説明

測位用信号受信装置

【課題】 従来より少ない消費電力で間欠動作し、且つ休止状態からの復帰後、速やかに測位を行えるようにした測位用信号受信装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 RTC部11を動作させたまま、TCXO4の動作を所定の休止時間だけ休止状態にし、且つ休止時間終了後に前記休止状態から復帰させる間欠動作を繰り返す間欠動作制御手段と、休止時間前の所定時間での、TCXO4のクロック信号のカウント数とRTC部11のクロック信号のカウント数とのカウント比を求めるカウント比決定手段と、前記カウント比および、前記休止時間でのRTC部11のカウント数から、前記休止時間でのTCXOのクロック信号の擬似カウント数を求め、且つ前記休止時間終了時のTCXOのクロックを、前記擬似カウント数で補間する基準クロック計数値補間手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の測位用信号を受信して、受信点の測位を行う測位用信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS受信装置のような測位用信号受信装置においては、複数の測位用衛星から送信されている電波を受信して、その電波に重畳されているC/Aコードの位相、航法メッセージなどによって、GPS時刻および、各測位用衛星の位置、各測位用衛星と受信点との間の擬似距離を求め、それぞれの測位用衛星の位置と擬似距離によって受信点を測位し、また測位系時刻を求めている。
【0003】
このようなGPS受信装置において、一般には使用中常に電源をオンしたまま測位を継続するが、例えば小容量の電池を電源とする携帯用の測位装置や、太陽電池と二次電池を電源として定点観測を行う測位装置などにおいては、その稼動時間を長くするために、測位を行なうべき時にのみ電源を投入し、測位結果が得られた後は電源を遮断する、といった間欠的な使用もなされている。
【0004】
しかし、受信装置の電源が遮断されている状態(以下「休止状態」という。)では、受信装置のカウントは停止しているので、電源投入から衛星サーチ、衛星追尾、衛星情報取得までに少なくとも数秒から数十秒が必要となり、速やかな測位ができないという問題が生じる。
【0005】
そこで、間欠動作においてもGPS時刻を精度よく推定し、復帰時に速やかに測位を行うために、GPS時刻を推定するための基準クロック信号発生回路とその基準クロックを計数する計数部を動作させたままにして、衛星からの電波を受信するRFコンバータや、ディジタル信号処理回路の電源を休止したり、CPU等のクロックをマスクしたりして消費電力を抑制させる方法が採られる。
【0006】
たとえば引用文献1では、GPS時刻を推定するために基準クロック発生回路を動作させて、休止時間の経過を測定するとともに、その基準クロックとは独立してローカルな計時を行う低周波クロック信号発生回路も動作させておき、そのローカルな計時を行うクロックからGPS時刻に含まれる正確な週番号と週内時刻とを正確に推定する方法が記載されている。
【0007】
このように間欠的にGPS信号受信装置を作動させた場合には、一般にGPS時刻の推定精度は、休止時間中に動作させておいたクロックの周波数の精度に大きく依存する。従来のGPS受信装置では、より高い精度でGPS時刻を推定する必要から、より高い周波数を用いた発振器(以下、高周波発振器という。)、例えば、16.368MHzの高周波を発振する温度補償型水晶発振器などを用いて休止時間中の経過時間を測定している。
【0008】
しかし、例えば、前記16.368MHz程度の周波数の高い温度補償型水晶発振器の場合には数ミリアンペア程度の電流を消費し、低い周波数の(例えば、32kHz)で温度補償の無い水晶発振器の場合には数百マイクロアンペア以下の電流を消費するというように、周波数の高さと消費電力の大きさとの間に正の相関を持つ。そのため、上述のように高周波発振器を用いて間欠動作を行う場合には、比較的低い周波数の発振器(以下、低周波発振器という。)を用いて間欠動作を行う場合よりも、より大きい電力を休止時間に消費してしまう。
【特許文献1】特開2002−6022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
