測位装置、その制御方法、制御プログラム及びその記録媒体
【課題】ドップラー偏移の誤差に応じて、各SPS衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる測位装置等を提供すること。
【解決手段】複数のSPS(Satellite Positioning System)衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置20であって、各SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出手段と、測位装置20の初期位置P0と各SPS衛星の軌道上の衛星位置Pvとの相対位置を算出する相対位置算出手段と、相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出手段と、ドップラー偏移誤差に基づいて、各衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出手段と、を有する。
【解決手段】複数のSPS(Satellite Positioning System)衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置20であって、各SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出手段と、測位装置20の初期位置P0と各SPS衛星の軌道上の衛星位置Pvとの相対位置を算出する相対位置算出手段と、相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出手段と、ドップラー偏移誤差に基づいて、各衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出手段と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SPS(Satellite Positioning System)を使用して測位を行うことができる測位装置、その制御方法、制御プログラム及びその記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、SPSである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている(例えば、特許文献1)。
GPS受信機は、例えば、上空に位置する、例えば、4個のGPS衛星からの信号(以後、衛星信号と呼ぶ)を受信し、衛星信号が各GPS衛星から発信された時刻とGPS受信機に到達した時刻との差(以後、遅延時間と呼ぶ)によって、各GPS衛星とGPS受信機との間の距離(以後、擬似距離と呼ぶ)を求める。GPS受信機は、各GPS衛星の衛星軌道上の位置と、上述の擬似距離を使用して、GPS受信機の現在位置の測位結果を算出するようになっている。
GPS受信機が衛星信号を受信するためには、各GPS衛星とGPS受信機の相対移動によるドップラー偏移と、GPS受信機のローカル発振器の周波数誤差を考慮して、所定の周波数範囲(以下、「サーチ範囲」と呼ぶ)を決定し、その周波数範囲をサーチする必要がある。
これに関して、温度によるローカル発振器の周波数変化(ドリフト)を考慮して、サーチ範囲を決定する技術が一般に実施されている。
【特許文献1】特開2000−131415号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、ドップラー偏移の誤差が大きい場合には、サーチ範囲を適切に規定することができず、迅速に衛星信号を受信することができない場合がある。また、ドップラー偏移の最大誤差を考慮して、サーチ範囲を広くすると、サーチリソース(相関器)を効率的に使用することができない場合がある。
【0004】
そこで、本発明は、ドップラー偏移の誤差に応じて、各SPS衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる測位装置、その制御方法、制御プログラム及びその記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置であって、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出手段と、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出す相対位置算出手段と、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出手段と、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出手段と、を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、ドップラー偏移誤差算出手段を有するから、前記ドップラー偏移誤差を算出することができる。
そして、前記測位装置は、前記周波数範囲算出手段を有するから、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出することができる。
これにより、ドップラー偏移の誤差に応じて、各SPS衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記相対位置は、前記初期位置に対する各前記衛星位置の仰角であることを特徴とする測位装置である。
【0008】
仰角が高いほど、前記ドップラー偏移の誤差は大きい。そして、仰角は各前記SPS衛星ごとに異なる。
このため、第2の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記仰角を利用して、各前記SPS衛星ごとに前記ドップラー偏移誤差を算出することができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明の構成において、前記ドップラー偏移誤差算出手段は、前記初期位置の初期位置誤差と前記相対位置に基づいて、前記ドップラー偏移誤差を算出する構成となっていることを特徴とする測位装置である。
【0010】
前記初期位置誤差が大きいほど、前記ドップラー偏移誤差は大きい。
この点、第3の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記初期位置誤差に応じて、前記ドップラー偏移誤差を算出することができる。
【0011】
前記目的は、第4の発明によれば、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法によって達成される。
【0012】
第4の発明の構成によれば、前記測位装置は、各前記SPS衛星ごとに算出した前記ドップラー偏移誤差に基づいて、前記周波数範囲を算出することができるから、ドップラー偏移の誤差に応じて、各SPS衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる。
【0013】
前記目的は、第5の発明によれば、コンピュータに、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【0014】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態の端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、GPS衛星12a乃至12hから信号S1乃至S8を受信することができる。
なお、GPS衛星のことを、単に、衛星とも呼ぶ。
【0017】
GPS衛星12a等はSPS衛星の一例であり、信号S1等は衛星信号の一例である。信号S1は、C/A(Clear and AcquisionまたはCoarse/Access)コードを含む。C/Aコードは、擬似雑音符号(以後、PN(Psuedo random noise code)符号と呼ぶ)の一つである。このC/Aコードは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec)のビット長の信号である。C/Aコードは、1,023チップ(chip)で構成されている。端末20は、このC/Aコードを使用して現在位置の測位を行う。
【0018】
端末20は例えば、携帯電話機、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistance)等であるが、これらに限らない。
SPSはGPSに限らず、例えば、Galileo、準天頂衛星等であってもよい。
【0019】
図2は、測位方法の一例を示す概念図である。
