説明

測定装置、及び測定方法

【課題】ロードセル等の測定器具を設けることなく、測定対象に与える荷重を測定できる測定装置を提供する。
【解決手段】測定装置は、リニアモータと、リニアモータを駆動してリニアモータが有する可動子を移動させることにより測定対象に荷重を与える駆動部と、前記可動子を相対移動させる際に前記リニアモータに流れる電流値と、前記リニアモータの推力定数とを乗じて前記可動子が前記測定対象に与える荷重を算出する荷重測定部とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータを用いて測定対象に加える荷重を測定する場合、アクチュエータと測定対象との間にロードセルなどの測定器具を設け、測定器具により荷重を測定することが行われている(特許文献1)。
例えば、直動案内装置の摺動抵抗を測定する場合も、同様に、ロードセルを用いて、摺動抵抗の測定が行われている。
【0003】
図24は、直動案内装置80のスライドブロック81が軌道レール82上を移動する際の摺動抵抗を測定する測定装置9の構成を示す概略ブロック図である。測定装置9は、アクチュエータとしてのリニアモータ91、リニアモータ91を制御するモータ制御部92、ロードセル93、増幅部94、レコーダ部95を備えている。
【0004】
モータ制御部92が、リニアモータ91を駆動して、リニアモータ91に備えられている可動子91aを動かしてスライドブロック81に荷重を与える。ロードセル93は、可動子91aと、スライドブロック81との間に設けられており、可動子91aがスライドブロック81に加える荷重に応じた信号を出力する。
【0005】
増幅部94は、ロードセル93が出力する信号を増幅してレコーダ部95に記憶させる。レコーダ部95は、増幅部94から入力される信号を記録する。ロードセル93は、与えられた荷重に応じた信号を出力するので、レコーダ部95に記録された信号に基づいて、直動案内装置80の摺動抵抗を算出することにより、摺動抵抗を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−124929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アクチュエータの可動子にロードセルなどを取り付けると、装置全体が大型化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、ロードセル等の測定器具を設けることなく、測定対象に与える荷重を測定できる測定装置、及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために、本発明は、リニアモータと、前記リニアモータを駆動して前記リニアモータが有する可動子を移動させることにより測定対象に荷重を与える駆動部と、前記可動子を相対移動させる際に前記リニアモータに流れる電流値と、前記リニアモータの推力定数とを乗じて前記可動子が前記測定対象に与える荷重を算出する荷重測定部とを具備することを特徴とする測定装置である。
【0010】
また、本発明は、リニアモータを駆動して該リニアモータが有する可動子を移動させることにより測定対象に荷重を与える制御ステップと、前記可動子を相対移動させる際に前記リニアモータに流れる電流値と、前記リニアモータの推力定数とを乗じて前記可動子が前記測定対象に与える荷重を算出する荷重測定ステップとを有することを特徴とする測定方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、測定器具を設けずとも、測定対象に与える荷重を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態における測定装置1の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態におけるリニアモータ11を示す斜視図(一部断面図)である。
【図3】同実施形態におけるコイルホルダに保持されたコイルユニットを示す斜視図である。
【図4】同実施形態におけるリニアモータ10のマグネット103とコイル104の位置関係を示す図である。
【図5】磁気センサの原理を示す斜視図である。
【図6】AMRセンサにおける磁界の方向と、抵抗値との関係を示すグラフである。
【図7】磁界強度が飽和感度以上の場合においても、磁界の方向を検出する磁気センサ112の強磁性薄膜金属の形状例を示す図である。
【図8】図7の磁気センサの等価回路(ハーフブリッジ)を示す図である。
【図9】磁界の方向を検出する磁気センサの強磁性薄膜金属の形状例を示す図である。
【図10】磁気センサ112と、ロッド101との位置関係を示す図である。
【図11】磁気センサ112の出力する信号例を示す図である。
【図12】二組のフルブリッジ構成を用いた磁気センサを示す図である。
【図13】図12の磁気センサが出力する信号を示すグラフである。
【図14】ロッド101と磁気センサ112との位置関係及び磁気センサ112が出力する信号を示す概念図である。
【図15】磁気センサ112が出力する余弦波信号と正弦波信号とにより描かれるリサージュ図形を示す図である。
【図16】エンドケース109に取り付けられる磁気センサ112を示す図である。
【図17】エンドケース109に取り付けられた軸受であるブッシュ108を示す図である。
【図18】同実施形態におけるモータ制御部20の構成を示す概略ブロック図である。
【図19】同実施形態における直動案内装置80の摺動抵抗を測定するときのリニアモータ10の動作を示す概略図である。
【図20】同実施形態におけるモータ制御部20の第1制御手順を示すフローチャートである。
【図21】同実施形態におけるロッド101を原点から移動開始させてから動作完了信号がオンになるまでにおける速度・電流・位置の対応を示すグラフである。
【図22】同実施形態における動作完了信号がオンになってからロッド101を原点に戻すまでにおける速度・電流・位置の対応を示すグラフである。
【図23】同実施形態におけるモータ制御部20の第2制御手順を示すフローチャートである。
【図24】直動案内装置80のスライドブロック81が軌道レール82上を移動する際の摺動抵抗を測定する測定装置9の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における測定装置、及び測定方法を説明する。
