説明

湿式現像剤及び湿式画像形成方法並びに湿式画像形成装置

【課題】キャリア液に水を用い、定着エネルギーを低減できる湿式現像剤を提供する。
【解決手段】少なくとも、着色剤と、バインダー樹脂と、水とを含む湿式現像剤であって、バインダー樹脂は温度応答性ポリマーを少なくとも含み、該温度応答性ポリマーは相転移温度より低温では水に溶解して単一相を形成し、該相転移温度より高温では水に不溶となり、液相と高分子相とに分離する。記録材への転写定着前に現像剤中の水分を除去することができるので、定着に要するエネルギーを大幅に削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複写機、プリンタ、デジタル印刷機等の湿式電子写真方式の画像形成装置に用いる湿式現像剤及び湿式画像形成方法並びに湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成においては、感光体等の静電潜像担持体に原稿画像や画像データに応じた画像露光をして静電潜像を形成し、この静電潜像を現像して可視トナー像とし、そのトナー像を直接紙等の記録材に転写するか、又は一旦中間転写部材に1次転写し、さらに記録材に2次転写し、定着させて目的とする画像を得ている。電子写真方式の現像方式は乾式現像法と湿式現像法に分けることができ、乾式現像法は、トナーのみを用いて現像するのに対し、湿式現像法では、電気絶縁性の分散媒(キャリア液)にトナーを分散させた液体現像剤を用いる。湿式現像法によれば、乾式現像法に比べ小粒径なトナーを使用できるので、高精細な画像を得ることができる。例えば、乾式現像法のトナー粒径は、5μm程度が限界であるが、湿式現像法では、サブミクロンオーダーまで小粒径化が可能である。また、トナー消費量の低減化も期待できる。
【0003】
湿式現像剤に用いるキャリア液には、電気絶縁性だけでなく、低毒性で低臭性、そしてトナーを溶解しないことが必要とされる。そのため、引火点が170℃以上といった低揮発性の非水系溶媒が用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−522582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の低揮発性の非水系溶媒であっても、揮発性有機化合物(VOC)の発生が皆無ではない。そのため、環境に優しい水を用いたキャリア液の使用が望まれている。一方、キャリア液に水を用いた場合であっても、定着時にはトナー層中の水分を蒸発させるために多量のエネルギーが必要である。そのため、省エネルギーの観点から、その定着エネルギーの低減が必要とされている。
【0006】
そこで、本発明は、キャリア液に水を用い、定着エネルギーを低減できる湿式現像剤及びそれを用いた湿式画像形成方法並びに湿式画像形成装置を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の湿式現像剤は、少なくとも、着色剤と、バインダー樹脂と、水とを含む湿式現像剤であって、上記バインダー樹脂は温度応答性ポリマーを少なくとも含み、該温度応答性ポリマーは相転移温度より低温では水に溶解して単一相を形成し、該相転移温度より高温では水に不溶となり、液相と高分子相とに分離することを特徴とする。
【0008】
本発明では、バインダー樹脂に少なくとも温度応答性ポリマーを用いる。温度応答性ポリマーとは、水の存在下で所定温度(以下、相転移温度という。)を境にして水に対する溶解性が可逆的に変化するポリマーである。すなわち、本発明の温度応答性ポリマーは相転移温度より低温では水に溶解して一相を形成し、相転移温度より高温では水に不溶となり、液相と高分子相との二相に分離する。温度応答性ポリマーの水に対する溶解性が変化する理由としては、加熱することにより、脱水和が起こり、ポリマーが凝集してゲル化するためである。そして、脱水和により溶媒和していた水が放出される。相転移温度前後におけるポリマーの水に対する溶解性の変化は、高分子が不溶化し、溶液が不透明あるいは半透明となることにより評価することができる。
【0009】
本発明においては、上記温度応答性ポリマーに、以下の一般式(1)で示されるN置換(メタ)アクリルアミドをモノマー構成単位として含む単独重合体又は共重合体、以下の一般式(2)で示されるN置換(メタ)アクリルアミドをモノマー構成単位として含む単独重合体又は共重合体、ポリオキシエチレン誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコール部分酢化物からなる群から選択された少なくとも1種のポリマーを用いることができる。
【0010】
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基、R及びRは水素原子または炭素数6以下のアルキル基を示し、R及びRは同一であっても異なっていてよい。)
【0011】
【化2】


(式中、Rは水素原子またはメチル基、Aは(CH)でnが4〜6又は(CHO(CHを示す。)
【0012】
