説明

湯戻り性が改良された米麺

【課題】湯戻り性の改善された米麺を提供する。
【解決手段】米を洗米、浸漬後、磨砕して得た米乳液の乾燥固形分1重量部に対し、澱粉類を0〜1重量部混合したもの、又は米粉1重量部に対し澱粉類を0〜1重量部混合したものを主原料とする米麺の製造において、ポリデキストロース、架橋澱粉、マンニトール、グルコース、ソルビトール、キシリトール、寒天、難消化性デキストリン、白玉粉、グアガム酵素分解物、グルコマンナン、サイリウムシードガム、アルギン酸ナトリウムのうちから選ばれる一種以上を主原料に添加して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯戻り性が改良された米麺に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、麺類の市場では、厚みがあって、歯応えがある食感の麺に対する要望が強くなっている。一方即席麺類においては3分以下で湯戻りする事が重要であり、厚みが増しても3分湯戻りを維持する麺が望まれている。これら課題を解決すべく、小麦麺においては澱粉や加工澱粉、多糖類などの品質改良剤を添加したり、麺の構造を変えたりすることがおこなわれている。小麦粉は、加水・混練により、その中に含まれるグルテニンとグリアジンが作用して、グルテンを比較的多量に生じるため、更なる上記品質改良剤の添加により、麺の食感を向上させることが可能である。
【0003】
しかしながら、米は、小麦に比しグルテンが少ないため、米を用いた麺では、上記品質改良剤を添加しても湯戻り性の改良効果は不充分であり、むしろ食味や風味の低下を招く場合もある。米を原料とする麺には、ビーフン、フォー等があるが、これら米麺を工業的に生産することは、小麦粉主体の麺と比べ少なかったため、高品質の米麺を工業的規模で大量生産する知見は小麦粉主体の麺と比べ少ないのが現状である。
【0004】
その中で、麺に対する前述の課題を解決するために、高度分岐環状デキストリンを添加する方法が知られている(特許文献1参照)。該発明は、高度分岐環状デキストリンを適量添加することで強いこしを著しく落とすことなく、咀嚼によって噛み切りやすく、表面のつや・舌触りの向上、茹で時間の短縮等が改善された麺類を製造することを特徴としている。
【0005】
しかしながら該発明は、高度分岐環状デキストリンを添加することにより、こしを落とさないことを特徴としており、こしを強めることを目的としていない。また、表面のつや・舌触りの向上、茹で時間の短縮等の改善が挙げられているが、主な対象がうどん等のグルテンを多く含む小麦麺であり、グルテン含量の少ない米麺を対象とはしていない。
【0006】
また、麺に対する前述の課題を解決するために、大豆多糖類と分岐環状デキストリンを添加する方法が知られている(特許文献2参照)。該発明は、大豆多糖類と分岐環状デキストリンを適量添加することで食味、食感、風味等の品質劣化を抑制することを特徴としている。
【0007】
しかしながら該発明は、大豆多糖類と分岐環状デキストリンを添加することにより、冷凍や冷蔵保存、流通後、解凍や加熱再調理して喫食する際に、食味、食感、風味等、品質の劣化を抑制することを特徴としており、冷凍や冷蔵以外の食品を対象とはしていない。さらに、主な対象がうどん、やきそば等のグルテンを多く含む小麦麺であり、グルテン含量の少ない米麺を対象とはしていない。
【特許文献1】特開2001−136898号公報
【特許文献2】特開2004−208636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、湯戻り性の改良された米麺を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために主原料である米及び澱粉に添加すべき食品及び食品添加物を広く検討した結果、所定の物質を所定の量、主原料に混合することで、湯戻り性が改良された米麺を提供しうることを見出した。すなわち本発明は、米を洗米、水に浸漬後、磨砕して得た米乳液の乾燥固形分1重量部に対し、澱粉類を0〜1重量部混合したもの、又は米粉1重量部に対し澱粉類を0〜1重量部混合したものを主原料とする米麺の製造において、ポリデキストロース、架橋澱粉、マンニトール、グルコース、ソルビトール、キシリトール、寒天、難消化性デキストリン、白玉粉、グアガム酵素分解物、グルコマンナン、サイリウムシードガム、アルギン酸ナトリウムのうちから選ばれる一種以上を主原料に添加して製造されることを特徴とする湯戻り性の改良された米麺であり(発明1)、主原料に対し、重量%でポリデキストロースであれば0.01〜50%、架橋澱粉であれば0.01〜50%、マンニトールであれば0.01〜20%、グルコースであれば0.01〜20%、ソルビトールであれば0.01〜20%、キシリトールであれば0.01〜20%、寒天であれば0.1〜50%、難消化性デキストリンであれば0.01〜30%、白玉粉であれば0.01〜50%、グアガム酵素分解物であれば0.01〜30%、グルコマンナンであれば0.01〜10%、サイリウムシードガムであれば0.01〜10%、アルギン酸ナトリウムであれば0.01〜10%の範囲で添加され、かつ、これら添加物の合計量が主原料に対し0.01〜50%の範囲で用いられることを特徴とする請求項1記載の湯戻り性の改良された米麺であり(発明2)、また上記の添加物のうち、アルギン酸ナトリウムと他の添加物を上記発明2の添加量で組み合わせる事により更に良好な効果を得ることができる(発明3)。