説明

温熱治療用均等低温サウナ装置

【課題】温熱治療用均等低温サウナ装置として、サウナ室内の全体を均一に一定温度に維持することが容易で、患者の安全性を確保しつつ優れた温熱治療効果を安定的に発揮できるものを提供する。
【解決手段】乾熱雰囲気を保持するサウナ室1の内壁11a面に沿つて温熱治療用ベッド2が配置され、ベッド2に沿う内壁11a 面と、ベッド床部2a及び室内通路床部12a の下方とに、電熱式遠赤外線パネルヒータ3… が設けられ、ベッド2から離間した位置に、パネルヒータ2よりも高出力の据置型の電熱式遠赤外線メインヒータ4が設置され、サウナ室1内の温度を測定する温度センサ5と、温度センサ5の演J定値に基づいてメインヒータ4 をオン・オフしてサウナ室1内を設定温度に制御するコントローラ6とを具備してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性心不全、閉塞性動脈硬化症、膠原病や悪性リンパ腫などに伴う難治性潰瘍、人工透析患者の皮膚掻痒、慢性疲労症候群、繊維性筋肉痛を含む慢性疼痛、術後腸閉塞などの治療、および糖尿病など生活習慣病の血管機能不全の改善やシェーグレン症候群など自己免疫疾患の治療、不眠・食欲不振・便秘・抑うつ気分など全身状態の改善などに用いられる乾熱式の温熱治療用均等低温サウナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にサウナ浴は、サウナ室内に電気ヒータおよび蒸気発生器を配置して室内を80℃〜100℃の湿熱雰囲気に保持するようになつており、健常者にとつては積極的に発汗を促して心身のリラックス効果や疲労回復等に有効であるが、心不全、高血圧あるいは不整脈等の患者や高齢者にとつては心臓や血管系の負担が大きくなるために不適切であるとされていた。
【0003】
しかるに、近年、気持ちよい低温サウナ浴により全身の動脈・静脈の拡張作用に加え、自律神経機能や神経体液性ホルモン分泌の改善、血管新生作用や精神的・身体的ストレスの寛解作用により、慢性心不全、閉塞性動脈硬化症、膠原病や悪性リンパ腫などに伴う難治性潰瘍、人工透析患者の皮膚掻痒、慢性疲労症候群、繊維性筋肉痛を含む慢性疼痛、術後腸閉塞を含む術後回復の治療、糖尿病など生活習慣病の血管機能不全の改善、シェーグレン症候群など自己免疫疾患の治療、さらに不眠・食欲不振・便秘・抑うつ気分などの全身状態が有意に改善することを明らかにした。これらの効果は適切な入浴温度・入浴時間・入浴後の管理によつて得られることが判明しており、特に乾熱式でサウナ浴の温度をほぼ均等に60℃付近に保つことにより、患者の血管内皮細胞から産生される一酸化窒素合成酵素 (eNOS) の発現が有意に増加して、血管拡張と血管新生も促進されることを確認している。例えば糖尿病の合併症の一つである閉塞性動脈硬化症に極めて有効で、疼痛軽減・歩行距離延長・難治性潰瘍の治癒・下肢/ 上肢の血圧比の改善・レーザードプラー血流の改善などが得られ、ハムスターやマウスを用いた動物実験により、一酸化窒素合成酵素 (eNOS) の著明な発現がその効果発現機序に深く関与していることも明らかにしている。このような温熱療法に用いる均等低温サウナ装置として、ガス遠赤外線ヒータと、天井側の電熱ヒータとを設けたものが提案されている (特許文献1)。
【特許文献1】実公平6−5790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、温熱治療用の均等低温サウナ装置として、患者の負担を極力少なくして安全性を確保しつつ、上述の温熱治療効果を充分に且つ安定的に発揮させるには、サウナ室内を均一に一定温度に維持することが肝要である。しかしながら、従来のサウナ装置ではサウナ室内の温度変動を生じ易い上に、サウナ室内の天丼部と床部、室内中央部と周辺隅部等の部位による温度差が大きく、安定した温熱治療効果が得られにくいという問題があつた。
【0005】