図2に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードが連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との間の距離は、C/Aコードの長さ(300キロメートル(km))の整数倍とは限らないから、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、3個以上のGPS衛星12a等についての擬似距離を使用して測位を行う。
本明細書において、C/Aコードの端数部C/Aaをコードフェーズと呼ぶ。コードフェーズは、例えば、C/Aコードの1,023あるチップの何番目かで示すこともできるし、距離に換算して示すこともできる。擬似距離を算出するときには、コードフェーズを距離に換算している。
【0020】
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリスを使用して算出可能である。エフェメリスは、GPS衛星12aの精密な軌道を示す情報である。そして、例えば、GPS衛星12aの軌道上の位置と後述の初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数倍の部分を特定することができる。なお、C/Aコードの長さが300キロメートル(km)であるから、初期位置Q0の位置誤差は、150キロメートル(km)以内である必要がある。
【0021】
そして、端末20は、コードフェーズ及び周波数を変動させながら、相関処理を行う。この相関処理は、後述のコヒーレント処理及びインコヒーレント処理で構成される。
相関積算値が最大になった位相がコード端数C/Aaである。
【0022】
図3及び図4は、相関処理の説明図である。
コヒーレントは、端末20が受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。レプリカC/Aコードは、端末20が発生する符号である。
例えば、図3(a)に示すように、コヒーレント時間が5msecであれば、5msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとった位相(コードフェーズ)と、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、相関積算値(インコヒーレント値)を算出する処理である。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力されたコードフェーズと、相関積算値が出力される。
図3(b)に示すように、相関値Pの最大値Pmaxに対応するコードフェーズCP1が、コードフェーズ端数C/Aa(図2参照)である。
【0023】
図4(a)に示すように、端末20は、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわち、32分の1チップの位相幅(位相幅W1)間隔で相関処理を行う。
図4(b)に示すように、端末20は、例えば、C/Aコードの第1チップから第1,023チップまでをサーチする。
このとき、端末20は、サーチ中心周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において信号S1等をサーチする。例えば、(A−100)kHzの周波数から(A+100)kHzの周波数の範囲を、100Hzごとの周波数ステップで信号S1等をサーチする。
【0024】
一般的には、GPS受信器は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー偏移(予想ドップラー周波数)H2を加え、さらにドリフトDRを加えて、サーチ中心周波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数H1は既知であり、例えば、1,575.42MHzである。ドリフトDRとは、温度変化によるGPS受信器の基準発振器の発振周波数の変化である。
ドップラー偏移は、各GPS衛星12a等とGPS受信機との相対移動によって生じる。GPS受信機は、エフェメリスによって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、予想ドップラー周波数H2を算出する。
GPS受信機は、各GPS衛星12a等ごとに、サーチ中心周波数Aを算出する。
【0025】
ところが、上述の予想ドップラー周波数H2の精度が低い場合には、迅速に信号S1等を捕捉することができない場合がある。このため、迅速にコードフェーズを算出することができない場合がある。
特に、例えば、マイナス(−)160dBm乃至マイナス(−)139dBmの弱電界下においては、周波数を固定して積算時間(インコヒーレント時間)を長く確保する必要があるが、サーチ範囲の精度が低い場合には、過度に狭い周波数をサーチすることで信号S1等を捕捉できなかったり、周波数範囲を過度に広くすることで信号S1を捕捉するための時間が長く必要になる場合がある。
そして、従来、GPS受信器の例えば、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)である基準発振器のドリフトは2ppmであったが、例えば、携帯電話の通信電波を利用した周波数補正によって、例えば、0.5ppmに低減している。このため、ドリフトの影響よりも、むしろ、ドップラー周波数の精度が信号S1等を迅速かつ効率よく捕捉するために重要になっている。
この点、端末20は、予想ドップラー周波数H2の誤差を算出し、その誤差に応じて、迅速かつ効率的に信号S1等を捕捉することができるようになっている。
【0026】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図5は端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図5に示すように、端末20は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス22を有する。
このバス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26が接続されている。記憶装置26は例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。
【0027】
また、このバス22には、各種情報や命令の入力を受けるための入力装置28、電源装置30、通信信号を送受信するための通信装置32、GPS衛星12a等から信号S1等を受信するためのGPS装置34及び、各種情報を表示するための表示装置36が接続されている。
また、このバス22には、時計38が接続されている。
【0028】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図6は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図6に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図5の通信装置32に対応する通信部102、GPS装置34に対応するGPS部104、表示装置36に対応する表示部106、時計38に対応する計時部108等を有する。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0029】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、衛星軌道情報152を格納している。衛星軌道情報152は、すべてのGPS衛星12a等の概略の軌道を示すアルマナック(Almanac)152a、及び、各GPS衛星12a等の精密な軌道を示すエフェメリス(Ephemeris)152bを含む。端末20は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを、GPS衛星12a等からの信号S1等を受信してデコードすることによって取得する。
端末20は、衛星軌道情報152を、信号S1等に基づく測位に使用する。
【0030】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置情報154を格納している。初期位置情報154は、初期位置P0を示す情報である。初期位置P0は、例えば、前回測位時の測位位置である。
【0031】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置誤差情報156を格納している。初期位置誤差情報156は、初期位置P0の誤差(以下、「初期位置誤差」と呼ぶ)P0erを示す情報である。初期位置誤差P0erは、初期位置P0を算出したときの信号S1等の受信状態やPDOP(Position Dilution Of Precision)によって規定される。例えば、信号S1等の信号強度が強く、PDOPが小さい場合には、初期位置誤差P0erは5メートル(m)である。これに対して、屋内で信号S1等を受信し、信号強度が弱い場合には、初期位置誤差P0erは30メートル(m)である。
