湯切り孔付き蓋材
【課題】内蓋の一部が外蓋と剥離して容器本体に残り、湯切り孔が形成されるように構成されたシート状の蓋材において、さらに残湯量の低減をも図ることができる湯切り孔付き蓋材を提供する。
【解決手段】内蓋2には、残湯量低減孔形成切目35を形成する。湯切り孔形成切目34の内側部分を除く剥離開始切目32と開口形成切目33と内蓋3の外周縁とで区画された領域内における内蓋3と外蓋2の接着強度は、前記領域外における内蓋3と外蓋2の接着強度よりも弱く設定されて、上記タブ11を摘んで当該蓋材1を引き剥がしたときに、前記領域内にある内蓋3の一部のみが容器本体に残るように構成される。前記残湯量低減孔形成切目35は、剥離開始切目32と一体化されて、上記タブ11とは反対側の方向に突出するように、容器本体5側に残る前記領域内の内蓋3の一部に形成されている。
【解決手段】内蓋2には、残湯量低減孔形成切目35を形成する。湯切り孔形成切目34の内側部分を除く剥離開始切目32と開口形成切目33と内蓋3の外周縁とで区画された領域内における内蓋3と外蓋2の接着強度は、前記領域外における内蓋3と外蓋2の接着強度よりも弱く設定されて、上記タブ11を摘んで当該蓋材1を引き剥がしたときに、前記領域内にある内蓋3の一部のみが容器本体に残るように構成される。前記残湯量低減孔形成切目35は、剥離開始切目32と一体化されて、上記タブ11とは反対側の方向に突出するように、容器本体5側に残る前記領域内の内蓋3の一部に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ入り生タイプ麺やインスタント焼きそば等の容器に使用する湯切り孔付き蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
上記湯切り孔付き蓋材の一例として、特許文献1に開示されたものがある。図1を参照して、特許文献1に開示された湯切り孔付き蓋材を説明する。
【0003】
ここで、図1(a)は、特許文献1の湯切り孔付き蓋材の裏面を示している。湯切り孔付き蓋材はシート状で、内蓋と外蓋の2層構造を有していて、図1(a)に示した蓋材裏面側に内蓋が位置する。この湯切り孔付き蓋材は、内蓋の外周がカップ状の容器本体のフランジ部に熱接着されて、当該容器本体を封止する。
【0004】
蓋材裏面側の内蓋には、図1(a)に示したように、剥離開始切目、湯切り孔形成切目及び開口形成切目が設けられている。容器本体に熱溶着された湯切り孔付き蓋材のタブを摘んで引き剥がすと、図1(b)に示すように、内蓋の一部のみが容器本体側に残る。
容器本体側に残った内蓋部分には、湯切り孔が存在し、これを利用して、麺を湯がいた後の湯切りを行う。
【0005】
容器本体側に残すべき内蓋部分に対応する積層領域においては、内蓋と外蓋が離型層を介して積層されていて、この部分の接着強度を相対的に弱めている(すなわち、内蓋と外蓋とが剥離し易くしている)。こうすることで、タブを摘んで蓋材(外蓋)を容器本体から引き剥がすときに当該内蓋部分が容器本体側に残り易くしている。
一方、湯切り孔形成切目の内部領域においては、離型層の接着強度を相対的に強めている(すなわち、内蓋と外蓋とが剥離し難くしている)。したがって、湯切り孔形成切目内に位置する円形の内蓋部分は外蓋とともに引き剥がされて、その結果、容器本体側に残った内蓋部分には、湯切り孔が形成される(図1(b))。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の蓋材では、内蓋の剥離開始切目と容器本体のフランジ部の外端との位置が多少ずれることによって、外蓋と内蓋が分離せず、湯切り孔の形成に不都合が生じる場合がある。かかる不都合を解消するための蓋材として、特許文献2に以下のように構成された蓋材が開示されている。図2及び図3を参照して、特許文献2に開示された湯切り孔付き蓋材を説明する。
【0007】
ここで、図2(a)は、特許文献2の湯切り孔付き蓋材の裏面を示している。図2(b)〜(d)は、容器本体に取り付けられた蓋材を表面側から観察した場合のタブ付近を拡大した透視図であり、蓋材の表面側に表れない2本の剥離開始切目とフランジ部との位置関係を示すため、2本の剥離開始切目を一点鎖線で表し、前記フランジ部を破線で表している。
【0008】
特許文献2の蓋材では、蓋材と容器本体の溶着位置が多少ずれても内蓋の一部が外蓋と確実に分離するように、外側剥離開始切目、内側剥離開始切目の2本の切目が裏面側の内蓋に設けられている(図2(a))。これにより、内側剥離開始切目が容器本体のフランジ部の外端と接した状態(図2(b))又は容器本体のフランジ部の外端よりも外側にずれた状態(図2(c))で、内蓋の外周が容器本体に熱溶着されている場合には、図3(a)に示したように、内蓋は、内側剥離開始切目から剥離して、その一部が容器本体側に残る。一方、内側剥離開始切目が容器本体のフランジ部の外端よりも容器内側に位置した状態(図2(d))で、内蓋の外周が容器本体に熱溶着されている場合には、図3(b)に示したように、内蓋は、外側剥離開始切目から剥離して、その一部が容器本体側に残る。
【特許文献1】特開2003−221058号公報
【特許文献2】特開2003−276753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のいずれの湯切り孔付き蓋材においても、湯切り孔が位置ずれ(この場合の位置ずれとは、蓋材を容器本体に溶着させる時の位置ずれと、蓋材の製造時において湯切り孔をカッターで形成するときの位置ずれを含む)によって、容器本体フランジ部に重なって、該湯切り孔を形成する内蓋部分がフランジ部に溶着されてしまわないように、湯切り孔の位置を容器本体フランジ部内縁の位置からある程度余裕を持って容器中心側に形成する必要があった。このため、湯切り孔は容器本体フランジ部に接して形成されず、従って、一定量の湯を前記湯切り孔で排出できず、湯が容器本体に残ってしまうという問題点がある。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解消するため、内蓋の一部が外蓋と剥離して容器本体に残り、湯切り孔が形成されるように構成された蓋材において、さらに残湯量の低減をも図ることができる湯切り孔付き蓋材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するための手段として創案されたものであって、以下のように構成される。
本発明の蓋材は、シート状で内蓋(3)と外蓋(2)の2層構造を有し、内蓋の外周を容器本体の開口周囲のフランジ部に接着することで当該容器本体を封止するとともに、当該フランジ部よりも外方に突出するタブ(11)を備える。
