測定用デバイス、ヘモグロビン類の測定用デバイス及びヘモグロビン類の測定方法
【課題】 光検出できる成分、更には、生体由来の生体試料成分をより小型の測定装置で簡便に精度良く測定できる測定デバイスを提供することを目的とする。また、ヘモグロビン類を現在のHPLCの測定精度を維持したまま、持ち運び可能な小型の装置で、しかも、設置のために広いスヘ゜ースを必要とせず、更に、短時間に、かつ、測定デバイスの各測定部位を簡便に最大限利用可能である、しかも高い精度でヘモグロビン類を分析することができるヘモグロビン類の測定用デバイス及びヘモグロビン類の測定方法を提供する。
【解決手段】 被測定成分を含む被検体における前記被測定成分の測定を行う測定デバイスにおいて、検体試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、検体試料中の成分を分離するための分離部、測定試料中の成分の光検出を行うための検出部から構成されていることを特徴とする測定用デバイス。
【解決手段】 被測定成分を含む被検体における前記被測定成分の測定を行う測定デバイスにおいて、検体試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、検体試料中の成分を分離するための分離部、測定試料中の成分の光検出を行うための検出部から構成されていることを特徴とする測定用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定用デバイスに関するもので、光検出可能である成分であれば、特に、限定されない。また、更には、血液、血漿、血清中に含まれる生体試料成分、ヘモグロビン類を分析することができる測定デバイス及びそれを用いたヘモグロビン類の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロリアクター又はμTAS(micro/miniaturized Total Analysis System)の技術が活発に研究されている。この技術は、微細加工技術を用いて、シリコン等の基板に微細な溝や、液貯めを作製し、それらを送液用の流路や反応槽として用いることにより、基板上で各種化学反応等を実施するものである。マイクロリアクター又はμTASを用いた分析方法は、反応が極めて微小な空間で実施されるため、反応温度の制御が容易であり、反応効率が高くて反応時間を短縮することができるという利点がある。
しかし、従来技術のように、測定に関わる分析部位、例えば、(1)測定検体中の異物除去を行うプレフィルタ部、(2)測定試料中の成分を分離するためのカラム部、(3)カラム部で分離された測定試料中の成分を検出する検出部などが同一基板上に搭載されている測定デバイスを用いる場合、少数検体を測定する場合には、以下の問題点は発生しない。 しかし、連続測定、または、多量検体を同一測定デバイスで測定する場合、プレフィルタ部だけに異常が生じただけで、カラム部及び検出部がまだ使用可能であっても廃棄しないといけない欠点がある。また、上記の同一基板上に搭載されたプレフィルタ部、カラム部及び検出部の使用検体数が異なった場合、実際、測定できる検体としては、最も、使用検体数がすくない部位に合わす必要があり、この点は、ユーザー及びメーカーにとって、非常に不利益なことである。
【0003】
上記に示すマイクロリアクター又はμTASを用いてタンパク質の分析を行うことが検討された。比較的高精度で小型化可能な分析装置として分光光度計を組み合わせることが考えられたが、従来のマイクロリアクター又はμTASでは、充分な光路長を確保することが困難であり、極微量の検液を高精度に分析することができなかった。
微小な流路を活用すると言う点で類似の技術として、細管(キャピラリー)を用いた分析技術である、フローインジェクション分析法が挙げられ、例えば、非特許文献1に記載されているようなZ型流路を用いて光路長を確保することが行われている。しかしながら、この技術をマイクロリアクターに応用しようとしても、例えば、流入側流路から検出光を導入すると光路長を長くするために、流路壁面で反射しながら流出側流路へ検出光が出てくる。この場合では、流入側流路と流出側流路の間の流路側面にわずかのひずみがあると検出光の乱れが生じてノイズが大きくなるなどの問題がある。これらの流入側流路と流出側流路の間の流路側面に生じるわずかなひずみを無くすには、工業生産上において、(1)歩留まりが悪くなる。(2)品質管理が難しい、(3)特定の流路材質を用いなければならない等生産の面で好ましくなかった。
【0004】
「ヘモグロビンA1c測定の従来技術」
液体クロマトグラフィーによる測定の一つとして、血液中の糖化ヘモグロビン、特にヘモグロビンA1c(以下、HbA1cという)が糖尿病診断の指標となるため広く測定されている。糖化ヘモグロビンとは血液中の糖がヘモグロビンと結合して生成したものである。溶血液試料中の糖化ヘモグロビンは、過去1〜2カ月間の血液中の平均的な糖濃度を反映するので溶血液中の糖化ヘモグロビン、近年、特に、安定型A1cが、糖尿病を診断する上で一番重要な指標(マーカー)であることが広く知られており、この安定型A1cを短時間により正確に測定することが求められている。その理由は、例えば、病院での診療前に患者の安定型A1c測定を行い、医者がその安定型A1c測定結果を基に、患者の治療方針を決定して、治療を行う「診療前検査」のニーズが高まっているためである。
【0005】
このHbA1cの液体クロマトグラフィー法による測定は、主にカチオン交換液体クロマト グラフィー法により行われている(特公平8−7198号公報など)。溶血液試料をカチオン交換液体クロマトグラフィーにより分離すると、通常、ヘモグロビンA1a(以下、HbA1aという)及びヘモグロビンA1b(以下、HbA1bという)、ヘモグロビンF(以下、HbFという)、不安定型HbA1c、安定型HbA1c並びにヘモグロビンA0(以下、HbA0という)などのピークに分画できる。なお、糖尿病の診断の指標として使用されているHbA1cは、上記のうちの安定型HbA1cであり、全ヘモグロビンピークの面積に対する安定型HbA1cピークの面積の比率(%)として求められている。
【0006】
このHbA1cの液体クロマトグラフィー法による測定は、カラムとしてカチオン交換液体クロマトグラフィー用充填剤(例えば、カルボキシル基やスルホン酸基を官能基として有する充填剤)が充填されたものを用い、pH5.0〜9.0の溶離液を用いて行われている。
【0007】
「従来のHPLCによる安定型A1c測定方法の欠点」
上記のように、従来のHPLC法による安定型A1c測定方法(図1)は、精度良く安定型A1cを測定できるが、少し大きめのHPLC測定装置が必要である。これらのHPLCによる安定型A1c測定では、測定検体が比較的大きめのカラム(内径4.6mm×長さ35mm)及び検出器のセルで拡散したり、また、検体注入からカラム、検出セルで検出されるまでの配管の長さが長いために、更に、測定検体が拡散するため、各ヘモグロビン類のピークがブロード化し、更なる測定時間の短縮を行っても、各ヘモグロビン類のピーク分離が不十分となり、安定型A1cを精度良く測定することはできない。
また、これらの安定型A1c測定用のHPLC測定装置も非常に小型化が進んでいるが、医療現場、特に、開業医などの小規模病院に置くには、まだ、装置が大きすぎて、以下の問題点がある。(1)設置するためにスヘ゜ースを確保する必要がある。(2)持ち運ぶには重すぎる。(3)測定検体の拡散などの問題点がある。
【0008】
【非特許文献1】Anal.Chem.1983,65,3454−3459
【特許文献1】特公平8−7198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、光検出できる成分、更には、生体由来の生体試料成分をより小型の測定装置で簡便に精度良く測定できる測定デバイスを提供することを目的とする。また、ヘモグロビン類を現在のHPLCの測定精度を維持したまま、持ち運び可能な小型の装置で、しかも、設置のために広いスヘ゜ースを必要とせず、更に、短時間に、かつ、測定デバイスの各測定部位を簡便に最大限利用可能である、しかも高い精度でヘモグロビン類を分析することができるヘモグロビン類の測定用デバイス及びヘモグロビン類の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における光検出可能な成分、生体由来の生体試料成分、ヘモグロビン類の測定用デバイスは、近年、活発に研究されているマイクロリアクター又はμTAS(micro/miniaturized Total Analysis System)に代表される微細加工技術をプレフィルタ部、カラム部、それらを接続する流路に応用しており、従来の免疫測定システム、HPLC測定システムなどに比べて、より小型で、しかも、測定検体の拡散を極限まで抑えているために、従来の免疫測定システム、HPLC測定システムでは、実現できない更なる短時間で高分離測定が可能となった。
【0011】
また、本発明の生体由来の測定成分の測定を行う測定用デバイスにおいて、測定試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、測定試料中の成分を分離するために、カチオン交換基、アニオン交換基、オクチルドデシル基、または、サイズ排除、中空カラムの群の中から少なくとも1つ、または、複数組み合わせて形成されたカラム部、測定試料中の成分の光検出を行うための検出部から構成されていることを特徴とする測定用デバイスである。
【0012】
以下に本発明の請求項1を詳述する。
本発明の測定デバイスの測定検体の種類は、光検出可能である成分であれば、特に、限定されない。また、更には、生体由来の成分であれば、公知のもので良く、例えば、ウィルス、細胞、組織、器官または動植物、微生物等、生体由来の試料、例えば、細胞、組織、器官の溶解物または、ホモシ゛ネート;血液、血漿、血清、尿、涙、便、痰、胃液などの体液;ステロイト゛、アミノ酸、ヌクレオチト゛、糖、ホ゜リヘ゜フ゜チト゛、ホ゜リヌクレオチト゛、複合炭水化物、脂質などの生物起源の有機分子;RNA、DNAなどの核酸などが上げられる。
また、現在、臨床検査などで測定されている公知の測定項目も測定できる。例えば、(1)生化学検査:アルブミンなどの蛋白質、尿酸、クレアチニン、アミノ酸などの低分子窒素化合物;γ-GTP、GOT、GPT、ク゛ルタミン酸脱水素酵素などの酵素;LDHアイソサ゛イム、アミラーセ゛アイソサ゛イムなどのアイソサ゛イム;ヘモク゛ロヒ゛ンA1c、フルクトサミン、1.5AG、ク゛リコアルフ゛ミンなどの糖蛋白質・有機酸;LDL、HDL、リホ゜蛋白質などの脂質関連;ヒ゛タミン類;電解質・微量金属;ヒ゛リルヒ゛ンなどの生体色素関連;馬尿酸、農薬、有機溶剤などの毒物・産業衛生関連;抗てんかん剤、催眠剤、向精神剤、気管支拡張剤、抗生物質、免疫抑制剤、利尿剤、抗カ゛ン剤などの薬物検査、腫瘍マーカー、カテコールアミンなどのホルモン類、
IgE、IgGなどの免疫ク゛ロフ゛リン(アレルギー検査)、リュウマチ因子などの自己免疫因子、肝炎ウィルス抗体・抗原、インフルエンザウィルス、T細部系、B細胞系、骨随球系、NK細胞系などの血液細胞・免疫細胞の分類及びリンハ゜球サフ゛セット検査、サイトカイン類などが挙げられる。
本発明の請求項1記載のプレフィルタ部は、測定検体中の異物を除去できるものであれば、公知のプレフィルタ;ステンレス繊維、ろ紙、不織布、メンブレンフィルタを用いることができる。
【0013】
また、本発明の請求項1記載の測定試料中の成分を分離するためのカラム部は、カルボキシル基、スルホン酸基などのカチオン交換基、アミノ基などのアニオン交換基、オクチルドデシル基などの疎水性相互作用を有する官能基、または、分子の大きさで分離するサイズ排除、測定成分と相互作用がない中空カラムは、成分測定のための抗原抗体反応、発色反応、発光反応、ラテックス凝集反応などを行うための反応場を提供する。
本発明のカラム部は、上記カチオン交換基、アニオン交換基、疎水性相互作用を行う官能基、サイス゛排除、中空カラム部の群の中から少なくとも1つ、または、複数組み合わせて形成されたカラム部を用いることができる。
また、本発明の請求項1記載の測定試料中の成分の光検出を行うための検出部は、公知の光検出であれば、特に限定されず、例えば、吸光度、発色、ラテックス凝集などが挙げられる。
【0014】
また、本発明の請求項2記載のヘモグロビン類の測定用デバイスにおいては、測定試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、測定試料中の成分を分離するためのカチオン交換基を有するカラム部、測定試料中の成分の吸光度検出を行うための検出部の群の内、少なくとも1つ、または、複数の部位が、適宜交換が可能なようにユニット形式に構成されているため、プレフィルタ部、カラム部及び検出部の使用検体数が異なる場合や故障が生じた部位の各ユニット部位を交換することで、従来のように、同一基板にプレフィルタ部、カラム部及び検出部が搭載されたものに比べてより効率良くヘモグロビン類の測定ができるヘモグロビン類の測定用デバイス及びヘモグロビン類の測定方法である。
本発明の上記ユニット形式とは、例えば、各プレフィルタ部、カラム部及び検出部などの機能を持つ部位(ユニット)を自由に交換可能できるカートリッジ形式という意味を含む。
【0015】
以下に本発明の請求項2記載について詳述する。
本明細書においてカラム部とは、測定試料中の成分であるヘモグロビン類を分離できる機能を有する測定用デバイスの特定領域を意味する。
上記カラム部において、測定試料中に含まれる成分であるヘモグロビン類を迅速かつ簡便に分離することができ、安定型A1cの分離測定も可能である。
【0016】
以下に本発明におけるカラム部の詳細な説明を行う。
本発明のヘモグロビン類の測定用デバイスのカラム部は、カチオン交換基を有するものであれば、粒子状、筒状、キャピラリー状、メッシュ状、中空糸状、多孔質膜状、モノリス状のものであれば良い。好ましくは、圧力損失の低下と、内部を流れる検体等の流体との接触効率を考慮した場合、粒状、多孔質膜状、モノリス状が好適である。
(1)以下にカチオン交換基を有する粒子について説明する。
本発明のヘモグロビン類の測定方法におけるカチオン交換液体クロマトグラフィーの充填剤は、少なくとも1種以上のカチオン交換基を有している粒子よりなるものであり、例えば、高分子粒子にカチオン交換基を導入することで得られる。
【0017】
該カチオン交換基は、公知のものでよく特に制限はない。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのカチオン交換基等が挙げられる。また、このカチオン交換基は、複数種導入しても良い。
【0018】
上記粒子の直径は、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは1〜10μmである。
また、粒度分布は、変動係数値(CV値)(粒径の標準偏差÷平均直径×100)として、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
【0019】
上記高分子粒子としては、例えば、シリカ、ジルコニアなどの無機系粒子;セルロース、ポリアミノ酸、キトサンなどの天然高分子粒子;ポリスチレン、ポリアクリル酸エステルなどの合成高分子粒子などが挙げられる。
上記高分子粒子は、導入されるイオン交換基以外の構成成分は、より親水性であることが好ましい。また耐圧性・耐膨潤性の点から架橋度の高いものが好ましい。
【0020】
上記高分子粒子へのカチオン交換基の導入は、公知の方法により行うことができるが、例えば、高分子粒子を調製後、粒子が有する官能基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基など)に、化学反応でカチオン交換基を粒子に導入させる方法により行うことができる。
【0021】
また、カチオン交換基を有する単量体を重合して高分子粒子を調製する方法によってもカチオン交換充填剤を調製できる。例えば、カチオン交換基含有単量体と架橋性単量体等とを混合し、重合開始剤の存在下に重合する方法などが挙げられる。
【0022】
また、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの重合性カチオン交換基含有エステルを架橋性単量体などと混合し、重合開始剤存在下で重合した後、得られた粒子を加水分解処理し、エステルをカチオン交換基に変換させてもよい。
【0023】
更に、特公平8−7197号公報に記載のように、架橋重合体粒子を調製した後、カチオン交換基を有する単量体を添加して、重合体粒子の表面付近に、該単量体を重合させても良い。
【0024】
「充填方法」
上記充填剤は本発明の測定デバイスに形成されたカラム部に直接充填されても良い。
また、繰り返し測定による分離性能の劣化を防ぐためには、例えば、カラムに充填剤を密に充填することが必要である。それを実現するためには、例えば、スラリー充填法によりスラリー化した充填剤を送液ポンプなどによりカラムに圧入することにより行うことができる。その後、充填剤が充填されたカラムを、本発明の測定デバイスに形成されたカラム部にはめ込む方法が挙げられる。充填剤を本発明の測定デバイス上のカラム部、または、カラムに充填する方法は、充填剤粒子を緩衝剤を含有した水溶液でスラリー状にしたもを圧入する方法があるが公知の他の方法でも、充填剤をカラム部に充填できる方法であれば良い。その充填圧力は、0.1MPa〜50MPaの範囲で、本発明の測定デバイス上のカラム部、または、カラムの素材、充填剤の種類、分離性能に応じて適宜選択される。
【0025】
本発明に用いられるカラム素材は、公知のステンレス製、ガラス製、樹脂製(PEEK、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレン)など、特に限定されない。本発明のマイクロリアクター上のカラム部、または、カラムのサイズとしては、内径0.01〜3.0mm、長さ0.1〜50mm円柱状のものが好ましく、内径0.05〜2mm、長さ0.5〜30mm円柱状のものがより好ましい。
また、本発明の測定デバイスのカラム部、または、カラムの形状としては、上記円柱状以外に、四角柱、三角柱などヘモグロビン類の分離性能に悪影響がない公知の形状であれば良い。また、本発明の測定デバイスのカラム部、または、カラムの形状が、上記円柱状以外であっても、本発明の測定デバイスのカラム部、または、カラムの断面積及び長さは、上記円柱状のカラムの断面積及び長さに相当するサイズが好ましい。
【0026】
微量検体の分析は、通常の液体クロマトグラフィー等の方法では、カラム、検出器、配管などのデッドボリュームが大きいため、微量検体が拡散して、各測定成分のピークがブロードになり、検出感度も低いことなどから高精度測定は、極めて困難であった。しかし、本発明の測定デバイスでは、吸光度を測定する流路が微小体積であることやカラム部と吸光度を測定する流路を繋ぐ流路も微小体積であることから、カラム部からの溶離液が微小量でも分析可能である。このことは、検体量の低減や微量検体でも検出感度の向上及び高分離が可能である。
【0027】
「本発明の測定デバイスは、吸光度の測定を行うセル部を有する。(図2〜6)」
本明細書においてセル部とは、吸光度測定用の光線が通過する部位を意味する。
上記セル部は、直線状に形成された流路からなる。このような流路をセル部とすることにより、極微量の検体であっても吸光度を測定することが可能になる。
【0028】
上記セル部は、光路長が1〜20mmであることが好ましい。ここで光路長とは、吸光度測定用の光線が通過する液の長さを意味し、実質的には、上記セル部における直線状に形成された流路の長さにほぼ等しい。1mm未満であると、光路長が短すぎて検出感度が大幅に低下することがあり、20mmを超えると、吸光度の測定を行いたい物質による吸収とそれ以外の物質による吸収、即ち、バックグラウンドとの見分けがつきにくくなることがある。
