説明

湿潤接着性改良水性接着剤

メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸および/またはイタコン酸と脂肪族アルコール、置換脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ポリエーテルグリコールおよび他の共重合性モノマーの少なくとも1つのエステルを共重合することにより製造される、0〜150mgKOH/gの酸価を有する(メタ)アクリレートコポリマー1〜50重量%、天然ポリマー0〜40重量%、尿素0.5〜30重量%、添加剤0.1〜20重量%を含有し、0.05〜20重量%の水膨潤性ポリマーを含むことを特徴とする水性接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器用のラベル接着剤として使用される水性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水性接着剤は、湿式ラベル貼り工程用の接着剤として先行技術において周知である。このような接着剤はラベルの片面に塗布され、その後このラベルが容器に接着される。工程上の理由により、ラベルが貼られる際に瓶の内容物はすでに充填されている。多くの場合、内容物は冷たい。その結果として、瓶は周辺の気温以下の冷却された外表面を有することになる。瓶の表面が冷却されている場合、周辺環境からの水蒸気がその表面上で凝集する。高速ラベル貼り工程においては、そのような表面にラベルが接着される。実際に生じる問題は、ラベルを貼った直後のこの湿潤表面における接着性の悪さである。
【0003】
有用な接着剤に対する別の要件として、リサイクル工程において容器から接着ラベルを剥離できることが含まれる。そのため、乾燥した接着剤は水またはアルカリ溶液に短時間で溶解し得るべきである。接着剤が瓶ではなくラベル表面に残ることが好ましい。
【0004】
米国特許第3,891,584号は、ビニルモノマーおよび水溶性ポリオキシアルキレンオキシドポリマーを含むグラフトコポリマー75〜95部と粘性化樹脂を含んでなる水分散性ホットメルト接着剤を開示している。この接着剤は、瓶のラベル貼り工程においてホットメルト接着剤として利用される。ホットメルト接着剤は溶融状態で塗布されるため、非常に費用のかかる加熱装置を必要とする。
【0005】
国際特許出願第97/00298号は、プラスチック本体にプラスチックラベルを接着するための接着剤系を開示している。この接着剤系は、カゼイン、デンプン、デキストリン、グルコースまたはポリビニルアルコールに基づく1つの水溶性ポリマーと少量の消泡剤および防腐剤を含むピックアップグルーを含有する。
【0006】
米国特許第5,455,066号は、瓶のラベル貼り用の含水接着剤を開示している。この接着剤は、カゼイン、水溶性エキステンダー、天然合成樹脂酸、樹脂アルコールまたは樹脂エステルに基づいている。この接着剤は大量のカゼインを含むため、リサイクル工程において悪臭の問題が認められ得る。この問題とは別に、カゼインなどの天然接着ポリマーはその性質が変動する。
【0007】
欧州特許出願1025179号は、疎水性モノマー、親水性モノマー、重合性カルボン酸および他の共重合性モノマーを含むアクリルポリマー25〜50%から製造される水性接着剤を開示している。この接着剤は、さらに、デンプン、デキストリン、ポリビニルアルコールまたはポリ酢酸ビニル、さらなる樹脂または他の添加剤を含んでいてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,891,584号明細書
【特許文献2】国際特許出願第97/00298号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5,455,066号明細書
【特許文献4】欧州特許出願1025179号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術における接着剤は、多くの場合、湿潤膜で覆われた表面に対するラベルの接着が不十分であるという結果を示す。これは多くの場合、容器がその内容物で満たされ、冷却され、湿潤表面が生じていることを意味する。この湿気がさらなる工程においてラベルが滑るまたはズレるという作用を示すべきでない。ラベルは貼付けられたその位置にとどまるべきである。この作用は、耐凝縮水性(CWR)として知られている。この作用は、例えばホットメルト接着剤により表面を温めることにより軽減することができるが、この塗布技術は、接着剤を溶融状態で塗布するため様々である。この接着剤は瓶表面を温めるある程度の能力を有しており、凝集水の問題を低減する。しかしながら、ホットメルト接着剤の塗布は水性接着剤より複雑である。
【0010】
