトランジスタM0のドレインから出力する電圧Vcc2を例えば2.0V等の一定電圧とする。
【0024】
図1において、サーミスタ用レギュレータ16は演算増幅器OP1とpチャネルMOSトランジスタM1と直列接続された抵抗R1,R2で構成されている。演算増幅器OP1の非反転入力端子に基準電圧Vrefが供給され、演算増幅器OP1の反転入力端子は抵抗R1,R2の接続点に接続されている。演算増幅器OP1の出力端子はMOSトランジスタM1のゲートに接続されている。なお、MOSトランジスタM1のゲートにはマイクロコンピュータ15から選択信号が供給される。
【0025】
MOSトランジスタM1のソースにはアナログ回路用のレギュレータ13から電源電圧Vcc2が供給され、MOSトランジスタM1のドレインに抵抗R1の一端が接続され、抵抗R2の他端は接地されている。演算増幅器OP1は抵抗R1,R2の接続点からフィードバックされる電圧が基準電圧Vrefと同一になるように動作することで、MOSトランジスタM1のドレインから出力する電圧Vcc3を例えば1.9V等の一定電圧とする。
【0026】
また、MOSトランジスタM1のドレインは端子TH1を介してサーミスタ21の一端に接続されている。サーミスタ21の他端はブリーダ抵抗R11を介して接地されている。サーミスタ21とブリーダ抵抗R11の接続点は端子AN1を介してマルチプレクサ20に接続されており、サーミスタ21の温度検出信号(電圧)がマルチプレクサ20のスイッチ20aに供給される。
【0027】
サーミスタ用レギュレータ17は演算増幅器OP2とpチャネルMOSトランジスタM2と直列接続された抵抗R3,R4で構成されている。演算増幅器OP2の非反転入力端子に基準電圧Vrefが供給され、演算増幅器OP2の反転入力端子は抵抗R3,R4の接続点に接続されている。演算増幅器OP2の出力端子はMOSトランジスタM2のゲートに接続されている。なお、MOSトランジスタM2のゲートにはマイクロコンピュータ15から選択信号が供給される。
【0028】
MOSトランジスタM2のソースにはアナログ回路用のレギュレータ13から電源電圧Vcc2が供給され、MOSトランジスタM2のドレインに抵抗R3の一端が接続され、抵抗R4の他端は接地されている。演算増幅器OP2は抵抗R3,R4の接続点からフィードバックされる電圧が基準電圧Vrefと同一になるように動作することで、MOSトランジスタM2のドレインから出力する電圧Vcc4を例えば1.9V等の一定電圧とする。
【0029】
また、MOSトランジスタM2のドレインは端子TH2を介してサーミスタ22の一端に接続されている。サーミスタ22の他端はブリーダ抵抗R12を介して接地されている。サーミスタ22とブリーダ抵抗R12の接続点は端子AN2を介してマルチプレクサ20に接続されており、サーミスタ22の温度検出信号(電圧)がマルチプレクサ20のスイッチ20bに供給される。
【0030】
サーミスタ用レギュレータ18は演算増幅器OP3とpチャネルMOSトランジスタM3と直列接続された抵抗R5,R6で構成されている。演算増幅器OP3の非反転入力端子に基準電圧Vrefが供給され、演算増幅器OP3の反転入力端子は抵抗R5,R6の接続点に接続されている。演算増幅器OP3の出力端子はMOSトランジスタM3のゲートに接続されている。なお、MOSトランジスタM3のゲートにはマイクロコンピュータ15から選択信号が供給される。
【0031】
MOSトランジスタM3のソースにはアナログ回路用のレギュレータ13から電源電圧Vcc2が供給され、MOSトランジスタM3のドレインに抵抗R5の一端が接続され、抵抗R6の他端は接地されている。演算増幅器OP3は抵抗R5,R6の接続点からフィードバックされる電圧が基準電圧Vrefと同一になるように動作することで、MOSトランジスタM3のドレインから出力する電圧Vcc5を例えば1.9V等の一定電圧とする。
【0032】
また、MOSトランジスタM3のドレインは端子TH3を介してサーミスタ23の一端に接続されている。サーミスタ23の他端はブリーダ抵抗R13を介して接地されている。サーミスタ23とブリーダ抵抗R13の接続点は端子AN3を介してマルチプレクサ20に接続されており、サーミスタ23の温度検出信号(電圧)がマルチプレクサ20のスイッチ20cに供給される。
【0033】
マルチプレクサ20はスイッチ20a,20b,20cを有し、マイクロコンピュータ15からの制御でスイッチ20a,20b,20cのいずれか1つをオンされて、温度検出信号をADコンバータ19に供給する。
【0034】
ADコンバータ19はアナログ回路用のレギュレータ13から電源電圧Vcc2を供給され、この電源電圧Vcc2を基準としてサーミスタ21〜23の温度検出信号をデジタル化する。
【0035】