【0029】
上記セル部は、複数あってもよい。複数個あるカラム部で異なる目的とする成分、または、次の測定検体を分離し、カラム部ごとにこれに対応するセル部を設けて分析を行えば、多種の物質、または、多量検体を同時に分離、分析することが可能となる。
【0030】
本発明の測定デバイスは、上記セル部を、吸光度測定用の光線の光軸が直線状に形成された流路の流れ方向になるように、かつ、直線状に形成された流路内への光線の入射角及び出射角が0°であるように吸光度測定装置に接続可能である。セル部をこのように吸光度測定装置に接続可能にすることにより、本発明の測定デバイスは、平板状のマイクロリアクターの課題であった、吸光度測定における光路長の短さに起因する感度の不足を防ぐことができる。
【0031】
本発明の測定デバイスは、吸光度測定装置に接続し、検体のない状態で測定した吸光度測定波長における光線透過率が、同一の光路長及び吸光度測定波長で空気を測定した場合の光線透過率の50%以上であることが好ましい。50%未満であると、吸光度測定の感度が低下したり、誤差が大きくなったりすることがある。
【0032】
本発明の測定デバイスのセル部を上述の条件で吸光度測定装置に接続可能とし、かつ、上述の充分な光線透過率を確保するためには、上記セル部を構成する材料としてできる限り透明性の高いものを選択するとともに、セル部の構造を、吸光度測定用の光線がセル部を構成する材料を通過する距離ができる限り短くなるようにすることが好ましい。
好ましいセル部の構造の一例を図18-a〜dに示した。
図18-a〜dに示したセル部では、セル部は、流入部及び/又は流出部において接続用流路とコの字状又はL字状に接続されている。このように接続することにより、セル部を基板から突出させて吸光度測定装置と接続できるようにすることができ、吸光度測定用の光線がセル部を構成する材料を通過する距離ができる限り短くなるようにすることができる。
【0033】
また、本発明の測定デバイスを大量生産する場合、プラスチックス等の成形加工による生産は、大きなウエイトを占めると考えられる。なかでも射出成形技術による生産はその生産性から重要であると考えられる。しかし、同技術で本発明の測定デバイスを生産しようとする場合、上述のようにセル部を流入部及び/又は流出部において接続用流路とコの字状又はL字状に接続する構造にすると、接続部においてダレ等の成形不良が生じやすく、歩留りが極端に悪化することがある。そこで、セル部と接続用流路との接続部に飛び出し流路を形成することが好ましい。このような飛び出し流路を形成することにより、上記接続部におけるダレが起こりにくくなり、ひいては本発明の測定デバイスの生産性が向上する。
【0034】
上記飛出し流路の長さの好ましい下限は0.01mm、好ましい上限は2mmである。0.01mm未満であると、ダレ防止効果が得られないことがあり、2mmを超えると、吸光度の測定に悪影響を及ぼすことがある。
【0035】
飛び出し流路を形成した場合の好ましいセル部の構造の一例を図18-C及び図18-Dに示した。図18-Cに示したセル部では、セル部の流入部及び/又は流出部における接続用流路との接続部に飛び出し流路が設けられており、全体としてエの字型の流路を形成している。図18-Dに示したセル部では、セル部の流入部における接続用流路との接続部に飛び出し流路が設けられており、全体としてTの字型の流路を形成している。
【0036】
本発明の測定デバイスを接続する吸光度測定装置としては特に限定されず、例えば、市販されている携帯可能な小型分光光度計等を用いることができる。このような分光光度計を用いることにより、紫外吸光や、赤外吸光、可視光吸光等を容易に測定することができる。市販されている携帯可能な小型分光光度計としては、例えば、Ocean Optics社製USB2000型分光光度計等が挙げられる。
【0037】
上記カラム部とセル部とは、接続用流路により互いに接続される。上記接続用流路の断面積は1mm2以下であることが好ましい。1mm2を超えると、カラム部等において分離されたヘモグロビン類などの成分が流路内で拡散してしまい、検出感度が低下することがある。より好ましくは0.09mm2以下である。
また、上記カラム部とセル部とを接続する接続用流路の長さは、0.1mm〜30mmである。好ましくは、0.2mm〜20mmである。上記接続用流路の長さが、0.1mmより短いと本発明の測定デバイスの製造が難しくなる。また、上記接続用流路の長さが30mmより長くなると分離された成分が拡散して分離性能が悪くなる問題がある。
【0038】
上記カラム部とセル部とを接続する接続用流路は、流路長さにして1mm以内の間に、流路断面積が直前の流路断面積の2倍以上又は0.5倍になるような部分を少なくとも1カ所有することが好ましい。このような部分を少なくとも1カ所有することにより、検体を本発明の測定デバイスへ注入する際、又は、各種の溶離液を本発明の測定デバイスへ注入する際に、流路中に混入された気泡の流動を一時的に抑えることができ、気泡による吸光度の測定誤差を抑えることができる。
【0039】
本発明の測定デバイスは、各部を接続する接続用流路の他に、更に、ヘモグロビン類を分離溶出する溶離液、血液の溶血希釈液等を流すための流路を有していてもよい。また、溶離液、溶血希釈液等を貯留するための貯留部を取り外し可能なユニット形式で有していてもよい。
【0040】
本発明の測定デバイスは、更に、送液のためのポンプを内部に有しても良い。
上記ポンプとしては特に限定されないが、例えば、ペリスタポンプ、ロータリーポンプ、シリンジポンプ、ダイアフラムポンプ等の機構からなる、駆動部の総体積が1cm3以下のマイクロポンプを用いることができる。このようなマイクロポンプとしては、例えば、特開2001−132646号公報に記載されたダイヤフラム構造をMEMS加工技術によりそのまま小型化したダイアフラムポンプ;特開2002−021715号公報に記載された微小ピストンによる断続的に送液する構造;特開平10−010088号公報に記載された微細流路上に電気浸透流を発生させる方法による送液媒体の送液を行うポンプ等が挙げられる。
【0041】
本発明の測定デバイスは、更に、マイクロバルブを有することが好ましい。上記マイクロバルブとしては、例えば、特開2000−120617号公報に記載された流体の動きを制御するために気体の作用を用いるマイクロバルブ、電磁バルブなどの公知のバルブ等を用いることができる。
【0042】
本発明の測定デバイスの大きさとしては特に限定されないが、ハンドリング性を考慮すると、400cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは100cm2以下である。
【0043】
本発明の測定デバイスの基板を構成する材料としては特に限定されず、例えば、ガラス、蛍光ガラス、セラミックス等の無機物;プラスッチックス等の有機化合物;金属等が挙げられる。リサイクル性を考慮する場合には、ガラス、熱可塑性プラスチックス又は金属が好適であり、一方、加工性及び廃棄を前提とした経済性を考慮する場合には、各種プラスチックスが好適である。また、本発明の測定デバイスの基板を構成する材料として、各種プラスチックスを用いると安価で軽いために携帯性、加工性に優れている。
【0044】
上記プラスチックとしては特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも用いることができる。なかでも、熱硬化性樹脂は、加熱により可塑化して簡単に表面加工するという利点は有さないものの、予め硬化剤等を混合した前駆体液を転写金型に導入してから硬化させることにより、樹脂表面を附形することが可能である。この場合、前駆体液が液状のため、転写金型の形状をより忠実に転写することができる。また、一般に、静的に硬化された樹脂は、低い線膨張率、低い成形収縮率を示すことからも有用である。
上記熱硬化性樹脂としては特に限定ないが、コストや易取扱い性の点からエポキシ樹脂が好適である。
【0045】
また、ヘモグロビン類の測定においては、ヘモグロビン類を分離溶出する溶離液として、pH5〜9付近の溶離液を用いるため、この場合には、耐酸・アルカリ性を有するポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、PEEK性樹脂等が好適である。これらの樹脂は、耐薬品性の改善、圧力損失の低減、流体制御等を目的として、その表面が各種試薬により改質されたものであってもよい。
また、上記セル部については、特に光透過性が求められることから、他の部位とは異なる、特に光透過性に優れるプラスチックを用いてもよい。このような光透過性に優れたプラスチックとしては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂等が挙げられる。
【0046】
本発明の測定デバイスを製造する方法としては特に限定されず、例えば、レーザー加工、切削加工等の各種機械加工;エッチング、原子線エッチング;流路部分がレーザー加工等により貫通孔、貫通溝となった基板の貼り合せ;射出成形等の従来公知の方法を用いて、流路や貯留部を形成する方法等が挙げられる。
また、流路や貯留部が形成された基板は、各種接着剤、陽極接合等により、別の基板と貼り合せる等して、試薬の導入部、外部ポンプの接続場所等を除いて密閉することが好ましい。また使用可能な材料に制限はあるももの、光造形技術を用いることにより、密閉工程を省略したリアクターを形成可能である。
またセル部と他の部位とで別の材料を用いる場合には、別に作製したセル部を、その他の部分と各種接着剤、カップリング剤等により接着する方法、共押出による成形方法ユニット形式(各部位をネジ式で接続)等により製造することができる。
【0047】
「本発明の測定デバイスにおいてヘモグロビン類が接する部位の表面処理」
本発明の測定デバイスの素材を上記に示したが、測定検体であるヘモグロビン類が本発明の測定デバイスに接するとヘモグロビン類が吸着して、各ヘモグロビン類の正しい測定値が得られない場合がある。
その測定デバイスへのヘモグロビン類の吸着抑制のために、少なくとも、測定デバイスに測定検体のヘモグロビン類が接する部位の表面に公知の蛋白質吸着低減処理を行うことが好ましい。
上記蛋白質吸着低減処理とは、蛋白質によるブロッキング処理(物理吸着処理、化学架橋処理)、シリコーン処理、撥水処理、化学的な親水化処理、プラズマ処理などを行う方法などを行うことが好ましい。
【0048】
「エア抜き構造」
本発明の測定デバイスには、図7〜8に示すような測定デバイスの流路に入り込んだエア(空気)を簡単に抜くことができるエア抜き構造を設けることができる。また、エア抜き構造は、測定デバイスの各流路に設置でき、設置する場所、設置数は、流路中のエアを効率良く、しかも、完全に抜くことができれば特に限定されない。
本発明のエア抜き構造は、測定デバイスの各流路を開閉できる機能を有するものであれば、公知の技術、例えば、バルブ式、弁式、ネジ式などが挙げられる。図7〜8に本発明の測定デバイスのエア抜きの1例であるネジ式を示した。
【0049】
また、本発明のエア抜き構造の素材は、本発明の測定デバイスの素材と同様なものを使用することができる。但し、本発明の測定デバイスの素材とエア抜き構造素材により溶離液が漏れないそれぞれに適した素材を選択する必要がある。基本的には、測定デバイスの素材よりは、柔らかい素材、例えば、テフロン(登録商標)などの樹脂を本発明のエア抜きとして用いるのが好ましい。エア抜き構造のサイズは、特に限定されないが、各流路から確実にエアを抜くことができるサイズであれば良いが、好ましいエア抜きのための孔径は、直径0.01mm〜3mm程度である。
また、エアがヘモグロビン類を分離測定するカラム部に入り込むとヘモグロビン類を分離するための溶離液の流れが乱されるため、ヘモグロビン類の分離性能がおちて、ヘモグロビン類の各ヒ゜ークがブロードになり、例えば、安定型A1c値を正確に測定できなくなる問題がある。
【0050】
「フィルタ構造」
本発明に用いられるフィルタ構造は、図9〜10に示すような(1)ネジ式タイプ、(2)測定デバイスに設置するタイプ(図2)、(3)フリッツタイプが挙げられる。
本発明のフィルタの役割は、全血を溶血試薬にて溶血希釈して調製したヘモグロビン類の測定用検体中に存在する血液細胞由来の細胞膜片、血漿蛋白、脂質などの多量に存在する約1〜5μm程度の異物を除去して、カラム部にこれらの異物が入り込んで、検体測定を繰り返すことにより、カラム部が劣化するのを防ぐ役割がある。
本発明のフィルタは、上記の測定検体中の血液細胞由来の細胞膜片、血漿蛋白、脂質などの多量に存在する約1〜5μm程度の異物を除去できて、ヘモグロビン類の吸着が少ないもので、血液検体を連続測定してもフィルタ圧力が上昇しにくいものであれば公知のフィルタを用いることができる。
本発明のフィルタとして用いることができる素材は、(1)チタン、ステンレスなどの金属フィルタ、(2)ポリエチレン、PEEK、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、レーヨン、アクリル、塩化ビニリデン、テフロン(登録商標)などの樹脂性フィルタ、(3)その他素材:ココナッツファイバー、綿、ウール、麻、ガラス繊維などが挙げられる。
上記素材でヘモグロビン類の吸着を更に抑える必要があれば、シリコーン処理、フ゛ロッキンク゛処理、化学処理(親水化処理)、プラズマ処理などの表面処理を行うのが好ましい。
【0051】
本発明のフィルタにおいて、血液検体を連続測定してもフィルタ圧力が上昇しにくいフィルタがより好ましい。そのフィルタ構造としては、フィルタ空隙率を高くする必要がある。その方法としては、検体導入側に(1)空隙率が高いフィルタ(ステンレス繊維フィルタ、不織布)、(2)孔径の大きなフィルタ(不織布)、(3)空隙率が高く、しかも、孔径が大きなフィルタ(不織布)を用い、その後段に、血液中の1〜5μmの異物を除去できるフィルタ(ステンレス繊維フィルタ、ろ紙)を設ける方法がある。
【0052】
本発明のフィルタとしては、(1)シリコーン処理したステンレス繊維フィルタ、(2)不織布+ろ紙、(3)不織布+メンブレンフィルタ、(4)ろ紙+メンブレンフィルタなどが好ましい。更に、安価で、血液中の約1〜5μm程度の異物を除去できて、連続測定してもフィルタ圧力上昇が非常に少ないのは、(2)不織布+ろ紙である。
【0053】
以下に、本発明のフィルタの一つである「不織布+ろ紙」について詳細に記載する。
また、必要に応じて、生体試料成分の吸着を小さくするために、上記不織布の表面を少なくとも、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエチレン、エチレンのアルキル誘導体の重合体、アクリル系樹脂、ナイロン、炭化物セラミック、窒化物セラミック、珪化物セラミック、硼化物セラミック、表面がシリル化処理された二酸化珪素、ガラス及びチタンからなる群より選ばれる少なくとも一種よりなる、又は、これらを複数組み合わせた素材で処理しても良い。
上記不織布の厚みは、生体試料の目詰まりによる圧力上昇を抑制するため、0.05mm以上である。
また、不織布の厚みは、測定サンプルの拡散を抑制するために、10mm以下が好ましい。
本発明に用いる不織布の厚みは、生体試料の目詰まりによる圧力上昇の抑制と測定サンプルの拡散を抑制するために、より好ましくは、0.1mm〜5mmが好ましい。
【0054】
本発明に用いる不織布の空隙率は、40%〜95%である。不織布の空隙率が40%未満であると、生体成分由来の異物による目詰まりにより、フィルターの圧力上昇が非常に高くなる欠点がある。また、不織布の空隙率が95%以上であると、フィルター強度が弱くなり、それに伴い、フィルターが圧力上昇により破壊される可能性がある。
【0055】
本発明に用いるろ紙は、公知のろ紙で、ろ紙の素材は、特に限定されない。
ろ紙の素材は、具体的には、セルロース、ガラス繊維、フッ素樹脂、シリカ繊維などが挙げられる。
【0056】
また、公知のろ紙で、ろ紙の強度、生体試料の吸着抑制などを実現するための特殊処理を施したろ紙も用いることができる。例えば、湿潤強度を高めたろ紙(アドバンテック東洋(株)のウェットストレングスろ紙)などが挙げられる。
本発明に用いるろ紙の保留粒子径は、生体試料中の異物を除去するために、5μm以下である。より確実に生体試料中の異物を除去するために、本発明のろ紙の保留粒子径は、3μm以下が好ましく、更に、生体試料由来の異物をより確実に除去するために、本発明のろ紙の保留粒子径は、1.5μm以下が好ましい。
ろ紙の保留粒子径が5μmより大きいと生体試料中の異物を除去できず、それらの異物が、カラムへ移行して、カラム性能(分離能が低下、カラム圧力上昇)を悪化させる問題がある。
【0057】
本発明のフィルターは、不織布及びろ紙の有効ろ過面積を大きくするために、カラムから離れた側から「支持体+不織布+ろ紙+支持体」または「不織布+ろ紙+支持体」の構成にすることができる。
この支持体の形状は、不織布及びろ紙の有効ろ過面積を大きくできるものであれば特に限定されないが、メッシュ状のものが好ましい。
【0058】
本発明で用いる支持体の素材は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、金属メッシュ(ステンレス、チタン)などが挙げられる。
本発明のフィルターは、必要に応じて、シリコーンコーティングされてもよい。
本発明のフィルターは、上記の液体クロマトグラフィー用フィルターが、更に、ブロッキング試薬でブロッキング処理されていることが好ましい。上記ブロッキング試薬としては、例えば、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、ヘモグロビン、ミオグロビンなどの蛋白質;例えば、リン脂質等の極性脂質;例えば、SDS、ポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテル(トリトンX−100)などの界面活性剤などが挙げられる。
【0059】
本発明のフィルターの形状は、液体の流れを乱さない構造であれば、特に限定されない。例えば、図10〜11に示すような、(イ)円柱状、(ロ)円錐状、(ハ)円錐台状、(ニ)2つの円錐の、底面同士を接触したような形状が挙げられる。図10〜11において、液体流入側又は液体流出側のどちらでもよく、また上記の両側でもよい。
【0060】
本発明のフィルターのサイズは、直径は0.1〜10mmが好ましく、0.5〜8mmがより好ましい。厚さは0.1〜5mmが好ましく、0.2〜3mmがより好ましい。濾過孔径は、公知の孔径でよく、0.1〜5μmが好ましく、0.2〜3μmがより好ましい。
【0061】
「ヘモグロビン類の測定方法」
本発明で用いられる溶離液は、カオトロピックイオンを含有し、かつ、pH4.0〜6.8で緩衝能を持つ無機酸、有機酸及び/またはこれらの塩を含む。
【0062】
上記カオトロピックイオンとは、化合物が水溶液に溶解したときに解離により生じたイオンであり、水の構造を破壊し、疎水性物質と水が接触したときに起こる水のエントロピー減少を抑制するものである。
【0063】
陰イオンのカオトロピックイオンとしては、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン等が挙げられる。また、陽イオンのカオトロピックイオンとしては、バリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、グアニジンイオン等が挙げられる。
【0064】
