説明

測定装置

【課題】反射光を利用して生体情報を測定する測定装置において、従来よりも部品点数を少なくしつつ、測定対象のずれの影響を低減する。
【解決手段】CPU171は、照射部11を順次移動させつつ予め決められた光源点で発光させて、光源点に対応する受光点に順次移動させた受光部12に反射光を受光させる。受光素子120により受光された反射光の強度に応じた電気信号は、受光部12により生成されて、増幅回路177、復調回路178およびA/Dコンバータ179を経てデジタル値に変換され、CPU171へ出力される。CPU171は、各反射点に対応する振幅デジタル値と、これらのデジタル値から求められた血中酸素飽和度とを、各反射点に対応付けて記憶する。そして、CPU171は、各反射点に対応する振幅デジタル値の中から最も大きいものを選択し、これに対応する反射点における血中酸素飽和度を、生体の血中酸素飽和度として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射光を利用して生体情報を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射光を利用して生体情報を測定する測定装置の一例として、発光素子により血液試料に光を照射し、その血液試料から反射される反射光を受光素子により受光して、血中酸素飽和度を測定する装置がある(例えば、特許文献1)。このような装置は、生体を侵襲することなく、例えば指先、腕、または耳などの計測部位に発光素子と受光素子とをあてがうことにより、その生体の動脈の血中酸素飽和度を測定する。しかし、計測部位にこれらをあてがうときに発光素子や受光素子の配置が動脈からずれてしまうと、測定ができない場合がある。また、日常生活の動きなど外乱による影響を受けて、動脈の位置が変化することもある。特許文献2には、センサモジュール(発光素子と受光素子)の位置ずれにリアルタイムに対応する計測装置が記載されている。
【特許文献1】特開昭63−92335号公報
【特許文献2】特開2006−271896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら特許文献2の計測装置には、発光素子と受光素子とをそれぞれ複数個設けなければならず、製造コストが嵩むものであった。
本発明は、上述した背景に鑑みてなされたものであり、反射光を利用して生体情報を測定する測定装置において、従来よりも部品点数を少なくしつつ、測定対象のずれの影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するため、本発明に係る測定装置は、生体の表面に光を照射する移動可能な照射手段と、光を受光し、その受光強度に応じた信号を出力する移動可能な受光手段と、前記照射手段を複数の照射位置へと順次移動させつつ、各々の当該照射位置における当該照射手段から照射された光の反射光を受光する受光位置へと前記受光手段を順次移動させる移動手段と、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号が示す受光強度に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成する生体情報生成手段とを具備することを特徴とする。
これにより、本発明に係る測定装置は、従来よりも部品点数を少なくしつつ、測定対象のずれの影響を低減することができる。
【0005】
好ましくは、前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号が示す受光強度、または各受光強度の振幅値をそれぞれ閾値と比較した比較結果に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成するとよい。
これにより、本発明に係る測定装置は、従来よりも部品点数を少なくしつつ、測定対象のずれの影響を低減し、かつ、十分な測定精度を確保することができる。
【0006】
また、好ましくは、前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号が示す受光強度をそれぞれ閾値と比較し、閾値よりも弱い当該受光強度に応じた一つの信号を特定し、特定された当該一つの信号に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成するとよい。
これにより、本発明に係る測定装置は、従来よりも部品点数を少なくしつつ、測定対象のずれの影響を低減し、かつ、十分な測定精度を確保することができる。
【0007】
また、好ましくは、前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号が示す受光強度の振幅値をそれぞれ閾値と比較し、前記閾値を超える振幅値を持つ当該受光強度に応じた一つの信号を特定し、特定された当該一つの信号に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成するとよい。