また、本発明においては、上記相転移温度が、30℃〜60℃であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の湿式現像剤は、以下の湿式画像形成方法に用いることができる。すなわち、静電潜像担持体に形成される静電潜像を湿式現像剤を用いて現像し、可視トナー像とする湿式画像形成方法であって、湿式現像剤に本発明の湿式現像剤を用い、上記静電潜像に付着させた本発明の湿式現像剤を、該湿式現像剤に含まれる温度応答性ポリマーの相転移温度よりも高温で加熱して、該湿式現像剤中の水分を放出させるようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の湿式現像剤は、以下の湿式画像形成装置に用いることができる。すなわち、静電潜像担持体に形成される静電潜像を湿式現像剤を用いて現像し、可視トナー像とする湿式画像形成装置であって、上記静電潜像に付着させた本発明の湿式現像剤を、該湿式現像剤に含まれる温度応答性ポリマーの相転移温度よりも高温で加熱して、該湿式現像剤中の水分を放出させる現像剤加熱装置を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、温度応答性ポリマーをバインダー樹脂に用い、静電潜像に湿式現像剤を付着させて現像剤層を形成させた後、その現像剤層を温度応答性ポリマーの相転移温度よりも高温で加熱して、温度応答性ポリマーを水に不溶化させて、該湿式現像剤中の水分の放出を促進させる。従来の現像剤では、バインダー樹脂が水を保持しており、定着時にその水分が記録材に転移し、その水分を蒸発除去するのに多くのエネルギーを必要とする。これに対し、本発明は、記録材への転写定着前に現像剤層の水分を大量に除去することができるので、定着に要するエネルギーを大幅に削減することができる。また、静電潜像担持体に付着させた湿式現像剤に水が残っていると、その水が被転写体に転移し、画像のにじみの原因となるという問題もあったが、本発明によれば、記録材への水分の転移を抑制できるので、画像のにじみを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の湿式現像装置の構造の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の湿式現像剤は、少なくとも着色剤と、バインダー樹脂と、水とを含む湿式現像剤であって、上記バインダー樹脂は温度応答性ポリマーを少なくとも含み、該温度応答性ポリマーは相転移温度より低温では水に溶解して単一相を形成し、該相転移温度より高温では水に不溶となり、液相と高分子相とに分離することを特徴とするものである。
【0018】
(着色剤)
着色剤には、水溶性染料や顔料を用いることができる。
水溶性染料としては、限定されるものではないが、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができる。
【0019】
顔料としては、限定されるものではないが、以下の顔料を用いることができる。
ブラック用着色剤としては、カーボンブラックを挙げることができる。また、ブラック以外のカラー用着色剤としては、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料を挙げることができる。カラー画像形成は、これら顔料色を基本とする減法混色で行うことができる。
シアン顔料としては、例えばC.I.Pigment Blue15:1、15:3等の銅フタロシアニンブルー系シアン顔料等を挙げることができる。
マゼンタ顔料としては、C.I.Pigment Red48、57(カーミン6B)、5、23、60、114、146、186等のアゾレーキ系マゼンタ顔料や不溶性アゾ系マゼンタ顔料、チオインジゴ系マゼンタ顔料、C.I.Pigment Red122、209等のキナクリドン系マゼンタ顔料等を挙げることができる。
イエロー顔料としては、C.I.Pigment Yellow12、13、14、17、55、74、81、83等に代表されるジスアゾ系イエロー顔料等を挙げることができる。
【0020】
また、湿式現像剤中の着色剤の含有量は、0.5〜30質量%とすることが好ましい。より好ましくは、1〜20質量%である。着色剤の添加量が0.5質量%より少ないと印字濃度が低くなり好ましくない。また、30質量%より高くなると印字濃度が飽和する上、色材の分散性に問題が生じ好ましくない。
【0021】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂には、少なくとも温度応答性ポリマーを用いる。温度応答性ポリマーは、水の存在下で相転移温度を境にして水に対する溶解性が可逆的に変化するポリマーであれば特に限定されない。好ましくは、温度応答性ポリマーには、以下の一般式(1)で示されるN置換(メタ)アクリルアミドモノマーをモノマー構成単位として含む単独重合体又は共重合体、以下の一般式(2)で示されるN置換(メタ)アクリルアミドモノマーをモノマー構成単位として含む単独重合体又は共重合体、ポリオキシエチレン誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコール部分酢化物からなる群から選択された少なくとも1種のポリマーを用いることができる。
【0022】
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基、R及びRは水素原子または炭素数6以下のアルキル基を示し、R及びRは同一であっても異なっていてよい。)