内蓋には、タブ(11)の基部近傍(容器本体を封止した時のフランジ外縁との境界付近)に配置される剥離開始切目(32)と、該剥離開始切目より内蓋中心側に位置して注ぎ口を規定する開口形成切目(33)と、剥離開始切目と開口形成切目との間に位置して湯切り孔を規定する湯切り孔形成切目(34)とともに、残湯量低減孔を規定する残湯量低減孔形成切目(35)を形成する。
湯切り孔形成切目の内側部分(湯切り孔形成切目に囲まれた部分で湯切り孔となる部分)を除く、剥離開始切目と開口形成切目と内蓋の外周縁とで区画された領域内における内蓋と外蓋の接着強度は、前記領域外における内蓋と外蓋の接着強度よりも弱く設定されて、上記タブを摘んで当該蓋材を引き剥がしたときに、前記領域内にある内蓋の一部のみが容器本体に残るように構成されている。
前記残湯量低減孔形成切目(35)は、剥離開始切目(32)と一体化されて、剥離開始切目の一部が上記タブ(11)と反対側の方向に突出して、容器本体側に残る前記領域内の内蓋の一部に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成された本発明の湯切り孔付き蓋材においては、タブを摘んで引き剥がすと、残湯量低減孔が、容器本体側に残った内蓋の一部に形成される。前記残湯量低減孔は容器本体のフランジ部の内縁端から内方に突出するため、この残湯量低減孔を利用すれば、湯切り孔では排出不可能な湯を排出することができ、残湯量の低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1実施形態を添付の図面にしたがって説明する。なお、以下の実施形態では、上述の本発明における「剥離開始切目」を、外側剥離開始切目と区別するため、特に「内側剥離開始切目」と称して説明する。
【0014】
図4は、本発明の第1実施形態に係るシート状の湯切り孔付き蓋材1を示している。蓋材1は、大きく分けて外蓋2と内蓋3を有していて、図4(a)の表面側には外蓋2が位置し、図4(b)の裏面側には内蓋3が位置している。
なお、実際には、外蓋2及び内蓋3は、それぞれがさらに多数の積層構成を有する。蓋材1は、内蓋3の表面に設けた熱接着層又は他の接着剤等を用いて、後に説明するように、カップ状の容器本体5側に固定される。
【0015】
図5に示したように、蓋材1は、外蓋2の面を上側とし、内蓋3の外周を容器本体5の開口周囲に形成されたフランジ部51に接着することで、容器本体5を封止する。蓋材1は、容器本体5側に熱溶着された状態においてフランジ部51よりも外方に突出する摘み用タブ11を備える。消費者が前記タブ11を摘んで蓋材1を容器本体5から引き剥がして除去すると、図6(a)〜(c)に示した後述の内側剥離開始切目32とフランジ部51の位置関係によって、内蓋3の剥離が、後述の外側剥離開始切目31、内側剥離開始切目32のいずれか一方から開始して、内蓋3の一部が容器本体5側に残る。ここで、図6(a)〜(c)は、容器本体に取り付けられた本発明の第1実施形態に係る蓋材1を表面側から透視した場合のタブ11付近を拡大したものであり、蓋材1の表面側に表れない2本の剥離開始切目31、32とフランジ部51との位置関係を示すため、2本の剥離開始切目31、32を一点鎖線で表し、前記フランジ部51を破線で表している。
【0016】
具体的には、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端と接した状態(図6(a))又はフランジ部51の外端よりも外側にずれた状態(図6(b))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合には、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、内側剥離開始切目32及び後述の残湯量低減孔形成切目35と開口形成切目33との間に位置する内蓋3の一部が、図7(a)に示したように、湯切り孔形成切目34の内側部分を除いて、外蓋2から剥離して容器本体5側に残る。一方、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端よりも内側にずれた状態(図6(c))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合には、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、外側剥離開始切目31と開口形成切目33との間に位置する内蓋3の一部が、図7(b)に示したように、湯切り孔形成切目34の内側部分を除いて、外蓋2から剥離して容器本体5側に残る。
【0017】
容器本体5に麺が収容されている場合には、前記のように内蓋3の一部が容器本体5側に残った状態で、注ぎ口36にお湯を注いで麺を湯がく。
容器本体5側に残った内蓋3の一部には、湯切り孔37が形成されている。すなわち、麺の湯がきが終了した場合には、この湯切り孔37を利用して湯切りを行う。その後、最終的には、容器本体5側に残った内蓋3の一部も剥がし取って廃棄し、湯戻しした麺を喫食する。
【0018】
図4に示したように、内蓋3には、外側剥離開始切目31、内側剥離開始切目32、開口形成切目33、湯切り孔形成切目34及び残湯量低減孔形成切目35が形成されている。各切目は内蓋3の全厚を貫通して形成された切目である。
外側剥離開始切目31及び内側剥離開始切目32は、内蓋3のタブ11の基部近傍(容器本体を封止した時のフランジ外縁との境界付近)に形成されている。
開口形成切目33は、内側剥離開始切目32より内蓋の中心側に位置して注ぎ口36の形状を規定する。
また、湯切り孔形成切目34は、内側剥離開始切目32と開口形成切目33との間に位置し、それぞれ円形状に構成されている。容器本体5側に残った内蓋3の一部に形成される湯切り孔37(図7)の形状は、湯切り孔形成切目34によって規定される。
【0019】
上述のように、蓋材1は外蓋2と内蓋3を積層して構成しているが、外側剥離開始切目31と開口形成切目33との間に位置する内蓋3の一部は、湯切り孔形成孔切目34の内側部分(湯切り孔形成切目に囲まれた部分で湯切り孔となる部分)を除いて、例えば、この積層部分にのみ離型層を介在させる等して外蓋2と内蓋3との接着強度を弱めている。内蓋3の剥離は、上述したように、内側剥離開始形成切目32とフランジ部51の外端との位置関係によって剥離開始位置が異なり、いずれか一方の剥離開始切目31、32と開口形成切目33との間に位置する内蓋3の一部が、外蓋2から剥離して容器本体5側に残る。
【0020】
