説明

測距方法及びレーザ測距装置

【課題】演算部に対する負荷を抑えながら高精度の測距が可能な測距方法及びレーザ測距装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る測距方法及びレーザ測距装置は、合成光の強度をモニタして、所定の強度以上のピーク位置の前後における強度データの対称性を確認することで、被測定物の測定点と対応する反射点の位置情報を取得する。そして、その位置情報に基づいて被測定物までの距離もしくは被測定物の2つの測定点間の厚み方向の距離を測距する。従って、強度データに基づく演算量を低減することが可能となり、演算部に対する負荷を抑えながら、レーザ光の可干渉性を利用した高精度な測距を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の干渉を用いて被測定物までの距離もしくは被測定物の測定点間の厚み方向の距離を測距する測距方法及びレーザ測距装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ光を用いたレーザ測距方法は、例えばレーザ光を参照光と測定光とに分割し、その参照光と被測定物で反射された測定光との時間差から両者の光路差を求めることで被測定物までの距離を測定する。このような参照光と測定光との時間差から測距を行う従来のレーザ測距方法では、その測距精度はレーザ光の波長レベル、即ちnm(ナノメートル)オーダーには遠く及ばない。
【0003】
そこで本願発明者は下記[特許文献1]に示すように、波長の異なる複数のレーザ光を用い、さらにその光路差を変化させることでレーザ光の特徴である可干渉性を利用した高精度のレーザ測距方法及びレーザ測距装置に関する発明を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公報第2008/099788号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[特許文献1]に開示された発明により被測定物までの距離を高精度に測距することが可能となったが、[特許文献1]に開示された発明では干渉光の明暗データ(強度データ)を取得してその明暗データに基づく演算により測距を行っており演算部に対する負荷が大きいという問題点がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、演算部に対する負荷を抑えながら高精度の測距が可能な測距方法及びレーザ測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)異なる中心周波数を有する2つ乃至3つのレーザ光を参照光と測定光に分割し、全ての参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに全ての測定光を被測定物6の測定点Sで反射させ、反射点で反射した各参照光と測定点Sで反射した各測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物6の測定点Sまでの距離を測定する測距方法であって、
反射点の位置を移動させながら全てのレーザ光を照射して反射点の位置と対応した合成光の強度データを取得する取得ステップと、
当該強度データが所定の値以上の強度のピークを取るとともに、その前後で対称となる反射点の位置情報を記録する記録ステップと、
当該位置情報と予め取得されている基準点の位置情報とに基づいて基準点から測定点までの距離を算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)異なる中心周波数を有する2つ乃至3つのレーザ光を参照光と測定光に分割し、全ての測定光をさらに第1測定光と第2測定光とに分割し、全ての参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに全ての第1測定光を被測定物6の第1測定点S1で反射させ、さらに全ての第2測定光を被測定物6の第2測定点S2で反射させ、反射点で反射した各参照光と第1測定点S1で反射した各第1測定光と第2測定点S2で反射した各第2測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを測定する測距方法であって、
反射点の位置を移動させながら全てのレーザ光を照射して反射点の位置と対応した合成光の強度データを取得する取得ステップと、
当該強度データが所定の値以上の強度のピークを取るとともに、その前後で対称となる第1位置O(S1)の第1位置情報と第2位置O(S2)の第2位置情報とを記録する記録ステップと、
第1位置情報と第2位置情報とに基づいて第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)無測定物状態で第1測定光の光路長及び第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる反射点の位置を原点位置情報として記録する原点取得ステップをさらに有し、
第1測定光を被測定物6の第1測定点S1で反射させるとともに第2測定光を第1測定点S1の裏面に位置する第2測定点S2で反射させ、
測定ステップが第1位置情報と第2位置情報と原点位置情報とに基づいて被測定物6の厚みtを算出することを特徴とする上記(2)記載の測距方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(4)異なる中心周波数を有する2つ乃至3つのレーザ照射手段と、当該レーザ照射手段から出射した全てのレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部12と、前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部14と、当該反射部14の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部24と、反射部14で反射した全ての参照光と被測定物6の測定点Sで反射した全ての測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部18と、当該強度のデータと前記位置情報取得部24からの位置情報とに基づいて反射点14の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部20と、を備え、
上記(1)記載の取得ステップと記録ステップと測定ステップとを行い、予め設定されている基準点から測定点Sまでの距離を測距することを特徴とするレーザ測距装置50a、51aを提供することにより、上記課題を解決する。
