説明

温蔵庫

【課題】収納庫内の温度を迅速に安定化させ、容器入り飲料を迅速かつ確実に所望温度まで加温すること。
【解決手段】温蔵庫10は天板11aと、一対の側板11bと、底板11cとを含む収納庫11と、収納庫11内の中央に位置する第1の格子状棚12とを備えている。第1の格子状棚12下面に循環ファン13が取付けられている。収納庫11の天板11a、一対の側板11b,11b、底板11cにヒータ16が取付けられ、このヒータ16に背板14中央に取付けられたサーモスタット15が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビン飲料、缶飲料、PET飲料などの容器入り飲料を短時間で適温とすることを可能とする温蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビン飲料、缶飲料、PET飲料などの容器入り飲料は、ウォーマー、加温ショーケース等の加温機器により飲み頃温度まで加温されて提供されている。
【0003】
この種の加温機器は、通常ホットプレートで加温されるが、このようなホットプレートは一般に容器底面からの受熱により加温されるため熱伝達効率が悪く、加温に長時間を要するので、販売量が大きくなると飲料の加温が間に合わなくなるという問題があった。
【0004】
それ自体が温度設定を可能とするホットプレートを含むウォーマーも開発されているが、ホットプレートの設定温度を高めることにより適温に達するまでの時間を短縮することができるものの、ホットプレートの安定時温度が適温の範囲を超えるため、やけど、中味劣化、容器変形などの恐れがある。
【0005】
他方、商品をケースごとバックヤードにて予備加温する方法もあるが、大型のホットストッカーを置く場所のない販売店の解決策にはならない。
【0006】
また弁当の温蔵用にオーブン方式の機材が知られているが、容器入り飲料を加温する場合、庫内の場所による温度差が大きく使用に耐えない。
【0007】
さらに湯煎により容器入り飲料を加温する場合、熱伝達効率がよく短時間で適温とすることができるが、PET容器本体を含む容器入り飲料においては、容器本体とラベルの間の水が垂れるため不評である。
【0008】
加温ショーケースや、温蔵庫において、庫内を均一な温度分布に維持して、収容物を安定的に加温貯蔵する取り組みは各種行なわれている。この場合、温風ファンを有し、吹き出し温度を感温素子により制御する制御手段を設けて制御するショーケースが開発されている(特許文献1参照)。またヒータやファンを含むショーケースが開発されている(特許文献2参照)。さらに、ダクトやファンを含み、温風を効率的に循環供給できる貯蔵室が開発されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭62−49156号公報
【特許文献2】特開昭62−26475号公報
【特許文献3】特開2005−270380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1−3に示されたいずれの装置においても、加温温度が均一になるには一定以上の時間を要し、短時間で庫内を均一に加温することはむずかしい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件の発明者らは、上記のような課題に対し、鋭意検討を行ない、本発明を完成するに至った。すなわち、できる限り短時間で適温(50〜60℃)に到達すること、安定時中味温度が68℃未満であること、収容方法に係わらず温度差異が平均温度±5℃以下であるような温蔵庫を開発した。
【0011】
本発明は、天板と、底板と、一対の側板と、背板とを含む収納庫と、収納庫内の上下方向中央に設けられた第1の格子状棚と、第1の格子状棚の下面に取付けられた循環ファンと、収納庫の天板、底板および一対の側板に各々取付けられたヒータと、背板中央に設けられ、各ヒータのオン、オフを行なうサーモスタットと、を備えたことを特徴とする温蔵庫である。
【0012】
本発明は、サーモスタットは、制御温度に対するオン点とオフ点とを有し、オン点とオフ点との相違温度は10±2℃となっていることを特徴とする温蔵庫である。
【0013】
本発明は、収納庫の底板上にも、第2の格子状棚が設けられていることを特徴とする温蔵庫である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、収納庫内の温度を迅速に安定化させ、容器入り飲料を迅速かつ確実に所望温度まで加温することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図3は、本発明による温蔵庫の一実施の形態を示す図である。
【0016】
図1乃至図3において、温蔵庫10は容器と、容器内に収納された飲料とからなる容器入り飲料23を収納するものであり、容器入り飲料23としてはビンと、ビン内に収納された飲料とからなるビン飲料、缶と、缶内に収納された飲料とからなる缶飲料、PET容器と、PET容器内に収納された飲料とからなるPET飲料等が考えられる。
【0017】
このような温蔵庫10は、天板11aと、一対の側板11b,11bと、底板11cと、背板14とを含む収納庫11と、収納庫11内の上下方向中央に設けられた第1の格子状棚12と、収納庫11内の底板11c上に設けられた第2の格子状棚22と、第1の格子状棚12の下面に取付けられた3つの循環ファン13と、収納庫11に取付けられた複数のヒータ16とを備えている。
