説明

溶接を用いた塗装金属部品の製造方法

【課題】安価にして製造容易で、溶接箇所の錆防止効果に優れた溶接を用いた塗装金属部品の製造方法を提供する。
【解決手段】金属製の箱2と金属製のヒンジ5とを抵抗溶接する。箱2及び蓋4の溶接箇所と対応するヒンジ5の溶接箇所に導電性塗料を塗布した後、それらの溶接箇所を合わせ、それら箱2及び蓋4とヒンジ5の未塗装部分に抵抗溶接の電極を当てて通電し、導電性塗料を介して両溶接箇所を溶接する。この後、それら箱2及び蓋4とヒンジ5の未塗装部分を塗装する。箱2とヒンジ5との溶接箇所に、雨水や潮風などが浸入しても、溶接前に塗布した導電性塗料により耐錆性能が得られるため、錆による耐久性の低下と外観劣化とを防止でき、また、溶接後、未塗装部分の塗装を行うため、溶接作業時に他の塗装部分を損傷する虞がなく、さらに、その未塗装部分の塗装を簡便に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部品同士を溶接するに際して、溶接した金属部品の錆防止効果が得られる溶接を用いた塗装金属部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などにおいて、金属部品同士を接合する方法として、リベット止めが知られており、通常、金属部品に塗装又は鍍金を施した後、リベットを加締ることにより金属部品同士を接合している(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、リベットを用いた場合、リベットの頭部が露出して外観を損なったり、その頭部の逃げが必要になったりして制約を受け、使用できない場合がある。
【0004】
一方、金属部品同士の溶接では、上述したような制約は受けないが、溶接箇所の錆止め処理が難しく、溶接後、露出部分を塗装するだけでは、溶接箇所に雨水などが侵入して経時的に錆による雨だれ跡が発生するなどの問題がある。
【0005】
このような問題に対して、鉄板に、熱可塑性樹脂および導電性短繊維から成る樹脂膜を形成し、樹脂膜以外の部分に電着塗装して電着塗膜を形成した後、前記樹脂膜部分を重ね合わせ、前記導電性短繊維同士を互いに接触させて通電させることにより抵抗溶接する方法が提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−155371号公報
【特許文献2】特開昭64−65297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記抵抗溶接を用いる方法では、少量生産において、防錆性に優れた物品を製造することができるが、特殊な樹脂膜を用いるため、コスト上昇が予想される。また、電着塗装を施した後で溶接を行うため、電着塗装に対して、溶接時の熱による影響が懸念される。
【0008】
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、安価にして製造容易で、溶接箇所の錆防止効果に優れた溶接を用いた塗装金属部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、金属製のベース部材と金属製のアタッチメントとを抵抗溶接する溶接を用いた塗装金属部品の製造方法において前記ベース部材の溶接箇所と対応する前記アタッチメントの溶接箇所に導電性塗料を塗布した後、それらの溶接箇所を合わせ、それらベース部材とアタッチメントの未塗装部分に抵抗溶接の電極を当てて通電し、前記導電性塗料を介して両溶接箇所を溶接し、この後、それらベース部材とアタッチメントの未塗装部分を塗装することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、前記ベース部材は、車両の外部に設ける箱であり、前記アタッチメントは、前記箱の蓋を開閉自在に支持するヒンジであり、前記導電性塗料は導電性粉体を含有し、前記未塗装部分の塗装に用いる塗料は非導電性塗料であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