上記カオトロピックイオンの中でも、陰イオンとして、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオン等を、陽イオンとして、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、グアニジンイオン等を用いるのが好ましい。さらに、より好ましくは、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、グアニジンイオン等が用いられる。
【0065】
上記溶離液中のカオトロピックイオンの濃度が、0.1mMより低いとヘモグロビン類の測定において、分離効果が低下するおそれがあり、また、3000mMよりも高いと、ヘモグロビン類の分離効果はそれ以上向上しないので、0.1mM〜3000mMが好ましく、1mM〜1000mMがより好ましく、更に、10mM〜500mMが好ましい。
【0066】
また、カオトロピックイオンは複数種混合して用いても良い。
上記カオトロピックイオンは、測定試料と接触する液、例えば、溶血試薬、試料希釈液等に添加しても良い。
【0067】
本発明においては、溶離液に用いる緩衝能を有する物質として、無機酸、有機酸またはこれらの塩が含まれる。上記無機酸としては、例えば、炭酸、リン酸等が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、カコジル酸、ピロリン酸等が挙げられる。
【0068】
上記カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。上記ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等が挙げられる。上記カルボン酸誘導体としては、例えば、β、β−ジメチルグルタル酸、バルビツール酸、アミノ酪酸等が挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。上記アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン等が挙げられる。
【0069】
上記無機酸または有機酸の塩としては、公知のもので良く、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0070】
上記無機酸、有機酸またはこれらの塩は、複数種混合して用いても良く、無機酸と有機酸を混合して用いても良い。
【0071】
上記無機酸、有機酸及び/またはこれらの塩の溶離液中の濃度、複数種用いる場合には複数種の合計の濃度は、溶離液のpHを4.0〜6.8にする緩衝作用があれば良く、1〜1000mMが好ましく、10〜500mMが特に好ましい。
【0072】
本発明においては、上記溶離液のpHは、4.0〜6.8に限定され、好ましくは4.5〜5.8である。溶離液のpHが4未満であると、ヘモグロビン類が変性する可能性があり、pHが6.8を超えると、ヘモグロビン類のプラス荷電が減少し、カチオン交換基に保持されにくくなり、ヘモグロビン類の分離が悪くなる。
【0073】
上記溶離液には、以下の物質を添加しても良い。
(1)無機塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸ナトリウム等)を添加しても良い。これらの塩類の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1〜1500mMである。
【0074】
(2)pH調節剤として、公知の酸、塩基を加えても良い。酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸等が、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの酸、塩基の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、0.001〜500mMである。
【0075】
(3)メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン等の水溶性有機溶媒を混合しても良い。これらの有機溶媒の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0〜80%(v/v)であり、カオトロピックイオン、無機酸、有機酸、これらの塩等が析出しない程度で用いるのが好ましい。
【0076】
(4)アジ化ナトリウム、チモール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2フェノキシエタノール、プロピオン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム等の防腐剤を添加しても良い。
【0077】
(5)ヘモグロビンの安定剤として、公知の安定剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤、グルタチオン、アジ化ナトリウム等の還元剤・酸化防止剤等を添加しても良い。
【0078】
また、本発明の溶離液では、上記カオトロピックイオンを含有し、かつ酸解離定数(pKa)が、2.15〜6.39の範囲及び6.40〜10.50の範囲にある緩衝剤を含有する溶離液を用いるのが好ましい。
上記緩衝剤としては、酸解離定数(pKa)が、2.15〜6.39及び6.40〜10.50の範囲に存在するものが用いられる。すなわち、緩衝剤として、pKaを、2.15〜6.39及び6.40〜10.50の範囲に少なくとも一つずつもつ単一の物質を用いても良く、あるいは、2.15〜6.39の範囲に少なくとも一つのpKaをもつ物質と6.40〜10.50の範囲に少なくとも一つのpKaをもつ物質とを組み合わせて緩衝剤として用いても良い。また、上記緩衝剤を複数組み合わせて用いても良い。
【0079】
上記緩衝剤のpKaの範囲は、測定目的のピークを分離するのに適切な溶離液のpH付近において、より優れた緩衝能を発揮できるように、2.61〜6.39及び6.40〜10.50の範囲が好ましく、より好ましくは、2.80〜6.35及び6.80〜10.00の範囲である。さらに好ましくは、3.50〜6.25及び7.00〜9.50の範囲である。
【0080】
上記緩衝剤としては、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機物のほか、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸、アニリンまたはアニリン誘導体、アミノ酸、アミン類、イミダゾール類、アルコール類等の有機物が挙げられる。また、エチレンジアミン四酢酸、ピロリン酸、ピリジン、カコジル酸、グリセロールリン酸、2,4,6−コリジン、N−エチルモルホリン、モルホリン、4−アミノピリジン、アンモニア、エフェドリン、ヒドロキシプロリン、ペリジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、グリシルグリシン等の有機物でも良い。
【0081】
上記カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等が挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸等が挙げられる。
【0082】
上記カルボン酸誘導体としては、例えば、β,β’−ジメチルグルタル酸、バルビツール酸、5,5−ジエチルバルビツール酸、γ−アミノ酪酸、ピルビン酸、フランカルボン酸、ε−アミノカプロン酸等が挙げられる。
上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、酒石酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0083】
上記アニリンまたはアニリン誘導体としては、例えば、アニリン、ジメチルアニリン等が挙げられる。
上記アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシン、α−アラニン、β−アラニン、ヒスチジン、セリン、ロイシン等が挙げられる。
【0084】
上記アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。上記イミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、5(4)−ヒドロキシイミダゾール、5(4)−メチルイミダゾール、2,5(4)−ジメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0085】
上記アルコール類としては、例えば、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0086】
また、上記緩衝剤としては、2−(N−モリホリノ)エタンスルホン酸(MES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン(Bistris)、N−(2−アセトアミド)イミドジ酢酸(ADA)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)−メチルアミノ)プロパン(Bistrispropane)、N−(アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、3−(N−モルフォリン)プロパンスルホン酸(MOPS)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−プロパンスルホン酸(HEPPS)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(Tricine)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン(Tris)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、グリシルグリシン、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、グリシン、シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)等の一般にグッド(Good)の緩衝液といわれるものを組成する物質も使用できる。これらの物質のpKaを表1・2に示す(引用文献:堀尾武一・山下仁平 蛋白質・酵素の基礎実験法 南江堂 1985年)。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
溶離液中の上記緩衝剤濃度は、緩衝作用がある範囲であれば良く、好ましくは1〜1000mM、より好ましくは10〜500mMである。また、上記緩衝剤は、単独でも複数混合して用いても良く、例えば、有機物と無機物を混合して用いても良い。
【0090】
さらに、ベースライン変動をより小さくするために、上記測定目的のピークを分離するにあたって用いる溶離液は、緩衝剤の濃度も同一であるものを用いるのがより好ましい。
本発明で用いる複数の溶離液を、勾配溶出法、あるいは段階溶出法によって送液しても良い。
【0091】
本発明におけるヘモグロビン類とは、HbA1a、HbA1b、HbF、不安定型HbA1c、安定型HbA1c、AHb、CHb、HbA0、HbA2 、HbS、HbC等が挙げられる。
【0092】
HbA0よりも前に溶出するヘモグロビン類を分離するための溶離液のpHは、4.0未満であると、ヘモグロビン類が変性する可能性があり、6.8を超えるとヘモグロビンのプラス電荷が減少し、カチオン交換基に保持されにくくなり、分離能が低下するので4.0〜6.8が好ましく、4.5〜5.8がより好ましい。
【0093】
本発明においては、HbA0を溶出するためは、以下の方法がある。
(1)HbA0を溶出するための溶離液としては、カラムに流入する際のpHがヘモグロビンの等電点と等しいか、または等電点よりアルカリ側になる溶離液を用いる。上記溶離液は、 カオトロピックイオンを含有することがより好ましい。 このカオトロピックイオンとその濃度等については、前述の通りである。
(2)HbA0を溶出するための溶離液としては、塩濃度を200mM〜3000mMと高くして、溶離液のpHは、5.0〜9.0が好ましい。
(3)上記(1)と(2)を組み合わせた溶離液:塩濃度を200mM〜3000mMと高く。かつ、溶離液のpHは、カラムに流入する際のpHがヘモグロビンの等電点と等しいか、または等電点よりアルカリ側になる溶離液を用いる。
【0094】
ヘモグロビンはpHが等電点より酸性側からアルカリ側になると、総荷電がプラスからマイナスに変わるため、充填剤の陽イオン交換基との「電気的反発力によってHbA0成分を溶出」させることができる。
【0095】
なお、理化学辞典(第4版、1987年9月、岩波書店、久保亮五ら編集)、1178頁に記載されているように、ヘモグロビンの等電点はpH6.8〜7.0である。そのため、HbA0成分を溶出するために、カラムに流入する際の溶離液のpHを6.8以上にすることがより好ましい。
【0096】
この条件を満たすため、測定に用いる溶離液の内、少なくともひとつの溶離液のpHが6.8以上であることが必要である。本溶離液のpHは望ましくは7.0〜12.0であり、7.5〜11.0がより好ましく、更には8.0〜9.5が好ましい。溶離液のpHが6.8未満になるとHbA0成分の溶出が不十分となるため、上記塩濃度を高くしてHbA0成分の溶出を十分行うことができる。また、溶離液のpHは、用いる充填剤の分解が起こらない範囲に設定すれば良い。
【0097】
HbA0成分の溶出に好適に用いられる、pHが6.8以上で緩衝能をもつ溶離液としては、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸または、その塩;クエン酸等のヒドロキシカルボン酸、β、β−ジメチルグルタル酸等のカルボン酸誘導体、マレイン酸等のジカルボン酸、カコジル酸、等の有機酸または、その塩からなる緩衝液が挙げられる。その他、2−(N−モリホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン(Bistris)、Tris、ADA、PIPES、Bistrispropane、ACES、MOPS、BES、TES、HEPES、HEPPS、Tricine、Bicine、グリシルグリシン、TAPS、CAPS等の一般にグッド(Good)の緩衝液といわれるものも使用できる。また、BrittonとRobinsonの緩衝液;GTA緩衝液も使用できる。また、イミダゾール等のイミダゾール類;エチレンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;グリシン、β−アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン等のアミノ酸類;等の有機物も使用できる。
【0098】
また、無機酸;有機酸;無機酸または有機酸の塩;有機物は、複数混合して用いても良く、また、有機酸、無機酸及び有機物を混合しても良い。
【0099】
より効果的にHbA0成分を溶出するためには、上記溶離液にカオトロピックイオンを添加するのが好ましい。添加するカオトロピックイオンは前述の通りである。
添加するカオトロピックイオン濃度は、1〜3000mMで、好ましくは、10〜1000mM、更には、50〜500mMが好ましい。
【0100】
HbA0よりも前に溶出するヘモグロビン類の溶出に、pH4.0〜6.8の溶離液を1種類または、2種類以上用いることができる。安定型HbA1c等の測定対象ピークをシャープに溶出させるためには、溶離液を2種類以上用い、塩濃度勾配法やpH勾配法またはこの2つの組み合わせにより目的ピークをシャープに溶出することができる。
【0101】
本発明においては、HbA0よりも前に溶出するヘモグロビン類(HbA1a及びb、HbF、不安定型HbA1c、安定型HbA1c)の溶出には、少なくとも2種類以上の溶離液を用い、かつ、溶出力の最も弱い溶離液を先に流すこともできる。
【0102】
本発明のヘモグロビン類の測定方法では、好ましくは、溶離液を勾配溶出法または段階溶出法によって送液し、目的とするヘモグロビンピークを分離測定する場合、その途中において溶離液の溶出力を低下させることが望ましい場合がある。
【0103】
勾配溶出法は「グラジエント溶出」と呼ばれている。すなわち、複数台の送液ポンプを用い、溶出力が異なる複数の溶離液の送液比率を連続的に変化させて送液する。
【0104】
また、段階溶出法は「ステップワイズ溶出」と称されている。この方法では、1台の送液ポンプを、電磁弁等を介して複数の溶離液に連結する。そして、電磁弁を切り換えることにより、溶出力の低い溶離液から、溶出力の高い溶離液に切り換えて送液する。
【0105】
しかしながら、溶出される各成分の性質が類似していたり、短時間で溶出することが要求されている場合、従来の勾配溶出法や段階溶出法では、類似した性質の成分間でピークが重なり、分離度が低下するおそれがあった。
【0106】
これに対して、本発明では、勾配溶出法または段階溶出法によって溶離液を送液するに際し、その途中、すなわち勾配溶出法または段階溶出法により複数の溶離液を順に切り替えて送液していく途中において、分離対象のピークまたはピーク間の溶離タイミングを考慮して分離対象のピークまたはピーク間の分離状態が良くなるように、溶離液の溶出力を一旦低下させることもできる。具体的には、段階溶出法の場合、溶出力の弱い溶離液から溶出力の強い溶離液に切り替えて送液した後、溶出力の弱い溶離液に切り替え、しばらくしてから溶出力の強い溶離液に切り替えて送液する。
【0107】
カチオン交換LCにおいて、溶離液の溶出力を低下させるには、溶離液の塩濃度を下げる方法やpHを下げる方法、またはこの2つを組み合わせる方法が挙げられる。
【0108】
上記のように勾配溶出法または段階溶出法によって送液し、その途中において溶離液の溶出力を低下させる方法により、ヘモグロビン類を分離する場合をより具体的に説明する。
【0109】
ヘモグロビン類の分離には、カチオン交換充填剤が充填されたカラムを用い、溶離液を塩濃度20〜1000mM、pH4〜9の範囲で勾配溶出法または段階溶出法によって送液させ、その途中において溶離液の塩濃度を5〜500mM、pHを0.1〜3の範囲で下げることによって溶離液の溶出力を低下させて分離を行う。
【0110】
本発明の方法を段階溶出法によって行う場合の、装置の構成例を図1に示した。溶離液A,B,C,Dは、各々溶出力の異なる(例えば、塩濃度、pH、極性等において異なる)ものであり、電磁弁1によって設定時間に各溶離液に切り替えられるように構成されている。溶離液は、送液ポンプ2により、試料注入部3から導入された試料とともにカラム4に導かれ、各成分が検出器5により検出される。各ピークの面積、高さ等はインテグレータ6により算出される。
【0111】
安定型HbA1cの測定に悪影響を与える可能性のあるHbA2、HbS、HbC等のヘモグロビン成分を含む血液検体を測定する場合、HbA0成分(ピーク)として主にHbAを溶出させ、それより後にHbA2、HbS、HbC等を溶離させる測定方法を設定することがある。これにより、HbA0ピークからHbA以外のヘモグロビン成分を除けるため、より正確な安定型HbA1c(%)を算出できる。
【0112】
HbA2、HbS、HbC等を溶離させる測定方法を設定する場合、前述した少なくとも溶出力の異なる3種の溶離液を用いる方法における「HbA0を溶出するための溶離液」は、HbAを主成分とするHbA0ピークを溶出する溶離液を意味している。このとき、「HbA0を溶出するための溶離液」の後に、HbA2、HbS、HbC等を溶離するために、より溶出力の強い溶離液を送液することが必要となる。
