説明

湿度調整装置

【課題】函体・管・物品収納箱等の非開放の室空間の水蒸気を透過膜をもって移動させ、室内の湿度を除湿・加湿又は湿度変動の抑止をするにつき、室空間容積が大きくなっても、水蒸気移動量を増加でき且つ膜が空気圧で変型して破損することがないようにする。
【解決手段】高さ100m以上で内径30cmの中空管1の内部空間と連通するようにキャップ体10を中空管1の最上端に取り付け、同キャップ体の外周に設けた小孔10bそれぞれに連通筒11dを一端を嵌合し、他端を外側の固定板12・メッシュネット13でもって支持し、各連通筒11dの内部には3枚の防水性透過膜11a,11b,11cを設けて水蒸気移動制御器を形成し、固定板12・メッシュネット13はスプリング12cでキャップ体10方向に付勢されるように取り付けられ、キャップ体10、連通筒11d、固定板12・メッシュネット13とを包被する筒状外套14を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、函体・管・物品収納箱・小さな収納室等の大気に非開放の比較的大きな室空間の湿度を、防水性透過膜を用いて無電源で大気との間で水蒸気移動させて室内の湿度を調整する装置に関する。室内の湿度を低くする除湿装置、室内の湿度を高める加湿装置、湿度変動を低く抑える湿度変動抑制装置として利用できる技術である。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、大気と非開放の函体内の空間との間に連通筒を設け、連通筒の内部の通気路に膜特性が異なる防水性透過膜を所定間隔離して複数設けることで、大気と函体内の空間の水蒸気の移動を制御する水蒸気移動制御装置を開発した。この開発した装置は、特許出願され、特開平5−322060号公報,特開平7−68124号公報において知られている。
【0003】
しかしながら、函体の空間容量が大きくなると、水蒸気移動質量を増加させねばならなくなる。大略、空間容量と比例して防水性透過膜の面積を大きくせねばならない。しかしながら、防水性透過膜を大径にすると、この膜に働く空気圧によって膜が膨れて変形し、膜が破損する恐れがあった。
水蒸気移動制御装置の対象容積が大容量になると、天候の変化にともなって発生する表面温度の温度の上下動の幅も大きくなり、このため耐圧性が問題となる。
又、膜の引張り強さや変形を考慮すると、大面積に対して適用する場合には、防水可能な透過膜自体の変形が発生し、透過量の異常な変動や予期しがたい温度勾配などが発生する可能性が高く、大きな表面積の装置を作成することは困難であった。
【0004】
次に、湿度調整器の一部は大気に露されるで、天候で強風・暴風雨を受けることが発生する。強い風・雨水があると湿度調整器の性能を著しく低下させる。又落雷すると、湿度調整器内の温度・空気圧が急激に上昇して使用していた膜等を破損させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−322060号公報
【特許文献2】特開平7−68124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、水蒸気を制御する空間が大容積になって、膜の圧力による破損がなく、且つ高い能力でもって水蒸気移動を制御できる湿度調整装置を提供することにある。その上で、強風・雨水・雷等の天候に対しても耐えて使用できるものにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 湿度を調整する非開放の室空間と連通するように取り付けられ且つ内部が袋空間となった筒体の外周壁面に室と筒体との連通口の口径より小さな小孔を複数設け、各小孔に同小孔と一端が連通し他端が外気と連通する連通筒を取り付け、同連通筒の内部の通気路に3枚の防水性透過膜を所定間隔離して設けて同透過膜の特性によって水蒸気の移動を制御する水蒸気移動制御器を各小孔毎に形成し、各小孔に取り付けられた複数の水蒸気移動制御器によって室内の湿度を制御することを特徴とする湿度調整装置
2) 各水蒸気移動制御器の連通筒の内側端部を内部に段部がある小孔に摺動可能に嵌入し、同内側部と小孔の段部との間に環状パッキンを介在し、連通筒の外側端部を係止する固定板を筒体外周面に向けて付勢するスプリングを介して弾支した、前記1)記載の湿度調整装置