また、上記記載の米麺の製造方法(発明4)である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、湯戻り性が改良された米麺を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。本発明において、米麺とは、米を原料として用いる麺であり、ビーフン、フォーなどと同様、米を洗浄、浸漬後、磨砕して得た米乳液、又は米粉から製造する乾燥された米麺を示す。
【0012】
本発明でいう主原料とは、上記米乳液の乾燥固形物1重量部当たり、又は米粉1重量部あたり、0〜1重量部の澱粉類を混合したものを指す。米は、うるち米、もち米等何ら制限されないが、好ましくはうるち米がよい。また、品種、産地、保存期間については何ら制限されない。澱粉類とは、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉等から選ばれる1種又は2種以上のものを指す。澱粉類を加えない場合にも本発明は効果があるが、米麺の場合は一般的に麺が柔らかく茹で崩れを起こしやすいので、この防止のためにもある程度の澱粉を加えることが望ましい。
【0013】
本発明において、湯戻り性の改良された米麺とは、主原料に対し各種添加物を加え、定法により製造された一定の厚みの麺の湯戻り性が改良されている米麺を指す。具体的には0.45〜0.55mmの麺厚みを有する乾燥麺帯が、90℃のお湯により3分調理後の麺の硬さ(湯戻りしているか)を官能評価で測定できる。
【0014】
本発明により湯戻り性に改良効果が認められた物質は、以下の通りであり、食品として使用可能なものであれば市販品、自家製造品いずれも使用可能である。すなわち、ポリデキストロース、架橋澱粉、マンニトール、グルコース、ソルビトール、キシリトール、寒天、難消化性デキストリン、白玉粉、グアガム酵素分解物、グルコマンナン、サイリウムシードガム、アルギン酸ナトリウムである。これらは、米麺の湯戻り性改良剤として使用でき、上記米乳または米粉と澱粉類の主原料に対し、重量%でポリデキストロースであれば0.01〜50%、好ましくは0.1〜30%、架橋澱粉であれば0.01〜50%、好ましくは0.1〜10%、マンニトールであれば0.01〜20%、好ましくは0.1〜10%、グルコースであれば0.01〜20%、好ましくは0.1〜10%、ソルビトールであれば0.01〜20%、好ましくは0.1〜10%、キシリトールであれば0.01〜20%、好ましくは0.1〜10%、寒天であれば0.1〜50%、好ましくは0.5〜20%、難消化性デキストリンであれば0.01〜30%、好ましくは0.1〜20%、白玉粉であれば0.01〜50%、好ましくは0.1〜20%、グアガム酵素分解物であれば0.01〜30%、好ましくは0.1〜20%、グルコマンナンであれば0.01〜10%、好ましくは0.01〜0.1%、サイリウムシードガムであれば0.01〜10%、好ましくは0.01〜0.1%、アルギン酸ナトリウムであれば0.01〜10%、好ましくは0.05〜7%の範囲で添加され、かつ、これら添加物の合計量が主原料に対し0.01〜50%の範囲で用いられる。これら添加量の合計が0.01%以下では効果がなく、50%より多いと違和感を生じてしまう。本発明で添加物の合計量a%とは、主原料を(100−a)%としたときに添加物がa%を意味する。
【0015】
上記物質のうち架橋澱粉としては澱粉の種類に何ら制限されず、ポテトスターチ、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカスターチ、甘藷澱粉、緑豆澱粉から選ばれる一種以上の物質が利用できるが、好ましくは低架橋のタピオカスターチ、または、高架橋のハイアミロースコーンスターチがよい。これら添加物の添加量には幅があるが、用いる原料、期待する製品の品質に応じ、当業者であれば簡単な予備実験から最適量を決めることができる。
【0016】
上記物質のうち、アルギン酸ナトリウムは、0.01〜10%、好ましくは0.05〜7%の添加で湯戻り性向上効果と共に茹で伸び抑制効果も発現する為、他の湯戻り向上素材と併用することにより、茹で伸び抑制効果も発現させることができる。この場合の湯戻り向上素材の添加量は発明2で述べた範囲で使用でき、添加物の合計量が主原料に対し50%以下であればよい。
【0017】