(5)異なる中心周波数を有する2つ乃至3つのレーザ照射手段と、当該レーザ照射手段から出射した全てのレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部12と、前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部14と、当該反射部14の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部24と、前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割する測定光分割部28と、第1測定光を出射する第1出射口16aと第2測定光を出射する第2出射口16bと、反射部14で反射した全ての参照光と被測定物6の第1測定点S1で反射した全ての第1測定光と被測定物6の第2測定点S2で反射した全ての第2測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部18と、当該強度のデータと前記位置情報取得部24からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部20と、を備え、
上記(2)記載の取得ステップと記録ステップと測定ステップとを行い第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを測距することを特徴とするレーザ測距装置50b、51bを提供することにより、上記課題を解決する。
(6)異なる中心周波数を有する2つ乃至3つのレーザ照射手段と、当該レーザ照射手段から出射した全てのレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部12と、前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部14と、当該反射部14の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部24と、前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割する測定光分割部28と、被測定物6の配置位置を挟んで対向する位置に設けられ第1測定光を出射する第1出射口16aと第2測定光を出射する第2出射口16bと、反射部14で反射した全ての参照光と被測定物6の第1測定点S1で反射した全ての第1測定光と第1測定点S1の裏面に位置する第2測定点S2で反射した全ての第2測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部18と、当該強度のデータと前記位置情報取得部24からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部20と、を備え、
上記(3)記載の原点取得ステップと取得ステップと記録ステップと測定ステップとを行い被測定物6の厚みtを測距することを特徴とするレーザ測距装置50c、51cを提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る測距方法及びレーザ測距装置によれば、演算部の負荷を軽減しながら被測定物までの距離もしくは被測定物の2つの測定点間の厚み方向の距離を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る第1の形態のレーザ測距装置の概略構成を示す図である。
【図2】レーザ照射手段の選定を説明する図である。
【図3】本発明に係る第1の形態のレーザ測距装置の変形例の概略構成を示す図である。
【図4】本発明に係る第1の形態のレーザ測距装置の使用例を示す図である。
【図5】本発明に係る第2の形態のレーザ測距装置の概略構成を示す図である。
【図6】本発明に係る第3の形態のレーザ測距装置の概略構成を示す図である。
【図7】本発明に係るレーザ測距装置の変形例の概略構成を示す図である。
【図8】本発明に係る第3の形態のレーザ測距装置の変形例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る測距方法及びレーザ測距装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に本発明に係る第1の形態のレーザ測距装置50aを示す。尚、図1、図3〜図7中の破線はレーザ光の光路を示す。図1に示す本発明に係るレーザ測距装置50aは、異なる中心周波数を有する2つのレーザ光(第1レーザ光、第2レーザ光)をそれぞれ出射する第1レーザ照射手段10aと第2レーザ照射手段10bとを有している。
【0012】
第1レーザ照射手段10a、第2レーザ照射手段10b、及び後述する第3レーザ照射手段10cの種類に関しては特に限定はなく、ヘリウムネオンレーザやアルゴンレーザ、クリプトンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ等のガスレーザ、ルビーレーザやYAGレーザ等の固体レーザ、金属レーザ、半導体レーザ等を用いることができる。この中でも周波数分布が比較的ブロードな多縦モード発振のレーザ照射手段を用いることが好ましい。尚、多縦モード発振のレーザ光とは発振するレーザ光の周波数分布がブロードなものを指し、ここでは性能や安定性、バラつき等により結果として周波数分布が広がっているものもこれに含めるものとする。従って、レーザ測距装置50a、及び後述のレーザ測距装置50b、50c、51a、51b、51cでは、高い周波数安定性や安定した発光スペクトルを有する高価なレーザ照射手段を必ずしも必要とせず、周波数や発光スペクトルの安定性が比較的劣った安価なレーザ照射手段を使用することができる。よって、使用するレーザ照射手段としては、安価な半導体レーザを用いることが特に好ましい。この半導体レーザを使用することにより、レーザ測距装置50a〜51cの部品コストを削減することが可能となりレーザ測距装置50a〜51cをより安価に提供することができる。尚、使用するレーザ照射手段のうち少なくとも1つのレーザ照射手段を400nm〜750nmの可視光領域の発振波長を有するものとすれば、レーザ光の照射位置が目視可能となり作業性の向上を図ることができる。
【0013】
第1レーザ照射手段10aから出射した第1レーザ光は、第1レーザ光の光路上に設けられたミラー4aで反射され分割部12に向う。また、第2レーザ照射手段10bから出射した第2レーザ光は、第2レーザ光の光路上に設けられたハーフミラー4bで反射され第1レーザ光と同一光路上を通り分割部12に向う。
【0014】
分割部12としてはハーフミラーやビームスプリッタ等が用いられ、分割部12に到達した第1レーザ光及び第2レーザ光は分割部12の分割点で2分割される。そして、一方は参照光として反射部14に向かい、もう一方は測定光として被測定物6の側に向う。
【0015】
分割部12で分割された第1レーザ光及び第2レーザ光の参照光は反射部14の反射点にて反射され、分割部12を通過して受光部18に到達する。尚、反射部14には移動手段22が設置されており、移動手段22の動作により反射部14は反射点から分割点までの距離、即ち参照光の光路長が変化する方向に移動する。
