説明

溶接ガン

【課題】モータ駆動ユニットの全長(軸方向長さ)を短縮することのできる溶接ガンを提供すること。
【解決手段】サーボモータ30と、サーボモータのロータ33の回転角度を検出するエンコーダ50とを備え、電動式スポット溶接を行う溶接ガン10において、ロータの回転軸とエンコーダの回転軸54とが互いに軸線をずらして配置され、ロータの回転軸の回転をエンコーダの回転軸に伝えるように両回転軸が連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ガンに関する。詳しくは、スポット溶接に用いる一対の電極チップのうち一方の電極チップが他方の電極チップに対して、サーボモータにより開閉される電動式スポット溶接ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の電動式スポット溶接ガンでは、サーボモータのロータの回転運動が、ボールねじとナットとで構成される送りねじ機構を介して軸方向の進退運動に変換され、この進退運動により一方の電極チップの開閉動作が行われる。
【0003】
図4に、従来の電動式スポット溶接ガン110の概略的構成図を示す。図4に示すように、電動式スポット溶接ガン110は、サーボモータおよび送りねじ機構を含むモータ駆動ユニット120と、モータ駆動ユニット120のサーボモータの回転により進退される加圧ロッド140と、を備える。加圧ロッド140の先端部には、一方の電極チップ161が取り付けられる。
【0004】
また、電動式スポット溶接ガン110では、一方の電極チップ161がどの位置まで移動したとき両電極チップ間に電流を流すかそのタイミングを的確に決定するため、他方の電極チップ(不図示)に対する一方の電極チップ161の移動位置は正確に把握されなければならない。
そのため、従来から、サーボモータのロータの回転角度を検出するためにエンコーダ150が設けられている。
【0005】
従来の電動式スポット溶接ガン110では、サーボモータのロータの後部(ロータから前方へ延びる送りねじ機構側とは反対側)に、直列に、エンコーダ150が連結されている。すなわち、サーボモータのロータの回転軸を後方へ延ばした位置に、エンコーダ150の回転軸が同軸上に配置されている。
このとき、エンコーダ150の回転軸は、カップリング等の継手を用いて、または直接、ロータの回転軸の後部に取り付けられることによって、ロータの回転がエンコーダ150に伝えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−028788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近の電動式スポット溶接ガンには、サーボモータおよび送りねじ機構を含むモータ駆動ユニットの小型化が要求され、特にモータ駆動ユニットの全長(軸方向長さ)の短縮が求められている。
【0008】
しかしながら、従来の電動式スポット溶接ガン110では、サーボモータのロータの後部に、エンコーダ150が直列に連結されている。モータ駆動ユニット120の全長には、エンコーダ150の軸方向長さも加えられる。
そのため、このようなエンコーダ150の配置が、モータ駆動ユニット120の全長を短縮するうえで妨げとなり、モータ駆動ユニット120の小型化を実現するうえでの障害となっている。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、モータ駆動ユニットの全長(軸方向長さ)を短縮することのできる溶接ガンを提供することを目的とする。
【0010】
本発明はまた、モータ駆動ユニットの全長(軸方向長さ)を短縮した場合の、電動式スポット溶接ガンの位相合わせ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の溶接ガンは、サーボモータ(例えば、後述のサーボモータ30)と、前記サーボモータのロータ(例えば、後述のロータ33)の回転角度を検出するエンコーダ(例えば、後述のエンコーダ50)と、を備え、電動式スポット溶接を行う溶接ガン(例えば、後述の電動式スポット溶接ガン10)において、前記ロータの回転軸と前記エンコーダの回転軸(例えば、後述の回転軸54)とが互いに軸線をずらして配置され、前記ロータの回転軸の回転を前記エンコーダの回転軸に伝えるように両回転軸が連結される。
【0012】
