説明

測定装置、測定方法及びプログラム

【課題】煩雑な試料の調整を行うことなく、従来よりも正確に磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントの測定を実現する。
【解決手段】磁性粉粒体の見かけの比磁化率と、磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度との関係を示す較正曲線を記憶する較正曲線記憶部613と、インダクタンス取得部611で取得されたインダクタンスに基づいて、磁性粉粒体の見かけの比磁化率を算出する見かけの比磁化率算出部612と、前記較正曲線を用いて、前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率から、磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度を算出する第1の嵩密度算出部614と、保持円筒の空重量と保持円筒の総重量と保持円筒の内容積とに基づいて、磁性粉粒体の嵩密度を算出する第2の嵩密度算出部616と、前記磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度と、前記磁性粉粒体の嵩密度とに基づいて、磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントを算出する磁性成分質量パーセント算出部617とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルが巻かれた保持円筒に装入された磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセント(wt%)を測定する測定装置及び測定方法、並びに、当該測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性粉粒体の一例である焼結鉱のFeO%は焼結鉱の焼成度を表す品質指標であり、高炉の要求に応じて目標値が定められている。
【0003】
従来、焼結鉱中のFeO%の測定は、下記の特許文献1のように、化学分析で行われている。この化学分析による方法では、焼結鉱を10数kgサンプリングした後、粒度を細かくする破砕処理と破砕試料からのサンプリングを段階的に繰り返して試料の量を減らしていく縮分という操作を行って、なるべく最初にサンプリングした試料を代表するような試料(粒度100μm以下、10数g)に調整する。この化学分析による方法では、試料の調整や分析に時間と手間がかかるため、1日に6回程度しか行われていない。このため、FeO%が目標値から外れた際の原因解析や焼結操業へフィードバックするのが難しいという問題があった。
【0004】
他方、FeOを化学式に含むマグネタイト等の磁性を利用し、振動試料型磁力計や磁気天秤による磁化測定、或いは、下記の特許文献2に示す類似の方法があるが、これも化学分析よりは測定が簡易ではあるが、破砕処理を含む試料の調整の手間は同じであり、化学分析と同様の問題を抱えている。
【0005】
下記の特許文献3には、コイル中に焼結鉱を入れて透磁率の変化を検出して、FeO%を測定する技術が開示されている。この特許文献3では、粒度の揃った床敷鉱(粒度5mm〜10mm)を使い、特に重量を測るわけではなく、FeO%と(焼結鉱の見かけの)透磁率との関係からFeO%を直接算出している。この特許文献3では、重量を測らない分、簡易で準連続的な測定が可能であるが、粒度による筒への詰まり方、原料や操業による焼結鉱の密度の違いに影響される。また、直接的には、まずインダクタンスを測り、透磁率に変換すると考えられるが、インダクタンスから透磁率への変換方法は、当該特許文献3には開示されていない。
【0006】
また、特許文献3の発明者が発表した非特許文献1には、焼結鉱を入れたコイルのインダクタンスがL=μeff・L0(μeff:円筒状に保持した焼結鉱の集合体の見かけの比透磁率、L0:空筒のインダクタンス)となるとの記述がある。しかしながら、これは、コイルと、焼結鉱の集合体からなるコアがいずれも軸方向に無限長、即ちコイル径に比べコイル長が十分長い場合で、かつ、コイル径とコア径が一致する場合のみ適用可能である。このように、インダクタンスから焼結鉱の見かけの比透磁率μeffへの変換方法が不正確なため、焼結鉱の粒度や量に応じてコイルや保持円筒の大きさを変えるとμeffの評価値も変わり、測定装置ごとに較正をやり直さなければならないという問題があった。また、焼結鉱を保持する円筒は、SUS304など非磁性のオーステナイト系ステンレスを用いていると考えられるが、導電性があるため渦電流が円筒に流れ、非磁性ではあるものの、インダクタンスは、保持円筒の厚みや導電性に影響を受けるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4189066号公報
【特許文献2】特許第4197500号公報
【特許文献3】特公昭57−28731号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】鉄と鋼, 70, 9 (1984), pp-1235-1241
【非特許文献2】尾上守夫:導体に接近した有限長ソレノイドコイルの解析,電気学会誌,Vol. 88-10, No. 961 (1968), p. 1894
【非特許文献3】北村覚一:誘導加熱の研究(その2),電気試験所研究報告,第588号(昭35)
【非特許文献4】森口繁一、宇田川▲かね▼久、一松信:岩波数学公式III「特殊関数」,岩波書店
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、煩雑な試料の調整を行うことなく、従来よりも正確に磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントの測定を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の測定装置は、コイルが巻かれた保持円筒に装入された磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントを測定する測定装置であって、前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率と、前記磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度との関係を示す較正曲線を記憶する較正曲線記憶手段と、前記磁性粉粒体が前記保持円筒に装入された状態で前記コイルのインダクタンスを取得するインダクタンス取得手段と、前記インダクタンス取得手段で取得されたインダクタンスに基づいて、前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率を算出する見かけの比磁化率算出手段と、前記較正曲線を用いて、前記見かけの比磁化率算出手段で算出された磁性粉粒体の見かけの比磁化率から、前記磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度を算出する第1の嵩密度算出手段と、前記保持円筒の空重量と、前記磁性粉粒体が装入された状態の前記保持円筒の総重量とを取得する保持円筒重量取得手段と、前記保持円筒の空重量と、前記保持円筒の総重量と、前記保持円筒の内容積とに基づいて、前記磁性粉粒体の嵩密度を算出する第2の嵩密度算出手段と、前記第1の嵩密度算出手段で算出された磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度と、前記第2の嵩密度算出手段で算出された磁性粉粒体の嵩密度とに基づいて、前記磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントを算出する磁性成分質量パーセント算出手段とを有する。
