説明

測定装置

【課題】容量の小さな電源モジュールで複数の計測モジュールを確実に起動させ得る測定装置を提供する。
【解決手段】1つの電源モジュールと、電源モジュールから電源ライン42を介して作動用電力が供給されたときに起動する複数の計測モジュール11とを備えて構成された測定装置1であって、各計測モジュール11は、電源モジュールから供給された作動用電力を供給開始信号Ssに従って計測モジュール11内における測定部22に出力するスイッチ部21と、作動用電力が供給されたときに他の計測モジュール11とは互いに異なるタイミングで供給開始信号Ssをスイッチ部21に出力する制御部23とをそれぞれ備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の計測モジュールを備えて構成された測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、複数の計測モジュール(測定モジュール)とメインモジュールとを備えて構成された多点データ収集装置が特開2004−280325号公報に開示されている。この多点データ収集装置では、メインモジュールが各計測モジュールを制御して予め割り当てられている物理量をそれぞれ測定させることにより、複数の測定点についての物理量を測定することが可能となっている。また、この多点データ収集装置を初めとする測定装置では、一般的に、計測モジュールおよびメインモジュールに対して電源を供給する1つの電源モジュールを備える構成が採用されている。この種の測定装置では、測定装置に対して電源が投入されたときに、メインモジュールは、電源モジュールを制御して、複数の計測モジュールに対する電源供給を同時に開始させる。
【特許文献1】特開2004−280325号公報(第2−6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の測定装置には、以下の問題点がある。すなわち、この種の測定装置では、1つの電源モジュールが複数の計測モジュールに対する電源供給を同時に開始している。したがって、複数の計測モジュールが電源供給の開始時において同時に起動しようとするため、例えば計測モジュールが大量の電力を起動時に消費するFPGA(Field Programmable Gate Array )のような回路を備えているときには、全計測モジュールによって消費される電力も非常に大きくなる。このため、この種の測定装置では、その消費電力が電源モジュールの容量を超えたときには、各計測モジュールに対して起動に必要な電力を供給することができない結果、計測モジュールを起動させることができないという問題点が存在する。この場合、例えば、大容量の電源モジュールを採用することも考えられるが、電源モジュールの大容量化に伴って装置全体の大型化や製造コストの高騰を招くおそれがあるため、この構成を採用するのは困難である。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、容量の小さな電源モジュールで複数の計測モジュールを確実に起動させ得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、1つの電源モジュールと、当該電源モジュールから電源ラインを介して作動用電力が供給されたときに起動する複数の計測モジュールとを備えて構成された測定装置であって、前記各計測モジュールは、前記電源モジュールから供給された前記作動用電力を供給開始信号に従って当該計測モジュール内における所定の回路に出力する切替部と、前記作動用電力が供給されたときに他の前記計測モジュールとは互いに異なるタイミングで前記供給開始信号を前記切替部に出力する制御部とをそれぞれ備えている。なお、本明細書における「計測モジュールの起動」は、計測モジュールの一部の構成要素だけが起動することではなく、計測モジュールによる計測に必要とされるすべての構成要素が起動することをいう。
【0006】
また、請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記複数の計測モジュールには識別情報がそれぞれ付与されて、前記各計測モジュールの前記制御部は、当該計測モジュールに付与された前記識別情報を基にして前記互いに異なるタイミングで前記供給開始信号を出力する。
【0007】
また、請求項3記載の測定装置は、請求項2記載の測定装置において、前記識別情報は、優先順位が予め付与されて構成され、前記各計測モジュールの前記制御部は、当該計測モジュールに付与されている前記識別情報の前記優先順位が未起動の他の前記計測モジュールに付与されているすべての前記識別情報の前記優先順位よりも高くなったときに前記供給開始信号を出力することで前記タイミングを互いに異ならせる。
【0008】