記ベース部材は、車両の外部に設ける金属製の箱であり、前記アタッチメントは、前記箱の蓋を開閉自在に支持するヒンジであり、前記溶接箇所は、前記箱と前記ヒンジの取付対向面と、前記蓋と前記ヒンジの取付対向面であり、前記各取付対向面に前記導電性塗料を塗布した後、前記抵抗溶接を行い、前記ヒンジと前記箱とをアーク溶接し、これら抵抗溶接とアーク溶接を行った後、前記箱と前記ヒンジの未塗装部分を塗装することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、前記未塗装部分を粉体塗装し、前記導電性塗料は、前記粉体塗装の焼付温度以上の耐熱温度を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、前記導電性塗料は導電性粉体を含有し、前記未塗装部分の塗装に用いる塗料は非導電性塗料であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の溶接を用いた塗装金属部品の製造方法によれば、ベース部材とアタッチメントとの溶接箇所に、雨水や潮風などが浸入しても、溶接前に塗布した導電性塗料により耐錆性能が得られるため、錆による耐久性の低下と外観劣化とを防止でき、また、溶接後、未塗装部分の塗装を行うため、溶接作業時に他の塗装部分を損傷する虞がなく、さらに、その未塗装部分の塗装を簡便に行うことができる。
【0015】
また、請求項2に記載の溶接を用いた塗装金属部品の製造方法によれば、箱とヒンジとの溶接箇所に、雨水や潮風などが浸入しても、溶接前に塗布した導電性粉体を含有する導電性塗料により耐錆性能が得られるため、錆による耐久性の低下と外観劣化とを防止でき、また、溶接後、未塗装部分の塗装を行うため、溶接作業時に他の塗装部分を損傷する虞がなく、さらに、その未塗装部分の塗装を簡便に行うことができる。
【0016】
また、請求項3に記載の溶接を用いた塗装金属部品の製造方法によれば、請求項1の効果に加えて、車両の外部に設ける箱において、錆止め効果が得られ、したがって、露出して使用することにより、溶接箇所に雨水等が浸入しても、錆の発生を防止できる。
【0017】
また、請求項4に記載の溶接を用いた塗装金属部品の製造方法によれば、請求項1の効果に加えて、粉体塗装時に加わる熱により、導電性塗料が影響を受けることがない。
【0018】
また、請求項5に記載の溶接を用いた塗装金属部品の製造方法によれば、請求項3の効果に加えて、導電性粉体により導電性が得られ、一方、溶接後の塗装は、非導電性塗料を用いることにより、安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例の実施例1に係るヒンジの分解斜視図である。
【図2】同上、ヒンジの取付状態を示す断面図である。
【図3】同上、ヒンジの正面図である。
【図4】同上、ヒンジの断面図である。
【図5】同上、ヒンジの抜止め加締め部の斜視図である。
【図6】同上、ヒンジの要部の断面図である。
【図7】同上、蓋へのヒンジの取付工程を示す断面図である。
【図8】同上、車両への箱の取付状態を示す斜視図である。
【図9】同上、箱の背面図である。
【図10】同上、側板部の段部の断面図である。
【図11】同上、箱の底面図である。
【図12】同上、図11のI−I線断面図である。
【図13】同上、開閉ロック装置を取付ける前の箱の正面図である。
【図14】本実施例の実施例2に係る塗装装置の概略側面図である。
【図15】同上、図14のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例について説明する。図1〜図13に示すように、金属製からなる有底な箱2は、その上部の開口部3を開閉する蓋4と、この蓋4を前記箱2に開閉自在に支持するヒンジ5とを備える。この例では、箱2がベース部材であり、ヒンジ5がアタッチメントである。また、前記箱2は、底板部6と四つの側板部7とを備え、図8などに示すように、前記箱2は、自動二輪などの車両8の後部の荷台9などに取り付けられる。尚、前記箱2と蓋4を形成する金属板の厚さは、0.8ミリ程度である。