【0113】
本発明の測定デバイスは、他の実験装置と比べて系が小型な為、内部環境の制御が容易であり、実験精度の向上が図れる。また、本発明の測定デバイス内で各種操作を実施するために、サンプルロスが少ない。このことにより生化学実験においてしばしば問題となる微小量検体の問題をクリアすることが可能であり、特にヘモグロビン類の分離測定に好適に用いることができる。
【0114】
本発明の測定デバイスに供する検体としてはヘモグロビン類を含有する血液が挙げられるが特に限定されない。前記ヘモグロビン類とは、ヘモグロビンA1a+b、ヘモグロビンF、ヘモグロビンA1c(安定型A1c)、ヘモグロビンA、ヘモグロビンA2、異常ヘモグロビン(ヘモグロビンS、ヘモグロビンC)、修飾ヘモグロビン(アセチル化ヘモグロビン、カルバミル化ヘモグロビン、不安定型ヘモグロビン)が挙げられる。
【0115】
「本発明の測定デバイスの周辺機器:HPLC測定システム」
本発明に使用されるLC装置は、公知のもので良く、例えば、送液ポンプ、試料注入装置(サンプラ)、カラム、検出器等から構成される。また、他の付属装置(カラム恒温槽や溶離液の脱気装置等)が適宜付加されても良い。
本発明の測定デバイスにおいて、更に、測定成分の高分離を達成するために、以下に示す極限の低デッドボリューム構造で、測定成分の拡散低減を実現したセミミクロ高速液体クロマトグラフィー(例えば、資生堂社製のNANOSPACE SI-2)各付属装置を適宜用いるのが好ましい。
(1)少量検体を拡散を極限まで低減し、注入精度が非常に良く、コンタミが無いオートサンプラ(例えば、資生堂社製のオートサンプラー3023)
(2)脈流・脈動を低減したポンプ(ダブルプランジャーポンプがより好ましい)
(例えば、資生堂社製のイナートポンプ3001)
(3)測定に用いる複数の溶離液のコンタミを最小減に低減できるロータリーバルブ
(4)セミミクロカラム対応で、光路長を長く保ち、拡散の少ないフローセルを装備した
UV-VIS検出器(例えば、資生堂社製のUV-VIS検出器3002)
(5)溶離液の脱気装置(例えば、資生堂社製の脱気装置3009/3010)
【0116】
上記測定法における、他の測定条件としては、公知の条件で良く、溶離液の流速は、好ましくは0.001〜5mL/分、より好ましくは0.005〜3mL/分である。ヘモグロビン類の検出は、415nmの可視光が好ましいが、特にこれのみに限定されるわけではない。測定試料は、通常、界面活性剤等溶血活性を有する物質を含む溶液により溶血された溶血液を希釈したものを用いる。試料注入量は、血液検体の希釈倍率により異なるが、好ましくは0.01〜100μL程度である。
【0117】
本発明の測定デバイスを用いたヘモグロビン類の測定方法においては、各工程の少なくとも一部が、自動化されることが好ましい。自動化可能な工程としては、例えば、血液検体と溶血希釈検体を混合し溶血希釈する工程、溶血希釈した検体の一定量をカラム部へ注入する工程、ヘモグロビン類の分離測定に用いる各溶離液を設定した測定シーケンスに従って切換送液する工程、各溶離液を送液ポンプにより設定された送液速度で送液する工程、プレフィルタを交換する工程、カラム部を交換する工程、ヘモグロビン類の分離測定結果よりテ゛ータ処理により各ヘモグロビン類の測定値を算出する工程、測定結果をクロマトグラムなどの形式でプリントアウトする工程などが挙げられる。
自動化は、各工程で使用する送液ポンプや吸引ポンプについて、送液の速度、容量、時間等を予めプログラミングしていれば、人為作業無しに、各工程を行うことができる。また、必要に応じてバルブを使用し、その運転をプログラムで制御してもよい。
【発明の効果】
【0118】
本発明のヘモグロビン類の測定用デバイスによれば、測定試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、測定試料中の成分を分離するためのカチオン交換基を有するカラム部、測定試料中の成分の吸光度検出を行うための検出部の群の内、少なくとも1つ、または、複数の部位が、適宜交換が可能なようにユニット形式に構成されているため、プレフィルタ部、カラム部及び検出部の使用検体数が異なる場合や故障が生じた部位の各ユニット部位を簡単に交換することできる。また、従来の同一基板にプレフィルタ部、カラム部及び検出部が搭載されたものに比べてより効率良くヘモグロビン類の測定ができるヘモグロビン類の測定用デバイス及びヘモグロビン類の測定方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0119】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0120】
(実施例1)
(1)測定検体の調製
健常人血をフッ化ナトリウム採血した全血検体から以下の試料を調製した。なお、溶血試薬として、0.1重量%ポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテル(トリトンX−100)(東京化成社製)を含有させたリン酸緩衝液溶液(pH7.0)を用いた。
a)糖負荷血:全血検体に500mg/dLのグルコース水溶液を添加し、37℃で2時間反応させ、次いで上記溶血試薬により溶血し、50倍に希釈して試料aとした。
b)AHb含有試料:全血検体10mLに、0.3重量%のアセトアルデヒドの生理食塩水溶液1mLを添加し、37℃で2時間反応させ、次いで上記溶血試薬により溶血し、50倍に希釈して試料cとした。
c)CHb含有試料:全血検体10mLに、0.3重量%のシアン酸ナトリウムの生理食塩水溶液1mLを添加し、37℃で2時間反応させ、次いで上記溶血試薬により溶血し、50倍に希釈して試料bとした。
【0121】
(2)測定デバイス及び分析システムの構築
図2に示した構造の測定デバイスをアクリル樹脂で作製し、このセル部を分光光度計に接続してヘモグロビン類の分析システムを構成した。また、図2に示した測定デバイス内の流路は全て幅200μm、深さ200μmである。
プレフィルタ部は検体イン側から「不織布+ろ紙+支持体」の構成で、不織布(旭化成社製:商品名「マイクロウェブ」、ろ紙(アドバンテック東洋社製、高純度ろ紙、No.5C)、支持体(アドバンテック東洋社製、メッシュシート、素材ポリエチレン)で、サイズは、幅3mm×深さ1mm×厚さ1mmとした。
また、セル部の幅200μm、深さ200μmで、長さは7mmである。
なお、カラム部は、幅1000μm、深さ330μm、長さ10mmである。以下に示した方法で作成された充填剤を圧入して充填した。また、検出装置として分光光度計(Ocean Optics社製、USB2000型)と光源(Ocean Optics社製、LS−1)を用いた。
【0122】
(充填剤の調製)
テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸150gの混合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2500mLに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で75℃に昇温し、8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。
【0123】
(3)(測定条件)
システム:送液ポンプ:イナートポンプ3001(資生堂社製)
オートサンプラ:オートサンプラー3023(資生堂社製)
検出器:分光光度計(Ocean Optics社製、USB2000型)
光源(Ocean Optics社製、LS−1)
溶離液:溶離液A:40mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH5.3)
溶離液C:50mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH5.3)
溶離液B:200mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH8.0)
なお、リン酸のpKaは表1に記載の通りである。測定開始より0〜30秒の間は溶離液Cを送液し、30秒〜40秒の間は溶離液Bを送液し、40秒〜60秒の間は溶離液Aを送液した。
流速:0.035mL/分
検出波長:415nm
試料注入量:2μL
【0124】
(測定結果)
上記測定条件により、試料を測定して得られたクロマトグラムを図12〜14に示す。図12は試料a、図13は試料b、図14は試料cを測定した結果である。ピーク1はHbA1a及びHbA1b、ピーク2はHbF、ピーク3は不安定型HbA1c、ピーク4は安定型HbA1c、ピーク5はHbA0、ピーク6はAHb、ピーク7はCHbを示す。
図12では、ピーク3および4が良好に分離されている。また、図13ではピーク6(AHb)、図14ではピーク7(CHb)がピーク4(安定型HbA1c)から良好に分離されている。
【0125】
(実施例2)
以下に示すユニット形式のカラムの作成以外は、実施例1と同じ。
PEEK性樹脂を加工して内径0.65mm×長10mmのカラムを作成し、実施例1の充填剤をHPLCホ゜ンフ゜を用いて、30MPaでスラリー充填した。充填したカラムをプレフィルタ(実施例1と同じ)及び検出セル(セル部の幅200μm、深さ200μmで、長さ7mm)をそれぞれ有する測定デバイスにネジ式(オス、メス)で組立て、溶離液の漏れがないように固定し、図3に示す本発明の実施例2のユニット形式の測定デバイスを作成した。
【0126】
(実施例3)
以下に示すユニット形式のプレフィルタ作成以外は、実施例2と同じ。
図9に示すように、PEEK樹脂を用いてプレフィルタ内蔵ネジを作成した。プレフィルタ内蔵ネジ(オス・メス:それぞれ150度テーパー付き)の流路は内径200μmで、フィルタ素材は、図10に示すステンレス繊維フィルタ(シリコーン処理)内径2mmを用いた。実施例3の測定デバイスを図4に示した。
【0127】
(実施例4)
以下に示すユニット形式カラムの作成以外は、実施例3と同じ。
図5に示すように、PEEK性樹脂を加工して内径0.65mm×長さ10mmのカラムを作成し、図5に示すアクリル樹脂からなる上ふた及び下ふたの間にはさみ、溶離液の漏れがないように、カラム、上ふた及び下ふたの間にテフロン(登録商標)樹脂をはさみ、UV硬化接着剤により接着して実施例4の測定デバイスを作成した。
実施例4の測定デバイスを図5に示した。
【0128】
(実施例5)
以下に示すシリンジタイプのポンプを用いた送液システム以外は、実施例3と同じ。
シリンジポンプとして、室町機械(株)のKDS250を用い、シリンジはテルモ社の10mLシリンジを溶離液ABCで用いた以外は、実施例1〜4と同じ。
上記実施例1〜5で作成した各測定デバイスを用いて、実施例1と同じ方法で各ヘモグロビン類の測定評価を行い、その結果を図12〜14に示した。
【0129】
(比較例1)
充填剤の調製
テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸150gの混合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2500mLに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で75℃に昇温し、8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。
【0130】
充填剤のカラムへの充填
得られた粒子をカラムに以下のようにして充填した。粒子0.7gを、50mMリン酸緩衝液(pH5.8)30mLに分散し、5分間超音波処理した後、よく撹拌した。全量をステンレス製の空カラム(内径4.6×35mm)を接続したパッカー(梅谷精機社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(サヌキ工業社製)を接続し、圧力30MPaで定圧充填した。
【0131】
ヘモグロビン類の測定
得られたカラムを用いて、以下の測定条件でヘモグロビン類の測定を行った。
(測定条件)
システム:送液ポンプ:イナートポンプ3001(資生堂社製)
オートサンプラ:オートサンプラー3023(資生堂社製)
検出器:UV-VIS検出器(資生堂社製)
溶離液:溶離液A:40mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH5.3)
溶離液C:50mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH5.3)
溶離液B:200mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH8.0)
なお、リン酸のpKaは表1に記載の通りである。測定開始より0〜30秒の間は溶離液Cを送液し、30秒〜40秒の間は溶離液Bを送液し、40秒〜60秒の間は溶離液Aを送液した。
流速:2.0mL/分
検出波長:415nm
試料注入量:2μL
【0132】
(測定試料)
測定試料は、実施例1と同様にして調製したものを使用した。
【0133】
(測定結果)
上記測定条件により、試料を測定して得られたクロマトグラムを図15〜17に示す。図15は試料a、図16は試料b、図17は試料cを測定した結果である。ピーク1はHbA1a及びHbA1b、ピーク2はHbF、ピーク3は不安定型HbA1c、ピーク4は安定型HbA1c、ピーク5はHbA0、ピーク6はAHb、ピーク7はCHbを示す。
図15では、ピーク3および4が良好に分離されている。また、図17ではピーク6(AHb)、図16ではピーク7(CHb)がピーク4から良好に分離されている。
【0134】
上記のように比較例1では、従来のカラム(内径4.6mm×長さ35mm)をセミミクロ対応HPLC測定システムに取り付けて安定型A1c分離を行った結果が、測定時間1分で図15〜17に示すように、各ヘモグロビン類のピークは実施例1〜5に比べてブロードで、修飾ヘモグロビン類の分離性能も実施例に比べて悪い結果であった。
【0135】
一方、実施例1〜5では、本発明の測定デバイスに設けられた微小なカラム部により安定型A1c分離を行った結果、測定時間1分にも関わらず、図12〜14に示すように、各ヘモグロビン類のピークは比較例1に比べて非常にシャープで、修飾ヘモグロビン類の分離性能も非常良好であった。測定時間1分であったが、各ヘモグロビン類のピークが非常にシャープであるため、更に、短時間測定が可能であることが明らかになった。
また、実施例1で用いた本発明の測定デバイス(サイズ:横10cm×縦10cm×幅3cm)には、カラム部、セル部が搭載されている。それ以外のポンプ、検体注入装置、検出器などを小型にすれば、現行HPLC測定システムより小型化が可能であり、設置場所も幅をとらず、しかも、持ち運びも十分可能であることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明によれば、光検出可能な成分、生体由来の測定成分、ヘモグロビン類を、迅速かつ簡便に、しかも精度良く分析することができる生体試料成分の測定デバイス、ヘモグロビン類の測定用デバイス及びヘモグロビン類の測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】従来のHPLC:ヘモグロビン類の測定用HPLC
【図2】実施例で作製した測定デバイスを示す模式図である。ユニット形式を図2に示す。
【図3】実施例で作製した測定デバイスを示す模式図である。ユニット形式を図3に示す。
【図4】実施例で作製した測定デバイスを示す模式図である。ユニット形式を図4に示す。
【図5】実施例で作製した測定デバイスを示す模式図である。ユニット形式を図5に示す。
【図6】実施例で作製した測定デバイスを示す模式図である。ユニット形式を図6に示す。
【図7】本発明のエア抜き構造を示す模式図である。
【図8】本発明のエア抜き構造を示す模式図である。
【図9】本発明のフィルタ形状及びプレフィルタ内蔵ネジの構造を示す模式図である。
【図10】本発明のフィルタ形状を示す模式図である。
【図11】本発明のフィルタ形状を示す模式図である。
【図12】本発明の実施例(健常人血)のクロマトグラムを示す。
【図13】本発明の実施例(アセチル化ヘモグロビン)のクロマトグラムを示す。
【図14】本発明の実施例(カルバミル化ヘモグロビン)のクロマトグラムを示す。
【図15】本発明の比較例(健常人血)のクロマトグラムを示す。
【図16】本発明の比較例(アセチル化ヘモグロビン)のクロマトグラムを示す。
【図17】本発明の比較例(カルバミル化ヘモグロビン)のクロマトグラムを示す。
【図18】本発明の測定デバイスのセル部の好ましい構造の1例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0138】
1 セル部
2 接続用流路
3 セル部と接続用流路との接続部
4 基板
5 廃液槽
6 廃液口(外部タンクと接続)
7 飛び出し流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定用デバイスに関するもので、光検出可能である成分であれば、特に、限定されない。また、更には、血液、血漿、血清中に含まれる生体試料成分、ヘモグロビン類を分析することができる測定デバイス及びそれを用いたヘモグロビン類の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロリアクター又はμTAS(micro/miniaturized Total Analysis System)の技術が活発に研究されている。この技術は、微細加工技術を用いて、シリコン等の基板に微細な溝や、液貯めを作製し、それらを送液用の流路や反応槽として用いることにより、基板上で各種化学反応等を実施するものである。マイクロリアクター又はμTASを用いた分析方法は、反応が極めて微小な空間で実施されるため、反応温度の制御が容易であり、反応効率が高くて反応時間を短縮することができるという利点がある。
しかし、従来技術のように、測定に関わる分析部位、例えば、(1)測定検体中の異物除去を行うプレフィルタ部、(2)測定試料中の成分を分離するためのカラム部、(3)カラム部で分離された測定試料中の成分を検出する検出部などが同一基板上に搭載されている測定デバイスを用いる場合、少数検体を測定する場合には、以下の問題点は発生しない。 しかし、連続測定、または、多量検体を同一測定デバイスで測定する場合、プレフィルタ部だけに異常が生じただけで、カラム部及び検出部がまだ使用可能であっても廃棄しないといけない欠点がある。また、上記の同一基板上に搭載されたプレフィルタ部、カラム部及び検出部の使用検体数が異なった場合、実際、測定できる検体としては、最も、使用検体数がすくない部位に合わす必要があり、この点は、ユーザー及びメーカーにとって、非常に不利益なことである。
【0003】
上記に示すマイクロリアクター又はμTASを用いてタンパク質の分析を行うことが検討された。比較的高精度で小型化可能な分析装置として分光光度計を組み合わせることが考えられたが、従来のマイクロリアクター又はμTASでは、充分な光路長を確保することが困難であり、極微量の検液を高精度に分析することができなかった。
微小な流路を活用すると言う点で類似の技術として、細管(キャピラリー)を用いた分析技術である、フローインジェクション分析法が挙げられ、例えば、非特許文献1に記載されているようなZ型流路を用いて光路長を確保することが行われている。しかしながら、この技術をマイクロリアクターに応用しようとしても、例えば、流入側流路から検出光を導入すると光路長を長くするために、流路壁面で反射しながら流出側流路へ検出光が出てくる。この場合では、流入側流路と流出側流路の間の流路側面にわずかのひずみがあると検出光の乱れが生じてノイズが大きくなるなどの問題がある。これらの流入側流路と流出側流路の間の流路側面に生じるわずかなひずみを無くすには、工業生産上において、(1)歩留まりが悪くなる。(2)品質管理が難しい、(3)特定の流路材質を用いなければならない等生産の面で好ましくなかった。
