説明

溝切機

【課題】
歩行型の溝切機と同等に軽量であっても溝切作業時には乗用とすることで作業者の重量を利用して深い溝を形成すると共に、極めて軟弱な湿田であった場合には溝切作業を作業者が歩行しながら作業を行うことができる、すなわち水田の状況によって、作業者が乗用、歩行用と容易に切り替えが可能な溝機機を提供する。
【解決手段】
機体の進行方向に対して前方又は後方のいずれかに駆動部と溝切部を設け、作業者が搭乗する搭乗部と駆動部と溝切部が互いに連結したフレームの一部に搭乗部が回転する支点を設け、機体の進行方向に対して垂直方向もしくは水平方向に回転可能として、溝切機を乗用と歩行での溝切作業を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田に給排水を速やかに行うための溝を形成する溝切機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場(水田)に給排水を速やかに行い作物の生育を良好にする目的で溝切作業が行われているが、従来から使用されている作業者追従歩行型の溝切機は、駆動輪の後方に三角板を取付け、その三角板を作業者が地面に押し付けながら駆動輪に牽引されることで溝を形成していく溝切機が主流となっている。また乗用のものでは田植機のような4輪の作業機の後方に溝切板を複数取付け、地面に押し付けながら溝を形成していく溝切機は公知である。
【0003】
特許文献1のように溝切板をそろばんの玉型にしたものや、特許文献2のようにエンジンの重量を駆動輪に付加して推進力を増し、水田の土が若干固くなっても溝を形成できるようにしたものや、特許文献3のように、作業者が搭乗できる補助台板の底面に溝切部を設けて、作業者が搭乗して溝を切る溝切機も既に公知である。
【0004】
また、機体の進行方向に対して前方または後方のいずれかに駆動部と溝切部を設け、作業者が搭乗できるように構成された溝切装置において、溝切装置に搭乗した作業者の重心が駆動部の動輪の軸心から溝切部の外端までにあるように作業者の搭乗場所を設けて、作業者の重量で溝を切る溝切装置を平成15年8月29日(特許文献4)に本特許請求人が出願を行っている。
【0005】
【特許文献1】実開昭64−19654号公報
【特許文献2】実開昭62−60101号公報
【特許文献3】実開昭55−8742号公報
【特許文献4】特願2003−306008号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乗用の4輪作業機での溝切作業は作業者にとって楽な作業であるが、旋回時の稲の踏みつけや溝同士の接合がうまく行われなかったり、作業機の水田への入退場で畦を壊してしまうなどの不具合点が多く、いまだ普及に至っていない。
【0007】
歩行型の上記特許文献1や特許文献2のように若干水田の土が固くなっても作業できるよう考案された溝切機は、溝切板を地面に押し付ける労力は結局作業者が請け負うことになるので決して楽な作業であるとは言えないし、特許文献3では、乗用であるものの、作業者の重心が溝切板より後方にあるので駆動部が空転する可能性が高く、空転防止をするためには駆動部の重量を重くする必要がある。溝切機自体の重量が増えることは作業者にとって扱いづらい機械になってしまうので、良好な溝切作業が出来るとは言いがたい。
【0008】
そこで、本特許請求人は作業者が乗用可能でしかも歩行型と同等に軽くまた、作業者の体重を利用して深い溝を形成できる乗用の溝切装置(特許文献4)の出願に至った。
【0009】
しかしながら、極まれに点在する地盤が極端に軟弱な湿田においては、本特許請求人が提案した特許文献4の溝切装置を利用した場合に、作業者の重量によって溝切機の駆動部・溝切部共に湿田に深く嵌りこんでしまう現象が発生することが実験で判明した。
【0010】
また、本特許請求人の出願した特許文献4の溝切装置であっては、運搬時例えば道路から畦を越え水田に溝切装置を搬入する場合に、常に作業者が溝切装置を持ち上げて運搬する必要があり、溝切装置自体を駆動させ自走させることが不可能であった。
【0011】
そこで本発明は、従前の歩行型の溝切機と同等に軽量であっても溝切作業時には乗用とすることで作業者の重量を利用して深い溝を形成すると共に、極端に軟弱な湿田であった場合には溝切作業を作業者が歩行しながら作業を行うことができる、すなわち水田の状況によって、作業者が乗用、歩行用と容易に切り替えが可能な溝機機を提供し、すべての水田に溝切作業を行うことができる溝切機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は請求項1ないし請求項6に係わる溝切機を提案するものである。