また、請求項4記載の測定装置は、請求項2記載の測定装置において、前記複数の計測モジュールには、前記識別情報として、当該計測モジュール毎に異なる番号がそれぞれ付与されて、前記各計測モジュールの前記制御部は、当該計測モジュールの前記番号に当該計測モジュールの起動時間以上長い時間を乗じた待機時間を算出すると共に、当該待機時間を経過したときに前記供給開始信号を出力することで前記タイミングを互いに異ならせる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の測定装置では、各制御部が、作動用電力の供給時に他の計測モジュールとは互いに異なるタイミングで供給開始信号を各切替部にそれぞれ出力するため、各切替部が他の計測モジュールとは互いに異なるタイミングで作動用電力を出力する。このため、例えば計測モジュールが大量の電力を起動時に消費する回路を所定の回路として備えていたとしても、起動時の消費電力が平均化される結果、複数の計測モジュールにおける起動時の最大消費電力を電源モジュールの容量以下の小さい電力に抑えることができる。したがって、この測定装置によれば、容量の小さな電源モジュールを用いたとしても、各計測モジュールに対して起動に必要な電力を確実に供給することができる結果、複数の計測モジュールのすべてを確実に起動させることができる。
【0010】
また、請求項2記載の測定装置では、各計測モジュールの制御部が、作動用電力の供給時に、その計測モジュールに付与された識別情報を基にして互いに異なるタイミングで供給開始信号を出力する。したがって、この測定装置によれば、例えば各計測モジュールに互いに異なる識別番号を付与することで、各計測モジュールがその各識別情報を基にしたタイミングで別々に起動するため、各計測モジュールの起動するタイミングを簡単に異ならせることができる。
【0011】
また、請求項3記載の測定装置では、各計測モジュールの制御部が、作動用電力の供給時に、その計測モジュールに付与されている識別情報の優先順位が未起動の他の計測モジュールに付与されているすべての識別情報の優先順位よりも高くなったときに、供給開始信号を出力する。したがって、この測定装置によれば、優先度の高い計測モジュールから互いに異なるタイミングで1つずつ順次自動的に起動するため、複数の計測モジュールの起動時における最大消費電力を小さく抑えることができる結果、容量の小さな電源モジュールを用いたとしても、すべての計測モジュールを確実に起動させることができる。
【0012】
また、請求項4記載の測定装置では、各計測モジュールの制御部が、作動用電力の供給時に、その計測モジュールの番号に計測モジュールの起動時間以上長い時間を乗じた待機時間をそれぞれ算出すると共に、各待機時間を経過したときに供給開始信号をそれぞれ出力する。この場合、各計測モジュールに識別番号として付与されている番号が互いに異なっているため、各待機時間も互いに異なっている。したがって、この測定装置によれば、番号が小さい方の計測モジュールから、つまり待機時間が短い方の計測モジュールから互いに異なるタイミングで1つずつ順次自動的に起動するため、複数の計測モジュールの起動時における最大消費電力を小さく抑えることができる結果、容量の小さな電源モジュールを用いたとしても、すべての計測モジュールを確実に起動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る測定装置の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
最初に、本発明に係る測定装置の一例としての測定装置1の構成について、図面を参照して説明する。図1に示す測定装置1は、同図および図2に示すように、複数(一例として3つ)の計測モジュール11a,11b,11c(以下、区別しないときには「計測モジュール11」ともいう)、1つの電源モジュール12、およびモジュールバス13を備えて、測定対象体51についてのパラメータを計測可能に構成されている。
【0015】
計測モジュール11は、モジュールバス13のスロットに装着(着脱)可能に構成されている。また、計測モジュール11は、モジュールバス13に装着された状態において、背面に配設された図外のコネクタとモジュールバス13のコネクタ41(図1参照)とが接続されて、モジュールバス13を介して電源モジュール12に接続される。また、計測モジュール11は、図3に示すように、スイッチ部21、測定部22、制御部23、タイマ24および記憶部25を備えて構成されている。スイッチ部21は、本発明における切替部に相当し、その入力端子がモジュールバス13の電源ライン42に接続されると共に、その出力端子が測定部22に接続されている。この場合、スイッチ部21は、制御部23から供給開始信号Ssが出力されたときに、入力端子と出力端子とを接続して、電源ライン42を介して電源モジュール12から供給される作動用電力を測定部22に出力する。
【0016】
測定部22は、本発明における所定の回路に相当し、例えば、ある程度大きめの電力を起動時に消費すると共に測定回路を構成するFPGA(Field Programmable Gate Array)を備えて構成されている。また、測定部22は、電源モジュール12から作動用電力が供給されたときに電流Iを入力して(消費して)作動すると共に、制御部23の制御に従い、測定対象体51(例えば電源装置)についてのパラメータ(例えば電流)を測定して測定データDmを制御部23に出力する。