内蓋3のタブ11の基部近傍には、残湯量低減孔形成切目35が形成されている。この残湯量低減孔形成切目35は、残湯量低減孔38を規定する。残湯量低減孔形成切目35は、内側剥離開始切目32の中央に一体化されて形成されている。具体的には、内側剥離開始切目32と残湯量低減孔形成切目35の両方の切目が合わせて一本の切目を形成している。残湯量低減孔形成切目35は、略U字状に構成され、蓋材1を引き剥がしたときに容器本体5側に残る内蓋3の一部に、タブ11とは反対側の方向に突出するように(食い込むように)形成されている。なお、残湯量低減孔形成切目35は、内側剥離開始切目32に一体化されて形成され、タブ11とは反対側の方向に突出するように形成されているものであれば、内側剥離開始切目32の中央に位置する必要はなく、内側剥離開始切目32の端部に位置するものであってもよい。また、残湯量低減孔形成切目35は、複数形成されていてもよいし、その形状は略U字状でなくてもよい。
【0021】
内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端と接した状態(図6(a))又はフランジ部51の外端よりも外側にずれた状態(図6(b))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合には、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、容器本体5側に残った内蓋3の一部に、残湯量低減孔38が形成される(図7(a))。容器本体5側に内蓋3の一部が残った状態で湯切り作業を行うと、湯切り孔37では排出できない湯が、残湯量低減孔38を介して排出されるため、容器本体5に残る湯の量を低減することができる。
【0022】
一方、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端よりも内側にずれた状態(図6(c))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合には、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、容器本体5側に残った内蓋3の一部に、残湯量低減孔38と、この残湯量低減孔38を閉じるフラップ状部39とが形成される(図7(b))。容器本体5側に内蓋3の一部が残った状態で湯切り作業を行うと、図8に示したように、湯切り孔37では排出できない湯が、フラップ状部39を外側に押し出して残湯量低減孔38を開いた状態にし、残湯量低減孔38を介して排出されるため、容器本体5に残る湯の量を低減することができる。
【0023】
本発明に係る蓋材1と特許文献2の蓋材とを使用して湯切り作業を行った場合の残湯量を比較するため、本発明及び特許文献2の蓋材が溶着された即席食品容器を多数製造し、その中から無作為に3つ抽出して、麺が収容されていない容器本体5にそれぞれ湯を入れて湯切り作業を行ったところ、以下の表1に示すような結果が得られた。
なお、容器は開口径(内径)が170mmのスチロール製の丼型容器で、蓋材の湯切り孔の径は6mm、蓋材の中心点から蓋材の外縁側に列設する湯切り孔の中心点までの距離は78mmである。
【0024】
【表1】
【0025】
表1の結果に示されたそれぞれの容器の残湯量とその平均残湯量からも明らかなように、本発明に係る蓋材1を使用すれば、上記特許文献2の蓋材よりも残湯量を低減することが可能である。
【0026】
上記の第1実施形態では、剥離開始切目として、内側剥離開始切目32と外側剥離開始切目31の内外2本の切目を有する蓋材1を例示したが、剥離開始切目(内側剥離開始切目32)がフランジ部51の外端と接した状態(図6(a))又はフランジ部51の外端よりも外側にずれた状態(図6(b))で、容器本体5に蓋材1を確実に接着できる場合、換言すれば、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端よりも内側にずれた状態(図6(c))を引き起こすことなく、容器本体5に蓋材1を接着できる場合には、外側剥離開始切目31を内蓋3に必ずしも形成する必要はない。
【0027】
一方、以下のような場合には、上記のような第1実施形態に係る湯切り孔付き蓋材1では、残湯量を確実に低減することができないという問題がある。すなわち、容器本体5に残る内蓋3の一部が外側剥離開始切目31から蓋材1より剥離して、内蓋3の一部に残湯量低減孔38とフラップ状部39とが形成されると、湯切り作業の際に、フラップ状部39が外側に押し出されないことがあり、この場合、残湯量低減孔38を介して湯を排出することができない。
【0028】
そこで、第2実施形態に係る湯切り孔付き蓋材1においては、内蓋3の一部が外側剥離開始切目31を基点に蓋材1より剥離した場合にも、残湯量低減孔38を閉じるフラップ状部39が形成されないように内蓋3を以下のように構成し、残湯量の低減を確実に実現することを目的とする。
【0029】
図9は、本発明の第2実施形態に係る湯切り孔付き蓋材1を示している。なお、本発明の第2実施形態に係る蓋材1は、以下に説明するように、外側剥離開始切目の構成が異なる点と延長形成領域35aが形成されている点を除けば、第1実施形態に係る蓋材1と同一である。したがって、以下の第2実施形態に係る蓋材1の説明においては、その構成が第1実施形態と同一である部分については、対応する部分に同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0030】
内蓋3には、図9及び図10に示したように、外側剥離開始切目31と、残湯量低減孔38を延長形成する延長形成領域35aとが形成されている。外側剥離開始切目31は、内蓋3のタブ11の基部近傍で、内側剥離開始切目32より外側の位置に形成されている。延長形成領域35aは、図9(b)及び図10において斜線部で示したように、内蓋3のタブ11の基部近傍に形成され、残湯量低減孔38が形成される領域の基端と接している。延長形成領域35aは、内蓋3の外周縁に向かって延在して外側剥離開始切目を第1外側剥離開始切目31aと第2外側剥離開始切目31bとに分断している。第1外側剥離開始切目31aと第2外側剥離開始切目31bとは、左右対称に構成されている。第1外側剥離開始切目31の一端31a1は、図10に示したように、内側剥離開始切目32と残湯量低減孔形成切目35との第1交点部40aに近接している。一方、第2外側剥離開始切目31bの一端31b1は、内側剥離開始切目32と残湯量低減孔形成切目35との第2交点部40bに近接している。第1外側剥離開始切目31aは、内側剥離開始切目32の一端32aに向かって延在し、その他端31a2が内側剥離開始切目32に近接している。第2外側剥離開始切目31bは、内側剥離開始切目32の他端32bに向かって延在し、その他端31b2が、内側剥離開始切目32に近接している。