【0013】
即ち、請求項1に係わる溝切機は、機体の進行方向に対して前方又は後方のいずれかに駆動部と溝切部を設け、作業者が搭乗する搭乗部と駆動部と溝切部が互いに連結され、作業者が搭乗部に搭乗して作業者の重量を利用して溝を形成できる溝切機であって、搭乗部には作業者が機体を保持する保持部材を一体に設けたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項2に係わる溝切機は、機体の進行方向に対して前方又は後方のいずれかに駆動部と溝切部を設け、作業者が搭乗する搭乗部と駆動部と溝切部が互いに連結され、搭乗部は作業者の重心が駆動部の軸心から溝切部の外端までの範囲になるよう設けられていて、作業者が搭乗部に搭乗して作業者の重量を利用して溝を形成できる溝切機であって、搭乗部には作業者が機体を保持する保持部材を一体に設けたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に係わる溝切機は、請求項1又は請求項2に記載の溝切機において、保持部材を設けた搭乗部は、駆動部と溝切部と搭乗部が互いに連結されたフレームの一部を支点として、機体の進行方向に対して垂直姿勢及び水平姿勢に起倒可能(自在)、もしくは水平姿勢を維持しながら回転可能であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に係わる溝切機は、請求項3に記載の溝切機において、連結されたフレームの一部を支点として、機体の進行方向に対して垂直姿勢及び水平姿勢に起倒可能(自在)、もしくは水平姿勢を維持しながら回転可能である搭乗部は、作業者が機体の進行方向における全長より略後方に位置した場合、作業者は搭乗部を垂直姿勢及び水平姿勢に起倒(自在)、もしくは水平姿勢を維持しながら回転させ、作業者が保持部材を保持しやすい任意の位置に搭乗部を固定可能として、作業者が本機の略後方より追従歩行しながら溝切作業を行えることを特徴とするものである。
【0017】
請求項5に係わる溝切機は、請求項1又は請求項2に記載の溝切機において、保持部材を設けた搭乗部は、駆動部と溝切部と搭乗部が互いに連結されたフレームから機体の進行方向に対して前後方向に反転して着脱可能であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項6に係わる溝切機は、請求項5に記載の溝切機において、機体の進行方向に対して前後方向に反転して着脱可能な搭乗部は、作業者が機体の進行方向における全長より略後方に位置した場合、作業者は搭乗部をフレームから取り外し、進行方向に対して反転して装着し、作業者が保持部材を保持しやすい任意の位置に搭乗部を固定可能として、作業者が本機の略後方より追従歩行しながら溝切作業を行えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、土壌が固い水田または乾いて土の固くなった水田であっても、作業者の重量を利用して容易に深い溝を形成できると共に、極端に軟弱な湿田で乗用作業機が使用できない水田もしくは、土壌が極めて柔らかく容易に深い溝が切れる水田または、深い溝を必要としない場合においては、溝切機を歩行用とすることで状況にあった溝切作業を可能となる。即ち一台の溝切機を乗用、歩行用と切り替えが容易に変更可能であるので、いかなる条件の異なった水田であっても溝切作業を容易に行うことができる。
【0020】
また、溝切機を乗用として使用する場合の作業者が溝切機を保持するための保持部材(グリップ)と、溝切機を歩行用として使用する場合の作業者が溝切機を保持するための保持部材(グリップ)は同じものを使用しているため、溝切機自体の重量を増すこと無く構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1には本発明の実施の形態に係わる溝切機の乗用作業状態を示す正面図、図2には図1の実施における作業者の重心を示す平面図、図3には図2の作業実施の平面詳細と溝切部の断面詳細を示す図、図4には本発明の第1の実施を示す溝切機の正面図、図5には本発明の第1の作業実施を示す正面図、図6には本発明の第2の実施を示す平面図、図7には本発明の第2の実施を示す正面図、図8には本発明の第3の実施を示す平面図、図9には本発明の第3の作業実施を示す正面図である。
【0022】
溝切機1は駆動部2と溝切部3と搭乗部4がフレーム5によって連結し、駆動部2と溝切部3とを連結する連結フレームA6と、連結フレームA6と搭乗部4とを連結する連結フレームB7によってそれぞれを連結している。
【0023】