本発明は、上述の情況に鑑み、サウナ室内の全体を均一に一定温度に維持することが容易で、患者の安全性を確保しつつ優れた温熱治療効果を安定的に発揮できる温熱治療用の均等低温サウナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係る温熱治療用均等低温サウナ装置は、図面の参照符号を付して示せば、乾熱雰囲気を保持するサウナ室1の内壁( 右壁11a)面に沿つて温熱治療用ベッド2が配置され、このベッド2に沿う内壁面と、ベッド床部2a及び室内通路床部12aの下方とに、電熱式遠赤外線パネルヒータ3 … が設けられると共に、該ベッド2から離間した位置に、該パネルヒータ2よりも高出力の据置型の電熱式遠赤外線メインヒータ4が設置され、サウナ室1内の温度を測定する温度センサ5と、この温度センサ5の測定値に基づいて前記メインヒータ4をオン・オフしてサウナ室1内を設定温度に制御するコントローラ6を具備してなる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1の温熱療法用均等低温サウナ装置において、ベッド床部2a及び室内通路床部12aが簀の子構造をなすものとしている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1又は2に記載の温熱治療用均等低温サウナ装置において、温熱治療用べッド2側の内壁( 右壁11a)面に対向する内壁( 左壁11b)面に沿つてベンチ7が配置され、このベンチ7に沿う内壁面と、ベンチ座板7a下とに、電熱式遠赤外線パネルヒータ3…が設けられてなるものとしている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明に係る温熱治療用均等低温サウナ装置によれば、サウナ室内の温熱治療用ベッドに沿う内壁面とベッド床部下及び室内通路床部下とに電熱式遠赤外線パネルヒータを有すると共に、このパネルヒータよりも高出力の据置型の電熱式遠赤外線メインヒータを備え、コントローラによつて該メインヒータを室内の温度設定に基づいてオン・オフする構成であるから、前記メインヒータを昇温用として随時稼働、前記パネルヒータを常時稼働とすることにより、使用開始時にメインヒータでサウナ室内を設定温度まで急速に昇温させた上で、パネルヒータにてサウナ室内の全体の乾熱雰囲気を均一に該設定温度付近に保つことができ、また患者や医師及び看護者の出入り等に伴う室温低下もメインヒータの自動的作動で直ちに回復できる。しかして、一般的に患者が横になる温熱治療用ベッド近傍では、当該ベッドに沿う内壁面及びベッド床部下のパネルヒータの遠赤外線により穏やかに加温され、且つメインヒータは当該ベッドから離間しているから、温熱治療に最適な温度条件を極めて安定して維持でき、もつて患者の負担を極力少なくして安全性を確保しつつ、優れた温熱治療効果を発揮できる。また、メインヒータ及びバネルヒータが共に電熱式であり、燃焼ガスの発生がなく、不完全燃焼で有害ガスを生じる懸念もないので、医療・治療施設で安全に用いるのに適している。
【0010】
請求項2 に記載の発明によれば、上記の温熱治療用均等低温サウナ装置において、ベッド床部及び室内通路床部が簀の子構造をなすから、その下方のパネルヒータにて加温された下部空間の空気が簀の子構造の隙間から上昇し、もつてサウナ室内が効率よく温められ、熱効率の向上によるエネルギーコストの低減に繋がる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、上記の温熱治療用均等低温サウナ装置において、温熱治療用ベッドの対向位置にベンチが配置され、このベンチに沿う内壁面とベンチ座板下とに電熱式遠赤外線パネルヒータを有するから、該ベンチを利用して患者が座つた姿勢でも温熱治療を行うことができ、患者の身体状況に応じてベンチとベッドを使い分けることが可能で、両方を用いて複数の患者に同時に温熱治療用を施すことも可能となる。そして、この座つた姿勢での温熱治療においても、該ベンチに沿う内壁面とベンチ座板下のパネルヒータにて間近から穏やかに加温されるため、温熱治療に最適な温度条件を極めて安定して維持できる上、サウナ室の対向する両側にパネルヒータが配置する形になるから、サウナ室内の全体をより均一に設定温度付近に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る温熱療法用の均等低温サウナ装置の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は温熱治療用均等低温サウナ装置を設置した治療棟の一部を示す横断平面図、図2は同サウナ装置の横断平面図、図3は図2の4―A線の断面矢視図、図4は図2のB一B線の断面矢視図、図5は図2のC―C線の断面矢祝図、図6は図2のD―D線の断面矢視図である。
【0013】
