説明

温水器および給湯方法

温水器は、温水タンク、公共給水本管に接続される給水管,および蛇口に接続される排水管を備える。温水タンクは、タンク内側を取り囲む円筒壁を有し、温水タンク内に配置された加熱体と、温度制御装置とが設けられている。タンクの円筒壁は、圧力によって変形可能に構成され、タンクを膨張および圧縮可能にする蛇腹形状部を備える。タンク壁の蛇腹形状部は、タンクの膨張に対して釣り合いを保つことができる圧力下のガスを収容したガス室によって取り囲まれている。本発明はさらに、温水を供給する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの温水タンクと、公共給水本管に接続される給水管と、蛇口に接続される排水管とを備え、温水タンクは、タンク内側の少なくとも一部を取り囲む少なくとも1つの壁を有し、温水タンク内に配置された加熱体と、温度制御装置とが設けられた温水器に関する。
【背景技術】
【0002】
温水器において、給水本管からの水は所望の温度に加熱される。加熱により水は2〜5%程度、膨張する。膨脹した分の水は、どこかへ逃がす必要がある。これについて、従来技術は、温水器の種類によって種々の方法を提案している。ここで、無加圧(常圧)ヒータと圧力タンクを備えるヒータとは区別しなければならない。膨張問題の解決には、設置に関する国内規制を考慮する必要がある。
【0003】
常圧温水器は一般的に、給水口側に弁が設けられ、温水排水口が開放されている。多くの場合、膨張した温水は排水口から漏出するように構成されており、シンプルだが洗練された解決策ではない。蛇口から漏水しているとユーザにとっては煩わしく、また、水および(加熱)エネルギの浪費につながる。
【0004】
常圧温水器には、タンクに通気孔が設けられており、水蒸気がそこから逃げてしまうという難点がある。そのため、常圧温水器は、80℃を超える温水の保存にはあまり適していない。したがって、温水器は適切に換気された部屋に設置する必要がある。
【0005】
本発明のように温水の保存に圧力タンクを用いる場合、種々の膨張システムが利用される。
【0006】
第1のシステムでは、逆止弁、溢れ弁、および流出漏斗(入口側コンビネーション)を利用する。溢れ弁はタンク直前の冷水供給管に取り付けられる。最大給水圧力よりも高い所定圧力を超えると、当該弁が開放し、開放連結部と、一般的にドレン管に通じる漏斗形部材とから膨張水が排水される。この方法には以下の難点がある。すなわち、(1)例えば台所の戸棚内のドレン管がつまった場合、ドレンとの開放連結部によってオーバーフローする可能性がある。(2)湯温に応じて2〜5%の水が無駄になる。(3)各加熱サイクルの間、タンク内の圧力が必然的に最大給水圧力より上昇する。(4)膨脹水ドレンを設置するために余分な設置作業が必要になるとともに、戸棚内の利用可能なスペースが犠牲になる。
【0007】
第2のシステムでは、逆止弁と膨脹タンクが冷水注入口の前に設置される。加熱が行われると、膨脹水は膨張タンクに導かれる。これにより、以下の事柄が生じる。すなわち、(1)ガスと水との間を分離する(EPDMまたはブチルゴムの)膜は完全に気密ではないため、定期的にタンクを加圧する必要がある。(2)かなり大きな追加部材を設置する必要があり、コストが増大するとともにスペースが必要となる。(3)膨張タンク内の水の流れが確保されず(供給管1本)、一定の条件下では細菌増殖を引き起こす可能性がある。
【0008】
従って、この方法は給湯装置に無条件に適用できるものではない。さらに、作業面も大きな難点となっている。
【0009】
第3のシステムでは、膨張水を回収するために内部空気室が利用される。このシステムによると、膨張水を排水したり、外部に回収することによる難点の解決策として、温水タンクの上部に大量の空気が溜められる。タンクが充填される際に十分に大量の空気を減少給水圧力(reduced water supply pressure)まで圧縮するように、排水路がボイラ内を下方に延びている。水が加熱されると、膨張タンクは閉じ込められた空気を圧縮する。その結果、空気圧、さらにはタンク内の圧力が増加する。空気が加熱されることによって圧力はさらに増加する。