3) 固定板の外側に所定間隔離してメッシュネットを設け、筒体の外周面・水蒸気移動制御器・固定板及びメッシュネットを内側に包被する外套を筒体に設け、同外套の一部に外套内部と外気との通気路を設けた、前記2)記載の湿度調整装置
4) 外套と筒体とを通電素材で作製し、防雷のために同外套と筒体とを大地に接地した、前記3)記載の湿度調整装置
5) 筒体に設けた小孔の一部には水蒸気移動制御器を形成させず、小孔の孔を塞ぐ栓体を小孔に取り付けて水蒸気移動制御器の数を調整した、前記1)〜4)何れかに記載の湿度調整装置
6) 水蒸気移動制御器の3枚の防水性透過膜の外気側の防水性透過膜は吸湿性がある不織布から構成される防水性透過膜からなり、内側の防水性透過膜は外気側よりも透過性が高い防水性透過膜からなり、中間の防水性透過膜は内側及び外気側よりも透過性が高い防水性透過膜であって吸湿性が時間経過に伴って変化する度合いが前記順番が変化しない組み合わせの膜を使用して、水蒸気移動制御器が室内の湿度変動を抑止するようにした、前記1)〜5)何れかに記載の湿度調整装置
にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、室空間と連通する筒体の袋空間は室空間の容積に応じた広めの空間容積・口径を必要とするが、筒体外周に取り付けた水蒸気移動制御器の連通筒及びその内部に設けた防水性透過膜の直径は、筒体の室空間との連通口の口径に比べ大幅に小径であり、従って同じ圧力が作用しても膜の変形・変位は少なくなり、膜の耐圧強度は高いものとなる。又、膜が小径となる分、一個当たりの水蒸気移動量が小さいが、筒体外周には複数又は多数個の水蒸気移動制御器を設けることで、全体の水蒸気移動量を大きくでき、広い室空間の水蒸気の移動制御を可能とする。
【0009】
筒体の外周面に設けた小孔には、全て水蒸気移動制御器を取り付ける必要はなく、余った小孔があれば連通筒と同じ外形寸法の中実のプラスチック製等の栓体を固定板との間に嵌装して小孔を閉塞してもよい。又余分の小孔の閉塞手段として、上記の栓体の他に、小孔の内側孔開口を閉鎖する所要長さの内筒を筒体内面に嵌挿する方法もある。種々の室空間に対応できる湿度調整装置にするため、やや大きめの筒体に多くの小孔を設け、余分となる小孔を上記の閉塞手段で塞ぐことで、種々の容積の室空間に対し、その環境に最適な個数の水蒸気移動制御器だけ取り付けるようにするようにでき、室空間の大きさの対応性と湿度調整能力への対応性とを良好にでき、且つ生産コストも部品品種数を少なくできて安価にできる。
【0010】
又、水蒸気移動制御器の外側に、メッシュネット及び外套を設ければ、風・雨水・塩分・粉塵・黄砂・虫等が水蒸気移動制御器に直接接触することを防ぎ、膜の破損・汚れ及び水蒸気移動制御器の性能の低下を防ぐ。又、メッシュネットは空気の流れを少なくして撹拌して空気の状態の均一化をする。
【0011】
各水蒸気移動制御器の連通筒の大気側端部を固定板とスプリングで筒体方向に付勢するように保持するものでは、連通筒は段付き小孔にパッキンを介して気密状に取り付けられ、又室空間筒体内空間に高い圧力が発生した場合、又は落雷で一時的に高い空気圧が作用する場合に、連通筒はその空気圧による力がスプリングの付勢力に勝って外方向に少し摺動する。摺動することでパッキンによる気密性が緩んで、筒体内の空気を筒体外の大気側へ放出して筒体内の空気圧を低下させ、膜が高い空気圧で破損するのを防いでいる。
【0012】
更に、外套と筒体を大地にアースするものでは、落雷してもその雷の影響を弱め、装置が破損するのを防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例の全体配置を示す説明図である。
【図2】図2は、実施例の上部湿度変動抑制装置のキャップ体と、固定板との分解説明図である。
【図3】図3は、実施例の上部湿度変動抑制装置の縦断面図である。
【図4】図4は、実施例の小型湿度変動抑制器の取付状態を示す説明図である。
【図5】図5は、実施例の連通筒の取付の拡大説明図である。
【図6】図6は、実施例の小型湿度変動抑制器の縦断面図である。
【図7】図7は、下部と中間の湿度変動抑制装置の縦断面図である。
【図8】図8は、斜めの中空管に取り付けた例を示す説明図である。
【図9】図9は、透過膜による水蒸気移動質量の時間変化を示す模式図である。
【図10】図10は、透過膜による水蒸気移動質量を示す説明図である。
【図11】図11は、透過膜の不織布面から撥水面方向の透過質量を示す説明図である。
【図12】図12は、実施例の小型湿度変動抑制器1個当りの断熱膜の有無による湿度抑制特性の変化を示す特性図である。
