説明

測色装置、及び測色方法

【課題】測定対象物に対して所望の温度における色を容易に測定できる測色装置、及び測色方法を提供すること。
【解決手段】測定対象物Aから反射された反射光に基づいて、測定対象物Aの色を測定する測色装置1において、反射光のうち、特定の波長を有する光を透過するエタロン4と、エタロン4を透過した光を受光する受光部5と、受光部5で受光した光の光量を検出する光量検出部611と、測定対象物Aの温度を検出する温度センサー3と、測定対象物Aの色を所望の温度における色に補正するための補正テーブル621,622を用い、光量検出部611で検出した光量、及び温度センサー3で検出された検出温度に基づいて、測定対象物Aの所望の温度における色を算出する色補正部612とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の色を測定する測色装置、及び測色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物の分光的な反射特性を特定することにより測定対象物の色を測定する分光測色装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の装置は、異なる分光特性の白色光を発光可能な複数のLEDと、LEDから出射された光を透過するレンズと、LEDから出射された光を拡散する拡散部材と、測定対象物で反射した光が受光する多色撮像素子と、多色撮像素子で検出したRGBの輝度値情報が入力される制御回路と備えている。この構成によれば、LEDから出射される光は、測定対象物に入射して、測定対象物で反射された光が多色撮像素子に入射する。この際、制御回路は、LEDから出射される光の測定対象物に対する照射角度を制御し、照射角度ごとに、異なる分光特性を有するLEDを発光させる。そして、測定対象物で反射した反射光を多色撮像素子を用いて測定することにより、測定対象物の色を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−226262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、測定対象物の温度が変化することで、測定対象物で反射された光の各波長に対する反射率が変動し、測定対象物の色が変化するサーモクロミズムと呼ばれる現象がある。
特許文献1の測色装置では、測定対象物で反射した反射光を多色撮像素子を用いて測定している。このような測色装置を用いて、サーモクロミズム現象を起こす測定対象物を測定した場合、測定対象物の温度変化により、測定対象物で反射された光の各波長に対する反射率が変動し、ある温度において測定された色と、他の温度において測定された色とが異なるおそれがある。従って、所望の温度環境における測定対象物の色を測定する場合、測定環境を予め所望の温度に設定する必要があるため、測定作業が煩雑化する。
【0005】
本発明の目的は、測定対象物に対して所望の温度における色を容易に測定できる測色装置、及び測色方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測色装置は、測定対象物から反射された反射光に基づいて、前記測定対象物の色を測定する測色装置であって、前記反射光のうち、特定の波長を有する光を透過する干渉フィルターと、前記干渉フィルターを透過した光を受光する受光部と、前記受光部で受光した光の光量を検出する光量検出部と、前記測定対象物の温度を検出する温度検出部と、前記測定対象物の色を所望の温度における色に補正するための補正テーブルを用い、前記光量検出部で検出した光量、及び前記温度検出部で検出された検出温度に基づいて、前記測定対象物の所望の温度における色を算出する色算出部とを備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、干渉フィルターでは、反射光のうち、透過させる波長が設定されており、受光部では、反射光における全ての波長を受光する。そして、光量検出部は、測定対象物で反射された光の各波長の光量を取得する。
本発明によれば、測定対象物の色を所望の温度における色に補正するための補正テーブルを用い、光量検出部で検出した光量、及び温度検出部で検出された検出温度に基づいて、測定対象物の所望の温度における色を算出する色算出部を備える。これによれば、前述したサーモクロミズム現象により、測定対象物の温度変化によって、測定対象物の色が変化した場合であっても、測定環境を予め所望の温度に設定する作業を不要にでき、所望の温度における色を容易に算出することができる。従って、測定対象物に対して所望の温度における色を容易に測定することができる。
【0008】