GPS受信装置においては、休止状態からの復帰後に高精度にGPS時刻を推定し、速やかに測位を行うことが要求されるが、復帰直後にGPS時刻を高精度に推定するために上記の周波数の高い温度補償型水晶発振器を用いて間欠動作を行うと、休止時間中も装置の消費電流が大きなものにならざるを得なかった。すなわち、間欠動作による電源消費の低減効果が小さいという問題があった。
【0010】
そのため本発明は、上記問題を解決し、従来より少ない消費電力で間欠動作し、且つ休止状態からの復帰後、速やかに測位を行えるようにした測位用信号受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、測位用信号の処理に用いられる基準信号である第1のクロック信号を発生する基準クロック信号発生回路と、該第1のクロック信号を計数する基準クロック計数部と、前記第1のクロック信号とは独立し、前記第1のクロック信号の周波数より低い周波数である第2のクロック信号を供給する低周波クロック信号発生回路と、前記測位用信号を受信する受信部と、前記測位用信号を基に測位演算を行う演算処理部とを有する測位用信号受信装置において、
前記低周波クロック信号発生回路を動作させたまま、前記基準クロック信号発生回路の動作を所定の休止時間だけ休止状態にし、且つ休止時間終了後に前記休止状態から復帰させる間欠動作を繰り返す間欠動作制御手段と、前記休止時間前の所定時間での、前記第1のクロック信号のカウント数と前記第2のクロック信号のカウント数とのカウント比を求めるカウント比決定手段と、前記カウント比および、前記休止時間での低周波クロック信号のカウント数から、前記休止時間での基準クロック信号の擬似カウント数を求め、且つ前記休止時間終了時の前記基準クロック計数部の計数値を、前記擬似カウント数で補間する基準クロック計数値補間手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
そのため、間欠動作制御手段により、休止時間にはこの基準クロック信号発生回路に電流が流れず、低周波クロック回路の電流と演算処理部の半導体のリーク電流のみが流れる。
【0013】
さらに、カウント比決定手段と基準クロック補間手段とにより、基準クロック信号より周波数の低い低周波クロック信号の周波数偏差を補正し、GPS時刻の推定誤差の要因を抑制する。
【0014】
また、本発明は、カウント比決定手段で、前記所定時間を前記休止時間の直前の時間として前記カウント比を求め、前記基準クロック補間手段で、休止時間での第2のクロック信号の前記カウント数に前記カウント比を乗じた値を前記擬似カウント数とする。
【0015】
そのため、休止時間直前までのドリフトによるクロック信号の変化を自動的に補正することができる。また、通常休止時間中の温度変化は微小であり、休止時間中にクロック信号のドリフトはほとんど生じないために、基準クロックの補間は高精度に行うことができる。
【0016】
また、本発明は、休止状態からの復帰後、基準クロック計数部の計数値に対応する受信機側の時刻と、測位用信号を送信する衛星の軌道情報と、に基づいて、衛星から受信点までの計算距離に応じた前記測位用信号のコード位相を推測し、推測によるコード位相と測位用信号の観測によるコード位相との差を求め、コード位相の差に相当する基準クロック計数部のオフセット分だけ基準クロック計数部の計数値を補正する。
【0017】
そのため、休止状態からの復帰後に測位用信号を観測し、コード位相が得られた段階で速やかに基準クロックの計数値をより高精度な値に補正することができる。
【0018】
また、本発明は、休止状態からの復帰後、複数の衛星からの測位用信号をそれぞれ受信して測位演算を行い、受信点の位置とともに測位系の時刻を求め、さらに、基準クロック計数部の計数値に対応する受信機側の時刻と前記測位手段により求めた前記測位系の時刻との差を求め、時刻の差に相当する基準クロック計数部のオフセット分だけ基準クロック計数部の計数値を補正する。
【0019】
そのため、休止状態からの復帰後に、擬似距離が得られた段階で速やかに基準クロックの計数値を高精度な値に補正することができる。
【0020】
また、本発明は、外部からの制御コマンドをシリアル入力部で受け付けるとともに、前記制御コマンドの先頭ビットを検知して前記基準クロック信号発生回路を休止状態から復帰させる復帰処理を行い、該復帰処理終了後に前記制御コマンドに含まれる制御コードの受付状態となる制御コマンド受動部を備え、前記起動処理を行う制御コマンドの、前記先頭ビットから一定ビット数以上後方から始まるビット列が、有意な制御コードである