図1は、本実施形態における測定装置1の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、測定装置1は、ロッドタイプのリニアモータ10と、リニアモータ10を制御するモータ制御部20とを具備している。
以下、直動案内装置80のスライドブロック81が軌道レール82上を移動する際の摺動抵抗を測定する場合を例にして測定装置1を説明する。測定装置1は、リニアモータ10の可動子であるロッド101の一端を、測定対象である直動案内装置80のスライドブロック81に接触させて荷重を与えることにより、直動案内装置80の摺動抵抗を測定する。
【0014】
図2は、本実施形態におけるリニアモータ10の斜視図(一部断面図)である。このリニアモータ10は、コイル収容ケース102に対してロッド101が軸線方向に移動するロッドタイプリニアモータである。
【0015】
コイル収容ケース102内には、複数のコイル104が積層(配列)される。コイル収容ケース102の両端面それぞれには、エンドケース109が取り付けられる。エンドケース109には、ロッド101の直線運動を案内するための軸受であるブッシュ108が取り付けられる。
なお、2つのエンドケース109のうちいずれか一方に、ロッド101が生じさせる磁界を検出する磁気センサ112が設けられている。
【0016】
ロッド101は、例えばステンレス等の非磁性材からなり、パイプのように中空の空間を有する。ロッド101の中空空間には、円柱状の複数のマグネット103(セグメント磁石)が互いに同極が対向するように積層される。すなわちN極とN極が、S極とS極とが対向するように積層される。マグネット103の間には、例えば鉄等の磁性体からなるポールシュー107(磁極ブロック)が介在される。ロッド101は、積層されたコイル104内を貫通するとともに、コイル収容ケース102に軸線方向に移動可能に支持されている。
【0017】
図3は、本実施形態におけるコイルホルダ105に保持されたコイルユニットを示す斜視図である。同図に示されるように、コイル104は銅線を螺旋状に巻いたもので、コイルホルダ105に保持されている。すなわち、複数のコイル104は、ロッド101のマグネット103が配列されている方向を中心として、ロッド101の外周に沿って銅線が巻かれたものであり、各コイル104がマグネット103の配列されている方向と同じ方向に配列されている。
隣接するコイル104を絶縁させる必要があるので、コイル104間にはリング状の樹脂製スペーサ105aが介在される。コイルホルダ105上にはプリント基板106が設けられる。コイル104の巻線の端部104aは、プリント基板106に結線される。
【0018】
本実施形態では、コイル104及びコイルホルダ105を金型にセットし、溶融した樹脂又は特殊セラミックスを金型内に注入するインサート成形によって、コイル収容ケース102をコイル104と一体に成形する。図2に示されるように、コイル収容ケース102には、コイル104の放熱性を高めるためにフィン102aが複数形成される。なお、コイルホルダ105に保持されたコイル104をアルミ製のコイル収容ケース102に収納し、コイル104とコイル収容ケース102との間のすきまを接着剤で埋めて、コイル104及びコイルホルダ105をコイル収容ケース102に固定してもよい。
【0019】
図4は、本実施形態におけるリニアモータ10のマグネット103とコイル104の位置関係を示す図である。ロッド101内の中空空間には、円盤状の複数のマグネット103(セグメント磁石)が互いに同極が対向するように配列される。コイル104は3つでU・V・W相からなる一組の三相コイルとなる。一組の三相コイルを複数組み合わせて、コイルユニットが構成される。U・V・W相の三相に分けた複数のコイル104に120°ずつ位相が異なる三相電流を流すと、コイル104の軸線方向に移動する移動磁界が発生する。ロッド101は、移動磁界により推力を得て、移動磁界の速さに同期してコイル104に対して相対的に直線運動を行う。
【0020】
図2に示されるように、磁気センサ収容ケースであるエンドケース109の一方には、ロッド101の位置を検出するための磁気センサ112が取り付けられる。磁気センサ112は、ロッド101から所定のすきまを開けて配置され、ロッド101の直線運動によって生ずるロッド101の磁界の方向(磁気ベクトルの方向)の変化を検出する。
【0021】
図5に示されるように、磁気センサ112は、Si若しくはガラス基板121と、その上に形成されたNi,Feなどの強磁性金属を主成分とする合金の強磁性薄膜金属で構成される磁気抵抗素子122を有する。磁気センサ112は、特定の磁界方向で抵抗値が変化するためにAMR(Anisotropic-Magnetro-Resistance)センサ(異方性磁気抵抗素子)と呼ばれる(参考文献:「垂直タイプMRセンサ技術資料」、[online]、2005年10月1日、浜松光電株式会社、「2010年8月25日検索」、インターネット<URL;http://www.hkd.co.jp/technique/img/amr-note1.pdf>)。
【0022】
図6は、AMRセンサにおける磁界の方向と、抵抗値との関係を示すグラフである。
磁気抵抗素子122に電流を流し、抵抗変化量が飽和する磁界強度を印加し、その磁界(H)の方向を電流方向Yに対して角度変化θを与えたとする。このとき、図6に示されるように、抵抗変化量(△R)は、電流方向と磁界の方向が垂直(θ=90°,270°)のときに最大となり、電流方向と磁界の方向が平行(θ=0°,180°)のときに最小となる。抵抗値Rは、電流方向と磁界方向の角度成分に応じて、下記の式(1)のように変化する。
なお、磁界強度が飽和感度以上であれば、△Rは定数になり、抵抗値Rは磁界の強度には影響されなくなる。
【0023】
R=R0−△Rsin2θ…(1)
R0:無磁界中の強磁性薄膜金属の抵抗値
△R:抵抗変化量
θ:磁界方向を示す角度
【0024】
図7は、磁界強度が飽和感度以上の場合においても、磁界の方向を検出する磁気センサ112の強磁性薄膜金属の形状例を示す図である。同図に示すように、縦方向に形成された強磁性薄膜金属エレメント(R1)と、横方向のエレメント(R2)が直列に結線した形状になる。