この発明によれば、サーボモータのロータの回転軸とエンコーダの回転軸とが、互いに軸線をずらして配置される。これにより、例えば、サーボモータのロータの後部にエンコーダが直列に連結されている場合に比べて、モータ駆動ユニットの全長(軸方向長さ)を短縮することができる。
【0013】
この場合、前記サーボモータのロータの回転に応じて進退する加圧ロッド(例えば、後述の加圧ロッド40)を備え、前記加圧ロッド側とは反対側に延びる前記ロータの回転軸の後端部と、前記エンコーダの回転軸の入力端部(例えば、後述の入力端部55)とが同一方向を向いて、前記両回転軸が互いに平行に配置される、ことが好ましい。
【0014】
この発明によれば、例えば、サーボモータのロータの後部にエンコーダが直列に連結されている場合の、そのエンコーダをサーボモータのロータに対して折り返した構造となる。これにより、加圧ロッドによる加圧時(先端当接時)にサーボモータに伝わる衝撃力が、サーボモータのロータから直にエンコーダには伝わらない。したがって、加圧ロッドによる加圧が繰り返されても、それに起因するエンコーダの故障を未然に防止することができる。
【0015】
この場合、前記ロータの回転軸の前記後端部と、前記エンコーダの回転軸の前記入力端部とが、ギア(例えば、後述のギア36,56)で連結される、ことが好ましい。
【0016】
この発明によれば、サーボモータのロータの後端部とエンコーダの入力端部とが、ギアで連結される。これにより、サーボモータおよびエンコーダの各々の回転方向は、例えば、サーボモータのロータの後部にエンコーダが直列に連結されている場合といずれも同様となる。したがって、サーボモータに対してエンコーダを直列に連結するタイプから、サーボモータに対してエンコーダを平行に折り返してギアで連結するタイプに変更する際に、エンコーダの信号を受け取るコントローラを改造することが不要である。
【0017】
この場合、前記サーボモータは、ロータの中空部(例えば、後述の中空部37)内において前記加圧ロッドを進退させる中空サーボモータであり、前記加圧ロッドは、前記ロータの回転に応じてボールねじ(例えば、後述のボールねじ42)およびナット(例えば、後述のナット44)を介して進退し、前記加圧ロッド側とは反対側における前記ボールねじの後端部に、給油口(例えば、後述の給油口43)が設けられる、ことが好ましい。
【0018】
この発明によれば、サーボモータのロータの回転に応じて、ナットと協働して加圧ロッドを進退させるボールねじ後端部に給油口が設けられる。これにより、加圧反力を受けるボールねじのボール循環部に直接給油することが可能であり、メンテナンスが容易となる。
【0019】
本発明の電動式スポット溶接ガンのエンコーダとモータの位相合わせ方法は、サーボモータと、前記サーボモータのロータの回転に応じて進退する加圧ロッドと、前記サーボモータのロータの回転角度を検出するエンコーダと、を備え、前記加圧ロッド側とは反対側に延びる前記ロータの回転軸の後端部と、前記エンコーダの回転軸の入力端部とが同一方向を向いて、前記両回転軸が互いに平行に配置され、前記ロータの回転軸の前記後端部と、前記エンコーダの回転軸の前記入力端部とが、ギアで連結される、電動式スポット溶接ガンの位相合わせ方法であって、前記サーボモータを励磁ロックした状態で、前記ロータ側のギアの取り付けを緩めて当該ギアをフリー回転できる状態にし、前記フリー状態の前記ギアを回転させることにより、当該ギアと係合している前記エンコーダ側のギアをエンコーダの回転軸とともに回転させて、前記エンコーダの値を所定値に合わせ、その後、前記ロータ側のギアを締め付け固定する。
【0020】
この発明によれば、エンコーダとエンコーダ側のギアとの位相関係を変更しない状態に保ち、このエンコーダ側のギアとロータ側のギアとを噛み合い状態のままに保って、励磁ロックした状態にあるロータからギアの回転方向にフリーにした例えば円周方向に円弧状の長穴を設け、ロータ側のギアを回転させて位相合わせをした後、このロータ側のギアとロータとを固定する。これにより、位相合わせのための余分の機構を設けることなく、適切な位相合わせを行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、サーボモータのロータの回転軸とエンコーダの回転軸とが、互いに軸線をずらして配置される。そのため、例えば、サーボモータのロータの後部にエンコーダが直列に連結されている場合に比べて、モータ駆動ユニットの全長(軸方向長さ)を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る電動式スポット溶接ガンの縦断側面図である。