本発明の課題は、凝集水の湿潤表面を有する容器に対するラベル接着剤として高速塗布工程において利用することのできる、アクリルポリマーに基づく水性接着剤を提供することである。表面における初期接着力は高くなければならない。湿潤表面に起因する不具合が生じてはならず、ラベルの位置が動くことなく良好な接着性を示すべきである。さらに、容器の使用期間の経過後、水またはアルカリ溶液で接着剤を洗浄する既知の方法により表面からラベルが剥離されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、0〜150mgKOH/gの酸価を有する(メタ)アクリレートコポリマー1〜50重量%、天然ポリマー0〜40重量%、尿素0.5〜30重量%、添加剤0.1〜20重量%を含有し、0.05〜20重量%の水膨潤性ポリマーを含むことを特徴とする水性接着剤により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
接着剤の1つの成分は、重要要素としての(メタ)アクリレートコポリマーである。このコポリマーは、通常、水中分散体として供給される。そのような(メタ)アクリルコポリマーは、主に、(メタ)アクリル酸およびそのエステルに基づく既知の不飽和ラジカル重合性モノマーと、そのような(メタ)アクリレートモノマーと共重合し得る他のモノマーからなる。このコポリマーは、溶解性を向上させる官能基を含んでいてもよいが、架橋結合基または別個の架橋剤を含むべきではない。そのため、分散状態および塗布後の接着剤のコポリマーは架橋していない。本発明に従って使用されるコポリマーは、好ましくは、少なくとも1種の疎水性型のモノマーと、少なくとも1種の親水性型のモノマー、1つのカルボン酸基含有モノマー、および場合により他のモノマーの共重合により形成される。特に、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、および/またはイタコン酸と、ポリエーテルグリコール、脂肪族アルコール、脂環式アルコールまたは芳香族アルコールとのエステルおよび他の共重合性モノマーがモノマーとして特に有用である。
【0013】
疎水性タイプのモノマーは、本発明によるエマルション共重合条件下において、連続相として水中で離散分散有機脂質相を形成するようなモノマーである。この種の好適なモノマーは、不飽和重合性カルボン酸のエステル、とりわけアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル;芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエン;ビニルアルコールのエステル、とりわけ脂肪酸ビニルエステル;不飽和重合性カルボン酸、とりわけ(メタ)アクリル酸のN−アルキルアミド;および他の共重合性オレフィンモノマー、例えば(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン型、ならびに例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレンおよび他の官能性を有しない同様のオレフィンなどのオレフィンである。モノマーとして、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、好ましくは低級の一価アルコール(例えばC〜C12アルコール)との対応するエステル;特に対応するメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−エチルヘキシルおよび/またはデシルエステルが使用される。スチレン型の芳香族ビニル化合物も適当である。このようなモノマーは、非極性の基材に対する接着性を高める。
【0014】
モノマーの第2群は、親水性タイプのモノマーである。好適なモノマーは、極性置換基を含む共重合性モノマーであって、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド;ヒドロキシエチルアクリレート若しくはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド;N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルラクタム;(メタ)アクリル酸のエチレングリコールエステルならびにグリセリンと(メタ)アクリル酸の部分エステルである。これらのモノマーは、単独で使用しても、混合物として使用してもよい。このようなモノマーは、ポリマーの極性を高め、感水性を改善する。
【0015】