【0031】
第2実施形態に係る蓋材1では、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端と接した状態(図11(a))又はフランジ部51の外端よりも外側にずれた状態(図11(b))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合に、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、内蓋3の一部が、第1実施形態と同様に、内側剥離開始切目32及び残湯量低減孔形成切目35を剥離開始位置として蓋材1より剥離して容器本体5側に残り、残湯量低減孔38が形成される(図12(a)参照)。
【0032】
また、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端よりも内側にずれた状態(図11(c))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合に、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、内蓋3の一部が、第1外側剥離開始切目31a、第2外側剥離開始切目31b及び残湯量低減孔形成切目35を剥離開始位置として蓋材1より剥離して容器本体5側に残る。この場合、延長形成領域35aが残湯量低減孔38を形成する領域の基端と接し、かつ、内蓋3の外周縁に向かって延在して外側剥離開始切目を第1外側剥離開始切目31aと第2外側剥離開始切目31bとに分断しているので、第1実施形態とは異なり、フラップ状部39を形成する部分が、蓋材1から剥離して容器本体5側に残ることはなく、延長形成領域35aによって延長形成された残湯量低減孔38が内蓋3の一部に形成される(図12(b)参照)。したがって、このような第2実施形態に係る蓋材1によれば、蓋材1を容器本体5から引き剥がした時には、常に、残湯量低減孔38が開口した状態で形成されるので、残湯量の低減を確実に実現することが可能である。
【0033】
なお、第2実施形態に係る蓋材1において、残湯量低減孔形成切目35は、第1実施形態と同様に、必ずしも内側剥離開始切目32の中央に位置する必要はなく、内側剥離開始切目32の端部に位置するものであってもよい。この場合、蓋材1を容器本体5から引き剥がした時に、第1実施形態のようなフラップ状部39を形成する部分が容器本体5側に残らないようにするために、延長形成領域35aを内蓋3に形成する必要があり、具体的には、残湯量低減孔38が形成される領域の基端と接するように延長形成領域35aを構成し、この延長形成領域35aが、図13に示したように、内蓋3の外周縁に向かって延在して外側剥離開始切目31の延在を遮断していればよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来の湯切り孔付き蓋材を示す説明図である。
【図2】従来の湯切り孔付き蓋材を示す説明図である。
【図3】図2の蓋材の容器側残留部分のみを残して除去された状態を示す即席食品容器の斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る湯切り孔付き蓋材を示す説明図である。
【図5】図4の湯切り孔付き蓋材が取り付けられた即席食品容器の斜視図である。
【図6】図5の蓋材と容器本体のフランジ部の位置関係を示す説明図である。
【図7】図5の蓋材の容器側残留部分のみを残して除去された状態を示す即席食品容器の斜視図である。
【図8】フラップ状部が押し出された状態を示す図7(b)の即席食品容器の斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る湯切り孔付き蓋材を示す説明図である。
【図10】図9の蓋材裏面のタブ付近の部分拡大図である。
【図11】図9の蓋材と容器本体のフランジ部の位置関係を示す説明図である。
【図12】図9の蓋材の容器側残留部分のみを残して除去された状態を示す即席食品容器の斜視図である。
【図13】図9の蓋材の変形例を示す裏面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 蓋材
2 外蓋
3 内蓋
31 外側剥離開始切目
31a 第1外側剥離開始切目
31b 第2外側剥離開始切目
32 内側剥離開始切目
33 開口形成切目
34 湯切り孔形成切目
35 残湯量低減孔形成切目
35a 延長形成領域
36 注ぎ口
37 湯切り孔
38 残湯量低減孔
39 フラップ状部
40a、40b 内側剥離開始切目と残湯量低減孔形成切目との交点部
5 容器本体
51 フランジ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ入り生タイプ麺やインスタント焼きそば等の容器に使用する湯切り孔付き蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
上記湯切り孔付き蓋材の一例として、特許文献1に開示されたものがある。図1を参照して、特許文献1に開示された湯切り孔付き蓋材を説明する。
【0003】
ここで、図1(a)は、特許文献1の湯切り孔付き蓋材の裏面を示している。湯切り孔付き蓋材はシート状で、内蓋と外蓋の2層構造を有していて、図1(a)に示した蓋材裏面側に内蓋が位置する。この湯切り孔付き蓋材は、内蓋の外周がカップ状の容器本体のフランジ部に熱接着されて、当該容器本体を封止する。
【0004】
蓋材裏面側の内蓋には、図1(a)に示したように、剥離開始切目、湯切り孔形成切目及び開口形成切目が設けられている。容器本体に熱溶着された湯切り孔付き蓋材のタブを摘んで引き剥がすと、図1(b)に示すように、内蓋の一部のみが容器本体側に残る。
容器本体側に残った内蓋部分には、湯切り孔が存在し、これを利用して、麺を湯がいた後の湯切りを行う。
【0005】
容器本体側に残すべき内蓋部分に対応する積層領域においては、内蓋と外蓋が離型層を介して積層されていて、この部分の接着強度を相対的に弱めている(すなわち、内蓋と外蓋とが剥離し易くしている)。こうすることで、タブを摘んで蓋材(外蓋)を容器本体から引き剥がすときに当該内蓋部分が容器本体側に残り易くしている。