【0017】
制御部23は、電源モジュール12から供給される作動用電力で作動して、スイッチ部21、測定部22およびタイマ24を制御する。この場合、制御部23は、電源モジュール12から作動用電力が供給されたときに、直ちに作動して、図4に示す起動処理70を実行する。この起動処理70では、制御部23は、他の計測モジュール11とは互いに異なるタイミングで供給開始信号Ssをスイッチ部21に出力する。この場合、各計測モジュール11では、優先順位が予め付与されて構成された識別情報Idを記憶部25に記憶しており、制御部23は、その識別情報Idの優先順位が未起動の他の計測モジュール11に付与されているすべての識別情報Idの優先順位よりも高くなったときに供給開始信号Ssを出力することで供給開始信号Ssの出力タイミングを互いに異ならせる。ここで、この識別情報Idとしては、例えば、番号の「1」が最も優先順位が高く、番号が大きくなるに従って優先順位が低くなるように規定されている。一例として、この遠隔監視システム1では、計測モジュール11aに「1」の優先順位が付与され、計測モジュール11bに「2」の優先順位が付与され、計測モジュール11cに「3」の優先順位が付与されている。
【0018】
また、制御部23は、電源モジュール12からの作動用電力の供給開始時において、上記の識別情報Idを記憶部25から読み出して、読み出した識別情報Idの出力処理を開始する。また、制御部23は、タイマ24を制御して、供給開始信号Ssの出力時からの経過時間tl1をカウントさせると共に、所定の起動時間tsを経過してタイマ24からタイマ信号が出力されたときに、その出力処理を停止する。また、制御部23は、全ての計測モジュール11a〜11cからの識別情報データIdの出力が停止したときには、測定部22を制御して上記のパラメータ測定を開始させると共に測定部22から出力される測定データDmを記憶部25に記憶させる測定処理を実行する。
【0019】
タイマ24は、制御部23の制御に従い、経過時間tl1をカウントして計測モジュール11の起動時間tsに達したときにタイマ信号を制御部23に出力する。記憶部25は、識別情報Id、測定データDmおよび起動時間データDtを記憶する。ここで、起動時間データDtは、計測モジュール11が起動するのに最低限必要とする上記の起動時間ts(例えば2秒)を示すデータで構成されている。
【0020】
電源モジュール12は、例えば、商用交流に接続されて、モジュールバス13に装着されている計測モジュール11に対して電源ライン42を介して作動用電力を供給する。また、電源モジュール12は、図1に示すように、計測モジュール11に対する作動用電力の供給開始または供給停止用の電源スイッチ31を備えている。モジュールバス13は、各モジュール11,12を装着するための複数のスロット、各モジュール11,12のコネクタ(図示せず)に接続される複数のコネクタ41(図1参照:同図では1つだけを図示する)、各スロットに装着された計測モジュール11に対する電源供給用の電源ライン42、および各スロットに装着された計測モジュール11間のデータ通信用の通信ライン43を備えて構成されている。
【0021】
次に、測定装置1の動作について、図面を参照して説明する。
【0022】
測定対象体51についてのパラメータを測定するときには、図2に示すように、測定対象体51に計測モジュール11を接続すると共に、電源モジュール12の電源スイッチ31(図1参照)を操作する。この際に、電源モジュール12がモジュールバス13の電源ライン42を介して計測モジュール11に対する作動用電力の供給(電源電圧の印加)を開始する。これに応じて、各計測モジュール11の制御部23が、その作動用電力を入力してそれぞれ起動する。なお、この制御部23の起動時(図5に示す時点t1)において全ての計測モジュール11によって消費される総電力(同図に示す電力P1)は、制御部23が殆ど電力を消費しないため、電源モジュール12の電源容量Pmaxと比較して十分に小さい電力となっている。
【0023】
この際に、各制御部23は、図4に示す起動処理70をそれぞれ開始する。この起動処理70では、各制御部23は、まず、識別情報Idを記憶部25からそれぞれ読み出して、読み出した識別情報Idを電源ライン42を介して出力する出力処理をそれぞれ開始する(ステップ71)。この場合、計測モジュール11aが「1」を示す識別情報Idを出力し、計測モジュール11bが「2」を示す識別情報Idを出力し、計測モジュール11cが「3」を示す識別情報Idを出力する。
【0024】