【0022】
図1、図3〜図5に示すように、前記ヒンジ5は、一対の板状部材10,10Aを備え、これら板状部材10,10Aは、間隔を置いて配置した複数の連結筒11,11Aを有し、それら連結筒11,11Aは互い違いの位置にあり、一方の板状部材10の連結筒11,11の隙間に、他方の板状部材10Aの連結筒11Aが挿入配置されると共に、他方の連結筒11A,11Aの隙間に、一方の連結筒11が挿入配置される。この例では、金属製の薄板12を折り曲げて重ね合わせ、その折曲げ箇所を筒状に形成し、前記間隔に対応する部分を削除することにより、前記連結筒11,11Aを形成している。それら板状部材10,10A同士は、連結筒11,11Aの配置が異なる以外は同一構成である。尚、前記薄板12の折り曲げて重ね合わせる面側には、その折り曲げ前に、後述する導電性塗料を塗装しておいてもよい。
【0023】
また、前記ヒンジ5は、金属製の連結軸17を備え、芯を合わせた状態で、前記連結筒11,11A,11,11A…内に前記連結軸17を挿入し、連結筒11の両端部を加締めて抜止め加締め部13を形成する(図5)。尚、挿入前に、あらかじめ一端部に抜止め加締め部13を形成しておいて、挿入後、挿入側の他端部に抜止め加締め部13を形成するようにしてもよい。また、前記板状部材10,10Aには、複数の孔14,14Aが穿設され、この例では、各3個の孔14,14Aが横方向に並んで穿設されている。尚、前記薄板12は、例えば0.4ミリ程度の厚さであり、前記板状部材10,10Aの厚さは、0.8ミリ程度である。また、ヒンジ5の使用状態で、板状部材10の孔14より板状部材10Aの孔14Aが僅かに上方に位置する。
【0024】
前記箱2の上縁は内側に折り返されて内折返し縁部2Uが全周に形成され、前記開口部3の長辺の一辺の側板部7上部内面に、前記ヒンジ5の板状部材10が取り付けられる。尚、閉蓋状態で、ヒンジ5は、連結筒11,11Aを下側にして取り付けられる。また、前記ヒンジ5を取り付ける側板部7の上部には、前記孔14に対応して、図6に示すように、略円筒状をなす複数の位置決め用の凸部15が形成され、その先端は閉じている。前記凸部15は、側板部7の板材をプレス加工して外面側に膨出加工して形成され、その直径は前記孔14の直径より僅かに小さく、その高さは1ミリ+−0.2程度に形成されている。一例としては、凸部15の直径は略5ミリである。
【0025】
前記蓋4は、上板部21と四つの側板部22とを備え、その上板部21には、該上板部21と略相似形の外段部23と、この外段部23内に設けられ該上板部21の略相似形より上板部21の長さ方向の長さが長い内段部24とがプレス加工により形成され、内側が一段高く形成されている。すなわち、内段部24の幅に対する長さの比が、外段部23の幅に対する長さの比より大きい。また、前記側板部22の下縁は内側に折り返されて内折返し縁部22Uが全周に形成され、前記箱2に対応して、一辺の側板部22下側内面に前記ヒンジ5の板状部材10Aが取り付けられる。また、前記ヒンジ5を取り付ける側板部22には、前記孔14Aに対応して、前記側板部7と同様に、略円筒状をなす位置決め用の前記凸部15が形成されている。
【0026】
そして、前記ヒンジ5の前記板状部材10,10Aは、溶接箇所である溶接面16,16Aが平坦になるように、連結筒11,11Aは、その板状部材10,10Aの厚さ方向一側よりに形成され、図2及び図4に示すように、蓋4を閉めた状態で、連結筒11,11Aの孔の直径に対応した隙間が、両板状部材10,10Aの間に形成される。そして、前記溶接面16と対向する側板部7の外面が取付対向面たる溶接面7Mであり、前記溶接面16Aと対向する側板部22の内面が取付対向面たる溶接面22Mである。
【0027】