【0032】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、衛星位置算出プログラム112を格納している。衛星位置算出プログラム112は、制御部100が、観測可能な各GPS衛星12a等について、その軌道上の衛星位置Pvを算出するためのプログラムである。衛星位置算出プログラム112と制御部100は、衛星位置算出手段の一例である。
具体的には、制御部100は、アルマナック152aに基づいて、初期位置P0を基準として現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を算出する。続いて、制御部100は、エフェメリス152bに基づいて、現在時刻におけるGPS衛星12a等の軌道上の位置をGPS衛星12a等ごとに算出する。
例えば、GPS衛星12aの軌道上の衛星位置Pva、GPS衛星12bの軌道上の衛星位置Pvbというように、衛星位置Pvは、GPS衛星12a等ごとに算出される。
制御部100は、算出した衛星位置Pvを示す衛星位置情報158を第2記憶部150に格納する。
【0033】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、予想ドップラー周波数算出プログラム114を格納している。予想ドップラー周波数算出プログラム114は、制御部100が、観測可能な各GPS衛星12a等について信号S1のキャリア周波数のドップラー偏移である予想ドップラー周波数H2を算出するためのプログラムである。予想ドップラー周波数H2は、ドップラー偏移の一例である。
【0034】
図7は、予想ドップラー周波数算出プログラム114の説明図である。
具体的には、制御部100は、図7(a)に示すように、エフェメリス152bを参照して、初期位置P0に対する各GPS衛星12a等の現在時刻における移動状態を示すベクトルvsを算出する。
【0035】
図7(b)に示すように、発信周波数H1と予想ドップラー周波数H2を加えた周波数は、ベクトルvsを利用して式2で算出されるから、予想ドップラー周波数H2は、式3で算出される。なお、本実施の形態においては、説明の便宜のため、端末20は静止しているものとする。
制御部100は、算出した予想ドップラー周波数H2を示す予想ドップラー周波数情報160を第2記憶部150に格納する。
【0036】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、相対位置算出プログラム116を格納している。相対位置算出プログラム116は、制御部100が、初期位置P0と各GPS衛星12a等の衛星位置Pvとの相対位置を算出するためのプログラムである。相対位置算出プログラム116と制御部100は、相対位置算出手段の一例である。
【0037】
図8は、相対位置算出プログラム116の説明図である。
具体的には、制御部100は、初期位置P0から例えば、GPS衛星12aの衛星位置Pvaへ向かうベクトルpgを算出する。
そして、ベクトルpgが示す3次元座標上の方向からGPS衛星12aの仰角及び方位角を算出する。
制御部100は、GPS衛星12a等ごとに、仰角及び方位角を算出する。
制御部100は、算出した仰角及び方位角を示す相対位置情報162を第2記憶部150に格納する。仰角及び方位角は、相対位置の一例である。
【0038】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、初期位置誤差取得プログラム118を格納している。初期位置誤差取得プログラム118は、制御部100が、第2記憶部150に格納された初期位置誤差情報156を読み込むためのプログラムである。
【0039】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、ドップラー誤差算出プログラム120を格納している。ドップラー誤差算出プログラム120は、制御部100が、予想ドップラー周波数H2の誤差であるドップラー誤差Derを算出するためのプログラムである。ドップラー誤差Derは、ドップラー偏移誤差の一例である。ドップラー誤差算出プログラム120と制御部100は、ドップラー偏移誤差算出手段の一例である。
【0040】
図9及び図10は、ドップラー誤差算出プログラム120の説明図である。
図9に示すように、例えば、初期位置P0を基準とすれば、視線ベクトルvsが0の場合であっても、真の位置Prにおいては、視線ベクトルvsが存在する場合がある。一般的に表現すると、初期位置P0における視線ベクトルvsと真の位置Prにおける視線ベクトルvsが異なる場合がある。
これは、初期位置P0が真の位置Prと乖離しているためである。すなわち、初期地位誤差P0erが存在するためである。そして、上述のように、予想ドップラー周波数H2は、初期位置P0を基準とする視線ベクトルvsに基づいて算出されているから、初期位置誤差P0erの影響を受けて、誤差を有する。
【0041】
図10(a)に示すように、初期位置誤差P0erの単位長である1キロメートル(km)あたりのドップラー誤差uniDerは、仰角に基づいて規定される。仰角が90度の場合にはドップラー誤差uniDerは最も大きく、例えば、1kmについて1.0ヘルツ(Hz/km)である。これに対して、仰角が0度の場合にはドップラー誤差uniDerは最も小さく、1kmについて0ヘルツ(Hz/km)である。
なお、図10(a)のグラフは、特定の衛星の軌道が端末20の頭上を通過する前提で作成されているが、特定の衛星の軌道が端末20頭上を通過しない場合であっても、仰角が90度に近いほど、ドップラー誤差uniDerは大きい。このため、図10(a)とは数値は異なるが、同様のグラフを作成することができる。
【0042】
制御部100は、図10(b)に示すように、仰角θにおけるドップラー誤差uniDerθに初期位置誤差P0erを乗じる式4を使用して、ドップラー誤差Derを算出する。
例えば、仰角θが90度である場合に、初期位置誤差P0erが100kmであると、ドップラー誤差Derは100Hzである。
制御部100は、算出したドップラー誤差Derを示すドップラー誤差情報164を第2記憶部150に格納する。
制御部100は、GPS衛星12a等ごとに、ドップラー誤差Derを算出する。例えば、GPS衛星12aについてのドップラー誤差Deraと、GPS衛星12bについてのドップラー誤差Derbをそれぞれ算出する。仰角θはGPS衛星12a等ごとに異なるから、ドップラー誤差Derもまた、GPS衛星12a等ごとに異なる。すなわち、初期位置P0を基準として、仰角θが大きい衛星ほどドップラー誤差Derは大きく、仰角θが小さい衛星ほどドップラー誤差Derは小さい。
【0043】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、サーチ範囲算出プログラム122を格納している。サーチ範囲算出プログラム122は、制御部100が、各GPS衛星12a等からの信号S1等を受信するための周波数範囲であるサーチ範囲BWを算出するためのプログラムである。サーチ範囲BWは周波数範囲の一例である。サーチ範囲算出プログラム122と制御部100は、周波数範囲算出手段の一例である。
【0044】
図11は、サーチ範囲算出プログラム122の説明図である。
図11(a)に示すように、発信周波数H1と予想ドップラー周波数H2とドリフトDRを中心とする周波数(サーチ中心周波数A)から、30ヘルツ(Hz)及びGPS衛星12a等ごとに異なるドップラー誤差Derを差し引いた周波数を周波数下限とする。そして、サーチ中心周波数Aに30ヘルツ(Hz)及びGPS衛星12a等ごとに異なるドップラー誤差Derを加えた周波数を周波数上限とする。
制御部100は、上述の周波数下限及び周波数上限によって規定される範囲をサーチ範囲BWとする。
制御部100は、GPS衛星12a等ごとに、サーチ範囲BWを算出する。例えば、GPS衛星12aについてのサーチ範囲BWaと、GPS衛星12bについてのサーチ範囲BWbをそれぞれ算出する。
上述のように、ドップラー誤差Derは、GPS衛星12a等ごとに異なるから、図11(b)に示すように、サーチ範囲BWに示される周波数範囲は、GPS衛星12a等ごとに異なる。
制御部100は、算出したサーチ範囲BWを示すサーチ範囲情報166を第2記憶部150に格納する。
【0045】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位プログラム124を格納している。測位プログラム124は、制御部100が、GPS衛星12a等ごとにサーチ範囲BWをサーチして各GPS衛星12a等を捕捉し、さらにトラッキングして相関処理を行い、測位位置P1を算出するためのプログラムである。