一方、湯切り孔形成切目の内部領域においては、離型層の接着強度を相対的に強めている(すなわち、内蓋と外蓋とが剥離し難くしている)。したがって、湯切り孔形成切目内に位置する円形の内蓋部分は外蓋とともに引き剥がされて、その結果、容器本体側に残った内蓋部分には、湯切り孔が形成される(図1(b))。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の蓋材では、内蓋の剥離開始切目と容器本体のフランジ部の外端との位置が多少ずれることによって、外蓋と内蓋が分離せず、湯切り孔の形成に不都合が生じる場合がある。かかる不都合を解消するための蓋材として、特許文献2に以下のように構成された蓋材が開示されている。図2及び図3を参照して、特許文献2に開示された湯切り孔付き蓋材を説明する。
【0007】
ここで、図2(a)は、特許文献2の湯切り孔付き蓋材の裏面を示している。図2(b)〜(d)は、容器本体に取り付けられた蓋材を表面側から観察した場合のタブ付近を拡大した透視図であり、蓋材の表面側に表れない2本の剥離開始切目とフランジ部との位置関係を示すため、2本の剥離開始切目を一点鎖線で表し、前記フランジ部を破線で表している。
【0008】
特許文献2の蓋材では、蓋材と容器本体の溶着位置が多少ずれても内蓋の一部が外蓋と確実に分離するように、外側剥離開始切目、内側剥離開始切目の2本の切目が裏面側の内蓋に設けられている(図2(a))。これにより、内側剥離開始切目が容器本体のフランジ部の外端と接した状態(図2(b))又は容器本体のフランジ部の外端よりも外側にずれた状態(図2(c))で、内蓋の外周が容器本体に熱溶着されている場合には、図3(a)に示したように、内蓋は、内側剥離開始切目から剥離して、その一部が容器本体側に残る。一方、内側剥離開始切目が容器本体のフランジ部の外端よりも容器内側に位置した状態(図2(d))で、内蓋の外周が容器本体に熱溶着されている場合には、図3(b)に示したように、内蓋は、外側剥離開始切目から剥離して、その一部が容器本体側に残る。
【特許文献1】特開2003−221058号公報
【特許文献2】特開2003−276753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のいずれの湯切り孔付き蓋材においても、湯切り孔が位置ずれ(この場合の位置ずれとは、蓋材を容器本体に溶着させる時の位置ずれと、蓋材の製造時において湯切り孔をカッターで形成するときの位置ずれを含む)によって、容器本体フランジ部に重なって、該湯切り孔を形成する内蓋部分がフランジ部に溶着されてしまわないように、湯切り孔の位置を容器本体フランジ部内縁の位置からある程度余裕を持って容器中心側に形成する必要があった。このため、湯切り孔は容器本体フランジ部に接して形成されず、従って、一定量の湯を前記湯切り孔で排出できず、湯が容器本体に残ってしまうという問題点がある。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解消するため、内蓋の一部が外蓋と剥離して容器本体に残り、湯切り孔が形成されるように構成された蓋材において、さらに残湯量の低減をも図ることができる湯切り孔付き蓋材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するための手段として創案されたものであって、以下のように構成される。
本発明の蓋材は、シート状で内蓋(3)と外蓋(2)の2層構造を有し、内蓋の外周を容器本体の開口周囲のフランジ部に接着することで当該容器本体を封止するとともに、当該フランジ部よりも外方に突出するタブ(11)を備える。
内蓋には、タブ(11)の基部近傍(容器本体を封止した時のフランジ外縁との境界付近)に配置される剥離開始切目(32)と、該剥離開始切目より内蓋中心側に位置して注ぎ口を規定する開口形成切目(33)と、剥離開始切目と開口形成切目との間に位置して湯切り孔を規定する湯切り孔形成切目(34)とともに、残湯量低減孔を規定する残湯量低減孔形成切目(35)を形成する。
湯切り孔形成切目の内側部分(湯切り孔形成切目に囲まれた部分で湯切り孔となる部分)を除く、剥離開始切目と開口形成切目と内蓋の外周縁とで区画された領域内における内蓋と外蓋の接着強度は、前記領域外における内蓋と外蓋の接着強度よりも弱く設定されて、上記タブを摘んで当該蓋材を引き剥がしたときに、前記領域内にある内蓋の一部のみが容器本体に残るように構成されている。
前記残湯量低減孔形成切目(35)は、剥離開始切目(32)と一体化されて、剥離開始切目の一部が上記タブ(11)と反対側の方向に突出して、容器本体側に残る前記領域内の内蓋の一部に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成された本発明の湯切り孔付き蓋材においては、タブを摘んで引き剥がすと、残湯量低減孔が、容器本体側に残った内蓋の一部に形成される。前記残湯量低減孔は容器本体のフランジ部の内縁端から内方に突出するため、この残湯量低減孔を利用すれば、湯切り孔では排出不可能な湯を排出することができ、残湯量の低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1実施形態を添付の図面にしたがって説明する。なお、以下の実施形態では、上述の本発明における「剥離開始切目」を、外側剥離開始切目と区別するため、特に「内側剥離開始切目」と称して説明する。
【0014】
図4は、本発明の第1実施形態に係るシート状の湯切り孔付き蓋材1を示している。蓋材1は、大きく分けて外蓋2と内蓋3を有していて、図4(a)の表面側には外蓋2が位置し、図4(b)の裏面側には内蓋3が位置している。
なお、実際には、外蓋2及び内蓋3は、それぞれがさらに多数の積層構成を有する。蓋材1は、内蓋3の表面に設けた熱接着層又は他の接着剤等を用いて、後に説明するように、カップ状の容器本体5側に固定される。
【0015】
図5に示したように、蓋材1は、外蓋2の面を上側とし、内蓋3の外周を容器本体5の開口周囲に形成されたフランジ部51に接着することで、容器本体5を封止する。蓋材1は、容器本体5側に熱溶着された状態においてフランジ部51よりも外方に突出する摘み用タブ11を備える。消費者が前記タブ11を摘んで蓋材1を容器本体5から引き剥がして除去すると、図6(a)〜(c)に示した後述の内側剥離開始切目32とフランジ部51の位置関係によって、内蓋3の剥離が、後述の外側剥離開始切目31、内側剥離開始切目32のいずれか一方から開始して、内蓋3の一部が容器本体5側に残る。ここで、図6(a)〜(c)は、容器本体に取り付けられた本発明の第1実施形態に係る蓋材1を表面側から透視した場合のタブ11付近を拡大したものであり、蓋材1の表面側に表れない2本の剥離開始切目31、32とフランジ部51との位置関係を示すため、2本の剥離開始切目31、32を一点鎖線で表し、前記フランジ部51を破線で表している。