次いで、各制御部23は、各記憶部25から読み出した識別情報Id(以下、この識別情報Idを「自己の識別情報Id」ともいう)の優先順位が他の計測モジュール11から出力されている識別情報Id(以下、この識別情報Idを「他の識別情報Id」ともいう)の優先順位よりも高いか否かをそれぞれ判別する(ステップ72)。この際に、例えば、計測モジュール11aの制御部23は、自己の識別情報Idが「1」であり、他の識別情報Idが「2」および「3」であるため、自己の識別情報Idの優先順位が他の識別情報Idの優先順位よりも高いと判別して、供給開始信号Ssをスイッチ部21に出力する(ステップ73)。この場合、スイッチ部21が、制御部23から出力された供給開始信号Ssに従って作動して、測定部22に対する作動用電力の出力を開始する。これに応じて、測定部22のFPGAが、ある程度大きな作動用電力を消費しつつ起動する。このため、図5に示すように、時点t2においてある程度大きな電力(同図に示す電力P2)が瞬間的に消費されるものの、起動中の測定部22が1つだけのため、その際に消費される電力P2は電源容量Pmax以下となる。
【0025】
続いて、その制御部23は、タイマ24を制御して、供給開始信号Ssの出力時からの経過時間tl1のカウントを開始させる(ステップ74)。次いで、その制御部23は、経過時間tl1が起動時間tsに達した(起動時間tsを経過した)か否かを判別する(ステップ75)。この判別処理の開始時には、その制御部23は、起動時間tsを経過していないと判別して、この判別処理を繰り返し実行する。一方、この時点では計測モジュール11aの識別情報Idの優先順位が最も高いため、計測モジュール11b,11cの各制御部23は、ステップ72の判別処理時において、自己の識別情報Idの優先順位が他の識別情報Idの優先順位よりも低いと判別して、ステップ72の判別処理を繰り返し実行する。
【0026】
次いで、計測モジュール11aにおける供給開始信号Ssの出力時からの経過時間tl1が起動時間tsに達したとき(図5に示す時点t3)には、計測モジュール11aのタイマ24が、タイマ信号を制御部23に出力する。これに応じて、その制御部23は、ステップ75の判別処理時において経過時間tl1が起動時間tsに達したと判別して、識別情報Idの出力を停止する(ステップ76)。この状態では、計測モジュール11aが既に起動しているため、図5に示すように、その状態で消費される電力は上記の電力P1よりも若干増加して電力P3となる。続いて、計測モジュール11aの制御部23は、全ての識別情報Idの出力が停止したか否かを判別する(ステップ77)。この際には、識別情報Idが他の計測モジュール11からまだ出力されているため、その制御部23は、全ての識別情報Idの出力が停止されていないと判別して、ステップ77の判別処理を繰り返し実行する。
【0027】
この場合、計測モジュール11aからの識別情報Idの出力が停止されたため、通信ライン43には、2つの計測モジュール11b,11cから「2」および「3」を示す識別情報Idが出力される。このため、計測モジュール11bの制御部23が、ステップ72の判別処理時において自己の識別情報Idの優先順位が他の識別情報Idの優先順位よりも高いと判別して、上記した計測モジュール11aの制御部23による処理と同様にして、測定部22を起動させる。
【0028】
また、図5に示すように、計測モジュール11bの測定部22の起動時(同図における時点t4)には、ある程度大きな電力(同図に示す電力P4)が瞬間的に消費されるものの、起動中の測定部22が1つという上記の理由により、その際に消費される電力P4も電源容量Pmax以下となる。次いで、その制御部23は、計測モジュール11aの制御部23による処理と同様にして、ステップ74,75の処理を実行する。一方、この時点では計測モジュール11bの識別情報Idの優先順位が最も高いため、計測モジュール11cの制御部23は、ステップ72の判別処理時において、自己の識別情報Idの優先順位が他の識別情報Idの優先順位よりも低いと判別して、ステップ72の判別処理を繰り返し実行する。
【0029】
続いて、計測モジュール11bにおける供給開始信号Ssの出力時からの経過時間tl1が起動時間tsに達したとき(図5に示す時点t5)には、計測モジュール11bのタイマ24がタイマ信号を制御部23に出力する。これに応じて、その制御部23は、ステップ75の判別処理時において経過時間tl1が起動時間tsに達したと判別して、識別情報Idの出力を停止する(ステップ76)。この状態では、計測モジュール11bの測定部22が既に起動しているため、図5に示すように、この状態で消費される電力は上記の電力P3よりも若干増加して電力P5となる。次いで、その制御部23は、計測モジュール11aの制御部23による処理と同様にして、ステップ77の判別処理を繰り返し実行する。
【0030】
この際には、計測モジュール11bからの識別情報Idの出力が停止されたため、通信ライン43には、計測モジュール11cから「3」を示す識別情報Idだけが出力される。このため、その計測モジュール11cの制御部23が、ステップ72の判別処理時において、自己の識別情報Idの優先順位が他の識別情報Idの優先順位よりも高いと判別して、上記の計測モジュール11aの制御部23による処理と同様にして、測定部22を起動させる。
【0031】