【0016】
位置情報取得部24は、図示しない装置制御部からの信号を受けて移動手段22を動作させるとともに、移動手段22の動作によって変化する反射点の位置情報を演算部20に出力する。尚、移動手段22としては1ステップで5〜10nm程度移動する摺動型超音波モータ等を用いることが好ましい。また、反射部14と反射点とは固定であり、本願では反射点の絶対位置よりも相対位置が重要であるから、反射点の位置情報は反射部14の位置情報で間接的に代用することも可能である。
【0017】
分割部12で分割された第1レーザ光及び第2レーザ光の測定光は出射口16から出射する。そして、図1(b)に示すように、出射口16から出射した第1レーザ光及び第2レーザ光の測定光は被測定物6の測定点Sで反射され分割部12を経由して受光部18に到達する。
【0018】
受光部18は、測定点Sで反射した第1レーザ光及び第2レーザ光の測定光と反射点で反射した第1レーザ光及び第2レーザ光の参照光とを受光して、これらの光が全て合わさった合成光の強度のデータを電気信号に変換し演算部20に出力する。
【0019】
このとき、位置情報取得部24が移動手段22を動作させ反射点の位置を参照光の光路長が変化する方向に移動させる。参照光の光路長が変化すると参照光と測定光の光路差が変化し、これに伴って受光部18が出力する合成光の強度のデータも変化する。
【0020】
演算部20は、受光部18からの合成光の強度のデータと位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、反射点の位置と対応し且つ連続した合成光の強度データを作成し、さらにこの強度データに基づいて後述の演算を行う。尚、以後は受光部18が出力する合成光の強度のデータを単に“強度”と記述し、演算部20が作成する反射点の位置と対応し且つ連続した合成光の強度データを“強度データ”と記述して、両者を区別する。
【0021】
ここで、参照光の光路長と測定光の光路長とが等しく光路差が存在しない場合には、どのような発振波長を有するレーザ光であってもその参照光と測定光とは強め合いその干渉光は明部のピークをとる。つまり、出力電圧、温度、レーザ照射手段自体のブレなどにより、レーザ照射手段が出射するレーザ光の周波数が変化したとしても、参照光と測定光とに光路差が存在しない点ではその干渉光は明部のピークを常に維持する。反対に参照光と測定光とに光路差が存在する場合には、異なる発振波長を有するレーザ光の干渉光が同時に明部をとるような光路差の値は現実には存在しない。従って、反射点の位置と干渉光の強度との関係を模式的に示した図2にあるように、第1レーザ光の測定光と第1レーザ光の参照光とが干渉して生じる干渉光(図2中の(A))と、第2レーザ光の測定光と第2レーザ光の参照光とが干渉して生じる干渉光(図2中の(B))とは参照光の光路長と測定光の光路長とが等しい反射点の位置Oにおいて双方とも明部のピークを取り、これらの合成光(図2中の(C))の強度は最大のピーク強度をとる。そして、第1レーザ光による干渉光(A)と第2レーザ光による干渉光(B)とのピーク位置が完全に一致する点は位置O以外には存在しない。従って、これらの合成光には位置O以外に最大ピーク強度以上のピーク強度をとる位置は存在しない。
【0022】
しかしながら、干渉光のピークの周期はレーザ光の周波数に依存するため、第1レーザ光による干渉光(A)のピークと第2レーザ光による干渉光(B)のピークとが近接する場合(例えば図2中の位置O’)が存在する。干渉光(A)のピークと第2レーザ光による干渉光(B)のピークとが近接している位置では、その合成光のピーク強度が最大ピーク強度に近づく可能性があり、このような場合に両者をピーク強度のみで判別すれば誤認識を招く危険性がある。
【0023】
しかしながら、位置Oではその前後において合成光の強度データが対称性を示すという特徴を有している。これに対して、位置O’を含むそれ以外のピーク位置ではその前後で対称性を示すことはない。よって、強度データのピーク強度とその位置前後の対称性を確認することで、参照光の光路長と測定光の光路長とが等しい反射点の位置Oを特定することができる。また、干渉光のピークは位置Oから離れるに従ってブロードとなり、その分だけピーク強度が減少する。従って、これらのことと第1レーザ照射手段10a、第2レーザ照射手段10bの出力変動等を考慮に入れてピーク強度に対する適正な閾値(判断基準)を設定すれば、実質、位置O近傍のみで上記のピーク強度の判定と対称性の確認とが行われ、全ての範囲の強度データに対して上記の処理を行う必要は無い。また、第1レーザ光もしくは第2レーザ光の長い方のコヒーレンス長をLcとした場合に、測定光と参照光との光路差がLc以上あると両者は干渉しなくなるので、ピークは出現しなくなる。
【0024】
尚、本発明に係るレーザ測距装は、図3(a)のレーザ測距装置51a及び図7のレーザ測距装置51b、51cに示すように、第1レーザ光及び第2レーザ光とは中心周波数の異なる第3レーザ照射手段10cを設けても良い。第3レーザ照射手段10cを設けることにより、第3レーザ光による干渉光が生じ、この第3レーザ光による干渉光は第1レーザ光による干渉光、第2レーザ光による干渉光と同様、位置Oで明部のピークをとる。しかしながら、位置O以外で第3レーザ光による干渉光、第1レーザ光による干渉光、第2レーザ光による干渉光のピークが全て近接する確率は2つのレーザ光を用いたときと比べて著しく低い。よって、位置Oでの最大ピーク強度とその他の位置でのピーク強度との差は2つのレーザ光を用いたときよりも開く傾向となる。従って、3つのレーザ光を用いたときの方が、2つのレーザ光を用いたときよりも位置Oの特定をより容易に行うことができる。
【0025】
次に、本発明に係る第1の測距方法をレーザ測距装置50aの動作とともに説明する。尚、レーザ照射手段を3つ有するレーザ測距装置51aも基本動作は全く同じである。
【0026】
本発明に係る第1の測距方法では、予め基準点の位置情報を取得する必要がある。よって、ここでは先ずシャッタ5の反射点S’を基準点としてこの基準点の位置情報を取得する方法を説明する。尚、ここでの基準点の位置情報の取得方法は、基本的に第1の測距方法及びレーザ測距装置50aの動作と同等である。
【0027】
先ず、図1(a)に示すように、出射口16をシャッタ5で塞ぐ。次に、反射部14の反射点を起点位置に位置させる。ここでの起点位置は分割点から出射口16までの距離と等しい反射点の位置とすることが好ましい。次に、第1レーザ照射手段10a、第2レーザ照射手段10bを動作させ第1レーザ光及び第2レーザ光を同時に照射する。これにより、受光部18は反射点で反射された各レーザ光の参照光とシャッタ5の反射点S’で反射された各レーザ光の測定光とを受光して、これらの合成光の強度を演算部20に出力する。また、位置情報取得部24は移動手段22を動作させ、反射点を反射部14ごと参照光の光路長が増加する方向に移動させるとともに、移動手段22の動作によって変化する反射点の位置情報を演算部20に出力する。
