説明

源氏香図パターン・ジェネレータ

【課題】 香道で用いられる香りの組合せを示す源氏香図52パターンは、伝統的日本の意匠として美術工芸領域で広く用いられているが、個々のパターンを意匠表現の要素として扱うに止まっている。本発明は源氏香図52パターン全てを簡単な構造で生成する源氏香図パターン・ジェネレータを提供する。
【解決手段】 源氏香図を縦方向に9領域の矩形に分割した。源氏香図52パターンはこれら9領域の矩形それぞれのパターン変化によって生成される。このパターン変化は1領域の矩形につき4通り以下であり、9領域それぞれの矩形ごとに必要とされるパターンを確定した。領域ごとのパターンは源氏香図パターン・ジェネレータの構成片9種それぞれに描き、置換しえる単純な機構により、源氏香図52パターンの全てが生成出来る源氏香図パターン・ジェネレータとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、源氏香図を生成するパターン・ジェネレータに関する。
【背景技術】
【0002】
香道で用いられる香りの組合せを示す源氏香図は、5種類の異なった香から重複を許して任意に5回選択し、順に嗅ぎ分けその組合せを参加者が当てるというゲームに由来する。香りの組合せの順番をパターン化したものが源氏香図であるが、52種類のパターンとなる。源氏香ではそれら一つ一つを源氏物語の巻之二から巻之五十三の52帖に対応させている。従って源氏香図は源氏物語の帖を暗喩する記号として香道の世界だけに止まらず伝統的日本の文様として美術工芸領域で広く用いられている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
源氏香図52パターンは、上述した様に美術工芸領域で広く用いられているが、その殆どは何れかのパターンを意匠表現の要素として扱うに止まっている。本発明は源氏香図52パターン全てを簡単な構造で速やかに生成する源氏香図パターン・ジェネレータを提供することである。香に関する製品、室内装飾の製品に用いることができる。
【0004】
本発明のもう一つの課題は、源氏香図52パターン全てを簡単な構造で速やかに生成するパズルを提供する。源氏香図に暗喩される源氏物語の帖に思いを馳せながら楽しめるパズルで、日本文化に関わった教育玩具として提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明に係るパターン・ジェネレータは、構成片による組合せ方式を用いる。源氏香図を縦方向に9領域の矩形に分割し、領域ごとのパターンをパターン・ジェネレータの構成片9種それぞれに描き組み合わせる事で源氏香図が生成される。
【0006】
源氏香図52パターンは、上述の9領域の矩形それぞれのパターン変化によって生成される。このパターンは領域ごとに源氏香図52パターン全てにわたって調べると、変化は1領域の矩形につき4通り以下であることが解り、9領域それぞれの矩形ごとに必要とされるパターン群が確定された。
【0007】
9領域それぞれの矩形ごとに必要とされるパターンを速やかに置換しえる単純な機構とする為に、棒状直方体である構成片の長方形4面にパターンを描き、構成片を転回させる方法を採る。
【0008】
9領域それぞれの矩形ごとに必要とされるパターンを速やかに置換しえる単純な機構とする為に、板状直方体である構成片の木口4面にパターンを描き、構成片を転回させる方法を採る。
【0009】
9領域それぞれの矩形ごとに必要とされるパターンを速やかに置換しえる単純な機構とする為に、帯状である構成片の片面に必要とされるパターンを連続して描き、構成片をズラス方法を採る。
【発明の効果】
【0010】
上述したように本発明は、従来固定された図案として扱われてきた源氏香図の全てが表示部分に速やかに生成され、個々の文様に暗喩される源氏物語の帖の文学的興味を喚起しえる源氏香図パターン・ジェネレータを提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。
【0012】
図1は源氏香52パターンの全てを示している。それぞれのパターンは5本の縦棒及び、それらに挟まれた4本の地模様が基本となっている。
【0013】
図2は、源氏香図の分割の仕方を示している。縦に9領域に分割する。1〜9の符号は、9領域(以下部位)それぞれの部位に対応する。
【0014】
図3は、源氏香52パターンの全てにわたって1〜9の部位を調べた結果である。部位ごとに現れるパターンは最大4パターンであることから、部位毎にパターンを連続して入れ替える方法として、直方体の4面にパターンを描く方法、或は帯状の構成片にパターンを連続して描く方法が考案された。
【0015】
図4は棒状直方体の構成片にパターンを描いた場合の展開図である。
【0016】
図5は棒状直方体の構成片による源氏香図パターン・ジェネレータの斜視図である。各構成片(1〜9)の面に描かれたパターンを、構成片を回転させ置き換える事により源氏香図の生成が行える。図の様に構成片をケース(10)に収める方法もある。
【0017】
図6は板状直方体の構成片にパターンを描いた場合の展開図である。
【0018】