このような(メタ)アクリルコポリマーの製造において、親水性タイプおよび疎水性タイプのモノマーが常に使用されるのに対して、酸基を含むモノマーの使用は任意である。これに関して、カルボキシ官能コモノマーが特に有用である。その例は、マレイン酸、フマル酸または半エステル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸および/またはクロトン酸であり、好ましくはモノカルボン酸である。この分類の他のモノマーは、スルホン酸基を含む不飽和モノマーである。このような酸基を含むモノマーは、水中でのポリマーの溶解性を改善するイオン基を水相中に形成することができる。
【0016】
疎水性モノマーと親水性基を含むモノマーの典型的なモル比は、少なくとも30モル%の疎水性モノマーと少なくとも5モル%の親水性基含有モノマーが使用されるように選択される。必要に応じて、最大30モル%までの親水性モノマーを、酸基含有モノマーに置き換えることができる。好ましくは、コポリマーは、40〜80%の疎水性モノマー、10〜50%の親水性モノマーおよび2〜20%のイオン基含有モノマーを、合計で100%になるよう含んでいてよい。このコポリマーは、10,000〜500,000g/モルの、好ましくは300,000g/モル未満の分子量(GPCにより測定することができる数平均分子量、M)を有し、酸価は0または最大150mgKOH/g(EN ISO 2114)である。20〜150mgKOH/gの酸価、または40〜130mgKOH/gの酸価を有するコポリマーを使用することが特に好ましい。(メタ)アクリルコポリマーのガラス転移温度〔DSCにより測定(DIN ISO 11357)〕が0℃未満、好ましくは−10℃未満となるようにモノマーを選択することが好ましい。
【0017】
接着剤の製造において、(メタ)アクリルコポリマーは、好ましくは水溶液、エマルションまたは分散体の形態で使用される。分散体は、コポリマーを水分散性にする量または少なくとも一部の酸基(例えば、カルボン酸基)の中和によりコポリマーが水に溶解若しくは分散し得る量の少なくとも1種の乳化剤を含んでいてよい。任意の一般的な水中油型乳化剤若しくは乳化系(非イオン性、アニオン性またはカチオン性界面活性剤)を使用することができる。分散体の固形分は、20〜70%、好ましくは35〜55%(DIN 53 189、105℃)である。そのようなコポリマーおよび分散体は市販されている。コポリマーは、固形接着剤組成物の1〜50重量%の量で使用される。
【0018】
さらなる成分として、接着剤組成物は、接着剤のレオロジー特性を改良するための成分を含んでいてよい。さらなる成分として、天然ポリマーを配合することができる。そのようなポリマーは、デンプン、デキストリン、セルロースおよびタンパク質から選択することができる。接着剤組成物において使用するデンプンは、非ゼリー状の市販のデンプン、例えば米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、タピオカまたはエンドウデンプンから選択される。デンプンは、その自然形態で使用しても、また、物理的、化学的若しくは酵素的に変性した形態で使用してもよい。そのようなデンプンの誘導体として、分解、酸化またはグラフト化デンプン、デンプンエーテルおよび/またはデンプンエステルのような天然デンプンの反応により得られる生成物を使用することができる。好ましくは、非イオン性デンプンエーテル、例えばヒドロキシプロピル若しくはヒドロキシエチルデンプンまたはカルボキシメチルデンプンを使用することができる。または、さらなる成分としてデキストリンを使用することもできる。デキストリンは、デンプンからの分解生成物(例えば、マルトデキストリンのような酵素的に分解されたデンプン)として製造される。また、例えば、カゼインのようなタンパク質ポリマーを、さらなる成分として添加することもできる。
【0019】
天然ポリマーは、単独でまたは混合物として使用することができる。好ましくは、デンプン誘導体および/またはカゼインを使用することができる。好適な市販製品は、先行技術において周知である。この成分の量は、0〜40重量%、好ましくは2〜30重量%から選択される。
【0020】
さらに、接着剤は粘度を調節するための成分を含む。そのような成分は、例えば、尿素、チオ尿素、グアニジン、ジシアンジアミドおよび/またはその誘導体などの水溶性低分子量液体から選択される。この物質の分子量は、250g/モル以下である。1種の物質または混合物を使用することができる。使用量は、0.5〜30重量%の範囲で変化してよい。そのような物質および効果は、当業者に既知である。
【0021】