また、図5に示すように、計測モジュール11cの測定部22の起動時(同図における時点t6)には、ある程度大きな電力(同図に示す電力P6)が瞬間的に消費されるものの、上記の理由により、その際に消費される電力P6も電源容量Pmax以下となる。続いて、その制御部23は、計測モジュール11aの制御部23による処理と同様にして、ステップ74,75の処理を実行する。この場合、計測モジュール11cが既に起動しているため、同図に示すように、その際に消費される電力は上記の電力P5よりも若干増加して電力P7となる。次いで、計測モジュール11cにおける供給開始信号Ssの出力時からの経過時間tl1が起動時間tsに達したとき(同図に示す時点t7)には、計測モジュール11cのタイマ24が、タイマ信号を制御部23に出力する。これに応じて、その制御部23は、ステップ75の判別処理時において経過時間tl1が起動時間tsに達したと判別して、識別情報Idの出力を停止する(ステップ76)。この際には、全ての計測モジュール11cからの識別情報Idの出力が停止しているため、3つの計測モジュール11a〜11cの各制御部23は、ステップ77の判別処理時において全ての識別情報Idの出力が停止したと判別する。続いて、各制御部23は、各測定部22を制御して上記のパラメータ測定をそれぞれ開始させると共に各測定部22から出力される測定データDmを記憶部25にそれぞれ記憶させる測定処理を開始して(ステップ78)、この起動処理70を終了する。
【0032】
以上により、この測定装置1では、各計測モジュール11のスイッチ部21が制御部23の制御に従って他の計測モジュール11とは互いに異なるタイミング(図5に示す時点t1,t3,t5)で作動して作動用電力を出力して測定部22を起動させるため、複数の計測モジュール11の起動時における最大消費電力が小さく抑えられて、容量の小さな電源モジュール12を用いたとしても、すべての計測モジュール11が確実に起動する。また、この測定装置1では、自己の識別情報Idの優先順位が他のすべての識別情報Idの優先順位よりも高くなった計測モジュール11aの制御部23が供給開始信号Ssを順次出力することにより、優先順位の高い計測モジュール11から互いに異なるタイミングで1つずつ順次起動する。
【0033】
このように、この測定装置1では、各制御部23が、作動用電力の供給時に他の計測モジュール11とは互いに異なる起動のタイミング(図5に示す時点t1,t3,t5)で供給開始信号Ssを各スイッチ部21にそれぞれ出力する。この場合、各スイッチ部21が他の計測モジュール11とは互いに異なるタイミングで作動用電力をそれぞれ出力するため、各計測モジュール11を互いに異なるタイミングで起動させることができる。このため、各測定部22がある程度大きな電力を起動時に消費したとしても、その消費電力が平均化される結果、複数の計測モジュール11における起動時の最大消費電力を電源モジュール12の電源容量Pmax以下の小さい電力に抑えることができる。したがって、この測定装置1によれば、容量の小さな電源モジュール12を用いたとしても、3つの計測モジュール11a〜11cに対して、起動に必要な電力を確実に供給することができる結果、3つの計測モジュール11a〜11cのすべてを確実に起動させることができる。
【0034】
また、この測定装置1では、各計測モジュール11の制御部23が、作動用電力の供給時に、その計測モジュール11に付与された識別情報Idを基にして互いに異なるタイミングで供給開始信号Ssを出力する。したがって、この測定装置1によれば、各計測モジュールに互いに異なる識別番号を付与することで、各計測モジュール11がその各識別情報Idを基にしたタイミングで別々に起動するため、各計測モジュール11の起動するタイミングを簡単に異ならせることができる。
【0035】
また、この測定装置1では、各計測モジュール11の制御部23は、作動用電力の供給時に、その計測モジュール11に付与されている識別情報Idの優先順位が未起動の他の計測モジュール11に付与されているすべての識別情報Idの優先順位よりも高くなったときに、供給開始信号Ssを出力する。したがって、この測定装置1によれば、優先度の高い計測モジュール11から互いに異なるタイミングで1つずつ順次自動的に起動するため、複数の計測モジュール11の起動時における最大消費電力を小さく抑えることができる結果、容量の小さな電源モジュール12を用いたとしても、すべての計測モジュール11を確実に起動させることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、識別情報Idの番号の小さいほど高い優先順位を有する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、識別情報Idの番号の大きいほど高い優先順位を有する構成を採用することもできる。また、識別情報Idの数値の順序と優先順位の順序とを対応させず、例えば「2」、「3」および「1」のような任意の順序で優先順位が高くなるように優先順位を付与することもできる。また、各計測モジュール11がその起動の完了を他の計測モジュール11に識別させるために識別情報Idの出力を停止する構成について上記したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各計測モジュール11がその起動の完了を示す任意のデータを出力する構成を採用することもできる。