【0004】
「ヘモグロビンA1c測定の従来技術」
液体クロマトグラフィーによる測定の一つとして、血液中の糖化ヘモグロビン、特にヘモグロビンA1c(以下、HbA1cという)が糖尿病診断の指標となるため広く測定されている。糖化ヘモグロビンとは血液中の糖がヘモグロビンと結合して生成したものである。溶血液試料中の糖化ヘモグロビンは、過去1〜2カ月間の血液中の平均的な糖濃度を反映するので溶血液中の糖化ヘモグロビン、近年、特に、安定型A1cが、糖尿病を診断する上で一番重要な指標(マーカー)であることが広く知られており、この安定型A1cを短時間により正確に測定することが求められている。その理由は、例えば、病院での診療前に患者の安定型A1c測定を行い、医者がその安定型A1c測定結果を基に、患者の治療方針を決定して、治療を行う「診療前検査」のニーズが高まっているためである。
【0005】
このHbA1cの液体クロマトグラフィー法による測定は、主にカチオン交換液体クロマト グラフィー法により行われている(特公平8−7198号公報など)。溶血液試料をカチオン交換液体クロマトグラフィーにより分離すると、通常、ヘモグロビンA1a(以下、HbA1aという)及びヘモグロビンA1b(以下、HbA1bという)、ヘモグロビンF(以下、HbFという)、不安定型HbA1c、安定型HbA1c並びにヘモグロビンA0(以下、HbA0という)などのピークに分画できる。なお、糖尿病の診断の指標として使用されているHbA1cは、上記のうちの安定型HbA1cであり、全ヘモグロビンピークの面積に対する安定型HbA1cピークの面積の比率(%)として求められている。
【0006】
このHbA1cの液体クロマトグラフィー法による測定は、カラムとしてカチオン交換液体クロマトグラフィー用充填剤(例えば、カルボキシル基やスルホン酸基を官能基として有する充填剤)が充填されたものを用い、pH5.0〜9.0の溶離液を用いて行われている。
【0007】
「従来のHPLCによる安定型A1c測定方法の欠点」
上記のように、従来のHPLC法による安定型A1c測定方法(図1)は、精度良く安定型A1cを測定できるが、少し大きめのHPLC測定装置が必要である。これらのHPLCによる安定型A1c測定では、測定検体が比較的大きめのカラム(内径4.6mm×長さ35mm)及び検出器のセルで拡散したり、また、検体注入からカラム、検出セルで検出されるまでの配管の長さが長いために、更に、測定検体が拡散するため、各ヘモグロビン類のピークがブロード化し、更なる測定時間の短縮を行っても、各ヘモグロビン類のピーク分離が不十分となり、安定型A1cを精度良く測定することはできない。
また、これらの安定型A1c測定用のHPLC測定装置も非常に小型化が進んでいるが、医療現場、特に、開業医などの小規模病院に置くには、まだ、装置が大きすぎて、以下の問題点がある。(1)設置するためにスヘ゜ースを確保する必要がある。(2)持ち運ぶには重すぎる。(3)測定検体の拡散などの問題点がある。
【0008】
【非特許文献1】Anal.Chem.1983,65,3454−3459
【特許文献1】特公平8−7198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、光検出できる成分、更には、生体由来の生体試料成分をより小型の測定装置で簡便に精度良く測定できる測定デバイスを提供することを目的とする。また、ヘモグロビン類を現在のHPLCの測定精度を維持したまま、持ち運び可能な小型の装置で、しかも、設置のために広いスヘ゜ースを必要とせず、更に、短時間に、かつ、測定デバイスの各測定部位を簡便に最大限利用可能である、しかも高い精度でヘモグロビン類を分析することができるヘモグロビン類の測定用デバイス及びヘモグロビン類の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における光検出可能な成分、生体由来の生体試料成分、ヘモグロビン類の測定用デバイスは、近年、活発に研究されているマイクロリアクター又はμTAS(micro/miniaturized Total Analysis System)に代表される微細加工技術をプレフィルタ部、カラム部、それらを接続する流路に応用しており、従来の免疫測定システム、HPLC測定システムなどに比べて、より小型で、しかも、測定検体の拡散を極限まで抑えているために、従来の免疫測定システム、HPLC測定システムでは、実現できない更なる短時間で高分離測定が可能となった。
【0011】
また、本発明の生体由来の測定成分の測定を行う測定用デバイスにおいて、測定試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、測定試料中の成分を分離するために、カチオン交換基、アニオン交換基、オクチルドデシル基、または、サイズ排除、中空カラムの群の中から少なくとも1つ、または、複数組み合わせて形成されたカラム部、測定試料中の成分の光検出を行うための検出部から構成されていることを特徴とする測定用デバイスである。
【0012】
以下に本発明の請求項1を詳述する。
本発明の測定デバイスの測定検体の種類は、光検出可能である成分であれば、特に、限定されない。また、更には、生体由来の成分であれば、公知のもので良く、例えば、ウィルス、細胞、組織、器官または動植物、微生物等、生体由来の試料、例えば、細胞、組織、器官の溶解物または、ホモシ゛ネート;血液、血漿、血清、尿、涙、便、痰、胃液などの体液;ステロイト゛、アミノ酸、ヌクレオチト゛、糖、ホ゜リヘ゜フ゜チト゛、ホ゜リヌクレオチト゛、複合炭水化物、脂質などの生物起源の有機分子;RNA、DNAなどの核酸などが上げられる。
また、現在、臨床検査などで測定されている公知の測定項目も測定できる。例えば、(1)生化学検査:アルブミンなどの蛋白質、尿酸、クレアチニン、アミノ酸などの低分子窒素化合物;γ-GTP、GOT、GPT、ク゛ルタミン酸脱水素酵素などの酵素;LDHアイソサ゛イム、アミラーセ゛アイソサ゛イムなどのアイソサ゛イム;ヘモク゛ロヒ゛ンA1c、フルクトサミン、1.5AG、ク゛リコアルフ゛ミンなどの糖蛋白質・有機酸;LDL、HDL、リホ゜蛋白質などの脂質関連;ヒ゛タミン類;電解質・微量金属;ヒ゛リルヒ゛ンなどの生体色素関連;馬尿酸、農薬、有機溶剤などの毒物・産業衛生関連;抗てんかん剤、催眠剤、向精神剤、気管支拡張剤、抗生物質、免疫抑制剤、利尿剤、抗カ゛ン剤などの薬物検査、腫瘍マーカー、カテコールアミンなどのホルモン類、
IgE、IgGなどの免疫ク゛ロフ゛リン(アレルギー検査)、リュウマチ因子などの自己免疫因子、肝炎ウィルス抗体・抗原、インフルエンザウィルス、T細部系、B細胞系、骨随球系、NK細胞系などの血液細胞・免疫細胞の分類及びリンハ゜球サフ゛セット検査、サイトカイン類などが挙げられる。
本発明の請求項1記載のプレフィルタ部は、測定検体中の異物を除去できるものであれば、公知のプレフィルタ;ステンレス繊維、ろ紙、不織布、メンブレンフィルタを用いることができる。
【0013】
また、本発明の請求項1記載の測定試料中の成分を分離するためのカラム部は、カルボキシル基、スルホン酸基などのカチオン交換基、アミノ基などのアニオン交換基、オクチルドデシル基などの疎水性相互作用を有する官能基、または、分子の大きさで分離するサイズ排除、測定成分と相互作用がない中空カラムは、成分測定のための抗原抗体反応、発色反応、発光反応、ラテックス凝集反応などを行うための反応場を提供する。
本発明のカラム部は、上記カチオン交換基、アニオン交換基、疎水性相互作用を行う官能基、サイス゛排除、中空カラム部の群の中から少なくとも1つ、または、複数組み合わせて形成されたカラム部を用いることができる。
また、本発明の請求項1記載の測定試料中の成分の光検出を行うための検出部は、公知の光検出であれば、特に限定されず、例えば、吸光度、発色、ラテックス凝集などが挙げられる。
【0014】
また、本発明の請求項2記載のヘモグロビン類の測定用デバイスにおいては、測定試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、測定試料中の成分を分離するためのカチオン交換基を有するカラム部、測定試料中の成分の吸光度検出を行うための検出部の群の内、少なくとも1つ、または、複数の部位が、適宜交換が可能なようにユニット形式に構成されているため、プレフィルタ部、カラム部及び検出部の使用検体数が異なる場合や故障が生じた部位の各ユニット部位を交換することで、従来のように、同一基板にプレフィルタ部、カラム部及び検出部が搭載されたものに比べてより効率良くヘモグロビン類の測定ができるヘモグロビン類の測定用デバイス及びヘモグロビン類の測定方法である。
本発明の上記ユニット形式とは、例えば、各プレフィルタ部、カラム部及び検出部などの機能を持つ部位(ユニット)を自由に交換可能できるカートリッジ形式という意味を含む。
【0015】
以下に本発明の請求項2記載について詳述する。
本明細書においてカラム部とは、測定試料中の成分であるヘモグロビン類を分離できる機能を有する測定用デバイスの特定領域を意味する。
上記カラム部において、測定試料中に含まれる成分であるヘモグロビン類を迅速かつ簡便に分離することができ、安定型A1cの分離測定も可能である。
【0016】
以下に本発明におけるカラム部の詳細な説明を行う。
本発明のヘモグロビン類の測定用デバイスのカラム部は、カチオン交換基を有するものであれば、粒子状、筒状、キャピラリー状、メッシュ状、中空糸状、多孔質膜状、モノリス状のものであれば良い。好ましくは、圧力損失の低下と、内部を流れる検体等の流体との接触効率を考慮した場合、粒状、多孔質膜状、モノリス状が好適である。
(1)以下にカチオン交換基を有する粒子について説明する。
本発明のヘモグロビン類の測定方法におけるカチオン交換液体クロマトグラフィーの充填剤は、少なくとも1種以上のカチオン交換基を有している粒子よりなるものであり、例えば、高分子粒子にカチオン交換基を導入することで得られる。
【0017】
該カチオン交換基は、公知のものでよく特に制限はない。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのカチオン交換基等が挙げられる。また、このカチオン交換基は、複数種導入しても良い。
【0018】
上記粒子の直径は、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは1〜10μmである。
また、粒度分布は、変動係数値(CV値)(粒径の標準偏差÷平均直径×100)として、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
【0019】
上記高分子粒子としては、例えば、シリカ、ジルコニアなどの無機系粒子;セルロース、ポリアミノ酸、キトサンなどの天然高分子粒子;ポリスチレン、ポリアクリル酸エステルなどの合成高分子粒子などが挙げられる。
上記高分子粒子は、導入されるイオン交換基以外の構成成分は、より親水性であることが好ましい。また耐圧性・耐膨潤性の点から架橋度の高いものが好ましい。
【0020】
上記高分子粒子へのカチオン交換基の導入は、公知の方法により行うことができるが、例えば、高分子粒子を調製後、粒子が有する官能基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基など)に、化学反応でカチオン交換基を粒子に導入させる方法により行うことができる。
【0021】
また、カチオン交換基を有する単量体を重合して高分子粒子を調製する方法によってもカチオン交換充填剤を調製できる。例えば、カチオン交換基含有単量体と架橋性単量体等とを混合し、重合開始剤の存在下に重合する方法などが挙げられる。
【0022】
また、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの重合性カチオン交換基含有エステルを架橋性単量体などと混合し、重合開始剤存在下で重合した後、得られた粒子を加水分解処理し、エステルをカチオン交換基に変換させてもよい。
【0023】
更に、特公平8−7197号公報に記載のように、架橋重合体粒子を調製した後、カチオン交換基を有する単量体を添加して、重合体粒子の表面付近に、該単量体を重合させても良い。
【0024】
「充填方法」
上記充填剤は本発明の測定デバイスに形成されたカラム部に直接充填されても良い。
また、繰り返し測定による分離性能の劣化を防ぐためには、例えば、カラムに充填剤を密に充填することが必要である。それを実現するためには、例えば、スラリー充填法によりスラリー化した充填剤を送液ポンプなどによりカラムに圧入することにより行うことができる。その後、充填剤が充填されたカラムを、本発明の測定デバイスに形成されたカラム部にはめ込む方法が挙げられる。充填剤を本発明の測定デバイス上のカラム部、または、カラムに充填する方法は、充填剤粒子を緩衝剤を含有した水溶液でスラリー状にしたもを圧入する方法があるが公知の他の方法でも、充填剤をカラム部に充填できる方法であれば良い。その充填圧力は、0.1MPa〜50MPaの範囲で、本発明の測定デバイス上のカラム部、または、カラムの素材、充填剤の種類、分離性能に応じて適宜選択される。
【0025】
本発明に用いられるカラム素材は、公知のステンレス製、ガラス製、樹脂製(PEEK、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリエチレン)など、特に限定されない。本発明のマイクロリアクター上のカラム部、または、カラムのサイズとしては、内径0.01〜3.0mm、長さ0.1〜50mm円柱状のものが好ましく、内径0.05〜2mm、長さ0.5〜30mm円柱状のものがより好ましい。
また、本発明の測定デバイスのカラム部、または、カラムの形状としては、上記円柱状以外に、四角柱、三角柱などヘモグロビン類の分離性能に悪影響がない公知の形状であれば良い。また、本発明の測定デバイスのカラム部、または、カラムの形状が、上記円柱状以外であっても、本発明の測定デバイスのカラム部、または、カラムの断面積及び長さは、上記円柱状のカラムの断面積及び長さに相当するサイズが好ましい。
【0026】
微量検体の分析は、通常の液体クロマトグラフィー等の方法では、カラム、検出器、配管などのデッドボリュームが大きいため、微量検体が拡散して、各測定成分のピークがブロードになり、検出感度も低いことなどから高精度測定は、極めて困難であった。しかし、本発明の測定デバイスでは、吸光度を測定する流路が微小体積であることやカラム部と吸光度を測定する流路を繋ぐ流路も微小体積であることから、カラム部からの溶離液が微小量でも分析可能である。このことは、検体量の低減や微量検体でも検出感度の向上及び高分離が可能である。
【0027】
「本発明の測定デバイスは、吸光度の測定を行うセル部を有する。(図2〜6)」
本明細書においてセル部とは、吸光度測定用の光線が通過する部位を意味する。
上記セル部は、直線状に形成された流路からなる。このような流路をセル部とすることにより、極微量の検体であっても吸光度を測定することが可能になる。
【0028】
上記セル部は、光路長が1〜20mmであることが好ましい。ここで光路長とは、吸光度測定用の光線が通過する液の長さを意味し、実質的には、上記セル部における直線状に形成された流路の長さにほぼ等しい。1mm未満であると、光路長が短すぎて検出感度が大幅に低下することがあり、20mmを超えると、吸光度の測定を行いたい物質による吸収とそれ以外の物質による吸収、即ち、バックグラウンドとの見分けがつきにくくなることがある。
【0029】
上記セル部は、複数あってもよい。複数個あるカラム部で異なる目的とする成分、または、次の測定検体を分離し、カラム部ごとにこれに対応するセル部を設けて分析を行えば、多種の物質、または、多量検体を同時に分離、分析することが可能となる。
【0030】
本発明の測定デバイスは、上記セル部を、吸光度測定用の光線の光軸が直線状に形成された流路の流れ方向になるように、かつ、直線状に形成された流路内への光線の入射角及び出射角が0°であるように吸光度測定装置に接続可能である。セル部をこのように吸光度測定装置に接続可能にすることにより、本発明の測定デバイスは、平板状のマイクロリアクターの課題であった、吸光度測定における光路長の短さに起因する感度の不足を防ぐことができる。
【0031】
本発明の測定デバイスは、吸光度測定装置に接続し、検体のない状態で測定した吸光度測定波長における光線透過率が、同一の光路長及び吸光度測定波長で空気を測定した場合の光線透過率の50%以上であることが好ましい。50%未満であると、吸光度測定の感度が低下したり、誤差が大きくなったりすることがある。
【0032】
本発明の測定デバイスのセル部を上述の条件で吸光度測定装置に接続可能とし、かつ、上述の充分な光線透過率を確保するためには、上記セル部を構成する材料としてできる限り透明性の高いものを選択するとともに、セル部の構造を、吸光度測定用の光線がセル部を構成する材料を通過する距離ができる限り短くなるようにすることが好ましい。
好ましいセル部の構造の一例を図18-a〜dに示した。
図18-a〜dに示したセル部では、セル部は、流入部及び/又は流出部において接続用流路とコの字状又はL字状に接続されている。このように接続することにより、セル部を基板から突出させて吸光度測定装置と接続できるようにすることができ、吸光度測定用の光線がセル部を構成する材料を通過する距離ができる限り短くなるようにすることができる。
【0033】
また、本発明の測定デバイスを大量生産する場合、プラスチックス等の成形加工による生産は、大きなウエイトを占めると考えられる。なかでも射出成形技術による生産はその生産性から重要であると考えられる。しかし、同技術で本発明の測定デバイスを生産しようとする場合、上述のようにセル部を流入部及び/又は流出部において接続用流路とコの字状又はL字状に接続する構造にすると、接続部においてダレ等の成形不良が生じやすく、歩留りが極端に悪化することがある。そこで、セル部と接続用流路との接続部に飛び出し流路を形成することが好ましい。このような飛び出し流路を形成することにより、上記接続部におけるダレが起こりにくくなり、ひいては本発明の測定デバイスの生産性が向上する。
【0034】
上記飛出し流路の長さの好ましい下限は0.01mm、好ましい上限は2mmである。0.01mm未満であると、ダレ防止効果が得られないことがあり、2mmを超えると、吸光度の測定に悪影響を及ぼすことがある。
【0035】
飛び出し流路を形成した場合の好ましいセル部の構造の一例を図18-C及び図18-Dに示した。図18-Cに示したセル部では、セル部の流入部及び/又は流出部における接続用流路との接続部に飛び出し流路が設けられており、全体としてエの字型の流路を形成している。図18-Dに示したセル部では、セル部の流入部における接続用流路との接続部に飛び出し流路が設けられており、全体としてTの字型の流路を形成している。
【0036】
本発明の測定デバイスを接続する吸光度測定装置としては特に限定されず、例えば、市販されている携帯可能な小型分光光度計等を用いることができる。このような分光光度計を用いることにより、紫外吸光や、赤外吸光、可視光吸光等を容易に測定することができる。市販されている携帯可能な小型分光光度計としては、例えば、Ocean Optics社製USB2000型分光光度計等が挙げられる。
【0037】
上記カラム部とセル部とは、接続用流路により互いに接続される。上記接続用流路の断面積は1mm2以下であることが好ましい。1mm2を超えると、カラム部等において分離されたヘモグロビン類などの成分が流路内で拡散してしまい、検出感度が低下することがある。より好ましくは0.09mm2以下である。