進行方向前方に駆動部2、後方に溝切部3、そして搭乗部4は駆動部2と溝切部3の間の上方で、作業者8の重心が駆動部2の軸心9から溝切部3の外端の範囲内になるよう設けられている(図2)。
【0024】
駆動部2はエンジン11からの動力を動力伝達軸12を経由してギアボックス13に至り、車輪14を駆動させている。なお、15は滑り止めであって車輪14に等間隔に設置されている。場合によっては車輪14による稲の葉、茎の踏みつけ、巻き込みを防止するため、車輪14の前方の両側を囲む保護板16が設けられていると良い。
【0025】
ギアボックス13には連結フレームA6の一端が接続されその他端には溝切部3が接続されている。溝切部3は図2および図3に示すように、傾斜板17と底板18とで構成され、底板18によって溝切部3が耕盤19より沈み込まないようになっているので、水田に形成される溝の断面は底辺のあるV型の溝となる。
【0026】
搭乗部4と接続された連結フレームB7は駆動部2と溝切部3の間の連結フレームA6と接続されている。搭乗部4は作業者8が腰掛ける座面20と、その座面20より進行方向前方に作業者8が溝切機1を保持するための保持部材21が設けられている。そして保持部材21は作業者8が座面20に進行方向に向かって腰掛けた場合、自然な姿勢で握れる位置に設けられていると共に、略肩幅の範囲でグリップ22が設けられている。保持部材21または、このグリップ22はエンジンの回転を調整する回転調整装置24を装備しており、この回転調整装置24によって駆動部2の車輪14に動力の伝達の断続と、回転数の調節ができるようになっている。
【0027】
図3において、28は稲株であって、溝切機1は稲株28・28の間を車輪14が進行し、車輪14の轍を溝切部3の鋭角になった先端が通過するようになっている。
【0028】
作業者8は搭乗部4の保持部材21(グリップ22)の両端を手でつかみ、そして座面20にまたがり全体重を加える。その後保持部材21に装備された回転調整装置24を操作し、エンジン11の回転数を上げ車輪14を回転させ溝切機1を進行方向に向かって移動させる。本機の車輪の回転で進行すると同時に、溝切部3が水田の土壌内に深く入り込み図3の断面A-A詳細のように底面のあるV型の溝を形成する。溝切機1の車輪14と溝切部3は作業者8の自重によって深く土中にくい込み、車輪14とそれに装備されている滑り止め15は耕盤19まで達し、空転することなく溝切機を進行方向に導き、そして溝切部3の底板18が耕盤19に達するまでの深い溝を形成する。
【0029】
作業者8は車輪14が空転しそうな場合、搭乗部4の進行方向の前方に作業者8の重心を移動して車輪14に加わる重量を増し、また形成される溝の深さが足りない場合は、搭乗部4の後方に作業者8の重心を移動して溝切部3に加わる重量を増やすなどして、圃場の土の状態に応じて作業者8は搭乗部4の座面20の座る位置を移動すると良い。実験の結果から、駆動部2(前)と溝切部3(後)に加わる作業者8の前後重量配分は80対20から40対60の範囲がもっとも良好であった。
【0030】
なお、溝切機3の先端が車輪14の轍を分け入って走行するようになっているので、直進性が良くなると同時に、車輪14の走行跡を残さず溝切作業を行うことができる。
【実施例1】
【0031】
図4及び図5では、本発明の第1の実施の形態の溝切機について例示している。搭乗部4と連結フレームB7は支点A23で連結されていて、支点A23を中心に搭乗部4は進行方向に対して前方から後方にかけて垂直姿勢および水平姿勢に起倒可能(自在)としている。搭乗部4は支点A23を中心に前方から後方の垂直姿勢方向に持ち上げ、座面20が上方から下方に向くように回転させる。作業者8は溝切機1の進行方向の略後方に立ち、図5に示すようにグリップ22を作業者8が自然に把持できる位置まで回転できるようになっている。
【0032】
保持部材21(グリップ22)が本機の進行方向に対して前方に位置し、作業者8が本機に乗用しながら溝切作業を行おうとする場合、搭乗部4は支点A23を中心にまったく回転していない状態であって、この場合連結フレームB7と搭乗部4は隣接して上下ロック機構により固定されている。この上下ロック機構は容易に解除でき、しかも支点A23を中心に搭乗部4を進行方向に対して前方から後方へ、即ち水平姿勢から垂直姿勢の垂直方向に回転途中で任意の場所又は、作業者8がグリップ22を自然に保持しやすい場所に、この上下ロック機構によって支点A23の回転を固定できるようになっている(図示せず)。
【0033】