このように外部装置からの信号を受信して復帰することにより、測位する必要が発生したタイミングで速やかに測位を行う。また、先頭ビットから一定ビット数以上後方のビットを受信するのに必要な時間を、コマンド処理が行えるようになるまでの復帰処理の時間よりも大きく設定することで、コマンドを送信する外部装置が、測位用信号受信装置が休止状態から制御コマンドを受け付けることができる状態になるまでの時間を把握しておく必要がなくなり、測位用信号受信装置の状態にかかわらず、外部装置は制御コマンドを送信するだけですむことになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来より少ない消費電力で間欠動作し、且つ休止状態からの復帰後、速やかに測位を行えるようにした測位用信号受信装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態に係るGPS受信装置の例を図1〜9を参照して説明する。
【0023】
図2はGPS受信装置の構成を示すブロック図である。
【0024】
RFコンバータ処理部1は、アンテナ2が受けた信号を中間周波信号に変換するとともに、ディジタル信号に変換する。ディジタルベースバンド信号処理部3は、このディジタル信号を処理して、C/Aコード位相およびキャリア位相を検出するための情報を生成する。また、基準クロック信号発生回路である温度補償型水晶発振器(TCXO)4は16.3678MHzの基準クロック信号を発生する。基準クロック計数部5はこの基準クロックをカウントする。
【0025】
一方、低周波クロック信号発生回路の一部である水晶発振器(XO)6は32.768kHzの低周波で発振する。分周器7は、このXO6からのクロック信号を32分周して、1.04kHzのクロック信号を生成する。このXO6と分周器7とで低周波クロック信号発生回路を構成している。RTC計数部8はこの32分周された信号をカウントすることによって現在時刻を計時する。また、所定のタイミングでCPU9へ割り込み信号を出力する。
【0026】
CPU9は上記C/Aコード位相およびキャリア位相を検出し、その追尾を行うようにディジタルベースバンド信号処理部3で発生させるC/Aコードの位相、キャリアの周波数および位相を制御する。またそれとともに、航法メッセージの解読、サブフレームの先頭タイミングの検出、GPS時刻の検知、C/Aコード位相およびキャリア位相からの擬似距離の算出、測位演算による受信点の測位、を行う。また、随時、基準クロックや低周波クロックの計数値を補正し、測位系時刻を求める。
【0027】
なお、この実施形態では低周波クロック信号発生回路に、現在時刻を計時するRTC部内の水晶発振器6を用いたが、このような低周波クロック信号を発生する回路はRTC部に限らず、測位用信号受信装置本体の外部に備えてもよい。
【0028】
次に、休止状態からの復帰時に基準クロック信号計数部の計数値を補間するための手段について、図1を基に説明する。
図1において、RxはRTC計数部8の時刻xにおける計数値、Bxは基準クロック計数部5の時刻xにおける計数値である。
【0029】
時刻mから時刻nまでの時間(m〜n)をRTC計数部8で計数した所定時間とすると、基準クロック計数部の計数値がRmからRnへと進む間に、基準クロック計数部5の計数値がBmからBnへと進む。TrとTbはそれぞれRTC計数部8の計数周期と基準クロック計数部5の計数周期である。
【0030】
このような関係であるとき、前記所定時間のRTC計数部6のカウント数を(Rn−Rm)とすると、RTC計数部8の計数周期に対する基準クロック計数部5のカウント数の比は次式で表すことができる。
k=(Bn−Bm)/(Rn−Rm) ・・・(1)
またこの比の値kを係数として、休止時間中のRTC計数部8のカウント数に乗じることによって基準クロック計数部5の計数値を推定すると、次式のようになる。
Bw=k×(Rw−Rn)+Bn ・・・(2)
ここで、時刻nでCPU9がストップ信号を出力し、そのことによってRF電源12が遮断されて、基準クロック信号の発生が停止し、時刻wでストップ信号が解除されて、RF電源12が通電されて、TCXO4が基準クロック信号を発生するものとする。
【0031】