最終的に、湯の上に存在する飽和水蒸気の非常に高い圧力によって、膨張チャンバ内の圧力が上昇する。これらの3つの要素によって、最初にタンクを加熱すると圧力を大きく増加させることができる。最終圧力を制限する唯一の方法は、水の加熱による圧縮を抑制するように、比較的大きい空気の空間を使うことである。しかし、大きな空気室は、必要な(冷たい)空気の圧縮を得るために温水排出口をより深くボイラ内に延在させることによってのみ、実現できる。初めに冷たい空気を圧縮して膨張バッファを生成する必要があることが、「エアバブル」膨張システムの主な障害である。これにより、蛇口から水を出すときに、温水の大部分が出てこないという結果になる。保存温度が75℃より高い場合、これは重大な欠点になる。
【0010】
別の問題は、ガス(空気/水蒸気)と水との間が分離しておらず、空気量が増減可能ということである。空気量の増加は、蛇口が開けられたときに空気の流出につながり、一方、空気量の減少は、加熱の際にボイラ内の過圧を引き起こしかねない。さらに、内部空気/蒸気気泡は、高温の水蒸気および酸素と、液体レベルの変動との組み合わせにより、腐食リスクを増大させてしまう。
【0011】
DE8806097U1には、家庭用の温水タンク用温水ヒータが開示されており、ゴムまたは他の弾性材料からなる膜を備え、水が加熱されたときに水の容量増加を吸収するように、膜とタンクカバーまたはタンク壁との間にガス室が形成されている。
【0012】
DE3040450A1には、壁に変形可能なひだ部が設けられた常圧温水タンクが開示されている。ひだ部にはバイメタル層が設けられており、温度変化の際にひだ部を活発に変形させて、タンク容量を変化させるようにしている。別の実施の形態では、温度変化の際に、タンクを膨張または収縮させることができるバイメタルプリーツを備える圧縮バーが、タンクに設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、既知の温水器の難点をできるだけ解消し、なるべく設置が簡単で構成がコンパクトな新しい温水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明による温水器は、タンクの壁は、少なくとも、圧力によって変形可能に構成され、タンクを膨張および圧縮可能にする壁部を備え、タンク壁の変形可能部は、タンクの膨張に対して釣り合いを保つことができる圧力下のガスを収容したガス室と作動可能に接する、望ましくはガス室によって囲まれることを特徴とする。
【0015】
本発明による温水器を利用することにより、固定ガス室と協働するタンクを用いるので、空気/蒸気気泡膨張チャンバの問題が大幅に解消される。これにより、以下の効果が得られる。
(1)タンクを完全に水で満たすことができるので、タンク全体の容積分、湯を供給できる。
(2)水蒸気による圧力増加がない。
(3)分離されたガス室にガスが閉じ込められ、水から隔離されるので、ガスの量が一定である。
ガス室をピストン等を介してタンクの変形可能部に接続してもよいが、変形可能部を直接的にガス室で包囲させることで、シンプルでよりコンパクトな構成とすることができ、有利である。
【0016】
変形可能部を変形可能なひだすなわち(ジグザグの)折り畳み部から構成することで、温水器の作動圧力で変形可能であって非伸縮性の材料を利用することができるという利点がある。
【0017】
タンクは、長手軸をもつ円筒の周壁と2つの端壁とを備えることが望ましい。タンクの周壁は、端壁のうちの少なくとも1つの近傍に変形可能部を備え、変形可能部において、ひだすなわち折り畳み部はタンクを長手軸方向に膨張および圧縮可能とするように蛇腹すなわちアコーディオン形状を形成し、周壁の蛇腹部および隣接する端部はガス室によって取り囲まれる。または、側壁のうちの少なくとも1つに、変形可能部が設けられ、ガス室によって取り囲まれている。
【0018】
これにより、容易に変形可能な蛇腹部が形成され、伸縮可能な材料の使用が必要となることなく、比較的大きな体積変化を伴う、制御の容易な膨張および圧縮を実現できる。
【0019】
そこで、壁の変形可能部、および望ましくは壁の全体は、金属、とくに、1枚のステンレス鋼からなり、壁厚は約0.6mm以下、望ましくは約0.4mmとしてもよい。