【0018】
このうち収納庫11は上述のように、その内部に設けられた天板11aと、一対の側板11b,11bと、底板11cと、背板14とを含んでおり、収納庫11の正前側は開口し、この開口は扉20により密閉される。
【0019】
また3つの循環ファン13は、図1(c)の平面図に示すように一方の側板11bから他方の側板11bに向かって、直列に配置されており、第1の格子状棚12の下方に設けられている。
【0020】
さらに第2の格子状棚22は、底板11cに支持具21を介して取付けられている。
【0021】
また収納庫11に設けられた複数のヒータ16は、収納庫11の天板11a外面、一対の側板11b,11bの外面、底板11cの外面に各々配置されている。
【0022】
さらに収納庫11の背板14は、扉20に対して奥側に配置され、この背板14の裏側中央には、各ヒータ16に接続され、このヒータ16のオンオフを行なうサーモスタット15が設けられている。
【0023】
このサーモスタット15は制御温度に対するオン点とオフ点を有し、オン点とオフ点の相違温度は10±2℃となっている。
【0024】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0025】
まず例えばPET容器と、PET容器内に収納された飲料とからなる複数のPET飲料23が準備される。
【0026】
次に扉20が開かれ、収納庫11の開口からPET飲料23が収納庫11内に収納され、第1の格子状棚12および第2の格子状棚22上に載置される。
【0027】
次にPETの軟化点である68℃以下の安定温度(制御温度)になるようサーモスタット15で温度制御しながらヒータ16によって収納庫11内を加温する。
【0028】
同時に第1の格子状棚12の下面に取付けられた3台の循環ファン13によって、収納庫11内の空気を循環する。
【0029】
この場合の天板11aの温度、背板14の温度およびPET飲料23の飲料の温度変化を図3(a)に示す。
【0030】
すなわち、図3(a)に示すように、20℃の飲料を含むPET飲料23を温蔵庫10内で加温して、安定温度65±2℃となるよう加温した場合、2時間30分の短時間で飲料の温度(中味温度)を適温到達点55±5℃まで加温することができる。
【0031】
その後、図3(a)に示すように飲料の温度を65±2℃まで直ちに加温し、この温度を安定して維持することができ、かつ天板11aの温度および背板14の温度も安定して維持することができる。
【0032】
これに対して、背板14の裏側にもヒータを設け、ヒータ下部にサーモスタットを配置し、オン点とオフ点の温度差の規格値が10℃未満のサーモスタットを使用し、かつ循環ファン13を設けない比較例の場合、飲料の温度差が大きく、本発明と同じ条件において、全ての飲料を適温にすることはできない。
【0033】
以上のように本実施の形態によれば、上述のように第1の格子状棚下面に3台の循環ファン13を、一方の側板11bから他方の側板11bに向かって直列に配置するとともに、サーモスタット15を収納庫11の奥側に設けられた背板14の裏面に取付けたことにより、容易かつ迅速に収納庫11内の温度を安定化させてPET飲料を加温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1(a)は本発明による温蔵庫の正面図、図1(b)は温蔵庫の側面図、図1(c)は温蔵庫の平面図。
【図2】図2(a)は本発明による温蔵庫の正面図であって扉によって密閉された状態を示す図、図2(b)は温蔵庫の正面図であって扉を便宜的に取外した状態を示す図。
【図3】図3(a)は本発明による温蔵庫の作用効果を示す経過時間と温度の関係を表す図、図3(b)は比較例の作用効果を示す経過時間と温度の関係を示す図。
【符号の説明】
【0035】
10 温蔵庫
11 収納庫
11a 天板
11b 側板
11c 底板
12 第1の格子状棚
13 循環ファン
14 背板
15 サーモスタット
16 ヒータ
20 扉
22 第2の格子状棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、底板と、一対の側板と、背板とを含む収納庫と、
収納庫内の上下方向中央に設けられた第1の格子状棚と、
第1の格子状棚の下面に取付けられた循環ファンと、
収納庫の天板、底板および一対の側板に各々取付けられたヒータと、
背板中央に設けられ、各ヒータのオン、オフを行なうサーモスタットと、を備えたことを特徴とする温蔵庫。
【請求項2】
サーモスタットは、制御温度に対するオン点とオフ点とを有し、オン点とオフ点との相違温度は10±2℃となっていることを特徴とする請求項1記載の温蔵庫。
【請求項3】
収納庫の底板上にも、第2の格子状棚が設けられていることを特徴とする請求項1記載の温蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−34208(P2009−34208A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199510(P2007−199510)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】