【0037】
次に、本発明に係る測定装置の別の一例としての測定装置1Aの構成について、図面を参照して説明する。図1に示す測定装置1Aは、同図および図2に示すように、上記の計測モジュール11a〜11cに代えて計測モジュール111a,111b,111c(以下、区別しないときには「計測モジュール111」ともいう)を備えている点を除いて上記した測定装置1と同等に構成されている。なお、計測モジュール111における制御部23、タイマ24および記憶部25については、上記した計測モジュール11の制御部23、タイマ24および記憶部25とは一部の機能が異なっているため、以下、主として相違する機能について説明し、重複する説明を省略する。また、測定装置1および計測モジュール11と同じ構成要素については同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0038】
制御部23は、電源モジュール12からの作動用電力の供給開始時において、図6に示す起動処理80を実行する。この起動処理80では、各計測モジュール111の制御部23は、その計測モジュール111に付与された整数の番号(本発明における識別情報の他の一例)Nに起動時間ts以上長い時間(例えば3秒)を乗じて待機時間twを算出する。この場合、各制御部23は、タイマ24を制御して、作動用電力の供給開始時からの経過時間tl2をカウントさせると共に、その経過時間tl2が待機時間twに達したとき(待機時間twを経過したとき)に供給開始信号Ssを出力することで供給開始信号Ssの出力タイミングを互いに異ならせる。ここで、この測定装置1Aでは、計測モジュール111毎に識別番号Idとして互いに異なる番号Nがそれぞれ付与されている。例えば、この番号Nとして、計測モジュール111aには整数の「1」が付与され、計測モジュール111bには整数の「2」が付与され、計測モジュール111cには整数の「3」が付与されている。
【0039】
また、制御部23は、電源モジュール12からの作動用電力の供給開始時において、この番号Nを示す識別情報Idを記憶部25から読み出して、読み出した識別情報Idの出力処理を開始する。また、制御部23は、タイマ24を制御して、供給開始信号Ssの出力時からの経過時間tl3をカウントさせると共に、起動時間tsを経過したときにはその出力処理を停止する。また、制御部23は、全ての計測モジュール111a〜111cからの識別情報Idの出力が停止したときには、測定部22を制御して、上記のパラメータ測定を開始させると共に測定部22から出力される測定データDmを記憶部25に記憶させる測定処理を実行する。
【0040】
タイマ24は、制御部23の制御に従い、電流Iの供給開始時からの経過時間tl2をカウントして待機時間twに達したときにタイマ信号を制御部23に出力すると共に、供給開始信号Ssの出力時からの経過時間t3をカウントして起動時間tsに達したときにもタイマ信号を制御部23に出力する。また、記憶部25は、識別情報Id、測定データDmおよび起動時間データDtを記憶する。
【0041】
次に、測定装置1Aの動作について、図面を参照して説明する。
【0042】
測定対象体51についてのパラメータを測定するときには、図2に示すように、測定対象体51を計測モジュール111に接続すると共に、電源スイッチ31(図1参照)を操作する。この際に、電源モジュール12が電源ライン42を介して計測モジュール111に対する作動用電力の供給を開始する。これに応じて、各計測モジュール111の制御部23がそれぞれ起動する。なお、この制御部23の起動時(図7に示す時点t11)において全ての計測モジュール111によって消費される電力(同図に示す電力P11)は、制御部23が殆ど電力を消費しないため、電源モジュール12の電源容量Pmaxと比較して十分に小さい電力となっている。
【0043】
この際に、各制御部23は、図6に示す起動処理80をそれぞれ開始する。この起動処理80では、各制御部23は、まず、図4の起動処理70のステップ71の処理と同様にして、識別情報Idの出力処理をそれぞれ開始する(ステップ81)。この際には、計測モジュール111aが「1」を示す識別情報Idを出力し、計測モジュール111bが「2」を示す識別情報Idを出力し、計測モジュール111cが「3」を示す識別情報Idを出力する。
【0044】
次いで、各制御部23は、各記憶部25から読み出した各識別情報Idの示す番号Nに起動時間ts以上長い時間(この場合3秒)を乗じて待機時間twをそれぞれ算出する(ステップ82)。この場合、例えば、計測モジュール111aの制御部23は、計測モジュール111aに付与された番号N(この場合「1」)に3秒を乗じた3秒を待機時間tw(以下、この待機時間twを「待機時間tw1」ともいう)として算出する。同様にして、計測モジュール111bの制御部23は、計測モジュール111bに付与された番号N(この場合「2」)に3秒を乗じた6秒を待機時間tw(以下、この待機時間twを「待機時間tw2」ともいう)として算出する。また、計測モジュール111cの制御部23は、計測モジュール111cに付与された番号N(この場合「3」)に3秒を乗じた9秒を待機時間tw(以下、この待機時間twを「待機時間tw3」ともいう)として算出する。