【0023】
【化2】


(式中、Rは水素原子またはメチル基、Aは(CH)でnが4〜6又は(CHO(CHを示す。)
【0024】
一般式(1)で示される化合物として、具体的には、N−メチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド等を挙げることができる。
【0025】
一般式(2)で示される化合物として、具体的には、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン等を挙げることができる。
【0026】
上記の一般式(1)又は(2)に示した化合物を含む共重合体は、共重合するモノマーの種類や共重合比率を制御することにより、所望の相転移温度を得ることができる。例えば、疎水性モノマーを共重合することにより単独重合体の相転移温度よりも低い相転移温度にすることができ、また親水性モノマーを共重合することにより単独重合体の相転移温度よりも高い相転移温度にすることができる。上記の一般式(1)又は(2)に示した化合物と共重合可能なモノマーとして、以下の親水性モノマーと疎水性モノマーを挙げることができる。それらの一種以上のモノマーと共重合することができる。
【0027】
親水性モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、各種メトキシポリエチレングリコールアクリレート、各種メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸等の酸及びそれらの塩、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミン及びそれらの塩等を挙げることができる。
【0028】
また、疎水性モノマーとしては、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−n−ヘキシルアクリルアミド、N−n−オクチルアクリルアミド、N−t−オクチルアクリルアミド、N−n−ドデシルアクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N−n−ヘキシルメタクリルアミド、N−n−オクチルメタクリルアミド、N−t−オクチルメタクリルアミド、N−n−ドデシルメタクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N−ジグリシジルアクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)アクリルアミド、N−(5−グリシドキシペンチル)アクリルアミド、N−(6−グリシドキシヘキシル)アクリルアミド、N,N−ジグリシジルメタクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)メタクリルアミド、N−(5−グリシドキシペンチル)メタクリルアミド、N−(6−グリシドキシヘキシル)メタクリルアミド等のN−(ω−グリシドキシアルキル)(メタ)アクリルアミド誘導体、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン等、を挙げることができる。
【0029】
好ましいモノマーの組み合わせとしては特に限定されるわけではないが、N−イソプロピルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド/N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド/N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド/N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド/アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド/メタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド/N−イソプロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド/ヒドロキシエチルメタクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド/ヒドロキシエチルアクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド/N−ビニル−2−ピロリドン、N−イソプロピルアクリルアミド/メタクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド/アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド/メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド/ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド/ヒドロキシエチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド/N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド/メタクリル酸等を挙げることができる。より好ましくは、N−イソプロピルアクリルアミド/N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド/N,N−ジエチルアクリルアミド又はN−イソプロピルアクリルアミド/N−イソプロピルメタクリルアミドである。