【0028】
演算部20は、受光部18からの合成光の強度と位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成する。
【0029】
ここで、反射点が移動して距離Lr(s’)が距離Lm(s’)と等しい位置O(s’)となると、測定光の光路長2×Lm(s’)と参照光の光路長2×Lr(s’)とが等しくなる。従って、この位置O(s’)において合成光の強度は最大ピーク強度をとる。また、強度データはこの位置O(s’)前後において対称性を示す。
【0030】
演算部20は受光部18からの合成光の強度をモニタして、判定基準(例えば、最大ピーク強度の90%)を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離だけ反射点が移動してピーク位置を過ぎた所定範囲の強度データが取得されると、演算部20はピーク位置前後の強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置情報を基準点の位置情報として記録する。尚、この基準点の位置は、図1(a)においては位置O(s’)に相当する。
【0031】
次に、被測定物6の測定点Sまでの距離を測定する。先ず、シャッタ5を除くとともに被測定物6を設置して第1レーザ光及び第2レーザ光の測定光を被測定物6の測定点Sで反射させる。これにより、受光部18は反射点で反射された各レーザ光の参照光と被測定物6の測定点Sで反射された各レーザ光の測定光とを受光して、これらの合成光の強度を演算部20に出力する。また、位置情報取得部24は移動手段22を動作させ、反射点を参照光の光路長が増加する方向にさらに移動させるとともに、移動手段22の動作によって変化する反射点の位置情報を演算部20に出力する。
【0032】
演算部20は、受光部18からの合成光の強度と位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成する。
【0033】
ここで、分割点から測定点Sまでの距離を距離Lm(s)とし、分割点から反射点までの距離を距離Lr(s)とすると、反射点が移動して距離Lr(s)が距離Lm(s)と等しい位置O(s)に到達した時に、測定光の光路長2×Lm(s)と参照光の光路長2×Lr(s)とが等しくなる。従って、この位置O(s)において合成光の強度は最大ピーク強度をとる。また、強度データはこの位置O(s)前後において対称性を示す。
【0034】
演算部20は受光部18からの合成光の強度をモニタして、判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離だけ反射点が移動してピーク位置を過ぎた所定範囲の強度データが取得されると、演算部20はピーク位置前後の強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置情報を記録する。尚、このとき記録される位置情報は位置O(s)の位置情報に相当する。以上が取得ステップ及び記録ステップに相当する。
【0035】
次に、演算部20は、基準点の位置情報(位置O(s’)の位置情報)と記録ステップで得られた位置O(s)の位置情報とから、基準点である出射口16の出射点(シャッタ5の反射点S’に相当)から被測定物6の測定点Sまでの距離Lを算出する。距離Lの算出方法は、例えば、基準点の位置情報の値をPOs’、位置O(s)の位置情報をPOsとし、反射部14が分割部12から遠ざかるにつれ位置情報の値が増加する場合、
L=Lm(s)−Lm(s’)=Lr(s)−Lr(s’)=POs−POs’
となる。以上が測定ステップに相当する。
【0036】
尚、移動手段22はモータ等の機械的なものであるから、移動手段22の精度によっては反射点を各位置、特にピーク位置に完全に位置させることが困難な場合がある。このような場合、得られた強度のデータから不足している位置の強度のデータを算出により補い、最大の強度をとる反射点の位置の取得と強度データの対称性の確認とを行うようにしても良い。このことは、後述の第2の測距方法、第3の測距方法でも同様である。
【0037】
また、基準点をシャッタ5の内面とせずに、図4(a)に示すように、被測定物6の第1測定点S1とし、第1測定点S1の位置情報取得後に図4(b)に示すように、レーザ測距装置50aもしくは被測定物6を平行移動させて測定光を被測定物6の第2測定点S2で反射させるようにすれば、得られる距離Lは第1測定点S1と第2測定点S2の厚み方向の距離となる。尚、この場合、第1測定点S1と第2測定点S2の位置関係を予め把握しておき、レーザ測距装置50aに近い側(図4の例では第1測定点S1)を基準点とし、遠い側(図4の例では第2測定点S2)を測定点とすることが好ましい。また、移動手段22の動作方向を参照光の光路長が減少する方向とする場合には、逆にレーザ測距装置50aから遠い側(図4の例では第2測定点S2)を基準点とし、近い側(図4の例では第1測定点S1)を測定点とすることが好ましい。
【0038】
次に、本発明に係る第2の形態のレーザ測距装置50bを説明する。図5に示す本発明に係るレーザ測距装置50bは、第1の形態のレーザ測距装置50aに加えて、測定光を第1測定光と第2測定光とに分割する測定光分割部28を有している。そして、測定光分割部28にて分割された第1レーザ光及び第2レーザ光の第1測定光は第1出射口16aから被測定物6の側に出射する。また、測定光分割部28で分割された第1レーザ光及び第2レーザ光の第2測定光はミラー8で反射され第2出射口16bから被測定物6の側に出射する。尚、第1測定光と第2測定光との装置内部における光路差(2×Ld)は、第1レーザ光及び第2レーザ光のいずれか長い方のコヒーレンス長よりも長い距離とする。よって、距離Ldは第1レーザ光及び第2レーザ光のいずれか長い方のコヒーレンス長の1/2よりも長い距離となる。
【0039】
次に、本発明に係る第2の測距方法をレーザ測距装置50bの動作とともに説明する。尚、レーザ照射手段を3つ有する図7(a)に示すレーザ測距装置51bも基本動作は全く同じである。
【0040】
本発明に係るレーザ測距装置50bでは、予め第1測定光と第2測定光との装置内部における光路差の1/2の値である距離Ldを取得する必要がある。レーザ測距装置50bに好適な距離Ldの取得方法は後述する。尚、距離Ldの取得は測定毎に行う必要は無く、レーザ測距装置50bの出荷時等に行ってメモリ等に記録しておいても良い。
【0041】
本発明に係る第2の測距方法では、先ず、図5(a)に示すように、被測定物6をその第1測定点S1に第1測定光が、第2測定点S2に第2測定光が垂直に照射するように設置する。次に、反射部14の反射点を起点位置に位置させる。ここでの起点位置は分割点から第1出射口16aまでの距離と等しい反射点の位置とすることが好ましい。
【0042】