また、本発明は、上述した測定装置による測定方法、及び、当該測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、煩雑な試料の調整を行うことなく、従来よりも正確に磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントの測定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る測定装置の外観の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示すコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図1に示す測定装置による測定手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1に示すコンピュータによる磁性成分質量パーセントの算出処理に係る機能構成の一例を示す模式図である。
【図5】図1に示すコンピュータによる磁性成分質量パーセントの算出手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】図1に示すコンピュータによる較正曲線の作成処理に係る機能構成の一例を示す模式図である。
【図7】図1に示すコンピュータによる較正曲線の作成手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態を示し、磁性粉粒体の見かけの比磁化率χeffとコイルのインダクタンスLとの関係を実験的に求める手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例1を示し、コイル、保持円筒、及び、磁性粉粒体の配置位置を示す模式図である。
【図10】本発明の実施例1を示し、磁性粉粒体の見かけの比磁化率χeffとインダクタンスLとの関係の計算結果の一例を示す特性図である。
【図11】本発明の実施例1を示し、測定したマグネタイト試薬の嵩密度ρMと、磁性粉粒体の見かけの比磁化率χeffとの関係の測定結果の一例を示す特性図である。
【図12】本発明の実施例2を示し、マグネタイト換算の嵩密度ρMと、磁性粉粒体(焼結鉱)の見かけの比磁化率χeffとの関係の測定結果の一例を示す特性図である。
【図13】本発明の実施例2を示し、FeO%=Fe34%/3.22で算出した予測FeO%と、化学分析によるFeO%を突合せた結果の一例を示す特性図である。
【図14】本発明の第2の実施形態を示し、ある時刻に採取した磁性粉粒体(焼結鉱)に関して、実施例2の方法により粒度別に測定・算出した予測FeO%の結果を示す特性図である。
【図15】本発明の第2の実施形態を示し、ある時刻に採取した磁性粉粒体(焼結鉱)の粒度別の質量の割合を示す特性図である。
【図16】本発明の第2の実施形態を示し、ある時刻に採取した磁性粉粒体(焼結鉱)を所定の粒度区分に応じて粒度別に篩い分け、粒度別に篩い分けられたそれぞれの磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントにおける平均値と偏差を算出する手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0015】
<測定装置100の外観構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る測定装置100の外観の一例を示す模式図である。
図1において、4は、測定対象である焼結鉱等の磁性粉粒体、7は、磁性粉粒体4を採取するサンプラー、8は、サンプラー7を駆動・制御するサンプラー制御装置である。
【0016】
図1において、9は、磁性粉粒体4の装入レベルが一定以上になったことを検出するレベルスイッチ、10は、光や超音波、電磁波などを使ったレベルスイッチ9の一部である送信器、11は、送信器10から送信された光や超音波、電磁波の信号を受信する受信器である。
【0017】
図1において、12は、磁性粉粒体4をサンプラー7から受け入れ、磁性粉粒体4を一定の嵩にすり切るためのすり切りホッパー、13は、すり切りホッパー12を駆動・制御するすり切りホッパー制御装置である。
【0018】
図1において、3は、装入された磁性粉粒体4を保持する保持円筒、1は、保持円筒上に巻かれて固定されたコイル、2は、保持円筒3が空または磁性粉粒体4が保持円筒3に装入された状態でコイル1のインダクタンスを測定するLCRメーターである。
【0019】
図1において、31は、保持円筒3の上部に固定された鍔部、16は、保持円筒3の鍔部31が接触して保持円筒3を支持する支持台である。
【0020】
図1において、5は、保持円筒3が空の状態での空重量または保持円筒3に磁性粉粒体4が装入された状態での総重量を測定する秤量装置、51は、秤量装置5の受け台である。
【0021】
図1において、14は、秤量装置5が固定され、秤量装置5を移動させるための移動台、15は、移動台14を駆動・制御する移動台制御装置、17は、移動台14が通過時に移動台14の上に固定された秤量装置5の受け台51の上の磁性粉粒体4などの障害物を除去するためのブラシである。
【0022】
図1において、6は、コンピュータであり、サンプラー制御装置8、レベルスイッチ9、すり切りホッパー制御装置13、LCRメーター2、秤量装置5、及び、移動台制御装置15の各装置の制御、また、各装置からの信号を受信し、保持円筒3の重量やコイル1のインダクタンスから較正曲線の作成や磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセント(wt%)を算出する。
【0023】
<コンピュータ6のハードウェア構成>
図2は、図1に示すコンピュータ6のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図2において、601は、例えば、後述するROM603或いは外部メモリ604に記憶されたプログラムやデータを用いて、コンピュータ6の全体の制御を行うCPUである。
【0025】
図2において、602は、SDRAM、DRAMなどによって構成され、後述するROM603或いは外部メモリ604からロードされたプログラムやデータを一時的に記憶するエリアを備えるとともに、CPU601が各種の処理を行うために必要とするワークエリアを備えるRAMである。
【0026】
図2において、603は、変更を必要としないプログラムや各種のパラメータ等のデータなどを格納しているROMである。
【0027】
図2において、604は、例えば、オペレーティングシステム(OS)やCPU601が実行するプログラム、更には、本実施形態の説明において既知としているデータや情報などを記憶している外部メモリである。なお、本実施形態においては、CPU601が本発明に係る処理を実行するためのプログラムは、外部メモリ604に記憶されているものとするが、例えばROM603に記憶されている態様であっても適用可能である。
【0028】
図2において、605は、例えば、マウスやキーボード等を具備して構成されており、例えばユーザがコンピュータ6に対して各種の指示を行う際に操作され、当該指示をCPU601等に入力する入力デバイスである。
【0029】
図2において、606は、例えば、モニタ等を具備して構成されており、CPU601の制御に基づいて、各種のデータや各種の情報をモニタに出力する表示部である。
【0030】
図2において、607は、コンピュータ6と外部装置Gとの間で行われる、各種のデータや各種の情報の送受信を司る通信I/Fである。
【0031】
図2において、608は、CPU601、RAM602、ROM603、外部メモリ604、入力デバイス605、表示部606及び通信I/F607を相互に通信可能に接続するバスである。
【0032】
<測定装置100による測定手順>
図3は、図1に示す測定装置100による測定手順の一例を示すフローチャートである。
初期の状態では、すり切りホッパー12は、保持円筒3の真上になく退避した状態、保持円筒3は、その鍔部31が支持台16に接触して置かれた状態、秤量装置5を載せた移動台14は、保持円筒3の真下になく水平方向に退避した状態、保持円筒3は、磁性粉粒体(焼結鉱)4が装入されていない空の状態とする。
【0033】
まず、ステップS101において、コンピュータ6(CPU601)は、移動台制御装置15を制御して、秤量装置5を移動台14によって保持円筒3の真下に移動させる。
【0034】