【0030】
上記一般式(1)又は(2)の化合物をモノマー構成単位に含むポリマー以外には、ポリオキシエチレン誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物等をバインダー樹脂に用いることができる。ポリオキシエチレン誘導体には、(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体、ポリオキシエチレンソルビタンエステル誘導体、(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0031】
また、バインダー樹脂には、温度応答性ポリマー以外に1種以上のポリマーを添加することもできる。その場合、温度応答性ポリマーの含有率は、少なくともバインダー樹脂全体の60重量%、より好ましくは80重量%である。温度応答性ポリマー以外のポリマーとしては、上記の疎水性モノマーの単独重合体等を用いることができる。
【0032】
温度応答性ポリマーの相転移温度は、室温よりも高いことが好ましく、30〜60℃、より好ましくは30〜50℃である。下限値を30℃としたのは、現像剤の保管時や現像時にはバインダー樹脂が水に溶解している必要があるからである。また、上限値を60℃としたのは、それより高い温度では加熱に大きなエネルギーが必要になるからである。
【0033】
バインダー樹脂の分子量は、GPC測定により求めた数平均分子量(Mn)が、1000〜50000であることが好ましい。より好ましくは2000〜20000である。1000より小さいと相転移に時間がかかり速やかに水を放出できない。また、50000よりも大きいと粘度が高くなりすぎて現像剤を搬送しにくくなるからである。
【0034】
湿式現像剤中のバインダー樹脂の含有量は、質量比で5〜40質量%が好ましく、より好ましくは8〜30質量%である。5質量%よりも少ないと固形分比率が低いために現像ローラ上に多量の現像剤を載せる必要が生じ、均一な薄層を形成するのが困難になるからである。また、40質量%よりも多いと現像剤の粘度が増大し、温度応答に時間がかかり速やかに水を放出できず、高速での画像出力の際に定着性に問題が生じるからである。
【0035】
湿式現像剤の粘度としては、10〜25℃で5〜500mPa・sが好ましい。5mPa・sより低くなると均一な薄層を形成するのが困難となり、十分な画像濃度や高精細な画質を確保できにくくなるからである。また、500mPa・sよりも高くなるとバインダー樹脂の相転移に時間がかかり速やかに水を放出できず、高速での画像出力の際に定着性に問題が生じるからである。
【0036】
(キャリア液)
本発明の湿式現像剤のキャリア液は、水を主成分とするが、水と相溶する1種以上の有機溶媒を含んでも良い。そのような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールを挙げることができる。有機溶媒は、キャリア液全体の0.1質量%〜40質量%の範囲で添加することができる。
【0037】
(画像形成装置)
図1は、本発明の画像形成装置の構造の一例を示す模式図である。画像形成装置10は、中央に静電潜像担持体12を備えている。担持体12は矢印14方向に回転駆動可能になっており、担持体12の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電器(不図示)、露光装置16、インク現像装置18、現像剤加熱装置40、スクイズローラ45、転写ローラ20、クリーニングブレード22、イレーズランプ24が配置されている。また、インク現像装置18は、現像剤28を収容するとともに、矢印30方向に回転し、現像剤28を汲み上げて担持体12の静電潜像を現像する、現像ローラ32を有している。そして、現像剤には、温度応答性ポリマーを含む本発明の現像剤を用いる。
【0038】
像担持体12を帯電器により帯電させる。露光装置16は、図示を省略した画像読み取り装置から送られてくる画像情報に基づきレーザ光を像担持体12に照射し、これにより像担持体12上に静電潜像を形成する。現像ローラ32により汲み上げられた現像剤28は、像担持体12に供給され、静電潜像の現像に供される。現像剤加熱装置40は、インク現像装置18の下流側に配置されており、像担持体12の表面に付着した現像剤28を加熱することにより、現像剤28中の水分を放出させる。その後、スクイズローラ45により像担持体12に付着した余分の水分を除去する。その後、現像された可視トナー像は、転写ローラ20に対向する位置まで移動すると、矢印36の搬送方向に移動する記録材S上に、矢印34の方向に回転する転写ローラ20により転写する。記録材Sは、さらに熱定着ローラ(不図示)に搬送され、熱と圧力により定着が行われる。一方、像担持体12は転写領域を通過後、イレーズランプ24により像担持体12上の電荷が光徐電される。
