説明

測定内視鏡

本発明は、表面(4)のトポグラフィを測定するための内視鏡に関する。内視鏡は、投影ユニット(6)と撮像ユニット(8)とを有している。この内視鏡は、投影ユニット(6)の構成要素でありかつ撮像ユニット(8)の構成要素でもある対物レンズユニット(10)が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載されている表面のトポグラフィを測定するための内視鏡に関し、ならびに、請求項8に記載されている表面のトポグラフィを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元のジオメトリーを測定するためによく研究されている古典的な技術は、しばしば能動的な三角測量の基礎に基づいている。しかしながら、たとえば人間の耳道や穿孔穴のように狭隘な環境では、三角測量自体を具体化することが常に難しくなる。特に測定を行う内視鏡検査法の分野では、送信ユニットと受信ユニットないし投影ユニットと撮像ユニットの空間的配置を、相応の角度で位置決めすることは容易ではない。そのうえ、比較的長い、または比較的大きい空洞を1つの画像内に撮影することも通常は不可能である。すなわち、空間的に重なり合う領域を三次元で時間的に相前後して測定し、次いで、これをデータ処理により組み合わせて3D画像にすることが必要である(3Dデータスティッキング)。このとき重なり合い領域が広ければ広いほど、3D空間での個別撮影の組み合わせを正確に行うことができる。そのためには個別撮影自体が、すでに相互に固定的に関連づけられた測定点をできる限り多く有していることも、同様に前提条件となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、従来技術に比べて小さい構造スペースしか必要とせず、たとえば能動的な三角測量を適用したときにいっそう広い測定範囲を検出することができる、表面トポグラフィを測定するための内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題の解決の要点は、請求項1の構成要件を備える、表面のトポグラフィを測定するための内視鏡にある。
【0005】
請求項1に記載された表面のトポグラフィを測定するための本発明の内視鏡は、投影ユニットと撮像ユニットとを有している。この内視鏡は、投影ユニットの構成要素でありかつ撮像ユニットの構成要素でもある対物レンズユニットが設けられていることを特徴とする。
【0006】
対物レンズユニットを共同で利用する投影ユニットと撮像ユニットとの統合構成により、両ユニットすなわち撮像ユニットと投影ユニットを有する撮像ユニットとのために必要な構造スペースを明らかに削減することができ、このことは、内視鏡自体も小さく構成することができるという結果につながる。さらに、表面のトポグラフィを測定するための類似の構造スペースサイズで、いっそう広い測定範囲を検出することができる。
【0007】
本発明の別の実施形態では、投影ユニットは投影構造を含んでおり、撮像ユニットは撮像媒体を含んでいる。撮像媒体と投影構造とは、光学軸に対して中心に位置しているのが好ましい。この方策は同じく構造スペースの削減に貢献する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、投影構造はスライドとして構成されている。投影構造、ないし特別な形態におけるスライドは、外側領域に同心的なカラーリングを有している。同心的なカラーリングはカラーコーディング化の役目を果たし、それぞれ異なる色の投影光線を生じさせ、表面のトポグラフィでのその反射パターンから表面の性質を推定することができる。
【0009】
本発明の別の実施形態では、投影構造は、光学軸に関して撮像媒体により覆われる中心領域を有している。投影構造、特にスライドのこの中央領域では、同心的なカラーリングは取り付けられていないのが通常である。投影構造でのカラーリングのないこの区域は、撮像媒体を省スペースに同一の光学軸上に収納するために利用することができる。撮像媒体と投影構造は原則として1つの平面に位置しているが、あるいは、光学軸に関して互いに平行に変位していてもよい。
【0010】
さらに投影ユニットは、本発明の1つの実施形態では対物レンズユニットのほかに、光学軸に関して回転対称の環状のミラー光学系を有している。この環状のミラー光学系は、対物レンズユニットを通って入射する撮像光線とは異なって、投影光線を偏向させることを可能にする。この場合、投影光線は対物レンズユニットを通過して、環状のミラー光学系により方向転換されるのが好都合である。それに対して表面から反射されて対物レンズユニットに当たる撮像光線(すなわち反射された投影光線)は、環状のミラー光学系によって偏向されない。したがって環状のミラー光学系は、投影光線と撮像光線とをそれぞれ異なる光路へと導くことを可能にする。
【0011】
本発明の別の好ましい実施形態について、以下の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】内視鏡の投影ユニットおよび撮像ユニットを相応の光路とともに示す模式図である。
【図2】複合型の投影ユニットおよび撮像ユニットを示す詳細図である。