これにより、本発明に係る測定装置は、従来よりも部品点数を少なくしつつ、測定対象のずれの影響を低減し、かつ、十分な測定精度を確保することができる。
【0008】
また、好ましくは、前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号、または各受光強度の振幅値を相互に比較した比較結果に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成するとよい。
これにより、本発明に係る測定装置は、従来よりも部品点数を少なくしつつ、測定対象のずれの影響を低減し、かつ、複数の測定値のなかから最も信頼性の高い測定値を選択することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号のうち、最も弱い受光強度に応じた一つの信号を特定し、特定された当該一つの信号に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成するとよい。
これにより、本発明に係る測定装置は、従来よりも部品点数を少なくしつつ、測定対象のずれの影響を低減し、かつ、複数の測定値のなかから最も信頼性の高い測定値を選択することができる。
【0010】
また、好ましくは、前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号のうち、最も振幅値が大きい受光強度に応じた一つの信号を特定し、特定された当該一つの信号に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成するとよい。
これにより、本発明に係る測定装置は、従来よりも部品点数を少なくしつつ、測定対象のずれの影響を低減し、かつ、複数の測定値のなかから最も信頼性の高い測定値を選択することができる。
【0011】
また、好ましくは、前記生体情報生成手段は、前記各信号のうち前記比較結果が所定の条件を満たす複数の信号を特定し、特定された当該複数の信号が示す受光強度の平均値に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成するとよい。
これにより、本発明に係る測定装置は、従来よりも部品点数を少なくしつつ、測定対象のずれの影響を低減し、かつ、安定した測定を行うことができる。
【0012】
また、好ましくは、前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号が示す受光強度を、各受光位置へと移動させられた受光手段と当該各受光位置に対応する照射位置へと移動させられた前記照射手段との間の距離に応じてそれぞれ補正し、補正された各受光強度に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成するとよい。
これにより、本発明に係る測定装置は、従来よりも部品点数を少なくしつつ、照射手段から複数の受光手段までの各距離の差による影響を除いた上で、測定対象のずれの影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態について説明する。ここでは本発明に係る測定装置の一例である測定装置1について説明する。
[実施形態]
(1.構成)
図1は、本発明の実施形態に係る測定装置1の使用状態の外観を示す図である。図1に示すように、測定装置1は、直方体状の装置である。図1において測定装置1の筐体10のうち、装着時に腕3から最も遠くにある面を正面板101と呼び、この正面板101に対向し、装着時に腕3に接する図示しない面を背面板102と呼ぶ。この測定装置1は、バンド2に連結されており、このバンド2を腕3の手首に巻き付けることにより、測定装置1の背面板102が腕3の所定の測定部位に向いて固定される。また、このように固定されたときにおいて、測定装置1の側面板のうち、上腕に近い側面板を側面板103と呼び、手指に近い側面板を側面板104と呼ぶ。
測定装置1の正面板101には、複数のボタンなどにより構成される操作部18と、7セグメントディスプレイやドットマトリックスディスプレイなどにより測定値を表示する表示部19とが設けられている。操作部18および表示部19の詳細は後述する。手首に巻きつけたバンド2が図1に示す矢線D11方向や矢線D12方向にずれることにより、測定装置1と腕3の動脈との位置関係が変動する。
【0014】