続いて、ステップS102において、コンピュータ6(CPU601)は、移動台制御装置15を制御して、移動台14を上昇させて秤量装置5の荷重が安定したところで停止させ、次に秤量装置5を制御して、保持円筒3の空重量W0を測定する。また、コンピュータ6(CPU601)は、この状態でLCRメーター2を制御して、保持円筒3が空の状態でのコイル1のインダクタンスL1を測定する。測定後、コンピュータ6(CPU601)は、移動台制御装置15を制御して、移動台14を降下させて、保持円筒3を支持台16に置いた後に停止する。ここで、保持円筒3の空重量W0、インダクタンスL1が安定しており、毎回測らない場合には、このステップS102は省略可能である。
【0035】
続いて、ステップS103において、コンピュータ6(CPU601)は、すり切りホッパー制御装置13を制御して、すり切りホッパー12を保持円筒3の真上に置く。次に、コンピュータ6(CPU601)は、サンプラー制御装置8を制御して、サンプラー7を稼動させて磁性粉粒体4を採取し、保持円筒3内に装入する。そして、コンピュータ6(CPU601)は、レベルスイッチ9により磁性粉粒体4の装入状態を確認する。そして、磁性粉粒体4の装入状態が所定のレベルに達したら、コンピュータ6(CPU601)は、すり切りホッパー制御装置13を制御して、すり切りホッパー12を退避させ、磁性粉粒体4の嵩がおおよそ保持円筒3の上面と一致するようにすり切る。
【0036】
続いて、ステップS104において、コンピュータ6(CPU601)は、移動台制御装置15を制御して、移動台14を上昇させて秤量装置5の荷重が安定したところで停止させ、次に秤量装置5を制御して、保持円筒3及び保持円筒3内に装入された磁性粉粒体4の総重量W1を測定する。また、コンピュータ6(CPU601)は、LCRメーター2を制御して、保持円筒3に磁性粉粒体4が装入された状態でのコイル1のインダクタンスLを測定する。
【0037】
続いて、ステップS105において、コンピュータ6(CPU601)は、移動台制御装置15を制御して、移動台14を降下させて保持円筒3を支持台16に置き、さらに、移動台14を水平方向に退避させて保持円筒3内の磁性粉粒体4を排出する。
【0038】
<コンピュータ6による磁性成分質量パーセントの算出処理に係る機能構成>
図4は、図1に示すコンピュータ6による磁性成分質量パーセントの算出処理に係る機能構成の一例を示す模式図である。
【0039】
図4において、611は、LCRメーター2から、磁性粉粒体4が保持円筒3に装入された状態でのコイル1のインダクタンスLを取得するインダクタンス取得部である。ここで、インダクタンス取得部611は、コイル1の巻き数調整等に用いるため、磁性粉粒体4が保持円筒3に装入されていない状態でのコイル1のインダクタンスL1を取得してもよい。
【0040】
図4において、612は、インダクタンス取得部611で取得されたインダクタンスLに基づいて、保持円筒3に装入された磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffを算出する、見かけの比磁化率算出部である。ここで、「見かけの比磁化率(χeff)」とは、保持円筒3内にある空気も含む磁性粉粒体4を比磁化率がχeffの一様な円筒状の物質とみなしたときの、比磁化率のことである。
【0041】
図4において、613は、磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffと、磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρMとの関係を示す較正曲線を記憶する較正曲線記憶部である。ここで、「磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度(ρM)」とは、保持円筒3内にある空気や他の成分も含む磁性成分を密度がρMの一様な円筒状の物質とみなしたときの、密度のことである。
【0042】
図4において、614は、較正曲線記憶部613に記憶されている較正曲線を用いて、磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffから、磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρMを算出する第1の嵩密度算出部である。
【0043】
図4において、615は、秤量装置5から、保持円筒3の空重量W0と、磁性粉粒体4が装入された状態の保持円筒3の総重量W1とを取得する保持円筒重量取得部である。
【0044】
図4において、616は、保持円筒3の空重量W0と、保持円筒3の総重量W1と、入力デバイス605から入力された保持円筒3の内容積Vとに基づいて、保持円筒3内の磁性粉粒体4の嵩密度ρ0を算出する第2の嵩密度算出部である。ここで、「磁性粉粒体(焼結鉱)の嵩密度(ρ0)」とは、保持円筒3内にある空気も含む磁性粉粒体4を密度がρ0の一様な円筒状の物質とみなしたときの、密度のことである。
【0045】
図4において、617は、第1の嵩密度算出部614で算出された磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρMと、第2の嵩密度算出部616で算出された磁性粉粒体4の嵩密度ρ0とに基づいて、磁性粉粒体4中の磁性成分の質量パーセントを算出する磁性成分質量パーセント算出部である。
【0046】
ここで、例えば、図2に示すCPU601及び外部メモリ604に記憶されているプログラム、並びに、通信I/F607から、図4に示すインダクタンス取得部611及び保持円筒重量取得部615が構成される。また、例えば、図2に示すCPU601及び外部メモリ604に記憶されているプログラムから、図4に示す見かけの比磁化率算出部612、第1の嵩密度算出部614、第2の嵩密度算出部616、及び、磁性成分質量パーセント算出部617が構成される。また、例えば、図2に示す外部メモリ604に、図4に示す較正曲線記憶部613が構成される。
【0047】
<コンピュータ6による磁性成分質量パーセントの算出手順>
図5は、図1に示すコンピュータ6による磁性成分質量パーセントの算出手順の一例を示すフローチャートである。
【0048】
図5の処理を開始する前に、既に、較正曲線記憶部613には、磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffと磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρMとの関係を示す較正曲線が記憶されているものとする。
【0049】
まず、ステップS201において、インダクタンス取得部611は、LCRメーター2で測定された、保持円筒3が空状態でのコイル1のインダクタンスL1と、保持円筒3に磁性粉粒体4が装入された状態でのコイル1のインダクタンスLを取得する。ここで、本実施形態においては、保持円筒3が空状態でのコイル1のインダクタンスL1は、後述の処理で特に用いないが、実操業では、コイル1の巻き数調整等に用いられる。
【0050】
続いて、ステップS202において、見かけの比磁化率算出部612は、保持円筒3に磁性粉粒体4が装入された状態でのコイル1のインダクタンスLに基づいて、保持円筒3内に装入された磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffを算出する。
【0051】
続いて、ステップS203において、第1の嵩密度算出部614は、較正曲線記憶部613に記憶されている較正曲線を基に、ステップS202で算出された磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffから、磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρMを算出する。
【0052】
一方、ステップS204において、保持円筒重量取得部615は、秤量装置5で測定された、保持円筒3の空重量W0と、磁性粉粒体4が装入された状態の保持円筒3の総重量W1とを取得する。
【0053】
続いて、ステップS205において、第2の嵩密度算出部616は、ステップS204で取得された、保持円筒3の空重量W0と保持円筒3に磁性粉粒体4が装入された状態での総重量W1から、まず、磁性粉粒体4の装入重量W=W1−W0を算出する。次に、第2の嵩密度算出部616は、磁性粉粒体4の装入重量Wと、保持円筒3の内径と高さから定められる内容積Vとから、保持円筒3内の磁性粉粒体4の嵩密度ρ0=W/Vを算出する。
【0054】