【0045】
続いて、各制御部23は、各タイマ24を制御して、作動用電力の供給開始時からの経過時間tl2のカウントをそれぞれ開始させる(ステップ83)。次いで、各制御部23は、経過時間tl2が各待機時間twに達したか否かをそれぞれ判別する(ステップ84)。この場合、各制御部23は、各待機時間twを経過するまでは、経過時間tl2が待機時間twに達していないと判別して、この判別処理を繰り返し実行する。続いて、例えば、待機時間tw1(この場合3秒)を経過したとき(図7に示す時点t12)には、計測モジュール111aの制御部23は、ステップ84の判別処理時において経過時間tl2が待機時間tw1に達したと判別して、供給開始信号Ssをスイッチ部21に出力する(ステップ85)。この際に、スイッチ部21が、制御部23から出力された供給開始信号Ssに従い、測定部22に対する作動用電力の出力を開始する。この場合、図7に示すように、その測定部22の起動時(同図に示す時点t13)において、ある程度大きな電力(同図に示す電力P13)が瞬間的に消費されるものの、起動中の測定部22が1つだけのため、その際に消費される電力P13は電源容量Pmax以下となる。
【0046】
次いで、その制御部23は、タイマ24を制御して、供給開始信号Ssの出力時からの経過時間tl3のカウントを開始させる(ステップ86)。続いて、その制御部23は、経過時間tl3が起動時間tsに達したか否かを判別する(ステップ87)。この際に、その制御部23は、起動時間tsを経過するまでは、起動時間tsに達していないと判別して、ステップ87の判別処理を繰り返し実行する。次いで、起動時間tsを経過したとき(図7に示す時点t14)には、その制御部23は、経過時間tl3が起動時間tsに達したと判別して、識別情報Idの出力を停止する(ステップ88)。この状態では、計測モジュール111aの測定部22が既に起動しているため、図7に示すように、その状態で消費される電力は上記の電力P11よりも若干増加して電力P14となる。続いて、その制御部23は、全ての識別情報Idの出力が停止したか否かを判別する(ステップ89)。この際には、識別情報Idが他の計測モジュール111からまだ出力されているため、その制御部23は、全ての識別情報Idの出力が停止されていないと判別して、ステップ89の判別処理を繰り返し実行する。
【0047】
一方、計測モジュール111bの制御部23は、上記した計測モジュール111aの制御部23による処理と同様にして、ステップ84〜89の処理を実行する。この場合、図7に示すように、待機時間tw2(この場合6秒)を経過したとき(同図に示す時点t15)には、計測モジュール111bの制御部23は、ステップ84の判別処理時において経過時間tl2が待機時間tw2に達したと判別して、供給開始信号Ssをスイッチ部21に出力する(ステップ85)。この際には、同図に示すように、測定部22の起動時(時点t16)において、ある程度大きな電力(同図に示す電力P16)が瞬間的に消費されるものの、上記の理由により、その際に消費される電力P16も電源容量Pmax以下となる。次いで、経過時間tl3が起動時間tsに達したとき(同図に示す時点t17)には、その制御部23は、起動時間tsに達したと判別して、識別情報Idの出力を停止する(ステップ88)。この状態では、計測モジュール111bが既に起動しているため、同図に示すように、その状態で消費される電力は上記の電力P14よりも若干増加して電力P17となる。
【0048】
また、計測モジュール111cの制御部23は、計測モジュール111aの制御部23による処理と同様にして、ステップ84〜89の処理を実行する。この場合、図7に示すように、待機時間tw3(この場合9秒)を経過したとき(同図に示す時点t18)には、計測モジュール111cの制御部23は、ステップ84の判別処理時において経過時間tl2が待機時間tw3に達したと判別して、供給開始信号Ssをスイッチ部21に出力する(ステップ85)。この際には、同図に示すように、測定部22の起動時(時点t19)において、ある程度大きな電力(同図に示す電力P19)が瞬間的に消費されるものの、上記の理由により、その状態で消費される電力P19も電源容量Pmax以下となる。次いで、起動時間tsに達したとき(同図に示す時点t20)には、制御部23は、経過時間tl3が起動時間tsに達したと判別して、識別情報Idの出力を停止する(ステップ88)。この状態では、計測モジュール111cが既に起動しているため、同図に示すように、その状態で消費される電力は上記の電力P17よりも若干増加して電力P20となる。
【0049】