【図13】図13は、小型湿度変動抑制器1個当りの湿度抑制対象の室空間の大きさに対する室内湿度の変化を示す説明図である。
【図14】図14は、中空管の高さによる管内容積の変化を示す説明図である。
【図15】図15は、上部湿度調整装置の外套上面の表面模様図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の水蒸気移動制御器は室空間の水蒸気を大気へ放出する除湿の場合と、その逆の加湿の場合及び湿度変動を抑制する場合とがある。
【0015】
防水性透過膜に近接して導電性多孔体のメッシュを設けることが好ましい。このメッシュ(導電性多孔体)は、膜近傍に配置され、膜近傍の温度変化を均質化するとともに、水蒸気の移動の方向性も均質化し、膜の支持と補強を行い、又銅によるオリゴジナミー効果で、細菌や真菌による膜部の表面汚損を予防する。
【実施例】
【0016】
本実施例は、建造物の支柱鋼管で100mを超える垂直な中空管の最上端に設置され、中空管内の空間の湿度の変動を80%RH以下に、又下方が50%RH近くになるように抑えるために設けた長尺中空管の上部湿度変動抑制装置として使用した例であり、本発明の湿度調整装置は上部湿度変動抑制装置として使用されている。又本発明の水蒸気移動制御器は実施例では小型湿度変動抑制器として、本発明の筒体は有蓋の8角形状の角筒状のキャップ体として具現化されている。
又本実施例は、固定板・メッシュネット・外套及びスプリングによる固定板の弾支の構造を有する例でもある。
以下、詳細に説明する。
【0017】
本実施例は、建造物の主柱鋼管である中空管の最上端の開口に有蓋筒状の金属製キャップ体を開口とキャップ体内部が連通するように取り付け、同キャップ体(本発明の筒体に相当)の外周面に沿って小径の小孔を多数設け、各小孔に小型湿度変動抑制器(本発明の水蒸気移動制御器に相当)を水平に取り付け、その小型湿度変動抑制器の外周にメッシュネットと外套を取り付けている。更に中空管の途中と最下端それぞれに、上記小型湿度変動抑制器より4割程内径が大きい中型の中間・下部湿度変動抑制装置を設け、同中間・下部湿度変動抑制装置には毛細管現象によって外部に排水する非通気性のフェルト製排水体を備え、内部に非通気の排水路を形成させている。
【0018】
図中、Tは100m以上の建造物の主柱、Wは中空管1の最上端に取り付けた上部湿度変動抑制装置、Lは主柱Tとなる鋼管の中空管1の最下端に取り付けた中型の排水体を内部に形成した下部湿度変動抑制装置、Mは中空管1の中間に取り付けた中型の排水体を内部に形成した中間湿度変動抑制装置であり、下部及び中間湿度変動抑制装置は略同じ構造を有する。
【0019】
1は主柱Tとなる内径30cmで高さ100m以上のフランジで継がれた鋼管製中空管、1a,1bは中空管1のフランジ部、1cは中空管1内の内部空間、1dはフランジ部1bに設けられたボルト孔であってキャップ体10のボルト孔10cとを貫通する断熱表面処理されたボルトで連結されている。2は主柱Tのコンクリート基礎である。10は上部湿度変動抑制装置Wの内径30cmの有蓋の金属製8角筒状のキャップ体、10aは同キャップ体のフランジ部、10bはキャップ体10の8角筒の各外周面に設けた1列縦6個の一面2列の割合で各8面に設けた段付きの96個の小孔、10cはフランジ部10aに設けた中空管1の最上端のフランジ部1aと連結するためのボルト孔、10dはフランジ部1a,10aとの連結を断熱して気密にするパッキン、10eは上面のネジ孔、10fはキャップ体10の内部空間、11は各小孔10bに取り付けられる内径が約32mmで外径が約36mmの小型湿度変動抑制器、11a,11b,11cは小型湿度変動抑制器11内の通気路の防水性透過膜であり、外気側は吸湿性がある不織布から構成される防水性透過膜からなり、内側は外気側よりも透過性が高い防水性透過膜からなり、中間の膜は内側及び外気側よりも透過性が高い防水性透過膜であって、吸湿性が時間経過に伴って変化する度合いが、前記順番が変化しない組み合わせの膜を使用している。
【0020】
11dは小型湿度変動抑制器11の内部を通気路とするケーシングの連通筒、11eは中間の防水性透過膜11bに近接して設けた導電性多孔体のメッシュ、11fは防水性透過膜11a,11bで区画される外側小室、11gは防水性透過膜11b,11cで区画される内側小室、11hは小孔10bの内壁面と当接させるパッキンである。