作業者8は溝切機1の搭乗部4の保持部材21が機体の前方に配置されていることと、上下ロック機構によって搭乗部4が支点A23によって垂直姿勢方向に回転しないことを確認し、搭乗部4の保持部材21(グリップ22)の両端を手でつかみ、そして座面20にまたがり全体重を加える。その後保持部材21に装備された回転調整装置24を操作し、エンジン11の回転数を上げ車輪14を回転させ溝切機1を進行方向に向かって移動させる。溝切機1は車輪14の回転で進行すると同時に、溝切部3が水田の土壌内に深く入り込み図3の断面A-A詳細のように底面のあるV型の溝を形成する。溝切機1の車輪14と溝切部3は作業者8の自重によって深く土中にくい込み、車輪14とそれに装備されている滑り止め15は耕盤19まで達し、空転することなく溝切機を進行方向に導き、そして溝切部3の底板18が耕盤19に達するまでの深い溝を形成する。
【0034】
しかしながら、強湿田と呼ばれる水田、又は同じ水田内であってもとても軟弱で耕盤19が深い場合又は耕盤19の存在しない水田においては作業者8の重量を車輪14及び溝切部3に加えることによって溝切機1自体が水田の土壌内に深く埋没してしまい走行または離脱が困難になってしまう場合がある。このような場合には作業者8は溝切機1の搭乗部4の座面20から降り、連結フレームBと搭乗部4を隣接して固定している上下ロック機構を解除し、支点A23を中心にして搭乗部4の保持部材21を垂直姿勢方向に持ち上げ、保持部材21を機体の後方に回転させる。そして作業者8が溝切機1を保持しやすい場所に保持部材21(グリップ22)を位置させ、上下ロック機構を操作し支点A23の回転を停止させ、接続フレームB7と搭乗部4を固定して作業者8が本機を保持できるようにする。
【0035】
作業者8は溝切機1の全長より進行方向に対し後方に位置し、保持部材21に設けられる回転調整装置24を調整し溝切機1の車輪14を回転させ進行方向に本機を移動させ、作業者8は本機に追従して歩行する。この場合、車輪14と溝切部4に加わる重量は本機の重量だけであるので、軟弱な地盤であっても走行及び溝切作業が可能であって、必要とするならば、作業者8自体が保持部材21を進行方向に押し、溝切機1に補助の動力を加えることも可能である。
【実施例2】
【0036】
図6及び図7では、本発明の第2の実施の形態の溝切機について例示している。搭乗部4と連結フレームB7は左右回転軸25で連結されていて、支点B26を中心として搭乗部4は平面状の水平方向に進行方向の前方から後方にかけて水平姿勢を維持しながら回転可能としている。搭乗部4は支点B26を中心に前方から後方に水平方向に回転するので水平姿勢を維持し、座面20が常に上方を向くようになっている(図6)。図7では左右回転軸25は地面に対して略90度の角度で連結フレームB7と接合されているので、保持部材21(グリップ22)の地面からの高さは、保持部材21が進行方向の前方、後方のどちらを向いても同じ高さとなっているが、連結フレームB7に接合される左右回転軸25が地面に対して90度より若干の前後範囲の角度を持って接合すると、保持部材21が前方と後方に向けたときの高さが変えられるので、作業者8が本機を保持するための保持部材21のグリップ22を乗用したときに持ちやすい高さと、自然に歩きながら溝切作業がしやすい高さにそれぞれ設定することができるので、この連結フレームB7と左右回転軸25の取付けは、若干の角度の調節ができるようになっていると良い(図示せず)。
【0037】
保持部材21(グリップ22)が溝切機1本体の前方に位置する溝切機1を作業者8が乗用して使用する場合、即ち搭乗部4が支点B26を中心にまったく回転していない状態において、連結フレームBに対して搭乗部4を回転させる左右回転軸25の回転を固定する左右ロック機構によって回転を防止している(図示せず)。この左右ロック機構は容易に解除でき、しかも支点B26を中心に搭乗部4を前方から後方の横回転途中で任意の場所にこの左右ロック機構によって左右回転軸25の回転を固定できるようになっている。
【0038】
作業者8は溝切機1の搭乗部4の保持部材21が機体の前方に配置されていることと、左右ロック機構によって搭乗部4が支点A23によって水平方向に回転しないことを確認し、搭乗部4の保持部材21のグリップ22の両端を把持し、そして座面20にまたがり全体重を加える。その後保持部材21に装備された回転調整装置24を操作し、エンジン11の回転数を上げ車輪14を回転させ溝切機1を進行方向に向かって移動させる。本機の車輪14の回転で進行すると同時に、溝切部3が水田の土壌内に深く入り込み図3の断面A-A詳細のように底面のあるV型の溝を形成する。溝切機1の車輪14と溝切部3は作業者8の自重によって深く土中にくい込み、車輪14とそれに装備されている滑り止め15は耕盤19まで達し、空転することなく溝切機を進行方向に導き、そして溝切部3の底板18が耕盤19に達するまでの深い溝を形成する。