また、上記カラム部とセル部とを接続する接続用流路の長さは、0.1mm〜30mmである。好ましくは、0.2mm〜20mmである。上記接続用流路の長さが、0.1mmより短いと本発明の測定デバイスの製造が難しくなる。また、上記接続用流路の長さが30mmより長くなると分離された成分が拡散して分離性能が悪くなる問題がある。
【0038】
上記カラム部とセル部とを接続する接続用流路は、流路長さにして1mm以内の間に、流路断面積が直前の流路断面積の2倍以上又は0.5倍になるような部分を少なくとも1カ所有することが好ましい。このような部分を少なくとも1カ所有することにより、検体を本発明の測定デバイスへ注入する際、又は、各種の溶離液を本発明の測定デバイスへ注入する際に、流路中に混入された気泡の流動を一時的に抑えることができ、気泡による吸光度の測定誤差を抑えることができる。
【0039】
本発明の測定デバイスは、各部を接続する接続用流路の他に、更に、ヘモグロビン類を分離溶出する溶離液、血液の溶血希釈液等を流すための流路を有していてもよい。また、溶離液、溶血希釈液等を貯留するための貯留部を取り外し可能なユニット形式で有していてもよい。
【0040】
本発明の測定デバイスは、更に、送液のためのポンプを内部に有しても良い。
上記ポンプとしては特に限定されないが、例えば、ペリスタポンプ、ロータリーポンプ、シリンジポンプ、ダイアフラムポンプ等の機構からなる、駆動部の総体積が1cm3以下のマイクロポンプを用いることができる。このようなマイクロポンプとしては、例えば、特開2001−132646号公報に記載されたダイヤフラム構造をMEMS加工技術によりそのまま小型化したダイアフラムポンプ;特開2002−021715号公報に記載された微小ピストンによる断続的に送液する構造;特開平10−010088号公報に記載された微細流路上に電気浸透流を発生させる方法による送液媒体の送液を行うポンプ等が挙げられる。
【0041】
本発明の測定デバイスは、更に、マイクロバルブを有することが好ましい。上記マイクロバルブとしては、例えば、特開2000−120617号公報に記載された流体の動きを制御するために気体の作用を用いるマイクロバルブ、電磁バルブなどの公知のバルブ等を用いることができる。
【0042】
本発明の測定デバイスの大きさとしては特に限定されないが、ハンドリング性を考慮すると、400cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは100cm2以下である。
【0043】
本発明の測定デバイスの基板を構成する材料としては特に限定されず、例えば、ガラス、蛍光ガラス、セラミックス等の無機物;プラスッチックス等の有機化合物;金属等が挙げられる。リサイクル性を考慮する場合には、ガラス、熱可塑性プラスチックス又は金属が好適であり、一方、加工性及び廃棄を前提とした経済性を考慮する場合には、各種プラスチックスが好適である。また、本発明の測定デバイスの基板を構成する材料として、各種プラスチックスを用いると安価で軽いために携帯性、加工性に優れている。
【0044】
上記プラスチックとしては特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも用いることができる。なかでも、熱硬化性樹脂は、加熱により可塑化して簡単に表面加工するという利点は有さないものの、予め硬化剤等を混合した前駆体液を転写金型に導入してから硬化させることにより、樹脂表面を附形することが可能である。この場合、前駆体液が液状のため、転写金型の形状をより忠実に転写することができる。また、一般に、静的に硬化された樹脂は、低い線膨張率、低い成形収縮率を示すことからも有用である。
上記熱硬化性樹脂としては特に限定ないが、コストや易取扱い性の点からエポキシ樹脂が好適である。
【0045】
また、ヘモグロビン類の測定においては、ヘモグロビン類を分離溶出する溶離液として、pH5〜9付近の溶離液を用いるため、この場合には、耐酸・アルカリ性を有するポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、PEEK性樹脂等が好適である。これらの樹脂は、耐薬品性の改善、圧力損失の低減、流体制御等を目的として、その表面が各種試薬により改質されたものであってもよい。
また、上記セル部については、特に光透過性が求められることから、他の部位とは異なる、特に光透過性に優れるプラスチックを用いてもよい。このような光透過性に優れたプラスチックとしては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂等が挙げられる。
【0046】
本発明の測定デバイスを製造する方法としては特に限定されず、例えば、レーザー加工、切削加工等の各種機械加工;エッチング、原子線エッチング;流路部分がレーザー加工等により貫通孔、貫通溝となった基板の貼り合せ;射出成形等の従来公知の方法を用いて、流路や貯留部を形成する方法等が挙げられる。
また、流路や貯留部が形成された基板は、各種接着剤、陽極接合等により、別の基板と貼り合せる等して、試薬の導入部、外部ポンプの接続場所等を除いて密閉することが好ましい。また使用可能な材料に制限はあるももの、光造形技術を用いることにより、密閉工程を省略したリアクターを形成可能である。
またセル部と他の部位とで別の材料を用いる場合には、別に作製したセル部を、その他の部分と各種接着剤、カップリング剤等により接着する方法、共押出による成形方法ユニット形式(各部位をネジ式で接続)等により製造することができる。
【0047】
「本発明の測定デバイスにおいてヘモグロビン類が接する部位の表面処理」
本発明の測定デバイスの素材を上記に示したが、測定検体であるヘモグロビン類が本発明の測定デバイスに接するとヘモグロビン類が吸着して、各ヘモグロビン類の正しい測定値が得られない場合がある。
その測定デバイスへのヘモグロビン類の吸着抑制のために、少なくとも、測定デバイスに測定検体のヘモグロビン類が接する部位の表面に公知の蛋白質吸着低減処理を行うことが好ましい。
上記蛋白質吸着低減処理とは、蛋白質によるブロッキング処理(物理吸着処理、化学架橋処理)、シリコーン処理、撥水処理、化学的な親水化処理、プラズマ処理などを行う方法などを行うことが好ましい。
【0048】
「エア抜き構造」
本発明の測定デバイスには、図7〜8に示すような測定デバイスの流路に入り込んだエア(空気)を簡単に抜くことができるエア抜き構造を設けることができる。また、エア抜き構造は、測定デバイスの各流路に設置でき、設置する場所、設置数は、流路中のエアを効率良く、しかも、完全に抜くことができれば特に限定されない。
本発明のエア抜き構造は、測定デバイスの各流路を開閉できる機能を有するものであれば、公知の技術、例えば、バルブ式、弁式、ネジ式などが挙げられる。図7〜8に本発明の測定デバイスのエア抜きの1例であるネジ式を示した。
【0049】
また、本発明のエア抜き構造の素材は、本発明の測定デバイスの素材と同様なものを使用することができる。但し、本発明の測定デバイスの素材とエア抜き構造素材により溶離液が漏れないそれぞれに適した素材を選択する必要がある。基本的には、測定デバイスの素材よりは、柔らかい素材、例えば、テフロン(登録商標)などの樹脂を本発明のエア抜きとして用いるのが好ましい。エア抜き構造のサイズは、特に限定されないが、各流路から確実にエアを抜くことができるサイズであれば良いが、好ましいエア抜きのための孔径は、直径0.01mm〜3mm程度である。
また、エアがヘモグロビン類を分離測定するカラム部に入り込むとヘモグロビン類を分離するための溶離液の流れが乱されるため、ヘモグロビン類の分離性能がおちて、ヘモグロビン類の各ヒ゜ークがブロードになり、例えば、安定型A1c値を正確に測定できなくなる問題がある。
【0050】
「フィルタ構造」
本発明に用いられるフィルタ構造は、図9〜10に示すような(1)ネジ式タイプ、(2)測定デバイスに設置するタイプ(図2)、(3)フリッツタイプが挙げられる。
本発明のフィルタの役割は、全血を溶血試薬にて溶血希釈して調製したヘモグロビン類の測定用検体中に存在する血液細胞由来の細胞膜片、血漿蛋白、脂質などの多量に存在する約1〜5μm程度の異物を除去して、カラム部にこれらの異物が入り込んで、検体測定を繰り返すことにより、カラム部が劣化するのを防ぐ役割がある。
本発明のフィルタは、上記の測定検体中の血液細胞由来の細胞膜片、血漿蛋白、脂質などの多量に存在する約1〜5μm程度の異物を除去できて、ヘモグロビン類の吸着が少ないもので、血液検体を連続測定してもフィルタ圧力が上昇しにくいものであれば公知のフィルタを用いることができる。
本発明のフィルタとして用いることができる素材は、(1)チタン、ステンレスなどの金属フィルタ、(2)ポリエチレン、PEEK、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、レーヨン、アクリル、塩化ビニリデン、テフロン(登録商標)などの樹脂性フィルタ、(3)その他素材:ココナッツファイバー、綿、ウール、麻、ガラス繊維などが挙げられる。
上記素材でヘモグロビン類の吸着を更に抑える必要があれば、シリコーン処理、フ゛ロッキンク゛処理、化学処理(親水化処理)、プラズマ処理などの表面処理を行うのが好ましい。
【0051】
本発明のフィルタにおいて、血液検体を連続測定してもフィルタ圧力が上昇しにくいフィルタがより好ましい。そのフィルタ構造としては、フィルタ空隙率を高くする必要がある。その方法としては、検体導入側に(1)空隙率が高いフィルタ(ステンレス繊維フィルタ、不織布)、(2)孔径の大きなフィルタ(不織布)、(3)空隙率が高く、しかも、孔径が大きなフィルタ(不織布)を用い、その後段に、血液中の1〜5μmの異物を除去できるフィルタ(ステンレス繊維フィルタ、ろ紙)を設ける方法がある。
【0052】
本発明のフィルタとしては、(1)シリコーン処理したステンレス繊維フィルタ、(2)不織布+ろ紙、(3)不織布+メンブレンフィルタ、(4)ろ紙+メンブレンフィルタなどが好ましい。更に、安価で、血液中の約1〜5μm程度の異物を除去できて、連続測定してもフィルタ圧力上昇が非常に少ないのは、(2)不織布+ろ紙である。
【0053】
以下に、本発明のフィルタの一つである「不織布+ろ紙」について詳細に記載する。
また、必要に応じて、生体試料成分の吸着を小さくするために、上記不織布の表面を少なくとも、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエチレン、エチレンのアルキル誘導体の重合体、アクリル系樹脂、ナイロン、炭化物セラミック、窒化物セラミック、珪化物セラミック、硼化物セラミック、表面がシリル化処理された二酸化珪素、ガラス及びチタンからなる群より選ばれる少なくとも一種よりなる、又は、これらを複数組み合わせた素材で処理しても良い。
上記不織布の厚みは、生体試料の目詰まりによる圧力上昇を抑制するため、0.05mm以上である。
また、不織布の厚みは、測定サンプルの拡散を抑制するために、10mm以下が好ましい。
本発明に用いる不織布の厚みは、生体試料の目詰まりによる圧力上昇の抑制と測定サンプルの拡散を抑制するために、より好ましくは、0.1mm〜5mmが好ましい。
【0054】
本発明に用いる不織布の空隙率は、40%〜95%である。不織布の空隙率が40%未満であると、生体成分由来の異物による目詰まりにより、フィルターの圧力上昇が非常に高くなる欠点がある。また、不織布の空隙率が95%以上であると、フィルター強度が弱くなり、それに伴い、フィルターが圧力上昇により破壊される可能性がある。
【0055】
本発明に用いるろ紙は、公知のろ紙で、ろ紙の素材は、特に限定されない。
ろ紙の素材は、具体的には、セルロース、ガラス繊維、フッ素樹脂、シリカ繊維などが挙げられる。
【0056】
また、公知のろ紙で、ろ紙の強度、生体試料の吸着抑制などを実現するための特殊処理を施したろ紙も用いることができる。例えば、湿潤強度を高めたろ紙(アドバンテック東洋(株)のウェットストレングスろ紙)などが挙げられる。
本発明に用いるろ紙の保留粒子径は、生体試料中の異物を除去するために、5μm以下である。より確実に生体試料中の異物を除去するために、本発明のろ紙の保留粒子径は、3μm以下が好ましく、更に、生体試料由来の異物をより確実に除去するために、本発明のろ紙の保留粒子径は、1.5μm以下が好ましい。
ろ紙の保留粒子径が5μmより大きいと生体試料中の異物を除去できず、それらの異物が、カラムへ移行して、カラム性能(分離能が低下、カラム圧力上昇)を悪化させる問題がある。
【0057】
本発明のフィルターは、不織布及びろ紙の有効ろ過面積を大きくするために、カラムから離れた側から「支持体+不織布+ろ紙+支持体」または「不織布+ろ紙+支持体」の構成にすることができる。
この支持体の形状は、不織布及びろ紙の有効ろ過面積を大きくできるものであれば特に限定されないが、メッシュ状のものが好ましい。
【0058】
本発明で用いる支持体の素材は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、金属メッシュ(ステンレス、チタン)などが挙げられる。
本発明のフィルターは、必要に応じて、シリコーンコーティングされてもよい。
本発明のフィルターは、上記の液体クロマトグラフィー用フィルターが、更に、ブロッキング試薬でブロッキング処理されていることが好ましい。上記ブロッキング試薬としては、例えば、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、ヘモグロビン、ミオグロビンなどの蛋白質;例えば、リン脂質等の極性脂質;例えば、SDS、ポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテル(トリトンX−100)などの界面活性剤などが挙げられる。
【0059】
本発明のフィルターの形状は、液体の流れを乱さない構造であれば、特に限定されない。例えば、図10〜11に示すような、(イ)円柱状、(ロ)円錐状、(ハ)円錐台状、(ニ)2つの円錐の、底面同士を接触したような形状が挙げられる。図10〜11において、液体流入側又は液体流出側のどちらでもよく、また上記の両側でもよい。
【0060】
本発明のフィルターのサイズは、直径は0.1〜10mmが好ましく、0.5〜8mmがより好ましい。厚さは0.1〜5mmが好ましく、0.2〜3mmがより好ましい。濾過孔径は、公知の孔径でよく、0.1〜5μmが好ましく、0.2〜3μmがより好ましい。
【0061】
「ヘモグロビン類の測定方法」
本発明で用いられる溶離液は、カオトロピックイオンを含有し、かつ、pH4.0〜6.8で緩衝能を持つ無機酸、有機酸及び/またはこれらの塩を含む。
【0062】
上記カオトロピックイオンとは、化合物が水溶液に溶解したときに解離により生じたイオンであり、水の構造を破壊し、疎水性物質と水が接触したときに起こる水のエントロピー減少を抑制するものである。
【0063】
陰イオンのカオトロピックイオンとしては、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン等が挙げられる。また、陽イオンのカオトロピックイオンとしては、バリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、グアニジンイオン等が挙げられる。
【0064】
上記カオトロピックイオンの中でも、陰イオンとして、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオン等を、陽イオンとして、バリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオン、グアニジンイオン等を用いるのが好ましい。さらに、より好ましくは、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、グアニジンイオン等が用いられる。
【0065】
上記溶離液中のカオトロピックイオンの濃度が、0.1mMより低いとヘモグロビン類の測定において、分離効果が低下するおそれがあり、また、3000mMよりも高いと、ヘモグロビン類の分離効果はそれ以上向上しないので、0.1mM〜3000mMが好ましく、1mM〜1000mMがより好ましく、更に、10mM〜500mMが好ましい。
【0066】
また、カオトロピックイオンは複数種混合して用いても良い。
上記カオトロピックイオンは、測定試料と接触する液、例えば、溶血試薬、試料希釈液等に添加しても良い。
【0067】
本発明においては、溶離液に用いる緩衝能を有する物質として、無機酸、有機酸またはこれらの塩が含まれる。上記無機酸としては、例えば、炭酸、リン酸等が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸、アミノ酸、カコジル酸、ピロリン酸等が挙げられる。
【0068】
上記カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。上記ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等が挙げられる。上記カルボン酸誘導体としては、例えば、β、β−ジメチルグルタル酸、バルビツール酸、アミノ酪酸等が挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。上記アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン等が挙げられる。
【0069】
上記無機酸または有機酸の塩としては、公知のもので良く、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0070】
上記無機酸、有機酸またはこれらの塩は、複数種混合して用いても良く、無機酸と有機酸を混合して用いても良い。
【0071】
上記無機酸、有機酸及び/またはこれらの塩の溶離液中の濃度、複数種用いる場合には複数種の合計の濃度は、溶離液のpHを4.0〜6.8にする緩衝作用があれば良く、1〜1000mMが好ましく、10〜500mMが特に好ましい。
【0072】
本発明においては、上記溶離液のpHは、4.0〜6.8に限定され、好ましくは4.5〜5.8である。溶離液のpHが4未満であると、ヘモグロビン類が変性する可能性があり、pHが6.8を超えると、ヘモグロビン類のプラス荷電が減少し、カチオン交換基に保持されにくくなり、ヘモグロビン類の分離が悪くなる。
【0073】
上記溶離液には、以下の物質を添加しても良い。
(1)無機塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸ナトリウム等)を添加しても良い。これらの塩類の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1〜1500mMである。
【0074】
(2)pH調節剤として、公知の酸、塩基を加えても良い。酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸等が、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの酸、塩基の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、0.001〜500mMである。
【0075】
(3)メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン等の水溶性有機溶媒を混合しても良い。これらの有機溶媒の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0〜80%(v/v)であり、カオトロピックイオン、無機酸、有機酸、これらの塩等が析出しない程度で用いるのが好ましい。