本発明の測色装置では、前記補正テーブルは、前記測定対象物の各温度における光の各波長に対する前記測定対象物の反射率のデータを有していることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、補正テーブルは、測定対象物の各温度における光の各波長に対する測定対象物の反射率のデータを有している。
ここで、例えば、所定の温度間隔あたりの色度の変化量ΔL、Δa、Δbのデータを参照して、測定対象物を所望の温度における色に補正する場合と比べると、本発明の補正テーブルは、各温度における光の各波長に対する反射率のデータを有しているため、測定対象物の温度を検出すればよく、測定対象物の温度変化を算出する必要がない。さらに、サーモクロミズム現象の要因である反射率の変化に対して、本発明の補正テーブルでの反射率のデータを用いて補正することで、より精度を高めた色測定を行うことができる。
【0010】
本発明の測色装置では、前記補正テーブルは、前記測定対象物のサーモクロミズム特性毎にデータを有していることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、補正テーブルは測定対象物のサーモクロミズム特性毎にデータを有しているので、例えば、測定対象物の色毎のデータを有していれば、様々なバリエーションの色を有する測定対象物の色を容易に測定できる。
【0012】
本発明の測色装置では、前記干渉フィルターは、固定基板と、前記固定基板と対向する可動基板と、前記固定基板に設けられた固定反射膜と、前記可動基板に設けられ、前記固定反射膜と所定寸法を有するギャップを介して対向する可動反射膜とを備え、前記固定基板と前記可動基板との間には、前記ギャップの所定寸法を調整する静電アクチュエーターが設けられることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、波長可変型の干渉フィルターを備えているので、この干渉フィルターにおいて、ギャップを適宜調整することで特定の波長のみ分光させることができる。すなわち、この干渉フィルターによれば、透過させる波長を順次設定でき、反射光における全ての波長を順次透過させることができる。従って、複数の干渉フィルターを用いる必要がなくなるため、装置自体を小型化することができる。
【0014】
本発明の測色装置では、前記色算出部で算出された前記測定対象物の色と、比較対象の色との色差を算出する色差算出部を備えることが好ましい。
【0015】
ここで、比較対象の色とは、利用者が測定対象物の色を目視し、当該色に対応するCIE規格に準拠した基準色空間形式であるCIE-Lab表色系による色や、温度検出部で検出した検出温度における測定対象物の色や、補正テーブルにおいて基準となる基準温度での測定対象物の色等である。
本発明によれば、色算出部で算出された測定対象物の所望の温度における色と、前述した比較対象の色との色差を算出する色差算出部を備える。これによれば、色算出部で算出された色が比較対象の色に対して、どの程度、色差を有するかを評価でき、測色装置の測定精度を評価できる。
【0016】
本発明の測色方法は、測定対象物の色を測定する測色方法であって、前記測定対象物で反射された光を前記干渉フィルターに透過させ、透過した光を前記受光部で受光して、受光した光の光量を検出する光量検出工程と、前記測定対象物の温度を検出する温度検出工程と、前記測定対象物の色を所望の温度における色に補正するための補正テーブルを用い、前記光量検出工程で検出した光量、及び前記温度検出工程で検出された検出温度に基づいて、前記測定対象物の所望の温度における色を算出する色算出工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、光量検出工程で検出した光の光量、及び温度検出工程で検出した検出温度に基づいて、色算出工程では、補正テーブルを用いて、所望の温度における測定対象物の色を算出する。これによれば、測定対象物が温度変化した場合であっても、所望の温度における色を容易に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1、2実施形態に係る測色装置の構成を示すブロック図。
【図2】前記第1実施形態におけるエタロンの概略構成を示す断面図。
【図3】前記第1実施形態における補正テーブルの一例を示す図。
【図4】前記第1実施形態における補正テーブルの一例を示す図。
【図5】前記第1実施形態における補正テーブルの一例を示す図。
【図6】前記第1実施形態における補正テーブルの一例を示す図。
【図7】前記第1実施形態における測色方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
[測色装置の構成]
図1は、本実施形態における測色装置1の構成を示すブロック図である。
