説明

溝蓋

【課題】排水溝をせき止めるための作業負担を軽減しながら、排水溝を素早くせき止めることが可能な溝蓋を提供する。
【解決手段】この溝蓋では、係止解除部7を操作することにより係止部6による堰板2の係止が解除されるとともに、堰板2が付勢部5の付勢力により第1位置から第2位置へ回動し、排水溝100内をせき止める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水溝の上部を覆う溝蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排水溝の上部を覆う溝蓋が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された溝蓋は、格子状に形成されており、その格子間の空間を通じて雨水等が排水溝内に排水されるようになっている。
【特許文献1】特開平10−96257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
石油コンビナートや薬品処理工場等の種々の薬品等が取り扱われる場所では、雨水用の排水溝にそのような薬品等が流れ込む場合がある。この場合、排水溝をせき止めてその薬品等が外部に流出するのを防ぐ必要があり、上記特許文献1に開示された構造では、排水溝から溝蓋を取り外すとともに、別途準備した堰板を排水溝内に落とし込むことにより排水溝をせき止めて薬品等の流出を防ぐことが考えられる。しかしながら、この場合には、溝蓋を取り外した後、別途準備した堰板を持ち上げて排水溝内に落とし込むという煩雑な作業が必要となり、作業者の負担が大きくなるという問題点がある。
【0005】
なお、特開2000−290975号公報には、側溝内を流れる水をせき止めることによりその水位を上昇させるとともに枝溝へ流れる水量を増加させることを目的として、溝蓋の下面側に堰板が設けられ、その堰板に接続されたワイヤを巻き取りドラムで巻き取り又は巻き戻すことにより堰板を上下に回動させて、側溝内の水流に干渉しない位置と側溝内の水流をせき止める位置とに堰板を移動させるようにした構造が開示されている。このような堰板の構造を上記の薬品等の流出防止のために用いることも考えられなくはないが、堰板を降ろすために巻き取りドラムの回転操作を開始してから実際に排水溝が堰板でせき止められるまでに時間が掛かり、排水溝に流れ込んだ薬品等が外部へ流出するまでに素早く排水溝をせき止めることが困難である。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、排水溝をせき止めるための作業負担を軽減しながら、排水溝を素早くせき止めることが可能な溝蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による溝蓋は、排水溝の上部を覆う溝蓋本体と、前記溝蓋本体に近接した第1位置と、前記排水溝の長手方向に対して交差するとともに前記排水溝内をせき止める第2位置との間で前記排水溝の幅方向に延びる軸を中心として回動可能に設けられた堰板と、前記堰板と前記溝蓋本体との間に設けられ、前記堰板を前記第2位置側へ付勢する付勢手段と、前記堰板を前記第1位置で前記溝蓋本体に対して係止する係止部と、前記係止部による係止を解除するための係止解除部とを備えている。そして、前記係止解除部を操作することにより前記係止部による係止が解除されるとともに、前記堰板が前記付勢手段の付勢力により前記第1位置から前記第2位置へ回動し、前記排水溝内をせき止める。なお、前記付勢手段としては、種々のバネ部材の付勢力(弾性力)を利用したものや前記堰板に重りを設けてその重量で付勢するもの等の多様な形態のものが用いられる。
【0008】
