説明

温度調節システム

【課題】熱電素子モジュールを用いて被温度調節部を温度調節する際に、熱電素子モジュールにおける第1の面と第2の面との温度差を小さくすること。
【解決手段】熱電素子モジュール30を、第1の面31が放熱するとともに第2の面32が吸熱するように電流の流れる向きを設定した。また、温度調節システム20を、第1ヒートパイプ41と、第2ヒートパイプ42と、第1熱交換器51と、第2熱交換器52と、第1流通路61と、第2流通路62と、第1切替弁V1とから構成した。そして、二次電池11を加熱する際には、第1流通路61を流れる第1空気のみが二次電池11に向けて流れるとともに、二次電池11を冷却する際には、第2流通路62を流れる第2空気のみが二次電池11に向けて流れるように、二次電池11に対する接続を第1流通路61又は第2流通路62に第1切替弁V1により切り替えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流の流れる向きによって吸熱又は放熱する第1の面及び第2の面を有する熱電素子モジュールを用いて被温度調節部を温度調節する温度調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の温度調節システムとしては、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1の蓄電池(二次電池)の温度調節装置は、電流の流れる向きによって放熱と吸熱の相反する作用をする第1の面と、第2の面とを持った熱電変換デバイス(熱電素子モジュール)を備えている。第1の面は1つ又は複数の蓄電池と熱結合されるとともに、第2の面はその面の熱作用を促進する熱作用促進媒体と熱結合されている。
【0003】
そして、例えば、熱電変換デバイスに対して電流(電気)を一方の向きへ流すことにより、第1の面が冷却されて吸熱を行うとともに第2の面が加熱されて放熱を行い、第1の面に熱結合された蓄電池が冷却され、蓄電池の温度が所定の温度以上に上がらないように温度調節される。また、例えば、熱電変換デバイスに対して電流を他方の向きへ流すことにより、第1の面が加熱されて放熱を行うとともに第2の面が冷却されて吸熱を行い、第1の面に熱結合された蓄電池が加熱され、蓄電池の温度が所定の温度以下に下がらないように温度調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−7356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような熱電変換デバイスでは、熱電変換デバイスに対して電流を流すことに伴い、第1の面と第2の面との温度差が徐々に大きくなっていく。この温度差が大きくなればなるほど、熱電変換効率が低下し、熱電変換デバイスに対する消費電力が増大してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、熱電素子モジュールを用いて被温度調節部を温度調節する際に、熱電素子モジュールにおける第1の面と第2の面との温度差を小さくすることができる温度調節システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、電流の流れる向きによって吸熱又は放熱する第1の面及び第2の面を有する熱電素子モジュールを用いて被温度調節部を温度調節する温度調節システムであって、前記熱電素子モジュールは、前記第1の面及び前記第2の面の一方の面が放熱するとともに他方の面が吸熱するように前記電流の流れる向きが設定されており、前記一方の面と熱的に結合され、前記一方の面の放熱により沸騰する第1作動流体が封入された第1沸騰冷却器と、前記他方の面と熱的に結合され、前記他方の面の吸熱により凝縮される第2作動流体が封入された第2沸騰冷却器と、前記第1沸騰冷却器内で沸騰により蒸発した第1作動流体と熱交換する第1熱交換部と、前記第1熱交換部と接続され、前記第1熱交換部で前記第1作動流体との熱交換で加熱される第1熱媒体が前記被温度調節部に向かって流通する第1流通路と、前記第2沸騰冷却器内で沸騰する第2作動流体と熱交換する第2熱交換部と、前記第2熱交換部と接続され、前記第2熱交換部で前記第2作動流体との熱交換で冷却される第2熱媒体が前記