測色装置1は、光源装置2と、温度センサー3(温度検出部)と、エタロン4(干渉フィルター)と、受光部5と、制御回路部6と、駆動回路7とを備える。
この測色装置1は、光源装置2から測定対象物Aに向けて例えば、白色光を出射して、測定対象物Aで反射された光である検査対象光をエタロン4に入射させる。そして、エタロン4は入射された検査対象光を分光し、受光部5はエタロン4で分光された各波長の光を受光して、制御回路部6は、各波長における受光した光の光量を取得して、どの波長の色がどの程度含まれているかを分析することで、測定対象物Aの色度(L、a、b)を測定する。具体的には、制御回路部6は、温度センサー3で取得した測定対象物Aの検出温度に基づいて、後述する補正テーブル621を参照して、所望の温度における測定対象物Aの色に補正する。
【0020】
[光源装置の構成]
光源装置2は、光源21と、リフレクター22とを備え、測定対象物Aに対して白色光を出射する。
光源21は、例えば、タングステンランプ、発光ダイオード、白熱灯等であり、白色光を放射状に出射する。
リフレクター22は、光源21から放射状に出射された光を反射し、測定対象物Aに収束させる。
なお、本実施形態では、光源21から出射された光をリフレクター22で反射させて所定位置に収束させていたが、光源21から出射された光を平行光とするレンズ等を用いてもよい。この場合には、前記レンズにより平行化された光が測定対象物Aに入射される。前記レンズを用いた場合には、リフレクター22で反射された光が前記レンズに向かうこととなるため、光源21から出射された光を効率的に利用でき、光の利用効率を高めることができる。
【0021】
[温度センサーの構成]
温度センサー3は、熱電対31を測定対象物Aに接触させて、測定対象物Aの温度を検出し、検出信号を制御回路部6に出力するセンサーである。
なお、熱電対31を有しない温度センサーで測定対象物Aの温度を検出してもよい。
【0022】
[エタロンの構成]
図2は、本実施形態におけるエタロン4の概略構成を示す断面図である。
エタロン4は、例えば、平面視略正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン4は、図2に示すように、固定基板41と、可動基板42とを備え、これらの2枚の基板41,42は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス等の各種ガラスや、水晶等により形成されている。そして、これらの2つの基板41,42は、例えば常温活性化接合などにより接合されることで、一体的に構成されている。
【0023】
また、固定基板41と、可動基板42との間には、固定反射膜43及び可動反射膜44が設けられる。ここで、固定反射膜43は、固定基板41における可動基板42に対向する面に固定され、可動反射膜44は、可動基板42における固定基板41に対向する面に固定されている。また、これらの固定反射膜43および可動反射膜44は、ギャップGを介して対向配置されている。
さらに、固定基板41と可動基板42との間には、固定反射膜43及び可動反射膜44の間のギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター45が設けられている。
【0024】
固定基板41は、厚みが例えば500μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この固定基板41には、図2に示すように、エッチングにより電極形成溝411が形成され、電極形成溝411には、静電アクチュエーター45を構成する第1電極451が形成される。この第1電極451は、図示しない電極引出部を介して駆動回路7(図1参照)に接続されている。
【0025】
可動基板42は、厚みが例えば200μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この可動基板42には、第1電極451に電磁ギャップを介して対向する、静電アクチュエーター45を構成する第2電極452が形成されている。この第2電極452は、図示しない電極引出部を介して駆動回路7(図1参照)に接続されている。
そして、駆動回路7から出力される電圧により、第1電極451及び第2電極452の間に静電引力が働き、ギャップGの間隔(ギャップ間隔)が調整され、当該ギャップ間隔に応じて、エタロン4を透過する光の透過波長が決定される。すなわち、静電アクチュエーター45によりギャップ間隔を適宜調整することで、エタロン4を透過する光が決定されて、エタロン4を透過した光が受光部5で受光される。
【0026】
[駆動回路の構成]