続いて、ステップS206において、磁性成分質量パーセント算出部617は、ステップS203で算出された磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρMと、ステップS205で算出された磁性粉粒体4の嵩密度ρ0から、磁性成分の質量%(重量%)をwt%=ρM/ρ0×100で算出する。
なお、ここで求められる磁性成分の質量%は、例えば、マグネタイトFe34の質量%である。マグネタイトFe34=FeO・Fe23など2価鉄を含む成分中のFeOが化学分析で溶出する。FeOが全てマグネタイトから溶出するわけではないが、FeO%は磁性成分量と相関がある。仮に、FeOが全てマグネタイトから溶出したと仮定すると、マグネタイト換算の質量%はFe34%=FeO%×3.22となる。この「3.22」は化学式Fe34とFeOの分子量の比Fe34/FeOに相当する数値である。即ち、本実施形態において、磁性粉粒体(焼結鉱)の焼成度を表す品質指標であるFeO%を求めるには、算出した磁性成分の質量%を「3.22」で除算すればよいことになる。
【0055】
<コンピュータ6による較正曲線の作成処理に係る機能構成>
図6は、図1に示すコンピュータ6による較正曲線の作成処理に係る機能構成の一例を示す模式図である。
【0056】
図6において、621は、LCRメーター2から、磁性粉粒体4が保持円筒3に装入された状態でのコイル1のインダクタンスLを取得するインダクタンス取得部である。ここで、インダクタンス取得部621は、コイル1の巻き数調整等に用いるため、磁性粉粒体4が保持円筒3に装入されていない状態でのコイル1のインダクタンスL1を取得してもよい。
【0057】
図6において、622は、インダクタンス取得部621で取得されたインダクタンスLに基づいて、保持円筒3に装入された磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffを算出する、見かけの比磁化率算出部である。
【0058】
図6において、623は、秤量装置5から、保持円筒3の空重量W0と、磁性粉粒体4が装入された状態の保持円筒3の総重量W1とを取得する保持円筒重量取得部である。
【0059】
図6において、624は、保持円筒3の空重量W0と、保持円筒3の総重量W1と、入力デバイス605から入力された保持円筒3の内容積Vとに基づいて、保持円筒3内の磁性粉粒体4の嵩密度ρ0を算出する第2の嵩密度算出部である。
【0060】
図6において、625は、第2の嵩密度算出部624で算出された磁性粉粒体4の嵩密度ρ0と、入力デバイス605から入力された磁性粉粒体4に含まれる磁性成分の質量%(wt%)から、磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρMを算出する第1の嵩密度算出部である。
【0061】
図6において、626は、見かけの比磁化率算出部622で算出された磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffと、第1の嵩密度算出部625で算出された磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρMに基づいて、χeffとρMとの関係を示す較正曲線を作成する較正曲線作成部である。
【0062】
ここで、例えば、図2に示すCPU601及び外部メモリ604に記憶されているプログラム、並びに、通信I/F607から、図6に示すインダクタンス取得部621及び保持円筒重量取得部623が構成される。また、例えば、図2に示すCPU601及び外部メモリ604に記憶されているプログラムから、図6に示す見かけの比磁化率算出部622、第2の嵩密度算出部624、第1の嵩密度算出部625、及び、較正曲線作成部626が構成される。
【0063】
<コンピュータ6による較正曲線の作成手順>
図7は、図1に示すコンピュータ6による較正曲線の作成手順の一例を示すフローチャートである。
【0064】
まず、ステップS301において、インダクタンス取得部621は、LCRメーター2で測定された、保持円筒3が空状態でのコイル1のインダクタンスL1と、保持円筒3に磁性粉粒体4が装入された状態でのコイル1のインダクタンスLを取得する。ここで、本実施形態においては、保持円筒3が空状態でのコイル1のインダクタンスL1は、後述の処理で特に用いないが、実操業では、コイル1の巻き数調整等に用いられる。
【0065】
続いて、ステップS302において、見かけの比磁化率算出部622は、保持円筒3に磁性粉粒体4が装入された状態でのコイル1のインダクタンスLに基づいて、保持円筒3内に装入された磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffを算出する。
【0066】
一方、ステップS303において、保持円筒重量取得部623は、秤量装置5で測定された、保持円筒3の空重量W0と、磁性粉粒体4が装入された状態の保持円筒3の総重量W1とを取得する。
【0067】
続いて、ステップS304において、第2の嵩密度算出部624は、ステップS303で取得された、保持円筒3の空重量W0と保持円筒3に磁性粉粒体4が装入された状態での総重量W1から、まず、磁性粉粒体4の装入重量W=W1−W0を算出する。次に、第2の嵩密度算出部624は、磁性粉粒体4の装入重量Wと、保持円筒3の内径と高さから定められる内容積Vとから、保持円筒3内の磁性粉粒体4の嵩密度ρ0=W/Vを算出する。
【0068】
続いて、ステップS305において、第1の嵩密度算出部625は、ステップS304で算出された磁性粉粒体4の嵩密度ρ0と、入力デバイス605から入力された磁性粉粒体4に含まれる磁性成分の質量%(wt%)から、磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρM=ρ0×wt%/100を算出する。ここで、wt%は化学分析等で既知とする。
【0069】
続いて、ステップS306において、ステップS301〜ステップS305の工程を繰り返し、較正曲線作成部626は、磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρMと磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffのデータをプロットし、データを関数近似した較正曲線を作成する。
【0070】
<χeff−Lの関係を実験的に求める手順>
図8は、本発明の第1の実施形態を示し、磁性粉粒体の見かけの比磁化率χeffとコイルのインダクタンスLとの関係を実験的に求める手順の一例を示すフローチャートである。
磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffとインダクタンスLの関係は、後述するように、計算でも構築可能であるが、保持円筒3に近接する支持部材等の影響により、計算モデルが合わない場合、或いは、保持円筒3の磁化率や導電率の物性値が不明な場合等、計算モデルが未知の場合には、以下のように計算モデルが既知の条件下で作製した磁性粉粒体4の基準試料を用いて、磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffとインダクタンスLの関係を実験的に求める方法に置き換えることも可能である。
【0071】
まず、ステップS401において、コンピュータ6(CPU601)は、コイル1と保持円筒3の配置と大きさ、保持円筒3の透磁率と導電率をもとにして、コイル1のインダクタンスから磁性粉粒体の見かけの比磁化率を計算する計算モデルが既知の条件下で、磁性成分の質量%が既知の磁性粉粒体4の基準試料を用いて、図7に示すフローチャートの工程を経て、基準試料の嵩密度と磁性成分の質量%とから計算された当該基準試料の磁性粉粒体4中の磁性成分の嵩密度ρMと、コイル1のインダクタンスと前記計算モデルとから計算された磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffとの関係を示す較正曲線を作成する。
【0072】
続いて、ステップS402において、コンピュータ6(CPU601)は、秤量装置5及びLCRメーター2を制御して、計算モデルが未知の条件下で、保持円筒3に磁性粉粒体4の基準試料が装入されていない空の状態での保持円筒3の空重量W0とコイル1のインダクタンスL1を測定する。
【0073】