次に、第1レーザ照射手段10a、第2レーザ照射手段10bを動作させ第1レーザ光及び第2レーザ光を同時に照射する。これにより、第1レーザ光及び第2レーザ光の参照光は反射点で反射され受光部18に到達する。また、測定光分割部28で分割された第1レーザ光及び第2レーザ光の第1測定光は第1出射口16aから出射した後、被測定物6の第1測定点S1で反射され、測定光分割部28、分割点を経由して受光部18に到達する。また、第1レーザ光及び第2レーザ光の第2測定光は第2出射口16bから出射した後、被測定物6の第2測定点S2で反射され、ミラー8、測定光分割部28、分割点を経由して受光部18に到達する。受光部18は、第1レーザ光及び第2レーザ光の参照光と、第1レーザ光及び第2レーザ光の第1測定光と、第1レーザ光及び第2レーザ光の第2測定光とを受光し、それらの光が全て合成された合成光の強度を演算部20に出力する。そして、この状態を維持しながら位置情報取得部24が移動手段22を動作させ反射点を反射部14ごと参照光の光路長が増加する方向に移動させる。また、位置情報取得部24は反射点の位置情報を演算部20に出力する。
【0043】
演算部20は、受光部18からの合成光の強度と位置情報取得部24からの反射点の位置情報とに基づいて、反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成する。
【0044】
反射点が移動して分割点から反射点までの距離が分割点から第1測定点S1までの距離と等しい位置O(s1)に到達すると、第1測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる。そして、この位置O(s1)において合成光の強度は最大ピーク強度と略同等となる。また、強度データはこの位置O(s1)前後において対称性を示す。尚、第2の測距方法及び後述の第3の測距方法での最大ピーク強度は一方の測定光が干渉しない状態のものとする。即ち、第2の測距方法及び第3の測距方法での最大ピーク強度は、第1レーザ光の第1測定光(第2測定光)による干渉光の(図2中の位置Oにおける)強度ピークと、第2レーザ光の第1測定光(第2測定光)による干渉光の(図2中の位置Oにおける)強度ピークと、後述するように光路差がコヒーレンス長を超えて一定強度となる第1レーザ光及び第2レーザ光の第2測定光(第1測定光)の強度とが合わさったものとなる。そして、この最大ピーク強度とレーザ照射手段の出力変動範囲等に応じて判定基準の値が設定される。
【0045】
演算部20は受光部18からの合成光の強度をモニタして、判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離だけ反射点が移動してピーク位置を過ぎた所定範囲の強度データが取得されると、演算部20はピーク位置前後の強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置を第1位置(=位置O(s1))の第1位置情報として記録する。
【0046】
尚、参照光と測定光との光路差がコヒーレンス長を超えたレーザ光は干渉することはない。ここで、距離Ldは第1レーザ光及び第2レーザ光のコヒーレンス長よりも長いから、位置O(s1)近傍では第1測定光と参照光とは干渉するものの、光路差がコヒーレンス長を超えている第2測定光と参照光及び第2測定光と第1測定光とは干渉することはない。従って、第2測定光は一定強度の光として受光部18に受光され、第2測定光が第1位置情報の取得に悪影響を及ぼすことはない。
【0047】
次に、反射点がさらに移動して分割点から反射点までの距離が分割点→測定光分割部28→ミラー8→第2測定点S2までの距離と等しい位置O(s2)に到達すると、今度は第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる。そして、この位置O(s2)において合成光の強度は最大ピーク強度と略同等となる。また、強度データはこの位置O(s2)前後において対称性を示す。
【0048】
演算部20は受光部18からの合成光の強度をモニタして、判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離だけ反射点が移動してピーク位置を過ぎた所定範囲の強度データが取得されると、演算部20はピーク位置前後の強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置を第2位置(=位置O(s2))の第2位置情報として記録する。以上が第2の測距方法の取得ステップ及び記録ステップに相当する。尚、前述のように距離Ldは第1レーザ光及び第2レーザ光のコヒーレンス長よりも長いから、この位置O(s2)近傍では第1測定光と参照光との光路差はコヒーレンス長を超え、第1測定光が参照光及び第2測定光と干渉することはない。従って、第1測定光が第2位置情報の取得に悪影響を及ぼすことはない。
【0049】
次に、演算部20は、第1位置情報と第2位置情報と予め取得されている距離Ldの値とから、被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離Lを算出する。距離Lの算出方法は、例えば、第1位置情報の値をPs1、第2位置情報をPs2とし、反射部14が分割部12から遠ざかるにつれ位置情報の値が増加する場合、
L=Ps2−Ps1−Ld
となる。以上が第2の測距方法の測定ステップに相当する。
【0050】
次に、第1測定光と第2測定光との装置内部における距離Ldを取得する方法を説明する。尚、以下に示す距離Ldの取得方法は、基本的に本発明に係る第2の測距方法及びレーザ測距装置50bの動作と同等である。また、以下に示す距離Ldの取得方法は本発明に係るレーザ測距装置50bに好適なものであるが、必ずしもこの方法を用いる必要は無い。
【0051】
先ず、図5(b)に示すように、表面が平滑な平板5を、その第1測定点S1’に第1測定光が、第2測定点S2’に第2測定光が垂直に照射するように設置する。このとき、第1出射口16aから第1測定点S1’までの距離と、第2出射口16bから第2測定点S2’までの距離とを等しくする。次に、反射部14の反射点を起点位置よりも参照光の光路長が若干短くなる位置に位置させる。
【0052】
そして、上記の取得ステップと記録ステップを行い、分割点から平板5の第1測定点S1’までの距離と分割点から反射点までの距離とが等しくなる反射点の第1位置O(s1’)の第1位置情報と、分割点→測定光分割部28→ミラー8→第2測定点S2’までの距離と分割点から反射点までの距離とが等しくなる反射点の第2位置O(s2’)の第2位置情報と、を記録する。
【0053】
次に、演算部20は、得られた第1位置情報と第2位置情報とから、距離Ldを算出する。距離Ldの算出方法は、例えば、第1位置情報の値をPs1’、第2位置情報をPs2’とし、反射部14が分割部12から遠ざかるにつれ位置情報の値が増加する場合、
Ld=Ps2’−Ps1’
