説明

温水洗浄便座システム

【課題】
出火をいち早く検知できる、温水洗浄便座システムの提供。
【解決手段】
便器の後部上側に固定され且つ前記便器の幅方向に延在するケースと、前記ケース内の一方側に配設された電磁弁と、前記ケース内の他方側に配設された温水タンクと、前記ケースの内の略中央部に位置し且つ前記便器内に延在するノズルを有する人体局部洗浄機構と、制御回路をして前記電磁弁を開いて給水源からの水圧を前記温水タンク内に供給せしめることにより前記温水タンク内の温水を押し出して前記ノズルから噴射せしめ、前記ケースとは別体のリモコンボックス及び前方に延在すべく前記ケースの一方側に着脱自在に固定された張出部のいずれかに収容される操作機構と、前記操作機構に内蔵された煙・火災センサーと、前記煙・火災センサーの作動時、警報を発する警報装置とを備えた温水洗浄便座システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水洗浄便座システムに関し、特に防災機能を付加した温水洗浄便座システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体臀部を温水で洗浄する温水洗浄装置は、一般家庭だけでなく、ホテル、デパート、図書館などの公共的な施設のトイレルームにも設置されるようになってきている。しかして、公共的なトイレルームでは種々の悪戯を受けることがあり、特に、タバコやライターの火を便蓋、便座、便座ボックス、ロータンクカバーに当てる悪戯が多く見受けられる。このような悪戯が度を過ぎると、便座ボックスやロータンクカバーが燃え出すことがある。かような事態が惹起された場合のことを考えて、特許文献1は、防災機能を付加した温水洗浄便座システムを開示する。
【0003】
すなわち、特許文献1が開示する防災機能を付加した温水洗浄便座システムにおいては、、洋風便器の後部上面のベースプレート上に温水タンク、ロータンク、温風乾燥装置、脱臭ファン等の機器が設置されている。また、これらの機器を覆うようにタンクカバーがベースプレート上に設置されている。しかして、ロータンクの下部に放水弁が設けられており、タンクカバー内に配設されたセンサーで検知される気温が所定温度を超えるときには、火災が発生したものと判断され、制御回路が放水装置を作動させて、消火を行うようになっている。
【特許文献1】特開2002−138554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに特許文献1に開示された防災機能を付加した温水洗浄便座システムは、火災の際、放水装置を作動させることになっており、初期消火を実効あらしめるという点では、大変優れたものであると言わねばならない。しかし、放水装置を作動させるタイミングに関しては、決して早いとは言えない。すなわち、放水装置が作動して放水が開始されるのは、タンクカバー内に配設されたセンサーで検知される気温が所定温度を超えた時点であるが、タンクカバーの内部は手洗吐水口から流出する水が通過する孔以外にはトイレ室空間と連通する箇所が事実上無いことに鑑みれば、センサーが火災を検知するのは、出火の時点ではなく、出火から暫くしてからとならざるを得ない。そうだとすれば、放水装置からの放水により消火は出来るものの、焼損部位は決して少なくないことは、想像に難くない。
【0005】
それ故に、本発明は、出火と略同時に、出火を検知できる温水洗浄便座を提供することを、その技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために講じた技術的手段は、請求項1に記載のように、
「便器の後部上側に固定され且つ前記便器の幅方向に延在するケースと、前記ケース内に配設された温水タンクと、前記ケース内に配設され給水源と温水タンクとの間に介装される電磁弁と、前記ケースの内の略中央部に位置し且つ前記便器内に延在するノズルを有する人体局部洗浄機構と、前記ケースとは別体のリモコンボックス及び前方に延在すべく前記ケースの一方側から張り出した張出部のいずれかに収容され、制御回路をして前記電磁弁を開いて給水源からの水圧を前記温水タンク内に供給せしめることにより前記温水タンク内の温水を押し出して前記ノズルから噴射せしめるように前記人体局部洗浄機構を操作する操作機構とを備える温水洗浄便座システムにおいて、
前記操作機構に内蔵された煙・火災センサーと、前記煙・火災センサーの作動時、警報を発する警報装置とを備えた温水洗浄便座システム。」
を構成したことである。
【0007】
しかして、請求項2に記載のように、前記煙・火災センサーの作動時、前記便器が設置される空間の内部を撮影し、その画像を所定の場所に伝送する撮像装置を付加したり、請求項3記載のように、前記煙・火災センサーの作動時、前記制御回路に関連する装置等への通電を停止するようにしても良い。後者の場合は、請求項4記載のように、前記通電止に続いて、前記便器が設置される空間の内部に散水がなされるようにすることが出来る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リモコンボックス又は張出部のいずれかに収容され操作機構に煙・火災センサーが内蔵されているので、出火をいち早く検知できる。このため、実用上、多大な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0010】
図1乃至図3において、温水洗浄便座装置10は、便器12の後部上面に固定されるケース14を備える。ケース14の中央膨出部14Aには便座94及び便蓋96が共通のピン(図示略)により枢着されている。ケース14の一方側には、後述するように、張出部16が着脱自在に且つ前方に張り出して固定されており、この張出部16には操作部24が一体的に設けられる。ケース14内には、第1制御回路20、第2制御回路30、電磁弁40、ヒータ52により加熱された温水を貯溜する温水タンク50及びノズル機構60が配設されている。
【0011】
ケース14の内部の一方側に配置される電磁弁40は、ホース42を介して給水源48と、ホース44を介して温水タンク50と、夫々、連結されている。すなわち、電磁弁40は、給水源48と温水タンク50との間に介装されている。操作部24が操作されると、第1制御回路20の作用により、電磁弁40が開かれ、水圧が給水源48から温水タンク50内に導入される。すると、温水タンク50内の温水が、切換弁66を介して肛門洗浄用ノズル62(ビデ洗浄ノズル64)に押し出されて、肛門洗浄用ノズル62(ビデ洗浄ノズル64)を便器12内に伸長し、この温水が、周知のように、肛門洗浄用ノズル62(ビデ洗浄ノズル64)から噴射されて、使用者の肛門(ビデ)を洗浄する。何れのノズルに温水が供給されるかは、操作部24の押されたスイッチに依存する切換弁66の作用位置による。