【0076】
(4)アジ化ナトリウム、チモール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2フェノキシエタノール、プロピオン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム等の防腐剤を添加しても良い。
【0077】
(5)ヘモグロビンの安定剤として、公知の安定剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤、グルタチオン、アジ化ナトリウム等の還元剤・酸化防止剤等を添加しても良い。
【0078】
また、本発明の溶離液では、上記カオトロピックイオンを含有し、かつ酸解離定数(pKa)が、2.15〜6.39の範囲及び6.40〜10.50の範囲にある緩衝剤を含有する溶離液を用いるのが好ましい。
上記緩衝剤としては、酸解離定数(pKa)が、2.15〜6.39及び6.40〜10.50の範囲に存在するものが用いられる。すなわち、緩衝剤として、pKaを、2.15〜6.39及び6.40〜10.50の範囲に少なくとも一つずつもつ単一の物質を用いても良く、あるいは、2.15〜6.39の範囲に少なくとも一つのpKaをもつ物質と6.40〜10.50の範囲に少なくとも一つのpKaをもつ物質とを組み合わせて緩衝剤として用いても良い。また、上記緩衝剤を複数組み合わせて用いても良い。
【0079】
上記緩衝剤のpKaの範囲は、測定目的のピークを分離するのに適切な溶離液のpH付近において、より優れた緩衝能を発揮できるように、2.61〜6.39及び6.40〜10.50の範囲が好ましく、より好ましくは、2.80〜6.35及び6.80〜10.00の範囲である。さらに好ましくは、3.50〜6.25及び7.00〜9.50の範囲である。
【0080】
上記緩衝剤としては、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機物のほか、カルボン酸、ジカルボン酸、カルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸、アニリンまたはアニリン誘導体、アミノ酸、アミン類、イミダゾール類、アルコール類等の有機物が挙げられる。また、エチレンジアミン四酢酸、ピロリン酸、ピリジン、カコジル酸、グリセロールリン酸、2,4,6−コリジン、N−エチルモルホリン、モルホリン、4−アミノピリジン、アンモニア、エフェドリン、ヒドロキシプロリン、ペリジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、グリシルグリシン等の有機物でも良い。
【0081】
上記カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等が挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、フマル酸等が挙げられる。
【0082】
上記カルボン酸誘導体としては、例えば、β,β’−ジメチルグルタル酸、バルビツール酸、5,5−ジエチルバルビツール酸、γ−アミノ酪酸、ピルビン酸、フランカルボン酸、ε−アミノカプロン酸等が挙げられる。
上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、酒石酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0083】
上記アニリンまたはアニリン誘導体としては、例えば、アニリン、ジメチルアニリン等が挙げられる。
上記アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン、グリシン、α−アラニン、β−アラニン、ヒスチジン、セリン、ロイシン等が挙げられる。
【0084】
上記アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。上記イミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、5(4)−ヒドロキシイミダゾール、5(4)−メチルイミダゾール、2,5(4)−ジメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0085】
上記アルコール類としては、例えば、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0086】
また、上記緩衝剤としては、2−(N−モリホリノ)エタンスルホン酸(MES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン(Bistris)、N−(2−アセトアミド)イミドジ酢酸(ADA)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)−メチルアミノ)プロパン(Bistrispropane)、N−(アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、3−(N−モルフォリン)プロパンスルホン酸(MOPS)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−プロパンスルホン酸(HEPPS)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(Tricine)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン(Tris)、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、グリシルグリシン、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、グリシン、シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)等の一般にグッド(Good)の緩衝液といわれるものを組成する物質も使用できる。これらの物質のpKaを表1・2に示す(引用文献:堀尾武一・山下仁平 蛋白質・酵素の基礎実験法 南江堂 1985年)。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
溶離液中の上記緩衝剤濃度は、緩衝作用がある範囲であれば良く、好ましくは1〜1000mM、より好ましくは10〜500mMである。また、上記緩衝剤は、単独でも複数混合して用いても良く、例えば、有機物と無機物を混合して用いても良い。
【0090】
さらに、ベースライン変動をより小さくするために、上記測定目的のピークを分離するにあたって用いる溶離液は、緩衝剤の濃度も同一であるものを用いるのがより好ましい。
本発明で用いる複数の溶離液を、勾配溶出法、あるいは段階溶出法によって送液しても良い。
【0091】
本発明におけるヘモグロビン類とは、HbA1a、HbA1b、HbF、不安定型HbA1c、安定型HbA1c、AHb、CHb、HbA0、HbA2 、HbS、HbC等が挙げられる。
【0092】
HbA0よりも前に溶出するヘモグロビン類を分離するための溶離液のpHは、4.0未満であると、ヘモグロビン類が変性する可能性があり、6.8を超えるとヘモグロビンのプラス電荷が減少し、カチオン交換基に保持されにくくなり、分離能が低下するので4.0〜6.8が好ましく、4.5〜5.8がより好ましい。
【0093】
本発明においては、HbA0を溶出するためは、以下の方法がある。
(1)HbA0を溶出するための溶離液としては、カラムに流入する際のpHがヘモグロビンの等電点と等しいか、または等電点よりアルカリ側になる溶離液を用いる。上記溶離液は、 カオトロピックイオンを含有することがより好ましい。 このカオトロピックイオンとその濃度等については、前述の通りである。
(2)HbA0を溶出するための溶離液としては、塩濃度を200mM〜3000mMと高くして、溶離液のpHは、5.0〜9.0が好ましい。
(3)上記(1)と(2)を組み合わせた溶離液:塩濃度を200mM〜3000mMと高く。かつ、溶離液のpHは、カラムに流入する際のpHがヘモグロビンの等電点と等しいか、または等電点よりアルカリ側になる溶離液を用いる。
【0094】
ヘモグロビンはpHが等電点より酸性側からアルカリ側になると、総荷電がプラスからマイナスに変わるため、充填剤の陽イオン交換基との「電気的反発力によってHbA0成分を溶出」させることができる。
【0095】
なお、理化学辞典(第4版、1987年9月、岩波書店、久保亮五ら編集)、1178頁に記載されているように、ヘモグロビンの等電点はpH6.8〜7.0である。そのため、HbA0成分を溶出するために、カラムに流入する際の溶離液のpHを6.8以上にすることがより好ましい。
【0096】
この条件を満たすため、測定に用いる溶離液の内、少なくともひとつの溶離液のpHが6.8以上であることが必要である。本溶離液のpHは望ましくは7.0〜12.0であり、7.5〜11.0がより好ましく、更には8.0〜9.5が好ましい。溶離液のpHが6.8未満になるとHbA0成分の溶出が不十分となるため、上記塩濃度を高くしてHbA0成分の溶出を十分行うことができる。また、溶離液のpHは、用いる充填剤の分解が起こらない範囲に設定すれば良い。
【0097】
HbA0成分の溶出に好適に用いられる、pHが6.8以上で緩衝能をもつ溶離液としては、例えば、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸または、その塩;クエン酸等のヒドロキシカルボン酸、β、β−ジメチルグルタル酸等のカルボン酸誘導体、マレイン酸等のジカルボン酸、カコジル酸、等の有機酸または、その塩からなる緩衝液が挙げられる。その他、2−(N−モリホリノ)エタンスルホン酸(MES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−エタンスルホン酸(HEPES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス−(ヒドロキシメチル)メタン(Bistris)、Tris、ADA、PIPES、Bistrispropane、ACES、MOPS、BES、TES、HEPES、HEPPS、Tricine、Bicine、グリシルグリシン、TAPS、CAPS等の一般にグッド(Good)の緩衝液といわれるものも使用できる。また、BrittonとRobinsonの緩衝液;GTA緩衝液も使用できる。また、イミダゾール等のイミダゾール類;エチレンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;グリシン、β−アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン等のアミノ酸類;等の有機物も使用できる。
【0098】
また、無機酸;有機酸;無機酸または有機酸の塩;有機物は、複数混合して用いても良く、また、有機酸、無機酸及び有機物を混合しても良い。
【0099】
より効果的にHbA0成分を溶出するためには、上記溶離液にカオトロピックイオンを添加するのが好ましい。添加するカオトロピックイオンは前述の通りである。
添加するカオトロピックイオン濃度は、1〜3000mMで、好ましくは、10〜1000mM、更には、50〜500mMが好ましい。
【0100】
HbA0よりも前に溶出するヘモグロビン類の溶出に、pH4.0〜6.8の溶離液を1種類または、2種類以上用いることができる。安定型HbA1c等の測定対象ピークをシャープに溶出させるためには、溶離液を2種類以上用い、塩濃度勾配法やpH勾配法またはこの2つの組み合わせにより目的ピークをシャープに溶出することができる。
【0101】
本発明においては、HbA0よりも前に溶出するヘモグロビン類(HbA1a及びb、HbF、不安定型HbA1c、安定型HbA1c)の溶出には、少なくとも2種類以上の溶離液を用い、かつ、溶出力の最も弱い溶離液を先に流すこともできる。
【0102】
本発明のヘモグロビン類の測定方法では、好ましくは、溶離液を勾配溶出法または段階溶出法によって送液し、目的とするヘモグロビンピークを分離測定する場合、その途中において溶離液の溶出力を低下させることが望ましい場合がある。
【0103】
勾配溶出法は「グラジエント溶出」と呼ばれている。すなわち、複数台の送液ポンプを用い、溶出力が異なる複数の溶離液の送液比率を連続的に変化させて送液する。
【0104】
また、段階溶出法は「ステップワイズ溶出」と称されている。この方法では、1台の送液ポンプを、電磁弁等を介して複数の溶離液に連結する。そして、電磁弁を切り換えることにより、溶出力の低い溶離液から、溶出力の高い溶離液に切り換えて送液する。
【0105】
しかしながら、溶出される各成分の性質が類似していたり、短時間で溶出することが要求されている場合、従来の勾配溶出法や段階溶出法では、類似した性質の成分間でピークが重なり、分離度が低下するおそれがあった。
【0106】
これに対して、本発明では、勾配溶出法または段階溶出法によって溶離液を送液するに際し、その途中、すなわち勾配溶出法または段階溶出法により複数の溶離液を順に切り替えて送液していく途中において、分離対象のピークまたはピーク間の溶離タイミングを考慮して分離対象のピークまたはピーク間の分離状態が良くなるように、溶離液の溶出力を一旦低下させることもできる。具体的には、段階溶出法の場合、溶出力の弱い溶離液から溶出力の強い溶離液に切り替えて送液した後、溶出力の弱い溶離液に切り替え、しばらくしてから溶出力の強い溶離液に切り替えて送液する。
【0107】
カチオン交換LCにおいて、溶離液の溶出力を低下させるには、溶離液の塩濃度を下げる方法やpHを下げる方法、またはこの2つを組み合わせる方法が挙げられる。
【0108】
上記のように勾配溶出法または段階溶出法によって送液し、その途中において溶離液の溶出力を低下させる方法により、ヘモグロビン類を分離する場合をより具体的に説明する。
【0109】
ヘモグロビン類の分離には、カチオン交換充填剤が充填されたカラムを用い、溶離液を塩濃度20〜1000mM、pH4〜9の範囲で勾配溶出法または段階溶出法によって送液させ、その途中において溶離液の塩濃度を5〜500mM、pHを0.1〜3の範囲で下げることによって溶離液の溶出力を低下させて分離を行う。
【0110】
本発明の方法を段階溶出法によって行う場合の、装置の構成例を図1に示した。溶離液A,B,C,Dは、各々溶出力の異なる(例えば、塩濃度、pH、極性等において異なる)ものであり、電磁弁1によって設定時間に各溶離液に切り替えられるように構成されている。溶離液は、送液ポンプ2により、試料注入部3から導入された試料とともにカラム4に導かれ、各成分が検出器5により検出される。各ピークの面積、高さ等はインテグレータ6により算出される。
【0111】
安定型HbA1cの測定に悪影響を与える可能性のあるHbA2、HbS、HbC等のヘモグロビン成分を含む血液検体を測定する場合、HbA0成分(ピーク)として主にHbAを溶出させ、それより後にHbA2、HbS、HbC等を溶離させる測定方法を設定することがある。これにより、HbA0ピークからHbA以外のヘモグロビン成分を除けるため、より正確な安定型HbA1c(%)を算出できる。
【0112】
HbA2、HbS、HbC等を溶離させる測定方法を設定する場合、前述した少なくとも溶出力の異なる3種の溶離液を用いる方法における「HbA0を溶出するための溶離液」は、HbAを主成分とするHbA0ピークを溶出する溶離液を意味している。このとき、「HbA0を溶出するための溶離液」の後に、HbA2、HbS、HbC等を溶離するために、より溶出力の強い溶離液を送液することが必要となる。
【0113】
本発明の測定デバイスは、他の実験装置と比べて系が小型な為、内部環境の制御が容易であり、実験精度の向上が図れる。また、本発明の測定デバイス内で各種操作を実施するために、サンプルロスが少ない。このことにより生化学実験においてしばしば問題となる微小量検体の問題をクリアすることが可能であり、特にヘモグロビン類の分離測定に好適に用いることができる。
【0114】
本発明の測定デバイスに供する検体としてはヘモグロビン類を含有する血液が挙げられるが特に限定されない。前記ヘモグロビン類とは、ヘモグロビンA1a+b、ヘモグロビンF、ヘモグロビンA1c(安定型A1c)、ヘモグロビンA、ヘモグロビンA2、異常ヘモグロビン(ヘモグロビンS、ヘモグロビンC)、修飾ヘモグロビン(アセチル化ヘモグロビン、カルバミル化ヘモグロビン、不安定型ヘモグロビン)が挙げられる。
【0115】
「本発明の測定デバイスの周辺機器:HPLC測定システム」
本発明に使用されるLC装置は、公知のもので良く、例えば、送液ポンプ、試料注入装置(サンプラ)、カラム、検出器等から構成される。また、他の付属装置(カラム恒温槽や溶離液の脱気装置等)が適宜付加されても良い。
本発明の測定デバイスにおいて、更に、測定成分の高分離を達成するために、以下に示す極限の低デッドボリューム構造で、測定成分の拡散低減を実現したセミミクロ高速液体クロマトグラフィー(例えば、資生堂社製のNANOSPACE SI-2)各付属装置を適宜用いるのが好ましい。
(1)少量検体を拡散を極限まで低減し、注入精度が非常に良く、コンタミが無いオートサンプラ(例えば、資生堂社製のオートサンプラー3023)
(2)脈流・脈動を低減したポンプ(ダブルプランジャーポンプがより好ましい)
(例えば、資生堂社製のイナートポンプ3001)
(3)測定に用いる複数の溶離液のコンタミを最小減に低減できるロータリーバルブ
(4)セミミクロカラム対応で、光路長を長く保ち、拡散の少ないフローセルを装備した
UV-VIS検出器(例えば、資生堂社製のUV-VIS検出器3002)
(5)溶離液の脱気装置(例えば、資生堂社製の脱気装置3009/3010)
【0116】
上記測定法における、他の測定条件としては、公知の条件で良く、溶離液の流速は、好ましくは0.001〜5mL/分、より好ましくは0.005〜3mL/分である。ヘモグロビン類の検出は、415nmの可視光が好ましいが、特にこれのみに限定されるわけではない。測定試料は、通常、界面活性剤等溶血活性を有する物質を含む溶液により溶血された溶血液を希釈したものを用いる。試料注入量は、血液検体の希釈倍率により異なるが、好ましくは0.01〜100μL程度である。
【0117】
本発明の測定デバイスを用いたヘモグロビン類の測定方法においては、各工程の少なくとも一部が、自動化されることが好ましい。自動化可能な工程としては、例えば、血液検体と溶血希釈検体を混合し溶血希釈する工程、溶血希釈した検体の一定量をカラム部へ注入する工程、ヘモグロビン類の分離測定に用いる各溶離液を設定した測定シーケンスに従って切換送液する工程、各溶離液を送液ポンプにより設定された送液速度で送液する工程、プレフィルタを交換する工程、カラム部を交換する工程、ヘモグロビン類の分離測定結果よりテ゛ータ処理により各ヘモグロビン類の測定値を算出する工程、測定結果をクロマトグラムなどの形式でプリントアウトする工程などが挙げられる。
自動化は、各工程で使用する送液ポンプや吸引ポンプについて、送液の速度、容量、時間等を予めプログラミングしていれば、人為作業無しに、各工程を行うことができる。また、必要に応じてバルブを使用し、その運転をプログラムで制御してもよい。
【発明の効果】
【0118】