前記板状部材10と、側板部7と、この側板部7の裏面に配置した裏当て金たる金属プレート18の3者が、スポット溶接により一体的に溶着される。この金属プレート18は、厚さ1.6ミリで、側板部7より厚く、幅は16ミリ程度であり、前記板状部材10とほぼ同一長さをなし、このように側板部7より厚い金属プレート18を当てることにより、溶接の熱影響などによる箱2の変形を防止し、ヒンジ5の動きを安定化している。尚、上述したように、前記箱2の側板部7の上縁は、内側に折り返した折返し縁部2Uが全周に設けられ、図2に示したように、その折返し縁部2Uの先端に前記金属プレート18の上縁を突き合わせて、該金属プレート18を配置している。
【0028】
また、箱2の側板部7には、横長な長方形の段部25がプレスにより形成され、段部25の内側の板材が外側の板材より外側に突出している。また、その段部25は、上下に間隔を置いて、複数段に設けられている。尚、図8及び図13に示すように、係止操作部37の取付箇所39においては、その取付箇所39を除いてその両側に段部25,25が設けられている。
【0029】
そして、上記段部23,24,25を設けることにより、側板部7,22の剛性を高めて補強することができる。
【0030】
前記四つの側板部7,7,7,7は、隣合う角部7K,7K,7K,7Kで連続した金属板から形成され、この金属板を前記角部7K,7K,7K,7Kで折曲げ加工し、その金属板の端部(図示せず)をいずれかの側板部7のほぼ中央側で重ね合わせ、この重ね合わせ部分をスポット溶接などにより接合してなる。
【0031】
また、前記箱2の底板部6の外側は、図11及び図12に示すように、前記側板部7,7,7,7の下縁を内側のほぼ水平に折り曲げた下縁部32を形成し、この下縁部32間を、中底板部33により塞いでなる。尚、前記側板部7と下縁部32との間には湾曲状角部32Kが形成されている。この湾曲状角部32Kに対応して、図12に示すように、前記中底板部33の周囲に湾曲縁部33Kを形成し、前記下縁部32の上に前記中底板部33の周囲を載置して重ね合わせ、この重ね合わせ部分を複数個所でスポット溶接により接合している。尚、図11は箱2を下からの見た底面図であり、図中、40はスポット溶接箇所である。
【0032】
金属板からなる前記中底板部33は、前記下縁部32と共に前記底板部6を構成し、その中底板部33には、中底板部33の長さ方向に長い長方形の段部34,34が中底板部33の幅方向に並んで複数設けられ、この例では、上側に凸となる段部34,34をプレスにより2つ並んで形成しており、それら段部34,34により中底板部33の剛性を高め補強することができる。
【0033】
また、前記中底板部33には、長孔状をなす複数の取付孔35,35A,35Bが穿設されており、この例では、段部34の中にそれぞれ3つの取付孔35,35A,35Bを設け、両側の段部34,34内で取付孔35,35A,35Bが対応して並んでおり、その取付孔35,35を底板部6の長さ方向一側縁寄りに設け、その取付孔35A,35Aを中央側に設け、その取付孔35B,35Bを前記長さ方向の他側で前記取付孔35A,35Aに近い位置に設けている。そして、両側の取付孔35,35Bの長さ方向を底板部6の幅方向に合わせ、中央の取付孔35Aの長さ方向と底面31の長さ方向に合わせている。そして、前記取付孔35,35A,35Bに固定手段たるボルト(図示せず)を挿通し、車両8の取付部たる前記荷台9に、そのボルトとナットを用いて箱2が取り付けられる。尚、前記中底板部33は、その厚さが1.2ミリで、蓋4や箱2の側板部7より厚く構成されており、これにより前記取付孔35,35A,35Bなどを用いて荷台9に取り付けるための強度を備えている。
【0034】
また、ヒンジ5と反対側の側板部7の上部外面には、バックル式開閉ロック装置36の係止操作部37が設けられると共に、ヒンジ5と反対側の蓋4の側板部22に前記開閉ロック装置36の係止受部38が設けられる。
【0035】
次に、出来上がった状態の箱2と蓋4に、ヒンジ5を抵抗溶接により接合する方法について、説明する。それら箱2と蓋4とヒンジ5とは、鍍金は施されておらず、また、それらを形成する材料は鍍金が施されておらず、全体が無塗装、あるいは少なくともヒンジ5と溶着する箇所周辺は無塗装とし、この例では、全体を無塗装とした場合について説明する。尚、金属製の箱2とヒンジ5は、未鍍金の素材を用いることにより、調達が容易で材料コストが安価なものとなる。
