説明

湿式現像装置

【課題】印刷速度の高速化や現像液の物性の変化などにおいても安定した品質での印刷を可能にする。
【解決手段】感光体ドラム3の表面に露光によって静電潜像を形成し、湿式現像装置6の現像ローラ7により液体トナー中のトナー粒子により上記静電潜像をトナー像に可視像化し、このトナー像を用紙2に転写することで用紙に画像を印刷する湿式電子写真印刷機で、上記湿式現像装置における液体トナーの供給経路が、感光体ドラムに液体トナーを供給する現像ローラ7と、液体トナーに一部浸漬した状態で、上記現像ローラに同一周速度で転接するアニロックスローラ9とからなると共に、このアニロックスローラの表面に液体トナーの汲み上げ量を制御するドクタブレード11を当接し、アニロックスローラの上記ドクタブレードとの転接部と、現像ローラとの転接部の回転方向の間の表面にトナー帯電用チャージャ12を対設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式電子写真印刷機に用いられて、感光体ドラム上に形成された静電潜像を液体トナーにて可視像化するための湿式現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の湿式現像装置は、電源部からのアニロックスローラへの電圧印加によって、現像ローラに現像バイアスとなる電圧が印加されるようになっている。そしてアニロックスローラ及び現像ローラに、上記バイアス電圧によりプラスの電圧を印加し、この入力電圧を適正に制御しながら、現像ローラ上に均一なトナー層の薄膜を形成し印字を行っている(引用文献1)。このときの現像ローラの表面上の膜厚は印字濃度、印字品質の安定性など、その印字品質に及ぼす影響が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−192920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の湿式現像装置にあっては、ローラバイアスを変化させて現像ローラの表面上の膜厚を制御しようとした場合に、ローラバイアスが印加されるアニロックスローラと現像ローラ間の電位差が小さかったことにより、印刷速度が速くなるにしたがって、また現像液の物性などにより、画像濃度の低下、網点の再現性の低下、筋、ムラの発生、アニロックスローラの表面のセルの痕跡が画像表面に出る等、印字濃度は画像の再現性などの印字品質や、連続印刷時での印字品質の安定性において制御が難しくなる問題があった。
【0005】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、現像ローラに対してアニロックスローラ表面のトナー粒子の電位差を大きくできることにより、印刷速度の高速化や、現像液の物性の変化などにおいても安定した品質での印刷を可能にした湿式電子写真印刷機での湿式現像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る現像装置は、感光体ドラムの表面に露光によって静電潜像を形成し、湿式現像装置の現像ローラにより液体トナー中のトナー粒子により上記静電潜像をトナー像に可視像化し、このトナー像を用紙に転写することで用紙に画像を印刷する湿式電子写真印刷機で、上記湿式現像装置における液体トナーの供給経路が、感光体ドラムに液体トナーを供給する現像ローラと、液体トナーに一部浸漬した状態で、上記現像ローラに同一周速度でかつ同一周方向に転接するアニロックスローラとからなると共に、このアニロックスローラの表面に液体トナーの汲み上げ量を制御するドクタブレードを当接し、アニロックスローラの上記ドクタブレードとの転接部と、現像ローラとの転接部の回転方向の間の表面にトナー帯電用チャージャを対設させた構成になっている。
【0007】
そして上記湿式現像装置において、現像ローラのアニロックスローラとの転接部と、感光体ドラムとの転接部の回転方向の間の表面にコロナチャージャを対設し、また、上記アニロックスローラにヘリカルタイプのものを用いた。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る湿式電子写真印刷機に用いられる湿式現像装置によれば、現像ローラに転接して、この現像ローラに液体トナーを供給するアニロックスローラの表面においてトナー帯電用チャージャを対設したことにより、アニロックスローラ表面におけるトナー粒子の電位を現像ローラに対して高くすることができ、これによりアニロックスローラ表面のトナー粒子の電気的な移動を促進させることができると共に、その移動量においても制御精度を高めて従来にない印字濃度と印字品質の安定性を生み出し、また高速に対する対応性を高めることができた。