となる。
【0054】
次に、図6に本発明に係る第3の形態のレーザ測距装置50cを示す。第3の形態のレーザ測距装置50cは被測定物6の一面側に位置する第1測定点S1と、第1測定点S1の裏面に位置する第2測定点S2との間の厚み方向の距離を測距することで、被測定物6の厚みtを測距するものである。従って、その構成は第1測定光と第2測定光との光学経路が異なる以外、第2の形態のレーザ測距装置50bと基本的に同等である。
【0055】
そして、レーザ測距装置50cにおいては、測定光分割部28にて分割された第1測定光は、ミラー8a、ミラー8b、ミラー8cで反射され第1出射口16aから第2出射口16bに向けて出射する。また、測定光分割部28で分割された第2測定光はミラー8d、ミラー8eで反射され第2出射口16bから第1出射口16aに向けて出射する。尚、第1出射口16aと第2出射口16bとは対向する位置に設けられ、被測定物6はこの第1出射口16aと第2出射口16bとの間に配置される。そして、図6(a)に示すように、第1出射口16aと第2出射口16bとの間に何も存在しない無測定物状態の場合には、第1出射口16aから出射した第1測定光は、第2出射口16bから再度レーザ測距装置50c内に入射してミラー8e、ミラー8dで反射され測定光分割部28に帰還する。また、第2出射口16bから出射した第2測定光は第1出射口16aから再度レーザ測距装置50c内に入射してミラー8c、ミラー8b、ミラー8aで反射され測定光分割部28に帰還する。よって、無測定物状態においては第1測定光と第2測定光とは同じ光路を互いに逆方向に進んで測定光分割部28に帰還することとなる。従って、このときの第1測定光と第2測定光との光路長は等しくなる。尚、測定光分割部28から第1出射口16aまでの第1測定光の光路長と測定光分割部28から第2出射口16bまでの第2測定光の光路長とは完全に等しくする必要は無いが、略同等として無測定物状態における第1測定光及び第2測定光の測定光分割部28から測定光分割部28に帰還するまでの光路(即ち、第1測定光における測定光分割部28→ミラー8a→ミラー8b→ミラー8c→ミラー8e→ミラー8d→測定光分割部28までの光路)の中間地点P0を、第1出射口16aと第2出射口16bとの間の中間位置近傍とすることが好ましい。
【0056】
次に、本発明に係る第3の測距方法をレーザ測距装置50cの動作とともに説明する。尚、レーザ照射手段を3つ有する図7(b)に示すレーザ測距装置51cも基本動作は全く同じである。
【0057】
本発明に係る第3の測距方法では、先ず、第1測定光及び第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる反射点の位置(原点位置O)を取得して原点位置情報として記録する原点取得ステップを行う。尚、原点位置情報の取得は以下のようにして行うことが好ましい。
【0058】
先ず、無測定物状態で反射部14の反射点を起点位置に位置させる。ここでの起点位置は分割点から中間地点P0までの測定光の光学経路よりも若干長くなるような反射点の位置とすることが好ましい。
【0059】
次に、この状態で第1レーザ照射手段10a、第2レーザ照射手段10bを動作させ第1レーザ光及び第2レーザ光を同時に照射する。これにより、参照光は分割点→反射点→分割点→受光部18の光路をとって受光部18に到達する。また、第1測定光は分割点→測定光分割部28→ミラー8a→ミラー8b→ミラー8c→第1出射口16a→第2出射口16b→ミラー8e→ミラー8d→測定光分割部28→分割点→受光部18の光路をとって受光部18に到達する。また、第2測定光は分割点→測定光分割部28→ミラー8d→ミラー8e→第2出射口16b→第1出射口16a→ミラー8c→ミラー8b→ミラー8a→測定光分割部28→分割点→受光部18の光路をとって受光部18に到達する。
【0060】
そして、この状態を維持しながら位置情報取得部24が移動手段22を動作させ反射点を反射部14ごと参照光の光路長が減少する方向に移動させる。また、位置情報取得部24は反射点の位置情報を演算部20に出力する。
【0061】
反射点が移動して参照光の光路長と第1測定光及び第2測定光の光路長とが等しくなる原点位置Oに到達すると、この原点位置Oでは第1レーザ光の参照光と第1レーザ光の第1測定光及び第2測定光とによる干渉光と、第2レーザ光の参照光と第2レーザ光の第1測定光及び第2測定光とによる干渉光とが全て明部のピークを取る。ここで、第3の測距方法での最大ピーク強度は一方の測定光が干渉しない状態のものとしているから、この原点位置Oにおける合成光の強度は最大ピーク強度の約2倍のピーク強度をとる。従って、原点位置情報の取得時の判定基準もこれに応じて大きくなる。また、強度データはこの原点位置Oの前後において対称性を示す。
【0062】
演算部20は受光部18からの合成光の強度をモニタして、原点位置情報の取得時の判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離だけ反射点が移動してピーク位置を過ぎた所定範囲の強度データが取得されると、演算部20はピーク位置前後の強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置を原点位置Oの原点位置情報として記録する。以上が、原点取得ステップに相当する。尚、参照光の光路上の原点位置Oは、図6中の測定光の光路上では中間地点P0と対応する。
【0063】
上記の原点位置情報の取得方法は最も高精度であり本発明に係るレーザ測距装置50cに好適なものであるが、必ずしもこの方法を用いる必要は無い。尚、原点位置情報の取得は測定毎に行うことが好ましいが、さほど高精度の測定値を必要としない場合にはこの限りではない。
【0064】
次に、図6(b)に示すように被測定物6を第1出射口16aと第2出射口16bとの間に配置する。このとき、被測定物6を中間地点P0と重なり、且つ中間地点P0から第1測定点S1までの距離L1と中間地点P0から第2測定点S2までの距離L2との差が第1レーザ光及び第2レーザ光のいずれか長い方のコヒーレンス長の1/2の値よりも長い距離となるように配置することが好ましい。
【0065】
ここで、被測定物6を中間地点P0と重ならないように配置すると、測定時の第1測定光の光路長もしくは第2測定光の光路長のいずれか一方が原点位置における参照光の光路長より長くなり他方が短くなる。このよう場合、本願の測距方法においては移動手段22を測定中に逆動作させて参照光の光路長を増加させる方向と減少させる方向とに移動させる必要が生じる。移動手段22であるモータ等の機械は、一定方向に動作させる場合においては位置情報と実際の位置とに大きな差は生じないが、逆動作させるとバックラッシュが発生し位置情報と実際の位置とに誤差が生じる。被測定物6を中間地点P0と重なるように配置すれば、測定時の第1測定光の光路長と第2測定光の光路長とはいずれも原点位置における参照光の光路長より短くなり、反射部14は原点位置から参照光の光路長を減少させる方向のみに移動すればよく、移動手段22が逆動作する必要は無い。よって、高精度の厚み測定を行うことができる。