【0036】
まず、図1に示すように、ヒンジ5の溶接面16,16Aと、側板部7の外面及び側板部22の内面のそれら溶接面16,16Aに対応する溶接面7M,22Mに、導電性塗料(図示せず)を刷毛塗りで塗装する。この場合、導電性塗料の塗装の前に、ヒンジ5の脱脂処理を行う。尚、アーク溶接箇所である凸部15の先端と孔14とは、後でアーク溶接を行うために、導電性塗料による塗装は行わない。前記導電性塗料は、非導電性の樹脂と導電性粉末を含有し、その導電性粉末としては、導電性の鉄,アルミ,亜鉛,炭素のいずれか又はそれらを組み合わせたものが例示される。尚、箱2及び蓋4の材料となる板材の対応する部分に、導電性塗料を塗装してから、箱2及び蓋4を組み立ててもよい。
【0037】
このようにして、溶接面16,16Aと、この溶接面7M,22Mと突き合わされて溶接後に塗装ができない部分とに、前記導電性塗料を塗布し、この導電性塗料が乾燥した後、箱2においては、凸部15に孔14を合わせて側板部7の外面に板状部材10の溶接面16を位置決めし、溶接面16と側板部7の外面の溶接面7Mを面接触した状態とし、さらに、溶接箇所たる溶接面16に対応して、金属プレート18を側板部7の内面に配置し、それら板状部材10,側板部7及び金属プレート18を、スポット溶接機の電極(図示せず)で挟んで押し付けた状態で、それら電極間に電流を流し、それら板状部材10,側板部7及び金属プレート18をスポット溶接し、スポット溶接箇所51は、図9に示すように、板状部材10の長さ方向に間隔を置いて複数箇所で行われる。尚、板状部材10におけるスポット溶接箇所51の高さ位置は、前記孔14の高さ位置とほぼ同一である。前記電極は、未塗装部分に当てられ、そのスポット溶接機として、交流タイプのものを用いる。また、上述したように凸部15の少なくとも一部及び孔14は未塗装であり、前記凸部15を挿入した孔14に、アーク溶接によるプラグ溶接を施す。尚、図6中、41はアーク溶接のビードである。また、板状部材10,10Aの縁部と、側板部7,22とをアーク溶接してもよい。
【0038】
また、蓋4においては、前記導電性塗料が乾燥した後、凸部15に孔14Aを合わせて側板部22の内面に板状部材10Aの溶接面16Aを位置決めする。この場合、側板部22の下端には、内折返し縁部22Uが形成され、一方、板状部材10Aは平坦に形成されているため、板状部材10Aは、その上部が側板部22の内面に接し、その下部側が内折返し縁部22Uの内面に接するため、図7に示すように、側板部22に対して、板状部材10Aが斜めに配置されるが、板状部材10Aは薄く、上下方向に十分な幅を有しているから、凸部15の横方向に複数列に並んだ位置でスポット溶接を行うことにより、電極の押圧力で板状部材10Aが曲がり、側板部22と内折返し縁部22Uの内面に添った状態で溶着される。また、スポット溶接により、板状部材10Aの重ね合わせた薄板12,12同士も溶着される。溶接面16Aと側板部22の内面の溶接面22Mを面接触した状態とし、それら板状部材10Aと側板部22を、スポット溶接機の電極で挟んで押し付けた状態で、それら電極間に電流を流し、それら板状部材10Aと側板部22とをスポット溶接し、スポット溶接箇所51は、図9に示すように、板状部材10Aの長さ方向に間隔を置いて複数箇所で行われる。尚、板状部材10Aにおけるスポット溶接箇所51の高さ位置は、前記孔14Aの高さ位置とほぼ同一である。前記電極は、未塗装部分に当てられ、そのスポット溶接機として、箱2と同様に、交流タイプのものを用いる。また、上述したように凸部15の少なくとも一部及び孔14は未塗装であり、前記凸部15を挿入した孔14に、アーク溶接によるプラグ溶接を施す。尚、図6中、41は凸部15と孔14,14Aをアーク溶接したビードである。また、前記ビード41は孔14,14Aの全周に設ける必要はなく、部分的に半周程度設けられていればよい。