制御部100は、算出した測位位置P1を示す測位位置情報168を第2記憶部150に格納する。
【0046】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム126を格納している。測位位置出力プログラム126は、制御部100が、測位位置P1を表示装置36に出力するためのプログラムである。
【0047】
端末20は、上述のように構成されている。
上述のように、端末20は、ドップラー誤差Derを算出することができる。
そして、端末20は、ドップラー誤差Derに基づいて、各信号S1等を受信するためのサーチ範囲BWを算出することができる。ドップラー誤差Derを考慮しない場合には、確実に信号S1等を捕捉するためには、例えば、諸要因による受信周波数の最大誤差を考慮して、確定不能範囲として100kHzを規定し、一律にサーチ中心周波数の前後100kHzをサーチ範囲(以下、「一律規定範囲」と呼ぶ)にする必要がある。これに対して、本実施の形態の端末20においては、受信周波数の不確定範囲のうち、ドップラー誤差Derは確定しているから、確定不能範囲として一律に規定する範囲は、上述のように30kHzと最大誤差よりも狭く設定し、衛星ごとのドップラー誤差Derに応じてサーチ範囲BWを設定することができる。このため、仰角に応じて、サーチ範囲BWは最大誤差よりも狭くなるから、一律規定範囲をサーチ範囲とする場合に比べて、迅速に信号S1等を捕捉することができる。
また、サーチ範囲BWが衛星ごとに異なるから、端末20のサーチリソース(相関器)を、サーチ範囲BWが狭い衛星には少なく割り当て、サーチ範囲BWが広い衛星には多く割り当てることができる。すなわち、サーチ範囲BWに応じて、サーチリソースを割り当てることができる。これにより、サーチリソースを効率的に使用することができる。
これにより、ドップラー偏移の誤差に応じて、各SPS衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる。
【0048】
以上が本実施の形態の端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図12を使用して説明する。
図12は本実施の形態の端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
【0049】
まず、端末20は、観測可能な各GPS衛星12a等について、衛星位置Pvを算出する(図12のステップST1)。このステップST1は、衛星位置算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、GPS衛星12a等ごとに、予想ドップラー周波数H2を算出する(ステップST2)。具体的には、端末20は、視線ベクトルvs(図7(a)参照)を算出し、発信周波数H1と視線ベクトルvsに基づいて、予想ドップラー周波数H2を算出する。このステップST2は、視線ベクトル算出ステップの一例であり、ドップラー偏移算出ステップの一例でもある。
【0050】
続いて、端末20は、初期位置P0と各衛星位置Pvに基づいて、各衛星の仰角及び方位角を算出する(ステップST3)。このステップST3は、相対位置算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、初期位置誤差P0erを取得する(ステップST4)。
続いて、端末20は、GPS衛星12a等ごとに、ドップラー誤差Derを算出する(ステップST5)。このステップST5は、ドップラー偏移誤差算出ステップの一例である。
【0051】
続いて、端末20は、GPS衛星ごとにサーチ範囲BWを算出する(ステップST6)。このステップST6は、周波数範囲算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、サーチを行い(ステップST7)、トラッキングを行い(ステップST8)、測位を行う(ステップST9)。
続いて、端末20は、測位位置P1を出力する(ステップST10)。
【0052】
上述のステップによって、ドップラー偏移の誤差に応じて、各衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる。
【0053】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の衛星位置算出ステップと、視線ベクトル算出ステップと、ドップラー偏移算出ステップと、相対位置算出ステップと、ドップラー偏移誤差算出ステップと、周波数範囲算出ステップ等を実行させるための測位装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような測位装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
【0054】
これら測位装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられるプログラム格納媒体は、例えばフロッピー(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Recordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewritable)、DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスクあるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0055】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態の端末等を示す概略図である。
【図2】測位方法の一例を示す概念図である。
【図3】相関処理の説明図である。
【図4】相関処理の説明図である。
【図5】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図6】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図7】予想ドップラー周波数算出プログラムの説明図である。
【図8】相対位置算出プログラムの説明図である。
【図9】ドップラー誤差算出プログラムの説明図である。
【図10】ドップラー誤差算出プログラムの説明図である。
【図11】サーチ範囲算出プログラムの説明図である。
【図12】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h・・・GPS衛星、20・・・端末、112・・・衛星位置算出プログラム、114・・・予想ドップラー周波数算出プログラム、116・・・相対位置算出プログラム、118・・・初期位置誤差取得プログラム、120・・・ドップラー誤差算出プログラム、122・・・サーチ範囲算出プログラム、124・・・測位プログラム、126・・・測位位置出力プログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、SPS(Satellite Positioning System)を使用して測位を行うことができる測位装置、その制御方法、制御プログラム及びその記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、SPSである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている(例えば、特許文献1)。
GPS受信機は、例えば、上空に位置する、例えば、4個のGPS衛星からの信号(以後、衛星信号と呼ぶ)を受信し、衛星信号が各GPS衛星から発信された時刻とGPS受信機に到達した時刻との差(以後、遅延時間と呼ぶ)によって、各GPS衛星とGPS受信機との間の距離(以後、擬似距離と呼ぶ)を求める。GPS受信機は、各GPS衛星の衛星軌道上の位置と、上述の擬似距離を使用して、GPS受信機の現在位置の測位結果を算出するようになっている。
GPS受信機が衛星信号を受信するためには、各GPS衛星とGPS受信機の相対移動によるドップラー偏移と、GPS受信機のローカル発振器の周波数誤差を考慮して、所定の周波数範囲(以下、「サーチ範囲」と呼ぶ)を決定し、その周波数範囲をサーチする必要がある。
これに関して、温度によるローカル発振器の周波数変化(ドリフト)を考慮して、サーチ範囲を決定する技術が一般に実施されている。