【0009】
また、上記現像ローラのアニロックスローラとの対接部と感光体ドラムとの対接部の回転方向の間の表面にコロナチャージャを対設したことにより、アニロックスローラから供給された現像ローラ表面における液体トナーのトナー粒子に電荷を与えて、この現像ローラ表面のトナー粒子を凝集することができ、この凝集したトナー粒子にて感光体ドラム表面の潜像を現像することができて高速性を向上することができる。
【0010】
その上、タンクから感光体ドラムへの液体トナーの供給経路としては、アニロックスローラと現像ローラの2本のローラによる簡易な構成とすることができることにより、現像装置の製作費用面では低コストで、また少ないスペースで設置可能であり、このようなことから経済的な効果と共に、小型で簡易な構成で取り扱いが容易で、作業性、保守性の面でも効果を得ることができる。
【0011】
上記したことから本発明における湿式現像装置によれば、簡易な構成であるが、高速印刷においても濃度や画像的な面でもムラのない安定した品質で印刷製品の生産ができ、機能的にも高い効果を得ることができる。その上、機械的な調整部分が少なくなって調整作業が容易であり、印刷品質についても電気的な調整が主となるため品質制御が容易になった。
【0012】
また本発明によれば、湿式現像装置のアニロックスローラにヘリカルタイプのものを用いたことにより、アニロックスローラ表面のトナー粒子の現像ローラ表面への移動が良好に行われて、このヘリカルタイプのアニロックスローラとこのアニロックスローラ表面へのトナー帯電用チャージャからの帯電との組み合わせにより、印刷画像のムラの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る湿式現像装置を用いた湿式電子写真印刷機を縦方向に複数配置してなる湿式電子写真印刷装置を概略的に示す説明図である。
【図2】本発明に係る湿式現像装置を概略的に示す説明図である。
【図3】ヘリカルタイプのアニロックスローラ表面の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は湿式現像装置を用いた湿式電子写真印刷機1a,1b,1c,1dを上下方向に複数(4台)並設してなる湿式電子写真印刷装置1を示す図である。この湿式電子写真印刷装置1にあっては、連続した用紙2を最下段の湿式電子写真印刷機1aの下側から上段の各湿式電子写真印刷機1b,1c,1dを紙通しすることにより多色印刷が実施されるようになっている。
【0016】
上記各湿式電子写真印刷機1a〜1dは同一構成になっているので、以下に最下段の湿式電子写真印刷機1aについて説明する。
【0017】
図中3は感光体ドラム、4はこの感光体ドラム3に転接する転写ローラ、5はこの転写ローラ4に転接するバックアップローラで、この両ローラ4,5の間に用紙2が紙通しされるようになっている。6は現像ローラ7を上記感光体ドラム3に転接してなる湿式現像装置である。この湿式現像装置6は、キャリア液にトナー粒子を分散してなる液体トナー(現像液)を用いるようになっている。
【0018】
上記感光体ドラム3は、図示しないモータ等の駆動手段にて画像形成時に一定速度で矢印方向に回転駆動され、この間に感光体ドラム3の表面に帯電装置にて暗中で一様に帯電され、ついで露光装置にて原稿光像が照射結像され、これにより感光体ドラム3の表面に静電潜像が形成されるようになっている。その後、この静電潜像が現像領域を通過する際に、湿式現像装置6にて静電潜像が可視化(現像)されて、感光体ドラム3の表面にトナー像が形成されるようになっている。そしてこの感光体ドラム3の表面に形成されたトナー像は、液体トナー像成分であるキャリア液の一部を図示しないキャリア液除去装置にて除去後、転写領域にて転写ローラを通して印加されるバイアス電荷とローラ間ニップ圧により転写ローラ4の表面に1次転写されるようになっている。この転写ローラ4に1次転写されたトナー像には、転写ローラ4の表面上のトナー像を剥がさない電界を付与される。そして転写ローラ4のトナー像は、2次転写領域において、バックアップローラ5を通して印加されるバイアスとローラ間ニップ圧により用紙2上に2次転写されるようになっている。