【0039】
このようにして、溶接による板状部材10,10Aの溶接が終了した後、連結筒11,11Aを位置合わせし、それら連結筒11,11A・・・に連結軸17を挿入し、抜止め加締め部13を形成してヒンジ5を組み立てる。これにより、箱2に蓋4がヒンジ5により開閉自在に設けられる。
【0040】
この後、一体となった箱2と蓋4とを脱脂洗浄後、未塗装部分に塗装を行い、この塗装には非導電性塗料が用いられる。この場合、吹付け塗装を用いた焼付塗装を行うことができる。そして、ヒンジ5の板状部材10,10Aにおいては、薄板12を重ね合わせて密着させており、その板状部材10,10Aの周囲に吹付等の塗装を施すことで、耐水性を確保することができる。また、上述したように、薄板12の重ね合わせ面に導電性塗料を刷毛塗りなどにより塗布しておいてもよく、さらに、板状部材10,10Aにおいて、重ね合わせた薄板12同士を、予めスポット溶接により接合したり、周囲をアーク溶接して接合したりしてもよい。
【0041】
未塗装部分の塗装が乾燥した後、即ち全て塗装が終了した後、ヒンジ5と反対の側の側板部7の上部に、係止操作部37を取り付け、ヒンジ5と反対側の蓋4の側板部22に係止受部38を取り付ける。
【0042】
尚、鞍乗り型車両の後部キャリアに取り付ける場合、そのための加工及び取付金具などの取付は、非導電性塗装の吹き付けなどによる塗装の前に行う。
【0043】
そして、上述したように、ヒンジ5の板状部材10,10Aは、薄板12を重ね合わせて、箱2の側板部7と略同じ厚さを有し、折り返し部分により構成した連結筒11,11Aに連結軸17を挿入することにより、板状部材10,10A同士が揺動可能となる。また、図2などに示したように、蓋4を閉めた状態で、ヒンジ5は、連結筒11,11Aを蓋4の側板部7の下縁より下方に露出して配置されている。また、図2に示したように、板状部材10,10Aの上下幅に対して、内折返し縁部22Uの上下幅は十分に狭く、また、蓋4を閉めた状態で、平行となる板状部材10,10A同士は、連結筒11,11Aの直径に対応した隙間を残して向かい合う。
【0044】
このように本実施例では、金属製のベース部材たる箱2と金属製のアタッチメントたるヒンジ5とを抵抗溶接する溶接を用いた塗装金属部品の製造方法において、箱2の溶接箇所と対応するヒンジ5の溶接箇所に導電性塗料を塗布した後、それらの溶接箇所を合わせ、それら箱2とヒンジ5の未塗装部分に抵抗溶接の電極を当てて通電し、導電性塗料を介して両溶接箇所を溶接し、この後、それら箱2とヒンジ5の未塗装部分を塗装するから、箱2とヒンジ5との溶接箇所に、雨水や潮風などが浸入しても、溶接前に塗布した導電性塗料により耐錆性能が得られるため、錆による耐久性の低下と外観劣化とを防止でき、また、溶接後、未塗装部分の塗装を行うため、溶接作業時に他の塗装部分を損傷する虞がなく、さらに、その未塗装部分の塗装を簡便に行うことができる。
【0045】
また、このように本実施例では、前記ベース部材は、車両8の外部に設ける箱2であり、前記アタッチメントは、箱2の蓋4を開閉自在に支持するヒンジ5であり、導電性塗料は導電性粉体を含有し、前記未塗装部分の塗装に用いる塗料は非導電性塗料であるから、箱2とヒンジ5との溶接箇所に、雨水や潮風などが浸入しても、溶接前に塗布した導電性粉体を含有する導電性塗料により耐錆性能が得られるため、錆による耐久性の低下と外観劣化とを防止でき、また、溶接後、未塗装部分の塗装を行うため、溶接作業時に他の塗装部分を損傷する虞がなく、さらに、その未塗装部分の塗装を簡便に行うことができる。
【0046】
また、このように本実施例では、前記ベース部材は、車両8の外部に設ける金属製の箱2であり、前記アタッチメントは、箱2の蓋4を開閉自在に支持するヒンジ5であり、前記溶接箇所は、箱2とヒンジ5の取付対向面たる溶接面16,7Mと、蓋4とヒンジ5の取付対向面である溶接面16A,22Mであり、箱2とヒンジ5の溶接面16,7Mと、蓋4とヒンジ5の溶接面16A,22Mとに前記導電性塗料を塗布した後、前記抵抗溶接を行い、ヒンジ5と箱2とをアーク溶接し、これら抵抗溶接とアーク溶接を行った後、箱2とヒンジ5の未塗装部分を塗装するから、車両8の外部に設ける箱2において、錆止め効果が得られ、したがって、露出して使用することにより、溶接箇所に雨水等が侵入しても、錆の発生を防止できる。