【0016】
具体的には、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端と接した状態(図6(a))又はフランジ部51の外端よりも外側にずれた状態(図6(b))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合には、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、内側剥離開始切目32及び後述の残湯量低減孔形成切目35と開口形成切目33との間に位置する内蓋3の一部が、図7(a)に示したように、湯切り孔形成切目34の内側部分を除いて、外蓋2から剥離して容器本体5側に残る。一方、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端よりも内側にずれた状態(図6(c))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合には、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、外側剥離開始切目31と開口形成切目33との間に位置する内蓋3の一部が、図7(b)に示したように、湯切り孔形成切目34の内側部分を除いて、外蓋2から剥離して容器本体5側に残る。
【0017】
容器本体5に麺が収容されている場合には、前記のように内蓋3の一部が容器本体5側に残った状態で、注ぎ口36にお湯を注いで麺を湯がく。
容器本体5側に残った内蓋3の一部には、湯切り孔37が形成されている。すなわち、麺の湯がきが終了した場合には、この湯切り孔37を利用して湯切りを行う。その後、最終的には、容器本体5側に残った内蓋3の一部も剥がし取って廃棄し、湯戻しした麺を喫食する。
【0018】
図4に示したように、内蓋3には、外側剥離開始切目31、内側剥離開始切目32、開口形成切目33、湯切り孔形成切目34及び残湯量低減孔形成切目35が形成されている。各切目は内蓋3の全厚を貫通して形成された切目である。
外側剥離開始切目31及び内側剥離開始切目32は、内蓋3のタブ11の基部近傍(容器本体を封止した時のフランジ外縁との境界付近)に形成されている。
開口形成切目33は、内側剥離開始切目32より内蓋の中心側に位置して注ぎ口36の形状を規定する。
また、湯切り孔形成切目34は、内側剥離開始切目32と開口形成切目33との間に位置し、それぞれ円形状に構成されている。容器本体5側に残った内蓋3の一部に形成される湯切り孔37(図7)の形状は、湯切り孔形成切目34によって規定される。
【0019】
上述のように、蓋材1は外蓋2と内蓋3を積層して構成しているが、外側剥離開始切目31と開口形成切目33との間に位置する内蓋3の一部は、湯切り孔形成孔切目34の内側部分(湯切り孔形成切目に囲まれた部分で湯切り孔となる部分)を除いて、例えば、この積層部分にのみ離型層を介在させる等して外蓋2と内蓋3との接着強度を弱めている。内蓋3の剥離は、上述したように、内側剥離開始形成切目32とフランジ部51の外端との位置関係によって剥離開始位置が異なり、いずれか一方の剥離開始切目31、32と開口形成切目33との間に位置する内蓋3の一部が、外蓋2から剥離して容器本体5側に残る。
【0020】
内蓋3のタブ11の基部近傍には、残湯量低減孔形成切目35が形成されている。この残湯量低減孔形成切目35は、残湯量低減孔38を規定する。残湯量低減孔形成切目35は、内側剥離開始切目32の中央に一体化されて形成されている。具体的には、内側剥離開始切目32と残湯量低減孔形成切目35の両方の切目が合わせて一本の切目を形成している。残湯量低減孔形成切目35は、略U字状に構成され、蓋材1を引き剥がしたときに容器本体5側に残る内蓋3の一部に、タブ11とは反対側の方向に突出するように(食い込むように)形成されている。なお、残湯量低減孔形成切目35は、内側剥離開始切目32に一体化されて形成され、タブ11とは反対側の方向に突出するように形成されているものであれば、内側剥離開始切目32の中央に位置する必要はなく、内側剥離開始切目32の端部に位置するものであってもよい。また、残湯量低減孔形成切目35は、複数形成されていてもよいし、その形状は略U字状でなくてもよい。
【0021】
内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端と接した状態(図6(a))又はフランジ部51の外端よりも外側にずれた状態(図6(b))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合には、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、容器本体5側に残った内蓋3の一部に、残湯量低減孔38が形成される(図7(a))。容器本体5側に内蓋3の一部が残った状態で湯切り作業を行うと、湯切り孔37では排出できない湯が、残湯量低減孔38を介して排出されるため、容器本体5に残る湯の量を低減することができる。
【0022】
一方、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端よりも内側にずれた状態(図6(c))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合には、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、容器本体5側に残った内蓋3の一部に、残湯量低減孔38と、この残湯量低減孔38を閉じるフラップ状部39とが形成される(図7(b))。容器本体5側に内蓋3の一部が残った状態で湯切り作業を行うと、図8に示したように、湯切り孔37では排出できない湯が、フラップ状部39を外側に押し出して残湯量低減孔38を開いた状態にし、残湯量低減孔38を介して排出されるため、容器本体5に残る湯の量を低減することができる。
【0023】
本発明に係る蓋材1と特許文献2の蓋材とを使用して湯切り作業を行った場合の残湯量を比較するため、本発明及び特許文献2の蓋材が溶着された即席食品容器を多数製造し、その中から無作為に3つ抽出して、麺が収容されていない容器本体5にそれぞれ湯を入れて湯切り作業を行ったところ、以下の表1に示すような結果が得られた。
なお、容器は開口径(内径)が170mmのスチロール製の丼型容器で、蓋材の湯切り孔の径は6mm、蓋材の中心点から蓋材の外縁側に列設する湯切り孔の中心点までの距離は78mmである。
【0024】
【表1】
【0025】