【0039】
現像剤加熱装置には、ヒータを用いることができ、その加熱温度は、現像剤に用いる温度応答性ポリマーの相転移温度に応じて、30℃〜60℃、より好ましくは40℃〜55℃とすることができる。
【0040】
従来は、像担持体12に付着した現像剤中の水分をスクイズローラ45により除去した後、記録材に転移した水分を熱定着ローラにより加熱除去していた。そのため、熱定着ローラの温度は従来、120℃〜150℃を用いていた。しかし、本発明の装置によれば、像担持体12に付着した現像剤中の水分を大幅に減らすことができるので、熱定着ローラの加熱温度を70℃〜100℃へと下げることができ、さらに加熱時間も短縮できるので、定着に要するエネルギーを大幅に低減することができる。
【0041】
なお、現像剤加熱装置により現像剤から放出される水分は、回収容器(不図示)を設けて回収することで、装置内への散逸を防止できる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」および「%」とあるのは特に断らない限り「重量部」および「重量%」を表す。
【0043】
(製造例1)ポリイソプロピルアクリルアミドの合成
イソプロピルアクリルアミドを20部、アゾビスイソブチロニトリルを0.06部、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を100部ガラス製重合管に入れた。この溶液を75℃で10時間窒素雰囲気化でラジカル重合した後、大量のジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿したポリマーを回収、乾燥した後、N,N-ジメチルホルムアミドに再び溶解させ、大量のジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を回収、真空乾燥してポリマー1を得た。数平均分子量は52,000であった。また、相転移温度は、33℃であった。
【0044】
(製造例2)イソプロピルアクリルアミド/N,N−ジエチルアクリルアミド共重合体の合成
イソプロピルアクリルアミドを20部、N,N−ジエチルアクリルアミドを4部、アゾビスイソブチロニトリルを0.08部、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を150部ガラス製重合管に入れた。この溶液を70℃で13時間窒素雰囲気化でラジカル重合した後、大量のジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿したポリマーを回収、乾燥した後、N,N-ジメチルホルムアミドに再び溶解させ、大量のジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を回収、真空乾燥してポリマー2を得た。数平均分子量は38,000であった。また、相転移温度は、36℃であった。
【0045】
(製造例3)イソプロピルアクリルアミド/イソプロピルメタクリルアミド共重合体の合成
イソプロピルアクリルアミドを20部、イソプロピルメタクリルアミドを2部、アゾビスイソブチロニトリルを0.08部、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を150部ガラス製重合管に入れた。この溶液を70℃で15時間窒素雰囲気化でラジカル重合した後、大量のジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿したポリマーを回収、乾燥した後、N,N-ジメチルホルムアミドに再び溶解させ、大量のジエチルエーテルに沈殿させた。沈殿物を回収、真空乾燥してポリマー3を得た。数平均分子量は5,100であった。また、相転移温度は、38℃であった。
【0046】
(実施例1)
ポリマー1を10部、カーボンブラックを1.5部、純水を70部、ジエチレングリコールを10部、イソプロパノール(IPA)を6部加え、2時間攪拌した後、ブラック現像剤1を調製した。ブラック現像剤を図1の画像形成装置10に入れて画像形成を行った。ポリマー1の濃度は、10質量%である。
【0047】
(実施例2)
ポリマー2を10部、銅フタロシアニンブルー系シアン顔料を1部、純水を70部、ジエチレングリコールを10部、IPAを8部加え、2時間攪拌した後、シアン現像剤1を調製した。シアン現像剤1を図1の画像形成装置10に入れて画像形成を行った。ポリマー2の濃度は、10質量%である。
【0048】
(実施例3)
市販のヒドロキシプロピルセルロース(メトローズ90SH−80000、信越化学社製)を10部、銅フタロシアニンブルー系シアン顔料を2部、純水を70部、ジエチレングリコールを5部、IPAを6部加え、2時間攪拌した後、シアン現像剤2を調製した。
シアン現像剤2を図1の画像形成装置10に入れて画像形成を行った。ヒドロキシプロピルセルロースの濃度は、10質量%である。
【0049】
(実施例4)