この溝蓋では、係止解除部を操作するだけで、係止部による係止が解除されて堰板が第1位置から第2位置へ回動するとともに排水溝内をせき止めるので、溝蓋を取り外す作業や堰板を持ち上げて排水溝内に落とし込む作業を行う必要がなく、排水溝内をせき止めるための作業負担を軽減することができる。さらに、この溝蓋では、排水溝内をせき止める際、付勢手段の付勢力により堰板が第1位置から第2位置へ回動するので、巻き取りドラムを回転操作して堰板を巻き下ろすことにより第1位置から第2位置へ回動させる場合に比べて堰板を素早く第2位置側へ回動させて排水溝内を素早くせき止めることができる。また、付勢手段の付勢力により堰板を第1位置から第2位置へ回動させることによって、堰板を排水溝内に降ろす際に流体からの抵抗力や排水溝の内壁面から受ける摩擦力がある場合でも、そのような抵抗力に負けることなく堰板を第2位置へ確実に回動させることができる。さらに、堰板が第2位置へ回動した後は、付勢手段の付勢力により堰板を排水溝内の底面に押圧して密着させることができるので、堰板の浮き上がりを抑止して薬品等の流出を確実に防止することができる。
【0009】
上記溝蓋において、前記係止部は、前記溝蓋本体と前記堰板との間に設けられ、前記第1位置にある堰板を前記溝蓋本体と連結する係止状態と、前記堰板を前記溝蓋本体から切り離す係止解除状態とに切り換え可能であり、前記係止解除部は、前記溝蓋本体の上面近傍に設けられ、前記係止解除部の操作時に把持される操作部と、前記操作部の操作に連動して前記係止部を前記係止状態から前記係止解除状態に切り換える連動部とを含むのが好ましい。このように構成すれば、溝蓋本体の上から係止解除部の操作部を操作して係止部を係止状態から係止解除状態に切り換えることができるので、溝蓋本体を取り外すことなく第1位置にある堰板の係止を容易に解除して第2位置側へ回動させることができる。
【0010】
この場合において、前記係止部は、前記溝蓋本体の下面側に設けられ、本体側係合部を有する本体側係止部材と、前記堰板側に設けられ、前記本体側係合部と係合可能な堰板側係合部を有し、前記堰板が前記第1位置にある状態で前記堰板側係合部が前記本体側係合部と係合する係止位置と前記堰板側係合部が前記本体側係合部から離脱する係止解除位置との間で移動可能となるように前記堰板に取り付けられる堰板側係止部材と、前記堰板側係合部を前記係止位置側に付勢する係止用付勢手段とを含み、前記連動部は、前記操作部の操作に連動して前記堰板側係合部を前記係止用付勢手段の付勢力に抗して前記係止解除位置側に移動させ、かつ、この係止解除位置にある堰板側係合部と離間可能である連動部材を含むのが好ましい。このように構成すれば、溝蓋本体の上から係止解除部の操作部を操作して係止部を係止状態から係止解除状態に切り換えることが可能な構造を構成することができる。
【0011】
さらにこの場合において、前記堰板側係合部は、前記第2位置から前記第1位置へ前記堰板が上昇する際に前記本体側係止部材と当接することにより前記係止用付勢手段の付勢力に抗して前記係止解除位置側に移動し、その後に前記係止用付勢手段の付勢力によって前記本体側係合部と係合する形状を有するのが好ましい。このように構成すれば、堰板を第2位置から第1位置へ上昇させるのと同時に堰板側係合部が本体側係合部と係合して堰板が第1位置で係止されるので、別途堰板係合部を本体側係合部に係合させる作業を省くことができる。このため、堰板を第1位置で係止する際の作業を簡略化することができる。
【0012】
上記溝蓋において、前記堰板は、その周縁部に設けられたシール材を有し、前記シール材は、前記堰板が前記第2位置にあるときに前記排水溝の内壁面と密着するのが好ましい。このように構成すれば、堰板が前記第2位置にあるときにシール材により堰板の周縁部と排水溝の内壁面との間に隙間が生じるのを抑制することができるので、排水溝内をより確実にせき止めることができる。
【0013】