【図2】図1に示す電動式スポット溶接ガンの拡大縦断背面図である。
【図3】本発明の電動式スポット溶接ガンを示す概略的構成図である。
【図4】従来の電動式スポット溶接ガンを示す概略的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る溶接ガンとしての電動式スポット溶接ガン10の縦断側面図、図2は拡大縦断背面図である。
電動式スポット溶接ガン10は、モータ駆動ユニット20を備える。
【0024】
モータ駆動ユニット20は、ユニットハウジング21と、サーボモータ30と、加圧ロッド40と、エンコーダ50と、を備える。
ユニットハウジング21は、サーボモータ30および加圧ロッド40を収容するメインハウジング22と、エンコーダ50を収容するエンコーダハウジング23と、を備える。
【0025】
サーボモータ30は、メインハウジング22内に固定されるステータ31と、メインハウジング22内に小型のアンギュラベアリング32を介して回転可能に支持される中空のロータ33とで構成される。ロータ33は中空部37を有する。
【0026】
加圧ロッド40は、中空のロッドである。加圧ロッド40は、メインハウジング22の前端側に設けたガイドスリーブ41を通してロータ33の中空部37内に配置される。ガイドスリーブ41は、加圧ロッド40の回転の振れ止め用のものである。
加圧ロッド40の後端部は、ボールねじ42と螺合しているナット44と一体に構成される。
【0027】
ボールねじ42は、後部側がロータ33の基部側に固定され、加圧ロッド40の中空部内を加圧ロッド40の軸線に沿って延びる。そのため、ボールねじ42は、ロータ33の回転にともなってロータ33と一体に回転する。
ボールねじ42の後端部は、モータ駆動ユニット20の右端まで伸びており、この突出端部にあるモータ給油口のフタ43を取り外し、給油ノズルを差し込むことにより、ボールねじ42のボール循環部に直接給油することができる。
ナット44は、適宜の回り止め措置が施される。そのため、ロータ33の回転にともなってボールねじ42が回転すると、加圧ロッド40は、ナット44とともにロータ33の中空部37内をロータ33の軸線に沿って進退する。
【0028】
サーボモータ30は、加圧ロッド40側とは反対側のロータ33の後端部には、ロータに対して位相を変化させ固定のできるギアのブラケット35が取り付けられ、そのブラケット35に、ギア36が取り付けられる。このギア36は、ノーバックラッシュギアまたはノンバックラッシュギアなどと呼ばれるバックラッシュのないギアである。例えば、2枚の薄いギア(平歯車)を重ね合わせて、両者をバネで円周方向に引っ張ることで、バックラッシュなしでトルク伝達ができるようにしたギアである。このギアを用いることにより、初期状態からギアが摩耗してもバックラッシュの量の調整をする必要が無くなり、点検頻度を下げることができる。
【0029】
エンコーダ50は、その回転軸54をロータ33と平行にした状態でエンコーダハウジング23内に配置される。このとき、エンコーダ50の向きは、その回転軸54の入力端部55が、加圧ロッド40側とは反対側に延びるロータ33の後端部と同一方向を向く。すなわち、図1に示すように、ロータ33の後端部が、図1において右側を向くとき、エンコーダ50の回転軸54の入力端部55も、図1において右側を向く。
エンコーダ50は、回転軸54の入力端部55にギア56が取り付けられる。このギア56は、普通のギア(平歯車)でよい。ギア56は、ロータ33の後端部のギアブラケット35に取り付けられたギア36と係合する。
【0030】
図3に示すように、電動式スポット溶接ガン10は、モータ駆動ユニット20の後部上方にエンコーダ50が配置される。このとき、エンコーダ50は、モータ駆動ユニット20の後端部から後方へは突出しない。
また、電動式スポット溶接ガン10は、モータ駆動ユニット20から前方へ進退可能に突き出した加圧ロッド40の先端に、駆動側電極チップ61が取り付けられる。
【0031】
上記のように構成された電動式スポット溶接ガン10のモータ駆動ユニット20は、サーボモータ30を駆動させると、ロータ33およびロータ33と一体のボールねじ42が回転する。ボールねじ42が回転することで、ボールねじ42と螺合しているナット44およびナット44と一体の加圧ロッド40が軸線方向に進退する。