【0020】
タンクの変形可能部は、タンクが最大で、非膨張時の容積に対して多くても約10%、望ましくは多くて5%、膨張できるように設計されていることが望ましい。多くの場合、タンク内で加熱された水の膨張分を吸収するにはこれで十分である。
【0021】
タンクには、タンク壁の変形可能部の少なくとも圧縮動作を制限するためのストッパが設けられ、このストッパはガス室壁の内側、例えば、とくにガス室の周壁に設置され、蛇腹部の少なくとも1つのひだと係合することができる。
【0022】
これにより、タンクの最小容積が確立され、そこから、水の膨張によって予測可能な形でタンクの膨張が発生する。
【0023】
無負荷状態において蛇腹部の長さは、使用時における蛇腹部の最大長さと最小長さとの間、望ましくは最大長さと最小長さのおよそ中間の長さとすることができる。
【0024】
その結果、蛇腹部は無負荷状態にとる位置から遠くまで移動せず、また、静止状態において負荷を受けたとしても大きな負荷は受けないので、通常の使用において蛇腹部がうける負荷が小さくなる。
【0025】
ガス室の容積は、非膨張状態におけるタンクの容積の、約10〜50%、望ましくは10〜25%とすることができる。容積が比較的小さいことから、ガス室によって温水器全体の容積は少ししか増加しない。
【0026】
本発明による温水器の望ましい実施の形態において、加熱体および温度制御装置は、超大気圧(super-atmospheric pressure conditions)下で100℃を超える温度まで水を加熱するように設計されている。
【0027】
したがって、温水器は沸騰水を直接供給するのに適している。
【0028】
本発明は、また、少なくとも1つの膨張可能なタンクを備え、公共給水本管に接続される給水管と、蛇口に接続される排水管とが設けられた温水器を利用して温水を供給する方法に関する。本発明による方法は、
(1)非膨張のタンクが冷水で完全に満たされるまで給水本管からタンクに水を供給する工程と、
(2)タンク内の水を望ましくは100℃以上に加熱して、水の容積を増加させてタンクを膨張させる工程と、
(3)蛇口から連続的に水を排出し、ガスの圧力によってタンクを再び収縮状態まで圧縮させる工程と、
(4)タンクに再び水を補充して加熱し、排出された水の量に応じた分、タンクを膨張させる工程とを備える。
【0029】
以下に、本発明による温水器の実施の形態を示す図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明による温水器の一実施例の概略図を示す。
【図2】図2は、図1の温水器の可能な実施形態の断面図を示す。
【図3】図3は、本発明による温水器の別の実施例におけるタンクの変形可能壁部が膨張した状態を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明による温水器の別の実施例におけるタンクの変形可能壁部の図3とは異なる膨張状態を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明による温水器のタンクの変形可能壁部の別の実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、温水器の可能な実施形態を概略的に示している。温水器は、温水タンク1、公共給水本管Mに接続可能な給水管2、および蛇口Tに接続可能な排水管3を備える。給水管2には、給水本管Mから水が供給される際に、タンク1内の圧力を制御するための逆止弁4および減圧弁5が設けられている。さらに、温水器には加熱体6が設けられている。
【0032】
温水器のタンク1は、周壁部11、上壁部12、および底壁部13を備えている。本実施の形態では、周壁部11の一部14、この場合は下部が、タンク1内の圧力を受けて弾性変形可能に形成されており、これにより、タンク1を伸縮可能にしている。本実施の形態では、前記部分14はしわ(corrugations)またはひだ(pleats)、すなわち蛇腹形状によって変形可能に構成されている。本実施の形態において、蛇腹形状部14は、非変形の状態において、周壁部11の長さの半分よりも若干短い部分(例えば約30%から、4,50%程度)を占めており、蛇腹形状部は、タンク内の水容量の5〜10%の増加を吸収できるように設計されている。蛇腹形状部は加熱体の一部の周囲に延在し、タンク1の一体部分を形成する。タンク1の蛇腹部材の収縮および場合によっては膨張は、ひだの少なくとも一部と係合するストッパ15によって制限可能である。この場合、蛇腹形状部材14が収縮すると、蛇腹形状部材14の最も下のひだ14’がストッパ15に当接する。