エレメント(R1)に対して最も大きな抵抗変化を促す垂直方向の磁界は、エレメント(R2)に対し最小の抵抗変化となる。抵抗値R1とR2は次式(2)、(3)で与えられる。
【0025】
R1=R0−△Rsin2θ…(2)
R2=R0−△Rcos2θ…(3)
【0026】
図8は、磁気センサの等価回路(ハーフブリッジ)を示す図である。この等価回路の出力Voutは次式(4)で与えられる。
【0027】
Vout=R1・Vcc/(R1+R2)…(4)
【0028】
式(4)に式(2)、(3)を代入し、整理すると、次式(5−1)、(5−2)が得られる。
【0029】
Vout=Vcc/2+αcos2θ …(5−1)
α=△R・Vcc/2(2R0−△R) …(5−2)
【0030】
図9は、磁界の方向を検出する磁気センサの強磁性薄膜金属の形状例を示す図である。
同図に示すように、強磁性薄膜金属の形状を形成すれば、二つの出力Vout+とVout−を用いて中点電位の安定性の向上と増幅を行うことが可能になる。
【0031】
ロッド101が直線運動するときの磁界方向の変化と磁気センサ112の出力について説明する。
図10は、磁気センサ112と、ロッド101との位置関係を示す図である。同図に示すように、磁気センサ112を、飽和感度以上の磁界強度が印加されるギャップlの位置に、かつ磁界の方向変化がセンサ面に寄与するように配置する。
このとき、磁気センサ112がロッド101に沿って位置A〜Eの距離λを相対的に移動した場合、磁気センサ112の出力は、次のようになる。
【0032】
図11は、磁気センサ112の出力する信号例を示す図である。同図に示すように、ロッド101が距離λを直線移動したとき、センサ面では磁界の方向が1回転となる。このときに電圧の信号は、1周期の正弦波信号になる。より正確にいえば、式(5−1)により表される電圧Voutは、2周期分の正弦波信号となる。しかし、磁気センサ112のエレメントの延伸方向に対して45°にバイアス磁界を掛けるならば、周期が半減し、ロッド101がλを直線移動したときに1周期の出力波形が得られる。
【0033】
運動の方向を知るためには、図12に示されるように、二組のフルブリッジ構成のエレメントを、互いに45°傾くように一つの基板上に形成すればよい。二組のフルブリッジ回路によって得られた出力VoutAとVoutBは、図13に示されるように、互いに90°の位相差を持つ余弦波信号及び正弦波信号となる。
【0034】
本実施形態においては、図12に示される二組のフルブリッジ構成のエレメントを互いに45°傾くように一つの基板上に形成された磁気センサ112が、ロッド101の磁界の方向の変化を検出するので、たとえ図14に示されるように、磁気センサ112の取付け位置が(1)から(2)にずれたとしても、磁気センサ112が出力する正弦波信号及び余弦波信号(出力VoutA及びVoutB)には変化が少ない。
【0035】
図15は、磁気センサ112の出力VoutAとVoutBにより描かれるリサージュ図形を示す図である。磁気センサ112の出力の変化が少ないので、図15に示される円の大きさが変化しにくくなる。このため、磁気ベクトル24の方向θを正確に検出することができる。ロッド101と磁気センサ112との間のギャップlを高精度に管理しなくても、ロッド101の正確な位置を検出できるので、磁気センサ112の取付け調整が容易になる。それだけでなく、ブッシュ108によって案内されるロッド101にがたを持たせることも可能になるし、ロッド101の多少の曲がりを許容することも可能になる。
【0036】
図16は、エンドケース109に取り付けられる磁気センサ112を示す図である。エンドケース109には、磁気センサ112を収容するための空間からなる磁気センサ収容部126が設けられている。
磁気センサ収容部126内に磁気センサ112を配置した後、磁気センサ112の周囲を充填材127で埋める。これにより、磁気センサ112がエンドケース109に固定される。磁気センサ112は温度特性を持ち、温度の変化によって出力が変化する。コイル104から受ける熱の影響を低減するため、エンドケース109及び充填材127には、コイル収容ケース102よりも熱伝導率の低い材料が使用される。例えば、コイル収容ケース102にはエポキシ系の樹脂が使用され、エンドケース109及び充填材127には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用される。
【0037】
図17は、エンドケース109に取り付けられた軸受であるブッシュ108を示す図である。エンドケース109に軸受機能を持たせることで、ロッド101と磁気センサ112との間のギャップが変動するのを防止することができる。
【0038】
図18は、本実施形態におけるモータ制御部20の構成を示す概略ブロック図である。
同図に示すように、モータ制御部20は、荷重測定部21と、駆動部22とを備えている。荷重測定部21は、リニアモータ10に流れる電流の電流値と、リニアモータ10の推力定数とを乗じてリニアモータ10がロッド101を通じてスライドブロック81(測定対象)に与える荷重値を算出する荷重算出部211と、荷重算出部211が算出した荷重値を記憶する荷重記憶部212とを有している。
【0039】
駆動部22は、位置制御部221、スイッチ部222、速度制御部223、スイッチ部224、電流制御部225、電力変換器226、変流器(Current Transformer;CT)227、速度算出部228、位置算出部229、位置判定部230を有している。
【0040】
位置制御部221は、外部より入力される位置指令と、位置算出部229が算出するリニアモータ10に備えられているロッド101の位置を示す位置情報とに基づいて、速度指令を算出する。また、位置制御部221は、第1〜第4速度(FL1SPD〜FL4SPD)を予め記憶しており、当該第1〜第4速度に基づいた4つ速度指令(第1速度指令〜第4速度指令)を出力する。
【0041】
第1速度指令は、ロッド101が予め定められた原点から、ロッド101の両端のうち測定対象に近い一端が、直動案内装置80のスライドブロック81の近傍(位置FL2POS)まで移動するときのロッド101が移動する速度を示す指令である。このとき、ロッド101を移動させる速度の上限値は、第1速度(FL1SPD)として予め定められている。