上記溝蓋において、前記堰板と前記溝蓋本体との間を繋ぐように設けられ、前記第2位置にある前記堰板を前記第1位置側へ引き上げるための引上げ手段をさらに備え、前記引上げ手段には、前記堰板の引き上げ時に鈎棒で引掛けるための複数の引掛け部が長手方向に沿って設けられているのが好ましい。このように構成すれば、堰板の引き上げ時に作業者が引き上げやすい位置の引掛け部に鈎棒を引掛けて堰板を第2位置から第1位置へ引き上げることができる。これにより、堰板の第2位置から第1位置への引き上げ作業を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明による溝蓋では、排水溝をせき止めるための作業負担を軽減しながら、排水溝を素早くせき止めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による溝蓋の構成を示した上面図である。図2は、図1に示した溝蓋のII−II線に沿った断面図であり、図3は、図1に示した溝蓋のIII−III線に沿った断面図である。図4及び図5は、溝蓋において堰板2が排水溝100内で流体をせき止める位置に配置された状態を示した図2及び図3にそれぞれに対応する断面図である。まず、図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態による溝蓋の構成について説明する。
【0017】
本実施形態による溝蓋は、コンテナヤード、石油コンビナート又は薬品処理工場等における排水溝100の上部を覆うものである。この溝蓋は、図1に示すように、溝蓋本体1と、堰板2と、支持アングル3と、一対の蝶番4と、一対の付勢部5(付勢手段)と、係止部6と、係止解除部7と、引上げ用鎖部8(引上げ手段)とを備えている。本実施形態による溝蓋は、上記の工場等において石油や各種薬品等が排水溝100内に流れ込んだときに、堰板2で排水溝100内をせき止めて上記薬品等が外部へ流出するのを抑止する機能を有している。
【0018】
上記溝蓋本体1は、金属製であり、格子状に形成されている。これにより、溝蓋本体1の格子間の空間を通って雨水等が排水溝へ排水されるようになっている。
【0019】
上記堰板2は、溝蓋本体1の下側に設けられており、金属板2aとシール材2bとからなる。この堰板2は、図3及び図5に示すように排水溝100と同等の幅を有しており、その幅方向の両端部が排水溝100の内壁面に接触している。そして、堰板2は、溝蓋本体1に平行に配置されるとともに溝蓋本体1に近接した第1位置(図2参照)と、排水溝100の長手方向に対して交差するとともにその排水溝100内をせき止める第2位置(図4参照)との間で排水溝100の幅方向に延びる後述する蝶番4の軸部4cを中心として回動可能に設けられている。なお、上記第1位置は、堰板2が排水溝100内の排水と干渉しない位置であり、堰板2は通常はこの第1位置で保持される。また、上記第2位置では、堰板2の周縁部が排水溝100の内壁面に当接して排水溝100を遮断し、排水溝100内に流れ込んだ上記薬品等がせき止められる。
【0020】
堰板2の金属板2aは、略長方形に形成された平板状の板体である。また、シール材2bは、ゴム製であり、金属板2aの周縁部に沿って取り付けられている。このシール材2bは、堰板2が上記第2位置に配置されたときに排水溝100の内壁面と密着することにより、堰板2の周縁部と排水溝100の内壁面との間に隙間が生じるのを抑制するために設けられている。
【0021】
上記支持アングル3は、断面L字状のアングルであり、堰板2及び付勢部5を支持するためのものである。この支持アングル3は、溝蓋本体1の下面に固定されており、排水溝100の幅方向に沿って延びている。
【0022】
上記一対の蝶番4は、堰板2の幅方向に所定間隔で配置されているとともに、堰板2の長手方向の一方の端部と上記支持アングル3とを連結している。また、一対の蝶番4は、取付板4a及び4bと軸部4cとをそれぞれ有しており、この取付板4aと取付板4bとが軸部4cを介して連結されている。そして、一方の取付板4aは、他方の取付板4bに対して軸部4cを中心として回動自在に構成されている。また、一方の取付板4aは堰板2の金属板2aの長手方向の一方の端部に取り付けられているとともに、他方の取付板4bは支持アングル3の側面に取り付けられており、軸部4cは排水溝100の幅方向に沿って延びている。この構成により、堰板2が蝶番4の軸部4cを中心として上下に回動可能となっている。
【0023】