【0033】
本実施の形態では、(この場合は)環状のストッパ15が、端壁部17とともにガス室18、とくに空気室を画定する周壁部16に形成されており、ガス室はタンク1の蛇腹形状部14と底壁部13を包囲している。ガス室18の周壁部16は、タンク1の周壁部11の蛇腹形状部14のすぐ上の位置に、例えば溶接によって固定されている。これにより、ガス室壁16,17がタンク1とともに、使用中は実質的に変形しない固定ユニットを形成し、蛇腹形状部14がガス室壁16,17に対して相対的に移動可能となる。その結果、蛇腹形状部14の伸縮に応じてガス室18の容積が増減し、ガス室18内の圧力がタンク1の底壁部13に作用し、蛇腹部材14を圧縮状態とするような付勢力を与えることで、ガス室14が温水タンク1のガススプリングとして機能することができる。タンク1の蛇腹形状部14の伸縮度合は、タンク1内の水の圧力(および重量)と、ガス室18内の圧力および蛇腹形状部材の剛性との間のバランスに依存する。そこで、柔軟性の高い蛇腹はより剛性の高い蛇腹よりもタンク内の最大圧力を小さくできるので、蛇腹形状部14のばね定数が比較的小さいほうが有利である。ガス室の容積は、非膨張状態のタンク1の容積の、例えば約10〜50%、好ましくは10〜25%とすることができる。
【0034】
蛇腹形状部14および望ましくはタンク1の全周壁部11は、1枚のステンレス鋼から形成することができる。ここで、壁厚は約0.6mm以下、望ましくは0.4mmとすることができる。タンクの周壁部は、例えばハイドロフォーミングによって形成できる。ステンレス鋼はとくに、衛生的で飲料用温水器への使用に非常に適していることから選択されている。蛇腹形状部14は、無負荷状態の長さが使用時における蛇腹部14の最大長さと最小長さとの間、望ましくは最大長さと最小長さのおよそ中間の長さとなるように設計されるのが望ましい。これは、蛇腹部14の最も下のひだ14’がストッパ15に当接し、タンク1内の圧力が(実質的に)ゼロになった場合に、蛇腹部14はガス室18内の圧力によってスプリング圧に抗して圧縮されることを意味する。水の加熱によって蛇腹部14が膨張し、タンク内の圧力が増加すると、蛇腹部14は初め弛緩し、その後、無負荷点を通過した後、スプリング圧に抗して膨張する。
【0035】
図1示す温水器の作用は以下のとおりである。
【0036】
温水器を使用する際、タンク1は給水本管からの水で完全に満たされる。このとき、タンク1内の水およびガス室18内の空気は冷たく、通常、温度は10〜20℃である。このような低温の場合、ガス室18内の空気によってタンク1の底壁部13に作用する力は、水温および空気温が約110℃となる通常の使用状態よりも、約25%小さくなる。したがって、蛇腹形状部14は、最も下のひだがストッパ15に当接し、タンク1の容積が最小となる位置をとる。その結果、蛇腹形状部14、さらにはタンク1は最大限、膨張することが可能となる。ガス室18内の圧力は、若干圧縮された蛇腹形状部14の圧力、およびタンク1内の水の圧力に対抗する。
【0037】
タンク1内の水が加熱体6によって加熱されると、水は膨張し、容積が増大して蛇腹形状部14を膨張させる。その結果、タンク1の底壁部13は下方に移動し、ガス室18内の圧力はガス室の容積減少とガス室18内の温度上昇に伴って増加する。タンク1の底壁部13は力の釣り合いを保つように常に位置が調整される。実際には、通常の使用状態においては、蛇腹部14は、2番目のひだがストッパ15に当接するまでしか膨張しない。なお、タンク1内の水は実際に膨張しているのにタンク1はそれ以上膨張できないような状態では、タンク1内の圧力が非常に高いレベルに到達するので、このような状況はもちろん回避しなければならない。
【0038】