【0039】
実施例1と同様に、強湿田と呼ばれる水田、又は同じ水田内であってもとても軟弱で耕盤19が深い場合又は耕盤19が存在しない水田においては作業者8の重量を車輪14及び溝切部3に加えることによって溝切機1自体が水田の土壌内に深く埋没してしまい走行または離脱が困難になってしまう場合がある。そこで、作業者8は溝切機1の搭乗部4の座面20から降り、連結フレームB7と搭乗部4の水平回転を固定している左右ロック機構を解除し、支点B26を中心にして搭乗部4の保持部材21を持ち、保持部材21を機体の後方へ水平姿勢を維持しながら水平方向に回転させる。そして作業者8が溝切機1を保持しやすい場所に保持部材21(グリップ22)を位置させ、左右ロック機構を操作し左右回転軸25の回転を固定させ、作業者8が本機を保持できるようにする。作業者8がこの実施例2を用いて追従歩行しながら溝切作業を行おうとする場合、搭乗部4を180度水平回転させた状態が作業しやすくなる。
【0040】
作業者8は溝切機1の全長より進行方向に対し後方に位置し、保持部材21に設けられる回転調整装置24を調整し溝切機1の車輪14を回転させ進行方向に本機を移動させる。この場合、車輪14と溝切部4に加わる重量は本機の重量だけであるので、軟弱な地盤であっても走行及び溝切作業が可能であって、必要とするならば、作業者8自体が保持部材21を進行方向に押し、溝切機1に補助の動力を加えることも可能である。
【実施例3】
【0041】
図8及び図9では、本発明の第3の実施の形態の溝切機について例示している。搭乗部4と連結フレームB7は連結ピン27で連結されていて、この連結ピン27を取り外すことによって連結フレームBと搭乗部4を容易に分離し、搭乗部4の保持部材21を進行方向とその対称方向に水平姿勢を保ちながら反転させてこの連結ピン27によって再度固定することができる。
【0042】
図8では連結ピン27を2本用いて連結フレームB7と搭乗部4を連結しているが、連結ピン27を1本での使用であっても良い。
【0043】
作業者8は溝切機1の搭乗部4の保持部材21が機体の前方に配置されていることと、連結ピン27で搭乗部4が連結フレームB7に固定されていることを確認し、搭乗部4の保持部材21(グリップ22)の両端を手でつかみ、そして座面20にまたがり全体重を加える。その後保持部材21に装備された回転調整装置24を操作し、エンジン11の回転数を上げ車輪14を回転させ溝切機1を進行方向に向かって移動させる。本機の車輪14の回転で進行すると同時に、溝切部3が水田の土壌内に深く入り込み図3の断面A-A詳細のように底面のあるV型の溝を形成する。溝切機1の車輪14と溝切部3は作業者8の自重によって深く土中にくい込み、車輪14とそれに装備されている滑り止め15は耕盤19まで達し、空転することなく溝切機を進行方向に導き、そして溝切部3の底板18が耕盤19に達するまでの深い溝を形成する。
【0044】
実施例1および実施例2と同様に、強湿田と呼ばれる水田、又は同じ水田内であってもとても軟弱で耕盤19が深い場所にある又は耕盤19が存在しない水田においては作業者8の重量を車輪14及び溝切部3に加えることによって溝切機1自体が水田の土壌内に深く埋没してしまい走行または離脱が困難になってしまう場合がある。そこで、作業者8は溝切機1の搭乗部4の座面20から降り、連結フレームB7と搭乗部4を連結している連結ピン27を取り外し、搭乗部4を連結フレームB7から分離する。そして保持部材21が進行方向の前方に位置している搭乗部4を対称方向に反転させ、保持部材21を後方に位置させて連結ピン27によって再度連結フレームB7と搭乗部4を連結する。
【0045】
作業者8は溝切機1の全長より進行方向に対し後方に位置し、保持部材21に設けられる回転調整装置24を調整し溝切機1の車輪14を回転させ進行方向に本機を移動させる。この場合、車輪14と溝切部4に加わる重量は本機の重量だけであるので、軟弱な地盤であっても走行及び溝切作業が可能であって、必要とするならば、作業者8自体が保持部材21を進行方向に押し、溝切機1に補助の動力を加えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
従来から水田においての溝切作業は、水田の潅水・落水を計画的に行なうことが出来ることから、稲の根の成長を促し倒伏しない丈夫で多収な稲を作るとこが周知されている。しかしながら、溝切作業自体が重労働であって低コスト・低労力を追求する現在の農法では取り入れがたい作業となっている。
【0047】