【0066】
また、距離L1と距離L2との差をコヒーレンス長の1/2よりも長い距離になるように配置すれば、後述の第1測定光による第1測定点S1の測定時には第2測定光は干渉せず、第2測定光による第2測定点S2の測定時には第1測定光は干渉することがない。従って、レーザ測距装置50cによる被測定物6の厚みtの測距を効率良く行うことができる。尚、被測定物6の厚みtがコヒーレンス長の1/2よりも薄く上記の条件を満たすことができない場合、被測定物6を中間地点P0からずらして第1測定光と第2測定光との光路差をコヒーレンス長の値以上とする。この場合、移動手段22は逆動作が必要でバックラッシュに伴う誤差が生じるが、移動手段22に高精度のアクチュエータを用いればバックラッシュを含む繰り返し位置精度は約20nm程度であり、要求される測定精度によっては十分に使用可能である。
【0067】
尚、レーザ測距装置50cは測定光の光学経路を図8に示すようにして、第1測定光と第2測定光の装置内部における光路差を第1レーザ光及び第2レーザ光のいずれか長い方のコヒーレンス長よりも長い距離としても良い。この構成によれば、装置内部における第1測定光と第2測定光との光路差が既にコヒーレンス長よりも長く設定されているから、被測定物6の設置位置によらず被測定物6の厚みtの測距を行うことができる。ただしこの場合、移動手段22の逆動作が必要となる。
【0068】
次に、第1レーザ照射手段10a、第2レーザ照射手段10bを動作させ第1レーザ光及び第2レーザ光を同時に照射する。これにより、第1レーザ光及び第2レーザ光の参照光は反射点で反射され受光部18に到達する。また、測定光分割部28で分割された第1レーザ光及び第2レーザ光の第1測定光は第1出射口16aから出射した後、被測定物6の第1測定点S1で反射され、ミラー8c、ミラー8b、ミラー8a、測定光分割部28、分割点を経由して受光部18に到達する。また、第1レーザ光及び第2レーザ光の第2測定光は第2出射口16bから出射した後、被測定物6の第2測定点S2で反射され、ミラー8e、ミラー8d、測定光分割部28、分割点を経由して受光部18に到達する。受光部18は、第1レーザ光及び第2レーザ光の参照光と、第1レーザ光及び第2レーザ光の第1測定光と、第1レーザ光及び第2レーザ光の第2測定光とを受光し、それらの光が全て合成された合成光の強度を演算部20に出力する。
【0069】
そして、この状態を維持しながら位置情報取得部24が移動手段22を動作させ反射点を反射部14ごと参照光の光路長が減少する方向に移動させる。
【0070】
反射点が移動して分割点から反射点までの距離が分割点から第1測定点S1までの第1測定光の片道分の光路長と等しい位置O(s1)に到達すると、第1測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる。そして、この位置O(s1)では第1測定光の第1レーザ光による干渉光と第1測定光の第2レーザ光による干渉光とが明部のピークを取り、この位置O(s1)において合成光の強度は最大ピーク強度と略同等となる。また、強度データはこの位置O(s1)前後において対称性を示す。
【0071】
演算部20は受光部18からの合成光の強度をモニタして、判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離だけ反射点が移動してピーク位置を過ぎた所定範囲の強度データが取得されると、演算部20はピーク位置前後の強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置を第1位置(=位置O(s1))の第1位置情報として記録する。尚、原点位置Oから位置O(s1)までの距離は距離L1に相当する。このとき、被測定物6を中間地点P0から所定量ずらして配置することにより、第1測定光と第2測定光との光路差は第1レーザ光及び第2レーザ光のコヒーレンス長よりも長くなり、よって、この位置O(s1)近傍では第2測定光は干渉せず第2測定光が第1位置情報の取得に悪影響を及ぼすことはない。
【0072】
次に、反射点がさらに移動して分割点から反射点までの距離が分割点から第2測定点S2までの第2測定光の片道分の光路長と等しい位置O(s2)に到達すると、今度は第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる。この位置O(s2)では第2測定光の第1レーザ光による干渉光と第2測定光の第2レーザ光による干渉光とが明部のピークを取り、この位置O(s2)において合成光の強度は最大ピーク強度と略同等となる。また、強度データはこの位置O(s2)前後において対称性を示す。
【0073】
演算部20は受光部18からの合成光の強度をモニタして、判定基準を超える強度のピークが存在した場合、その反射点の位置(ピーク位置)の位置情報を取得する。そして、さらに所定の距離だけ反射点が移動してピーク位置を過ぎた所定範囲の強度データが取得されると、演算部20はピーク位置前後の強度データが、このピーク位置の前後で対称性を示すか否かを確認する。そして、対称性が確認された場合その反射点の位置を第2位置(=位置O(s2))の第2位置情報として記録する。尚、原点位置Oから位置O(s2)までの距離は距離L2に相当する。このとき、被測定物6を中間地点P0から所定量ずらして配置することにより、第1測定光と第2測定光との光路差は第1レーザ光及び第2レーザ光のコヒーレンス長よりも長くなり、よって、この位置O(s2)近傍では第1測定光は干渉せず第1測定光が第2位置情報の取得に悪影響を及ぼすこともない。以上が第3の測距方法の取得ステップ及び記録ステップに相当する。
【0074】
次に、演算部20は、第1位置情報と第2位置情報と原点位置情報とから、被測定物6の第1測定点S1と第2測定点S2との間の厚み方向の距離、即ち被測定物6の厚みtを算出する。厚みtの算出方法は、例えば、原点位置情報をPo、第1位置情報の値をPs1、第2位置情報をPs2とし、反射部14が分割部12から遠ざかるにつれ位置情報の値が増加する場合、
t=(Po−Ps1)+(Po−Ps2)=2Po−Ps1−Ps2
となる。以上が第3の測距方法の測定ステップに相当する。
【0075】
以上のように、本発明に係る測距方法及びレーザ測距装置は、合成光の強度をモニタして、所定の強度以上のピーク位置の前後における強度データの対称性を確認することで、被測定物の測定点と対応する反射点の位置情報を取得する。そして、その位置情報に基づいて被測定物までの距離もしくは被測定物の2つの測定点間の厚み方向の距離を測距する。従って、強度データに基づく演算量を低減することが可能となり、演算部に対する負荷を抑えながら、レーザ光の可干渉性を利用した高精度な測距を行うことができる。
【0076】