【0021】
12は縦6個2列の小型湿度変動抑制器11の外周部をキャップ体10の外周面に保持する縦長の固定板である。同固定板12は一対の金属製押え板12−1,12−2の間に間装した耐熱性で通気性で透湿性の断熱膜12−3との積層からなっている。12aは同固定板内側面に設けた小型湿度変動抑制器11の外縁を係止する段付きの係止孔、12bは固定板12をキャップ体10の外周面に固定するためのスプリング12c付の取付ネジ、12cは固定板12及びメッシュネット13をキャップ体10方向に付勢するスプリング、12dは連結ネジ、12eはスペーサ、12fは小型湿度変動抑制器11の外周端を押え板12−2の係止孔12aの段部に押し付け気密状にするパッキンである。13は固定板12の外周に配置され、連結ネジ12dでもって固定板12に取り付けられ、風・水等が直接小型湿度変動抑制器11に接触するのを防ぐ縦長板状のメッシュネットである。14は同メッシュネットの外側に同メッシュネット・小型湿度変動抑制器・キャップ体の全体を被せるように取り付けられる金属製外套、14aは同外套をキャップ体10の上面に取り付ける取付ネジ、14bはキャップ体10の内周面に付設した断熱性塗装、15a,15b,15cは通気路、17はフランジ部10aの外側に取り付けた下端に排水溝を設けた排水と凍結破壊防止のための水切り板、18a,18c,18cは金属製外套14・キャップ体10・中空管1とを接続する防雷の為にするアース線である。
【0022】
20a〜20kは下部湿度変動抑制装置L及び中間湿度変動抑制装置Mの共通した構成部分であって、小型湿度変動抑制器11と同様な通気路と膜構造を有し、小型湿度変動抑制器11に比べ外径が大きくて47mmとする中型のものである。20a,20b,20cは小型湿度変動抑制器11の防水性透過膜11a,11b,11cと同質の膜で内径が大きく41mm程の防水性透過膜である。20dはケーシングである連通筒、20dは連通筒20dの内側の内筒及び膜間とメッシュとのスペーサ、20eは防水性透過膜20bに近接して設けた導電性多孔体のメッシュ、20fは防水性透過膜20a,20bで区画される外側小室、20gは防水性透過膜20b,20cで区画される内側小室、20hは中空管1の内部空間と下部・中間湿度変動抑制装置L,Mの連通筒20dとを連通する連通管、20iはフェルト製の毛細管現象で水を移動させる非通気性排水体、20kは連通筒20dの周壁内に形成された排水路である。20lは連通筒20dの下端を支持するリング状ワッシャ、20mは同ワッシャに穿孔した排水孔である。
【0023】
フェルト製の排水体20iは、フェルト内の繊維に、寒天又はオブラート等の長鎖タンパク質を防腐剤としてタンニン酸を用いて、防腐処理・防虫処理を行ったエマルジョンをpH調整してほぼ中性としたコロイド状液を含浸させ、乾燥させたフェルトの表面に、アラビアのり等の被膜状の水溶性糊剤により表面を覆う処理を行った。
全体をアラビアのりのような糊剤で固めると、フェルト内に含まれる硬化乾燥した後に水分に接触しても、膨潤して崩壊するまでに長時間を要する。ところで、水分に接触して早期に気密性を破壊し、通水性を確保するためには、フェルト内に浸入したタンパク鎖の膨潤を活用して、最外側の被膜(アラビアのりの被膜)を早く(3分以内)崩壊して、排水を促進することができる。
本排水機構にあっては、排水機能が作動した後は、フェルト材はエアフィルター効果を持ち、外界の異物の保護空間内への侵入を阻止する。但し、通気性はほとんどない。フェルト材の素材としては、ポリエステル綿・ナイロン・合成繊維・天然繊維など任意であるが、耐候性の高い物質が好ましい。又吸湿性は低い素材の方が、前記のコロイド液乾燥に都合がよく、製作しやすく、安定した機能を得やすい。
【0024】
中空管1に傾斜がある場合には、図8のように、大容量対応型水蒸気移動制御装置を水平に配置するように、配置するための補助傾斜リング19を配置してもよい。
【0025】
上部湿度変動抑制装置Wの外套14は、導電性体により被覆されるか、導電性構成材料によって構成され、中空管1に電気的にアース線18a,18b,18cに接続され、接地される。この結果、直撃雷による焼損が予防される。
【0026】
尚、同外套14は、強い風・雨水・粉塵等が直接小型湿度変動抑制器11に当たるのを防ぐ。その内側のメッシュネット13によって更に被覆され、水滴が滞りにくい構造となっている。この結果、地上での風速が2m/secでも高度の高い60m位置などでは8m/secであるような場合は頻繁に発生しているために、水蒸気の移動制御を行うための、装置・膜の表面温度が異常に変動して、水蒸気移動が悪作用を受けることを予防することができる。