この際には、全ての計測モジュール111cからの識別情報Idの出力が停止されているため、3つの計測モジュール111a〜111cの各制御部23は、ステップ89の判別処理時において全ての識別情報Idの出力が停止したと判別する。次いで、各制御部23は、起動処理70におけるステップ78の処理と同様にして、測定処理を開始して(ステップ90)、この起動処理80を終了する。
【0050】
このように、この測定装置1Aでは、各計測モジュール111の制御部23が、作動用電力の供給時に、その計測モジュール111の番号Nに起動時間ts以上長い時間(この場合3秒)を乗じた待機時間twをそれぞれ算出すると共に、各待機時間twを経過したときに供給開始信号Ssをそれぞれ出力する。この場合、各計測モジュール111に識別番号Idとして付与されている番号Nが互いに異なっているため、各待機時間twも互いに異なっている。したがって、この測定装置1Aによれば、番号Nが小さい方の計測モジュール111から、つまり待機時間twが短い方の計測モジュール111から互いに異なるタイミングで1つずつ順次自動的に起動するため、複数の計測モジュール111の起動時における最大消費電力を小さく抑えることができる結果、容量の小さな電源モジュール12を用いたとしても、すべての計測モジュール111を確実に起動させることができる。
【0051】
なお、起動時間ts以上長い時間として「3秒」を識別情報としての番号Nに乗じて待機時間twを算出する構成例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、起動時間ts以上長い任意の時間を番号Nに乗じて待機時間twを算出することができる。また、番号Nを整数だけでなく、各計測モジュール111が起動している時間が重なり合わない限り、純小数(例えば、0.5)や帯小数(例えば、1.5,2.5等)を付与することもできる。この構成では、最初に起動させる計測モジュール111に付与する番号Nを純小数(例えば、0.5)とすることで、起動開始時間を早めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】測定装置1,1Aの構成を示す構成図である。
【図2】測定装置1,1Aの構成を示すブロック図である。
【図3】計測モジュール11,111の構成を示すブロック図である。
【図4】起動処理70のフローチャートである。
【図5】測定装置1の起動時に消費される電力Pを示す特性図である。
【図6】起動処理80のフローチャートである。
【図7】測定装置1Aの起動に消費される電力Pを示す特性図である。
【符号の説明】
【0053】
1,1A 測定装置
11a〜11c,111a〜111c 計測モジュール
12 電源モジュール
13 モジュールバス
21 スイッチ部
22 測定部
23 制御部
24 タイマ
25 記憶部
42 電源ライン
I 電流
Id 識別情報
N 番号
P1〜P7,P11〜P20 電力
Ss 供給開始信号
t1〜t7,t11〜t20 時点
ts 起動時間
tw1〜tw3 待機時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの電源モジュールと、当該電源モジュールから電源ラインを介して作動用電力が供給されたときに起動する複数の計測モジュールとを備えて構成された測定装置であって、
前記各計測モジュールは、前記電源モジュールから供給された前記作動用電力を供給開始信号に従って当該計測モジュール内における所定の回路に出力する切替部と、前記作動用電力が供給されたときに他の前記計測モジュールとは互いに異なるタイミングで前記供給開始信号を前記切替部に出力する制御部とをそれぞれ備えている測定装置。
【請求項2】
前記複数の計測モジュールには識別情報がそれぞれ付与されて、
前記各計測モジュールの前記制御部は、当該計測モジュールに付与された前記識別情報を基にして前記互いに異なるタイミングで前記供給開始信号を出力する請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記識別情報は、優先順位が予め付与されて構成され、
前記各計測モジュールの前記制御部は、当該計測モジュールに付与されている前記識別情報の前記優先順位が未起動の他の前記計測モジュールに付与されているすべての前記識別情報の前記優先順位よりも高くなったときに前記供給開始信号を出力することで前記タイミングを互いに異ならせる請求項2記載の測定装置。
【請求項4】
前記複数の計測モジュールには、前記識別情報として、当該計測モジュール毎に異なる番号がそれぞれ付与されて、
前記各計測モジュールの前記制御部は、当該計測モジュールの前記番号に当該計測モジュールの起動時間以上長い時間を乗じた待機時間を算出すると共に、当該待機時間を経過したときに前記供給開始信号を出力することで前記タイミングを互いに異ならせる請求項2記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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