説明

湿潤強化添加剤としてのバイオポリマー

本発明は、紙を製造するための湿潤強化添加剤としての1単糖ユニット当たり好ましくは0.2〜0.4のカルボキシル含有量を有し、かつ1アニオン酸基当たりアルデヒド基0.5未満のアルデヒド含有量を有するアニオン性多糖と、カチオン性ポリマーの組合わせの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やティッシュ、及び不織布に使用する一時的な湿潤強化剤としてのアニオン性バイオポリマー及びカチオン性バイオポリマーの組合わせ使用に関する。
【背景技術】
【0002】
紙やティッシュ製品において、湿潤強度は製品の全体的な性能を決める重要な性質である。かかる製品の湿潤強度は湿潤強化添加剤によって上げることができる。製紙産業で広く用いられる湿潤強化添加剤には、メラミンホルムアルデヒドや尿素ホルムアルデヒドがある。しかしながら、再生不可能であり、また難分解性であるから、そのような油性化学薬品から脱却する必要性がある。
【0003】
国際公開第2001/077437号(欧州特許第1282741号)には、紙製品や不織布製品に湿潤強度を付与するためにカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとで交互にコーティングされている繊維状粒子の使用が記載されている。その特許ではPAAE(ポリアミノアミド−エピクロロヒドリン)やG−PAM(グリオキシル酸ポリアクリルアミド)をカチオン性ポリマーとして説明しているが、一方で、カチオン性グア、カチオン性デンプン、ポリビニルアミンやいくつか他にも同様に記載されている。PAAEは油性であるので、持続可能な物質ではないが、一方でモノマー(エピクロロヒドリン)の移行は安全性の問題を生じ、それは高いコストにおいてのみ解決することができる。置換度0.78のカルボキシメチルセルロース(CMC)が国際公開第2001/077437号においては最適なアニオン性ポリマーとされている。しかし、アニオン性デンプン、アニオン性グア、ポリスチレンスルホン酸等が詳しく説明されていないものの記載されている。CMC以外の、アニオン性多糖類、或いはカチオン性多糖類の具体的な種類については記載されていない。しかしながら、CMCはまた油性の物質(モノクロロ酢酸)に一部依存しており、さらにかなり高価な物質である。また、国際公開第2001/077437号にある多層技術は工程的に不便である。
【0004】
国際公開第2001/083887号(欧州特許第1278913号)は、PAAE等のカチオン性ポリマーに組み合わせる湿潤強化剤として、1アニオン性基当たりアルデヒド基0.75以上を有するアニオン性バイオポリマーの使用を開示している。例えば、アルデヒドを含むアニオン性バイオポリマーは、過酢酸及び臭化物でさらに酸化されるジアルデヒドデンプン、又は、制御された状況下で、TEMPO等の窒素酸化物で酸化されるデンプンとなりうる。
【0005】
米国特許6586588号は、アルデヒドの含有量を最大化し(カルボン酸に対するアルデヒドの割合が0.5以上)、カルボキシルの含有量を最小化するためのTEMPOを用いた多糖類の選択的酸化について記載している。多糖類はまたカチオン性基質から出発し、両性になりうる。かかる生成物は紙の湿潤強化添加剤として用いることができる。
【0006】
国際公開第2005/080499号は、6―カルボキシデンプン等のカルボキシル化炭水化物と結合強度効果、乾燥引張強度効果、或いは増粘効果を提供する、コーティング又は紙製品の添加剤としてポリビニルアミン等のポリアミンとの混合物の使用について記載している。
【0007】
国際公開第2005/080680号は、毛髪タンパク質(ケラチン)加水分解物の製造について記載し、その製紙におけるウェットエンド添加剤としての使用を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2001/077437号(欧州特許第1282741号)
【特許文献2】国際公開第2001/083887号(欧州特許第1278913号)
【特許文献3】米国特許第6586588号
【特許文献4】国際公開第2005/080499号
【特許文献5】国際公開第2005/080680号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、費用効果の高い、紙製品に湿潤強度を付与するプロセスと手段を提供することであり、同時にモノマーの移入や、油性の化学物質或いは他の非持続性の原料の使用、破棄又は再利用された古紙の有毒作用という技術的及び環境的な問題を避けることである。