【0027】
外套14の下に配置される、外套14下で風力を低下させるメッシュネット13の設計は任意であり、実施例では、俵積み配列など任意であるし、複数の多孔メッシュを打ち抜き板から構成し、離隔をおいてこれらの多孔メッシュを複数配置してもよい。
【0028】
最下位や中間部の湿度変動抑制装置L,Mは、排水や管路内の乱流の発生による水蒸気の排出促進作用を有する。最外側の外套14は日除け及び雨よけ、外套14の内側のリムは乱流発生堤防となる。
【0029】
固定板12は、小型湿度変動抑制器11の外周部をキャップ体10の外周面に設けられた段付き小孔10b内のパッキン11hを介して、取付ネジ12bとスプリング12cによりキャップ体10へ圧接される。メッシュネット13と固定板12は、連結ネジ12dにより12eのスペーサで一定間隔に固定される。これらは、取付ネジ12bにより貫通され、スプリング12cによってキャップ体10の方向に小型湿度変動抑制器11を段付き小孔10b内のパッキン11hを介して圧接される。
【0030】
もしも建造物の中空管1頂部等に落雷が起きたときには、中空管内部1c及びキャップ体10の内部空間10fの内圧が急激に上昇して、小型湿度変動抑制器11の内部に過剰な圧力が加わらないように、前記小型湿度変動抑制器11は、段付き小孔10b内を滑走して浮き上がり、中空管1の内部空間1cやキャップ体10の内部空間10fの急激な圧力の変化は、リークによって緩衝され、小型湿度変動抑制器11の内部の破損を防止する。
【0031】
環状の水切り板17は、外套14の内側にあり、キャップ体10のフランジ部10aに固定されている。外套14とキャップ体10のフランジの間には、隙間が5mm程度を隔てる、通気路15aが環状に在る。
水蒸気の移動は、中空管内部1cにより、キャップ体の内部空間10fを経由して、小型湿度変動抑制器11の通気路となる膜11a,11b,11c、小室11f,11gを通り、メッシュネット13と固定板12の間通気路15cよりメッシュネット13を経由して、外套14内側の通気路15bに至り、通気路15aより大気中に拡散する。水切り板17は、外套14からの直接の風当たりを撹拌する作用や、風雨の直接の小型湿度変動抑制器11への吹きつけを防止し、前記小型湿度変動抑制器11の水蒸気の移動特性への悪作用を小さくする。
【0032】
又、図4に示される固定板12とキャップ体10の間の間隙dにある小型湿度変動抑制器11を、キャップ体10の外周で押さえ板12の間に、ウレタンや発泡スチロール、ガラス繊維などの断熱材を小型湿度変動抑制器11を取り囲むようにして周着して充填してもよい。この断熱材の効果としては小型湿度変動抑制器11の表面温度の急激な温度変化を予防し、小型湿度変動抑制器の性能を安定化することができる。
外套14は、キャップ体10の頂部に取付ネジ14aにて取り付けるが、このネジ孔10eはキャップ体10の頂部を貫通せず水漏れが起こることはない。
メッシュネット13は、地上では2m/sec位の風速でも50mなどの高さでも風速は高くなり8〜10m/secとなることは多いので、小型湿度変動抑制器11の外表面等に直接強風が当たって前記小型湿度変動抑制器11の急激な温度変動を避けることができ、性能の安定化と耐久性の安定化が図られる。
【0033】
外套14は、日除け及び通気路15aをキャップ体10のフランジ部10aの間に形成し、強風や強雨が外套14内に直接浸入することを予防する小さな環状スリットを形成する。
外套14の素材は金属製であるが、内面には耐熱性の断熱性塗装14bが施され、外套14から前記小型湿度変動抑制器11への輻射熱による悪作用を予防し、又外套14内を紫外線から保護する。
又外套14の下に、輻射熱を断熱するための断熱材をメッシュネット13の外周に配置してもよい。
【0034】
本実施例において、中空管1内の水蒸気は主として上部湿度変動抑制装置Wによって、副次的に下部湿度変動抑制装置L,中間湿度変動抑制装置Mによって移動制御され、中空管1内の湿度変動は大略80%RH以下で、下方は50%RH近い湿度に抑制される。
【0035】