本発明の組成物は、水膨潤性ポリマーを含有する。水膨潤性ポリマーは、例えば超吸収性ポリマー(SAP)として、ヒドロゲルとして、または凝集ポリマーとしてこの技術において既知である。これらのポリマーは、水に全く溶解することなくそのポリマー鎖に大量の水を含む能力を有する。以下の発明においては、化学的に若しくはイオン的に網目構造を形成するか、双極子結合により高い分子量を有する全ての水膨潤性ポリマーが、用語SAPに含まれる。これは種々のポリマーにより得られる。それぞれの場合において、ポリマーは大量のイオン基または極性基を含む。このポリマーは、網目構造(例えば、ポリマー鎖は化学的に架橋され、少なくとも部分的に架橋される)を形成することができる。別のタイプのポリマーは、かなりの量のイオン結合または水素結合を含む。この異なる極性は、イオン結合による網目構造を形成し得る。別のタイプのポリマーは、500000g/モルを越える高分子量ポリマーであり、これは直鎖構造または分枝構造を形成し得る。そのようなポリマー鎖は絡み合うことができ、または、高い双極子相互作用を形成し、水による高い膨潤能力を示す。SAPポリマーは、F.L. Buchholtz, A.T. Graham、「Modern super absorbent polymer Technology」、Wiley−VCH、ニューヨーク、1998年に開示されている。
【0022】
超吸収性ポリマーは、加圧下でも保持される、水に対する高い吸収性を有する固体のポリマーである。そのようなSAPは、水に不溶であるが水膨潤性である。このポリマーは架橋され得ることにより、または部分的に架橋され得ることにより水に溶解しない。粒子のコアまたは外殻で架橋結合は行われ得る。このような超吸収性ポリマーは既知であり、保水剤、粘度調整助剤または凝集助剤としての用途で市販されている。本発明において、接着剤に分散し得る全ての超吸収性ポリマーを使用することができる。
【0023】
SAPの1つの好ましい種類は、ポリアクリル酸である。ポリアクリル酸は、アクリル酸若しくはメタクリル酸((メタ)アクリル酸)のホモポリマー、およびアクリル酸若しくはメタクリル酸((メタ)アクリル酸)と他のコモノマー、例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビニルスルホン酸または酸などのヒドロキシアルキルエステルとの既知のコポリマーを含む。このポリマーの0〜95重量%の酸基は、アルカリ基またはアンモニウム基により中和され、これらのポリマー/コポリマーは、多官能化合物の付加により架橋される。このようなポリマーは既知であり、市販されている。
【0024】
別の好ましい種類のSAPは、架橋デンプン生成物である。デンプンは、通常、例えばグラフトデンプンのような誘導体として使用される。グラフトモノマーとして、例えば(メタ)アクリレートモノマーが使用される。主に上述したのと同じモノマーを重合させることができる。グラフト化されたポリアクリル部分は、好ましくは少なくとも部分的に架橋されている。通常、少なくとも50%のカルボン酸基が中和される。製造工程により、このようなグラフトポリマーはポリアクリル酸ポリマーを含んでいてもよい。
【0025】
別の好ましい種類の膨潤性ポリマーは、ポリアクリルアミドまたはポリアクリロニトリルに基づくポリマーである。場合により、このポリマーは、極性基を含むコモノマーをさらに含む。これらのポリマーが多量の極性基を含む場合、化学的架橋度は通常のSAPまたは複数のOH架橋によるものより低いことが多い。別の種類のポリマーは混合ポリエステルポリアミドに基づく。このポリマーは、カルボキシルアミド−、ポリエチレングリコール−tert−アミノ基、ジカルボン酸エステルおよび他の極性基を含み得る。このポリマーは高分子量ポリマーであり、多量のイオン基を含む。高分子量とは、300,000g/モルを越える分子量を意味し、またはそれらが部分的に架橋していることを意味する。
【0026】
別の好ましい種類のSAPは、高分子量ポリアルキレングリコールに基づく膨潤性ポリマーである。このポリマーは、好ましくはポリエチレングリコールを含有する。それらは、末端基として重合により架橋し得る不飽和エステルを含んでいてもよい。また、架橋剤の添加および反応によりOH基により架橋されたポリアルキレングリコールも使用できる。ポリエチレングリコールの他の群は、高い分子量(M)、例えば300,000g/モルを越える、好ましくは500,000〜10,000,000g/モルまでの分子量を有する。このポリマー鎖は、絡み合って高い双極子相互作用を示し、それにより高い膨潤性および水分保持力を有する。種々の分子量を有する市販製品が利用可能である。
【0027】
別の種類のSAPとしては、N−メチル−ピロリドンの重合生成物が挙げられる。このポリマーは、高極性であり水中で膨潤し得る。本発明で使用するためには、このポリマーは少なくとも部分的に架橋していなければならない。
【0028】