そこで、本発明では乗用式であっても軽量で人力によって簡単に移動でき、作業者の自重を利用して深い溝を容易に形成できる溝切装置を提供すると共に、強湿田と呼ばれる水田でも乗用式の溝切機を歩行用としても使用できるようになっているので、全ての水田において、根張り成長の著しい稲を生産出来るようにしたものである。
【0048】
根張りの良い稲とは、冷害・病害虫に強い健全な稲で、食味の良質な米となる可能性を飛躍的に向上させることになるので、品質の悪い米の流通を少しでも軽減することができると同時に、主食である米全体の食味及び品質の向上又は消費量の拡大を促し、日本農業の基礎体力を上げる働きもあると考える。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係わる溝切機の乗用作業状態を示す正面図である。
【図2】図1の実施における作業者の重心を示す平面図である。
【図3】図2の作業実施の平面詳細と溝切部の断面詳細を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施を示す溝切機の正面図である。
【図5】本発明の第1の作業実施を示す正面図である。
【図6】本発明の第2の実施を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施を示す正面図である。
【図8】本発明の第3の実施を示す平面図である。
【図9】本発明の第3の作業実施を示す正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 溝切機
2 駆動部
3 溝切部
4 搭乗部
5 フレーム
6 連結フレームA
7 連結フレームB
8 作業者
9 軸心
11 エンジン
12 動力伝達軸
13 ギアボックス
14 車輪
15 滑り止め
16 保護板
17 傾斜板
18 底板
19 耕盤
20 座面
21 保持部材
22 グリップ
23 支点A
24 回転調節装置
25 左右回転軸
26 支点B
27 連結ピン
28 稲株

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の進行方向に対して前方又は後方のいずれかに駆動部と溝切部を設け、作業者が搭乗する搭乗部と駆動部と溝切部が互いに連結され、作業者が搭乗部に搭乗して作業者の重量を利用して溝を形成できる溝切機であって、搭乗部には作業者が機体を保持する保持部材を一体に設けたことを特徴とする溝切機。
【請求項2】
機体の進行方向に対して前方又は後方のいずれかに駆動部と溝切部を設け、作業者が搭乗する搭乗部と駆動部と溝切部が互いに連結され、搭乗部は作業者の重心が駆動部の軸心から溝切部の外端までの範囲になるよう設けられていて、作業者が搭乗部に搭乗して作業者の重量を利用して溝を形成できる溝切機であって、搭乗部には作業者が機体を保持する保持部材を一体に設けたことを特徴とする溝切機。
【請求項3】
保持部材を設けた搭乗部は、駆動部と溝切部と搭乗部が互いに連結されたフレームの一部を支点として、機体の進行方向に対して垂直姿勢及び水平姿勢に起倒可能(自在)、もしくは水平姿勢を維持しながら回転可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溝切機。
【請求項4】
連結されたフレームの一部を支点として、機体の進行方向に対して垂直姿勢及び水平姿勢に起倒可能(自在)、もしくは水平姿勢を維持しながら回転可能である搭乗部は、作業者が機体の進行方向における全長より略後方に位置した場合、作業者は搭乗部を垂直姿勢及び水平姿勢に起倒(自在)、もしくは水平姿勢を維持しながら回転させ、作業者が保持部材を保持しやすい任意の位置に搭乗部を固定可能として、作業者が本機の略後方より追従歩行しながら溝切作業を行えることを特徴とする請求項3記載の溝切機。
【請求項5】
保持部材を設けた搭乗部は、駆動部と溝切部と搭乗部が互いに連結されたフレームから機体の進行方向に対して前後方向に反転して着脱可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溝切機。
【請求項6】
機体の進行方向に対して前後方向に反転して着脱可能な搭乗部は、作業者が機体の進行方向における全長より略後方に位置した場合、作業者は搭乗部をフレームから取り外し、進行方向に対して反転して装着し、作業者が保持部材を保持しやすい任意の位置に搭乗部を固定可能として、作業者が本機の略後方より追従歩行しながら溝切作業を行えることを特徴とする請求項5記載の溝切機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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