上部湿度変動抑制装置Wには、水蒸気が上昇流とともに集まる傾向があるが、その水蒸気は中空管1の最上端の内径30cmのキャップ体10の内部に進入する。この水蒸気はキャップ本体10の外周面に水平に設けられた96個の内径32mm程の小型湿度変動抑制器11によって中空管1内の湿度変動を小さくするように作用する。同様に中空管1の下部と中間でも、外径47mmの中型の湿度変動抑制装置L,Mによっても湿度変動を少なくするようにしている。
【0036】
これらの小型湿度変動抑制器11及び下部・中間の中型の湿度変動抑制装置L,Mの水蒸気移動制御による湿度変動抑制の作用は、防水性透過膜11a,11b,11c、20a,20b,20cの作用によるものである。以下、その湿度抑制の現象を説明する。
【0037】
中空管内と外気とを連通する通気路においてこれら3種類の防水性透過膜の移動境界面から2小室に区分され、これらの空間の間で熱交換が行われる。移動現象が膜によって制限され、等圧変化傾向で、移動境界面の熱交換が移動方向に行われる。この経過で移動エネルギーの伝搬ロスが発生する。
この熱伝達は逆方向でも同様であるが、大気側は図10に示したように容積に制限はないので、圧力変化は発生しない。そこで、中空管側から大気側への移動には、中空管内と大気間の水蒸気圧差で移動が発生し、大気側と中空管内の水蒸気圧が等しくなるまで移動が継続しやすく、大気方向へ移動し易い。
同様に、外気側の方が中空管内に比べて水蒸気圧が高い場合には、中空管方向への水蒸気の移動が発生する。しかし、この移動方向では、結果的に中空管内部の圧力上昇をまねき、明らかな仕事量を必要とする。また中空管内圧及び中間の透過膜から他の透過膜への圧力上昇のための仕事量が必要となるが、熱エネルギーの伝搬ロスがあるため抑制される。これらの結果、中空管内は、中空管内部よりも高い外気側の水蒸気圧量にはなりにくく、圧力差の矛盾は、水蒸気の移動が抑制されるかわりに、空気が移動して安定する。この現象は、結果的には逆浸透現象に類似する。
具体的な水蒸気の移動経過では、中空管内部空間からの熱伝播は、外気方向への水蒸気の浮力によって、最上部にある上部湿度変動抑制装置の小型湿度抑制器11の集合体から、熱的には並列回路として排出される。
下方又は中間の湿度変動抑制装置L,Mでは、外気からの水蒸気の保護空間への移動を妨げる効果を期待するので、膜部の補強を行う。この結果、除湿された空気が、保護空間に流入するとともに、外気流の異物の侵入を妨げる。
【0038】
水蒸気移動量の差を形成する境界面の移動量を説明するため、図9,10に通気路の透過膜の透過量の比率で示す模式図を示している。
更に水蒸気の移動量を求めるために、中空管内側の圧力を1として、等温等圧下での水蒸気の移動量を精密測定した結果をもとに、時間経過に伴って変化させた水蒸気の移動質量図9の上3本を、理論的に組み合わせた場合を仮定して、透過量を単純に比率計算して求める。
図11に、膜の不織布から撥水面方向の透過質量を示している。この結果は、不織布から撥水面方向への水蒸気の透過質量を示す。逆方向の移動量の変化は、膜では、表面積が大きい不織布の方が外気側を向いている場合の方が移動速度は速くなるが、温度の影響は大きくなりやすい。
しかし、概ね、水蒸気の不織布から撥水面方向への移動量と、撥水面から不織布面への移動量はほぼ等しいものとして差し支えない。これらの方向性は、膜の表面汚損や表面の温度変化を考慮して配置することが望ましい。
【0039】
特に、本実施例の上部湿度変動抑制装置Wは、キャップ体の内径が300mmに対し、小型湿度変動抑制器11の内径が32mmで約1/10の径で、面積にして1/100程となるので、透過膜の圧力に対する耐圧性は全く問題なく使用できる。
【0040】
以上のように、本実施例の装置なしでは、中間管1内の湿度が90%RH以上から40%RH以下の湿度変動を一日一サイクルで生じる場合でも、湿度を80%RH以下で低い方も50%RH近くにまでできて湿度変動幅を大きく低減し、中空管内の結露の発生を抑え、中空管の内部の錆・腐食を少なくして、寿命を長くできるものとした。
【0041】
次に、本実施例の固定板12には、通気性で透湿性の耐熱性の断熱膜12−3を中間に挟んでいる。この断熱膜12−3がある場合とない場合の湿度特性の違いについて説明する。
【0042】
室空間の容積36Lにたいして、結露防止器の湿度調整装置を1個装着した場合の特性をもとに耐熱膜12−3の効果を下記実験で説明する。この耐熱膜12−3は、図9のP1の外側に配置され、通気路を形成する。
(実験説明)