別の種類のSAPは、イソブチレンと無水マレイン酸の架橋し部分的に中和されたコポリマーに基づく。別の種類のSAPは、酢酸ビニル/アクリル酸コポリマーの鹸化生成物に基づく。膨潤性ポリマーとして、高分子量ポリビニルアルコールも適当である。ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルポリマーから加水分解により誘導することができる。膨潤性ポリマーとして使用するために、それらは架橋しているか、高い分子量を有していなければならない。種々の分子量を有し、他の特性を有するポリビニルアルコールが市販されている。本発明に使用し得るさらなる種類の膨潤性ポリマーは、変性天然生成物である。例えば、キサンタンおよびキサンタンガムは、水を組み込む高い能力および高い膨潤性を有する。
【0029】
本発明の使用に適するSAPは、粉末状の物質である。粒子径は、1〜1000μmであってよい。粒子径は、接着剤の薄膜に粒子を組み込むことができるように選択する。SAPを(メタ)アクリレートコポリマーの分散体に加えることもできる。しかしながら、接着剤と混合する前に、SAPを水に分散させることが好ましい。この分散体は、高粘度であり、またはゲルを形成し得るが、接着剤中でさらに分散させることができる。SAP粉末は、接着剤の水性溶液に微細に分散すべきであり、それにより接着剤の安定性が確保される。SAPの量は、全組成物の0.05〜20重量%の範囲であり、好ましくは0.2〜10重量%の範囲である。
【0030】
水性接着剤は、ラベル接着剤において一般的に使用される他の添加剤または助剤、例えば、粘着付与剤、界面活性剤、殺生物剤、安定化剤、pH剤、染料、顔料、接着促進剤、ポリオール若しくは他の既知の添加剤などをさらに含有していてよい。本発明の接着剤は、これらの助剤を0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜15重量%の量で含有し得る。
【0031】
添加剤として、接着剤は粘性化樹脂を含んでいてよい。この樹脂は、さらなる粘着性を付与し、接着剤組成物の相溶性を改善する。この樹脂は、好ましくはヒドロアビエチルアルコールおよびそのエステル、より好ましくは芳香族カルボン酸、例えばテレフタル酸およびフタル酸とのエステル;変性天然樹脂、例えばガムロジン、リキッドロジンまたはウッドロジンからの樹脂酸、例えば、完全に鹸化されたガムロジン、または低軟化点を有する場合により部分的に水素化されたパインロジンのアルキルエステル、例えばメチル、ジエチレングリコール、グリセロールおよびペンタエリスリトールエステル;官能性炭化水素樹脂に基づく樹脂;テルペン−フェノール樹脂またはケトン樹脂から選択される。
【0032】
適当な樹脂は、好ましくはロジンである。また、水への溶解性または分散性を高めるために、誘導体化の対象となる上記の全ての誘導化ロジン、例えば、水素化ロジンまたは不均化ロジンも使用される。このロジンの酸価は0〜300mgKOH/gであり、好ましくは70〜220mgKOH/gである。このロジンは、0〜20重量%の量で使用される。
【0033】
助剤の別の群としては、上述したタイプおよび組成物とは異なる別の水性ポリマーまたは水分散性ポリマーが挙げられる。この群には、アルコールの分類から選択される、オープンタイムを調節するためのポリマーが含まれる。ここには、助剤として適する糖、モノアルコール、ジアルコールまたはポリアルコールなどの水溶性ポリマーが含まれる。
【0034】
助剤の別の群は、接着促進剤である。そのような生成物としては、例えば、ケイ素原子にさらなる加水分解性基を含むモノマー若しくはオリゴマーの有機官能性シランが挙げられる。この物質としては、3−グリシドキシ−プロピルトリアルコキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、1−アミノアルキルトリアルコキシシラン、α−メタクリルオキシメチルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピル−メチルジアルコキシシラン、フェニルアミノプロピルトリアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシジシラン、i−ブチルメトキシシラン、N(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、メタクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、それらのアルコキシ(好ましくはC〜Cモノアルコールを含む)との混合物が含まれ得る。好ましい使用量は、0.05〜5重量%、特に0.1〜2重量%である。
【0035】
さらに、本発明の接着剤は、特定の特性を改善するための別の添加剤を含有してもよく、例えば、安息香酸エステル、フッ化物などの既知の防腐剤(保存期間の改善);例えば、ステアリン酸塩、シリコーン油および脂肪アルコールのエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシド付加物などの消泡剤または湿潤剤(加工特性の改善);pH調整物質;および界面活性剤を含有し得る。