続いて、ステップS403において、コンピュータ6(CPU601)は、秤量装置5及びLCRメーター2を制御して、計算モデルが未知の条件下で、磁性粉粒体4の基準試料を保持円筒3に装入した状態での総重量W1とインダクタンスLを測定する。
【0074】
続いて、ステップS404において、コンピュータ6(CPU601)は、計算モデルが未知の条件下で、磁性粉粒体4の基準試料の装入重量W=W1−W0と、保持円筒3の内径と高さから定められる内容積Vから、基準試料の嵩密度ρ0=W/Vを算出する。
【0075】
続いて、ステップS405において、コンピュータ6(CPU601)は、計算モデルが未知の条件下で、磁性粉粒体4の基準試料の嵩密度ρ0と、磁性粉粒体4の基準試料に含まれる磁性成分の質量%(wt%)から、基準試料の磁性成分の嵩密度ρM=ρ0×wt%/100を算出する。
【0076】
続いて、ステップS406において、コンピュータ6(CPU601)は、ステップS401において計算モデル既知の条件下で作成した、磁性粉粒体4の基準試料中の磁性成分の嵩密度ρMと基準試料の見かけの比磁化率χeffとの関係を示す較正曲線から、ステップS405で計算モデル未知の条件下で算出した嵩密度ρMに対応した見かけの比磁化率χeffを算出する。
【0077】
続いて、ステップS407において、コンピュータ6(CPU601)は、ステップS403〜ステップS406の工程を繰り返し、計算モデルが未知の条件下での磁性粉粒体4の嵩密度χeffとインダクタンスLのデータをプロットし、データを関数近似してχeff−Lの関係を実験的に構築する。
【実施例1】
【0078】
ここでは、保持円筒3としてアクリル筒とSUS304製円筒を用い、磁性粉粒体4としてマグネタイト試薬(Fe34)とヘマタイト試薬(Fe23)の混合粉末を用いて、コイル1と保持円筒3との配置や大きさ、保持円筒3の材質が変わっても、同じような較正曲線が得られるかを確認した。
(実験条件)
・SUS304製円筒の大きさ:〔1〕139.8φ×2.8t×400L、
〔2〕139.8φ×5t×400L、
〔3〕139.8φ×9.5t×400L(単位mm)
・比較用のアクリル製円筒(非磁性、非導電性)の大きさ:140φ×3t×400L(単位mm)
・検証用コイルの大きさ:150φ×150L(単位mm)、巻き数:690
・測定周波数:100Hz
・SUS304の比透磁率μb=1.004、導電率σ=1/(72[μΩ・cm])=1.39×106[m/Ω](日本ステンレス協会の物性値)
【0079】
<χeff−Lの関係を計算モデルで求める方法>
以下、測定されたコイル1のインダクタンスLから保持円筒3に装入された磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffを評価するため、コイル1と保持円筒3との配置(中心軸が同じ;同心円)と形状、筒の材質(透磁率と導電率)、及び、測定周波数が与えられた場合のχeffとLの関係を計算モデルで求める方法について説明する。
【0080】
図9は、本発明の実施例1を示し、コイル1、保持円筒3、及び、磁性粉粒体4の配置位置を示す模式図である。
図9のように空気(第[1]層)−空気(第[2]層)−保持円筒(第[3]層)−磁性粉粒体(第[4]層)の4層からなる軸対称の配置を仮定する。コイル1は有限長だが、保持円筒3と磁性粉粒体4からなるコアはz軸方向に無限長とした無限長多層コアモデルで考える。
【0081】
計算式の導出方法の詳細は、非特許文献2及び3に委ね、ここでは、χeff−Lの関係における計算結果のみを述べることとする。コイル1のインダクタンスLは、以下の(1)式に示すように無次元の変数xに関して積分して計算する。
(1)式において、aはコイル1の半径、Nはコイル1の巻き数、lはコイル1の長さ、μ0は真空の透磁率、I1(・)は1次の第1種の変形ベッセル関数(既知)、K1(・)は1次の第2種の変形ベッセル関数(既知)である。
【0082】
【数1】

【0083】
また、ここでは、x>0の一般的な場合について考える。ここで、未知のD(x)は(2)式以下のような行列式を使って計算できるが、多層の場合には、手計算で求めるのは煩雑なので、離散的なxについて(8)式で個々のD(x)を求め、数値積分で(1)式を計算する。また、第1種と第2種の変形ベッセル関数は、非特許文献4にある定義のものである。
【0084】
【数2】

【0085】
(2)式において、bは保持円筒の外半径、I0(・)は0次の第1種の変形ベッセル関数(既知)、K0(・)は0次の第2種の変形ベッセル関数(既知)である。
【0086】
【数3】

【0087】
(3)式において、μb:保持円筒(第[3]層)の比透磁率であり、yは下記の(4)式で表されるものである。
【0088】
【数4】

【0089】
(4)式において、j=√−1の虚数単位、fは測定周波数、σは保持円筒(第[3]層)の導電率である。ここで、測定周波数fとは、LCRメーター2から出力され、コイル1に流す正弦波状の励磁電流の周波数のことである。
【0090】
【数5】

【0091】
(5)式において、cは保持円筒の内半径である。
【0092】
【数6】

【0093】
(6)式において、μeffは磁性粉粒体の見かけの比透磁率であり、μeff=χeff+1で表されるものである。また、χeffは、磁性粉粒体の見かけの比磁化率であり、上述したものである。
【0094】
【数7】

【0095】
(7)式では、(2)式、(3)式、(5)式、及び、(6)式の行列式から、v1及びv2が求まる。
【0096】
【数8】

【0097】
そして、(8)式では、(7)式で求めたv1及びv2を代入することにより、D(x)が求まり、これを(1)式に代入することで、インダクタンスLが求まる。即ち、(1)式〜(8)式から、磁性粉粒体の見かけの比磁化率χeffとインダクタンスLとの関係が計算モデルで求まる。
【0098】
コイル1に流す励磁電流は、その断面が空間で見ると線状或いは矩形状に連続分布していると仮定しているが、実際のコイルの巻き線は、太さをもち、かつ、巻き線上に絶縁膜があるために隙間があり、巻き数Nを入力して計算したコイル1のインダクタンスLの計算値とLCRメーター2の実測値とは異なる場合がある。この場合には、入力する巻き数Nの数値を調整して計算値が実測値に合うようにする。
また、計算モデルで保持円筒3と磁性粉粒体4の長さは無限長としているが、それぞれの端は、コイル1の作る磁界の影響が小さい範囲、例えば端がコイル1の中心から見てコイル1の長さlよりも長い範囲となる長さと配置にする。
【0099】
<χeff−Lの計算結果>
図10は、本発明の実施例1を示し、磁性粉粒体の見かけの比磁化率χeffとインダクタンスLとの関係の計算結果の一例を示す特性図である。
【0100】
図10は、実際に式(1)にしたがって、実験条件に記載のコイル1と保持円筒3を用いて磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffとコイル1のインダクタンスLの関係を計算したものである。厚み0mmは比較用アクリル製円筒の場合であり、SUS304製円筒の厚み(2.8mm,5mm,9.5mm)を変えるとχeff−Lの関係がより非線形になる。これは、コイル1に流す励磁電流と逆向きに渦電流がSUS304製円筒を流れるため、インダクタンスLが減少するからである。
【0101】
計算では、離散的なχeffに対して、コイル1のインダクタンスLを数値積分で得ているため、連続値をとる測定値のLから対応するχeffを求めるには、例えば、χeffをLの1次式や2次式などで最小二乗法を使って関数近似した値を用いればよい。
【0102】
<ρM−χeffの測定結果>
図11は、本発明の実施例1を示し、測定したマグネタイト試薬の嵩密度ρMと、磁性粉粒体の見かけの比磁化率χeffとの関係の測定結果の一例を示す特性図である。
図11において、較正データは小さいコイル(20φ×30L)とアクリル製円筒(10.8φ)を用いて得ており、較正データを最小二乗法などを用いて関数近似してρMとχeffとの関係である較正曲線を得ている。較正データから較正曲線を得る際には、Maxwell−Garnett近似の式を当てはめることも可能であるが、ここでは近似度を高めるため、2次式を当てはめている。他のコイル1や保持円筒3を用いて得たρMとχeffとのデータも較正曲線上に載るため、コイル1や保持円筒3の大きさ、保持円筒3の材質によらない、磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffの評価が可能である。