本発明のヘモグロビン類の測定用デバイスによれば、測定試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、測定試料中の成分を分離するためのカチオン交換基を有するカラム部、測定試料中の成分の吸光度検出を行うための検出部の群の内、少なくとも1つ、または、複数の部位が、適宜交換が可能なようにユニット形式に構成されているため、プレフィルタ部、カラム部及び検出部の使用検体数が異なる場合や故障が生じた部位の各ユニット部位を簡単に交換することできる。また、従来の同一基板にプレフィルタ部、カラム部及び検出部が搭載されたものに比べてより効率良くヘモグロビン類の測定ができるヘモグロビン類の測定用デバイス及びヘモグロビン類の測定方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0119】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0120】
(実施例1)
(1)測定検体の調製
健常人血をフッ化ナトリウム採血した全血検体から以下の試料を調製した。なお、溶血試薬として、0.1重量%ポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテル(トリトンX−100)(東京化成社製)を含有させたリン酸緩衝液溶液(pH7.0)を用いた。
a)糖負荷血:全血検体に500mg/dLのグルコース水溶液を添加し、37℃で2時間反応させ、次いで上記溶血試薬により溶血し、50倍に希釈して試料aとした。
b)AHb含有試料:全血検体10mLに、0.3重量%のアセトアルデヒドの生理食塩水溶液1mLを添加し、37℃で2時間反応させ、次いで上記溶血試薬により溶血し、50倍に希釈して試料cとした。
c)CHb含有試料:全血検体10mLに、0.3重量%のシアン酸ナトリウムの生理食塩水溶液1mLを添加し、37℃で2時間反応させ、次いで上記溶血試薬により溶血し、50倍に希釈して試料bとした。
【0121】
(2)測定デバイス及び分析システムの構築
図2に示した構造の測定デバイスをアクリル樹脂で作製し、このセル部を分光光度計に接続してヘモグロビン類の分析システムを構成した。また、図2に示した測定デバイス内の流路は全て幅200μm、深さ200μmである。
プレフィルタ部は検体イン側から「不織布+ろ紙+支持体」の構成で、不織布(旭化成社製:商品名「マイクロウェブ」、ろ紙(アドバンテック東洋社製、高純度ろ紙、No.5C)、支持体(アドバンテック東洋社製、メッシュシート、素材ポリエチレン)で、サイズは、幅3mm×深さ1mm×厚さ1mmとした。
また、セル部の幅200μm、深さ200μmで、長さは7mmである。
なお、カラム部は、幅1000μm、深さ330μm、長さ10mmである。以下に示した方法で作成された充填剤を圧入して充填した。また、検出装置として分光光度計(Ocean Optics社製、USB2000型)と光源(Ocean Optics社製、LS−1)を用いた。
【0122】
(充填剤の調製)
テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸150gの混合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2500mLに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で75℃に昇温し、8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。
【0123】
(3)(測定条件)
システム:送液ポンプ:イナートポンプ3001(資生堂社製)
オートサンプラ:オートサンプラー3023(資生堂社製)
検出器:分光光度計(Ocean Optics社製、USB2000型)
光源(Ocean Optics社製、LS−1)
溶離液:溶離液A:40mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH5.3)
溶離液C:50mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH5.3)
溶離液B:200mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH8.0)
なお、リン酸のpKaは表1に記載の通りである。測定開始より0〜30秒の間は溶離液Cを送液し、30秒〜40秒の間は溶離液Bを送液し、40秒〜60秒の間は溶離液Aを送液した。
流速:0.035mL/分
検出波長:415nm
試料注入量:2μL
【0124】
(測定結果)
上記測定条件により、試料を測定して得られたクロマトグラムを図12〜14に示す。図12は試料a、図13は試料b、図14は試料cを測定した結果である。ピーク1はHbA1a及びHbA1b、ピーク2はHbF、ピーク3は不安定型HbA1c、ピーク4は安定型HbA1c、ピーク5はHbA0、ピーク6はAHb、ピーク7はCHbを示す。
図12では、ピーク3および4が良好に分離されている。また、図13ではピーク6(AHb)、図14ではピーク7(CHb)がピーク4(安定型HbA1c)から良好に分離されている。
【0125】
(実施例2)
以下に示すユニット形式のカラムの作成以外は、実施例1と同じ。
PEEK性樹脂を加工して内径0.65mm×長10mmのカラムを作成し、実施例1の充填剤をHPLCホ゜ンフ゜を用いて、30MPaでスラリー充填した。充填したカラムをプレフィルタ(実施例1と同じ)及び検出セル(セル部の幅200μm、深さ200μmで、長さ7mm)をそれぞれ有する測定デバイスにネジ式(オス、メス)で組立て、溶離液の漏れがないように固定し、図3に示す本発明の実施例2のユニット形式の測定デバイスを作成した。
【0126】
(実施例3)
以下に示すユニット形式のプレフィルタ作成以外は、実施例2と同じ。
図9に示すように、PEEK樹脂を用いてプレフィルタ内蔵ネジを作成した。プレフィルタ内蔵ネジ(オス・メス:それぞれ150度テーパー付き)の流路は内径200μmで、フィルタ素材は、図10に示すステンレス繊維フィルタ(シリコーン処理)内径2mmを用いた。実施例3の測定デバイスを図4に示した。
【0127】
(実施例4)
以下に示すユニット形式カラムの作成以外は、実施例3と同じ。
図5に示すように、PEEK性樹脂を加工して内径0.65mm×長さ10mmのカラムを作成し、図5に示すアクリル樹脂からなる上ふた及び下ふたの間にはさみ、溶離液の漏れがないように、カラム、上ふた及び下ふたの間にテフロン(登録商標)樹脂をはさみ、UV硬化接着剤により接着して実施例4の測定デバイスを作成した。
実施例4の測定デバイスを図5に示した。
【0128】
(実施例5)
以下に示すシリンジタイプのポンプを用いた送液システム以外は、実施例3と同じ。
シリンジポンプとして、室町機械(株)のKDS250を用い、シリンジはテルモ社の10mLシリンジを溶離液ABCで用いた以外は、実施例1〜4と同じ。
上記実施例1〜5で作成した各測定デバイスを用いて、実施例1と同じ方法で各ヘモグロビン類の測定評価を行い、その結果を図12〜14に示した。
【0129】
(比較例1)
充填剤の調製
テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)400g及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸150gの混合物に過酸化ベンゾイル(和光純薬社製)1.5gを溶解した。これを4重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2500mLに分散させ、撹拌しながら窒素雰囲気下で75℃に昇温し、8時間重合した。重合後、洗浄し乾燥した後、分級して平均粒径6μmの粒子を得た。
【0130】
充填剤のカラムへの充填
得られた粒子をカラムに以下のようにして充填した。粒子0.7gを、50mMリン酸緩衝液(pH5.8)30mLに分散し、5分間超音波処理した後、よく撹拌した。全量をステンレス製の空カラム(内径4.6×35mm)を接続したパッカー(梅谷精機社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(サヌキ工業社製)を接続し、圧力30MPaで定圧充填した。
【0131】
ヘモグロビン類の測定
得られたカラムを用いて、以下の測定条件でヘモグロビン類の測定を行った。
(測定条件)
システム:送液ポンプ:イナートポンプ3001(資生堂社製)
オートサンプラ:オートサンプラー3023(資生堂社製)
検出器:UV-VIS検出器(資生堂社製)
溶離液:溶離液A:40mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH5.3)
溶離液C:50mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH5.3)
溶離液B:200mMの過塩素酸を含有する
50mMリン酸緩衝液(pH8.0)
なお、リン酸のpKaは表1に記載の通りである。測定開始より0〜30秒の間は溶離液Cを送液し、30秒〜40秒の間は溶離液Bを送液し、40秒〜60秒の間は溶離液Aを送液した。
流速:2.0mL/分
検出波長:415nm
試料注入量:2μL
【0132】
(測定試料)
測定試料は、実施例1と同様にして調製したものを使用した。
【0133】
(測定結果)
上記測定条件により、試料を測定して得られたクロマトグラムを図15〜17に示す。図15は試料a、図16は試料b、図17は試料cを測定した結果である。ピーク1はHbA1a及びHbA1b、ピーク2はHbF、ピーク3は不安定型HbA1c、ピーク4は安定型HbA1c、ピーク5はHbA0、ピーク6はAHb、ピーク7はCHbを示す。
図15では、ピーク3および4が良好に分離されている。また、図17ではピーク6(AHb)、図16ではピーク7(CHb)がピーク4から良好に分離されている。
【0134】
上記のように比較例1では、従来のカラム(内径4.6mm×長さ35mm)をセミミクロ対応HPLC測定システムに取り付けて安定型A1c分離を行った結果が、測定時間1分で図15〜17に示すように、各ヘモグロビン類のピークは実施例1〜5に比べてブロードで、修飾ヘモグロビン類の分離性能も実施例に比べて悪い結果であった。
【0135】
一方、実施例1〜5では、本発明の測定デバイスに設けられた微小なカラム部により安定型A1c分離を行った結果、測定時間1分にも関わらず、図12〜14に示すように、各ヘモグロビン類のピークは比較例1に比べて非常にシャープで、修飾ヘモグロビン類の分離性能も非常良好であった。測定時間1分であったが、各ヘモグロビン類のピークが非常にシャープであるため、更に、短時間測定が可能であることが明らかになった。
また、実施例1で用いた本発明の測定デバイス(サイズ:横10cm×縦10cm×幅3cm)には、カラム部、セル部が搭載されている。それ以外のポンプ、検体注入装置、検出器などを小型にすれば、現行HPLC測定システムより小型化が可能であり、設置場所も幅をとらず、しかも、持ち運びも十分可能であることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明によれば、光検出可能な成分、生体由来の測定成分、ヘモグロビン類を、迅速かつ簡便に、しかも精度良く分析することができる生体試料成分の測定デバイス、ヘモグロビン類の測定用デバイス及びヘモグロビン類の測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】従来のHPLC:ヘモグロビン類の測定用HPLC
【図2】実施例で作製した測定デバイスを示す模式図である。ユニット形式を図2に示す。
【図3】実施例で作製した測定デバイスを示す模式図である。ユニット形式を図3に示す。
【図4】実施例で作製した測定デバイスを示す模式図である。ユニット形式を図4に示す。
【図5】実施例で作製した測定デバイスを示す模式図である。ユニット形式を図5に示す。
【図6】実施例で作製した測定デバイスを示す模式図である。ユニット形式を図6に示す。
【図7】本発明のエア抜き構造を示す模式図である。
【図8】本発明のエア抜き構造を示す模式図である。
【図9】本発明のフィルタ形状及びプレフィルタ内蔵ネジの構造を示す模式図である。
【図10】本発明のフィルタ形状を示す模式図である。
【図11】本発明のフィルタ形状を示す模式図である。
【図12】本発明の実施例(健常人血)のクロマトグラムを示す。
【図13】本発明の実施例(アセチル化ヘモグロビン)のクロマトグラムを示す。
【図14】本発明の実施例(カルバミル化ヘモグロビン)のクロマトグラムを示す。
【図15】本発明の比較例(健常人血)のクロマトグラムを示す。
【図16】本発明の比較例(アセチル化ヘモグロビン)のクロマトグラムを示す。
【図17】本発明の比較例(カルバミル化ヘモグロビン)のクロマトグラムを示す。
【図18】本発明の測定デバイスのセル部の好ましい構造の1例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0138】
1 セル部
2 接続用流路
3 セル部と接続用流路との接続部
4 基板
5 廃液槽
6 廃液口(外部タンクと接続)
7 飛び出し流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定成分を含む被検体における前記被測定成分の測定を行う測定デバイスにおいて、検体試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、検体試料中の成分を分離するための分離部、測定試料中の成分の光検出を行うための検出部から構成されていることを特徴とする測定用デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の測定用デバイスにおいて、測定試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、測定試料中の成分を分離するためのカチオン交換基を有するカラム部、測定試料中の成分の吸光度検出を行うための検出部の群の内、少なくとも1つ、または、複数の部位が、ユニット形式に構成されていることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定用デバイスに、少なくともカラムの前流路にエア抜き構造が施されていることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定用デバイスにおいて、前記検出部のセル部が、直線状に形成された流路からなり、前記セル部を、吸光度測定用の光線の光軸が前記直線状に形成された流路の流れ方向になるように、かつ、前記直線状に形成された流路内への前記光線の入射角及び出射角が0°であるように吸光度測定装置に接続可能であることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定用測定デバイスにおいて、吸光度測定装置に接続し、検体のない状態で測定した吸光度測定波長における光線透過率が、同一の光路長及び吸光度測定波長で空気を測定した場合の光線透過率の50%以上であることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定用測定デバイスにおいて、セル部は、流入部及び/又は流出部において接続用流路とコの字状又はL字状に接続されていることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定用測定デバイスにおいて、プレフィルタ部、カラム部、セル部、流路部からなる群の内、一つまたは複数部位の表面が、生体成分吸着抑制の表面処理方法が施されていることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定方法において、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、バリウムイオン、セシウムイオン及びグアニジンイオンからなる群より選ばれる少なくとも一種であるカオトロピックイオンと0.001%〜0.1%アジ化物イオンを含有し、かつ、pH4.0〜6.8で緩衝能を持つ無機酸、有機酸及び/またはこれらの塩を含む基板に流す液と上記測定デバイスを用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。
【請求項1】
被測定成分を含む被検体における前記被測定成分の測定を行う測定デバイスにおいて、検体試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、検体試料中の成分を分離するための分離部、測定試料中の成分の光検出を行うための検出部から構成されていることを特徴とする測定用デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の測定用デバイスにおいて、測定試料中の異物を除去できるプレフィルタ部、測定試料中の成分を分離するためのカチオン交換基を有するカラム部、測定試料中の成分の吸光度検出を行うための検出部の群の内、少なくとも1つ、または、複数の部位が、ユニット形式に構成されていることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定用デバイスに、少なくともカラムの前流路にエア抜き構造が施されていることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定用デバイスにおいて、前記検出部のセル部が、直線状に形成された流路からなり、前記セル部を、吸光度測定用の光線の光軸が前記直線状に形成された流路の流れ方向になるように、かつ、前記直線状に形成された流路内への前記光線の入射角及び出射角が0°であるように吸光度測定装置に接続可能であることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定用測定デバイスにおいて、吸光度測定装置に接続し、検体のない状態で測定した吸光度測定波長における光線透過率が、同一の光路長及び吸光度測定波長で空気を測定した場合の光線透過率の50%以上であることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定用測定デバイスにおいて、セル部は、流入部及び/又は流出部において接続用流路とコの字状又はL字状に接続されていることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定用測定デバイスにおいて、プレフィルタ部、カラム部、セル部、流路部からなる群の内、一つまたは複数部位の表面が、生体成分吸着抑制の表面処理方法が施されていることを特徴とするヘモグロビン類の測定用デバイス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のヘモグロビン類の測定方法において、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオン、バリウムイオン、セシウムイオン及びグアニジンイオンからなる群より選ばれる少なくとも一種であるカオトロピックイオンと0.001%〜0.1%アジ化物イオンを含有し、かつ、pH4.0〜6.8で緩衝能を持つ無機酸、有機酸及び/またはこれらの塩を含む基板に流す液と上記測定デバイスを用いることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−189401(P2006−189401A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3127(P2005−3127)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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