図1に示すように、鉄筋コンクリート建屋である治療棟8の治療フロア80には、その外壁8a側に接して温熱治療用均等低温サウナ装置のサウナ室1、1が扉13を内向きに設置されると共に、このサウナ室1の側方に温熱治療後の安静に用いる複数台の簡易ベッド9…が配置されている。しかして、各サウナ室1は、平面視略正方形で、その左側角部が治療棟8の柱部8cの出つ張りに対応して凹陥している。なお、図1中、82は治療フロア80と廊下81とを隔てる中間壁8bに設けた引戸式出入日、83は治療フロア80を区切る仕切り壁、84は隣接するサウナ室1、1 の間の隔壁、85はサウナ室1の右側面の外側に配置した耐火壁、86はサウナ室1と簡易ベッド9−の設置部との間に設けられたアコーディンカーテンである。
【0014】
図2〜図6に示すように、各サウナ室1は、前面側に台車型ストレッチャごと出入り可能な幅員を持つドアクローザ13a付きの出入口扉13を備え、室内には、該出入口扉13位置から外れた右側に温熱治療用ベッド2 が、同じく左側にベンチ7が各々壁際に沿つて配置され、左奥隅部に電熱式遠赤外線メインヒータ4が設置されており、ベッド2とベンチ7との間に、台車型ストレッチャが左右両側に余裕をもつて入り込み得るスペースを確保している。しかして、メインヒータ4は、暖気対流用のファンを内臓する縦長の据置型で、その前面側には防護柵41が設けられると共に、ベッド2に臨む右側には衝立42が設置されている。
【0015】
ベッド2の床部2a及び側板部2b、ベンチ7の座部7a及び側板部b、通路床部12a は、何れも簀の子構造を有しており、ベッド2の床部2a下には前後2基、通路床部12a 下には左右2基、ベンチ7の座部7a下には1基の電熱式遠赤外線パネルヒータ3がそれぞれ設置されている。また、サウナ室1の左右側壁11a、11bの内壁面には、ベッド2に沿う壁際の前後2ヵ所と、ベンチ7に沿う壁際の1ヵ所にも、表面を火傷防止用の植毛ネットカバー3aで覆つた電熱式遠赤外線パネルヒータ3が設置されている。
【0016】
なお、パネルヒータ3及びメインヒータ4は、電熱式による遠赤外線放射用として、例えば、絶縁基板に炭素粉末とポリエチレン等の結合材を混合したものを塗布して所要の電気抵抗を有する抵抗膜を形成し、全長にわたつて導線を取り付け、表面に電気不良導体の耐熱防水膜を被着した構成であり、その構造自体は周知のものである。しかして、パネルヒータ3… としては例えば2〜4KW/H程度の出力を持つものが使用されるが、メインヒータ4にはパネルヒータ3… よりも高出力の10KW/H程度のものが使用される。
【0017】
前壁11c には、出入口扉13の右側に内部状況を視認するためのガラス窓14が設けられると共に、出入口扉13の左側の外面にメインヒータ4をオン・オフしてサウナ室1内の気温を設定範囲に制御するコントローラ6が取り付けられる一方、内面側におけるベッド2近傍に非常通報用押しボタン15(図4)が設けてある。また、後壁11dの内面側上部には、温度センサ5及び温度計16が取り付けられている。更に、天井10の内面略中央には火災感知器17aが設けられ( 図3参照) 、この火災感知器17aに対応する警報ベル17がベンチ7下の右側壁11a 内面側に取り付けられている( 図4参照) 。18は各サウナ室1内の照明具であり、右側壁11a の後寄り上部と、左側壁11b の前寄り上部の2か所に設けてある。
【0018】
サウナ室1の天井10と四周の壁11a 〜11dは、石富ボードと耐水ベニヤ板との間にグラスツールを挟んだ不燃・断熱性の積層パネルにて構成されている。また、底板もカルストーン貼りの不燃材からなつている。
【0019】
上記構成の温熱治療用均等低温サウナ装置は、通常の使用では、遠赤外線パネルヒータ3… を常時稼働させる一方、遠赤外線メインヒータ4を使用開始時及び温度低下時の昇温用としてコントローラ6の制御下で随時稼働させる。すなわち、使用開始時にはパネルヒータ3… とメインヒータ4が共に稼働し、とりわけ高出力のメインヒータ4によつてサウナ室1内は急速に昇温するが、室温が設定温度( 好適には60℃ )に達すると、温度センサ5からの検知信号に基づくコントローラ6の指令によつてメインヒータ4が停止し、以降は要所に配置した計8基のパネルヒータ3… により、サウナ室1内の全体が均一に該設定温度付近に保たれる。また、患者や医師及び看護者の出入り等に伴つてサウナ室1内の室温低下を生じても、温度センサ5からの検知信号でコントローラ6がメインヒータ4を一時的に稼働させることにより、直ちに設定温度に復帰する。
【0020】