図2は、測定装置1の内部構成を説明するための図である。照射部11は、生体の表面に光を照射する移動可能な照射手段の一例であり、異なる2種類の波長λaおよび波長λbの単色光をそれぞれ照射する2つの発光素子110aおよび発光素子110b(図2ににおいて図示せず)を有する。これらの発光素子は例えばLED(Light Emitting Diode)などである。発光素子110aによって照射される波長λaの単色光は赤色光であり、波長λaは例えば660nmである。発光素子110bによって照射される波長λbの単色光は赤外線であり、波長λbは例えば900nmである。ここで、血中酸素飽和度は、血液中の全ヘモグロビン濃度に対する二酸化ヘモグロビン濃度の比率として定義される。波長λa=660nmの赤色光を受けた場合と、波長λb=900nmの赤外線を受けた場合とで、酸素と結合しているヘモグロビンである二酸化ヘモグロビンと、酸素と結合していないヘモグロビンとの吸光度比が異なるので、この吸光度比の違いに基づいて、測定装置1は、血中酸素飽和度を算出する。
また、照射部11が照射する光は動脈の通っていない部位に照射されると、動脈の通っている部位に照射された場合に比較して吸収される度合いが低い。したがって、動脈の通っていない部位により反射された反射光は動脈の通っている部位により反射された反射光よりその強度が強い光になる。
【0015】
発光素子110aと発光素子110bの各光源の位置は、測定装置1の寸法に比較して略同一と見做せるほど近い位置に存在する。照射部11は台座140に固定されている。この台座140は、ステッピングモータなどを有する第一駆動部142が駆動することにより照射部11を伴って、側面板103に沿って設けられた動力伝達部141によって矢線D21方向またはその逆方向に移動する。この台座140、動力伝達部141および第一駆動部142は、照射部11を移動させる第一移動部14の構成要素である。なお、これら第一移動部14の構成要素はどのような運動伝達機構であってもよい。例えば、第一駆動部142は滑車であり、動力伝達部141はこの滑車に掛け回されたベルトであってもよい。この場合、滑車が回転するのに伴ってベルトが移動し、ベルトに連結された台座140が矢線D21方向またはその逆方向に移動すればよい。また、動力伝達部141に替えてレールを配置し、台座140にこのレール上を移動する車輪を配置して、台座140に内蔵した第一駆動部142により車輪を回転させて移動を行ってもよい。さらに、レールに替えてラックを、車輪に替えてピニオンをそれぞれ用いてもよい。
【0016】
受光部12は、フォトダイオードなどで構成される受光素子120を有する。受光素子120は、台座150に固定されている。この台座150は、ステッピングモータなどを有する第二駆動部152が駆動することにより受光部12を伴って、側面板103に対向する側面板である側面板104に沿って設けられた動力伝達部151によって矢線D22方向またはその逆方向に移動する。この台座150、動力伝達部151および第二駆動部152は、受光部12を移動させる第二移動部15の構成要素である。なお、これら第二移動部15の構成要素も、第一移動部14と同様、どのような運動伝達機構であってもよい。筐体10の背面板102には、受光素子120の近傍に照射口16が設けられている。
図3は、図2のIII−III線矢視断面図である。この照射口16は、背面板102に設けられた開口部である。照射部11から照射された上記の赤色光や赤外線は、図3に示す光路Bm0に沿って照射口16を通って腕3の表面により反射され、この反射光は同図に示す光路Bm1に沿って受光素子120により受光される。
【0017】
遮蔽板13は、照射部11から照射される赤色光および赤外線が直接、受光素子120に受光されないように遮蔽する板状の部材である。この遮蔽板13は、筐体10の正面板101から背面板102へ向けて延びている。これにより、図3に示すように、照射部11から照射された赤色光および赤外線のうち、照射口16を通り腕3の表面に当たって反射した反射光のみが受光素子120に受光される。受光素子120は、受光した反射光の受光強度に応じた信号を出力する。すなわち、受光素子120は、光を受光して、その受光強度に応じた信号を出力する受光手段の一例である。
【0018】
筐体10の正面板101には、上述した操作部18および表示部19に加え、これらを制御する制御部17が設けられている。
図4は、制御部17を説明するためのブロック図である。制御部17のCPU(Central Processing Unit)171は、ROM(Read Only Memory)172に記憶されているコンピュータプログラムをRAM(Random Access Memory)173に読み出して実行することにより、測定装置1の各部を制御する。ROM172は、読み出し専用の不揮発性記憶装置であり、上述のコンピュータプログラムが記憶されている。RAM173は、半導体素子等によって構成される読み書き可能な記憶装置であり、CPU171がプログラムを実行する際のワークエリアとして利用される。記憶部174は、例えばフラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性記憶装置であり、CPU171の制御の下、測定値などを記憶する。なお、記憶部174に記憶する内容を全てRAM173に記憶する場合には、記憶部174はなくてもよい。
【0019】