尚、上記で示したレーザ測距装置50a〜50c、51a〜51cは本発明に好適な例であるから、参照光、測定光、第1測定光、第2測定光の光路は部分的に光ファイバで置き換えても良い他、各部の構成及び各光路等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
6 被測定物
12 分割部
14 反射部
16a 第1出射口
16b 第2出射口
18 受光部
20 演算部
24 位置情報取得部
28 測定光分割部
50a〜50c、51a〜51c レーザ測距装置
S 測定点
S1 第1測定点
S2 第2測定点
L 距離
t (被測定物の)厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる中心周波数を有する2つ乃至3つのレーザ光を参照光と測定光に分割し、
全ての参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに全ての測定光を被測定物の測定点で反射させ、
反射点で反射した各参照光と測定点で反射した各測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物の測定点までの距離を測定する測距方法であって、
反射点の位置を移動させながら全てのレーザ光を照射して反射点の位置と対応した合成光の強度データを取得する取得ステップと、
当該強度データが所定の値以上の強度のピークを取るとともに、その前後で対称となる反射点の位置情報を記録する記録ステップと、
当該位置情報と予め取得されている基準点の位置情報とに基づいて基準点から測定点までの距離を算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法。
【請求項2】
異なる中心周波数を有する2つ乃至3つのレーザ光を参照光と測定光に分割し、
全ての測定光をさらに第1測定光と第2測定光とに分割し、
全ての参照光をその光路長を変化させる方向に移動可能な反射点で反射させるとともに全ての第1測定光を被測定物の第1測定点で反射させ、さらに全ての第2測定光を被測定物の第2測定点で反射させ、
反射点で反射した各参照光と第1測定点で反射した各第1測定光と第2測定点で反射した各第2測定光とが合わさった合成光の強度データに基づいて被測定物の第1測定点と第2測定点との間の厚み方向の距離を測定する測距方法であって、
反射点の位置を移動させながら全てのレーザ光を照射して反射点の位置と対応した合成光の強度データを取得する取得ステップと、
当該強度データが所定の値以上の強度のピークを取るとともに、その前後で対称となる第1位置の第1位置情報と第2位置の第2位置情報とを記録する記録ステップと、
第1位置情報と第2位置情報とに基づいて第1測定点と第2測定点との間の厚み方向の距離を算出する測定ステップと、
を有することを特徴とする測距方法。
【請求項3】
無測定物状態で第1測定光の光路長及び第2測定光の光路長と参照光の光路長とが等しくなる反射点の位置を原点位置情報として記録する原点取得ステップをさらに有し、
第1測定光を被測定物の第1測定点で反射させるとともに第2測定光を第1測定点の裏面に位置する第2測定点で反射させ、
測定ステップが第1位置情報と第2位置情報と原点位置情報とに基づいて被測定物の厚みを算出することを特徴とする請求項2記載の測距方法。
【請求項4】
異なる中心周波数を有する2つ乃至3つのレーザ照射手段と、
当該レーザ照射手段から出射した全てのレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部と、
前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部と、
当該反射部の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部と、
反射部で反射した全ての参照光と被測定物の測定点で反射した全ての測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部と、
当該強度のデータと前記位置情報取得部からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部と、を備え、
請求項1記載の取得ステップと記録ステップと測定ステップとを行い、予め設定されている基準点から測定点までの距離を測距することを特徴とするレーザ測距装置。
【請求項5】
異なる中心周波数を有する2つ乃至3つのレーザ照射手段と、
当該レーザ照射手段から出射した全てのレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部と、
前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部と、
当該反射部の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割する測定光分割部と、
第1測定光を出射する第1出射口と第2測定光を出射する第2出射口と、
反射部で反射した全ての参照光と被測定物の第1測定点で反射した全ての第1測定光と被測定物の第2測定点で反射した全ての第2測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部と、
当該強度のデータと前記位置情報取得部からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部と、を備え、
請求項2記載の取得ステップと記録ステップと測定ステップとを行い第1測定点と第2測定点との間の厚み方向の距離を測距することを特徴とするレーザ測距装置。
【請求項6】
異なる中心周波数を有する2つ乃至3つのレーザ照射手段と、
当該レーザ照射手段から出射した全てのレーザ光を参照光と測定光とに分割する分割部と、
前記参照光を反射するとともに参照光の光路長が変化する方向に移動可能な反射部と、
当該反射部の反射点の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記測定光を第1測定光と第2測定光とに分割する測定光分割部と、
被測定物の配置位置を挟んで対向する位置に設けられ第1測定光を出射する第1出射口と第2測定光を出射する第2出射口と、
反射部で反射した全ての参照光と被測定物の第1測定点で反射した全ての第1測定光と第1測定点の裏面に位置する第2測定点で反射した全ての第2測定光とを受光してその合成光の強度のデータを出力する受光部と、
当該強度のデータと前記位置情報取得部からの位置情報とに基づいて反射点の位置と対応した合成光の強度データを作成しさらに所定の演算を行う演算部と、を備え、
請求項3記載の原点取得ステップと取得ステップと記録ステップと測定ステップとを行い被測定物の厚みを測距することを特徴とするレーザ測距装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate