説明

湿式現像装置

【課題】湿式現像装置において、現像ローラからのトナー回収を良好に行うことができると共に、この回収トナーによるクリーニングローラ周縁でのケーキング減少の発生を防止できるようにする。
【解決手段】現像ローラ2の感光体ドラム1との転接部より回転方向下流側の表面に対向する位置に、現像ローラの表面にマイナス電荷を印加するセットチャージャ13を設け、現像ローラの上記セットチャージャの対向位置と、クリーニングローラ5との転接部との間の表面に対向する位置と、クリーニングローラの現像ローラとの転接部より回転方向下流側の表面に対向する位置のいずれか一方の位置に、各表面に液体現像剤を塗布する液体現像剤塗布手段8,9を設け、クリーニングローラの現像ローラとの転接部の回転方向下流側の表面と、現像ローラのクリーニングローラとの転接部より回転方向下流側の表面にそれぞれにクリーニングブレード10,11を当接させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ロール表面に供給された液体現像剤にて感光体ドラム表面に形成された静電潜像をトナー像に現像するようにした湿式現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の湿式現像装置にあっては、感光体ドラムに転接した現像ローラに、液体現像剤に一部浸漬した供給ローラを転接し、この供給ローラを介して液体現像剤を現像ローラへ供給するようになっている(特許文献1)。そして上記現像ローラの感光体ドラムとの転接部に対して回転方向下流側に、この現像ローラ上の残留トナーを除去するクリーニングローラとクリーニングブレードが備えられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−171611
【特許文献2】特開2007−225893
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感光体ドラムへの画像の現像が終了した後の現像ローラの表面の残留トナーは、クリーニングローラやクリーニングブレードにより回収されてトナー回収回路に戻されるが、この回収トナーは、上記現像終了後の現像ローラ表面でのキャリア液成分が減少していることにより、高濃度化、高粘度化してヘドロ状に堆積して凝固しやすい性質を備える結果、これがクリーニングブレードに固着してケーキングと呼ばれる現象が生じて凝固してしまい、これによって現像ローラ表面に筋を発生させて、印刷品質に悪影響を与えていた。また、上記したように回収トナーが高濃度、高粘度であるため、これを回収するトナー回収回路においても、トナー回収用配管を詰まらせてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、現像ローラ表面からの残留トナーの回収を効率よく行うことができると共に、クリーニングローラの周縁に、上記回収トナーによるケーキング現象が生じることを防止できるようにした湿式現像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る湿式現像装置は、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像を、表面に液体現像剤が塗布された現像ローラが転接することによりトナー像に現像するようにした湿式現像装置において、現像ローラの感光体ドラムとの転接部より回転方向下流側の表面に対向する位置に、現像ローラの表面にマイナス電荷を印加するセットチャージャを設け、現像ローラの上記セットチャージャの対向位置とクリーニングローラとの転接部との間の表面に対向する位置と、クリーニングローラの現像ローラとの転接部より回転方向下流側の表面に対向する位置のいずれか一方の位置に、各表面に液体現像剤を塗布する液体現像剤塗布手段を設け、クリーニングローラの現像ローラとの転接部の回転方向下流側の表面と、現像ローラのクリーニングローラとの転接部より回転方向下流側の表面にそれぞれにクリーニングブレードを当接させた構成になっている。
【0007】
また、上記構成の湿式現像装置において、現像ローラの感光体ドラムとの転接部より回転方向上流側に、現像ローラの表面にプラス電荷を印加するセットチャージャを設けた構成になっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現像ローラの感光体ドラムとの転接部より回転方向下流側の表面にセットチャージャにてマイナス電荷が印加されることにより、感光体ドラムとの転接部より下流側表面に残留したトナー粒子は、これに逆極性のマイナス電荷によって現像ローラ表面から浮き上げられて、これの大部分がクリーニングローラにて効率よく回収することができる。
【0009】