【特許文献1】特開2000−131415号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、ドップラー偏移の誤差が大きい場合には、サーチ範囲を適切に規定することができず、迅速に衛星信号を受信することができない場合がある。また、ドップラー偏移の最大誤差を考慮して、サーチ範囲を広くすると、サーチリソース(相関器)を効率的に使用することができない場合がある。
【0004】
そこで、本発明は、ドップラー偏移の誤差に応じて、各SPS衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる測位装置、その制御方法、制御プログラム及びその記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置であって、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出手段と、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出す相対位置算出手段と、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出手段と、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出手段と、を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、ドップラー偏移誤差算出手段を有するから、前記ドップラー偏移誤差を算出することができる。
そして、前記測位装置は、前記周波数範囲算出手段を有するから、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出することができる。
これにより、ドップラー偏移の誤差に応じて、各SPS衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記相対位置は、前記初期位置に対する各前記衛星位置の仰角であることを特徴とする測位装置である。
【0008】
仰角が高いほど、前記ドップラー偏移の誤差は大きい。そして、仰角は各前記SPS衛星ごとに異なる。
このため、第2の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記仰角を利用して、各前記SPS衛星ごとに前記ドップラー偏移誤差を算出することができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明の構成において、前記ドップラー偏移誤差算出手段は、前記初期位置の初期位置誤差と前記相対位置に基づいて、前記ドップラー偏移誤差を算出する構成となっていることを特徴とする測位装置である。
【0010】
前記初期位置誤差が大きいほど、前記ドップラー偏移誤差は大きい。
この点、第3の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記初期位置誤差に応じて、前記ドップラー偏移誤差を算出することができる。
【0011】
前記目的は、第4の発明によれば、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法によって達成される。
【0012】
第4の発明の構成によれば、前記測位装置は、各前記SPS衛星ごとに算出した前記ドップラー偏移誤差に基づいて、前記周波数範囲を算出することができるから、ドップラー偏移の誤差に応じて、各SPS衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる。
【0013】
前記目的は、第5の発明によれば、コンピュータに、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【0014】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態の端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、GPS衛星12a乃至12hから信号S1乃至S8を受信することができる。
なお、GPS衛星のことを、単に、衛星とも呼ぶ。
【0017】
GPS衛星12a等はSPS衛星の一例であり、信号S1等は衛星信号の一例である。信号S1は、C/A(Clear and AcquisionまたはCoarse/Access)コードを含む。C/Aコードは、擬似雑音符号(以後、PN(Psuedo random noise code)符号と呼ぶ)の一つである。このC/Aコードは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec)のビット長の信号である。C/Aコードは、1,023チップ(chip)で構成されている。端末20は、このC/Aコードを使用して現在位置の測位を行う。
【0018】
端末20は例えば、携帯電話機、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistance)等であるが、これらに限らない。
SPSはGPSに限らず、例えば、Galileo、準天頂衛星等であってもよい。
【0019】
図2は、測位方法の一例を示す概念図である。
図2に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードが連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との間の距離は、C/Aコードの長さ(300キロメートル(km))の整数倍とは限らないから、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、3個以上のGPS衛星12a等についての擬似距離を使用して測位を行う。
本明細書において、C/Aコードの端数部C/Aaをコードフェーズと呼ぶ。コードフェーズは、例えば、C/Aコードの1,023あるチップの何番目かで示すこともできるし、距離に換算して示すこともできる。擬似距離を算出するときには、コードフェーズを距離に換算している。
【0020】
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリスを使用して算出可能である。エフェメリスは、GPS衛星12aの精密な軌道を示す情報である。そして、例えば、GPS衛星12aの軌道上の位置と後述の初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数倍の部分を特定することができる。なお、C/Aコードの長さが300キロメートル(km)であるから、初期位置Q0の位置誤差は、150キロメートル(km)以内である必要がある。
【0021】
そして、端末20は、コードフェーズ及び周波数を変動させながら、相関処理を行う。この相関処理は、後述のコヒーレント処理及びインコヒーレント処理で構成される。
相関積算値が最大になった位相がコード端数C/Aaである。
【0022】
図3及び図4は、相関処理の説明図である。
コヒーレントは、端末20が受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。レプリカC/Aコードは、端末20が発生する符号である。
例えば、図3(a)に示すように、コヒーレント時間が5msecであれば、5msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとった位相(コードフェーズ)と、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、相関積算値(インコヒーレント値)を算出する処理である。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力されたコードフェーズと、相関積算値が出力される。
図3(b)に示すように、相関値Pの最大値Pmaxに対応するコードフェーズCP1が、コードフェーズ端数C/Aa(図2参照)である。
【0023】
図4(a)に示すように、端末20は、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわち、32分の1チップの位相幅(位相幅W1)間隔で相関処理を行う。
図4(b)に示すように、端末20は、例えば、C/Aコードの第1チップから第1,023チップまでをサーチする。
このとき、端末20は、サーチ中心周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において信号S1等をサーチする。例えば、(A−100)kHzの周波数から(A+100)kHzの周波数の範囲を、100Hzごとの周波数ステップで信号S1等をサーチする。
【0024】