第2速度指令は、ロッド101が測定対象に接触し、測定対象に荷重を与えるときのロッド101が移動する速度を示す指令である。このとき、ロッド101を移動させる速度は、第2速度(FL2SPD)として予め定められている。第2速度(FL2SPD)は、第1速度(FL1SPD)より遅い速度であり、ロッド101がスライドブロック81に接触する際に不要な衝撃を発生させない速度以下に設定される。
【0042】
ここで、スライドブロック81(測定対象)の近傍(位置FL2POS)とは、ロッド101の一端がスライドブロック81に接触したときに、ロッド101の移動速度が上記の第2速度になるように減速を開始する位置である。また、位置FL2POSは、スライドブロック81と接触する位置と、第1速度指令(FL1SPD)と、第2速度指令(FL2SPD)と、リニアモータ10の特性とに基づいて、予め定められる位置である。
【0043】
第3速度指令は、スライドブロック81に荷重を与えた後に、ロッド101を原点方向に移動させるときの速度を示す指令である。このとき、ロッド101を移動させる速度は、第3速度(FL3SPD)として予め定められている。
第4速度指令は、測定対象に荷重を与えた後に、ロッド101を原点方向に移動させている際に、予め定めた速度切替位置(FL3POS)に達した後のロッド101を原点方向に移動させるときの速度を示す指令である。このとき、ロッド101を移動させる速度の上限値は、第4速度(FL4SPD)として予め定められている。また、第4速度(FL4SPD)は、第3速度(FL3SPD)より速い速度が設定される。
【0044】
スイッチ部222は、位置判定部230の制御に基づいて、位置制御部221が出力する4つの速度指令のうちいずれか一つを選択する。
速度制御部223には、スイッチ部222が選択した速度指令と、速度算出部228が算出するリニアモータ10に備えられているロッド101の速度を示す速度情報とが入力される。速度制御部223は、速度指令が示す速度と、速度情報が示す速度との偏差に基づいて、ロッド101が移動する速度を速度指令の速度にする電流値を算出する。
【0045】
また、速度制御部223は、算出した電流値を非制限電流指令として出力するとともに、予め定められている電流制限値(FL2I)を上限値にした電流指令である制限電流指令を出力する。算出された電流値が、電流制限値(FL2I)以下の場合、非制限電流指令と、制限電流指令とは、同じ電流値を示す。一方、算出された電流値が、電流制限値(FL2I)より大きい場合、非制限電流指令は算出された電流値を示し、制限電流指令は電流制限値(FL2I)を示す。
【0046】
スイッチ部224は、位置判定部230の制御に基づいて、速度制御部223が出力する制限電流指令と、非制限電流指令とのうちいずれか一方を選択する。電流制御部225は、スイッチ部224が選択した電流指令と、変流器227が測定したリニアモータ10に流れている電流値とに基づいて電圧指令を算出する。
電力変換器226は、電流制御部225が算出した電圧指令に応じた電圧をリニアモータ10に供給する。変流器227は、電力変換器226とリニアモータ10とを接続している電力線に取り付けられている。また、変流器227は、当該電力線に流れている電流値を測定し、荷重測定部21に備えられている荷重算出部211と、電流制御部225と、完了信号生成部231とに測定した電流値を出力する。
【0047】
速度算出部228は、リニアモータ10に取り付けられている磁気センサ112から出力される正弦波信号及び余弦波信号(出力VoutA及びVoutB)の変化量に基づいて、リニアモータ10に備えられているロッド101の移動速度を算出する。
位置算出部229は、磁気センサ112から出力される正弦波信号及び余弦波信号(出力VoutA及びVoutB)の変化量に基づいてロッド101の原点からの移動量を算出して、ロッド101の位置を示す位置情報を出力する。
【0048】
位置判定部230は、外部より入力される位置指令及び動作開始信号と、位置算出部229が出力するロッド101の位置を示す位置情報とに基づいて、位置制御部221が出力する4つの速度指令からいずれか一つをスイッチ部222に選択させる制御をする。また、位置判定部230は、位置指令及び動作開始信号と、位置情報とに基づいて、速度制御部223が出力する2つの電流指令のうちいずれか一方をスイッチ部224に選択させる制御をする。
完了信号生成部231は、リニアモータ10がスライドブロック81に荷重を与えているときに、変流器227が測定した電流値が予め定められた電流制限値(FL2I)に到達すると、動作完了信号(UO2)を外部に出力する。
【0049】
次に、直動案内装置80の摺動抵抗を測定するときのリニアモータ10の動作について説明する。
図19は、直動案内装置80の摺動抵抗を測定するときのリニアモータ10の動作を示す概略図である。ここで、ロッド101がスライドブロック81に近づく方向をCW方向(図面において右方向)とし、ロッド101がスライドブロック81から遠ざかる方向をCCW方向(図面において左方向)としている。ここでは、直動案内装置80の可動範囲のすべてに亘って摺動抵抗を測定し、摺動抵抗のばらつきを測定する場合について説明する。
【0050】
測定の開始ときにおいて、図19(a)に示すように、ロッド101の直動案内装置80側の一端の位置は、原点にある。動作開始信号が入力され、測定動作を開始すると、ロッド101は、第1速度指令にて、原点から動作目標位置に向かって(CW方向に)移動し始める。そして、ロッド101の一端がスライドブロック81の近傍に達すると、ロッド101は、第2速度指令の速度まで減速し、図19(b)に示すように、スライドブロック81に接触して荷重を与えつつ、スライドブロック81を第2速度(FL2SPD)で移動させる。
【0051】
その後、図19(c)に示すように、直動案内装置80のスライドブロック81が可動範囲の端に達してロッド101が動かなくなり、リニアモータ10に流れる電流の電流値が電流制限値(FL2I)に到達すると、モータ制御部20から動作完了信号が出力される。
上述の一連の動作において、荷重算出部211は、電流値に基づいて荷重値を算出し、算出した荷重値を荷重記憶部212に記憶させる。
【0052】
図20は、本実施形態におけるモータ制御部20の制御手順を示すフローチャートである。
モータ制御部20において制御が開始されると、位置判定部230は、動作開始信号(UI2)がオンになっているか否かを判定し(ステップS101)、動作開始信号がオンになるまで待機する(ステップS101:NO)。
ステップS101において、動作開始信号がオンになると(ステップS101:YES)、位置判定部230は、第3速度指令又は第4速度指令をスイッチ部222に選択させて、リニアモータ10に原点復帰の動作をさせる(ステップS102)。
【0053】
続いて、位置制御部221は、動作目標位置を示す位置指令に応じて第1速度指令を算出し、位置判定部230は、第1速度指令をスイッチ部222に選択させるとともに、スイッチ部224に非制限電流指令を選択させ(ステップS103)、リニアモータ10のロッド101を直動案内装置80のスライドブロック81に向けて(CW方向に)移動を開始させる(ステップS104)。
位置判定部230は、ロッド101が、位置FL2POSに達しているか否かを判定し(ステップS105)、ロッド101が位置FL2POSに達するまで第1速度指令にてリニアモータ10を駆動させる(ステップS105:NO)。
【0054】
ステップS105において、ロッド101が位置FL2POSに達すると(ステップS105:YES)、位置判定部230は、スイッチ部222に第2速度指令を選択させるとともに、スイッチ部224に制限電流指令を選択させる(ステップS106)。このとき、位置判定部230は、ロッド101が位置FL2POSに達したことを示す信号を荷重算出部211に出力して、荷重算出部211に荷重の算出を開始させる。
完了信号生成部231は、変流器227が測定する電流値が電流制限値(FL2I)以上か否かを判定し(ステップS107)、電流値が電流制限値(FL2I)に到達するまで待機する(ステップS107:NO)。
【0055】
ステップS107において、変流器227が測定する電流値が電流制限値(FL2I)に到達したと判定されると(ステップS107:YES)、完了信号生成部231は、動作完了信号をオンにして外部に出力する(ステップS108)。
位置判定部230は、動作開始信号がオフになっているか否かを判定し(ステップS109)、動作開始信号がオフになるまで待機する(ステップS109:NO)。
【0056】
ステップS109において、動作開始信号がオフになっていると判定されると(ステップS109:YES)、位置制御部221は、原点を移動先とする位置指令に応じて速度指令を算出し、位置判定部230は、第3速度指令をスイッチ部222に選択させるとともに、スイッチ部224に非制限電流指令を選択させ(ステップS110)、ロッド101を原点に向かって(CCW方向に)移動を開始させる(ステップ111)。
位置判定部230は、ロッド101の一端が速度切替位置(FL3POS)に達しているか否かを判定し(ステップS112)、ロッド101の一端が速度切替位置(FL3POS)に達するまで待機する(ステップS112:NO)。
【0057】
ステップS112において、位置判定部230は、ロッド101が速度切替位置(FL3POS)に達したと判定すると(ステップS112:YES)、第4速度指令をスイッチ部222に選択させる(ステップS113)。このとき、位置判定部230は、ロッド101が位置FL3POSに達したことを示す信号を荷重算出部211に出力して、荷重算出部211に荷重の算出を終了させる。
次に、位置判定部230は、ロッド101の一端が原点に達したか否かを判定し(ステップS114)、ロッド101の一端が原点に達するまで待機する(ステップS114:NO)。
【0058】
ステップS114において、位置判定部230は、ロッド101の一端が原点に達したと判定すると(ステップS114:YES)、ロッド101の一端が原点に達したこと示す信号を完了信号生成部231に出力し、完了信号生成部231が動作完了信号をオフにして(ステップS115)、制御の処理を終了する。
【0059】
次に、ロッド101が移動する速度、リニアモータ10に流れる電流、ロッド101の位置を対応させて、モータ制御部20の処理を説明する。
図21は、ロッド101を原点から移動開始させてから動作完了信号がオンになるまでにおける速度・電流・位置の対応を示すグラフである。図21(a)〜(d)の各グラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はそれぞれ速度、電流値、位置、出力レベルを示す。
【0060】
動作開始信号がオンになり、原点復帰(ステップS101、S102)が行われた後、時刻t1において、モータ制御部20がステップS103の処理を行うことにより、ロッド101が直動案内装置80のスライドブロック81に向かって移動し始める(ステップS104)。
時刻t2において、ロッド101の速度が第1速度(FL1SPD)になり、移動し続ける。
時刻t3において、ロッド101の一端が位置FL2POSに達すると(ステップS105:YES)、モータ制御部20は、ステップS106の処理を行い、ロッド101の速度を第2速度(FL2SPD)まで減速させる。
【0061】
時刻t4において、ロッド101の一端がスライドブロック81に接触して、第2速度(FL2SPD)で移動しつつ、スライドブロック81に荷重を与えてスライドブロック81を移動させる。
時刻t5において、スライドブロック81が可動範囲の端に達して、ロッド101が停止すると、リニアモータ10に流れる電流が増加して電流制限値(FL2I)に達し(ステップS107:YES)、モータ制御部20がステップS108の処理を行うことにより、動作完了信号がオン状態となる。
【0062】
続いて、ロッド101を原点に戻すまでのモータ制御部20の処理を説明する。
図22は、動作完了信号がオンになってからロッド101を原点に戻すまでにおける速度・電流・位置の対応を示すグラフである。図22(a)〜(d)の各グラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はそれぞれ速度、電流値、位置、出力レベルを示す。
【0063】
時刻t11において、外部の装置(不図示)が、動作完了信号がオンになったことに応じて動作開始信号をオフにするとともに、原点を移動先とする位置指令を設定すると(ステップS109:YES)、モータ制御部20は、ステップS110の処理を行うことにより、ロッド101を第3速度(FL3SPD)で原点に向かって(CCW方向に)移動させる(ステップS111)。
時刻t12において、ロッド101の一端が速度切替位置(FL3POS)に達すると(ステップS112:YES)、モータ制御部20は、ステップS113の処理を行うことにより、位置制御部221が第4速度指令を算出してロッド101の速度を第4速度(FL4SPD)まで加速させる。
時刻t13において、ロッド101が移動する速度が、第4速度(FL4SPD)になる。
時刻t14において、モータ制御部20は、ロッド101の速度を減速させ、時刻t14において、ロッド101を原点に停止させ、動作完了信号をオフ状態にする(ステップS114、S115)。
【0064】
ここで、図20において示したモータ制御部20の制御手順と異なる制御手順について説明する。図23は、本実施形態におけるモータ制御部20の他の制御手順を示すフローチャートである。図23に示す制御手順において、ステップS201からステップS204までの処理は、図20に示した制御手順におけるステップS101からステップS104までの処理と同じであるので、その説明を省略する。
【0065】
位置判定部230は、ロッド101が位置FL2POSに達しているか否かを判定し(ステップS205)、ロッド101が位置FL2POSに達している場合(ステップS205:YES)、スイッチ部222に第2速度指令を選択させるとともに、スイッチ部224に制限電流指令を選択させる(ステップS206)。
このとき、位置判定部230は、ロッド101が位置FL2POSに達したことを示す信号を荷重算出部211に出力して、荷重算出部211に荷重の算出を開始させる。
【0066】
完了信号生成部231は、変流器227が測定する電流値が電流制限値(FL2I)以上か否かを判定し(ステップS207)、電流値が電流制限値(FL2I)に到達するまで待機する(ステップS207:NO)。
ステップS207において、変流器227が測定する電流値が電流制限値(FL2I)に到達したと判定されると(ステップS207:YES)、完了信号生成部231は、動作完了信号をオンにして外部に出力し(ステップS208)、処理をステップS210に進める。
【0067】
ステップS205において、ロッド101が位置FL2POSに達していない場合(ステップS205:NO)、位置判定部230は、スイッチ部222に第1速度指令を選択させ続けるとともに、スイッチ部224に非制限電流指令を選択させ続け(ステップS209)、処理をステップS210に進める。
位置判定部230は、動作開始信号がオフになっているか否かを判定し(ステップS210)、動作開始信号がオフになっていないと判定された場合(ステップS210:NO)、処理をステップS205に戻し、ステップS205からステップS210までの処理を繰り返して行う。
一方、動作開始信号がオフになっていると判定されると(ステップS210:YES)、位置制御部221は、原点を移動先とする位置指令に応じて速度指令を算出する。また、位置判定部230は、第3速度指令をスイッチ部222に選択させるとともに、スイッチ部224に非制限電流指令を選択させ(ステップS211)、ロッド101を原点に向かって(CCW方向に)移動させる(ステップS212)。
【0068】
位置判定部230は、ロッド101の一端が速度切替位置(FL3POS)に達しているか否かを判定し(ステップS213)、ロッド101の一端が速度切替位置(FL3POS)に達するまで待機する(ステップS213:NO)。
位置判定部230は、ロッド101の一端が速度切替位置(FL3POS)に達していると判定すると(ステップS213:YES)、第4速度指令をスイッチ部222に選択させる(ステップS214)。このとき、位置判定部230は、ロッド101が位置FL3POSに達したことを示す信号を荷重算出部211に出力して、荷重算出部211に荷重の算出を終了させる。
【0069】
次に、位置判定部230は、ロッド101の一端が原点に達したか否かを判定し(ステップS215)、ロッド101の一端が原点に達するまで待機する(ステップS215:NO)。
位置判定部230は、ロッド101の一端が原点に達したと判定すると(ステプS215:YES)、ロッド101の一端が原点に達したことを示す信号を完了信号生成部231に出力し、完了信号生成部231が動作完了信号をオフにして(ステップS216)、制御の処理を終了する。
【0070】
上述のように、本実施形態の測定装置1は、互いに同極が対向するように配列されている複数のマグネット103を有するロッド101(可動子)と、ロッド101を囲む複数のコイル104を有するコイル収容ケース102(固定子)とを備え、複数のマグネット103の磁界と、複数のコイル104に電流を流すことによって生じる磁界とにより、コイル収容ケース102とロッド101とをマグネット103の配列方向に相対移動させるリニアモータ10と、ロッド101を相対移動させてスライドブロック81(測定対象)に荷重を与える制御をするモータ制御部20とを具備している。モータ制御部20は、変流器227がリニアモータ10に流れる電流を測定し、測定した電流値に基づいて、荷重算出部211がリニアモータ10によりスライドブロック81(測定対象)に与える荷重(摺動抵抗)を算出するようにした。
これにより、測定装置1は、ロードセル等の測定器具を設けることなく、スライドブロック81(測定対象)に与える荷重(摺動抵抗)を測定することができる。
【0071】
また、本実施形態の測定装置1は、モータ制御部20が、直動案内装置80のスライドブロック81にロッド101を接触させるまで第1速度(FL1SPD)にてロッド101を駆動させた後に、第1速度(FL1SPD)より遅い第2速度(FL2SPD)にてスライドブロック81に荷重を与える。このとき、モータ制御部20に備えられている荷重測定部21がリニアモータ10に流れる電流から荷重を算出して、摺動抵抗を測定する。
すなわち、測定装置1において、位置制御部221がロッド101と測定対象とが接触していない場合における非接触時速度指令(第1速度指令、及び第4速度指令)と、ロッド101と測定対象とが接触している場合における接触時速度指令(第2速度指令、及び第3速度指令)であって非接触時速度指令より遅い速度を示す接触時速度指令とを出力する。そして、位置判定部230がロッド101の位置に応じて非接触時速度指令と接触時速度指令とのいずれか一方を、ロッド101の一端が予め定めた領域(位置FL2POS/FL3POSより原点から遠い領域)にあるか否かに基づいて選択してリニアモータ10を制御する。
このように、スライドブロック81に荷重を与える際の接触時速度指令は、非接触時速度指令が示す速度(第1速度(FL1SPD)、第4速度(FL4SPD))より遅い速度(第2速度(FL2SPD)、第3速度(FL3SPD))を示すことにより、スライドブロック81に与える荷重の変化を緩やかにするので、リニアモータ10に流れる電流の変化を小さくすることができ、荷重の測定を安定して行うことができる。その結果、測定誤差の発生を抑制して、測定精度を向上させることができる。また、ロッド101をスライドブロック81に接触させる際に不要な衝撃が発生することを防ぐことができる。
【0072】
また、スライドブロック81に荷重を与える際、電流制御部225に入力する電流指令が示す電流値を電流制限値(FL2I)以下にすることにより、スライドブロック81が可動範囲の端に達したことを検出することができるとともに、ロッド101の移動できなくなったときにリニアモータ10に流れる電流が急激に増加することを防ぐことができる。これにより、リニアモータ10のコイル104に過電流が流れることを防ぎ、リニアモータ10の劣化を防ぐことができる。
【0073】
また、測定装置1は、ロッド101をスライドブロック81に接触するまで移動させる際に、荷重を測定する際の移動速度より速い速度でロッド101を移動させるので、ロッド101を移動させる時間を短くすることができ、測定に要する時間を短縮することができる。
【0074】
測定装置1は、リニアモータ10と、リニアモータ10を制御するモータ制御部20とを具備するのみで荷重の測定ができるので、測定器具を設ける場合に比べて、装置を小さくすることができるとともに、装置のコストを抑えることができる。
また、リニアモータ10の可動子であるロッド101をスライドブロック81に接触させて荷重を測定するので、測定器具を設ける必要がないので、測定器具を設けることにより生じる荷重の損失がなく、正確な荷重を測定することができる。
【0075】
また、測定装置1は、ロッド101を原点に戻す際に、ロッド101の一端が速度切替位置(FL3POS)に達するまで移動させる第3速度(FL3SPD)と、速度切替位置(FL3POS)から原点まで移動させる第4速度(FL4SDP)とを切り替えるようにしている。
例えば、弾性体に荷重を加えた後に弾性体が元の形状に復元するときの応力を測定する場合に、ロッド101を低速な第3速度(FL3SPD)で原点に向けて移動させて、弾性体が元の形状に復元した後に高速な第4速度(FL4SPD)で原点に移動させることができる。このとき、速度切替位置(FL3POS)は、ロッド101が弾性体と離れる位置に予め設定される。このとき、第3速度は、弾性体の形状が復元する速度より遅い速度が設定される。
これにより、測定装置1は、弾性体が元の形状に復元する場合の応力についても、弾性体をひずませる場合と同様に、算出する荷重に含まれる誤差を小さくして、荷重の測定を安定して行うことができる。また、測定装置1は、弾性体が元の形状に復元した後に、荷重を測定する際の移動速度より速い第4速度(FL4SPD)でロッド101を原点に移動させるので、ロッド101を駆動する時間を短くすることができ、測定に要する時間を短縮することができる。
【0076】
複数の測定対象を順に測定する場合において、測定装置1は、上記のように測定時間を短くすることができるので、複数の測定対象を測定に要する時間を短縮することができ、製品の検査等におけるコストを削減することができる。
【0077】
なお、本実施形態において、荷重算出部211は、算出した荷重を荷重記憶部212に記憶させる構成について説明したが、これに限ることなく、算出した荷重に、ロッド101が移動する速度及び位置を対応付けて、荷重記憶部212に記憶させるようにしてもよい。これにより、移動速度や位置に応じた荷重を測定することができる。
また、ロッド101の直線運動を案内するためにブッシュ108を備えた構成を説明したが、これに限ることなく、静圧案内を備えるようにしてもよい。これにより、荷重の測定精度を向上させることができる。
【0078】
また、リニアモータ10の推力定数が小さいほど、荷重の測定分解能が向上するので、測定対象を移動させるのに支障がない程度の推力定数が小さいリニアモータ10を用いるようにしてもよい。例えば、磁力の弱いマグネットが用いられたロッド101を用いたり、コイル104に用いる巻線を太くして巻き数を減らしたりしてもよい。これにより、荷重の測定精度を向上させることができる。
また、コイル収容ケース102に熱伝導率の高い素材を用いるようにしてもよい。これにより、リニアモータ10を駆動する際に生じる発熱によるコイル104等の温度上昇を抑えて、リニアモータ10に流れる電流値の変動を少なくすることができ、荷重の測定精度を向上させることができる。
【0079】
また、測定装置1は、リニアモータ10の推力定数を変更することにより、測定レンジを変更することができる。例えば、磁力の異なる複数のロッド101を用意し、測定対象に応じてロッド101を選択することにより、測定装置1は測定対象に対して適切な測定レンジを設定することができる。
また、位置判定部230が荷重算出部211に対して荷重の算出の開始及び終了を制御する構成について説明したが、荷重算出部211は、リニアモータ10が駆動している期間、常に荷重を算出するようにしてもよい。
【0080】
また、電力変換器226においてPWM制御を用いる場合、リニアモータ10に備えられている各コイル104と、電力変換器226との間に直列にインダクタを設けるようにしてもよい。PWM制御を用いる場合、リニアモータ10に流れる電流波形にはノイズが含まれるので、インダクタを設けることにより電流に含まれるノイズを抑圧して、荷重の測定精度を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態において、リニアモータ10はロッドタイプのリニアモータを用いた構成について説明したが、これに限ることなく、コイルを有する可動子が、配列されたマグネットを有する固定子に対して相対移動するフラットタイプのリニアモータを用いてもよい。