ここで、駆動回路7は、光源装置2、エタロン4の各電極引出部、及び制御回路部6に接続される。この駆動回路7は、例えば利用者の設定入力に基づいて、制御回路部6から所定の制御信号が入力されると、当該制御信号を光源装置2に出力する。これにより、光源装置2は、所定の明るさの白色光を出射する。
また、駆動回路7は、制御回路部6から駆動制御信号が入力されると、当該駆動制御信号をエタロン4へ出力する。これにより、当該駆動制御信号に基づく駆動電圧が各電極引出部を介して、第1電極451及び第2電極452間に印加される。そして、第1電極451及び第2電極452の間に静電引力が働き、ギャップ間隔が調整され、当該ギャップ間隔に応じて、エタロン4を透過する光の透過波長が決定される。
【0027】
[受光部の構成]
受光部5は、光検出器として動作する受光素子であり、例えば、フォトダイオード、フォトIC等で構成される。この受光部5は、エタロン4にて透過された検査対象光を受光すると、受光した検査対象光の光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部5は、制御回路部6に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御回路部6に出力する。
【0028】
[制御回路部の構成]
制御回路部6は、測色装置1の全体動作を制御する。この制御回路部6は、図1に示すように、制御部61、及び記憶部62等により構成されている。
ここで、記憶部62は、例えばメモリーやハードディスクなどの記録媒体を備えて構成され、制御部61での処理に必要な各種プログラム及びデータを適宜読み出し可能に記憶する。このようなプログラムとして、詳しくは後述するが、例えば、制御部61にて実行され、エタロン4にて透過された検査対象光の光量を検出し、検出温度における測定対象物の色を測定する光量検出プログラムや、記憶部62に記憶された後述する補正テーブル621を読み出して、測定対象物Aの所望の温度における色に補正する色補正プログラムや、CIE規格に準拠した基準色空間形式であるCIE-Lab表色系による色度L、a、bと、所望の温度における測定対象物Aの色度L、a、bとの色差を算出する色差算出プログラム等が挙げられる。
【0029】
また、記憶部62には、測定対象物Aの各温度における光の各波長に対する測定対象物Aの反射率、または反射率の変動率の補正テーブル621が測定対象物Aのサーモクロミズム特性毎(色毎)に記憶され、また、図示は省略するが、静電アクチュエーター45の各電極451,452に保持される電荷量に対するギャップ間隔を示すギャップ特性データ、及びギャップ間隔に対する透過光の波長を示す透過特性データ等が記憶されている。
【0030】
制御部61は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等を備えて構成され、記憶部62に記憶されたプログラムを実行する。すなわち、制御部61は、記憶部62に記憶されたプログラム及びデータを処理することにより、各種機能を実現する。このような制御部61は、測定対象物Aの色を測定する際には、当該プログラムを処理することにより、図1に示すように、光量検出部611と、色補正部612(色算出部)と、色差算出部613とを機能として実現する。
【0031】
ここで、図3〜図6に補正テーブル621の一例を示す。この図3〜図6では、測定対象物Aのサーモクロミズム特性として、「white」、「black」、「red」、「green」の補正テーブル621を代表して示している。特に、図3(A)、図4(A)、図5(A)、及び図6(A)は、波長(nm)と反射率(%)との関係を示している。また、図3(B)、図4(B)、図5(B)、及び図6(B)は、波長(nm)と反射率の変動率(%)との関係を示し、基準温度25℃に対して、測定対象物Aの検出温度が35℃または45℃のときに、各波長における反射率の変動率を図3(A)、図4(A)、図5(A)、及び図6(A)に示すデータに基づいて算出したデータである。
【0032】
次に、制御部61の各構成について説明する。
光量検出部611は、受光部5から入力される受光信号を取得し、エタロン4を透過した波長における光の光量を検出する。そして、光量検出部611は、記憶部62から透過特性データを読み出し、ギャップ間隔に対してエタロン4を透過する透過光の波長を認識し、この透過光の波長と、検出した透過光の光量とを関連付けた分光特性を算出し、測定対象物Aの色度L、a、bを測定する。
【0033】
色補正部612は、利用者が測定対象物Aの色を予め判断して、図示しない操作部(例えば切換スイッチ等)を判断した色に切り換えると、この色に該当する補正テーブル621を記憶部62から読み出す。例えば、測定対象物Aの色が「white」である場合には図3に示すデータを読み出す。そして、色補正部612は、温度センサー3から測定対象物Aの検出温度を取得し、当該検出温度に基づいて、所望の温度での各波長における反射率に補正することで、所望の温度での測定対象物Aの色度L、a、bに補正する。この補正した所望の温度での測定対象物Aの色度L、a、bを図示しない表示部に表示する。