これにより、加圧ロッド40の先端に取り付けられた駆動側電極チップ61が、対向する従動側電極チップ(不図示)との間にワーク(板材)を挟持してスポット溶接を行う。
【0032】
つぎに、電動式スポット溶接ガン10の位相合わせ方法について説明する。
電動式スポット溶接ガン10では、サーボモータ30の位相とエンコーダ50の位相とが合っていないと、どのタイミングでモータを駆動させる電流を流していいのか分からず、モータの出力を得ることができなくなる。そのため、サーボモータ30の原点とエンコーダ50の原点との位相合わせを行うことは必要不可欠である。
【0033】
電動式スポット溶接ガン10は、上記のように、サーボモータ30のロータ33と、エンコーダ50の回転軸54とが、同軸上に直結していない。すなわち、ロータ33の後部端にギアブラケット35を介して取り付けられたギア36と、エンコーダ50の回転軸54に取り付けられたギア56とが係合している。そのため、電動式スポット溶接ガン10の位相合わせは、つぎのようにして行う。
【0034】
出荷時は、まず、サーボモータ30の原点を出すために、サーボモータ30を励磁ロックさせる。すなわち、サーボモータ30の1極だけに電流を流して、サーボモータ30をロックさせる。すると、サーボモータ30のロータ33がロックして回転不能の状態となる。
一方、ロータ33に対してフリー回転できる状態にしたギアブラケット35に取り付けられたギア36は、エンコーダ50の回転軸54に取り付けられたギア56と係合している。
この状態で、ギアブラケット35を回転させながらエンコーダ50の原点を検出する。
エンコーダ50の原点を検出したら、その位置で、ギアブラケット35をロータ33に対して締め付け固定する。
これにより、サーボモータ30の原点とエンコーダ50の原点とが位相合わせされる。
以上の位相合わせ作業は、基本的に、サーボモータ30側を操作することによって実行することができる。
【0035】
上記のようにしてエンコーダ50と位相合わせされたサーボモータ30に対して、ロータを励磁ロックさせた状態で、ロータ33に取り付けられたギア36と、エンコーダ50に取り付けられたギア56との係合部に、アイマークを付けておく。
以上の位相合わせ作業は、基本的に、サーボモータ30側を操作することによって実行することができる。
【0036】
エンコーダ50のトラブル発生時には、まず、サーボモータ30の原点を出すために、サーボモータ30を励磁ロックさせる。
つぎに、ロータ33に取り付けられたギアブラケット35の取り付けを緩めて、ギア36をフリー回転できる状態にする。
フリー状態のギア36を回転させることにより、このギア36と係合しているギア56をエンコーダ50の回転軸54とともに回転させて、エンコーダ50の値を所定値(例えばゼロ点)に合わせる。
その後、フリー状態のギアブラケット35をロータ33に締め付け固定する。
これにより、サーボモータ30の原点とエンコーダ50の原点とが位相合わせされる。
以上の位相合わせ作業は、基本的に、サーボモータ30側を操作することによって実行することができる。
【0037】
工場ライン上での復旧(エンコーダ交換)の場合は、モータに外部から電圧を加え、励磁ロックさせることができない。そこで、まず、エンコーダ50およびエンコーダ50の回転軸54に取り付けられたギア56を、メインハウジング22およびエンコーダハウジング23から取り外す。
【0038】
一方、電動式スポット溶接ガン10の外方で、新たなエンコーダ50およびエンコーダ50の回転軸54に取り付けるギア56は、外方であらかじめエンコーダ取り付け位相とギア56の刻印位相を合わせた状態でエンコーダ軸とギア56を締結しておく。このようなエンコーダ交換セットは、電動式スポット溶接ガン10の外方で、あらかじめ準備しておくことができる。
【0039】
つぎに、さきほどエンコーダ50およびギア56を取り外したエンコーダハウジング23およびメインハウジング22内に、上記のエンコーダ交換セットのエンコーダ50およびギア56を配置し、ギア36に付けられているアイマークと、エンコーダ側のギア56に刻印されたアイマークを一致させれば、そのサーボモータ30の原点とエンコーダ50の原点とが位相合わせされる。
【0040】
この場合は、エンコーダ交換セット側のアイマークと、ロータ側ギア36側のアイマークとを一致させて組み替えるだけで、エンコーダ50のトラブル復旧をすることができる。
