説明

溝加工床材

【課題】建築端材や、解体工事現場からの木質廃棄材をリサイクルして製造された木質板材を基材として利用し、合板を基材として得られた木質床材と略同等の品質、デザイン性を有する溝加工床材をコスト的に有利に提供する。
【解決手段】台板1の上に表面化粧層2を積層してなり、上記台板1は、MDF11層とチップボード12層とが複合して形成され、上層であるMDF11層の上に表面化粧層2が貼着され、該表面化粧層2には化粧溝3が刻設されるとともに、該化粧溝3がMDF11層内に形成されてなる溝加工床材A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は表面に溝加工された床材に関するものであり、詳しくは、台板と該台板に表面化粧材を貼着してなる床板本体に溝加工された床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅分野において、フローリング仕上げが施された木質系の床材は、掃除等の手入れが容易であり、また、シックハウス症候群の一因とされるダニの発生が抑制されるなどの利点を有することから、集合住宅を中心に急速にその使用が拡大している。
【0003】
しかしながら、木材資源の枯渇化が進み、無垢の木材の入手が困難となり、その価格も高騰しつつあるなかで、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード等、種々の木質基材に突き板等、表面化粧材を貼着し、表面が外観性よく、例えば、木目調にデザインされた木質床材が普及している。
【0004】
従来、木質床材の基材としては、合板が一般的に用いられてきたが、合板の原料となる種々の広葉樹、針葉樹、その他ラワン等の南洋材も品薄となり、価格が高騰しているため、近年は合板に替えて、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボードやOSBなどのチップボード等の種々の木質ボードを基材として用いることが行われている。
【0005】
例えば、特開2008−50896号公報には、基材に表面化粧材が積層されてなる木質床材の該表面化粧材に溝部が直線的に凹設され、上記溝部は基材に達するとともに、溝部の内部切削面に鱗片状顔料を含む下地処理剤が塗布され、さらに上記溝部を含む表面全体を着色塗料で仕上げ塗装してなる溝加工床材が提案されている。
【0006】
そして、溝部が基材に達し、基材の切削面への染み込みが大きい場合でも、鱗片状顔料を含む下地処理剤の塗布によって溝部と表面化粧材とが違和感なく、略同一の色調で着色、仕上げ塗装され、意匠性に優れた溝加工床材が得られると、その効果が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−50896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した種々の木質基材のうち、特に、合板は強度的に優れ、加工性も良いため、床材の基材として広く使用されている。しかしながら、木材資源の枯渇化や、品薄による価格高騰等が原因となり、床材の基板として上記合板を使用することがコスト的に困難となりつつある。
【0009】
本願発明は上記背景技術に鑑みて発明されたものであり、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボードやOSBなどのチップボード等、種々の木質ボードを基材として使用し、価格的に有利に、しかも、合板を基材として得られた木質床材と略同等の品質を有するとともに、デザイン性にも優れた溝加工床材を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る溝加工床材は、台板の上に表面化粧層を積層してなり、上記台板は、MDF層とチップボード層とが複合して形成され、上層であるMDF層の上に表面化粧層が貼着され、該表面化粧層には化粧溝が刻設されるとともに、該化粧溝がMDF層内まで形成されてなることを特徴としている。
【0011】
上記台板の上層として用いられるMDF(中密度繊維板)は、製材所から廃棄される鋸屑やオガ屑、家具工場から廃棄される材木加工屑、木造住宅の建築現場から廃棄物として出される建築端材等を高温、高圧状態で分解、処理して得られるウッドファイバーを接着剤と混合して熱圧したものである。
【0012】
上記台板の下層を構成するチップボードとしては、製材工場で廃棄される材木屑や樹皮、解体工事現場で廃棄される建築廃材等を細かく砕いてチップ状ないしはフレーク状とし、合成樹脂と共に板材に成形して得られるパーティクルボード、あるいはストランドと呼ばれる薄く細長い木片に方向性を与えて直交させ、接着剤で圧縮成形して得られるOSB(配向性ボード)などが用いられる。
【0013】
上記表面化粧層として用いられる表面化粧材としては、例えば、オーク材、バーチ材、チェリー材、メープル材、ケヤキ材、松材等の突き板をあげることができる。
【0014】
また、突き板に加えて、強化紙やフィルムに加工されたプラスチックシートの表面にケヤキ材等、天然木の木目模様がデザインされたものも用いられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種シートの表面に木目模様がデザインされた表面化粧材が、広く用いられる。
【0015】
本願請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の溝加工床材において、上記MDFの厚みを0.5〜6.0mmとして、チップボードの厚みを2.5〜15mmとするとともに、チップボードの厚みがMDFの厚みよりも大なることを特徴としている。
【0016】
ここで、上記台板を構成するMDF層の上に表面化粧材が貼着されているが、この表面化粧材に刻設される溝部の深さは、底部がMDF層内でとどまり、チップボード層に到達しないように加工される。
【発明の効果】
【0017】
本願請求項1記載の発明にかかる床材においては、台板の上に表面化粧層を積層してなり、上記台板は、MDF層とチップボード層とが複合して形成され、MDF層が上層に配設されているため、表面側を緻密で硬質に構成することができる。そして、耐キャスター性に優れた床面を有する溝加工床材を製造することができる。
【0018】
上記台板の下層を構成するチップボードは、比較的安価に入手できるため、MDF層とチップボード層とを複合させることにより木材資源をリサイクル使用し、コスト的に有利に台板を製造することができる。また、木目模様の床材表面にV字溝が直線的に凹設され、デザイン的にも優れた溝加工床材を簡単な工程で効率的に得ることができる。