【0103】
<χeff−Lの関係を実験的に求める方法>
段落[0070]〜[0077]で説明したように、磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffとコイル1のインダクタンスLの関係を、計算でなく計算モデルが既知の条件下で作製した磁性粉粒体4の基準試料を用いて、計算モデルが未知の条件下でのχeff−Lの関係を実験的に求めることも可能である。例えば、上述した例でいうと、非磁性、非導電性の保持円筒3であるアクリル製円筒を用いた場合を計算モデルが既知、SUS304製円筒を用いた場合を仮に磁性や導電率が未知で計算モデルが未知であるとする。磁性粉粒体4は、マグネタイト試薬をヘマタイト試薬に分散させた混合粉末で磁性成分はマグネタイト試薬とする。
【0104】
まず、アクリル製円筒を保持円筒3として用いた計算モデルが既知の条件下で磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffとコイル1のインダクタンスLの関係を計算し、図10の「0mm」に示すようなχeff−Lの関係を求める。図10に示すSUS304製円筒の厚み「2.8mm」、「5mm」、「9.5mm」の場合のようなχeff−Lの関係は、未知とする。
【0105】
次に、マグネタイト試薬をヘマタイト試薬に分散させたマグネタイト試薬量の異なる基準試料を作製し、インダクタンスLの計算モデルが既知の条件下で、図11の「0mm」に示すような基準試料のマグネタイト試薬の嵩密度ρMと基準試料の見かけの比磁化率χeffとの関係を実験的に求める。
【0106】
次に、SUS304製円筒を用いた計算モデルが未知の条件下で、基準試料をSUS304製円筒に装入した状態での基準試料の重量とコイルのインダクタンスLを測定する。そして、SUS304製円筒に装入した基準試料の重量とSUS304製円筒の内容積から嵩密度ρ0を評価し、基準試料中のマグネタイト試薬の質量%(重量%)とからマグネタイト試薬の嵩密度ρMを評価する。
【0107】
アクリル製円筒を用いた計算モデル既知の条件下で作製したρM−χeffの較正曲線により、SUS304製円筒に装入した状態での基準試料のχeffを算出する。そして、SUS304製円筒に装入した状態での基準試料のχeffとコイル1のインダクタンスLをプロットし関数近似することで、計算モデルが未知であるSUS304製円筒を保持円筒3として用いた場合のχeff−Lの関係が、例えば図10に示すSUS304製円筒の厚み「2.8mm」、「5mm」、「9.5mm」の場合と同じような形で求められる。
【実施例2】
【0108】
<焼結鉱の測定>
(実験条件)
・保持円筒:アクリル製(μb=1,σ=0)
〔1〕粒度20mm以上
・コイルの大きさ:200φ×180L、巻き数:826、保持円筒の大きさ:186φ×3t×380L
〔2〕粒度10mm〜20mm
・コイルの大きさ:150φ×180L、巻き数:813、保持円筒の大きさ:140φ×3t×380L
〔3〕粒度5mm〜10mm
・コイルの大きさ:100φ×180L、巻き数:815、保持円筒の大きさ:90φ×3t×380L
〔4〕粒度5mm以下
・コイルの大きさ:60φ×60L、巻き数:979、保持円筒の大きさ:54φ×2t×150L
【0109】
磁性粉粒体4として焼結鉱を用い、保持円筒3としてアクリル製円筒を用いて、化学分析によるFeO%と焼結鉱の嵩密度ρ0からマグネタイト換算の嵩密度ρMを算出し、測定した保持円筒3に焼結鉱を装入したときのコイル1のインダクタンスLから焼結鉱の見かけの比磁化率χeffを算出した。化学分析によるFeO%から換算したマグネタイト重量%はFe34%=FeO%×3.22で算出し、ρM=ρ0×Fe34%/100でマグネタイト換算の嵩密度ρMを算出した。保持円筒3の内径は、焼結鉱の粒度の10倍程度とした。
【0110】
FeO%の異なる焼結鉱を用いて測定を繰り返し、マグネタイト換算の嵩密度ρMと焼結鉱の見かけの比磁化率χeffの較正データをプロットして、較正データを関数近似して図12に示す較正曲線を求めた。図12は、本発明の実施例2を示し、マグネタイト換算の嵩密度ρMと、磁性粉粒体(焼結鉱)の見かけの比磁化率χeffとの関係の測定結果の一例を示す特性図である。
【0111】
ここでは、粒度が5mm以上の焼結鉱の較正データを用い、2次式で関数近似して較正曲線を得た。逆に、保持円筒3に焼結鉱を装入した状態で測定した、インダクタンスLと焼結鉱の重量から焼結鉱の見かけの比磁化率χeffと焼結鉱の嵩密度ρ0を算出し、図12の較正曲線から焼結鉱中のマグネタイト換算の嵩密度ρMを算出し、マグネタイト換算の質量%(重量%)であるFe34%=ρM/ρ0×100を算出した。
【0112】
図13は、本発明の実施例2を示し、FeO%=Fe34%/3.22で算出した予測FeO%と、化学分析によるFeO%を突合せた結果の一例を示す特性図である。
図13によれば、粒度が5mm以上の焼結鉱で較正曲線を作成したものの、粒度が5mm以下の焼結鉱でも同じ較正曲線に載る傾向が見られる。粒度や測定試料の量に応じてコイル径を60φ〜200φまで変えているが、ρM−χeffの関係を用いた較正方法により、粒度やコイル1の形状によらない較正が可能であり、化学分析によるFeO%と本方法で予測した予測FeO%の突合せ結果も良好である。
【0113】
また、SUS304製円筒での検証実験ではマグネタイト試薬で実施したが、インダクタンスLから見かけの比磁化率χeffへの変換を行えば、焼結鉱でもアクリル製円筒と同様の測定結果が得られるはずである。
【0114】
実施例1においては、コイル1の内側にSUS304製の保持円筒3がある場合を考えたが、例えば、コイル1の保持円筒3として空気と大きく異なる磁性や導電性を有する材質のものを用いる場合、図9の多層モデルの第[1]層に新たな層を設けて計算モデルを立てることにより、実施例で説明した工程で磁性成分の測定が可能となる。また、保持円筒3の材質が未知、または既知でも計算モデルとの一致度が悪い場合には、実施例で説明した基準試料を用いた磁性粉粒体4の見かけの比磁化率χeffとコイルのインダクタンスLの関係を実測することにより、実施例で説明した工程で磁性成分の測定が可能となる。
【0115】
[本実施形態における作用・効果]
・保持円筒3に装入された磁性粉粒体4(焼結鉱)の重量を測るので、磁性粉粒体4の保持円筒3への詰まり方、原料や操業による磁性粉粒体4の密度に影響されないFeO%などの磁性成分量の測定が可能である。
・保持円筒3に装入された磁性粉粒体4(焼結鉱)の磁性成分の嵩密度ρMと、磁性粉粒体4(焼結鉱)の見かけの比磁化率χeffという普遍性の高い物理量を用いて較正曲線を作成するので、コイル1や保持円筒3の大きさ、保持円筒3の磁性や導電性などの材質によらないFeO%など磁性成分量の測定が可能である。
・普遍性の高い物理量を用いて較正曲線を作成するので、磁気天秤や振動試料型磁力計(VSM)等、他の測定原理で測定した測定値とも比較可能である。
・また、コイル1や保持円筒3の大きさ、保持円筒3の材質が変わっても、以前に蓄積した較正データがそのまま使え、較正のやり直しにはならない。特に、測定対象の粒度が小さいものから大きいものに変わり、コイル1を大きくしなければいけない場合でも以前の小さい粒度と小さいコイル1で作製した較正曲線は、大きい粒度と大きいコイル1でも使える。
・保持円筒3の材質が不明、または計算モデルが未知の条件下でも、計算モデルが既知の条件下で作製したχeffが既知の基準試料を用いて、計算モデル未知の条件下でのχeff−Lの関係を実験的に求めることも可能である。
以上、本実施形態によれば、煩雑な試料の調整を行うことなく、従来よりも正確に磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセント(wt%)の測定を実現することができる。