この現像ローラの上記セットチャージャとの対向位置とクリーニングローラとの転接部の間と、クリーニングローラの現像ローラとの転接部より回転方向上流側の少なくとも一方の表面に液体現像剤が塗布されることにより、クリーニングローラから移動したトナー粒子は液体現像剤にて密度の拡散が図られ、このクリーニングローラの周縁でのケーキング現象の発生を防止することができる。
【0010】
さらに、現像ローラの表面とクリーニングローラの表面からクリーニングブレードにて掻き取られる回収トナーには、液体現像剤が混入されてこれの密度が低下することにより、回収トナーを回収する配管内での詰まりを防止でき、残存トナーの回収管路による循環性を良好にすることができる。
【0011】
また、上記のことにより、現像ローラとクリーニングローラの各表面へのクリーニングブレードの当接力を弱くしても良好なクリーニング効果を得ることができ、各ローラのクリーニングブレードによる表面摩耗の進行が緩やかになり、各ローラ及びクリーニングブレードの耐久性を向上することができると共に、印刷品質も安定させることができる。その上、回収トナー液の循環系における問題の発生頻度が低下し、長期間安定的に稼動できて生産性を向上させることができる。
【0012】
また、現像ローラの感光体ドラムとの転接部の回転方向上流側の表面にセットチャージャにてプラス電荷を印加できることにより、感光体ドラムを現像する前の現像ローラの表面のトナー粒子の電荷をプラスすることができて、現像ローラによる現像作用を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
【0015】
図中1は感光体ドラム、2はこの感光体ドラム1に転接して、この感光体ドラム1の表面に露光装置3にて感光されて作像された静電潜像をトナー像に現像する現像ローラ、4はこの現像ローラ2に転接して、この現像ローラ2に液体現像剤を供給するアニロックスローラ(液体現像剤供給ローラ)、5は上記現像ローラ2に転接してこれの表面をクリーニングするクリーニングローラであり、これらは同期して各矢印方向に、すなわち各転接部での同一周方向に回転するようになっている。上記アニロックスローラ4は、これの一部がトナー槽6内の液体現像剤7内に浸漬されている。このトナー槽6の液体現像剤7は、図示しない回路を介してメインタンクから供給されるようになっている。
【0016】
現像ローラ2のクリーニングローラ5との転接部の上流側の表面に対向する位置にノズル8が設けてあり、このノズル8に図示しないメインタンクが接続されていて、このメインタンクからの液体現像剤がノズル8より現像ローラ2の表面に塗布されるようになっている。
【0017】
また、クリーニングローラ5の現像ローラ2との転接部の下流側の表面に対向する位置に、開口部がクリーニングローラ5の表面に対向するチャンバ9が摺動接触させて設けてあり、このチャンバ9に図示しない回路を介してメインタンクからの液体現像剤が供給されて循環するようになっており、このチャンバ9内に供給された液体現像剤が上記クリーニングローラ5の表面に塗布されるようになっている。そしてこのチャンバ9より回転方向下流側で、かつ現像ローラ2との転接部より回転方向下流側の表面にクリーニングブレード10が当接されている。
【0018】
現像ローラ2のクリーニングローラ5との転接部の下流側にクリーニングブレード11が当接されており、このクリーニングブレード11と上記クリーニングローラ5に当接されているクリーニングブレード10の下側に、トナー回収回路に連なるトナー受け12が設けてある。このトナー回収回路は、上記メインタンクに接続されている。
【0019】
上記ノズル8より現像ローラ2の回転方向上流側に、現像ローラ2の表面にマイナス電荷を印加するマイナス用のセットチャージャ13が対設してある。
【0020】
また、現像ローラ2の感光体ドラム1との転接部より上流側に、この現像ローラ2の表面にプラス電荷を印加するプラス用のセットチャージャ14が対設してある。
【0021】
上記構成において、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像は、アニロックスローラ4から供給された現像ローラ2の液体現像剤にて現像される。そしてこのときの現像ローラ2の表面の液体現像剤は、感光体ドラム1との転接部の上流側において、プラス用のセットチャージャ14にてプラス電荷が印加されて、この液体現像剤中のトナー粒子7aが現像ローラ2の表面側へ凝集されて、現像ローラ2による感光体ドラム1の静電潜像の現像が良好に行われる。
【0022】
現像ローラ2の感光体ドラム1との転接部より回転方向下流側の表面は、これの回転に従ってマイナス用のセットチャージャ13からマイナス電荷が印加され、ついでノズル8より液体現像剤が塗布される。
【0023】
上記感光体ドラム1との転接部より回転方向下流側の現像ローラ2の表面には、感光体ドラム1の静電潜像を現像した残りの残存トナーが、キャリア液成分が低下して高濃度に凝集した状態で付着されている。この残存トナーのトナー粒子7aは、現像ローラ2の回転に従ってマイナス用のセットチャージャ13からマイナス電荷が印加され、上記した上流側のセットチャージャ14にて印加された電荷とは逆極性のマイナス電位となって、現像ローラ2の表面から離れる方向の力を受ける。