【0010】
[発明を解決するための手段]
アルデヒド基及び/又はエポキシ基の存在下でのアニオン性バイオポリマーとカチオン性ポリマーとの組合わせは湿潤強化剤として卓越した性質を有し、同時又は単一のステップで利用することができ、ついてはより単純な工程にすることができることがわかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
アニオン性バイオポリマーは、カルボキシル化多糖(carboxylated polysaccharide)であることが好ましい。多糖類の例としては、1,3−結合、1,4−結合、及び/又は1,6−結合を有するα−グルカンが含まれる。これらの中でも、アミロース、アミロペクチン、デキストリンを含む”デンプンファミリー”("starch family")が特に好ましいが、プルラン、エルシナン、レウトラン、その他のα−グルカンも適している。ただし、1,6−結合の割合は好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満である。他の適切な多糖類としては、β−1,4−グルカン(セルロース)、β−1,3−グルカン、キシログルカン、グルコマンナン、ガラクタン及びガラクトマンナン(グア及びローカストビーンガム)、キサンタン、ガティ(ghatti)、カラギーナン、アルギン酸塩、ペクチン、β−2,1−フルクタン、β−2,6−フルクタン(イヌリンやレバン)等の異種のガムを含む他のガムが挙げられる。
【0012】
カルボキシル化多糖は1単糖ユニット当たり、少なくとも0.1、例えば1ユニット当たり最大1.0のカルボキシル基を含まなければならない。特に、カルボキシルの含有量は1単糖ユニット当たり0.15〜0.5、最も好ましくは0.2〜0.4である。さらに、あまり好ましくはないが、カルボキシル基の代わりとして硫酸基又はリン酸基等の他のアニオン性基も存在しうる。
【0013】
カルボキシル基は多糖そのもの、すなわち好ましくはウロン基(uronic group)の一部であることが好ましい(例えば、ポリアルドヘキソースにおける6−カルボキシル基、ポリアルドフラノペントースにおける5−カルボキシル基、ポリケトヘキソースにおける2−カルボキシル基及び/又は6−カルボキシル基等)。これらのウロン基は、ヒドロキシメチル基の酵素的酸化を通して、自然の或いは制御された生合成の結果として存在しうる。天然のガラクツロナンはこの分類での例である。実質的な有用な代替手段として、多糖類のヒドロキシメチル基の化学酸化、又は、化学/酵素の混合酸化によって製造されうる。
【0014】
ヒドロキシメチル基(すなわち一級ヒドロキシル官能基)のアルデヒド官能基及び/又はカルボキシル官能基への選択的酸化は何年も前から知られている。一酸化窒素、すなわち二酸化窒素及び四酸化二窒素、又は亜硝酸塩や硝酸塩は、かかる酸化に適した酸化剤として当該技術において知られている。例えば、米国特許第3364200号や蘭国特許第93.01172号、そしてPainter, Carbohydrate Research 55, 950193 (1977)や同書140, 61-68 (1985)に記載されている。この酸化は、非極性溶媒、例えば、ハロゲン化溶媒、或いはリン酸等の水性溶媒中で行うことができる。
【0015】
ヒドロキシメチル基の選択的酸化に好ましい試薬は、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシド)等のニトロキシル化合物や、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン-−N−オキシル、 2,2,5,5−テトラメチルイミダゾリン−N−オキシル、そして4−ヒドロキシTEMPO等の関連化合物、さらに4−ホスホノオキシ、4−アセトキシ、4−ベンゾイルオキシ、4−オキソ、4−アミノ、4−アセトアミノ、4−マレイミド、4−イソチオシアナト、4−シアノ、そして4−カルボキシTEMPO等のそれらの誘導体を含む。TEMPOは、次亜塩素酸塩や過酸化水素等の最終酸化剤の存在下で、触媒としてこれらの反応において用いられる(例えば、最終酸化剤に対して0.1〜25mol%を使用)。TEMPO酸化は、例えば国際公開第1995/07303号に記載されている。また、遷移金属の複合体(国際公開第2000/50388号参照)等の中間酸化剤(intermediate oxidants)、ラッカーゼやペルオキシダーゼ等の酵素(国際公開第1999/23240号、国際公開第1999/23117号、国際公開第2000/50621号参照)を用いることができる。カルボキシルに対するアルデヒドの割合は、適切な条件を選択することにより制御することができる。つまり、アルデヒド生成は、低温(0℃〜20℃)、比較的低pH(3〜7)が好ましく、酸化剤の制御された添加、及び/又は低量が用いられることが好ましい。より詳細については、国際公開第2000/50463号、国際公開第2001/34657号、そして国際公開第2001/00681号に記載されている。
【0016】
カルボキシル化多糖とカチオン性ポリマーは、アルデヒドを含む化合物及び/又はエポキシ基を含む化合物の存在下で、用いられることが好ましい。アルデヒド基について言及されている場合、これらは遊離したアルデヒド基、すなわち遊離したカルボニル基を有していてもよいが、より多くの場合、結合したアルデヒド基、特にヒドロキシ基に結合したアルデヒド基であり、すなわち、ヘミアセタール官能基、或いはヘミアシラール官能基の形を有する。アルデヒド基及び/又はエポキシ基を含む化合物は、グリオキサル、グルタルジアルデヒド、ブタンジエポキシド等の特徴的な化合物である。これらの化合物の量は、好ましくは、1カルボキシル基当たり、或いは、カルボキシル化多糖の1単糖ユニット当たり、アルデヒド/エポキシの含有量が以下のように定めるように、例えば、1カルボキシル基当たり、0.2〜0.7のアルデヒド基及び/又はエポキシ基、及び/又は1単糖ユニット当たり、0.05〜0.3のアルデヒド基及び/又はエポキシ基である。
【0017】
アルデヒド基及び/又はエポキシ基を含む化合物はカルボキシル化多糖そのものであることが好ましい。アルデヒド基は本明細書中に記載されているように酸化によって導入されうる。或いは、アルデヒド基又はエポキシ基は置換によっても導入されうる。例えば、(カルボキシル化)多糖を、ブタジエンモノエポキシド、又はテトラヒドロフタル酸(国際公開第1997/36037号参照)、若しくはアルケン官能基を導入する他の化合物と反応させ、オゾン分解し、アルデヒド基をもたらしたり、エピクロロヒドリン又はジエポキシドと反応させ、エポキシ基をもたらしたりする。
【0018】
カルボキシル化多糖は、アニオン性基に加え、他の官能基、特にアルデヒド基及び/又はエポキシ基を含んでいてもよい。アルデヒド基の存在が重要であることが認められているが、好ましくは、アルデヒド含有量は比較的低く、すなわち1カルボキシル基(或いは他のアニオン性基)当たりアルデヒド基1未満、より好ましくは0.7未満である。例えば、1カルボキシル基当たりアルデヒド基を0.1まで下げることができ、最も好ましくは0.2〜0.5である。同様に、エポキシ基が存在している場合、エポキシ含有量は1カルボキシル基(或いは他のアニオン性基)当たりエポキシ基1未満が好ましく、より好ましいのは0.7未満、最も好ましいのは1カルボキシル基当たりエポキシ基が0.2〜0.5である。絶対量では、アルデヒド及び/又はエポキシ含有量は、1単糖ユニット当たり好ましくは0.3未満で、最も好ましくは0.25未満であり、例えば1単糖ユニット当たり0.05〜0.2のアルデヒド基又はエポキシ基である。
【0019】
必要に応じて、アルデヒド基は酸化によって導入しうる。好ましい方法としては、ヒドロキシメチル基の酸化であり、例えば上記ニトロキシル触媒を使用して適切な反応条件を選べば、アルデヒド基が一定のレベルにまで到達する。必要であれば、アルデヒド含有量は、例えば、(ホウ化水素又は水素)還元によって、後で調整することができる。アルデヒド基を低レベルで導入する他の方法としては、1、4−グルカン、1、4−マンナン、1、4−ガラクタンや1、2−フルクタン等のジヒドロキシエチレン(−CHOH−CHOH−)部分を含む多糖類の過ヨウ素酸塩を用いた酸化であり、対応するジアルデヒド類似体を産出する。この酸化は、アニオン性基の所望のレベルをすでに持っている基質上において行われてもよい。この方法は酸化された単糖ユニットを開環するので、変換比率を制限することが好ましく、例えば、最大10%、又は最大5%の変換比率として、結果として平均してアルデヒド含有量は1単糖ユニット当たり最大0.1、又は最大0.05となる。アルデヒド基の導入はまた、カルボキシメチルデンプンや、カルボキシメチルセルロース、グルクロン酸多糖類、ガラクツロン酸基等のカルボキシル化多糖を用いて開始してもよく、アルデヒドが所望のレベルに達するまで、TEMPO酸化、又はわずかな過ヨウ素酸塩酸化が続く。
【0020】
カルボキシル基や他のアニオン性基を導入する他の方法や追加の方法は付加によるものである。カルボキシル基や他の酸基等のアニオン性基が、カルボキシアルキル化、硫酸化、硫化アルキル化、リン酸処理などによって導入されてもよい。多糖類のカルボキシメチル化はまた、当該技術にも広く利用され、モノクロロ酢酸ナトリウムを用いてアルカリ性媒体において、或いは、その後触媒による接触酸化が続くヒドロキシアルキル化(例えばエチレンオキシド共存下)によって一般的には実施されている。カルボキシエチル化等の他のカルボキシアルキル化は、アクリルアミドの塩基触媒を添加し、その後加水分解することによって、或いは無水コハク酸や無水マレイン酸や他の無水物などを添加することによって達成される。硫酸基やスルホ基は、クロロスルホン酸等の硫酸誘導体との反応、或いはビニルスルホン酸又はタウリン類似体との反応によって導入されうる。リン酸化反応はリン酸やその誘導体との反応、或いはハロアルキルホスホン酸との反応によって行うことができる。しかしながら、多糖におけるアニオン性基の少なくとも一部が、例えば、1ユニット当たり少なくとも0.1基が、特に6−カルボキシデンプン等のウロン酸基であることが好ましい。
【0021】
このようにして得られた生成物におけるアニオン性基は、遊離したカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノ基(酸の形態)であってもよく、或いは好ましくは、例えば、対カチオンとしてナトリウム,カリウム、アンモニウム、又は置換されたアンモニウムと共に、塩の形態であってもよい。
【0022】
湿潤強度を増強する目的のために必要であれば、アニオン性生成物をさらに化学修飾することができる。必要であれば任意に還元条件下、アルデヒド基の一部とアミン、ヒドラジン、ヒドラジド等と反応させて、又は糖類のヒドロキシル基(hydroxyl group)と、トリメチルアンモニオアルキルハロゲン化合物、又はエポキシド等のアンモニウムを含む試薬とを生成中のある段階において反応させることによってカチオン性基を導入することができる。これらの多機能のカチオン性化合物は、循環発生する1ユニット当たり0.01から最大約0.15のカチオン性基を含んでいてもよいが、1アニオン性基当たり0.5未満のカチオン性基であることが好ましい。
【0023】
アニオン性炭水化物の分子量は5,000〜2,000,000Daであり、より好ましくは20,000〜1,000,000Daである。
【0024】
本発明によれば、カルボキシル化多糖は、例えばカチオン性多糖類等のカチオン性ポリマーと組み合わされる。カチオン性ポリマーの例としては、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミノアミド、ポリアミノスチレン等の(油性の)合成ポリマーが挙げられる。しかし、本発明で用いられるアニオン性ポリマーのように、再生可能な材料を基としたカチオン性ポリマーであることが好ましい。したがってカチオン性ポリマーはタンパク質或いは多糖類に基づいていることが好ましい。適切なタンパク質とは、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸を比較的多く含み、かつ比較的低価格で得られることができるタンパク質を含む。有用なタンパク質はリゾチームである。他の例としてはケラチン加水分解物があり、国際公開第2005/080680号に記載されている。
【0025】
カチオン性ポリマーは多糖を基としたものが好ましい。カチオン性基は一級アミン基、二級アミン基、及び三級アミン基等のpH依存であってもよく、四級アンモニウム基、ホスホニウム、或いはスルホニウム基等のpH非依存であってもよい、とどちらでもよい。カチオン性多糖の適した例としては、カチオン性のジアルデヒドデンプンがある。すなわち、デンプンの過ヨウ素酸酸化を行い、その後アルデヒド基の全て或いは一部をジラール試薬(NHNHCOCH(CH、ベタインヒドラジド)等の、アミン試薬、或いはヒドラジン試薬と反応させることによってカチオン性基に転換させることによって得られるデンプン誘導体である。他の多糖類に基づいた同様のカチオン性ポリマーも適している。