マイクロコンピュータ15は、MOSトランジスタM1のゲートにハイインピーダンス(Hiz)、MOSトランジスタM2,M3のゲートにハイレベル(H)の選択信号を供給して、サーミスタ21〜23のうちサーミスタ21のみを動作させると共に、マルチプレクサ20のスイッチ20a〜20cのうちスイッチ20cのみをオンさせる。これにより、サーミスタ21の温度検出信号(電圧)がADコンバータ19に供給され、デジタル化されてマイクロコンピュータ15に供給される。
【0036】
また、マイクロコンピュータ15は、MOSトランジスタM2のゲートにハイインピーダンス(Hiz)、MOSトランジスタM1,M3のゲートにハイレベル(H)の選択信号を供給して、サーミスタ21〜23のうちサーミスタ22のみを動作させると共に、マルチプレクサ20のスイッチ20a〜20cのうちスイッチ20bのみをオンさせる。これにより、サーミスタ22の温度検出信号(電圧)がADコンバータ19に供給され、デジタル化されてマイクロコンピュータ15に供給される。
【0037】
また、マイクロコンピュータ15は、MOSトランジスタM3のゲートにハイインピーダンス(Hiz)、MOSトランジスタM1,M2のゲートにハイレベル(H)の選択信号を供給して、サーミスタ21〜23のうちサーミスタ23のみを動作させると共に、マルチプレクサ20のスイッチ20a〜20cのうちスイッチ20aのみをオンさせる。これにより、サーミスタ23の温度検出信号(電圧)がADコンバータ19に供給され、デジタル化されてマイクロコンピュータ15に供給される。
【0038】
マイクロコンピュータ15はサーミスタ21〜23それぞれが出力するデジタルの温度検出信号を取り込んで内蔵するメモリに書き込み、この温度検出信号に基づいた処理を実行する。
【0039】
例えば上記の温度計測システムがガスコンロに搭載され、サーミスタ21〜23を用いてガスコンロの3つのガスバーナで加熱される鍋底の温度を計測する場合には、3つのガスバーナそれぞれにおける鍋底の温度を所定温度に保つよう、各ガスバーナにおけるガス供給のバルブ調整処理等を実行する。
【0040】
ここで、アナログ回路用のレギュレータ13とサーミスタ用レギュレータ16〜18は共にリファレンス回路14から供給される基準電圧Vrefに基づいて電源Vcc2,Vcc3〜Vcc5を生成している。このため、電池11の電圧が変動して基準電圧Vrefが変動したとしても、電源Vcc2とVcc3〜Vcc5は同一の割合で変動し、電源Vcc2を用いてAD変換を行うADコンバータ19におけるLSB(最下位ビット)は基準電圧Vrefの変動と同一割合で変動する。
【0041】
この結果、電池電圧が低下したときのADコンバータ19が出力するデジタル温度検出信号の値は電池電圧が低下していない通常動作時と同一の値となり、デジタル温度検出信号の精度が向上する。
【符号の説明】
【0042】
10 温度計測システム
11 電池
12 デジタル回路用のレギュレータ
13 アナログ回路用のレギュレータ
14 リファレンス回路
15 マイクロコンピュータ
16,17,18 サーミスタ用レギュレータ
19 ADコンバータ
20 マルチプレクサ
21,22,23 サーミスタ
M0〜M3 MOSトランジスタ
Ra,Rb,R1〜R13 抵抗
OP0〜OP3 演算増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に応じた電圧の温度検出信号を出力するサーミスタと、前記サーミスタが出力する温度検出信号をアナログ/デジタル変換するADコンバータとを有し、デジタル化した温度検出信号をマイクロコンピュータに取り込む温度計測システムであって、
電池から供給される電源を用いて基準電圧を生成するリファレンス回路と、
前記基準電圧を用いて前記サーミスタの動作電圧を生成する第1のレギュレータと、
前記基準電圧を用いて前記ADコンバータの動作電圧を生成する第2のレギュレータと、
を有することを特徴とする温度計測システム。
【請求項2】
請求項2記載の温度計測システムにおいて、
前記サーミスタは、一端に前記第1のレギュレータで生成した動作電圧を供給され、前記サーミスタの他端はブリーダ抵抗を介して接地され、前記サーミスタと前記ブリーダ抵抗の接続点から温度検出信号を出力することを特徴とする温度計測システム。
【請求項3】
請求項2記載の温度計測システムにおいて、
前記サーミスタは複数設けられており、
前記複数のサーミスタが出力する温度検出信号のいずれか1つを選択して前記ADコンバータに供給するマルチプレクサ
を有することを特徴とする温度計測システム。
【請求項4】
請求項3記載の温度計測システムにおいて、
前記複数のサーミスタは、複数のガスバーナで加熱される鍋底の温度を測定することを特徴とする温度計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−247218(P2012−247218A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117125(P2011−117125)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】