具体的には、例えば測定対象物Aが「white」で、検出温度が45℃である場合を代表して説明する。色補正部612は、所望の温度(ここでは例えば35℃とする)に対する検出温度45℃における、各波長における測定対象物Aの反射率の変動率を図3(B)に示すデータを参照して算出する。この場合において、例えば、波長400(nm)での反射率の変動率は、約0.20(%)となっており、この変動率に基づいて、検出温度45℃における波長400(nm)での反射率を所望の温度(35℃)における波長400(nm)での反射率に補正する。このように、各波長における測定対象物Aの反射率を図3(B)に示す各波長における反射率の変動率のデータを参照して補正することで、所望の温度(35℃)での測定対象物Aの色度L、a、bに補正する。
【0034】
色差算出部613は、CIE規格に準拠した基準色空間形式であるCIE-Lab表色系による色度L、a、bと、色補正部612で補正された所望の温度(35℃)における測定対象物Aの色度L、a、bとの色差ΔE94を以下の式(1)を用いて算出し、当該色差ΔE94を図示しない表示部に表示する。例えば、測定対象物Aの色が「white」である場合には、CIE-Lab表色系により規格されている「white」の色度L、a、bと、所望の温度(35℃)における測定対象物Aの色度L、a、bとの色差ΔE94を算出する。
なお、色差ΔE94としては、基準温度25℃での測定対象物Aの色度L、a、bと、所望の温度(35℃)での測定対象物Aの色度L、a、bとの差であってもよく、また、所望の温度(35℃)での測定対象物Aの色度L、a、bと、検出温度での測定対象物Aの色度L、a、bとの差であってもよい。
このような、いずれかの色差ΔE94を算出する色差算出部613を備えることで、所望の温度(35℃)での測定対象物Aの色度L、a、bが、CIE規格に準拠した色度L、a、bや、基準温度25℃での色度L、a、bや、検出温度での測定対象物Aの色度L、a、bに対して、どの程度、色差ΔE94を有するか評価でき、測色装置1の測定精度を評価できる。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、ΔL、Δa、Δbは、CIE-Lab表色系による2つの色の色度差である。また、K、K、Kは、それぞれ明度差、クロマ差、色相差の補正係数である。
【0037】
[測色装置の測色方法]
次に、本実施形態における測色装置1の測色方法について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、測色装置1は、例えば利用者の設定入力に基づいて、制御回路部6から駆動回路7を介して光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を測定対象物Aに出射する。
また、制御回路部6は、駆動回路7を介して駆動制御信号をエタロン4へ出力する。これにより、当該駆動制御信号に基づく駆動電圧が各電極引出部を介して、第1電極451及び第2電極452間に印加されて、第1電極451及び第2電極452の間に働く静電引力によりギャップ間隔が調整される。このギャップ間隔に応じて、エタロン4を透過する光の透過波長が決定される。
そして、受光部5は、エタロン4を透過した光を受光し、受光した光の光量に応じた電気信号を生成して、電気信号を受光信号として制御回路部6へ出力する。
【0038】
次に、制御回路部6の制御部61において、光量検出部611は、受光部5から入力される受光信号を取得し、エタロン4を透過した波長における光の光量を検出する(ステップS1:光量検出工程)。そして、光量検出部611は、ギャップ間隔に対してエタロン4を透過する透過光の波長と、検出した透過光の光量とを関連付けた分光特性を算出し、測定対象物Aの色度L、a、bを測定する。
そして、温度センサー3は、測定対象物の温度を検出する(ステップS2:温度検出工程)。
次に、色補正部612は、図示しない操作部で設定された色に該当する補正テーブル621を記憶部62から読み出す。そして、色補正部612は、温度センサー3から測定対象物Aの検出温度を取得し、当該検出温度に基づいて、所望の温度での各波長における反射率に補正することで、所望の温度での測定対象物Aの色度L、a、bに補正し、当該色度L、a、bを図示しない表示部に表示する(ステップS3:色算出工程)。
【0039】