上記(1)式のkはRTC計数部8の1カウントあたりの基準クロック計数部5のカウント数であり、このkを(2)式によりRTC計数部8の休止中のカウント数(Rw−Rn)に乗じることで、休止時間にも仮に基準クロック計数部5がカウントするとした場合の、その計数値を予測することができる。そして、この値を(2)式のように休止前の基準クロック計数部5の値に加えることで、休止状態からの復帰時の基準クロック計数部5の値を予測することができる。そして、休止状態から復帰した時に、基準クロック計数部5の値は上記Bwに置き換えられる。このように、休止直前に(1)式を用いてkを求めることにより、低周波クロックのドリフトにより生じた、周波数の初期偏差や温度変動の影響を少なくすることができる。
【0032】
次に、復帰後に衛星からの測位用信号に重畳されたC/Aコードを観測して、そのC/Aコードのコード位相に基づいて基準クロック計数部の計数値を補正する手段について説明する。
【0033】
本実施形態の受信装置は、休止状態からの復帰後に各衛星の測位を行う際にC/Aコード位相を観測する。また同時に、各衛星の軌道情報と基準クロック回路の計数値に基づく時刻とから衛星までの距離を推測し、C/Aコード位相を推測する。推測により得られたC/Aコード位相と観測により得られたC/Aコード位相とのずれは、通常、基準クロックの精度が充分に高く変動が小さいために、基準クロック回路のクロックの変動による影響を無視でき、低周波クロック回路のクロックの変動のみにより生じたものとみなすことができる。
【0034】
そのため、このC/Aコード位相のずれにより、その位相差に相当する基準クロック回路のクロック数を求めるとともに、基準クロック計数部の計数値を前記クロック数により補正して置き換えるとともに、次回の間欠動作時の前述の(1)式のk値を補正するためにも用いる。k値の補正は、たとえば以下のように行う。
前記C/Aコード位相のずれに相当する基準クロック計数部のクロック数は、休止時間中の低周波クロック回路のずれた計数値と等価的に等しいとみなすことができ、単位時間あたりの低周波クロックのずれを求めることでkの値を補正することができる。計数値のずれをD、C/Aコード位相の観測による基準クロック計数部の計数値をBp′、低周波クロックにより補正された基準クロック計数部の計数値をBpとする。
D=Bp′−Bp ・・・(3)
また単位時間当たりの低周波クロックのずれ量dは、
d=D/(Rw−Rn) ・・・(4)
この単位時間当たりの低周波クロックのずれ量dにより次回の間欠動作時のk値を補正する。
k′=k+d ・・・(5)
次回の間欠動作からの復帰時には、(2)式のkの値の代わりにk′の値を用いることで低周波クロックの間欠動作中のずれを補正し、より高精度に基準クロック計数値の補間を行うことができる。
【0035】
なお、上述のようにC/Aコードをもとに基準クロック計数部の計数値を補正する以外に複数の衛星による測位と同時に得た測位系時刻に基づいて基準クロック計数部の計数値の補正を行ってもよく、その際には、上述の(3)に代えて以下の(3′)式を用いる。測位に基づく測位系時刻をx、その測位系時刻に相当する基準クロックの計数値をBx、休止動作中に低周波クロックによって補正された時刻をy、その時刻による基準クロックの計数値をByとする。
D=Bx−By ・・・(3′)
この(3′)式に(3)式を代用することにより、複数衛星による測位に基づく測位系時刻により低周波クロックのずれを補正し、高精度に基準クロック計数値の補間を行うことができる。
【0036】
なお、ほかにも衛星からの観測で得られるドプラー周波数などの観測データと、その観測データを推定して得た推定データとのずれに基づき基準クロック回路の計数値のずれを求めて、高精度に基準クロック計数値の補間を行うことができる。その際には、上述の(3)に変えて以下の(3″)式を用いる。観測に基づくドプラー周波数と、休止動作中に低周波クロックによって補正された時刻に基づいて予測したドプラー周波数との差に相当する基準クロックのクロック数Dを用いる。観測により得られたドプラー周波数に相当する基準クロックの計数値をBa、休止動作中に低周波クロックによって補正された時刻に基づいて予測したドプラー周波数に相当する基準クロックの計数値をBbとする。
D=Ba−Bb ・・・(3″)
この(3″)式を(3)式に代用することにより、複数衛星による測位に基づく測位系時刻により低周波クロックのずれを補正し、高精度に基準クロック計数値の補間を行うことができる。
【0037】
次に、間欠動作を実現するための制御部の構成と動作について、図3〜図5を参照して説明する。
図3は制御部のブロック図であり、図4・図5は、図3中の各信号のタイミングチャートである。
【0038】