タンク1内の水の容積は、タンクが冷水で完全に満たされ、その水が加熱されたときに最も大きくなる。これは、通常の開始/終了温度(average starting and end temperatures)の差が最も大きくなるからである。
【0039】
温水器が利用開始され、最初に蛇口Tが開けられると、膨張容積分(3Lタンクの場合、通常、125ml)、水が蛇口Tから流出し、蛇腹形状部がストッパ15に当接する最上位置に戻り、水圧は減少給水本管圧力近傍の圧力まで低下する。蛇口Tを閉じた後、減圧弁の作用によってタンク1の底壁部13の下方への力は徐々に増大するが、この状況においても、ガス室18内の加熱空気は冷却状態よりも約25〜30%高くなっているので、蛇腹形状部はストッパ15と接したままである。
【0040】
新たに供給された冷水は、加熱体6によって加熱される。蛇口Tから流出した温水の量(したがって供給された冷水の量)に応じて、タンク1内の水は加熱により大なり小なり膨張するが、この場合の膨張は常に、タンクが全て冷水で充填された場合よりも小規模であることは明らかである。したがって、蛇腹形状部14は最大限までは膨張しない。タンク1から排水され、タンク内に水が補給されるたびに、以上のサイクルが繰り返し行われる。
【0041】
図2は、図1に示す温水器の一実施の形態を示しており、温度センサ7と電子温度制御装置8が設けられ、タンク1内の水温がサーモスタット制御される。タンク1の上壁部12は、ボルト等の固定部材によってタンクのフランジに固定されるカバーによって形成される。カバーが取り外されると、カバーに取り付けられた温度センサ7、加熱体6、給水/排水管3,4もタンクから取り外される。さらに、ガス室18の周壁部16がタンク1の周壁部の上部に滑らかに当接し、タンク1の外側を滑らかにしている様子が図示されている。これにより、USP6,612,268B1に開示された真空断熱タンクを構成することが可能となる。当該公報記載の内容は引用文としてここに組み込まれる。簡単のため、断熱材19によってタンク1の断熱を表している。
【0042】
図3,4は、本発明による温水器の別の実施の形態の、とくにタンク1の壁部の変形可能部分を概略的に示している。図3,4は、タンク1の周壁部11、タンク1の底壁部13、およびガス室18の周壁部16と底壁部17を示す。この場合、タンク1には環状横断隔壁(annular cross bulkhead)20が設けられ、ここではアコーディオン形状を有する変形可能壁部14が隔壁に取り付けられている。圧縮状態では、アコーディオン形壁部14はストッパとして機能する横断隔壁20に当接している。当該アコーディオン形壁部14は金属、とくに容易に成形および溶接でき、さらに耐食性の高いステンレス鋼から形成することができる。アコーディオンは、要求される耐圧性(例えば内部と外部で3barの圧力差)をもたらすように2x0.25mmの複数のセグメントから構成することができる。ガス室18の容積は約450mlとすることができ、この場合、容量3Lのタンクを使用した場合、変形可能部14によって150mlの膨張容積を得ることができる(図3に示す位置と図4に示す位置との差)。
【0043】
図5は、変形可能壁部の別の実施の形態を概略的に示しており、この場合、タンク1の底壁部13に変形可能壁部22が設けられている。本実施の形態では、変形可能壁部22は、缶底に見られるような円形プリーツ23を備えている。この場合のプリーツは、タンク1を伸縮可能とするためにより顕著なものとなっている。図5には、円筒タンクの中心軸に平行な方向に移動する変形可能部22の異なる変形状態に相当する2つの位置における底壁部13が示されている。少なくとも底壁部の中央は作動可能にガス室に接する必要がある。ここでは、底壁部の全体がガス室に取り囲まれている。
【0044】
上記から明らかなように、本発明によって非常にシンプルでコンパクトな温水器を提供できる。さらに、膨脹水を無駄にすることがなく、温水器を経済的に使用できる。本発明の態様によって温水器の通常の動作および効率に悪影響を与えることはなく、また、衛生レベルも維持できる。本発明による態様は、とくに、例えば台所シンク下の戸棚に機器を設置し、台所で沸騰水を提供する温水器として非常に有効に実施できる。
【0045】