これらの添加物の主原料への添加時期は、米乳液を用いる場合であればこれに加えれば良いし、米粉を用いる場合は、米粉に加え混合すればよい。また、必要あれば食塩、油等調味料、かんすい、プロピレングリコール、アルコール類、ソルビット、有機酸、色素等、食品または食品添加物を0〜10%添加してもよい。以下、定法により米麺を作成すればよい。得られた米麺は、通常の流通にかけられる。こうして製造された米麺は、熱湯水中で3分茹でることにより完全に湯戻りする。
【0018】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
(米麺の製造方法)
精白した米(うるち米の古古米)を水で4回洗米し、1.5倍量の水に3.5時間浸漬後、湿式粉砕機(スーパーマスコロイダーMKZA6−5:増幸産業(株))で磨砕して、米乳液を得た。該米乳液の乾燥固形分0.6重量部に馬鈴薯澱粉0.4重量部を混合したものを主原料とした。米乳液と澱粉との混合の際に、該混合物に対し各種添加物を添加した。主原料と添加物の混合物のボーメ比重が21〜23になるように水で調整後、蒸し器にて100℃、2分間蒸した。その後、乾燥機にて45℃、45分乾燥後、室温に3.5時間放置した。得られた麺帯をパスタマシーンで切断、麺線化し、45℃、2.5時間乾燥して米麺を得た。添加物なしの場合をコントロールとした。
【0020】
(評価方法)
上記製造法にて調製した米麺(麺厚みを0.35〜0.45mm、0.45〜0.55mm、0.55〜0.65mmで調製)に90度の湯を注ぎ3分間放置した後に湯戻り性の評価を実施した。(n=2)
○:湯戻りした
×:湯戻りせず
(ここで湯戻りしたものとは90度のお湯で3分間放置した後に口に入れて咀嚼した時に、違和感を感じない柔らかさの状態をさす)
なお、麺厚みが厚い程湯戻り性が悪くなる(湯戻りに時間がかかる)ことが確認されている為、本方法において、3分で湯戻りする麺厚みが厚い程、湯戻り性が良いということになる。本発明では、0.45〜0.55mm以上の麺厚みで効果が見られたものを米麺用湯戻り性改良剤とした。
【0021】
上記製造法にて試作した数種の米麺の評価結果を表1に示した。
麺の厚みが薄い場合には適宜茹で時間が短縮される事が確認されている。
【0022】
【表1】

【0023】
コントロール、セルロース添加品は0.45〜0.55mm以上において90度3分で湯戻りしなかったが、寒天、白玉粉、アルギン酸ナトリウム添加品は0.45〜0.55mmでも湯戻りし、ポリデキストロース、グルコース、マンニトール添加品は0.55〜0.65mmでも湯戻りし、コントロールに比べ明らかに湯戻り改善効果がある事が判明した。
【0024】
なお、アルギン酸ナトリウムは単独で湯戻り性を向上させるだけでなく、他の湯戻り性改良剤と組み合わせることにより、麺伸びも抑制させる効果が得られた。(ここで麺伸びは調理後の麺の硬さの変化を官能評価で測定した。具体的には調理後8分後の硬さを評価。8分後におけるコントロール(主原料のみによる米麺)の硬さ以上の硬さを維持ししているものを伸び抑制効果有りと判断した。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ビーフン、フォー等の米又は米粉でできた米麺の品質改良に広く利用可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米を洗米、浸漬後、磨砕して得た米乳液の乾燥固形分1重量部に対し、澱粉類を0〜1重量部混合したもの、又は米粉1重量部に対し澱粉類を0〜1重量部混合したものを主原料とする米麺の製造において、ポリデキストロース、架橋澱粉、マンニトール、グルコース、ソルビトール、キシリトール、寒天、難消化性デキストリン、白玉粉、グアガム酵素分解物、グルコマンナン、サイリウムシードガム、アルギン酸ナトリウムのうちから選ばれる一種以上を主原料に添加して製造されることを特徴とする湯戻り性が改良された米麺。
【請求項2】
主原料に対し、重量%でポリデキストロースであれば0.01〜50%、架橋澱粉であれば0.01〜50%、マンニトールであれば0.01〜20%、グルコースであれば0.01〜20%、ソルビトールであれば0.01〜20%、キシリトールであれば0.01〜20%、寒天であれば0.1〜50%、難消化性デキストリンであれば0.01〜30%、白玉粉であれば0.01〜50%、グアガム酵素分解物であれば0.01〜30%、グルコマンナンであれば0.01〜10%、サイリウムシードガムであれば0.01〜10%、アルギン酸ナトリウムであれば0.01〜10%、の範囲で添加され、かつ、これら添加物の合計量が主原料に対し0.01〜50%の範囲で用いられることを特徴とする請求項1記載の湯戻り性が改良された米麺。
【請求項3】
主原料に対し、重量%でアルギン酸ナトリウムが0.01〜10%添加され、更に、ポリデキストロース、架橋澱粉、マンニトール、グルコース、ソルビトール、キシリトール、寒天、難消化性デキストリン、白玉粉、グアガム酵素分解物、グルコマンナン、サイリウムシードガムのうちから選ばれる1種以上が添加され、かつ、これら添加物の合計量が主原料に対し50%以下の範囲で用いられることを特徴とする請求項1〜2記載の湯戻り性が改良された米麺。
【請求項4】
請求項1〜3記載の米麺の製造方法。