表1の結果に示されたそれぞれの容器の残湯量とその平均残湯量からも明らかなように、本発明に係る蓋材1を使用すれば、上記特許文献2の蓋材よりも残湯量を低減することが可能である。
【0026】
上記の第1実施形態では、剥離開始切目として、内側剥離開始切目32と外側剥離開始切目31の内外2本の切目を有する蓋材1を例示したが、剥離開始切目(内側剥離開始切目32)がフランジ部51の外端と接した状態(図6(a))又はフランジ部51の外端よりも外側にずれた状態(図6(b))で、容器本体5に蓋材1を確実に接着できる場合、換言すれば、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端よりも内側にずれた状態(図6(c))を引き起こすことなく、容器本体5に蓋材1を接着できる場合には、外側剥離開始切目31を内蓋3に必ずしも形成する必要はない。
【0027】
一方、以下のような場合には、上記のような第1実施形態に係る湯切り孔付き蓋材1では、残湯量を確実に低減することができないという問題がある。すなわち、容器本体5に残る内蓋3の一部が外側剥離開始切目31から蓋材1より剥離して、内蓋3の一部に残湯量低減孔38とフラップ状部39とが形成されると、湯切り作業の際に、フラップ状部39が外側に押し出されないことがあり、この場合、残湯量低減孔38を介して湯を排出することができない。
【0028】
そこで、第2実施形態に係る湯切り孔付き蓋材1においては、内蓋3の一部が外側剥離開始切目31を基点に蓋材1より剥離した場合にも、残湯量低減孔38を閉じるフラップ状部39が形成されないように内蓋3を以下のように構成し、残湯量の低減を確実に実現することを目的とする。
【0029】
図9は、本発明の第2実施形態に係る湯切り孔付き蓋材1を示している。なお、本発明の第2実施形態に係る蓋材1は、以下に説明するように、外側剥離開始切目の構成が異なる点と延長形成領域35aが形成されている点を除けば、第1実施形態に係る蓋材1と同一である。したがって、以下の第2実施形態に係る蓋材1の説明においては、その構成が第1実施形態と同一である部分については、対応する部分に同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0030】
内蓋3には、図9及び図10に示したように、外側剥離開始切目31と、残湯量低減孔38を延長形成する延長形成領域35aとが形成されている。外側剥離開始切目31は、内蓋3のタブ11の基部近傍で、内側剥離開始切目32より外側の位置に形成されている。延長形成領域35aは、図9(b)及び図10において斜線部で示したように、内蓋3のタブ11の基部近傍に形成され、残湯量低減孔38が形成される領域の基端と接している。延長形成領域35aは、内蓋3の外周縁に向かって延在して外側剥離開始切目を第1外側剥離開始切目31aと第2外側剥離開始切目31bとに分断している。第1外側剥離開始切目31aと第2外側剥離開始切目31bとは、左右対称に構成されている。第1外側剥離開始切目31の一端31a1は、図10に示したように、内側剥離開始切目32と残湯量低減孔形成切目35との第1交点部40aに近接している。一方、第2外側剥離開始切目31bの一端31b1は、内側剥離開始切目32と残湯量低減孔形成切目35との第2交点部40bに近接している。第1外側剥離開始切目31aは、内側剥離開始切目32の一端32aに向かって延在し、その他端31a2が内側剥離開始切目32に近接している。第2外側剥離開始切目31bは、内側剥離開始切目32の他端32bに向かって延在し、その他端31b2が、内側剥離開始切目32に近接している。
【0031】
第2実施形態に係る蓋材1では、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端と接した状態(図11(a))又はフランジ部51の外端よりも外側にずれた状態(図11(b))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合に、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、内蓋3の一部が、第1実施形態と同様に、内側剥離開始切目32及び残湯量低減孔形成切目35を剥離開始位置として蓋材1より剥離して容器本体5側に残り、残湯量低減孔38が形成される(図12(a)参照)。
【0032】
また、内側剥離開始切目32がフランジ部51の外端よりも内側にずれた状態(図11(c))で、内蓋3の外周がフランジ部51に接着されている場合に、蓋材1を容器本体5から引き剥がすと、内蓋3の一部が、第1外側剥離開始切目31a、第2外側剥離開始切目31b及び残湯量低減孔形成切目35を剥離開始位置として蓋材1より剥離して容器本体5側に残る。この場合、延長形成領域35aが残湯量低減孔38を形成する領域の基端と接し、かつ、内蓋3の外周縁に向かって延在して外側剥離開始切目を第1外側剥離開始切目31aと第2外側剥離開始切目31bとに分断しているので、第1実施形態とは異なり、フラップ状部39を形成する部分が、蓋材1から剥離して容器本体5側に残ることはなく、延長形成領域35aによって延長形成された残湯量低減孔38が内蓋3の一部に形成される(図12(b)参照)。したがって、このような第2実施形態に係る蓋材1によれば、蓋材1を容器本体5から引き剥がした時には、常に、残湯量低減孔38が開口した状態で形成されるので、残湯量の低減を確実に実現することが可能である。
【0033】
なお、第2実施形態に係る蓋材1において、残湯量低減孔形成切目35は、第1実施形態と同様に、必ずしも内側剥離開始切目32の中央に位置する必要はなく、内側剥離開始切目32の端部に位置するものであってもよい。この場合、蓋材1を容器本体5から引き剥がした時に、第1実施形態のようなフラップ状部39を形成する部分が容器本体5側に残らないようにするために、延長形成領域35aを内蓋3に形成する必要があり、具体的には、残湯量低減孔38が形成される領域の基端と接するように延長形成領域35aを構成し、この延長形成領域35aが、図13に示したように、内蓋3の外周縁に向かって延在して外側剥離開始切目31の延在を遮断していればよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来の湯切り孔付き蓋材を示す説明図である。
【図2】従来の湯切り孔付き蓋材を示す説明図である。
【図3】図2の蓋材の容器側残留部分のみを残して除去された状態を示す即席食品容器の斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る湯切り孔付き蓋材を示す説明図である。