被温度調節部に向かって流通する第2流通路と、前記第1流通路及び前記第2流通路において、前記第1熱交換部及び前記第2熱交換部よりも前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体の流通方向下流側に設けられる切替手段と、を備え、前記切替手段は、前記被温度調節部を加熱する際には前記第1流通路を流れる第1熱媒体が前記被温度調節部に向けて流れるとともに、前記被温度調節部を冷却する際には前記第2流通路を流れる第2熱媒体が前記被温度調節部に向けて流れるように、前記被温度調節部に対する接続を前記第1流通路又は前記第2流通路に切り替えることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、一方の面の放熱によって第1沸騰冷却器内の第1作動流体が沸騰するため、一方の面が沸騰冷却される。さらに、第1沸騰冷却器内で沸騰により蒸発した第1作動流体が第1熱交換部において第1熱媒体と熱交換されることで凝縮して液体に戻る。また、この熱交換により第1熱媒体が加熱される。そして、被温度調節部を加熱する際には、この加熱された第1熱媒体のみが被温度調節部に向けて流れるように、切替手段によって被温度調節部に対する接続を第1流通路又は第2流通路に切り替えることで、被温度調節部を第1熱媒体により加熱することができる。
【0009】
一方、第2熱交換部での第2熱媒体との熱交換により、第2沸騰冷却器内の第2作動流体が沸騰する。この第2作動流体の沸騰により、第2熱媒体が沸騰冷却される。そして、被温度調節部を冷却する際には、この冷却された第2熱媒体のみが被温度調節部に向けて流れるように、切替手段によって被温度調節部に対する接続を第1流通路又は第2流通路に切り替えることで、被温度調節部を第2熱媒体により冷却することができる。そして、第2沸騰冷却器内で沸騰して蒸発した第2作動流体は、他方の面の吸熱により冷却され、凝縮される。この第2作動流体の凝縮により第2作動流体の持つ熱が他方の面に伝わって他方の面が加熱される。その結果として、第1の面及び第2の面のうち一方の面は沸騰冷却されるとともに他方の面は加熱されるため、第1の面と第2の面との温度差を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、熱電素子モジュールを用いて被温度調節部を温度調節する際に、熱電素子モジュールにおける第1の面と第2の面との温度差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態における温度調節システムを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1にしたがって説明する。なお、温度調節システムは、車両としてのハイブリッド車に搭載されるとともに、走行モータを駆動するための二次電池を温度調節するために用いられる。すなわち、本実施形態では、二次電池が被温度調節部に相当する。
【0013】
図1に示すように、温度調節システム20の熱電素子モジュール30には、給電部Eから供給される電流の流れる向きによって、吸熱又は放熱する第1の面31及び第2の面32が形成されている。
【0014】
第1の面31には、第1沸騰冷却器としての第1ヒートパイプ41が固定されている。第1ヒートパイプ41は直線状に延びるように形成されている。第1ヒートパイプ41内には第1作動流体が封入されている。第1ヒートパイプ41には、その一端側に第1作動流体が貯留される第1貯留部41aが形成されるとともに、他端側に第1凝縮部41bが形成されている。第1ヒートパイプ41は、第1貯留部41aが第1の面31に接するように配置されている。第1凝縮部41bには第1熱交換部としての第1熱交換器51が接続されている。
【0015】
第2の面32には、第2沸騰冷却器としての第2ヒートパイプ42が固定されている。第2ヒートパイプ42は直線状に延びるように形成されている。第2ヒートパイプ42内には第2作動流体が封入されている。第2ヒートパイプ42には、その一端側に第2作動流体が貯留される第2貯留部42aが形成されるとともに、他端側に第2凝縮部42bが形成されている。第2ヒートパイプ42は、第2凝縮部42bが第2の面32に接するように配置されている。第2貯留部42aには第2熱交換部としての第2熱交換器52が接続されている。なお、第1ヒートパイプ41及び第2ヒートパイプ42内は真空になっているため減圧されている。
【0016】
第1熱交換器51には第1熱媒体としての第1空気が流通する第1流通路61が接続されるとともに、第2熱交換器52には第2熱媒体としての第2空気が流通する第2流通路62が接続されている。第1流通路61及び第2流通路62における第1空気及び第2空気の流通方向下流側の一端には切替手段としての第1切替弁V1が接続されるとともに、第1流通路61及び第2流通路62の他端には第2切替弁V2が接続されている。また、第1切替弁V1には第3流通路63の一端が接続されるとともに、第3流通路63の他端は二次電池11を収容する電池パック12に接続されている。第3流通路63と電池パック12内とは連通している。
【0017】
電池パック12には還流路64の一端が接続されるとともに、還流路64と電池パック12内とは連通している。また、還流路64の他端には第2切替弁V2が接続されている。還流路64には循環ポンプPが配設されている。さらに、ハイブリッド車にはブロア70が搭載されている。ブロア70には供給路65の一端が接続されるとともに、供給路65の他端は第2切替弁V2に接続されている。
【0018】
第1切替弁V1は、第1流通路61を流れる第1空気のみが第1切替弁V1及び第3流通路63を介して電池パック12内の二次電池11に向かって流れるように、二次電池11に対する接続を第1流通路61に切り替える第1切替位置に切替可能になっている。第1切替弁V1が第1切替位置に切り替えられたとき、第2流通路62を流れる第2空気は、第1切替弁V1を介して外部へ放出されるようになっている。
【0019】
また、第1切替弁V1は、第2流通路62を流れる第2空気のみが第1切替弁V1及び第3流通路63を介して電池パック12内の二次電池11に向かって流れるように、二次電池11に対する接続を第2流通路62に切り替える第2切替位置に切替可能になっている。第1切替弁V1が第2切替位置に切り替えられたとき、第1流通路61を流れる第1空気は、第1切替弁V1を介して外部へ放出されるようになっている。
【0020】
第2切替弁V2は、還流路64と第1流通路61とを連通させるとともに、還流路64と第2流通路62との連通を遮断させる第1切替位置に切替可能になっている。第2切替弁V2が第1切替位置に切り替えられたとき、供給路65及び第2切替弁V2を介して第1流通路61に向かうブロア70から供給される空気の流れが遮断され、ブロア70から供給された空気が供給路65及び第2切替弁V2を介して第2流通路62に向けて流れ込むようになっている。すなわち、第2切替弁V2が第1切替位置に切り替えられた状態では、ブロア70から供給される空気は、第2流通路62に向けて流れ込むため、第2空気に相当する。
【0021】
また、第2切替弁V2は、還流路64と第2流通路62とを連通させるとともに、還流路64と第1流通路61との連通を遮断させる第2切替位置に切替可能になっている。第2切替弁V2が第2切替位置に切り替えられたとき、供給路65及び第2切替弁V2を介して第2流通路62に向かうブロア70から供給される空気の流れが遮断され、ブロア70から供給された空気が供給路65及び第2切替弁V2を介して第1流通路61に向けて流れ込むようになっている。すなわち、第2切替弁V2が第2切替位置に切り替えられた状態では、ブロア70から供給される空気は、第1流通路61に向けて流れるため、第1空気に相当する。
【0022】
第1切替弁V1及び第2切替弁V2はそれぞれ同期して第1切替位置及び第2切替位置に切り替わるように設定されている。よって、第1切替弁V1及び第2切替弁V2がそれぞれ第1切替位置に切り替わると、第1流通路61を流れる第1空気が、循環ポンプPの駆動に伴い、第1切替弁V1、第3流通路63、電池パック12内、還流路64、第2切替弁V2及び第1流通路61の順に循環するようになっている。また、第1切替弁V1及び第2切替弁V2がそれぞれ第1切替位置に切り替わると、ブロア70から供給された空気は、第2切替弁V2を介して第2流通路62を流れて、第1切替弁V1を介して外部へ放出されるようになっている。
【0023】
一方、第1切替弁V1及び第2切替弁V2がそれぞれ第2切替位置に切り替わると、第2流通路62を流れる第2空気が、循環ポンプPの駆動に伴い、第1切替弁V1、第3流通路63、電池パック12内、還流路64、第2切替弁V2及び第2流通路62の順に循環するようになっている。また、第1切替弁V1及び第2切替弁V2がそれぞれ第2切替位置に切り替わると、ブロア70から供給された空気は、第2切替弁V2を介して第1流通路61を流れて、第1切替弁V1を介して外部へ放出されるようになっている。
【0024】
このように、本実施形態では、熱電素子モジュール30、第1ヒートパイプ41、第2ヒートパイプ42、第1流通路61、第2流通路62、第1熱交換器51、第2熱交換器52、第3流通路63、還流路64、供給路65、第1切替弁V1、第2切替弁V2、ブロア70及び給電部Eにより温度調節システム20が構成されている。
【0025】
次に、本実施形態の作用について説明する。なお、本実施形態では、第1の面31が放熱するとともに第2の面32が吸熱するように、熱電素子モジュール30に対する給電部Eからの電流の向きが予め設定されている。よって、本実施形態では、第1の面31が一方の面に相当するとともに、第2の面32が他方の面に相当する。
【0026】
二次電池11を加熱する場合、第1切替弁V1及び第2切替弁V2はそれぞれ第1切替位置に切り替えられる。すると、循環ポンプPの駆動に伴い、第1流通路61を流れる第1空気が、第1切替弁V1、第3流通路63、電池パック12内、還流路64、第2切替弁V2及び第1流通路61の順に循環する。また、第1の面31は放熱するため、第1ヒートパイプ41の第1貯留部41aに熱が伝わって第1貯留部41a内の第1作動流体が沸騰することで、第1の面31が沸騰冷却される。さらに、第1貯留部41a内で沸騰して蒸発した第1作動流体は、第1熱交換器51での第1空気との熱交換により第1凝縮部41bで凝縮される。その結果として、第1凝縮部41b内で凝縮された第1作動流体は液体に戻り、第1貯留部41aに戻る。この第1熱交換器51での熱交換により、第1作動流体の持つ熱が第1空気に伝わり、第1空気が加熱される。そして、第1熱交換器51で加熱された第1空気が、第1切替弁V1及び第3流通路63を介して電池パック12内に供給され、この第1空気によって二次電池11が加熱される。
【0027】
また、第1切替弁V1及び第2切替弁V2がそれぞれ第1切替位置に切り替えられることで、ブロア70から供給された空気が第2切替弁V2を介して第2空気として第2流通路62に流れ込む。そして、第2ヒートパイプ42の第2貯留部42a内に貯留された第2作動流体は、第2熱交換器52での第2空気との熱交換により沸騰する。この第2作動流体の沸騰により、第2熱交換器52では第2空気が冷却される。この冷却された第2空気は、第1切替弁V1を介して外部へ放出される。
【0028】
また、第2貯留部42a内で沸騰して蒸発した第2作動流体は、第2の面32の吸熱によって冷却される第2凝縮部42b内で凝縮されて液体に戻る。この第2の面32の吸熱により第2作動流体の持つ熱が第2の面32に伝わり、第2の面32が加熱される。その結果として、第1の面31と第2の面32との温度差が小さくなる。
【0029】
二次電池11を冷却する場合、第1切替弁V1及び第2切替弁V2はそれぞれ第2切替位置に切り替えられる。すると、循環ポンプPの駆動に伴い、第2流通路62を流れる第2空気が、第1切替弁V1、第3流通路63、電池パック12内、還流路64、第2切替弁V2及び第2流通路62の順に循環する。また、第2ヒートパイプ42の第2貯留部42a内に貯留された第2作動流体は、第2熱交換器52での第2空気との熱交換により沸騰する。この第2作動流体の沸騰により、第2熱交換器52では第2空気が冷却される。そして、第2熱交換器52で冷却された第2空気が、第1切替弁V1及び第3流通路63を介して電池パック12内に供給され、この第2空気によって二次電池11が冷却される。
【0030】
また、第1切替弁V1及び第2切替弁V2がそれぞれ第2切替位置に切り替えられることで、ブロア70から供給された空気が第2切替弁V2を介して第1空気として第1流通路61に流れ込む。ここで、第1の面31は放熱するため、第1ヒートパイプ41の第1貯留部41aに熱が伝わって第1貯留部41a内の第1作動流体が沸騰することで、第1の面31が沸騰冷却される。その結果として、第1の面31と第2の面32との温度差が小さくなる。
【0031】
また、第1貯留部41a内で沸騰して蒸発した第1作動流体は、第1熱交換器51での第1空気との熱交換により第1凝縮部41bが凝縮される。その結果として、第1凝縮部41b内で凝縮された第1作動流体は液体に戻り、第1貯留部41aに戻る。この第1熱交換器51での熱交換により第1作動流体の持つ熱が第1空気に伝わり、第1空気が加熱される。この加熱された第1空気は、第1切替弁V1を介して外部へ放出される。
【0032】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)熱電素子モジュール30を、第1の面31が放熱するとともに第2の面32が吸熱するように電流の流れる向きを設定した。また、温度調節システム20を、第1ヒートパイプ41と、第2ヒートパイプ42と、第1熱交換器51と、第2熱交換器52と、第1流通路61と、第2流通路62と、第1切替弁V1とから構成した。そして、二次電池11を加熱する際には、第1流通路61を流れる第1空気のみが二次電池11に向けて流れるとともに、二次電池11を冷却する際には、第2流通路62を流れる第2空気のみが二次電池11に向けて流れるように、二次電池11に対する接続を第1流通路61又は第2流通路62に第1切替弁V1により切り替えるようにした。これによれば、第1流通路61を流れる第1空気は、第1ヒートパイプ41内で沸騰して蒸発した第1作動流体との熱交換により加熱される。よって、二次電池11を加熱する際には、この加熱された第1空気のみが二次電池11に向けて流れるように、第1切替弁V1によって二次電池11に対する接続を第1流通路61又は第2流通路62に切り替えることで、二次電池11を第1空気により加熱することができる。一方、第2流通路62を流れる第2空気は、第2ヒートパイプ42内の第2作動流体により沸騰冷却される。よって、二次電池11を冷却する際には、この冷却された第2空気のみが二次電池11に向けて流れるように、第1切替弁V1によって二次電池11に対する接続を第1流通路61又は第2流通路62に切り替えることで、二次電池11を第2空気により冷却することができる。その結果として、熱電素子モジュール30の電流の流れる向きを切り替えることなく、第1切替弁V1を切り替えるだけで二次電池11の温度調節を行うことができる。
【0033】
そして、温度調節システム20においては、第1の面31の放熱によって第1ヒートパイプ41内の第1作動流体が沸騰するため、第1の面31を沸騰冷却することができる。また、第2ヒートパイプ42内で沸騰して蒸発した第2作動流体は、第2の面32の吸熱により冷却される。よって、第2作動流体の持つ熱が第2の面32に伝わって第2の面32を加熱することができる。その結果として、第1の面31と第2の面32との温度差を小さくすることができるため、熱電素子モジュール30に対する消費電力を抑えることができ、温度調節システム20における運転効率が悪化してしまうことを防止することができる。
【0034】
(2)二次電池11に対する接続を第1流通路61又は第2流通路62に切り替える第1切替弁V1を設けた。例えば、二次電池11を加熱する際に、第2流通路62を流れる第2空気の二次電池11への流れを遮断する遮断手段を別途設けるとともに、二次電池11を冷却する際に、第1流通路61を流れる第1空気の二次電池11への流れを遮断する遮断手段を別途設ける場合が考えられる。この場合に比べると、部品点数を削減でき、システムを簡素化することができる。
【0035】
(3)例えば、空気(外気)や水等を利用して第1の面31と第2の面32との温度差を小さくすることが考えられるが、空気や水は、環境の変化(条件)に伴って、空気や水自身の温度が変化するため、第1の面31が冷却され難かったり、第2の面32が加熱され難かったりする場合がある。しかし、本実施形態では、第1ヒートパイプ41及び第2ヒートパイプ42を利用して、第1の面31と第2の面32との温度差を小さくしているため、環境の変化に左右され難く、第1の面31と第2の面32との温度差を小さくし易くすることができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、還流路64及び第2切替弁V2を削除してもよい。この場合、例えば、第1流通路61に第1空気を供給するブロアを別途設けるとともに、第2流通路62に第2空気を供給するブロアを別途設けるようにする。
【0037】
○ 実施形態において、第1熱交換器51及び第2熱交換器52を削除してもよい。例えば、第1流通路61を第1ヒートパイプ41の第1凝縮部41bに直接接続させるとともに、第2流通路62を第2ヒートパイプ42の第2貯留部42aに直接接続させるようにしてもよい。この場合、第1凝縮部41bが第1熱交換部として機能するとともに、第2貯留部42aが第2熱交換部として機能する。
【0038】
○ 実施形態では、空気を用いて二次電池11を温度調節したが、これに限らず、例えば、水を用いて二次電池11を温度調節してもよい。この場合、第1切替弁V1を介して外部へ水を放出せずに、水を第1流通路61又は第2流通路62へ還流させる経路を別途設けるとよい。
【0039】
○ 実施形態では、二次電池11を被温度調節部として適用したが、これに限らず、例えば、車室空間を被温度調節部として適用してもよい。
○ 実施形態では、ハイブリッド車に適用したが、これに限らず、例えば、電気自動車やエンジン車に適用してもよい。
【0040】
○ 実施形態では、車両用の温度調節システム20としたが、これに限らず、例えば、住宅用の電池温調システムとしてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0041】
(イ)前記被温度調節部は二次電池であることを特徴とする請求項1に記載の温度調節システム。
(ロ)前記温度調節システムは車両に搭載されていることを特徴とする請求項1又は前記技術的思想(イ)に記載の温度調節システム。
【符号の説明】
【0042】
V1…切替手段としての第1切替弁、11…被温度調節部としての二次電池、20…温度調節システム、30…熱電素子モジュール、31…一方の面である第1の面、32…他方の面である第2の面、41…第1沸騰冷却器としての第1ヒートパイプ、42…第2沸騰冷却器としての第2ヒートパイプ、51…第1熱交換部としての第1熱交換器、52…第2熱交換部としての第2熱交換器、61…第1流通路、62…第2流通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流の流れる向きによって吸熱又は放熱する第1の面及び第2の面を有する熱電素子モジュールを用いて被温度調節部を温度調節する温度調節システムであって、
前記熱電素子モジュールは、前記第1の面及び前記第2の面の一方の面が放熱するとともに他方の面が吸熱するように前記電流の流れる向きが設定されており、
前記一方の面と熱的に結合され、前記一方の面の放熱により沸騰する第1作動流体が封入された第1沸騰冷却器と、
前記他方の面と熱的に結合され、前記他方の面の吸熱により凝縮される第2作動流体が封入された第2沸騰冷却器と、
前記第1沸騰冷却器内で沸騰により蒸発した第1作動流体と熱交換する第1熱交換部と、
前記第1熱交換部と接続され、前記第1熱交換部で前記第1作動流体との熱交換で加熱される第1熱媒体が前記被温度調節部に向かって流通する第1流通路と、
前記第2沸騰冷却器内で沸騰する第2作動流体と熱交換する第2熱交換部と、
前記第2熱交換部と接続され、前記第2熱交換部で前記第2作動流体との熱交換で冷却される第2熱媒体が前記被温度調節部に向かって流通する第2流通路と、
前記第1流通路及び前記第2流通路において、前記第1熱交換部及び前記第2熱交換部よりも前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体の流通方向下流側に設けられる切替手段と、を備え、
前記切替手段は、前記被温度調節部を加熱する際には前記第1流通路を流れる第1熱媒体が前記被温度調節部に向けて流れるとともに、前記被温度調節部を冷却する際には前記第2流通路を流れる第2熱媒体が前記被温度調節部に向けて流れるように、前記被温度調節部に対する接続を前記第1流通路又は前記第2流通路に切り替えることを特徴とする温度調節システム。

【図1】
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