【0019】
更に、化粧溝の最深部がMDF層内に形成されているから化粧溝内面がきれいに仕上がる。
【0020】
本願請求項2記載の発明にかかる床材においては、上記MDF層の厚みを0.5〜6.0mmとし、チップボード層の厚みを2.5〜15mmとして、チップボード層の厚みがMDF層の厚みよりも大きくされているため、表面の粗いチップボード層が下層に配設されて隠れ、外観的に問題のない溝加工床材とすることができる。また、安価なチップボードの使用量比を増すことにより、材料コストを下げて溝加工床材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明にかかる溝加工床材を示す部分断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明にかかる溝加工床材の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本願発明にかかる溝加工床材Aの一実施形態を示す部分断面斜視図である。図1に示すように、上記溝加工床材Aは、木目が長手方向に流れるようにデザインされた表面化粧層2としての表面化粧シートが台板1の上に貼着されている。そして、その表面には化粧溝3が刻設されている。
【0023】
すなわち、図1に示すように、上記台板1は、MDF11とチップボード12とが複合、一体化されてなり、上記MDF11層の上に表面化粧層2として表面化粧シートが貼着されるとともに、表面化粧層2からMDF11層にかけて化粧溝3が刻設されている。
【0024】
ここで、上記台板1を構成するMDF11の厚みaは0.5〜6.0mmの範囲であり、チップボード12の厚みbは2.5〜15mmの範囲であり、チップボードの厚みbがMDFの厚みaよりも大であるとともに、両者は公知の接着剤で接着して複合、一体化される。また、化粧溝3は、その最深部がMDF11層内でとどまり、チップボード12層に到達しないように、例えば、V字溝加工機で切削深さを調節して刻設される。図示するように、化粧溝3がV字溝であるとき、V字の角度αは、60〜120°とされるのが好ましい。
【0025】
つぎに、本願発明にかかる溝加工床材Aを製造する方法を実施例により具体的に説明する。
【0026】
(実施例)
厚みaが5mmであるホクシン(株)製、定尺(3尺×6尺)のMDF11を上層とし、厚みbが10mmである日本ノバポン工業(株)製、定尺(3尺×6尺)のパーティクルボードをチップボード12層として下層に配設し、水性ビニルウレタン系接着剤を用いて接着した。このとき、プレス圧力を約8kgf/cm2とし、常温で約10分間上記圧力を保持してMDF11層とチップボード12層とを一体的に接着して台板1を形成した。
【0027】
上記MDF11層の上に表面化粧層2としての表面化粧シートを同じく水性ビニルウレタン系接着剤を用いて接着し、表面が木目模様にデザインされた床材本体を得た。さらに上記床材本体の表面をV字溝加工機で切削加工して底部の角度αが約60°であるV字溝3を設けた。
【0028】
V字溝3の内面はMDF11の切削面であるが、MDF11は、ウッドファイバーを接着剤と混合して熱圧された中密度のものであるため、切削面は密であり、また、色のバラツキもなく、露出した切削面の意匠性は良好であった。
【0029】
また、表面化粧層2からMDF11層にかけて切削されたV字溝3は、その深さを約0.7mmとして、化粧溝3がMDF11層内でとどまるように調節された。
【0030】
ついで、表面化粧層2の表面を、アミノアルキド樹脂系、ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系、イソシアネート系等の熱硬化性樹脂塗料を単独で、あるいは任意変性した熱硬化性樹脂塗料を用いて木目柄を活かすように塗装した後、加熱、乾燥し、本願発明にかかる溝加工床材Aを得た。
【0031】
上記した方法で形成された溝加工床材Aは、密度が1立方メートル当たり350kg以上800kg未満であるMDF11層が上層に配設されているため表面側は緻密で硬質に構成され、床面の耐キャスター性は向上したものとなる。また、上記のように熱硬化性樹脂塗料で表面塗装することにより、床面は硬質塗料膜で保護されて耐衝撃性にも優れたものとなり、キャスター付きの椅子を移動させても、あるいは、食器類を誤って床面に落としても表面が傷付きにくい、平滑な床面を保持することが可能となる。
【0032】
一方、下層であるチップボード12層は、比較的安価に入手できるため、MDF11層とチップボード12層とを複合させることによりコスト的に有利に台板1を製造することができる。さらに、木目模様の床材表面にはV字溝3が直線的に凹設されているため、デザイン的にもシャープで優れたものとなり、かくして、コスト的に有利に、かつ、木材資源をリサイクル使用して木質の溝加工床材Aを製造することができる。
【0033】
なお、上記した実施形態は、チップボード12層として、パーティクルボードを用いた場合について述べたが、OSB(配向性ボード)を用いてもよい。さらに、他の種類のチップボード12を用いてもよく、このように本願発明に係る溝加工床材Aは設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0034】
A 本願発明にかかる溝加工床材
a MDFの厚み
b チップボードの厚み
α V字溝の角度
1 台板
11 MDF(中密度繊維板)
12 チップボード
2 表面化粧層
3 V字溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台板の上に表面化粧層を積層してなり、上記台板は、MDF層とチップボード層とが複合して形成され、上層であるMDF層の上に表面化粧層が貼着され、該表面化粧層には化粧溝が刻設されるとともに、該化粧溝がMDF層内に形成されてなる溝加工床材。
【請求項2】
上記MDF層の厚みを0.5〜6.0mmとして、チップボード層の厚みを2.5〜15mmとするとともに、チップボード層の厚みがMDF層の厚みよりも大きくされた請求項1に記載の溝加工床材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−6883(P2011−6883A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150393(P2009−150393)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】