【図3】複合型の撮像ユニット投影ユニットにおけるレンズ、撮像媒体、および投影構造の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、投影ユニット6と撮像ユニット8とを備える内視鏡2(ここでは内視鏡の外壁なしで図示する)の模式図が示されている。さらに、投影光線26および撮像光線28の光路が模式的に図示されている。投影ユニット6と撮像ユニット8は、投影ユニットおよび撮像ユニットが共通の対物レンズユニット10(図2参照)を含むように統合されている。さらに投影ユニット6は、投影光線26を方向転換させる環状のミラー光学系24を有している。
【0014】
図1では、投影光線26は鎖線で図示されており、撮像光線28は破線で図示されている。破線28ないし鎖線26は、投影領域32ないし視野30の外側の境界をそれぞれ示している。
【0015】
図1の図面では、適用されている光学系から2つの投影領域32と1つの視野30とが生じている。ここでは同じく模式的に円筒状の通路として図示されている表面4のトポグラフィを測定するために、三角測量の手法が適用される。そのために投影ユニット6から、場合によりそれぞれ異なる色スペクトルを含む(下記参照)投影光線26が発せられる。これらの投影光線26が表面4に当たり、そこで反射される。反射された投影光線は撮像光線28と呼ばれる。さらに撮像ユニットが撮像光線を受信し、撮像光線を評価する撮像媒体へ導く。
【0016】
投影光線26ないし投影領域32と視野30との両方に包含される領域は、測定領域34と呼ばれる。このように測定領域34は、投影領域30と視野32とが交わる領域である。三角測量法による測定は、投影光線26と視野30とが交わる領域でのみ行うことができる。測定領域34が広く構成されるほど、測定を実施することができる領域も広くなる。特に狭隘な空洞では、公知の手法によって投影光線26の領域(投影領域32)と視野30とを、十分に広い測定領域34が形成されるように構成することはしばしば困難である。
【0017】
図2には、投影ユニット6および撮像ユニット8の詳細図が、これらの共通の対物レンズユニット10とともに示されている。内視鏡2は、内視鏡2の中心点を通って延びる光学軸16を有している。図2に関して内視鏡の視線方向は、左から右に向かって延びている。コリメーション光学系を備える光導波路、または光ファイバ束、またはたとえばLEDのような光源として構成されるのが好ましいここには図示しない光源が、本例ではスライド18として構成された投影構造12を通して光線を送信する。スライド18は環状に構成されており、外側領域に同心的なカラーリング20を有している。図2では光路に関して線分として図示されているスライド18は、その横に、より良い図解のために平面図として再度図示されている。
【0018】
スライド18の外側領域を通って、すなわち同心的な色付きリングを通って進む光線は投影光線と呼ばれる。この投影光線は、共通の対物レンズユニット10を通って進み、そこで相応に方向転換されて、対物レンズユニット10つまり投影光学系6の前に配置された環状のミラー光学系24に当たる。ミラー光学系24は投影光線26をさらに方向転換させて、投影光線を回転対称に内視鏡2の壁部38から側方に外へ出し、その後、検査されるべき表面4に投影光線が当たる。表面4で投影光線26が反射され、これ以後はこの投影光線26は撮像光線28と呼ばれる。投影光線26と撮像光線28とがなす角度は三角測量角36と呼ばれる。
【0019】
撮像光線28は反射されて戻ってきて、ミラー光学系24により陰影をつけられて対物レンズユニット10を通って進む。このとき対物レンズユニット10は、偏向されない光線が光学軸16に関して中心付近で、ここではデジタルカメラで使用されるようなセンサチップ15の形態の撮像媒体14に当たるように構成されている。図2の図面では、センサチップ15とスライド18は1つの光学軸で1つの平面に位置している。このことは、カメラチップがスライドより少し前に配置された図3を参照すると明らかなように、特殊ケースである。カメラチップ15はスライド18よりも小さく、光学軸16に関してスライド18の中央領域にある。スライド18の中央領域はカラーリング20を充填されておらず、光線によって通過されなくてよい。したがってセンサチップ15の配置は投影光線28の光路を妨げることがない。
【0020】
次に、カラーコーディングを利用した三角測量の手法について手短に説明する。表面4(ここには図示せず)の不規則なトポロジーに投影されるカラー構造は、投影角とは異なる観察角(三角測量角)のもとで歪んで現れる。撮像光学系(対物レンズユニット10)により観察される歪んだパターンが撮像媒体12で撮像される。これは三次元表面の平面撮像(平面結像)である。
【0021】
適切な評価手法により、色遷移と色線の歪みとを分析することによって、表面4のトポロジーをコンピュータで算出することができる。同心的な色付き円を有するスライドの構成は1つの好ましい実施形態にすぎない。この実施形態は、特に、円形の断面をもつ光導波路の場合に好適である。基本的に、たとえば線形パターンのような他のコーディングパターンも適用することができる。
【0022】