他の有利なカチオン性多糖類の分類は、多糖類又はヒドロキシアルキル化多糖類とオキシラニルメチルトリメチルアンモニウム塩化物や3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物等の反応性のアンモニウム化合物とを反応させて得られたものである。また、アミノ糖ユニットに基づいた多糖類、特にキトサンタイプのものは、本発明と組み合わせて使用することができる。アンモニオ(ヒドロキシル)アルキル基を含むカチオン性デンプンが特に好ましい。カチオン性基の置換度は0.03〜0.6、好ましくは0.06〜0.4、最も好ましくは0.1〜0.3である。カルボキシル化多糖とカチオン性ポリマーとの重量比は、例えば90:10〜10:90であってもよく、特に75:25〜15:85であってもよい。このような複合性の湿潤強化剤は、本発明の特徴的な実施態様である。
【0026】
カルボキシル化多糖、アルデヒド基又はエポキシ基を含む任意の化合物、及びカチオン性ポリマーは、通常、水溶液或いは分散液として、湿潤強化剤への適用に既知の方法で、セルロース繊維を組み合わせることができる。湿潤強化剤は同時に添加することもできるが、好ましくは少し時間をおいて、例えば5秒から5分の間隔をおいて添加することがよい。このような繊維に対する同時或いはほぼ同時の添加は、段階的な(多層)添加が好ましい。各薬剤の量は、セルロース繊維に対して0.1重量%〜4重量%が好ましく、特に0.3重量%から3重量%が好ましい。必要に応じて、湿潤強化剤を継続的に適用してもよく、その後繊維織布の乾燥が続く。
【0027】
カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの組合わせを用いて、紙、タオル、ティッシュそしてボール紙の製品を、一般的な製紙技術で作製することができる。それらの製品は最大の生分解性と合わせて、湿潤強度が改善されている。
[実施例]
【実施例1】
【0028】
1)パルプの調製
試験用のシートは完全にクロリンを含まない漂白したクラフトパルプにて作製された(BSWK=漂白軟木クラフト; Grapho Celeste、SCA Ostrand社製、スウェーデン、カッパ価2.3、ISO白色度89%)。そのパルプは、SCAN std方式C18:65(1964)に従い、2リットルの水に希釈され、30gずつに分解された。続いて、このパルプは精製度SRo=20まで精製された。精製された繊維を0、5w/v%の濃度のストック懸濁液(stock suspension)まで希釈した。
【0029】
2)試験用シートの形成
ファイバーストック懸濁液400mlを真空下で濾過し、湿潤した試験用のシートを形成した(風乾重2gは坪量60〜65g/mとほぼ同じ)。得られた湿潤した試験用のシートを、ラピッド−コーセン法(Rapid Kothen)を用いて6.5分間真空下で94℃で乾燥した。カチオン性デンプン(DS:〜0.18)及び/又はアニオン性デンプン液(グリカネックス社(Glycanex)から入手した6−カルボキシアルデヒドデンプン;ブルメンクランツ法(Blumenkrantz method)による酸化度(カルボキシル基)30%;ヒドロキシルアミン滴定によるアルデヒドのレベル10%)をファイバーストック懸濁液400mlに添加して、他の試験用シートを作製した。0、5、10、20kg/トンのカチオン性デンプン液、及び/又はアニオン性デンプン液の添加量について調べた。参考としてPAAE(ポリアミン−アミド−エピクロロヒドリン)が5、10、15kg/トンの添加量に使用された。
【0030】
3)湿潤及び乾燥強度の測定
紙のシートを23℃及び相対湿度50%という条件下に調整した後、15X122mmのストリップに切断し、湿潤及び乾燥強度の属性を測定した。相対的湿潤強度は乾燥強度に対する湿潤強度の割合をパーセントで計算したものである。乾燥強度の測定はISO標準1924−2に従い実施された。一方、湿潤強度の測定はISO標準3781(フィンチクランプを使用して)を用いて実施された。
【0031】
4)結果:[表1]を参照
【0032】
【表1】

【実施例2】
【0033】
パルプの調製;試験用シートの形成及び強度の測定は実施例1と同様に実施した。追加した最後のステップにおいて、カチオン性デンプンとアニオン性デンプンとを組み合わせて作製した試験用シートの一部分を105℃にて10分間硬化させた後、試験した。試験用シートを硬化させる前と後に23℃及び相対湿度50%という条件下で一日調整した。用いられたカチオン性デンプン液及び/又はアニオン性デンプン液の添加量は、乾燥強度及び湿潤強度の結果を示す表2に記載されている。参考としてPAAE(ポリアミン−アミド−エピクロロヒドリン)が10kg/トンの添加量に使用された。