【0116】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、磁性粉粒体の一例である焼結鉱の焼成の一様さ、即ち、焼結鉱の粒度による磁性粉粒体の磁性成分の質量パーセントの変動を評価するために、第1の実施形態で説明した測定装置100及びその測定方法を用いて、磁性粉粒体(焼結鉱)の粒度区分毎に磁性粉粒体の磁性成分の質量パーセントを測定する方法に関する実施形態である。このように、第2の実施形態と第1の実施形態とは、磁性粉粒体(焼結鉱)を予め所定の粒度区分毎に分ける点と、粒度区分毎に磁性粉粒体の磁性成分の質量パーセントを測定した後の処理の点とが主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、その詳細な説明を省略する。
【0117】
図14は、本発明の第2の実施形態を示し、ある時刻に採取した磁性粉粒体(焼結鉱)4に関して、実施例2の方法により粒度別に測定・算出した予測FeO%の結果を示す特性図である。
図14では、高炉に運ばれる磁性粉粒体(焼結鉱)4の粒度区分として、5mm〜10mm,10mm〜25mm,25mm〜50mmの範囲に分けている。図14によれば、粒度が5mm〜10mmの範囲で予測FeO%の値が最も大きく、粒度が25mm〜50mmの範囲で予測FeO%の値が最も小さいという結果であり、粒度別の予測FeO%における最大値(粒度が5mm〜10mmの範囲)と最小値(粒度が25mm〜50mmの範囲)との差も1.9%と大きい。焼結鉱が空間的に一様に焼成されているならば、粒度別の予測FeO%における差は小さいはずなので、粒度別の予測FeO%における差は焼結鉱が空間的に一様に焼成されているかを判断するための指標となり得る。
【0118】
また、図15は、このときの焼結鉱の粒度別質量の割合を示している。即ち、図15は、本発明の第2の実施形態を示し、ある時刻に採取した磁性粉粒体(焼結鉱)4の粒度別の質量の割合を示す特性図である。
図15によれば、予測FeO%が最大の粒度5mm〜10mmの範囲と予測FeO%が最小の粒度25mm〜50mmの範囲の質量の割合が20%〜30%と比較的大きいので、この2つの粒度区分のFeO%によって高炉に運ばれる焼結鉱全体の平均のFeO%が左右されることもあり得る。したがって、粒度別の予測FeO%の差が大きい場合には、特定の粒度区分の予測FeO%は、高炉に運ばれる焼結鉱全体のFeO%を代表できないことが起こり得る。このため、本実施形態では、粒度区分の全てにおいてFeO%を算出し、全ての粒度区分における平均のFeO%を算出することで高炉に運ばれる焼結鉱全体の平均のFeO%を管理し、さらに、粒度別のFeO%における偏差を表す量を算出することで焼成の一様さを見ることができる。
【0119】
以下、図16を参照して、本実施形態における測定方法を説明する。
図16は、本発明の第2の実施形態を示し、ある時刻に採取した磁性粉粒体(焼結鉱)4を所定の粒度区分に応じて粒度別に篩い分け、粒度別に篩い分けられたそれぞれの磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントにおける平均値と偏差を算出する手順の一例を示すフローチャートである。
【0120】
まず、ステップS501において、測定装置100は、篩(不図示)を用いて磁性粉粒体(焼結鉱)4をそれぞれの粒度区分に分ける。ここで、粒度区分とは、篩で分けた磁性粉粒体(焼結鉱)の粒度範囲の区分のことであり、ここでは、25mm〜50mm、10mm〜25mm及び5mm〜10mmの3つとする。
【0121】
続いて、ステップS502において、測定装置100は、各粒度区分の磁性粉粒体(焼結鉱)の質量wiを測定する。ここで、質量wiの「i」は粒度区分を示す番号であり、ここでは、i=1,2,3がそれぞれ25mm〜50mm,10mm〜25mm,5mm〜10mmの3つの粒度区分に対応する。また、このステップS502で各粒度区分iの磁性粉粒体(焼結鉱)の質量wiを測定するのは、後のステップS504において各粒度区分で得られたFeO%の荷重平均を算出するためであり、各粒度区分でのFeO%そのものを算出するためではない。
【0122】
続いて、ステップS503において、各粒度区分iの磁性粉粒体(焼結鉱)を磁性粉粒体4として、第1の実施形態で説明した図1の測定装置100に装入し、図3の測定手順のステップS101〜S105、及び、図5の磁性成分質量パーセントの算出手順のステップS201〜S206にしたがって、マグネタイト換算の質量%であるFe34%を算出後、FeO%を算出することで、各粒度区分iの磁性粉粒体(焼結鉱)のFeO%の測定を行う。ここで得られた各粒度区分iの磁性粉粒体(焼結鉱)のFeO%をFiとする。
【0123】
続いて、ステップS504において、測定装置100のコンピュータ6は、各粒度区分iの磁性粉粒体(焼結鉱)の質量wiとFeO% Fiから、以下の(9)式を用いて、各粒度区分iのFeO%を質量に関して荷重平均することで平均のFeO% Fを算出する。
【0124】
【数9】

【0125】
(9)式において、nは粒度区分の数であり、本実施形態においてはn=3となる。
【0126】
さらに、ステップS504において、測定装置100のコンピュータ6は、各粒度区分iの磁性粉粒体(焼結鉱)のFeO%であるFi、及び、平均のFeO%であるFとから、焼成の一様さを見る指標として、以下の(10)式で表される各粒度区分iのFeO%に関する標準偏差DF、或いは、各粒度区分iの磁性粉粒体(焼結鉱)のFeO%における最大値と最小値の差であるmax(Fi)−min(Fi)(i=1,2,・・・,n)のようなばらつきを表す指標を算出する。
【0127】
【数10】

【0128】
以上、磁性粉粒体(焼結鉱)中の磁性成分は主にマグネタイトであり、Fe34%=FeO%×3.22の比例関係があるため、上述したFeO%を、磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントに置き換えれば、磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントについても同じような平均値と焼成のばらつきを表す指標が算出できる。
【0129】
[本実施形態における作用・効果]
本実施形態によれば、磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントの、全粒度の平均値だけでなく偏差も算出(S504:平均値・偏差算出ステップ)するので、磁性粉粒体の焼成の一様さを知ることができ、品質の良否の判断に使える。この際、焼成が一様でないという結果が得られた場合には、焼成がより一様になる様に、焼成プロセスの製造条件を変更するなどのフィードバックを行うための情報とすることが可能である。
【0130】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。
即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明に含まれる。
【0131】
なお、前述した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0132】
611 インダクタンス取得部、612 見かけの比磁化率算出部、613 較正曲線記憶部、614 第1の嵩密度算出部、615 保持円筒重量取得部、616 第2の嵩密度算出部、617 磁性成分質量パーセント算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻かれた保持円筒に装入された磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントを測定する測定装置であって、
前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率と、前記磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度との関係を示す較正曲線を記憶する較正曲線記憶手段と、
前記磁性粉粒体が前記保持円筒に装入された状態で前記コイルのインダクタンスを取得するインダクタンス取得手段と、
前記インダクタンス取得手段で取得されたインダクタンスに基づいて、前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率を算出する見かけの比磁化率算出手段と、
前記較正曲線を用いて、前記見かけの比磁化率算出手段で算出された磁性粉粒体の見かけの比磁化率から、前記磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度を算出する第1の嵩密度算出手段と、