【0082】
また、本実施形態において、ステップS107(図20)において、リニアモータ10のコイル104に流れる電流が電流制限値(FL2I)より大きい場合に、ステップS108以降の処理をする構成を説明したが、これに限ることなく、ロッド101が予め定めた位置に達しているか否かを判定し、ロッド101が当該位置に達している場合にステップS108以降の処理を行うようにしてもよい。これにより、ロッド101が所定の荷重を超えた荷重を与えることなく測定を行うことができる。
【0083】
また、本実施形態において、第1速度(FL1SPD)が第2速度(FL2SPD)より速い場合について説明したが、第1速度(FL1SPD)を第2速度(FLSPD)と同じ速度に設定してもよい。また、第3速度を第4速度と同じ速度に設定してもよい。
また、本実施形態において、速度制御部223が算出する非制限電流指令に対して、電流制限値(FL2I)より大きい電流制限値(FL1I)を設けるようにしてもよい。この場合、リニアモータ10の定格電流値を電流制限値(FL1I)としてもよい。
【0084】
また、本実施形態において、荷重測定部21をモータ制御部20内に設ける構成を説明したが、これに限ることなく、リニアモータ10と、荷重測定部21と、駆動部22との3つ独立した機能部により測定装置1を構成するようにしてもよい。また、荷重測定部21は、コンピュータなどを用いて構成するようにしてもよい。
【0085】
なお、本発明に記載の位置検出部は、位置算出部229に対応する。
【0086】
上述のモータ制御部20は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。その場合、上述した荷重算出部211、荷重記憶部212、位置制御部221、スイッチ部222、224、速度制御部223、電流制御部225、速度算出部228、位置算出部229、位置判定部230、完了信号生成部231の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われることになる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0087】
1…測定装置、10…リニアモータ、101…ロッド、103…マグネット、104…コイル、112…磁気センサ、20…モータ制御部、21…荷重測定部、22…駆動部、211…荷重算出部、212…荷重記憶部、221…位置制御部、222…スイッチ部、223…速度制御部、224…スイッチ部、225…電流制御部、226…電力変換器、227…変流器、228…速度算出部、229…位置算出部、230…位置判定部、231…完了信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモータと、
前記リニアモータを駆動して前記リニアモータが有する可動子を移動させることにより測定対象に荷重を与える駆動部と、
前記可動子を相対移動させる際に前記リニアモータに流れる電流値と、前記リニアモータの推力定数とを乗じて前記可動子が前記測定対象に与える荷重を算出する荷重測定部と
を具備することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記可動子が前記測定対象に荷重を与えるとき、前記可動子が前記測定対象に荷重を与える前の移動速度より遅い速度で前記可動子を相対移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記駆動部は、
前記可動子の位置を検出する位置検出部と、
前記可動子が前記測定対象に接触していない場合に前記可動子を移動させる非接触時速度指令と、前記可動子が前記測定対象に接触している場合に前記可動子を移動させる接触時速度指令であって前記非接触時速度指令より遅い速度を示す接触時速度指令とを出力する位置制御部と、
前記位置検出部が検出した位置に応じて、前記非接触時速度指令と前記接触時速度指令とのいずれかの速度指令を選択する位置判定部と、
前記位置判定部が選択した速度指令に基づいて電流指令を生成する速度制御部と、
前記速度制御部が生成した電流指令に基づいて前記リニアモータに電力を供給する電力変換器と
を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記速度制御部は、
前記位置判定部が前記接触時速度指令を選択するとき、前記電流指令が示す電流値の上限を予め定められた電流制限値にする
ことを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記非接触時速度指令は、前記可動子を前記測定対象に接近させる第1方向に移動させる際の速度を示す第1速度指令を含み、
前記接触時速度指令は、前記第1方向に移動させる際の速度を示す第2速度指令を含む
ことを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の測定装置。
【請求項6】
前記接触時速度指令は、前記測定対象から前記可動子を遠ざける第2方向に移動させる際の速度を示す第3速度指令を含み、
前記非接触時速度指令は、前記第2方向に移動させる際の速度を示す第4速度指令を含む
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
リニアモータを駆動して該リニアモータが有する可動子を移動させることにより測定対象に荷重を与える制御ステップと、
前記可動子を相対移動させる際に前記リニアモータに流れる電流値と、前記リニアモータの推力定数とを乗じて前記可動子が前記測定対象に与える荷重を算出する荷重測定ステップと
を有することを特徴とする測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−108094(P2012−108094A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123263(P2011−123263)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】