図7は板状直方体の構成片による源氏香図パターン・ジェネレータの斜視図である。各構成片(1〜9)の木口に描かれたパターンを、構成片を回転させ置き換える事により源氏香図の生成が行える。図の様に構成片の中心に回転軸(11)を設け、各構成片を回転させ置き換える事により源氏香図の生成を行う方法もある。
【0019】
図8は帯状構成片にパターンを連続的に描いた場合のパターン図である。
【0020】
図9は帯状構成片による源氏香図パターン・ジェネレータの使用説明図である。図の様に構成片を枠(12)越しに見える様に並べ、各構成片をスライドさせる事により源氏香図の生成が行える。
【0021】
図10は帯状構成片による源氏香図パターン・ジェネレータの斜視図及び、帯状構成片をループにした源氏香図パターン・ジェネレータの斜視図である。帯状構成片は薄い板状のものか、布の様な柔らかい素材が考えられる。
【実施例】
【0022】
図5に示される源氏香図パターン・ジェネレータは、構成片を漆で仕上げ、パーターン部分は螺鈿の象嵌で仕上げることにより、卓上の装飾品として製品化することが出来る。更に構成片を納める箱と組合せることにより、例えばそれを漆工芸品の小箱の蓋等の部分に展開したり、構成片を納める箱を額縁として扱うことにより壁面に飾る装飾品として製品化することが出来る。また、構成片を黒檀等の堅木で仕上げ、パーターン部分を楓等の白木による象嵌で仕上げることにより、卓上のパズルとして製品化することが出来る。素材は木以外にも金属、ガラス、樹脂等幅広く応用することが可能である。
図7に示される源氏香図パターン・ジェネレータは、板状直方体部分を黒檀等の堅木で仕上げパーターン部分を錫等の金属による象嵌で仕上げることにより、卓上の装飾品として製品化することが出来る。また構成片にアルマイト処理されたアルミ素材を用い、パターン部分もアルマイト処理されたアルミ素材による象嵌で仕上げることにより、卓上パズルとして製品化することが出来る。
図10に示される源氏香図パターン・ジェネレータは、帯状構成片を織物にしてパーターンを織り込み、枠を額縁として扱うことにより壁面に飾る装飾品として製品化することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のパターン・ジェネレータは、固定された表示領域に源氏香図52パターン全てを簡単な構造で速やかに生成することが可能なため、香に関する美術工芸製品、室内装飾の美術工芸製品に用いることができ、美術工芸製品の新たな表現素材として組み込み入れる等、幅広い展開が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 源氏香図52パターン図
【図2】 源氏香図、9領域分割の説明図
【図3】 各領域に於ける必要とされるパターン分類図
【図4】 棒状直方体構成片の展開図
【図5】 棒状直方体構成片によるパターン・ジェネレータの斜視図
【図6】 板状直方体構成片の展開図
【図7】 板状直方体構成片によるパターン・ジェネレータの斜視図
【図8】 帯状構成片のパターン図
【図9】 帯状構成片のによるパターン・ジェネレータの使用説明図
【図10】 帯状構成片のによるパターン・ジェネレータの斜視図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状直方体の構成片9種を組み合わせるパターン・ジェネレータであって、構成片それぞれの4面に、他の構成片と組み合わせた時に源氏香図52パターンのうちの一つが構成される模様を描いた源氏香図パターン・ジェネレータ。
【請求項2】
棒状直方体の構成片を収納箱に納めた請求項1記載の源氏香図パターン・ジェネレータ。
【請求項3】
板状直方体の構成片9種を組み合わせるパターン・ジェネレータであって、構成片それぞれの4面に、他の構成片と組み合わせた時に源氏香図52パターンのうちの一つが構成される模様を描いた源氏香図パターン・ジェネレータ。
【請求項4】
板状直方体の構成片9種を重ね合わせ、それぞれの板の中央に設けた穴に回転軸を挿入、固定された請求項3記載の源氏香図パターン・ジェネレータ。
【請求項5】
帯状の構成片9種を組み合わせるパターン・ジェネレータであって、構成片の面に、他の構成片と組み合わせた時に源氏香図52パターンのうちの一つが構成される模様を描いた源氏香図パターン・ジェネレータ。
【請求項6】
帯状の構成片9種それぞれをループ状にした請求項5記載の源氏香図パターン・ジェネレータ。
【請求項7】
請求項1、請求項3、請求項5、に記載されたいずれかの源氏香図パターン・ジェネレータであって、香に関する製品、室内装飾の製品の部分に組み入れたもの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−82407(P2010−82407A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276133(P2008−276133)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(508321144)
【Fターム(参考)】