【図5】図4の湯切り孔付き蓋材が取り付けられた即席食品容器の斜視図である。
【図6】図5の蓋材と容器本体のフランジ部の位置関係を示す説明図である。
【図7】図5の蓋材の容器側残留部分のみを残して除去された状態を示す即席食品容器の斜視図である。
【図8】フラップ状部が押し出された状態を示す図7(b)の即席食品容器の斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る湯切り孔付き蓋材を示す説明図である。
【図10】図9の蓋材裏面のタブ付近の部分拡大図である。
【図11】図9の蓋材と容器本体のフランジ部の位置関係を示す説明図である。
【図12】図9の蓋材の容器側残留部分のみを残して除去された状態を示す即席食品容器の斜視図である。
【図13】図9の蓋材の変形例を示す裏面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 蓋材
2 外蓋
3 内蓋
31 外側剥離開始切目
31a 第1外側剥離開始切目
31b 第2外側剥離開始切目
32 内側剥離開始切目
33 開口形成切目
34 湯切り孔形成切目
35 残湯量低減孔形成切目
35a 延長形成領域
36 注ぎ口
37 湯切り孔
38 残湯量低減孔
39 フラップ状部
40a、40b 内側剥離開始切目と残湯量低減孔形成切目との交点部
5 容器本体
51 フランジ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蓋と外蓋の2層構造を有し、内蓋の外周を容器本体の開口周囲のフランジ部に接着することで当該容器本体を封止するとともに、当該フランジ部よりも外方に突出するタブを備えたシート状の蓋材において、
内蓋には、タブの基部近傍に配置される剥離開始切目と、該剥離開始切目より内蓋中心側に位置して注ぎ口を規定する開口形成切目と、剥離開始切目と開口形成切目との間に位置して湯切り孔を規定する湯切り孔形成切目とともに、残湯量低減孔を規定する残湯量低減孔形成切目を形成し、
湯切り孔形成切目の内側部分を除く、剥離開始切目と開口形成切目と内蓋の外周縁とで区画された領域内における内蓋と外蓋の接着強度は、前記領域外における内蓋と外蓋の接着強度よりも弱く設定されて、上記タブを摘んで当該蓋材を引き剥がしたときに、前記領域内にある内蓋の一部のみが容器本体に残るように構成され、
前記残湯量低減孔形成切目は、剥離開始切目と一体化されて、上記タブとは反対側の方向に突出するように、容器本体側に残る前記領域内の内蓋の一部に形成されていることを特徴とする、蓋材。
【請求項2】
前記残湯量低減孔形成切目は、前記剥離開始切目の中央に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の蓋材。
【請求項3】
前記内蓋には、前記剥離開始切目より外側に位置する外側剥離開始切目が形成されていることを特徴とする、請求項1記載の蓋材。
【請求項4】
前記内蓋には、前記剥離開始切目より外側に位置する外側剥離開始切目と、残湯量低減孔が形成される領域の基端と接して残湯量低減孔を延長形成する延長形成領域とが形成され、
前記延長形成領域は、内蓋の外周縁に向かって延在して前記外側剥離開始切目を分断していることを特徴とする、請求項1記載の蓋材。
【請求項5】
前記内蓋には、前記剥離開始切目より外側に位置する外側剥離開始切目と、残湯量低減孔が形成される領域の基端と接して残湯量低減孔を延長形成する延長形成領域とが形成され、
前記延長形成領域は、内蓋の外周縁に向かって延在して前記外側剥離開始切目の延在を遮断していることを特徴とする、請求項1記載の蓋材。
【請求項1】
内蓋と外蓋の2層構造を有し、内蓋の外周を容器本体の開口周囲のフランジ部に接着することで当該容器本体を封止するとともに、当該フランジ部よりも外方に突出するタブを備えたシート状の蓋材において、
内蓋には、タブの基部近傍に配置される剥離開始切目と、該剥離開始切目より内蓋中心側に位置して注ぎ口を規定する開口形成切目と、剥離開始切目と開口形成切目との間に位置して湯切り孔を規定する湯切り孔形成切目とともに、残湯量低減孔を規定する残湯量低減孔形成切目を形成し、
湯切り孔形成切目の内側部分を除く、剥離開始切目と開口形成切目と内蓋の外周縁とで区画された領域内における内蓋と外蓋の接着強度は、前記領域外における内蓋と外蓋の接着強度よりも弱く設定されて、上記タブを摘んで当該蓋材を引き剥がしたときに、前記領域内にある内蓋の一部のみが容器本体に残るように構成され、
前記残湯量低減孔形成切目は、剥離開始切目と一体化されて、上記タブとは反対側の方向に突出するように、容器本体側に残る前記領域内の内蓋の一部に形成されていることを特徴とする、蓋材。
【請求項2】
前記残湯量低減孔形成切目は、前記剥離開始切目の中央に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の蓋材。
【請求項3】
前記内蓋には、前記剥離開始切目より外側に位置する外側剥離開始切目が形成されていることを特徴とする、請求項1記載の蓋材。
【請求項4】
前記内蓋には、前記剥離開始切目より外側に位置する外側剥離開始切目と、残湯量低減孔が形成される領域の基端と接して残湯量低減孔を延長形成する延長形成領域とが形成され、
前記延長形成領域は、内蓋の外周縁に向かって延在して前記外側剥離開始切目を分断していることを特徴とする、請求項1記載の蓋材。
【請求項5】
前記内蓋には、前記剥離開始切目より外側に位置する外側剥離開始切目と、残湯量低減孔が形成される領域の基端と接して残湯量低減孔を延長形成する延長形成領域とが形成され、
前記延長形成領域は、内蓋の外周縁に向かって延在して前記外側剥離開始切目の延在を遮断していることを特徴とする、請求項1記載の蓋材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−105743(P2008−105743A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297933(P2006−297933)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000226976)日清食品株式会社 (127)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000226976)日清食品株式会社 (127)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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