【0024】
このトナー粒子7aは、この帯電の直後の位置でノズル8から供給された新たな液体現像剤中にて現像ローラ2の表面との間で、キャリア液を介在させて浮き上がった状態となる。
【0025】
この浮き上がったトナー粒子7aの大部分は、この部分より下流側で転接しているクリーニングローラ5にキャリア液の一部と共に移動し、現像ローラ2側に残った大部分のキャリア液は、クリーニングローラ5との転接部の下流側で当接しているクリーニングブレード11にて掻き取られて、クリーニングローラ5の下側に設けたトナー受け12にて受けられる。
【0026】
一方、現像ローラ2に転接してこの現像ローラ2よりトナー粒子7aを付着させたクリーニングローラ5の現像ローラ2との転接部の下流側では、これの表面にチャンバ9内の流体現像剤が供給される。
【0027】
これにより、現像ローラ2から移動して凝集状態となっているトナー粒子7aは、上記チャンバ9内の液体現像剤により液体現像剤に近いケーキング(凝固状態)を起こしにくい状態に回復される。その後、この液体現像剤に近い状態に濃度を回復したトナー粒子7aは、上記チャンバ9から供給された液体現像剤と共に、この部分より下流側に設けたクリーニングブレード10にて掻き取られてトナー受け12にて回収される。そしてこの回収トナーは、上記現像ローラ2側のクリーニングブレード11より回収されたキャリア液と共に、トナー受け12から回収路を経てメインタンクに戻される。
【0028】
上記実施の形態において、クリーニングローラ5の現像ローラ2との転接部の下流側に設けたチャンバ9を、液体現像剤をクリーニングローラ5の表面に供給するノズルに替えてもよい。
【0029】
また、現像ローラ2のクリーニングローラ5との転接部の上流側にて現像ローラ2の表面に液体現像剤を供給するノズル8と、クリーニングローラ5の現像ローラ2との転接部の下流側にてクリーニングローラ5の表面に液体現像剤を供給するチャンバ9は、これらの双方を用いる場合以外に、これらのいずれか一方を用いるようにしてもよい。
【0030】
このことは、クリーニングローラ5との転接部の上流側において、ノズル8から現像ローラ2の表面に液体現像剤を供給することにより、現像ローラ2との転接部の下流側のクリーニングローラ5の表面に液体現像剤を供給しなくても、このクリーニングローラ5の表面における残留トナーによるケーキングを防止することができることがあり、また、逆にこの下流側のチャンバ9のみで、上流側のノズルによる液体現像剤の供給がない場合でも、チャンバ9による液体現像剤の供給を十分に行うことにより、上記ケーキングを防止することができる場合があることによるものである。
【0031】
さらに本発明におけるケーキング対策としては、現像ローラ2の感光体ドラム1との転接部の下流側に配置したマイナス用のセットチャージャ13は必要であるが、現像ローラ2及び感光体ドラム1にバイアス電荷が作用されていることにより、上流側のプラス用のセットチャージャ14はなくてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…感光体ドラム、2…現像ローラ、3…露光装置、4…アニロックスローラ、5…クリーニングローラ、6…トナー槽、7…液体現像剤、7a…トナー粒子、8…ノズル、9…チャンバ、10,11…クリーニングブレード、12…トナー受け、13…マイナス用のセットチャージャ、14…プラス用のセットチャージャ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムの表面に形成された静電潜像を、表面に液体現像剤が塗布された現像ローラが転接することによりトナー像に現像するようにした湿式現像装置において、
現像ローラの感光体ドラムとの転接部より回転方向下流側の表面に対向する位置に、現像ローラの表面にマイナス電荷を印加するセットチャージャを設け、
現像ローラの上記セットチャージャの対向位置とクリーニングローラとの転接部との間の表面に対向する位置と、クリーニングローラの現像ローラとの転接部より回転方向下流側の表面に対向する位置のいずれか一方の位置に、各表面に液体現像剤を塗布する液体現像剤塗布手段を設け、
クリーニングローラの現像ローラとの転接部の回転方向下流側の表面と、現像ローラのクリーニングローラとの転接部より回転方向下流側の表面にそれぞれにクリーニングブレードを当接させた
ことを特徴とする湿式現像装置。
【請求項2】
現像ローラの感光体ドラムとの転接部より回転方向上流側に、現像ローラの表面にプラス電荷を印加するセットチャージャを設けた
ことを特徴とする請求項1記載の湿式現像装置。

【図1】
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