サウナ室1に入室した患者は、温熱治療用ベッド2に楽な姿勢で横たわった状態、もしくはベンチ7に腰掛けた状態で、コントローラ6にタイマー設定された一定時間( 一般的に15分間) の温熱治療を受ける。しかして、温熱治療用ベッド2側では当該ベッド2に沿う壁際とベッド床部2a下のパネルヒータ3… により、またベンチ7側でも当該ベンチ7に沿う壁際と座部7a下及び通路床12a下のパネルヒータ3… により、頭頂からつま先に至るまでま近から穏やかに加温される一方、治療中のメインヒータ4が温度低下時以外は停止し、且つ位置的に患者から離れているから、温熱治療に最適な温度条件が極めて安定に維持され、もつて患者の負担を極力少なくして安全性を確保しつつ、優れた温熱治療効果を発揮できる。なお、温熱治療後の患者は、サウナ室1を出て、バスタオルや毛布で全身を覆つた状態で図1に示す簡易ベッド9に横たわり、30分程度を安静にする。
【0021】
なお、本実施形態の温熱治療用サウナ装置では、ベッド床部2a、ベンチ7の座板7a、室内通路床部12aが簀の子構造をなすから、その下方のパネルヒータ3にて加温された下部空間の空気が簀の子構造の隙間から上昇し、もつてサウナ室1内が効率よく温められ、それだけ熱効率が向上してエネルギーコストの低減に繋がる。また、温熱治療用ベッド2の対向位置にベンチ7が配置され、いずれの側でも壁際と下方のパネルヒータよる加温を受けるから、患者の身体状況に応じてベッド2とベンチ7を使いわけたり、両方を用いて複数の患者に同時に温熱治療用を施すことも可能となる上、サウナ室1の対向する両側にパネルヒータ3… が配置する形になるから、サウナ室1内の全体をより均一に設定温度付近に保つことができる。
【0022】
更に、本発明の温熱治療用均等低温サウナ装置は、各部の細部構成と配置については実施形態以外に種々設計変更可能であると共に、サウナ室1の躯体各部のパネル材、ベッド2及びベンチ7、パネルヒータ3… とメインヒータ4、コントローラ6、温度センサ5や照明具18等の付属機器を規格化し、これらを1セットとして簡易に組立可能な温熱治療用サウナユニットを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る温熱治療用均等低温サウナ装置を設置した治療棟の一部を示す横断平面図である。
【図2】同温熱治療用均等低温サウナ装置の横断平面図である。
【図3】図2のA―A線の断面矢祝図である。
【図4】図2のB―B線の断面矢視図である。
【図5】図2のC一C線の断面矢視図である。
【図6】図2のD一D線の断面矢視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 サウナ室
11a ベッド側の内壁
11b ベンチ側の内壁
12a 室内通路床部
2 温熱治療用ベッド
2a ベッド床部
3 電熱式遠赤外線パネルヒータ
4 電熱式遠赤外線メインヒータ
5 温度センサ
6 コントローラ
7 ベンチ
7a ベンチ座板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾熱雰囲気を保持するサウナ室の内壁面に沿つて温熱治療用ベッドが配置され、このベッドに沿う内壁面と、ベッド床部及び室内通路床部の下方とに、電熱式遠赤外線パネルヒータが設けられると共に、該ベッドから離問した位置に、該パネルヒータよりも高出力の据置型の電熱式遠赤外線メインヒータが設置され、サウナ室内の温度を測定する温度センサと、この温度センサの測定値に基づいて前記メインヒータをオン・オフしてサウナ室内を天井から床まで均等の設定温度に制御するコントローラとを具備してなる温熱治療用均等低温サウナ装置。
【請求項2】
前記のベッド床部及び室内通路床部が簀の子構造をなす請求項1 記載の温熱治療用均等低温サウナ装置。
【請求項3】
温熱治療用ベッド側の内壁面に対向する内壁面に沿ってベンチが配置され、このベンチに沿う内壁面と、ベンチ座部下とに、電熱式遠赤外線パネルヒータが設けられてなる請求項1又は2に記載の温熱治療用均等低温サウナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−142397(P2008−142397A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334589(P2006−334589)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(504433928)
【Fターム(参考)】