【0012】
温水タンク50は、ケース14の内部の他方側に配置される。温水タンク50内の水はヒータ52により加熱される。水温は、温度センサ54により常時、検知されており、当該温度が信号として、第2制御回路30のCPU32に送られる。CPU32は水温が所定値に達したら、トライアック34を断続させて電源90からヒータ22への通電制御をなし、常時、水温を所定値に維持するようになっている。
【0013】
図1を再度、参照すると、ケース14内の一方側及び他方側には、夫々、電磁弁40及び温水タンク50が配設されている。電磁弁40と温水タンク50とを連結するホース44は、ケース14の長手方向(便器12の幅方向)に、延在する。第1制御回路20及び第2制御回路30は、温水タンク50に近接して配置される。しかして、温水タンク50からは、内部に温水を貯溜していることから、外部に低くない温度の熱を放熱する。第1制御回路20及び第2制御回路30は、この放熱を受ける。また、第1制御回路20及び第2制御回路30は、温度が低い水が供給される電磁弁40から離隔して配置され、電磁弁40の周囲の冷気環境から、影響を受けないようになっている。かくして、第1制御回路20及び第2制御回路30は、温水タンク50からの放射熱受容と電磁弁40からの冷気の隔離により、結露の危惧から解放され、装置の信頼性が格段に向上する。
【0014】
図4に依拠して、張出部16とケース14との連結構造について説明する。ケース14は、便器12側に固定されるベースプレート141とベースカバー143とから構成される。ベースカバー143の一方側にはスロット145が形成されており、このスロット145を介して、外部からL金具70の水平部72がケース14内に延在し、ネジ80により、ベースカバー143に固定される。L金具70の垂直部74には、ネジ82により、ケース14とは別体の張出部16が固定されており、全体として、張出部16が着脱自在に、ケース14の一方側に固定される。
【0015】
しかして、操作部24が張出部16内に設けられており、操作部24のスイッチが張出部16の上面から外部に露呈され、使用者により、操作される。いずれかのスイッチが押されると、信号がワイアレスで第1制御回路20及び第2制御回路30に送られ、上記した肛門洗浄及びビデ洗浄並びに他の作動がなされる。
【0016】
図1に示されるように、操作部24の煙・火災センサー86が張出部16の上面から外部に露呈されており、便器12の周辺に火災が発生した場合、煙・火災センサー86が出すオン信号により、制御装置20は警報装置87を作動させて、火災を周辺に知らせる。同時に、制御装置32は34を開いて通電を停止して、トイレ室の天井に設置されたスプリンクラー88を作動させて散水・消火せしめる。
【0017】
また、公共施設の場合は、天井にCCDカメラ89を設けて、警報装置87の作動と同時にトイレ室内を撮像して画像を管理部署に伝送するようにしておけば、事実関係把握に裨益することが出来る。
【0018】
尚、上記したように、操作部24を内包する張出部16は着脱衣自在にケース14に固定されているが、図5に示されるように、張出部が無い温水洗浄便座装置100の場合は、操作部24と同等の機能を有するリモコン装置124を用いて、操作を行うことになる。この場合、煙・火災センサー86は、リモコン装置124に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる温水洗浄便座システムの一実施態様の平面図である。
【図2】図1の温水洗浄便座システムの側面図である。
【図3】図1の温水洗浄便座システムの制御系ブロック図である。
【図4】図1の温水洗浄便座システムにおけるケースと張出部との連結構造の例を示す説明図である。
【図5】煙・火災センサーをリモコン装置に設置したときの説明図である。
【符号の説明】
【0020】
12・・・便器
14・・・ケース
16・・・張出部
20・・・第1制御回路
24・・・操作部(操作機構)
30・・・第2制御回路
86・・・煙・火災センサー
87・・・警報装置
88・・・スプリンクラー
89・・・CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の後部上側に固定され且つ前記便器の幅方向に延在するケースと、前記ケース内に配設された温水タンクと、前記ケース内に配設され給水源と温水タンクとの間に介装される電磁弁と、前記ケースの内の略中央部に位置し且つ前記便器内に延在するノズルを有する人体局部洗浄機構と、前記ケースとは別体のリモコンボックス及び前方に延在すべく前記ケースの一方側から張り出した張出部のいずれかに収容され、制御回路をして前記電磁弁を開いて給水源からの水圧を前記温水タンク内に供給せしめることにより前記温水タンク内の温水を押し出して前記ノズルから噴射せしめるように前記人体局部洗浄機構を操作する操作機構とを備える温水洗浄便座システムにおいて、
前記操作機構に内蔵された煙・火災センサーと、前記煙・火災センサーの作動時、警報を発する警報装置とを備えた温水洗浄便座システム。
【請求項2】
前記煙・火災センサーの作動時、前記便器が設置される空間の内部を撮影し、その画像を所定の場所に伝送する撮像装置が付加された、請求項1記載の温水洗浄便座システム。
【請求項3】
前記煙・火災センサーの作動時、前記制御回路に関連する装置等への通電を停止するようにした、請求項1記載の温水洗浄便座システム。
【請求項4】
前記通電止に続いて、前記便器が設置される空間の内部に散水がなされるようにした、請求項3記載の温水洗浄便座システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−79532(P2006−79532A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265557(P2004−265557)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】