以上の位相合わせ作業は、基本的に、サーボモータ30側を操作することによって実行することができる。
【0041】
一方、エンコーダ50側を操作して位相合わせ作業を行う場合は、つぎのようになる。
まず、サーボモータ30の原点を出すために、サーボモータ30を励磁ロックさせる。すると、ロータ33はロックし、ロータ33に取り付けられたギア36および、このギア36と係合しているエンコーダ50側のギア56も、回転不能になる。
この状態でエンコーダ50のゼロ点を出すには、エンコーダ50の回転軸54に取り付けられたギア56を緩めて、エンコーダ50の回転軸54をフリーにしてその位置を変えなければならない。
【0042】
エンコーダ50の回転軸54の図1で右方に突出した部分を手で持って回すことにより、エンコーダ50の回転軸54を所定の位置(原点位置)に移動させることができる。
ところで、所定の位置に移動した回転軸54に対して、例えばねじ等でギア56を締め付け固定しなければならない。
このとき、ギア56を締め付け固定するためのボスが、例えば図1で右方に突出していれば、回転軸54を回して、位相が合ったところでねじを締めることが可能である。しかしながら、その場合は、ギア56からボスが図1で右方に飛び出してしまう。それでは、エンコーダ50をロータ33と平行に配置して軸方向長さを短縮しようとする狙いに反することになる。
よって、エンコーダ50とギア56とは取り付けた状態で扱うことが望ましい。
【0043】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)サーボモータ30のロータ33と、エンコーダ50の回転軸54とが、加圧ロッド40側とは反対側に延びるロータ33の後端部に取り付けられたギアブラケット35と、エンコーダ50の入力端部55とが同一方向を向いて、互いに平行に配置される。
すなわち、例えば、サーボモータ30のロータ33の後部にエンコーダ50が直列に連結されている場合の、そのエンコーダ50をサーボモータ30のロータ33に対して折り返した構造となる。
これにより、例えば、サーボモータ30のロータ33の後部にエンコーダ50が直列に連結されている場合に比べて、モータ駆動ユニット20の全長(軸方向長さ)を短縮することができる。
【0044】
(2)サーボモータ30のロータ33と、エンコーダ50の回転軸54とが、互いに平行に配置される。
これにより、加圧ロッド40による加圧時(先端当接時)にサーボモータ30に伝わる衝撃力が、サーボモータ30のロータ33から直にエンコーダ50には伝わらない。したがって、加圧ロッド40による加圧が繰り返されても、それに起因するエンコーダ50の故障を未然に防止することができる。
【0045】
(3)サーボモータ30のロータ33の後端部のギアブラケット35とエンコーダ50の入力端部55とが、ギア36,56で連結される。
これにより、サーボモータ30およびエンコーダ50の各々の回転方向は、例えば、サーボモータ30のロータ33の後部にエンコーダ50が直列に連結されている場合といずれも同様となる。したがって、サーボモータ30に対してエンコーダ50を直列に連結するタイプから、サーボモータ30に対してエンコーダ50を平行に折り返してギア36,56で連結するタイプに変更する際に、エンコーダ50のコントローラを改造することが不要である。
【0046】
(4)サーボモータ30のロータ33の回転に応じて、ナット44と協働して加圧ロッド40を進退させるボールねじ42の後端部に給油口43が設けられる。
これにより、ボールねじ42に直接給油することが可能であり、メンテナンスが容易となる。
【0047】
(5)電動式スポット溶接ガン10の位相合わせ方法は、エンコーダ50とエンコーダ50側のギア56との位相関係を変更しない状態に保ち、このエンコーダ50側のギア56とロータ33側のギア36とを係合状態のままに保って、ロータ33からフリーにしたロータ33側のギア36を回転させて位相合わせをした後、このロータ33側のギア36とロータ33とを固定する。
これにより、位相合わせのための余分の機構を設けることなく、適切な位相合わせを行うことができる。
【0048】
なお、上記の実施形態では、サーボモータ30のロータ33に取り付けたギアブラケット35と、エンコーダ50の回転軸54とを、ギアブラケット35に取り付けたギア36と、回転軸54に取り付けたギア56とで連結した。しかしながら、ギアブラケット35と回転軸54の連結方法はこれに限定されない。