【0047】
また、このように本実施例では、前記導電性塗料は導電性粉体を含有し、前記未塗装部分の塗装に用いる塗料は非導電性塗料であるから、導電性粉体により導電性が得られ、一方、溶接後の塗装に非導電性塗料を用いることにより、安価となる。
【実施例2】
【0048】
図14〜図15は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、未塗装部分を粉体塗装し、前記導電性塗料は、前記静電粉体塗装の焼付温度以上の耐熱性を備える耐熱塗料が用いられる。尚、粉体塗装に用いる塗料は非導電性塗料である。
【0049】
前記粉体塗装の方法として、静電粉体塗装法と流動含浸法が例示され、静電粉体塗装法には熱硬化性粉体塗料が用いられ、流動含浸法には熱可塑性粉体塗料が用いられ、以下、静電粉体塗装である静電スプレー法に用いる塗装装置について説明する。尚、板状部材10を溶接したヒンジ組立て前の箱2と板状部材10Aを溶接したヒンジ組立て前の蓋4を脱脂洗浄後、それぞれの未塗装部分に静電紛体塗装を行う。
【0050】
コンベア61によって移送される複数の吊金具62に、前記箱2及び前記蓋4が交互に吊掛けされ、コンベア61により、箱2及び蓋4が吹付けブース63と焼付硬化炉64の順に搬送される。尚、吹付けブース63におけるコンベア長に比べて、焼付硬化炉64におけるコンベア長が長く設定されている。
【0051】
吊込み工程において、吊金具62に箱2及び蓋4を別々に吊掛け、コンベア61により吹付けブース63に移送し、吹付けブース63において、コンベア61を介して接地されている箱2及び蓋4に、例えば40KVに印加された粉体塗装ガンから粉体塗料を噴射して箱2及び蓋4の未塗装部分に付着させ、次の焼付硬化炉64において焼付硬化温度220度〜230度で粉体塗装を加熱溶融して硬化させ、箱2及び蓋4の塗装が完了する。尚、静電スプレー法では1回の塗装で30〜150μm程度の塗膜厚が自由に得られる。
【0052】
このように、静電スプレー法により、塗装機たる粉体塗装ガンとの間に高電位差を付与した箱2及び蓋4に、帯電した粉体塗料を吹き付けて付着させた後、箱2及び蓋4を焼付硬化温度で加熱して粉体塗料を溶融固化させ、常温まで冷却することにより塗膜が得られ、前記粉体塗料には熱硬化性塗料を使用するので、焼結硬化炉64で加熱することにより硬化した塗膜が得られる。また、吊金具62により接地したまま移送し、帯電した粉体塗料を付着させ、加熱して硬化させることができる。
【0053】
また、静電スプレー法で使用される熱硬化性塗料は、熱を加えることにより化学変化(架橋)を起し、特性が変化する塗料であり、架橋反応により各種の性能を付加させることが可能なため、用途に応じて塗料を選択することができ、また、使用されるベース樹脂は、外装用としてポリエステル樹脂やアクリル樹脂等、内装用としてエポキシ樹脂やハイブリッド(エポキシ/ポリエステル)樹脂等が例示される。
【0054】
尚、前記箱2及び蓋4に粉体塗料を吹き付ける前に、箱2及び蓋4の温度が低い場合には箱2及び蓋4を前加熱して30〜45度とすれば、一層均一な塗膜を得ることができ、このように前加熱することにより、300〜2000μm程度の塗膜厚で塗装を行うことができる。
【0055】
また、静電粉体塗装の前に行う溶接箇所の塗装には、耐熱温度が前記焼付硬化温度以上の導電性塗料を用いる。この導電性塗料の耐熱温度は、1200度程度である。
【0056】
そして、板状部材10を溶接した箱2と板状部材10Aを溶接した蓋4の粉体塗装が完了した後、連結筒11,11Aを位置合わせし、それら連結筒11,11A・・・に連結軸17を挿入し、抜止め加締め部13を形成してヒンジ5を組み立てる。これにより、箱2に蓋4がヒンジ5により開閉自在に設けられる。