一般的には、GPS受信器は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー偏移(予想ドップラー周波数)H2を加え、さらにドリフトDRを加えて、サーチ中心周波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数H1は既知であり、例えば、1,575.42MHzである。ドリフトDRとは、温度変化によるGPS受信器の基準発振器の発振周波数の変化である。
ドップラー偏移は、各GPS衛星12a等とGPS受信機との相対移動によって生じる。GPS受信機は、エフェメリスによって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、予想ドップラー周波数H2を算出する。
GPS受信機は、各GPS衛星12a等ごとに、サーチ中心周波数Aを算出する。
【0025】
ところが、上述の予想ドップラー周波数H2の精度が低い場合には、迅速に信号S1等を捕捉することができない場合がある。このため、迅速にコードフェーズを算出することができない場合がある。
特に、例えば、マイナス(−)160dBm乃至マイナス(−)139dBmの弱電界下においては、周波数を固定して積算時間(インコヒーレント時間)を長く確保する必要があるが、サーチ範囲の精度が低い場合には、過度に狭い周波数をサーチすることで信号S1等を捕捉できなかったり、周波数範囲を過度に広くすることで信号S1を捕捉するための時間が長く必要になる場合がある。
そして、従来、GPS受信器の例えば、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)である基準発振器のドリフトは2ppmであったが、例えば、携帯電話の通信電波を利用した周波数補正によって、例えば、0.5ppmに低減している。このため、ドリフトの影響よりも、むしろ、ドップラー周波数の精度が信号S1等を迅速かつ効率よく捕捉するために重要になっている。
この点、端末20は、予想ドップラー周波数H2の誤差を算出し、その誤差に応じて、迅速かつ効率的に信号S1等を捕捉することができるようになっている。
【0026】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図5は端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図5に示すように、端末20は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス22を有する。
このバス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26が接続されている。記憶装置26は例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。
【0027】
また、このバス22には、各種情報や命令の入力を受けるための入力装置28、電源装置30、通信信号を送受信するための通信装置32、GPS衛星12a等から信号S1等を受信するためのGPS装置34及び、各種情報を表示するための表示装置36が接続されている。
また、このバス22には、時計38が接続されている。
【0028】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図6は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図6に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図5の通信装置32に対応する通信部102、GPS装置34に対応するGPS部104、表示装置36に対応する表示部106、時計38に対応する計時部108等を有する。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0029】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、衛星軌道情報152を格納している。衛星軌道情報152は、すべてのGPS衛星12a等の概略の軌道を示すアルマナック(Almanac)152a、及び、各GPS衛星12a等の精密な軌道を示すエフェメリス(Ephemeris)152bを含む。端末20は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを、GPS衛星12a等からの信号S1等を受信してデコードすることによって取得する。
端末20は、衛星軌道情報152を、信号S1等に基づく測位に使用する。
【0030】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置情報154を格納している。初期位置情報154は、初期位置P0を示す情報である。初期位置P0は、例えば、前回測位時の測位位置である。
【0031】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置誤差情報156を格納している。初期位置誤差情報156は、初期位置P0の誤差(以下、「初期位置誤差」と呼ぶ)P0erを示す情報である。初期位置誤差P0erは、初期位置P0を算出したときの信号S1等の受信状態やPDOP(Position Dilution Of Precision)によって規定される。例えば、信号S1等の信号強度が強く、PDOPが小さい場合には、初期位置誤差P0erは5メートル(m)である。これに対して、屋内で信号S1等を受信し、信号強度が弱い場合には、初期位置誤差P0erは30メートル(m)である。
【0032】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、衛星位置算出プログラム112を格納している。衛星位置算出プログラム112は、制御部100が、観測可能な各GPS衛星12a等について、その軌道上の衛星位置Pvを算出するためのプログラムである。衛星位置算出プログラム112と制御部100は、衛星位置算出手段の一例である。
具体的には、制御部100は、アルマナック152aに基づいて、初期位置P0を基準として現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を算出する。続いて、制御部100は、エフェメリス152bに基づいて、現在時刻におけるGPS衛星12a等の軌道上の位置をGPS衛星12a等ごとに算出する。
例えば、GPS衛星12aの軌道上の衛星位置Pva、GPS衛星12bの軌道上の衛星位置Pvbというように、衛星位置Pvは、GPS衛星12a等ごとに算出される。
制御部100は、算出した衛星位置Pvを示す衛星位置情報158を第2記憶部150に格納する。
【0033】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、予想ドップラー周波数算出プログラム114を格納している。予想ドップラー周波数算出プログラム114は、制御部100が、観測可能な各GPS衛星12a等について信号S1のキャリア周波数のドップラー偏移である予想ドップラー周波数H2を算出するためのプログラムである。予想ドップラー周波数H2は、ドップラー偏移の一例である。
【0034】
図7は、予想ドップラー周波数算出プログラム114の説明図である。
具体的には、制御部100は、図7(a)に示すように、エフェメリス152bを参照して、初期位置P0に対する各GPS衛星12a等の現在時刻における移動状態を示すベクトルvsを算出する。
【0035】
図7(b)に示すように、発信周波数H1と予想ドップラー周波数H2を加えた周波数は、ベクトルvsを利用して式2で算出されるから、予想ドップラー周波数H2は、式3で算出される。なお、本実施の形態においては、説明の便宜のため、端末20は静止しているものとする。
制御部100は、算出した予想ドップラー周波数H2を示す予想ドップラー周波数情報160を第2記憶部150に格納する。
【0036】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、相対位置算出プログラム116を格納している。相対位置算出プログラム116は、制御部100が、初期位置P0と各GPS衛星12a等の衛星位置Pvとの相対位置を算出するためのプログラムである。相対位置算出プログラム116と制御部100は、相対位置算出手段の一例である。
【0037】
図8は、相対位置算出プログラム116の説明図である。
具体的には、制御部100は、初期位置P0から例えば、GPS衛星12aの衛星位置Pvaへ向かうベクトルpgを算出する。
そして、ベクトルpgが示す3次元座標上の方向からGPS衛星12aの仰角及び方位角を算出する。
制御部100は、GPS衛星12a等ごとに、仰角及び方位角を算出する。
制御部100は、算出した仰角及び方位角を示す相対位置情報162を第2記憶部150に格納する。仰角及び方位角は、相対位置の一例である。