本発明は、図示された上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく変形が可能である。したがって、図示し、上述した実施の形態において、変形可能部は弾性変形可能であって、原則的には使用中に非伸縮性の材料から形成され、タンクの変形だけでなく材料の伸縮も膨張に影響を与えないようにされている。
【0046】
非伸縮性材料と円筒タンクの場合、膨張の大部分はタンクの中心軸に平行な方向に沿って発生し、移動する各端壁部(端壁部の全体もしくは中央部分)は作動可能にガス室に接する、もしくはガス室に包囲される。上述したように、変形可能部は、ばね定数、さらには要求される変形力が比較的低く、水の圧力と釣り合いを保つための力が主にガスの圧力によって生成されるように、変形可能部が設計および構成される。
【0047】
蛇口Tもしくは蛇口Tの前において、または別の水栓位置において、温水器からの温水を冷水と混合することができ、これにより温水器から所望の温度の温水を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの温水タンクと、公共給水本管に接続される給水管と、蛇口に接続される排水管とを備え、前記温水タンクは、タンク内側の少なくとも一部を取り囲む少なくとも1つの壁を有し、前記温水タンク内に配置された加熱体と、温度制御装置とが設けられた温水器であって、
前記タンクの前記壁は、少なくとも、圧力によって変形可能に構成され、前記タンクを膨張および圧縮可能にする壁部を備え、
前記タンク壁の前記変形可能部は、前記タンクの膨張に対して釣り合いを保つことができる圧力下のガスを収容したガス室と作動可能に接する、望ましくはガス室によって包囲されることを特徴とする温水器。
【請求項2】
請求項1に記載の温水器において、
前記変形可能部は、変形可能なひだを有することを特徴とする温水器。
【請求項3】
請求項2に記載の温水器において、
前記タンクは、長手軸をもつ円筒の周壁と2つの端壁とを備え、
前記タンクの前記周壁は、前記端壁のうちの少なくとも1つの近傍に前記変形可能部を備え、前記変形可能部において、前記ひだすなわち折り畳み部は前記タンクを前記長手軸方向に膨張および収縮可能とするように蛇腹すなわちアコーディオン形状を形成し、前記周壁の前記蛇腹部および隣接する端部は前記ガス室によって取り囲まれ、または、前記側壁のうちの少なくとも1つに前記変形可能部が設けられ、前記ガス室によって取り囲まれていることを特徴とする温水器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の温水器において、
前記変形可能部、および望ましくは前記壁の全体は、金属、とくに、1枚のステンレス鋼からなり、壁厚は約0.6mm以下、望ましくは約0.4mmであることを特徴とする温水器。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の温水器において、
前記ガス室は、前記温水タンクとガス室壁との間に形成され、前記ガス室壁は少なくとも前記ガス室の端壁と周壁を有することを特徴とする温水器。
【請求項6】
請求項5に記載の温水器において、
前記ガス室の前記周壁は、当該周壁の端部が前記ガス室の前記端壁から遠方に、とくに前記変形可能部の近傍において、前記温水器の前記周壁に取り付けられることを特徴とする温水器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の温水器において、
前記タンクの前記変形可能部は、前記タンクが最大で、非膨張時の容積に対して多くても約10%、望ましくは多くて5%、膨張できるように設計されていることを特徴とする温水器。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の温水器において、
前記タンクには、前記タンク壁の前記変形可能部の少なくとも収縮動作を制限するためのストッパが設けられていることを特徴とする温水器。
【請求項9】
請求項5および請求項8に記載の温水器において、
前記ストッパは前記ガス室壁の内側、とくに前記ガス室の前記周壁に設置され、前記蛇腹部の少なくとも1つのひだと係合することを特徴とする温水器。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の温水器において、