【0036】
本発明の接着剤は、既知の方法により製造することができる。例えば、(メタ)アクリルコポリマーの分散体はエマルション重合により調製することができる。この水性分散体に、他の成分(例えば、デンプン、デキストリンまたは他のポリマー)を添加し、分散させることができる。pHを調整するための添加剤を含むさらなる添加剤を混合することができる。一般的には、pHをpH6.5〜9.5に、好ましくは7.0〜9.0に調整する。異なる種類の接着剤は、特定の基材(例えばプラスチック表面)に対する接着性を改善するpH9〜12の範囲に調整される。必要な場合、尿素および粘度を調整するための他の成分を添加し、混合する。SAPをこの分散体に添加し、微細に分散させることもできるが、接着剤組成物に添加する前にSAPを水に分散させることが好ましい。
【0037】
この水性接着剤は安定であり、長期間保存することができる。固形分(DIN53189)は20〜80%、好ましくは30〜65%であってよい。この接着剤は、好ましくは有機溶剤を含まない。
【0038】
接着剤の好ましい成分は、5〜35重量%の(メタ)アクリレートコポリマー、2〜20重量%のデンプン、デキストリンおよび/またはタンパク質、0.5〜20重量%の尿素、0.5〜15重量%の添加剤および助剤ならびに0.2〜10重量%の少なくとも1種のSAPからなる。水の量は、全組成物の35〜80重量%、好ましくは50〜75重量%とすることができる(全成分の合計は100%になる)。
【0039】
接着剤の粘度は、適用温度において10000〜250000mPas、好ましくは30000〜150000mPasである(25℃、ブルックフィールド、EN ISO 2555)。異なる形状の接着剤は、プラスチック表面に好適に用いられる粘度範囲10000〜100000mPasを示す。
【0040】
本発明の接着剤の塗布工程は既知である。接着剤をラベルの片面に塗布し、その直後に、湿潤表面を有する容器に貼付ける。この工程用の装置は、当業者に既知である。本発明の水性接着剤は、5〜80g/m、好ましくは5〜50g/mの量で使用される。ラベルとしては既知の物質が挙げられる:特に紙ラベルをこの接着剤と使用することができる。基材は、食物や飲料の包装に使用する容器、例えば瓶、缶、ドラム缶および他の容器である。基材の物質は、ガラス、金属、ポリマー、多層包装材料などから選択される。飲料には、基材として好ましくは瓶や缶が用いられる。ラベルを塗布した後、容器はさらに処理され、最終的に乾燥させてもよい。
【0041】
本発明の接着剤の効果は、濡れた表面または湿気た表面に対する接着性の改善である。湿潤表面に対して接合した一般的な水性アクリル接着剤により接着されたラベルは、表面上で少なくとも部分的に滑り落ち、位置が動くであろう。本発明の接着剤により接着したラベルは、さらなる製造工程の間、位置が動くことはない。この接着剤の使用は、湿潤状態で表面に固定され、ラベルの滑り落ちがないラベルを提供する。さらに、乾燥後、ラベルは基材に対する高い接着性を示す。紙ラベルを使用した場合、基材表面の大部分で繊維引裂けが生じる。
【0042】
容器に接着したラベルは、水、好ましくはアルカリ溶液に浸すことにより基材から剥離することができる。一般的に剥離は、例えば40〜95℃、好ましくは50℃より高い昇温下で行われる。剥離が機械的応力によりサポートされるよう溶液または容器を攪拌する。接着剤は、少なくとも部分的に溶解し、基材表面から剥離される。このリサイクル工程段階においても、本発明の接着剤の使用は、SAP成分の膨潤特性が接着層の溶解を促進するという利点を示す。
【実施例】
【0043】
手順:
ポリ(メタ)アクリレート分散体を添加剤と混合し、過剰量の水に分散させたSAP−粉末を攪拌しながら添加し、アルカリでpH8付近に調整した。約100000mPasの粘度(25℃)になるよう固形分を調整することができる。
【0044】
【表1】

【0045】
ポリ(メタ)アクリルポリマー: Axilat 1688(50%固形分)
界面活性剤1: Defoamer L 808
界面活性剤2: Surfynol 104
接着促進剤: 未処理トウモロコシデンプン
接着促進剤: Silan DAMO
SAP1: Luquasorb 1003(架橋ポリアクリレート)
SAP2: Polyox(ポリエチレングリコール、M 5000000)
【0046】
試験:
ガラス瓶を4℃で24時間保管し、水(4℃)を充填する。冷却した瓶を23℃、50%相対湿度の気候室に1時間置き、表面に水が凝結する。
【0047】