【0038】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、初期位置誤差取得プログラム118を格納している。初期位置誤差取得プログラム118は、制御部100が、第2記憶部150に格納された初期位置誤差情報156を読み込むためのプログラムである。
【0039】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、ドップラー誤差算出プログラム120を格納している。ドップラー誤差算出プログラム120は、制御部100が、予想ドップラー周波数H2の誤差であるドップラー誤差Derを算出するためのプログラムである。ドップラー誤差Derは、ドップラー偏移誤差の一例である。ドップラー誤差算出プログラム120と制御部100は、ドップラー偏移誤差算出手段の一例である。
【0040】
図9及び図10は、ドップラー誤差算出プログラム120の説明図である。
図9に示すように、例えば、初期位置P0を基準とすれば、視線ベクトルvsが0の場合であっても、真の位置Prにおいては、視線ベクトルvsが存在する場合がある。一般的に表現すると、初期位置P0における視線ベクトルvsと真の位置Prにおける視線ベクトルvsが異なる場合がある。
これは、初期位置P0が真の位置Prと乖離しているためである。すなわち、初期地位誤差P0erが存在するためである。そして、上述のように、予想ドップラー周波数H2は、初期位置P0を基準とする視線ベクトルvsに基づいて算出されているから、初期位置誤差P0erの影響を受けて、誤差を有する。
【0041】
図10(a)に示すように、初期位置誤差P0erの単位長である1キロメートル(km)あたりのドップラー誤差uniDerは、仰角に基づいて規定される。仰角が90度の場合にはドップラー誤差uniDerは最も大きく、例えば、1kmについて1.0ヘルツ(Hz/km)である。これに対して、仰角が0度の場合にはドップラー誤差uniDerは最も小さく、1kmについて0ヘルツ(Hz/km)である。
なお、図10(a)のグラフは、特定の衛星の軌道が端末20の頭上を通過する前提で作成されているが、特定の衛星の軌道が端末20頭上を通過しない場合であっても、仰角が90度に近いほど、ドップラー誤差uniDerは大きい。このため、図10(a)とは数値は異なるが、同様のグラフを作成することができる。
【0042】
制御部100は、図10(b)に示すように、仰角θにおけるドップラー誤差uniDerθに初期位置誤差P0erを乗じる式4を使用して、ドップラー誤差Derを算出する。
例えば、仰角θが90度である場合に、初期位置誤差P0erが100kmであると、ドップラー誤差Derは100Hzである。
制御部100は、算出したドップラー誤差Derを示すドップラー誤差情報164を第2記憶部150に格納する。
制御部100は、GPS衛星12a等ごとに、ドップラー誤差Derを算出する。例えば、GPS衛星12aについてのドップラー誤差Deraと、GPS衛星12bについてのドップラー誤差Derbをそれぞれ算出する。仰角θはGPS衛星12a等ごとに異なるから、ドップラー誤差Derもまた、GPS衛星12a等ごとに異なる。すなわち、初期位置P0を基準として、仰角θが大きい衛星ほどドップラー誤差Derは大きく、仰角θが小さい衛星ほどドップラー誤差Derは小さい。
【0043】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、サーチ範囲算出プログラム122を格納している。サーチ範囲算出プログラム122は、制御部100が、各GPS衛星12a等からの信号S1等を受信するための周波数範囲であるサーチ範囲BWを算出するためのプログラムである。サーチ範囲BWは周波数範囲の一例である。サーチ範囲算出プログラム122と制御部100は、周波数範囲算出手段の一例である。
【0044】
図11は、サーチ範囲算出プログラム122の説明図である。
図11(a)に示すように、発信周波数H1と予想ドップラー周波数H2とドリフトDRを中心とする周波数(サーチ中心周波数A)から、30ヘルツ(Hz)及びGPS衛星12a等ごとに異なるドップラー誤差Derを差し引いた周波数を周波数下限とする。そして、サーチ中心周波数Aに30ヘルツ(Hz)及びGPS衛星12a等ごとに異なるドップラー誤差Derを加えた周波数を周波数上限とする。
制御部100は、上述の周波数下限及び周波数上限によって規定される範囲をサーチ範囲BWとする。
制御部100は、GPS衛星12a等ごとに、サーチ範囲BWを算出する。例えば、GPS衛星12aについてのサーチ範囲BWaと、GPS衛星12bについてのサーチ範囲BWbをそれぞれ算出する。
上述のように、ドップラー誤差Derは、GPS衛星12a等ごとに異なるから、図11(b)に示すように、サーチ範囲BWに示される周波数範囲は、GPS衛星12a等ごとに異なる。
制御部100は、算出したサーチ範囲BWを示すサーチ範囲情報166を第2記憶部150に格納する。
【0045】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位プログラム124を格納している。測位プログラム124は、制御部100が、GPS衛星12a等ごとにサーチ範囲BWをサーチして各GPS衛星12a等を捕捉し、さらにトラッキングして相関処理を行い、測位位置P1を算出するためのプログラムである。
制御部100は、算出した測位位置P1を示す測位位置情報168を第2記憶部150に格納する。
【0046】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム126を格納している。測位位置出力プログラム126は、制御部100が、測位位置P1を表示装置36に出力するためのプログラムである。
【0047】
端末20は、上述のように構成されている。
上述のように、端末20は、ドップラー誤差Derを算出することができる。
そして、端末20は、ドップラー誤差Derに基づいて、各信号S1等を受信するためのサーチ範囲BWを算出することができる。ドップラー誤差Derを考慮しない場合には、確実に信号S1等を捕捉するためには、例えば、諸要因による受信周波数の最大誤差を考慮して、確定不能範囲として100kHzを規定し、一律にサーチ中心周波数の前後100kHzをサーチ範囲(以下、「一律規定範囲」と呼ぶ)にする必要がある。これに対して、本実施の形態の端末20においては、受信周波数の不確定範囲のうち、ドップラー誤差Derは確定しているから、確定不能範囲として一律に規定する範囲は、上述のように30kHzと最大誤差よりも狭く設定し、衛星ごとのドップラー誤差Derに応じてサーチ範囲BWを設定することができる。このため、仰角に応じて、サーチ範囲BWは最大誤差よりも狭くなるから、一律規定範囲をサーチ範囲とする場合に比べて、迅速に信号S1等を捕捉することができる。
また、サーチ範囲BWが衛星ごとに異なるから、端末20のサーチリソース(相関器)を、サーチ範囲BWが狭い衛星には少なく割り当て、サーチ範囲BWが広い衛星には多く割り当てることができる。すなわち、サーチ範囲BWに応じて、サーチリソースを割り当てることができる。これにより、サーチリソースを効率的に使用することができる。
これにより、ドップラー偏移の誤差に応じて、各SPS衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる。
【0048】
以上が本実施の形態の端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図12を使用して説明する。
図12は本実施の形態の端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
【0049】
まず、端末20は、観測可能な各GPS衛星12a等について、衛星位置Pvを算出する(図12のステップST1)。このステップST1は、衛星位置算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、GPS衛星12a等ごとに、予想ドップラー周波数H2を算出する(ステップST2)。具体的には、端末20は、視線ベクトルvs(図7(a)参照)を算出し、発信周波数H1と視線ベクトルvsに基づいて、予想ドップラー周波数H2を算出する。このステップST2は、視線ベクトル算出ステップの一例であり、ドップラー偏移算出ステップの一例でもある。
【0050】
続いて、端末20は、初期位置P0と各衛星位置Pvに基づいて、各衛星の仰角及び方位角を算出する(ステップST3)。このステップST3は、相対位置算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、初期位置誤差P0erを取得する(ステップST4)。