上記一対の付勢部5は、溝蓋本体1と堰板2との間に設けられており、堰板2の幅方向に所定の間隔を隔てて設けられている。この一対の付勢部5は、堰板2を上記第2位置側へ付勢する機能を有する。また、一対の付勢部5は、付勢部本体5aと、支持アングル取付部5bと、アーム部5cと、堰板取付部5dとをそれぞれ含んでいる。支持アングル取付部5bは、支持アングル3の側面に固定されているとともに、付勢部本体5aの一方端側と排水溝100の幅方向に延びる軸を中心として回動可能に結合している。アーム部5cは、その一方端側が付勢部本体5aの他方端側と排水溝100の幅方向に延びる軸を中心として回動可能に結合している。堰板取付部5dは、堰板2の金属板2aの上面に取り付けられており、この堰板取付部5dとアーム部5cの付勢部本体5aと反対側の端部とが排水溝100の幅方向に延びる軸を中心として回動可能に結合している。
【0024】
また、付勢部本体5aは、コイルバネ(図示せず)を内蔵しており、そのコイルバネの付勢力によってアーム部5cが図2中の矢印A方向へ付勢されている。すなわち、堰板2が図2に示す第1位置にあるとき、アーム部5cは付勢部本体5aに沿うように折畳まれており、その状態からアーム部5cはコイルバネによって矢印A方向に回動する方向に付勢されている。そして、本実施形態では、このコイルバネの付勢力を利用してアーム部5cと堰板取付部5dを介して連結された堰板2を図2に示す第1位置から図4に示す第2位置側へ付勢している。そして、堰板2が図4に示す第2位置に回動した後は、上記コイルバネの付勢力により堰板2の周縁部が排水溝100の底面に押圧されて密着される。
【0025】
上記係止部6は、堰板2が上記第1位置にある状態において溝蓋本体1と堰板2との間に設けられるとともに、堰板2の上記蝶番4と反対側の端部近傍に設けられる。この係止部6は、上記第1位置にある堰板2を溝蓋本体1と連結する係止状態と、堰板2を溝蓋本体1から切り離す係止解除状態とに切り換え可能に構成されている。係止部6は、具体的には、ラッチ受部6a(本体側係止部材)と、ラッチ機構部6b(堰板側係止部材)とを含んでいる。
【0026】
ラッチ受部6aは、溝蓋本体1の下面に取り付けられている。このラッチ受部6aは、断面略L字状の部材であり、溝蓋本体1の下面に取り付けられた部分と、その部分から下方へ垂直に延設された部分とからなる。そして、この下方へ延設された部分に排水溝100の長手方向に貫通する穴部6c(本体側係合部)が設けられている。
【0027】
ラッチ機構部6bは、堰板2側に設けられており、ラッチ機構本体6dと、ラッチ部6e(堰板側係合部)と、図示しないバネ部材(係止用付勢手段)とを有している。ラッチ機構本体6dは、堰板2の金属板2aの上面に取り付けられている。このラッチ機構本体6dには、堰板2の長手方向に貫通する貫通孔(図示せず)が設けられている。また、ラッチ機構本体6dの上部には、上記引上げ用鎖部8が連結される環状の連結部6fが設けられている。
【0028】
ラッチ部6eは、上記ラッチ機構本体6dの貫通孔(図示せず)に挿通されている。そして、ラッチ機構本体6dでは、堰板2が上記第1位置にある状態でラッチ部6eの一方端側がラッチ受部6aの穴部6cと係合する係止位置とラッチ受部6aの穴部6cから離脱する係止解除位置との間でラッチ部6eが移動可能となるように構成されている。また、上記の図示しないバネ部材がラッチ機構本体6dに内蔵されており、このバネ部材によってラッチ部6eが上記係止位置側に付勢されている。そして、ラッチ部6eが上記係止位置においてラッチ受部6aの穴部6cと係合することによって係止部6が上記係止状態となる一方、ラッチ部6eが上記係止解除位置においてラッチ受部6aの穴部6cと離脱することによって係止部6が上記係止解除状態となるように構成されている。
【0029】
また、ラッチ部6eの上記穴部6cと係合する側の端部は、上方へ行くに連れて係止解除位置側へ傾斜する斜面形状を有している。この端部の斜面形状により、第2位置から第1位置へ堰板2を上昇させる際にラッチ部6eの端部がラッチ受部6aの下端部と当接することによってラッチ部6eが上記バネ部材(図示せず)の付勢力に抗して係止解除位置側に移動し、その後にバネ部材(図示せず)の付勢力によってラッチ受部6aの穴部6cと係合する。また、ラッチ部6eの穴部6cと係合する側と反対側の端部には、上方に隆起するとともに円環状に形成された円環部6gが設けられている。