CPU171に内蔵されたタイマは水晶振動子を有する発振回路を備えており、その発振回路から出力される発信信号に基づいて時間を計測する。そして、CPU171は、この発信信号をタイミング発生回路175に出力する。タイミング発生回路175は、発信信号を受け取った回数を記憶するカウンタと、CPU171の指示する閾値を記憶するレジスタと、カウンタおよびレジスタに記憶されたこれらの値を比較した結果に応じてタイミング信号を発生するプロセッサを有する回路である。このタイミング発生回路175は、プロセッサが発生したタイミング信号をドライバ回路176と復調回路178に出力する。ドライバ回路176は、タイミング発生回路175から受け取ったタイミング信号に基づいて、発光素子110aおよび発光素子110bを所定のタイミングで、交互に発光させる駆動回路である。各発光素子110が照射した光は生体の表面に反射され、受光部12の受光素子120に受光される。
【0020】
受光素子120は受光した反射光の強度に応じた電気信号を増幅回路177へ出力し、増幅回路177は、この電気信号を増幅して復調回路178へ出力する。復調回路178は、受光素子120が出力し増幅回路177で増幅された電気信号を受け取り、タイミング発生回路175から受け取ったタイミング信号に基づいて、所定のタイミングにおいて照射を行った各発光素子110にそれぞれ対応付けて、それぞれA/Dコンバータ179へ出力する。A/Dコンバータ179は、復調回路178が各発光素子110にそれぞれ対応付けて出力した各電気信号をデジタル値にそれぞれ変換してCPU171へ出力する。CPU171は、このデジタル値と、ROM172に格納されたプログラムやデータに基づいてRAM173に必要なデータを書込み、またはそのデータを読出して演算を行ない、その結果を表示部19や記憶部174に出力する。また、その演算結果に基づいて、第一移動部14の第一駆動部142と、第二移動部15の第二駆動部152とを同期させつつ駆動させる。
操作部18は、ユーザからの操作を受け取り、その操作に応じた信号をCPU171に出力する。CPU171は、操作部18から受け取った信号に応じて、測定を開始したり中断したりする。
【0021】
(2.動作)
次に測定装置1の動作を説明する。
図5は、初期状態において、正面板101側から見た照射部11と受光部12の配置を示した図である。CPU171は、第一移動部14を制御して照射部11を移動させつつ、第二移動部15を制御して受光部12を移動させて、照射部11および受光部12を図5に示す位置にそれぞれ配置させる。そして、CPU171は、照射部11の2つの発光素子110を交互に発光させて、受光部12に反射光を受光させる。これにより、照射部11の光源の位置である光源点は光源点P1aとなり、この光源点P1aから照射された光が照射口16を通って腕3の表面に当たる位置である反射点は、反射点Paとなる。そして、この反射点Paにおいて反射された反射光が受光部12の受光素子120により受光される位置である受光点は、受光点P2aとなる。受光部12の受光素子120は、受光した反射光の受光強度に応じた信号を出力する。照射された生体の表面近傍に動脈がある場合には、反射光の強度は脈動に伴って増減する。CPU171は、受光部12の受光素子120に脈拍の間隔に対して十分な時間に亘って反射光を受光させ、その反射光の受光強度が最も強いときのデジタル値と、最も弱いときのデジタル値との差、すなわち受光強度の振幅値に対応する値(以下、振幅デジタル値という)を反射点Paに対応付けて、記憶部174に記憶する。この振幅デジタル値が大きいほど、動脈中のヘモグロビンの脈動による反射光の増減に対する測定値の感度が大きいということを示しており、測定値の信頼性が高く、ノイズの影響が少ないことを示している。
【0022】
また、CPU171は、これらの各デジタル値を用いて反射点Paにおける血中酸素飽和度SpO2(a)を算出し、算出結果を反射点Paに対応付けて、記憶部174に記憶する。この算出は例えば、以下の式に従って行われる。
SpO2(a)=A−B×(Ir(a)/Iir(a))
ただし、AおよびBは「反射光の受光強度」と「血中酸素飽和度」との相関を表す相関線の回帰定数であり、Irは赤色光の反射光(以下、赤色反射光という)の受光強度、Iirは赤外線の反射光(以下、赤外線反射光という)の受光強度である。そして、各変数に添えて記載された(a)は、上述の「光源点P1a−反射点Pa−受光点P2a」の光路で測定された値であることを示す。そして、上記のIrおよびIirの強度比は、次式の関係から電圧比と関連付けられる。
Ir/Iir=(VDr−VSr)/(VDir−VSir)
ただし、
VDr: 受光強度が最も強いときの赤色反射光に応じた電圧、
VSr: 受光強度が最も弱いときの赤色反射光に応じた電圧、
VDir:受光強度が最も強いときの赤外線反射光に応じた電圧、
VSir:受光強度が最も弱いときの赤外線反射光に応じた電圧、である。
【0023】