【0019】
トナー像が2次転写された用紙2は、図示しない定着装置(乾燥機)によりトナー像を定着した後に印刷物として機外に排出される。
【0020】
一方、1次転写後において、感光体ドラム3の表面に残留した残留電位は除電器により除去される。そして1次転写後に感光体ドラム3の表面に残留している残留トナーは、感光体クリーナにより除去されて次の作像に備えられるようになっている。
【0021】
図2は湿式現像装置6を拡大して示す図であり、この図において湿式現像装置6は上記した感光体ドラム3に転接する現像ローラ7と、液体トナーを収容するタンク8と、タンク8内の液体トナーに一部浸漬されていて、現像ローラ7と転接して上記タンク8内の液体トナーを現像ローラ7に供給するアニロックスローラ(供給ローラ)9とを具備している。そしてアニロックスローラ9から現像ローラ7に供給された液体トナーを、現像ローラ7から感光体ドラム3に供給するようになっている。また、現像ローラ7には現像ローラクリーナ10が転接されている。上記アニロックスローラ9は、これの表面形状が図3に示すように突状部がヘリカル状になっているヘリカルタイプのものが用いられる。
【0022】
この湿式現像装置6において、現像ローラ7とアニロックスローラ9は、その転接部において同一周方向に等速回転するようになっている。また、液体トナーに一部を浸漬したアニロックスローラ9の現像ローラ7との転接部より回転方向上流側の表面にドクタブレード11の先端が当接されていて、このドクタブレード11にてアニロックスローラ9の表面に構成される凹部セル内の液体トナー以外の余分な液体トナーが掻き落とされるようになっている。
【0023】
また、アニロックスローラ9の回転方向で、上記ドクタブレード11と当接するドクタブレード当接部と、現像ローラ7と転接する現像ローラ転接部との間のアニロックスローラ9の表面に対向させてトナー帯電用チャージャ12が設けられていて、このトナー帯電用チャージャ12にてアニロックスローラ9のセル内に貯留されて定量移送される液体トナーのトナー粒子をプラスに帯電させるようになっている。
【0024】
さらに、現像ローラ7の回転方向で、感光体ドラム3と転接する感光体ドラム転接部と、アニロックスローラ9と転接するアニロックスローラ転接部の間の現像ローラ7の表面に対向させてコロナチャージャ13が設けられていて、このコロナチャージャ13にて現像ローラ7の表面に電荷を与えることにより、アニロックスローラ9から移動した現像ローラ7表面のトナー粒子を凝集させるようにしている。
【0025】
なお、本発明に係る湿式現像装置としては、感光体ドラム3と用紙2の間に、感光体ドラム3の表面のトナー像を用紙2に転写するための転写ローラ4を用いた例を示したが、転写ローラ4を用いずに、感光体ドラム3の表面をバックアップローラ5に直接転接させて、感光体ドラム3の表面のトナー像を直接用紙2に転写するようにしてもよいことはいうまでもない。
【0026】
上記構成において、タンク8から汲み上げられてアニロックスローラ9の表面のセル内に貯められた液体トナーは、ドクタブレード11にてその余分な量が掻き落とされてから、現像ローラ3との対向部に至る間にトナー帯電用チャージャ12にてプラス電荷が付与され、この液体トナー中のトナー粒子のプラス電位が高められる。
【0027】
このアニロックスローラ9の表面の液体トナーのトナー粒子は、現像ローラ7と転接により現像ローラ7の表面に移動し、ついで現像ローラ7に対設されたコロナチャージ13からの電荷にて凝集された状態で感光体ドラム3の表面へ移動されて、この感光体ドラム3の表面にトナー像を形成する。
【0028】
このときにおいて、感光体ドラム3、現像ローラ7、アニロックスローラ9にはそれぞれバイアス電圧が、例えば感光体ドラム3には50V前後、アニロックスローラ9と現像ローラ7にはそれぞれ300〜350Vの電圧が印加されている。また、アニロックスローラ9に対設したトナー帯電用チャージャ12による加電は550〜1000V、好ましくは550〜650Vの電位が印加されるようにしており、さらに現像ローラ7上へのコロナチャージャ13による加電は1200〜1800V、好ましくは1500Vの電圧が印加されるようにしている。