【0030】
上記係止解除部7は、上記係止部6による係止を解除するためのものである。この係止解除部7は、係止解除部7の操作時に把持される操作部7aと、その操作部7aの操作に連動して上記係止部6を係止状態から係止解除状態に切り換える連動部7b(連動部材)とを含んでいる。連動部7bは、細長い板状に形成されており、溝蓋本体1の下面側から溝蓋本体1の格子間の空間を通って上方へ延びている。そして、堰板2が上記第1位置(図2参照)にあるとき、連動部7bの下端部はラッチ部6eの円環部6gのラッチ受部6a側の側面に当接する。操作部7aは、連動部7bの溝蓋本体1の上面側に一体に設けられており、溝蓋本体1の上面近傍に配置されている。
【0031】
また、係止解除部7は、溝蓋本体1に設けられた保持部材1aによって保持されている。保持部材1aは、上方から見てコ字状に形成された部材であり、その両端部が溝蓋本体1を構成する格子の側面に取り付けられている。そして、係止解除部7の連動部7bが、保持部材1aと溝蓋本体1の格子とで囲まれた空間に上方から挿入されている。
【0032】
そして、係止解除部7の操作部7aの幅は、保持部材1aの幅よりも大きく、この操作部7aが保持部材1aの上端部で係止されるよって係止解除部7が保持部材1aに保持されている。また、保持部材1aの内部には、溝蓋本体1(排水溝100)の幅方向に延びる軸部1bが設けられており、この軸部1bを支点として係止解除部7が揺動可能となっている。
【0033】
このような構成により、堰板2が上記第1位置にあるときに係止解除部7の操作部7aを図2中の矢印B方向へ操作することに連動して、連動部7bの下端部が矢印C方向へ移動する。これにより、連動部7bの下端部が円環部6gを押すことによって、ラッチ部6eをラッチ機構本体6dに内蔵された上記バネ部材(図示せず)の付勢力に抗して係止解除位置側に移動させ、係止部6による堰板2の係止が解除される。その結果、係止解除部7の連動部7bとラッチ部6eとが離間するとともに、堰板2が上記第1位置から上記第2位置側へ回動する。
【0034】
上記引上げ用鎖部8の一方端側は、ラッチ機構本体6dの連結部6fに連結されているとともに、他方端側は、溝蓋本体1にシャックル8aを介して連結されている。すなわち、この引上げ用鎖部8は、ラッチ機構本体6d及びシャックル8aを介して堰板2と溝蓋本体1とを繋いでいる。そして、この引上げ用鎖部8は、上記第2位置(図4参照)にある堰板2を上記第1位置(図2参照)側へ引上げるのに用いられるものである。具体的には、この引上げ用鎖部8は、その長手方向に沿って複数の金属環8bが連結されることによって構成されており、これら複数の金属環8bはそれぞれ堰板2の引き上げ時に鈎棒で引掛けるための引掛け部として機能する。そして、堰板2の引き上げ時には、作業者が引き上げやすい位置の金属環8bに鈎棒を引掛けて堰板2を引上げることが可能となっている。
【0035】
以上のように、本実施形態による溝蓋では、係止解除部7の操作部7aを操作するだけで、係止部6のラッチ部6eとラッチ受部6aとの係合が解除されて堰板2が第1位置から第2位置へ回動するとともに排水溝100内をせき止めるので、溝蓋を取り外す作業や堰板を持ち上げて排水溝内に落とし込む作業を行う必要がなく、排水溝100内をせき止めるための作業負担を軽減することができる。
【0036】
さらに、本実施形態による溝蓋では、排水溝100内をせき止める際、付勢部5の付勢力により堰板2が第1位置から第2位置へ回動するので、巻き取りドラムを回転操作して堰板を巻き下ろすことにより第1位置から第2位置へ回動させる場合に比べて堰板2を素早く第2位置側へ回動させて排水溝100内を素早くせき止めることができる。
【0037】