続いて、端末20は、GPS衛星12a等ごとに、ドップラー誤差Derを算出する(ステップST5)。このステップST5は、ドップラー偏移誤差算出ステップの一例である。
【0051】
続いて、端末20は、GPS衛星ごとにサーチ範囲BWを算出する(ステップST6)。このステップST6は、周波数範囲算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、サーチを行い(ステップST7)、トラッキングを行い(ステップST8)、測位を行う(ステップST9)。
続いて、端末20は、測位位置P1を出力する(ステップST10)。
【0052】
上述のステップによって、ドップラー偏移の誤差に応じて、各衛星を迅速かつ効率的に捕捉することができる。
【0053】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の衛星位置算出ステップと、視線ベクトル算出ステップと、ドップラー偏移算出ステップと、相対位置算出ステップと、ドップラー偏移誤差算出ステップと、周波数範囲算出ステップ等を実行させるための測位装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような測位装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
【0054】
これら測位装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられるプログラム格納媒体は、例えばフロッピー(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Recordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewritable)、DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスクあるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0055】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態の端末等を示す概略図である。
【図2】測位方法の一例を示す概念図である。
【図3】相関処理の説明図である。
【図4】相関処理の説明図である。
【図5】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図6】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図7】予想ドップラー周波数算出プログラムの説明図である。
【図8】相対位置算出プログラムの説明図である。
【図9】ドップラー誤差算出プログラムの説明図である。
【図10】ドップラー誤差算出プログラムの説明図である。
【図11】サーチ範囲算出プログラムの説明図である。
【図12】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h・・・GPS衛星、20・・・端末、112・・・衛星位置算出プログラム、114・・・予想ドップラー周波数算出プログラム、116・・・相対位置算出プログラム、118・・・初期位置誤差取得プログラム、120・・・ドップラー誤差算出プログラム、122・・・サーチ範囲算出プログラム、124・・・測位プログラム、126・・・測位位置出力プログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のSPS(Satellite Positioning System)衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置であって、
各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出手段と、
前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出す相対位置算出手段と、
前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出手段と、
前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記相対位置は、
前記初期位置に対する各前記衛星位置の仰角であることを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記ドップラー偏移誤差算出手段は、
前記初期位置の初期位置誤差と前記相対位置に基づいて、前記ドップラー偏移誤差を算出する構成となっていることを特徴とする請求項2に記載の測位装置。
【請求項4】
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、
前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項5】
コンピュータに、
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、
前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、
前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
複数のSPS(Satellite Positioning System)衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置であって、
各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出手段と、
前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出す相対位置算出手段と、
前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出手段と、
前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記相対位置は、
前記初期位置に対する各前記衛星位置の仰角であることを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記ドップラー偏移誤差算出手段は、
前記初期位置の初期位置誤差と前記相対位置に基づいて、前記ドップラー偏移誤差を算出する構成となっていることを特徴とする請求項2に記載の測位装置。
【請求項4】
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、
前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項5】
コンピュータに、
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、
前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置を算出する衛星位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置に対する各前記SPS衛星の移動状態を示す視線ベクトルを算出する視線ベクトル算出ステップと、
前記測位装置が、前記視線ベクトルに基づいて、前記衛星信号のドップラー偏移を算出するドップラー偏移算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位装置の初期位置と各前記SPS衛星の軌道上の衛星位置との相対位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置に基づいて、各前記衛星信号の周波数のドップラー偏移の誤差であるドップラー偏移誤差を算出するドップラー偏移誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記ドップラー偏移誤差に基づいて、各前記衛星信号を受信するための周波数範囲を算出する周波数範囲算出ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−26142(P2008−26142A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198920(P2006−198920)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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