図3において、32.768kHzで発振するXO6のクロック信号は分周器7で32分周されて、1.024kHzの低周波クロック信号となる。RTC計数部8はこの低周波クロック信号を計数する。
【0039】
また、16.3678MHzの基準クロック信号を発生するTCXO4が作動している間、基準クロック信号計数部5はこの基準クロック信号を計数する。
【0040】
ラッチ46は分周器7から出力される1.024kHzの低周波クロック信号の立ち上がりタイミングをラッチ信号として基準クロック計数部5の計数値をラッチする。したがって、CPUは、このラッチ46の値を読み取ることによって、直前の上記低周波クロック信号のタイミングにおける基準クロック計数部5の計数値を得る。
【0041】
時刻レジスタ45は、休止状態から復帰する時刻を定めるためのレジスタである。CPUは休止前に次回の復帰時刻をこの時刻レジスタ45に書き込んだ後、休止状態にする。
【0042】
休止状態でも、図2に示したRTC部11は動作を継続しているので、そのRTC計数部8内にある比較器51はRTC計数部8と時刻レジスタ45との一致判定を行う。これが一致すれば、比較器51はCPUへ割り込み信号を与える。この割り込み信号によってCPUは起動開始する。
【0043】
この休止状態からの復帰時には、CPUは先ず(2)式で求めた計算上の計数値Bwを求め、それを補間レジスタ49に書き込む。その後、CPUはロード制御回路50に対して書込み信号を与える。これによりロード制御回路50は、分周器7からの低周波クロック信号をロード信号として基準クロック計数部5へ与える。基準クロック計数部5は、このロード信号の立ち上がりタイミングで、補間レジスタ49の値をロードする。このことによって、休止状態からの復帰直後に基準クロック計数部5の計数値を正確な値に復帰させることができる。すなわち、基準クロック計数部5が休止しなかった場合に得られる計数値に近似した値を復元できる。その結果、復帰直後の受信機側で持つGPS時刻の精度が高まり、復帰後最初の測位までに要する時間を短縮化できる。
【0044】
図4は基準クロック計数部5の計数値をラッチ46へラッチする際のタイミングチャートである。
この図4に示すように、基準クロック信号計数部5は計数値が1ずつ増加していく。またRTC計数部8の計数値も1ずつ増加していく。図3に示したように、分周器7から出力される低周波クロック信号がラッチ信号であり、この立ち上がりで、基準クロック計数部5の計数値がラッチ46にラッチされる。
【0045】
これにより、次のラッチタイミングまでの間にCPU9はラッチ46の値を読み取ることによって、直前の上記低周波クロック信号のタイミングにおける基準クロック計数部5の計数値を参照することができる。
【0046】
図5は基準クロック計数部5へ補間データをロードする際のタイミングチャートである。
この図5に示すように、まず、CPU9はデータバス上に補間データを乗せ、書き込み信号を出力する。このことにより補間データが補間レジスタ49に書き込まれる。また、ロード制御回路50は上記書き込み信号を受けたことにより、ラッチ信号をロード信号として基準クロック計数部5へ与える状態となる。したがって、その後発生されるロード信号によって、補間レジスタ49の値が基準クロック計数部5にロードされる。
【0047】
また、CPU9からロードレジストリへの書き込みが無い場合には、ロード信号が発生されないので、補間データレジスタ49の値が基準クロック計数部5に書き込まれることはない。このことによって基準クロック計数部は基準クロックを正しく計数することができる。
【0048】
次に、本実施形態の電流消費量と従来例の基準クロック信号発生回路を動作させたまま間欠動作を行う場合の電流消費量について図6・図7を基に説明する。
図6(a)は間欠動作時の消費電流の計算モデルを示している。また、図6(b)は、本実施形態における間欠動作の際に、基準クロック信号発生回路を停止状態にした場合の平均消費電流を示している。また、図6(c)は引用文献1のように、基準クロック信号発生回路を動作させたままその他の回路を休止状態にして消費電力を抑制した場合(以下、従来例という。)の平均消費電流を示している。図7はこの図6(b)(c)の平均電流について、それをグラフとして表したものである。
【0049】
ここでは、基準クロック信号発生回路である、16.368MHzの高周波を発振するTCXOが4mAの電流を消費し、また低周波クロック信号発生回路の一部である水晶発振器(XO)が、32kHzで発振し、1mAの電流を消費するものとしている。