室空間の初期湿度を100%RHとして外気湿度が65%RHの場合に、室内の湿度が下降を示し、その測定開始から約24時間後に外気湿度を95%RHに変えた場合の室内の湿度の上昇の抑制が行われる態様を図12に示す。図12の比較は断熱膜12−3の有無の差異である。標準仕様がないもので、難熱仕様としたものが断熱膜12−3が存在するものである。
難燃仕様でのラインは、耐熱膜12−3による通気路の断熱を行い、この結果下降特性が速い。
一方、標準仕様の水蒸気移動制御装置の特性は、24時間後の難燃仕様と同一の集束点を持つ。
【0043】
中空管などの大容量の水蒸気移動制御を行う場合には、構造物の頂部にすえつけるために、直射日光などによる温度上昇にたいする悪作用の対策が必要である。水蒸気の選択透過性が殆ど無い、また水蒸気の移動速度への抑制が働きにくい性質の耐熱の断熱膜12−3を通気路の最外側への配置を行うことで、特に、耐熱性の低い素材でも、水蒸気の移動制御能力を向上させ、安定した長期機能の確保が可能となる。
【0044】
一つの水蒸気移動モジュール(小型湿度変動抑制器:以下同様)が耐えることができる圧力には制限がある。これは透湿膜に張力限界が存在するからであって、多孔性の導電性多孔体ではさまれた場合に問題となる。
図1および図2中のMやLでは、水蒸気の移動量には制限がかけられるが、一つのモジュールが処理することができる水蒸気移動量は、図13の実験値の通りで、下記のように概算される。
水蒸気を理想気体と仮定した場合には、
難燃仕様の下降特性は、湿度調整空間の対象容積の増加に伴って、上記のように変化する。この結果は一方では、ある特定の容積にたいして水蒸気移動制御モジュールの数量を増加させない場合には、より大きな圧力がかかることを示す。
そこで、適正な容積対比により水蒸気制御モジュールの数量を増加させて使用する必要がある。
このために、出願の内容構成により、頂部に敷設される水蒸気移動モジュールの数量が適正に増加されることによって、適正耐圧を維持することができ、水蒸気の下降速度を維持することができる。
【0045】
一方、強化された膜支持機構を有する中空間中部や下部の下部・中間湿度変動抑制装置L,Mでは、これらの通気特性は維持されないが、外気からの水蒸気の浸入を拒み、逆に空気の通過を許すことになる。
この結果、浮力によって上昇する性質の水蒸気は、急速に頂部に設けられた水蒸気移動制御装置が集合する湿度調整装置(上部湿度変動抑制装置W)から排出されるが、長尺中空管1の内部空間への水蒸気の外気側からの侵入量は極端に制限を受けるために、中空管内の低湿度環境を確保することができ、腐食予防などを効果的に促進することができる。
また、長尺中空管1では、高度の高い位置では風速が高く、ケーブルなどの維持システムの表面積が大きくなり、相対的に高度の低い位置よりも、熱交換速度が速くなる。
つまり、低い位置よりも高度が高い位置の方が、温度が下降する速度が速く、一方、水蒸気は上昇する性質を持つので、温められた低い位置を通過した水蒸気は、管路を上昇するに従って、次第に、温度が下降する結果、飽和水蒸気圧に接近する。この結果、管路内部の上部では、管路の下部に比べると結露がより高度に発生し、この液滴が滴下することが考えられる。
【0046】
そこで、下部や中部にすえつけられる下部・中間湿度変動抑制装置L,Mには、異常時排水機構(排水体20i,排水路20k)を設ける。この装置では、中空管1内の結露水・水は連通管20hを介して連通筒20dに流入し、排水体20iに浸透して連通筒20d内の排水路20kとワッシャ20lの排水孔20mを通って外部へ流下して排出される。
しかし、前記のように、LやMの配置は、下方からの水蒸気の浸入量が、極端に制限を受ける一方、管路内への外気の浸入を拒み、水蒸気移動制御モジュールが、1方向へのエアーフィルタ化することによる表面汚損を予防するとともに、管路内部の汚損を促進する、外気側からの水蒸気の管路内方向への侵入を極力抑制する機構と構成となる。
【0047】
図15は、上部湿度調整装置の外套を上面から見た平面模様の図面である。
鳥害対策として、鳥が上部湿度調整装置の上面に止まり、糞便尿などで外套14の上面が汚損すると、その通気路15aなどが表面汚損してしまい、風速の高い位置に配置される本湿度調整装置の主要部である固定板12や断熱膜12−3、小型湿度変動抑制器11などを汚損してしまう恐れがある。
また、外套14の効果として、断熱や直射日光からの保護があるが、これらは熱的に計算された温度変化を辿るように設計されている。長期にわたり鳥による糞便や尿などの汚損によって、これらの熱設計が乱される恐れがある。