続いてCPU171は、第一移動部14を制御して照射部11を図5に示す矢線D51方向に移動させつつ、第二移動部15を制御して受光部12を矢線D52方向に移動させる。これにより、上述した光源点は光源点P1aから光源点P1bに移動し、上述した反射点は反射点Paから反射点Pbに移動し、上述した受光点は受光点P2aから受光点P2bへ移動する。この各位置への移動制御はROM172に記憶されている上述のコンピュータプログラムに予め定められており、第一駆動部142および第二駆動部152を所定時間ずつ駆動することにより実現される。
【0024】
そして、照射部11および受光部12の移動処理が完了した後、CPU171は再び照射部11の2つの発光素子110を交互に発光させて、受光部12に反射光を受光させる。そして、上述と同様、振幅デジタル値、および、各デジタル値を用いて算出した反射点Pbにおける血中酸素飽和度SpO2(b)を、反射点Pbに対応付けて記憶部174に記憶する記憶処理を行う。
【0025】
このような、移動処理→記憶処理の組を複数回(本実施形態においては5回)、繰り返すことで、照射部11は、複数の照射位置である光源点P1a〜P1eへと順次移動し、受光部12は、各々の光源点P1a〜P1eにおける照射部11から照射された光の反射光の受光位置である受光点P2a〜P2eへと順次移動する。すなわち、CPU171と、第一駆動部142および第二駆動部152は、照射部11を複数の照射位置へと順次移動させつつ、各々の当該照射位置における照射部11から照射された光の反射光を受光する受光位置へと受光部12を順次移動させる移動手段の一例である。
【0026】
そして、記憶部174には、反射点Pa〜Peにおける振幅デジタル値、および、血中酸素飽和度SpO2(a)〜SpO2(e)が、反射点Pa〜Peのそれぞれに対応付けて記憶される。CPU171は、上記の振幅デジタル値が最も大きい反射点を特定し、その反射点における血中酸素飽和度SpO2を、その生体の血中酸素飽和度の測定値として表示部19に表示するとともに、記憶部174に記憶する。すなわち、CPU171は、照射部11複数の受光位置において受光部12から出力された各信号が示す受光強度に基づいて、生体に関する生体情報を生成する生体情報生成手段の一例である。
【0027】
以上の動作により、測定装置1は、照射部11と受光部12の双方を複数の位置に移動させて、各位置の測定結果から最も信頼性の高い測定結果を出力するので、バンド2により腕3の表面にあてがわれた測定装置1の照射部11と受光部12が、腕3の動脈に対してずれた位置に置かれたとしても、このずれに影響なく測定を行うことができる。
【0028】
[変形例]
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を適宜組み合わせてもよい。
(1)上述の実施形態において、CPU171は、振幅デジタル値を相互に比較した比較結果に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成する一例として、振幅デジタル値が最も大きい反射点を特定し、その反射点における血中酸素飽和度SpO2を、その生体の血中酸素飽和度の測定値としていたが、CPU171は、振幅デジタル値を予め記憶部174やROM172に記憶されている閾値と比較した比較結果に基づいて、その生体の血中酸素飽和度を測定してもよい。上記の比較として、例えば閾値を超える一つの振幅デジタル値を持つ受光強度に応じた一つの信号を特定し、特定した一つの信号に対応する反射点における血中酸素飽和度を、その生体の血中酸素飽和度の測定値としてもよい。ここで、閾値を超えた振幅デジタル値が複数ある場合には、これらの振幅デジタル値のそれぞれに対応する反射点の中から一つの反射点を選択し、選択した一つの反射点における血中酸素飽和度を生体の血中酸素飽和度の測定値とすればよい。この場合、一つの反射点を選択する方法としては、例えば、反射点Paに最も近い反射点や最も遠い反射点を選択してもよく、また、乱数を利用して選択を行ってもよい。
【0029】
(2)上述の実施形態において、CPU171は、ROM172に記憶された光の進んだ距離に応じた減衰率を読み出して、受光強度に対応するデジタル値を補正してもよい。これにより、測定装置1は、光の進んだ距離の相違による受光強度の減衰の程度への影響を除去することができる。なお、上述の実施形態のように、光源点P0から反射点Pまでの距離がほとんど変わらない場合や、その距離の影響がほとんどないと認められる場合には、上述の補正を省略しても影響がなく、省略により測定装置1の動作速度が上がる。
【0030】
(3)上述の実施形態において、測定装置1の側面板のうち、上腕に近い側面板を側面板103とし、手指に近い側面板を側面板104としたが、側面板103と側面板104の配置は逆であってもよい。