【0057】
このように本実施例では、前記未塗装部分を粉体塗装し、前記導電性塗料は、前記粉体塗装の焼付温度以上の耐熱温度を備えるから、粉体塗装時に加わる熱により、導電性塗料が影響を受けることがなく、塗装の信頼性が高い製品が得られる。
【0058】
また、粉体塗装を用いることにより、高性能の塗膜が得られ、塗装作業のスピードアップと均一な塗膜を得ることができる。
【0059】
本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、ヒンジは、連結軸に金属以外のものを用いても、金属製のヒンジであることに代わりはなく、また、箱,蓋の一部に金属以外も用いても、金属製の箱である。さらに、実施例では、板状部材10の孔14より板状部材10Aの孔14Aが僅かに上方に位置するように構成したが、板状部材10の孔14と板状部材10Aの孔14Aとを同じ位置に設け、これに対応して側板部7の凸部15と側板部22の凸部15の位置を設定するようにしてもよい。また、粉体塗装として、熱可塑性塗料を使用するフレームスプレー法や、熱硬化性塗料を使用する電界クラウド法などの塗装方法を用いてもよい。
【符号の説明】
【0060】
2 箱(ベース部材)
2U 折返し縁部
3 開閉部
4 蓋(ベース部材)
5 ヒンジ(アタッチメント)
6 底板部
7 側板部
7M 溶接面(取付対向面)
8 車両
9 荷台
10 板状部材
10A 板状部材
16 溶接面(取付対向面)
16A 溶接面(取付対向面)
22M 溶接面(取付対向面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のベース部材と金属製のアタッチメントとを抵抗溶接する溶接を用いた塗装金属部品の製造方法において、
前記ベース部材の溶接箇所と対応する前記アタッチメントの溶接箇所に導電性塗料を塗布した後、それらの溶接箇所を合わせ、それらベース部材とアタッチメントの未塗装部分に抵抗溶接の電極を当てて通電し、前記導電性塗料を介して両溶接箇所を溶接し、
この後、それらベース部材とアタッチメントの未塗装部分を塗装することを特徴とする溶接を用いた塗装金属部品の製造方法。
【請求項2】
前記ベース部材は、車両の外部に設ける箱であり、
前記アタッチメントは、前記箱の蓋を開閉自在に支持するヒンジであり、
前記導電性塗料は導電性粉体を含有し、
前記未塗装部分の塗装に用いる塗料は非導電性塗料であることを特徴とする請求項1記載の溶接を用いた塗装金属部品の製造方法。
【請求項3】
前記ベース部材は、車両の外部に設ける金属製の箱であり、
前記アタッチメントは、前記箱の蓋を開閉自在に支持するヒンジであり、
前記溶接箇所は、前記箱と前記ヒンジの取付対向面と、前記蓋と前記ヒンジの取付対向面であり、
前記各取付対向面に前記導電性塗料を塗布した後、
前記抵抗溶接を行い、
前記ヒンジと前記箱とをアーク溶接し、
これら抵抗溶接とアーク溶接を行った後、
前記箱と前記ヒンジの未塗装部分を塗装することを特徴とする請求項1記載の溶接を用いた塗装金属部品の製造方法。
【請求項4】
前記未塗装部分を粉体塗装し、
前記導電性塗料は、前記粉体塗装の焼付温度以上の耐熱温度を備えることを特徴とする請求項1記載の溶接を用いた塗装金属部品の製造方法。
【請求項5】
前記導電性塗料は導電性粉体を含有し、
前記未塗装部分の塗装に用いる塗料は非導電性塗料であることを特徴とする請求項3又は4記載の溶接を用いた塗装金属部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−220177(P2009−220177A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25418(P2009−25418)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(390005430)株式会社ホンダアクセス (205)
【Fターム(参考)】