前記給水管には、前記タンク内の圧力を制御する減圧弁が設けられていることを特徴とする温水器。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の温水器において、
前記蛇腹部は、無負荷状態の長さが、使用時における蛇腹部の最大長さと最小長さとの間、望ましくは前記最大長さと前記最小長さのおよそ中間の長さであることを特徴とする温水器。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の温水器において、
前記蛇腹部は、非膨張状態において、前記周壁11の全長の約30〜50%を占めることを特徴とする温水器。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の温水器において、
前記ガス室の容積は、非膨張状態における前記タンクの容積の、約10〜50%、望ましくは10〜25%であることを特徴とする温水器。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の温水器において、
前記加熱体および前記温度制御装置は、超大気圧下で100℃を超える温度まで水を加熱するように設計されていることを特徴とする温水器。
【請求項15】
請求項3に記載の温水器において、
前記タンクの前記蛇腹部近傍の前記端壁は、前記タンクの底壁を形成することを特徴とする温水器。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の温水器において、
前記加熱体は、前記タンクの前記変形部によって囲まれた部分内まで延びていることを特徴とする温水器。
【請求項17】
少なくとも1つの膨張可能なタンクを備え、公共給水本管に接続される給水管と、蛇口に接続される排水管とが設けられた温水器を利用して温水を供給する方法であって、
(1)非膨張のタンクが冷水で完全に満たされるまで前記給水本管から前記タンクに水を供給する工程と、
(2)前記タンク内の水を望ましくは100℃以上に加熱して、水の容積を増加させて前記タンクを膨張させる工程と、
(3)前記蛇口から連続的に水を排出し、ガスの圧力によって前記タンクを再び収縮状態まで圧縮させる工程と、
(4)前記タンクに再び水を補充して加熱し、排出された水の量に応じた分、前記タンクを膨張させる工程とを備えることを特徴とする方法。
【請求項18】
少なくとも1つの温水圧力タンクと、圧力下の水を引き込み、最低でも80℃まで加熱して保存するために公共給水本管に接続される給水管と、飲料用蛇口に接続される排水管とを備え、前記温水タンクは、全体が耐食性金属からなり、中心軸を中心として形成された少なくとも1つの円筒壁を有する少なくとも1つの壁を備え、前記円筒壁は、前記タンクの内側の少なくとも一部を取り囲み、前記温水タンク内に配置された加熱体と、温度制御装置とが設けられた温水器であって、
前記タンクの前記円筒壁は、前記タンクの端部近傍に、変形可能なひだが設けられ、前記タンク内の水の圧力によって前記中心軸に平行な方向に変形可能に構成され、前記タンクを膨張および圧縮可能にする壁部を備え、
前記円筒タンク壁の前記変形可能部および隣接する前記タンクの端壁は、前記タンクの膨張に対して釣り合いを保つことができる圧力下のガスを収容したガス室によって作動可能に取り囲まれることを特徴とする温水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−523024(P2011−523024A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513438(P2011−513438)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050321
【国際公開番号】WO2009/151321
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509095972)ヘンリ ペテリ ベヘール ベスローテン フェンノートシャップ (5)
【Fターム(参考)】