図3には、若干拡大した模式的な図面で、複合型の投影ユニット6および撮像ユニット8が再度示されている。この図では左から右に向かって、外側領域に同心的なカラーリング20を有するスライド18をまず見ることができ、さらに、カラーリングを備えていない中央領域22が図示されている。スライド18の手前にはセンサチップ15がある。さらにセンサチップの前には対物レンズユニット10があり、この対物レンズユニット10の前には環状のミラー光学系24が配置されている。内視鏡自体は、投影光線26を内視鏡壁部38から出射するのに適した透明なガラスで構成されているのが好ましい。透明なプラスチックも同じく好都合な内視鏡材料として利用できる。内視鏡は通常3〜5mmの直径を有している。複合型撮像−投影ユニット6,8は通常8〜12mmの長さを有している。
【0023】
通常、撮像光線28を検出するためのセンサチップは10Hzの周波数で露光される。このときシャッター開放時間は約10msである(シャッター開放時間は、センサチップに当たる撮像光線28が測定される時間である)。このことは、10Hzの露光周波数でそれぞれのシャッター開放時間の間に90msの休止が存在することを意味しており、その時間中にセンサチップ検出が計算ソフトウェアによって評価(分析)される。
【0024】
以上に説明した測定内視鏡2の構造は、基本的に、狭い空洞内でのどのような測定にも適用することができる。内視鏡2の1つの特に好ましい用途は、耳に挿入され、耳道の測定、ないしは耳介の測定のために用いられる耳鏡の形態で見出される。すでに説明した、いわゆるカラーコード化三角測量はそのために、物体の3D形状を計算するのに、コーディングされたカラーパターンの投影が、受信ユニット(撮像ユニット8)の画像撮影時だけで足りるという利点を有している。このことは、スライド投影に準ずる単純な投影を適用することができ、さまざまに異なる投影構造のシーケンシャルな投影が必要ないことを意味している。さらにこのことは、医師によるフリーハンドのスキャンがほぼブレなしに可能であるという利点を有している。
【0025】
内視鏡2の別の用途は工学分野に見出すことができる。たとえば品質管理のために穴その他の空洞を正確に測定しなければならないとき、この種の、構造スペースの削減された内視鏡2を利用するのが好都合である。たとえば航空機のコンポーネントをリベット止めするリベット穴では、そのトポロジーに関して非常に高い要求が課される。上述のような本発明の内視鏡により、高精度のトポグラフィ測定を非常に狭い穴のなかで行うことができる。
【符号の説明】
【0026】
2 内視鏡
4 表面
6 投影ユニット
8 撮像ユニット
10 対物レンズユニット
12 投影構造
14 撮像媒体
16 光学軸
18 スライド
20 カラーリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影ユニット(6)と撮像ユニット(8)とを備え、表面(4)のトポグラフィを測定するための内視鏡において、前記投影ユニット(6)の構成要素でありかつ前記撮像ユニット(8)の構成要素でもある対物レンズユニット(10)が設けられている内視鏡。
【請求項2】
前記投影ユニット(6)の投影構造(12)と前記撮像ユニット(8)の撮像媒体(14)とが1つの光学軸(10)上に位置している請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記投影構造(12)はスライド(18)として構成されている請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記投影構造(12)は外側領域に同心的なカラーリング(20)を有している請求項2または3に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記投影構造(12)の中央領域(22)は光学軸(16)に関して前記撮像媒体(14)で覆われている請求項2から4のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記投影ユニット(6)は前記対物レンズユニット(10)のほかに光学軸(16)に関して回転対称の環状のミラー光学系を有している請求項1から5のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記対物レンズユニット(10)を投影光線(26)が通過し、投影光線(26)を前記環状のミラー光学系(24)が方向転換させる請求項6に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記表面(4)で反射された投影光線(26)からなる撮像光線(28)が、前記環状のミラー光学系(24)で方向転換されることなく、前記対物レンズユニット(10)を通って進んで前記撮像媒体(14)に当たる請求項1から7のいずれか1項に記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−506470(P2013−506470A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531408(P2012−531408)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064457
【国際公開番号】WO2011/039254
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】