前記保持円筒の空重量と、前記磁性粉粒体が装入された状態の前記保持円筒の総重量とを取得する保持円筒重量取得手段と、
前記保持円筒の空重量と、前記保持円筒の総重量と、前記保持円筒の内容積とに基づいて、前記磁性粉粒体の嵩密度を算出する第2の嵩密度算出手段と、
前記第1の嵩密度算出手段で算出された磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度と、前記第2の嵩密度算出手段で算出された磁性粉粒体の嵩密度とに基づいて、前記磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントを算出する磁性成分質量パーセント算出手段と
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記較正曲線は、
前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率が、コイルのインダクタンスに基づき得られたものであり、
前記磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度が、磁性粉粒体の嵩密度と磁性粉粒体に含まれる磁性成分の質量パーセントとに基づき得られ、作成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記見かけの比磁化率算出手段は、前記コイルのインダクタンスを用いるとともに、前記コイルと前記保持円筒の配置と大きさ、前記保持円筒の透磁率と導電率をもとにした計算モデルにより、前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率を算出することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項4】
前記見かけの比磁化率算出手段は、
前記コイルと前記保持円筒の配置と大きさ、前記保持円筒の透磁率と導電率をもとにして、前記コイルのインダクタンスから前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率を計算する計算モデルが既知である条件下で、
磁性成分の質量パーセントが既知である基準試料を用いて、前記コイルのインダクタンスと前記計算モデルとから計算された前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率と、前記基準試料の嵩密度と磁性成分の質量パーセントとから計算された当該基準試料の磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度との関係である前記較正曲線を作成し、
前記計算モデルが未知の条件下で、
前記基準試料の磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度と前記較正曲線とから計算された前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率と、前記コイルのインダクタンスとの関係を実験的に求め、
前記インダクタンス取得手段で取得されたインダクタンスに基づいて、前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率を算出することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
コイルが巻かれた保持円筒に装入された磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントを測定する測定装置による測定方法であって、
前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率と、前記磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度との関係を示す較正曲線を較正曲線記憶手段に記憶する較正曲線記憶ステップと、
前記磁性粉粒体が前記保持円筒に装入された状態で前記コイルのインダクタンスを取得するインダクタンス取得ステップと、
前記インダクタンス取得ステップで取得されたインダクタンスに基づいて、前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率を算出する見かけの比磁化率算出ステップと、
前記較正曲線を用いて、前記見かけの比磁化率算出ステップで算出された磁性粉粒体の見かけの比磁化率から、前記磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度を算出する第1の嵩密度算出ステップと、
前記保持円筒の空重量と、前記磁性粉粒体が装入された状態の前記保持円筒の総重量とを取得する保持円筒重量取得ステップと、
前記保持円筒の空重量と、前記保持円筒の総重量と、前記保持円筒の内容積とに基づいて、前記磁性粉粒体の嵩密度を算出する第2の嵩密度算出ステップと、
前記第1の嵩密度算出ステップで算出された磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度と、前記第2の嵩密度算出ステップで算出された磁性粉粒体の嵩密度とに基づいて、前記磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントを算出する磁性成分質量パーセント算出ステップと
を有することを特徴とする測定方法。
【請求項6】
前記磁性粉粒体を所定の粒度区分に応じて粒度別に篩い分ける篩い分けステップを更に有し、
前記粒度別に篩い分けられたそれぞれの磁性粉粒体について、前記インダクタンス取得ステップと、前記見かけの比磁化率算出ステップと、前記第1の嵩密度算出ステップと、前記保持円筒重量取得ステップと、前記第2の嵩密度算出ステップと、前記磁性成分質量パーセント算出ステップとを行って、前記粒度別に篩い分けられたそれぞれの磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントを算出し、
その後、前記粒度別に篩い分けられたそれぞれの磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントの平均値と偏差を算出する平均値・偏差算出ステップを更に有することを特徴とする請求項5に記載の測定方法。
【請求項7】
コイルが巻かれた保持円筒に装入された磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントを測定する測定装置による測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率と、前記磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度との関係を示す較正曲線を較正曲線記憶手段に記憶する較正曲線記憶ステップと、
前記磁性粉粒体が前記保持円筒に装入された状態で前記コイルのインダクタンスを取得するインダクタンス取得ステップと、
前記インダクタンス取得ステップで取得されたインダクタンスに基づいて、前記磁性粉粒体の見かけの比磁化率を算出する見かけの比磁化率算出ステップと、
前記較正曲線を用いて、前記見かけの比磁化率算出ステップで算出された磁性粉粒体の見かけの比磁化率から、前記磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度を算出する第1の嵩密度算出ステップと、
前記保持円筒の空重量と、前記磁性粉粒体が装入された状態の前記保持円筒の総重量とを取得する保持円筒重量取得ステップと、
前記保持円筒の空重量と、前記保持円筒の総重量と、前記保持円筒の内容積とに基づいて、前記磁性粉粒体の嵩密度を算出する第2の嵩密度算出ステップと、
前記第1の嵩密度算出ステップで算出された磁性粉粒体中の磁性成分の嵩密度と、前記第2の嵩密度算出ステップで算出された磁性粉粒体の嵩密度とに基づいて、前記磁性粉粒体中の磁性成分の質量パーセントを算出する磁性成分質量パーセント算出ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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