また、本実施形態による溝蓋では、付勢部5の付勢力により堰板2を第1位置から第2位置へ回動させることによって、堰板2を排水溝100内に降ろす際に流体からの抵抗力や排水溝100の内壁面から受ける摩擦力がある場合でも、そのような抵抗力に負けることなく堰板2を第2位置へ確実に回動させることができる。さらに、堰板2が第2位置へ回動した後は、付勢部5の付勢力により堰板2を排水溝100内の底面に押圧して密着させることができるので、堰板2の浮き上がりを抑止して薬品等の流出を確実に防止することができる。
【0038】
また、本実施形態による溝蓋では、溝蓋本体1の上面近傍に設けられる操作部7aを操作することにより、その操作に連動する連動部7bの下端部によってラッチ部6eが押されて係止位置から係止解除位置へ移動するので、溝蓋本体1の上からの操作によりラッチ部6eを係止位置から係止解除位置へ移動させることができる。これにより、溝蓋本体1を取り外すことなく第1位置にある堰板2の係止を容易に解除して第2位置側へ回動させることができる。
【0039】
また、本実施形態による溝蓋では、ラッチ部6eのラッチ受部6a側の端部が、第2位置から第1位置へ堰板2が上昇する際にラッチ受部6aの下端部と当接することによりバネ部材の付勢力に抗して係止解除位置側に移動し、その後にバネ部材の付勢力によってラッチ受部6aの穴部6cと係合する斜面形状を有するので、堰板2を第2位置から第1位置へ上昇させるのと同時にラッチ受部6aの穴部6cがラッチ部6eと係合して堰板2が第1位置で係止される。これにより、別途ラッチ部6eを穴部6cに係合させる作業を省くことができるので、堰板2を第1位置で係止する作業を簡略化することができる。
【0040】
また、本実施形態による溝蓋では、堰板2の周縁部に設けられたシール材2bが堰板2が第2位置にあるときに排水溝100の内壁面と密着するので、シール材2bにより堰板2の周縁部と排水溝100の内壁面との間に隙間が生じるのを抑制することができる。これにより、排水溝100内をより確実にせき止めることができる。
【0041】
また、本実施形態による溝蓋では、堰板2と溝蓋本体1との間を繋ぐように設けられた引上げ用鎖部8において、堰板2の引き上げ時に鈎棒で引掛けるための複数の金属環8bが長手方向に沿って設けられているので、堰板2の引き上げ時には作業者が引き上げやすい位置の金属環8bに鈎棒を引掛けて堰板2を第2位置から第1位置へ引き上げることができる。これにより、堰板2の第2位置から第1位置への引き上げ作業を容易にすることができる。
【0042】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0043】
例えば、上記実施形態では、堰板2を排水溝100内をせき止める第2位置側へ付勢するための付勢手段として、コイルバネの付勢力により堰板2を付勢する付勢部5を用いたが、これに限らず、堰板2を上記第2位置側へ付勢するのに上記以外の構成の付勢手段を用いてもよい。例えば、上記実施形態による付勢部5の代わりに支持アングル3の側面から堰板2の金属板2aの上面へ跨るように設けた板バネ部材を付勢手段として用いてもよい。この板バネ部材は、堰板2が図2に示す第1位置にあるときに屈曲するように設置し、この屈曲した板バネ部材の弾性力を利用して堰板2を上記第2位置側へ付勢する。また、他の付勢手段の構成として、堰板2の係止部6側の端部近傍に重りを設け、その重りの重量を利用して堰板2を上記第2位置側へ付勢するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態による溝蓋の全体構成を示した上面図である。
【図2】図1に示した溝蓋のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1に示した溝蓋のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】溝蓋において堰板が排水溝内で流体をせき止める位置に配置された状態を示した図2に対応する断面図である。