【0050】
間欠動作を行うGPS受信装置では、サーチをしている時間T1ではサーチ電流I1が流れ、測位をしている時間T2では電流I2流れ、例えば測位結果のデータをデータ収集局へ無線送信している時間T3では電流I3が流れ、休止時間T4では休止電流I4が流れる。これらの時間T1〜T4の合計が間欠周期Toである。
また、図6(b),(c)において、「クロックずれ」は休止状態からの復帰時に基準クロック計数部5に計数値を復元した際の、連続動作させた場合の正確な計数値からの誤差である。
【0051】
ここで図6(c)と図6(b)とを比較すると、本実施形態では従来例に対し、クロックずれが増加するために、サーチ時間T1が増加する。また、休止中には消費電流の少ない低速の水晶発振器(XO)を備えたRTC部のみ通電しているので、休止中の休止電流I4が減少する。
【0052】
本願実施例では、休止時間中、基準クロック信号発生回路である温度補償型水晶発振器(TCXO)4を停止することにより、このTCXO4と、基準クロック信号で動作するディジタル処理回路部10での休止電流I4を少なくすることができ、休止時間中の電流消費を極めて小さく抑えることができる。そのため、間欠周期全体としての消費電流量を低減でき、従来より少ない消費電力で間欠動作を行うGPS受信装置が得られる。
【0053】
なお、本願実施例では、間欠周期Toが長くなるにつれて、「クロックずれ」が大きくなり、それにともなってサーチ時間が増加してしまう。しかし、間欠周期に比べ、サーチ時間の増加分は非常に小さく、例えば1分間間欠動作を行うときでさえ1.5秒のサーチ時間しか要しない。この1.5秒というサーチ時間は、充分に実用に耐えうるサーチ性能であり、そのため、本発明のGPS信号受信装置は、休止電力を大幅に抑制するために、基準クロック発生回路を休止させてしまった場合でも、休止状態からの復帰後、速やかに測位を行うことができるものである。
【0054】
これまでに説明した例では、図2に示したCPU9がRTC部からのタイマー割り込みによって、休止状態から復帰する場合について示した。CPU9はこのGPS受信装置外部の装置からの信号によって復帰することもできる。その例を図8・図9を基に説明する。
【0055】
図8は、GPS受信装置とそれに接続したホスト装置とからなるシステムの構成を示している。また、図9は図8に示したGPS受信装置の状態とホスト装置から受信するコマンドとの関係を示している。
【0056】
図8に示すように、ホスト装置とGPS受信装置とはシリアルデータラインで接続していて、GPS受信装置の制御信号受動部のデータ受信信号を、図2に示したCPU9の割り込み信号に兼用している。そのため、GPS受信装置の制御信号受動部がホスト装置から休止時間に制御コマンドを受けると、GPS受信装置は休止状態から復帰する。
【0057】
ホスト装置から送信される制御コマンドは、先頭から一定ビット数以上後方から始まるビット列が有意な制御コードとなっていて、先頭から一定数のビット列が送受信される間の時間が前記復帰処理の要する時間にマージンを加えた時間となるように、前記先頭から上記有意な制御コードが始まるまでのビット数を設定しておく。このことで、ホスト装置がこのGPS受信装置の状態(休止状態であるか、通常動作状態であるか等)を把握したり、復帰処理が終わり、コマンドを受付可能となるまでの時間を把握したりする必要が無くなる。なお、前記先頭から有意な制御コードが始まるまでのビットは、ランダムコードとして記述してもよい。
【0058】
このように、休止状態から復帰が完了して、コマンドの解読が可能な状態となるまでの時間と、通信速度とに対応付けて決定したデータサイズよりも大きなサイズのコードを制御コードより前に用いることで、復帰専用の制御線や制御回路を要することなく、GPS受信装置を備えたシステムを容易に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態における各計数部の計数値を示す図
【図2】本発明の実施形態におけるGPS受信装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施形態における制御部のブロック図
【図4】本発明の実施形態における計数値をラッチする際のタイミングチャート
【図5】本発明の実施形態における計数値をロードする際のタイミングチャート
【図6】間欠動作時の消費電流の計算モデル