【0029】
上記において、アニロックスローラ9へのトナー帯電用チャージャ12からの加電がない場合には、アニロックスローラ6表面上でのトナー粒子の凝集力が弱く、現像ローラ7へのトナー粒子の転位が不均一になり、印刷結果として濃度ムラや筋の発生など印刷品質の低下につながる。また、これが1000Vを超えてトナー粒子への加電量が高くなりすぎるとトナー粒子の現像ローラ7への転位性が低下してしまい、トナー粒子の転位量低下による濃度低下につながる問題が発生する。
【0030】
以上のように構成されていることにより、アニロックスローラ9の表面において、このアニロックスローラ9の表面のトナー粒子にトナー帯電用チャージャ12にて電荷を与え、このトナー帯電用チャージャ12の出力調整と、このアニロックスローラ9へのバイアス電圧の制御によりアニロックスローラ9上のトナー粒子の電荷を高めることにより、このアニロックスローラ9から現像ローラ7へのトナー粒子の電気的な移動が促進されて、アニロックスローラ9から現像ローラ7へのトナー粒子の移動が良好に行われる。そしてこれと共に、現像ローラ7へのコロナチャージャ13による電圧印加により、この現像ローラ7の表面のトナー粒子が凝集されることにより、現像ローラ7から転写ローラへのトナー粒子の移動量の制御精度が高められ、従来にない印字濃度と印字品質の安定性を生み出し、また高速対応性をも高めることができる。
【0031】
また、アニロックスローラ9の表面のセル形状(パターン)には、本発明において採用したヘリカルタイプ以外にハニカムタイプ、ダイヤタイプがあり、このアニロックスローラ9の表面のセル形状によっても現像画像において筋の発生などに影響することがテストデータなどから確認されているが、本発明の発明者らのテストデータでは、表面のセル形状がヘリカルタイプのアニロックスローラと、このアニロックスローラ表面へのトナー帯電用チャージャによる電圧印加との組み合わせが、印刷画像への筋やムラの発生を防止する最適構成であることを確認することができた。
【符号の説明】
【0032】
1…湿式電子写真印刷装置、1a,1b,1c,1d…湿式電子写真印刷機、2…用紙、3…感光体ドラム、4…転写ローラ、5…バックアップローラ、6…湿式現像装置、7…現像ローラ、8…タンク、9…アニロックスローラ、10…現像ローラクリーナ、11…ドクタブレード、12…トナー帯電用チャージャ、13…コロナチャージャ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムの表面に露光によって静電潜像を形成し、湿式現像装置の現像ローラにより液体トナー中のトナー粒子により上記静電潜像をトナー像に可視像化し、このトナー像を用紙に転写することで用紙に画像を印刷する湿式電子写真印刷機で、
上記湿式現像装置における液体トナーの供給経路が、感光体ドラムに液体トナーを供給する現像ローラと、液体トナーに一部浸漬した状態で、上記現像ローラに同一周速度で転接するアニロックスローラとからなると共に、このアニロックスローラの表面に液体トナーの汲み上げ量を制御するドクタブレードを当接し、
アニロックスローラの上記ドクタブレードとの転接部と、現像ローラとの転接部の回転方向の間の表面にトナー帯電用チャージャを対設させた
ことを特徴とする湿式電子写真印刷機における湿式現像装置。
【請求項2】
現像ローラのアニロックスローラとの転接部と、感光体ドラムとの転接部の回転方向の間の表面にコロナチャージャを対設したことを特徴とする請求項1記載の湿式電子写真印刷機における湿式現像装置。
【請求項3】
アニロックスローラにヘリカルタイプのものを用いたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項記載の湿式電子写真印刷機における湿式現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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