また、上述の実施形態において、測定装置1の筐体10は直方体であったが、筐体10の形状はこれに限られない。例えば、円筒形や楕円形などであってもよい。また、筐体10は、腕の周囲に沿って湾曲した箱状であって、円筒を軸に平行な面で分割した形状をしていてもよい。この場合、上述した円筒における外側面板に相当する面が正面板101であり、この正面板101に対向し、上述した円筒における内側面板に相当する面が背面板102である。そして、固定されたこの背面板102を、腕3の前腕表面に沿うように凹面状に湾曲させることにより、背面板102と腕3とを密着させればよい。
また、上述の実施形態において、直方体の筐体10の中に、一方の側面板に沿って照射部11が移動し、その側面板に対向する他方の側面板に沿って受光部12が移動したが、照射部11と受光部12の移動態様はこれに限られない。例えば、円筒形状の筐体の底面が腕3にあてがわれているような場合において、円筒側面に沿って受光部12が移動してもよいし、円筒側面に沿って照射部11が移動するようにしてもよい。また、照射部11の光源点または受光部12の受光点は移動せず、その光路の方向を変化させるようにしてもよい。すなわち、CPU171は第一移動部14や第二移動部15を駆動して、照射部11による光の照射角度や、受光部12による光の受光角度を変化させてもよい。
【0031】
また、上述の変形例において、測定装置1は、円筒を分割した形状であったが、分割されていない円筒形状であってもよい。例えば、円筒形状の測定装置1を腕3に通して測定してもよい。この場合、照射部11および受光部12は、腕3の全周を移動して照射可能に構成されていてもよい。なお、照射部11の光源点および受光部12の受光点はそれぞれ側面板103および側面板104に沿った直線上に配置されていたが、受光素子120の配置はこのような配置に限られず、任意の配置であってよい。また、各光源点および各受光点の間隔は等間隔であってもよいし、所定の間隔であってもよい。例えば、腕3の表面に沿って、かつ、円に沿って受光点を配置した場合に、受光点は、その円の中心点に対する角度が等しくなるように配置されていてもよい。
【0032】
(4)上述の実施形態において、測定装置1は、腕3にあてがわれたが、生体の表面であればどこにあてがわれてもよい。例えば、測定装置1は足首や耳などにあてがわれてもよい。また、上述の実施形態において、測定装置1は、生体の血中酸素飽和度を測定していたが、生体に関する生体情報を測定するのであれば、生体の血中酸素飽和度以外の生体情報を測定してもよい。例えば、測定装置1は、生体の血糖値を測定してもよい。
【0033】
(5)上述の実施形態において、CPU171は、各反射点のうち、振幅デジタル値が最も大きい反射点を特定していたが、一つの反射点を特定するのではなく、各反射点において測定された値を平均し、その平均値を用いて生体の血中酸素飽和度を示す測定値を生成してもよい。また、各受光強度をそれぞれ閾値と比較した比較結果や各受光強度の振幅値を相互に比較した比較結果が所定の条件を満たす複数の反射点を特定し、その各反射点において測定された値の平均値を用いて生体の血中酸素飽和度を示す測定値を生成してもよい。この複数の反射点を特定する具体的方法は例えば、上述した振幅デジタル値の大きい方から所定の点数(例えば3点)の反射点を特定する、などでもよい。この態様の測定装置を言い換えると、下記の表現となる。
【0034】
生体の表面に光を照射する移動可能な照射手段と、受光した光の受光強度に応じた信号を出力する移動可能な受光手段と、前記照射手段を複数の照射位置へと順次移動させつつ、各々の当該照射位置における当該照射手段から照射された光の反射光の受光位置へと前記受光手段を順次移動させる移動制御手段と、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号が示す受光強度をそれぞれ閾値と比較した比較結果、または、各受光強度の振幅値を相互に比較した比較結果に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成する生体情報生成手段とを具備し、前記生体情報生成手段は、前記各信号のうち前記比較結果が所定の条件を満たす複数の信号を特定し、特定された当該複数の信号が示す受光強度の平均値に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成することを特徴とする測定装置。
【0035】
(6)上述の実施形態において、照射部11は第一移動部14によって、受光部12は第二移動部15によってそれぞれ移動させられていたが、照射部11と受光部12を共通の移動部によって移動させてもよい。この場合、照射部11と受光部12を連結し、いずれか一方を移動させると、これに伴って他方が移動するようにすればよい。すなわち、制御部17は、移動部を制御して照射部11と受光部12の一組を包含する測定部を順次移動させればよい。
【0036】
(7)上述の実施形態において、CPU171は、各反射点における振幅デジタル値を、その反射点に対応付けて、記憶部174に記憶していたが、振幅デジタル値ではなく、受光強度そのものをその反射点に対応付けて、記憶部174に記憶してもよい。