【図7】本発明の実施形態と従来例における平均消費電流を示す図
【図8】本発明の実施形態におけるGPS受信装置と外部接続したホスト装置とからなるシステムのブロック図
【図9】GPS受信装置の状態とホスト装置から受信するコマンドとの関係を示す図
【符号の説明】
【0060】
1 RFコンバータ処理部
2 アンテナ
3 ディジタルベースバンド信号処理部
4 温度補償型水晶発振器(TCXO)
5 基準クロック計数部
6 水晶発振器(XO)
7 分周器
8 RTC計数部
9 CPU
10 ディジタル処理回路部
11 RTC部
12 RF電源
45 時刻レジスタ
46 ラッチ
49 補間レジスタ
50 ロード制御回路
51 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位用信号の処理に用いられる基準信号である第1のクロック信号を発生する基準クロック信号発生回路と、該第1のクロック信号を計数する基準クロック計数部と、前記第1のクロック信号とは独立し、前記第1のクロック信号の周波数より低い周波数である第2のクロック信号を供給する低周波クロック信号発生回路と、前記測位用信号を受信する受信部と、前記測位用信号を基に測位演算を行う演算処理部とを有する測位用信号受信装置において、
前記低周波クロック信号発生回路を動作させたまま、前記基準クロック信号発生回路の動作を所定の休止時間だけ休止状態にし、且つ休止時間終了後に前記休止状態から復帰させる間欠動作を繰り返す間欠動作制御手段と、
前記休止時間前の所定時間での、前記第1のクロック信号のカウント数と前記第2のクロック信号のカウント数とのカウント比を求めるカウント比決定手段と、
前記カウント比および、前記休止時間での低周波クロック発生回路の第2のクロック信号のカウント数から、前記休止時間での基準クロック発生回路の第1のクロック信号の擬似カウント数を求め、且つ前記休止時間終了時の前記基準クロック計数部の計数値を、前記擬似カウント数で補間する基準クロック計数値補間手段とを備えたことを特徴とする測位用信号受信装置。
【請求項2】
前記カウント比決定手段は、前記所定時間を、前記休止時間の直前の時間とし、前記第2のクロック信号のカウント数に対する前記第1のクロック信号のカウント数の比を求め、前記基準クロック補間手段は、前記休止時間での第2のクロック信号の前記カウント数に前記カウント比を乗じた値を前記擬似カウント数とする請求項1に記載の測位用信号受信装置。
【請求項3】
前記休止状態からの復帰後、前記基準クロック計数部の計数値に対応する受信機側の時刻と、前記測位用信号を送信する衛星の軌道情報と、に基づいて、当該衛星から受信点までの計算距離に応じた前記測位用信号のコード位相を推測し、当該推測によるコード位相と前記測位用信号の観測によるコード位相との差を求め、当該コード位相の差に相当する前記基準クロック計数部のオフセット分だけ当該基準クロック計数部の計数値を補正する基準クロック計数値補正手段、を備えた請求項1または2に記載の測位用信号受信装置。
【請求項4】
前記休止状態からの復帰後、複数の衛星からの前記測位用信号をそれぞれ受信して測位演算を行い、受信点の位置とともに測位系の時刻を求める測位手段と、
前記基準クロック計数部の計数値に対応する受信機側の時刻と前記測位手段により求めた前記測位系の時刻との差を求め、当該時刻の差に相当する前記基準クロック計数部のオフセット分だけ当該基準クロック計数部の計数値を補正する基準クロック計数値補正手段と、を備えた請求項1または2に記載の測位用信号受信装置。
【請求項5】
外部からの制御コマンドをシリアル入力部で受け付けるとともに、前記制御コマンドの先頭ビットを検知して前記基準クロック信号発生回路を休止状態から復帰させる復帰処理を行い、該復帰処理終了後に前記制御コマンドに含まれる制御コードの受付状態となる制御コマンド受動部を備え、
前記起動処理を行う制御コマンドは、前記先頭ビットから一定ビット数以上後方から始まるビット列が有意な制御コードである請求項1〜4のいずれかに記載の測位用信号受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−177680(P2006−177680A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368432(P2004−368432)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】