結果は表2に要約されている。
【実施例3】
【0034】
実施例3は、アニオン性デンプンにおいて、水素化ホウ素ナトリウムを用いてアルデヒド基を還元した以外は同様に行った。結果は表2に示す。
【0035】
【表2】

【実施例4】
【0036】
アニオン性デンプンの代わりに、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)(SIGMA;ds:〜0.7;低粘度)をアニオン性試薬として用いたこと以外は実施例3と同様に実施した。結果は表3に示す。
【0037】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、タオル、ティッシュ及びボール紙を製造するための湿潤強化剤としての、アルデヒド基及び/又はエポキシ基を含む化合物の存在下でのカルボキシル化多糖とカチオン性ポリマーとの組合わせ使用であって、前記組合わせ中のアルデヒデ基及び/又はエポキシ基の数量が、1カルボキシル基当たり1未満であることを特徴とする使用。
【請求項2】
カルボキシル化多糖が、1単糖ユニット当たり少なくとも0.1のウロン酸基を含むことを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
カルボキシル化多糖が、6−カルボキシデンプンであることを特徴とする、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
カルボキシル化多糖のカルボキシル含有量が、1単糖ユニット当たり0.2〜0.4であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
カルボキシル化多糖が、アルデヒド基及び/又はエポキシ基を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
カルボキシル化多糖のアルデヒド含有量が、1カルボキシル基当たり0.1〜0.7のアルデヒド基であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
カルボキシル化多糖のアルデヒド含有量が、1単糖ユニット当たり0.05〜0.3のアルデヒド基であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
カチオン性ポリマーが、カチオン性多糖類から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
カチオン性ポリマーが、カチオン性デンプンであることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
カチオン性多糖が、1単糖ユニット当たり0.1〜0.3のカチオン性基を含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
アニオン性多糖とカチオン性ポリマーとの重量比が、1:4〜4:1であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
1単糖ユニット当たりのカルボキシル含有量が0.2〜0.4であり、1アニオン酸基当たりのアルデヒド含有量が0.5未満であるウロン多糖と、カチオン性多糖との組合わせ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか記載の組合わせを含む、紙、タオル、ティッシュ又はボール紙の製品。

【公表番号】特表2010−511106(P2010−511106A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538356(P2009−538356)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050589
【国際公開番号】WO2008/063068
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(509142830)
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDSE ORGANISATIE VOOR TOEGEPAST−NATUURWETENSCHAPPELIJK ONDERZOEK TNO
【Fターム(参考)】