【0037】
(8)上述の実施形態において、照射部11および受光部12が移動させられる位置は、光源点と受光点などで表され、各位置への移動制御はROM172に記憶されているコンピュータプログラムに予め定められていたが、これらの位置は記憶していなくてもよい。例えば、動力伝達部141および動力伝達部151において、所定の間隔ごとに上記の移動方向に沿った力に抗するような抵抗部材を配置しておいてもよい。すなわち、この抵抗部材の近傍を、台座140または台座150が通り過ぎようとしたときに、この抵抗部材から受ける抵抗力を検知して、第一駆動部142または第二駆動部152が停止するようにしておけばよい。また、抵抗部材に替えて、レールの凹凸などでもよい。要するに、測定装置1の移動機構を、機械的な位置決めがなされているような構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る測定装置の使用状態の外観を示す図である。
【図2】測定装置の内部構成を説明するための図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】制御部を説明するためのブロック図である。
【図5】初期状態において、正面板側から見た照射部と受光部の配置を示した図である。
【符号の説明】
【0039】
1…測定装置、10…筐体、101…正面板、102…背面板、103…側面板、104…側面板、11…照射部、110…発光素子、12…受光部、120…受光素子、13…遮蔽板、14…第一移動部、140…台座、141…動力伝達部、142…第一駆動部、15…第二移動部、150…台座、151…動力伝達部、152…第二駆動部、16…照射口、17…制御部、171…CPU、172…ROM、173…RAM、174…記憶部、175…タイミング発生回路、176…ドライバ回路、177…増幅回路、178…復調回路、179…A/Dコンバータ、18…操作部、19…表示部、2…バンド、3…腕。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の表面に光を照射する移動可能な照射手段と、
光を受光し、その受光強度に応じた信号を出力する移動可能な受光手段と、
前記照射手段を複数の照射位置へと順次移動させつつ、各々の当該照射位置における当該照射手段から照射された光の反射光を受光する受光位置へと前記受光手段を順次移動させる移動手段と、
前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号が示す受光強度に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成する生体情報生成手段と
を具備することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号が示す受光強度、または各受光強度の振幅値をそれぞれ閾値と比較した比較結果に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号が示す受光強度をそれぞれ閾値と比較し、閾値よりも弱い当該受光強度に応じた一つの信号を特定し、特定された当該一つの信号に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成する
ことを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号が示す受光強度の振幅値をそれぞれ閾値と比較し、前記閾値を超える振幅値を持つ当該受光強度に応じた一つの信号を特定し、特定された当該一つの信号に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成する
ことを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号、または各受光強度の振幅値を相互に比較した比較結果に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号のうち、最も弱い受光強度に応じた一つの信号を特定し、特定された当該一つの信号に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成する
ことを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記生体情報生成手段は、前記複数の受光位置において前記受光手段から出力された各信号のうち、最も振幅値が大きい受光強度に応じた一つの信号を特定し、特定された当該一つの信号に基づいて、前記生体に関する生体情報を生成する
ことを特徴とする請求項5に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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