次に、色差算出部613は、CIE規格に準拠した基準色空間形式であるCIE-Lab表色系による色度L、a、bと、所望の温度における測定対象物Aの色度L、a、bとの色差ΔE94を上述の式(1)を用いて算出し、当該色差ΔE94を図示しない表示部に表示する(ステップS4:色差算出工程)。
【0040】
上述した第1実施形態の測色装置1によれば、以下の効果を奏する。
(1)補正テーブル621を取得し、かつ測定対象物Aの検出温度に基づいて、測定対象物Aの色を所望の温度における色に補正する色補正部612を備える。これによれば、前述したサーモクロミズム現象により、測定対象物Aの温度変化によって、測定対象物Aの色が変化した場合であっても、測定環境を予め所望の温度に設定する作業を不要にでき、所望の温度における色を容易に算出することができる。従って、測定対象物Aに対して所望の温度における色を容易に測定することができる。
(2)例えば、所定の温度間隔あたりの色度の変化量ΔL、Δa、Δbのデータを参照して、測定対象物を所望の温度における色に補正する場合と比べると、本実施形態での補正テーブル621は、各温度における光の各波長に対する反射率のデータを有するため、測定対象物Aの温度を検出すればよく、測定対象物Aの温度変化を算出する必要がない。さらに、サーモクロミズム現象の要因である反射率の変化に対して、補正テーブル621での反射率のデータを用いて補正することで、より精度を高めた色測定を行うことができる。
【0041】
(3)補正テーブル621は測定対象物Aの色毎にデータを有しているので、様々なバリエーションの色を有する測定対象物Aの色を容易に測定できる。
(4)波長可変干渉フィルターであるエタロン4を備えているので、このエタロン4において、ギャップを適宜調整することで特定の波長のみ分光させることができ、複数のエタロンを用いる必要がなく、装置自体を小型化することができる。
【0042】
[第2実施形態]
本実施形態における測色装置1の構成は、前記第1実施形態の構成と同一であるため、本実施形態を前記第1実施形態で示した図1に基づいて説明する。前記第1実施形態の機能と同一の構成については、説明を省略する。
前記第1実施形態では、各温度における光の各波長に対する測定対象物Aの反射率、または反射率の変動率の補正テーブル621を参照して、測定対象物Aにおける所望の温度での色に補正していたのに対して、本実施形態では、CIE規格に準拠した基準色空間形式であるCIE-Lab表色系による、所定の温度間隔あたりの色度の変化量ΔL、Δa、Δbの補正テーブル622(図1参照)を参照して、測定対象物Aの所望の温度での色に補正している点で相違する。
補正テーブル622は、測定対象物Aの色毎における、所定の温度間隔あたりの色度の変化量ΔL、Δa、Δbのデータである。
【0043】
本実施形態での色補正部612は、利用者が測定対象物Aの色を予め判断して、図示しない操作部を判断した色に切り換えると、この色に該当する補正テーブル622を記憶部62から読み出す。そして、色補正部612は、測定対象物Aの検出温度を取得し、当該検出温度と所望の温度との温度差を算出して、この温度差に基づいて、光量検出部611で測定した測定対象物Aの色度L、a、bを、所定の温度間隔あたりの色度の変化量ΔL、Δa、Δbの補正テーブル622を用いて、所望の温度での測定対象物Aの色度L、a、bに補正する。
色差算出部613は、前記第1実施形態と同様に、色差ΔE94を上述の式(1)を用いて算出する。
【0044】
上述した第2実施形態の測色装置1によれば、前記第1実施形態での(1)、(3)、(4)と同様の効果を奏することができる。
【0045】
[実施形態の変形]
なお、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
前記各実施形態では、利用者が測定対象物Aの色を予め判断して操作部を判断した色に切り換えることで、色補正部612は、この色に該当する補正テーブル621,622を読み出していたが、光量検出部611で算出した測定対象物Aの色度L、a、bに基づいて、色補正部612は、当該色度L、a、bに該当する補正テーブル621,622を読み出す構成としてもよい。この場合には、利用者が適宜、操作部で色を設定する操作を不要にできる。
前記各実施形態では、色差ΔE94を上述の式(1)を用いて算出していたが、検出温度に基づいて、所望温度Tにおける色度L(T)、a(T)、b(T)を所定の関数より算出して、色差ΔEを算出してもよい。
【0046】
前記各実施形態では、本発明の干渉フィルターとして、波長可変型のエタロン4を例示し、静電アクチュエーター45により反射膜43,44間のギャップを調整して透過光を変更可能な構成としたが、これに限定されない。例えば、予め設定された所定の波長のみを透過させる分光フィルターとしても利用でき、この場合は、静電アクチュエーター45を設ける必要がない。