更に、鳥などの糞便や尿によって、外套の取付ネジ14aの破損が発生してしまうことが考えられる。
そこで、取付ネジ14aにパッキンを配置して、水密として、鳥害による汚損物質の装置内浸入を阻むとともに、外套14の上面に、図15のような絵図を配置することで、鳥害を予防することができる。また、図15にあげた眼様模様の色調は、主として猛禽類やカラスなどが嫌う色調として、暗赤色や赤外線や紫外線反射性塗料などを用いるなど自由である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、大きな内径で長尺の鋼管・ダクト、屋外設置の金属製函体、閉鎖されることが多い居住空間・天井空間・植物育苗室・動物飼育室等の湿度管理装置として使用でき、除湿装置又は加湿装置あるいは湿度変動抑制装置、結露防止装置、結露・湿度による錆発生防止装置等として広く使用できる。
【符号の説明】
【0049】
T 主柱
W 上部湿度変動抑制装置(湿度調整装置)
L 下部湿度変動抑制装置
M 中間湿度変動抑制装置
1 中空管
d 間隙
1a,1b フランジ部
1c 内部空間
1d ボルト孔
2 コンクリート基礎
10 キャップ体
10a フランジ部
10b 小孔
10c ボルト孔
10d パッキン
10e ネジ孔
10f 内部空間
11 小型湿度変動抑制器(水蒸気移動制御器)
11a,11b,11c 防水性透過膜
11d 連通筒
11e メッシュ
11f 外側小室
11g 内側小室
11h パッキン
12 固定板
12−1 押え板
12−2 押え板
12−3 断熱膜
12a 係止孔
12b 取付ネジ
12c スプリング
12d 連結ネジ
12e スペーサ
12f パッキン
13 メッシュネット
14 外套
14a 取付ネジ
14b 断熱性塗装
15a,15b,15c 通気路
17 水切り板
18a,18b,18c アース線
19 補助傾斜リング
20a,20b,20c 防水性透過膜
20d 連通筒
20d 内筒
20e メッシュ
20f 外側小室
20g 内側小室
20h 連通管
20i 排水体
20k 排水路
20l 押えワッシャ
20m 排水孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿度を調整する非開放の室空間と連通するように取り付けられ且つ内部が袋空間となった筒体の外周壁面に室と筒体との連通口の口径より小さな小孔を複数設け、各小孔に同小孔と一端が連通し他端が外気と連通する連通筒を取り付け、同連通筒の内部の通気路に3枚の防水性透過膜を所定間隔離して設けて同透過膜の特性によって水蒸気の移動を制御する水蒸気移動制御器を各小孔毎に形成し、各小孔に取り付けられた複数の水蒸気移動制御器によって室内の湿度を制御することを特徴とする湿度調整装置。
【請求項2】
各水蒸気移動制御器の連通筒の内側端部を内部に段部がある小孔に摺動可能に嵌入し、同内側部と小孔の段部との間に環状パッキンを介在し、連通筒の外側端部を係止する固定板を筒体外周面に向けて付勢するスプリングを介して弾支した、請求項1記載の湿度調整装置。
【請求項3】
固定板の外側に所定間隔離してメッシュネットを設け、筒体の外周面・水蒸気移動制御器・固定板及びメッシュネットを内側に包被する外套を筒体に設け、同外套の一部に外套内部と外気との通気路を設けた、請求項2記載の湿度調整装置。
【請求項4】
外套と筒体とを通電素材で作製し、防雷のために同外套と筒体とを大地に接地した、請求項3記載の湿度調整装置。
【請求項5】
筒体に設けた小孔の一部には水蒸気移動制御器を形成させず、小孔の孔を塞ぐ栓体を小孔に取り付けて水蒸気移動制御器の数を調整した、請求項1〜4何れかに記載の湿度調整装置。
【請求項6】
水蒸気移動制御器の3枚の防水性透過膜の外気側の防水性透過膜は吸湿性がある不織布から構成される防水性透過膜からなり、内側の防水性透過膜は外気側よりも透過性が高い防水性透過膜からなり、中間の防水性透過膜は内側及び外気側よりも透過性が高い防水性透過膜であって吸湿性が時間経過に伴って変化する度合いが前記順番が変化しない組み合わせの膜を使用して、水蒸気移動制御器が室内の湿度変動を抑止するようにした、請求項1〜5何れかに記載の湿度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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