ポリマー3を10部、銅フタロシアニンブルー系シアン顔料を1部、純水を75部、ジエチレングリコールを12部、IPAを8部加え、2時間攪拌した後、シアン現像剤3を調製した。シアン現像剤3を図1の画像形成装置10に入れて画像形成を行った。ポリマー3の濃度は、9.4質量%である。
【0050】
(実施例5)
ポリマー1の濃度を30質量%とした以外は、実施例1と同様に行った
【0051】
(比較例1)
温度応答性ポリマーではないポリアクリルアミドを10部、カーボンブラックを1.5部、純水を70部、ジエチレングリコールを10部、IPAを6部加え、2時間攪拌した後、ブラック現像剤2を調製した。ブラック現像剤2を図1の画像形成装置10に入れて画像形成を行った。ポリアクリルアミドの濃度は10質量%である。
【0052】
(比較例2)
ポリマー1の濃度を2質量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0053】
(比較例3)
ポリマー1の濃度を50質量%とした以外は、実施例1と同様に行った。
【0054】
(定着強度試験)
図1の画像形成装置を用い、実施例および比較例の現像剤のベタパターン(10cm×10cm、付着量 1.5mg/m)をコート紙上に形成した。その後、オフセットがない部位をろ紙にて擦り、画像濃度の残存率をX−Rite社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の4段階のランク評価を行った。
◎:画像濃度残存率が90%以上。
○:画像濃度残存率が80%以上90%未満。
△:画像濃度残存率が70%以上80%未満。
×:画像濃度残存率が70%未満。
【0055】
(にじみ評価試験)
図1の画像形成装置を用い、実施例および比較例の現像剤の100μm幅のポジティブラインを厚みの異なるコート紙(坪量;84g/m,127g/m)上に形成した。得られた画像を画像評価システム、ドットアナライザー(王子計測機器社製;DA6000)でラインのラジッドネス(最小二乗法により得られた理想エッジに対する得られたライン画像エッジの偏差)を測定し、以下のランク評価を行った。
◎:ラジッドネスが4.0未満のもの。
○:ラジッドネスが4.0以上6.0未満のもの。
×:ラジッドネスが6.0以上のもの。
【0056】
【表1】

【符号の説明】
【0057】
10 画像形成装置
12 静電潜像担持体
14 矢印方向
16 露光装置
18 インク現像装置
20 転写ローラ
22 クリーニングブレード
24 イレーズランプ
28 現像剤
30 矢印方向
32 現像ローラ
36 矢印方向
40 現像剤加熱装置
45 スクイズローラ
S 記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤と、バインダー樹脂と、水とを含む湿式現像剤であって、
上記バインダー樹脂は温度応答性ポリマーを少なくとも含み、該温度応答性ポリマーは相転移温度より低温では水に溶解して単一相を形成し、該相転移温度より高温では水に不溶となり、液相と高分子相とに分離する湿式現像剤。
【請求項2】
上記温度応答性ポリマーが、以下の一般式(1)で示されるN置換(メタ)アクリルアミドをモノマー構成単位として含む単独重合体又は共重合体、以下の一般式(2)で示されるN置換(メタ)アクリルアミドをモノマー構成単位として含む単独重合体又は共重合体、ポリオキシエチレン、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコール部分酢化物からなる群から選択された少なくとも1種のポリマーである湿式現像剤。
【化1】



(式中、Rは水素原子またはメチル基、R及びRは水素原子または炭素数6以下のアルキル基を示し、R及びRは同一であっても異なっていても良いが少なくとも一方は炭素数6以下のアルキル基である。)
【化2】


(式中、Rは水素原子またはメチル基、Aは(CH)でnが4〜6又は(CHO(CHを示す。)
【請求項3】
上記相転移温度が、30℃〜60℃である請求項1又は2に記載の湿式現像剤。
【請求項4】
静電潜像担持体に形成される静電潜像を湿式現像剤を用いて現像し、可視トナー像とする湿式画像形成方法であって、
上記湿式現像剤に請求項1から3のいずれか一つに記載の湿式現像剤を用い、上記静電潜像に付着させた湿式現像剤を、該湿式現像剤に含まれる温度応答性ポリマーの相転移温度よりも高温で加熱して、該湿式現像剤中の水分を放出させるようにした、湿式画像形成方法。
【請求項5】
静電潜像担持体に形成される静電潜像を湿式現像剤を用いて現像し、可視トナー像とする湿式画像形成装置であって、
上記湿式現像剤に請求項1から3のいずれか一つに記載の湿式現像剤を用いるものであって、上記静電潜像に付着させた湿式現像剤を、該湿式現像剤に含まれる温度応答性ポリマーの相転移温度よりも高温で加熱して、該湿式現像剤中の水分を放出させる現像剤加熱装置を有する、湿式画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−217668(P2010−217668A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65931(P2009−65931)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】