前記第1実施形態では、各波長における反射率の変動率に基づいて、所望の温度における測定対象物Aの色度L、a、bに補正していたが、反射率の変動値に基づいて補正してもよい。この場合には、記憶部62に、例えば、基準温度25℃における波長(nm)と反射率(%)との関係を示す補正テーブル、及び基準温度25℃に対する反射率の変動値Xのデータを記憶させておき、以下の式(2)を用いて所望の温度Tにおける反射率Rを算出する。
【0047】
【数2】

【0048】
前記実施形態では、測色装置1は、測定対象物Aに光を照射する光源装置2を備える例を示したが、例えば、自ら光を発するディスプレイなどの表示装置を測定対象物Aとする場合などでは、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
前記実施形態では、1つのエタロン4を用いてギャップを調整することで特定の波長のみ分光させる例を示したが、例えば、予め設定された所定の波長のみを透過させる複数の干渉フィルターを用いて、各干渉フィルターで各波長を透過させる構成としてもよい。
【0049】
前記実施形態において、光量検出部611、色補正部612、及び色差算出部613は、CPUにより記憶部62に記憶されたプログラムを読み出されることで実行されるソフトウェアとしての構成例を示したが、これに限定されない。例えば、ICなどの集積回路などによりハードウェアとして構成されるものであってもよい
【符号の説明】
【0050】
1…測色装置、3…温度センサー(温度検出部)、4…エタロン(干渉フィルター)、5…受光部、41…固定基板、42…可動基板、43…固定反射膜、44…可動反射膜、45…静電アクチュエーター、611…光量検出部、612…色補正部(色算出部)、613…色差算出部、621,622…補正テーブル、A…測定対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物から反射された反射光に基づいて、前記測定対象物の色を測定する測色装置であって、
前記反射光のうち、特定の波長を有する光を透過する干渉フィルターと、
前記干渉フィルターを透過した光を受光する受光部と、
前記受光部で受光した光の光量を検出する光量検出部と、
前記測定対象物の温度を検出する温度検出部と、
前記測定対象物の色を所望の温度における色に補正するための補正テーブルを用い、前記光量検出部で検出した光量、及び前記温度検出部で検出された検出温度に基づいて、前記測定対象物の所望の温度における色を算出する色算出部とを備える
ことを特徴とする測色装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測色装置において、
前記補正テーブルは、前記測定対象物の各温度における光の各波長に対する前記測定対象物の反射率のデータを有している
ことを特徴とする測色装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の測色装置において、
前記補正テーブルは、前記測定対象物のサーモクロミズム特性毎にデータを有している
ことを特徴とする測色装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の測色装置において、
前記干渉フィルターは、
固定基板と、
前記固定基板と対向する可動基板と、
前記固定基板に設けられた固定反射膜と、
前記可動基板に設けられ、前記固定反射膜と所定寸法を有するギャップを介して対向する可動反射膜とを備え、
前記固定基板と前記可動基板との間には、前記ギャップの所定寸法を調整する静電アクチュエーターが設けられる
ことを特徴とする測色装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の測色装置において、
前記色算出部で算出された前記測定対象物の色と、比較対象の色との色差を算出する色差算出部を備える
ことを特徴とする測色装置。
【請求項6】
測定対象物の色を測定する測色方法であって、
前記測定対象物で反射された光を前記干渉フィルターに透過させ、透過した光を前記受光部で受光して、受光した光の光量を検出する光量検出工程と、
前記測定対象物の温度を検出する温度検出工程と、
前記測定対象物の色を所望の温度における色に補正するための補正テーブルを用い、前記光量検出工程で検出した光量、及び前記温度検出工程で検出された検出温度に基づいて、前記測定対象物の所望の温度における色を算出する色算出工程とを備える
ことを特徴とする測色方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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