例えば、ギアブラケット35と回転軸54にそれぞれプーリを取り付けて、両プーリにタイミングベルトを掛け渡すことで連結してもよい。
この場合は、作動音が静かであり、低コストで連結可能であるという利点がある。
但し、タイミングベルトによる連結は、ギア36,56による連結と違い、サーボモータ30とエンコーダ50との回転方向が逆転するため、エンコーダ50の信号を受け取るコントローラで受信したパルス符号を反転させるなどを改造する必要がある。また、サーボモータ30の温度変化によりタイミングベルトが伸縮するため、バックラッシュが発生しやすい。
【0049】
また、上記の実施形態では、サーボモータ30のロータ33と、エンコーダ50の回転軸54とが、互いに平行に配置されるように構成した。しかしながら、ロータ33と、エンコーダ50の回転軸54とが、平行に限らず、互いに軸線をずらして配置されるように構成してもよい。
この場合でも、例えば、サーボモータ30のロータ33の後部にエンコーダ50が直列に連結されている場合に比べて、モータ駆動ユニット20の全長(軸方向長さ)を短縮することができる。
【符号の説明】
【0050】
10…電動式スポット溶接ガン(溶接ガン)
20…モータ駆動ユニット
30…サーボモータ
33…ロータ
35…ギアブラケット
36…ギア
37…中空部
40…加圧ロッド
42…ボールねじ
43…給油口
44…ナット
50…エンコーダ
54…回転軸
55…入力端部
56…ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータと、
前記サーボモータのロータの回転角度を検出するエンコーダと、を備え、
電動式スポット溶接を行う溶接ガンにおいて、
前記ロータの回転軸と前記エンコーダの回転軸とが互いに軸線をずらして配置され、前記ロータの回転軸の回転を前記エンコーダの回転軸に伝えるように両回転軸が連結される、溶接ガン。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接ガンにおいて、
前記サーボモータのロータの回転に応じて進退する加圧ロッドを備え、
前記加圧ロッド側とは反対側に延びる前記ロータの回転軸の後端部と、前記エンコーダの回転軸の入力端部とが同一方向を向いて、前記両回転軸が互いに平行に配置される、溶接ガン。
【請求項3】
請求項2に記載の溶接ガンにおいて、
前記ロータの回転軸の前記後端部と、前記エンコーダの回転軸の前記入力端部とが、ギアで連結される、溶接ガン。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の溶接ガンにおいて、
前記サーボモータは、ロータの中空部内において前記加圧ロッドを進退させる中空サーボモータであり、
前記加圧ロッドは、前記ロータの回転に応じてボールねじおよびナットを介して進退し、
前記加圧ロッド側とは反対側における前記ボールねじの後端部に、給油口が設けられる、溶接ガン。
【請求項5】
サーボモータと、
前記サーボモータのロータの回転に応じて進退する加圧ロッドと、
前記サーボモータのロータの回転角度を検出するエンコーダと、を備え、
前記加圧ロッド側とは反対側に延びる前記ロータの回転軸の後端部と、前記エンコーダの回転軸の入力端部とが同一方向を向いて、前記両回転軸が互いに平行に配置され、
前記ロータの回転軸の前記後端部と、前記エンコーダの回転軸の前記入力端部とが、ギアで連結される、電動式スポット溶接ガンの位相合わせ方法であって、
前記サーボモータを励磁ロックした状態で、
前記ロータ側のギアの取り付けを緩めて当該ギアをフリー回転できる状態にし、
前記フリー状態の前記ギアを回転させることにより、当該ギアと係合している前記エンコーダ側のギアをエンコーダの回転軸とともに回転させて、前記エンコーダの値を所定値に合わせ、
その後、前記ロータ側のギアを締め付け固定する、電動式スポット溶接ガンの位相合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−51023(P2012−51023A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197861(P2010−197861)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】