【図5】溝蓋において堰板が排水溝内で流体をせき止める位置に配置された状態を示した図3に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0045】
100 排水溝
1 溝蓋本体
2 堰板
2b シール材
5 付勢部(付勢手段)
6 係止部
6a ラッチ受部(本体側係止部材)
6b ラッチ機構部(堰板側係止部材)
6c 穴部(本体側係合部)
6e ラッチ部(堰板側係合部)
7 係止解除部
7a 操作部
7b 連動部(連動部材)
8 引上げ用鎖部(引上げ手段)
8b 金属環(引掛け部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水溝の上部を覆う溝蓋本体と、
前記溝蓋本体に近接した第1位置と、前記排水溝の長手方向に対して交差するとともに前記排水溝内をせき止める第2位置との間で前記排水溝の幅方向に延びる軸を中心として回動可能に設けられた堰板と、
前記堰板と前記溝蓋本体との間に設けられ、前記堰板を前記第2位置側へ付勢する付勢手段と、
前記堰板を前記第1位置で前記溝蓋本体に対して係止する係止部と、
前記係止部による係止を解除するための係止解除部とを備え、
前記係止解除部を操作することにより前記係止部による係止が解除されるとともに、前記堰板が前記付勢手段の付勢力により前記第1位置から前記第2位置へ回動し、前記排水溝内をせき止める、溝蓋。
【請求項2】
前記係止部は、前記溝蓋本体と前記堰板との間に設けられ、前記第1位置にある堰板を前記溝蓋本体と連結する係止状態と、前記堰板を前記溝蓋本体から切り離す係止解除状態とに切り換え可能であり、
前記係止解除部は、前記溝蓋本体の上面近傍に設けられ、前記係止解除部の操作時に把持される操作部と、前記操作部の操作に連動して前記係止部を前記係止状態から前記係止解除状態に切り換える連動部とを含む、請求項1に記載の溝蓋。
【請求項3】
前記係止部は、
前記溝蓋本体の下面側に設けられ、本体側係合部を有する本体側係止部材と、
前記堰板側に設けられ、前記本体側係合部と係合可能な堰板側係合部を有し、前記堰板が前記第1位置にある状態で前記堰板側係合部が前記本体側係合部と係合する係止位置と前記堰板側係合部が前記本体側係合部から離脱する係止解除位置との間で移動可能となるように前記堰板に取り付けられる堰板側係止部材と、
前記堰板側係合部を前記係止位置側に付勢する係止用付勢手段とを含み、
前記連動部は、前記操作部の操作に連動して前記堰板側係合部を前記係止用付勢手段の付勢力に抗して前記係止解除位置側に移動させ、かつ、この係止解除位置にある堰板側係合部と離間可能である連動部材を含む、請求項2に記載の溝蓋。
【請求項4】
前記堰板側係合部は、前記第2位置から前記第1位置へ前記堰板が上昇する際に前記本体側係止部材と当接することにより前記係止用付勢手段の付勢力に抗して前記係止解除位置側に移動し、その後に前記係止用付勢手段の付勢力によって前記本体側係合部と係合する形状を有する、請求項3に記載の溝蓋。
【請求項5】
前記堰板は、その周縁部に設けられたシール材を有し、
前記シール材は、前記堰板が前記第2位置にあるときに前記排水溝の内壁面と密着する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溝蓋。
【請求項6】
前記堰板と前記溝蓋本体との間を繋ぐように設けられ、前記第2位置にある前記堰板を前記第1位置側へ引き上げるための引上げ手段をさらに備え、
前記引上げ手段には、前記堰板の引き上げ時に鈎棒で引掛けるための複数の引掛け部が長手方向に沿って設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の溝蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−25102(P2008−25102A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195305(P2006−195305)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】