接着剤を、紙ラベル(100×50mm)の裏面に25g/m塗布する。すぐに、凝集水で覆われたガラス瓶にラベルを貼付ける。この瓶を再度試験室に入れ、3時間放置する。ラベルは表面の下方に滑り落ちない。比較接着剤の場合には、ラベルは瓶から滑り落ちる。
【0048】
瓶を24時間乾燥させる。その後表面からラベルの引きはがしを試みる。本発明の接着剤組成物の場合、90%を越える繊維破損が観察される。比較接着剤の場合、ガラスと接着膜間の接着性喪失。10%未満の繊維破損がみられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0〜150mgKOH/gの酸価を有する(メタ)アクリレートコポリマー1〜50重量%、
天然ポリマー0〜40重量%、
尿素0.5〜30重量%、
添加剤0.1〜20重量%
を含有し、0.05〜20重量%の水膨潤性ポリマーを含むことを特徴とする水性接着剤。
【請求項2】
(メタ)アクリレートポリマーが、非極性モノマー、極性モノマーおよびカルボン酸基またはスルホン酸基を有するモノマーを含有し、好ましくは20mgKOH/gを越える酸価を有することを特徴とする請求項1に記載の水性接着剤。
【請求項3】
天然ポリマーが、天然デンプン、還元デンプン、化学修飾デンプン、デキストリン、および/またはタンパク質から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の水性接着剤。
【請求項4】
2〜20重量%の天然ポリマー、好ましくはカゼインまたはデンプンを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性接着剤。
【請求項5】
水膨潤性ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリエステルポリアクリルアミド、グラフトデンプンポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコールおよびその塩から選択される超吸収性ポリマー(SAP)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水性接着剤。
【請求項6】
SAPが化学的架橋ポリマー、OH架橋ポリマー、または、分子量(M)が300000g/モルを越える高分子量の分枝状絡み合いポリマーから選択されることを特徴とする請求項5に記載の水性接着剤。
【請求項7】
SAPとして、ポリマーがアクリル酸コポリマー、アクリルアミドコポリマーおよび/またはポリエチレングリコールから選択されることを特徴とする請求項6に記載の水性接着剤。
【請求項8】
0.2〜10重量%のSAPを含有することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の水性接着剤。
【請求項9】
さらに、0.05〜5重量%の接着促進剤、好ましくは加水分解性基および1つのアミノ基を含むシランを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水性接着剤。
【請求項10】
アルカリ溶液によりpH6.5〜9.5に調整されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水性接着剤。
【請求項11】
25℃での測定において、10000〜250000mPas、好ましくは30000〜150000mPasの粘度を示すことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水性接着剤。
【請求項12】
乾燥した接着層が、好ましくは昇温下で、水若しくはアルカリ溶液中に再溶解または再分散し得ることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の水性接着剤。
【請求項13】
湿式ラベル接着剤としての請求項1〜12のいずれかに記載の水性接着剤の使用。
【請求項14】
中空基材、特にガラス若しくは高分子材料製の瓶への紙若しくは透水性ポリマーフィルムから選択されるラベルの接着のための請求項13に記載の使用。
【請求項15】
乾燥した接着層がアルカリ溶液に溶解性である接着剤としての請求項1〜12のいずれかに記載の水性接着剤の使用。

【公表番号】特表2013−501835(P2013−501835A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524195(P2012−524195)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061239
【国際公開番号】WO2011/018382
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】