説明

溶接形鋼の製造方法及び製造装置

【課題】溶接形鋼のウェブ素材やフランジ素材の横継部を、低コストで高精度で、さらに確実に検出及び除去する方法を提供する。
【解決手段】送給機構15により、第1の横継部23aをする第1の鋼帯2aと、第2の横継部23bを有する第2の鋼帯2bとを連続して送給しながらH形の断面形状に組み合わせ、溶接機9により、突き合せ部の溶接を行った後に、横継部除去機構12により横継部を含む部分を除去することによって溶接H形鋼24を製造する。刻印機構4により、溶接電極の接触位置を除いた、第1の横継部23aの近傍、及び第2の横継部23bの近傍に、刻印を設け、検出機構6により、設けられた刻印を検出して、第1の横継部23aの位置、及び第2の横継部23bの位置を検出する。横継部除去機構12は、第1の横継部23aを含む部分、及び第2の横継部23bを含む部分を、検出機構6により検出された位置に基づいて、除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば溶接H形鋼のような溶接形鋼の製造方法及び製造装置に関し、具体的には、ウェブ素材である鋼帯の接合部やフランジ素材である鋼帯の接合部である横継部の位置を確実に検出及び除去して溶接形鋼を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接H形鋼や溶接溝形鋼さらには溶接T形鋼といった溶接形鋼(以降の説明は溶接H形鋼を例にとって行う)は、コイルから巻き戻されたウェブ素材である1枚の鋼帯と、同様にコイルから巻き戻されたフランジ素材である2枚の鋼帯とを送給しながら所定のH形の断面形状に組み合わせた後に、ウェブ素材とフランジ素材との2箇所の突き合せ部を例えば高周波抵抗溶接機により溶接することによって、製造される。
【0003】
ウェブ素材及びフランジ素材をいずれも連続的に供給して生産性を高めるため、コイルから巻き戻されるウェブ素材、及びフランジ素材である鋼帯の後端は、いずれも、次のコイルから巻き戻される次の鋼帯の先端に、フラッシュバット溶接等により接合されることが多い。このため、ウェブ素材及びフランジ素材のいずれにも、フラッシュバット溶接等による接合部(本明細書では「横継部」という)が存在することが多い。
【0004】
横継部は、横継ぎ部以外の他の部位と比較して、寸法や形状が変動し易いために品質が著しく劣る可能性がある。このため、溶接H形鋼の製造工程では、通常、例えば高周波抵抗溶接機により溶接された長尺の溶接H形鋼における、横継部が存在する部分の存在位置を検出し、横継部を含む部分を不良部として製造工程内に配設される切断機によって切断及び除去する。
【0005】
特許文献1、2には、先行鋼帯と後行鋼帯とのフラッシュバット溶接に際してアプセットを加える際に、横継部の板幅方向に発生する凸部を検出することによって、横継部の位置を検出する方法が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1、2により開示された方法では、発生した凸部の高さが小さい場合には横継部の位置を検出できなかったり、あるいは横継部が生じた鋼帯に不可避的に発生する振動の影響により横継部の位置を誤って検出することがあり、横継部の位置の検出精度の低下が避けられない。また、横継部に発生する凸部は、フラッシュバット溶接工程以降の各工程での搬送や加工の障害になることがあるため、フラッシュバット溶接後に早期に平坦に切削して除去することが望ましいが、特許文献1、2により開示された方法を実施するためには少なくとも凸部を検出するまでの間は凸部を除去できないという問題もある。
【0007】
特許文献3には、横継部を塗料でマーキングし、このマーキングを光学センサーにより検出することによって横継部を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平3−046328号公報
【特許文献2】特開平11−230738号公報
【特許文献3】特許第4059239号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
溶接H形鋼の製造工程では、ウェブ素材やフランジ素材の鋼帯として、表面に黒皮が生成した熱延鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板といった様々な品種の鋼帯が使用される。鋼帯の品種が異なれば反射する光量も変動する。このため、特許文献3により開示された方法による横継部を高い精度で検出するためには、塗料の塗布部と未塗布部を検出する際に、鋼帯の品種に応じた最適な塗料を鋼帯毎に個別に設定する必要があり、設定の手間とコストが嵩む。また、鋼帯に塗布された塗料が鋼帯の表面から通板ロールの表面へ付着して正しいマーキング位置以外の部分にも転写されると、誤作動を生じさせる可能性もある。
【0010】
本発明は、従来の技術が有するこれらの課題に鑑みてなされたものであり、例えば溶接H形鋼といった溶接形鋼のウェブ素材やフランジ素材の横継部を、低コストで簡便かつ高精度で確実に検出及び除去して溶接形鋼を製造する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、
(a)横継部の近傍に刻印を打刻し、その刻印を検出することで上記課題を解決できること、及び
(b)刻印はウェブ素材やフランジ素材に存在する他の表面疵と明確に識別できるようにするために、その刻設位置や大きさに特徴を持たせて打刻することが好ましいこと
を知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0012】
本発明は、2枚の鋼帯の接合部である第1の横継部を有するウェブ素材である第1の鋼帯と、2枚の鋼帯の接合部である第2の横継部を有するフランジ素材である第2の鋼帯とを連続して送給しながら所定の断面形状に組み合わせ、ウェブ素材及びフランジ素材の突き合せ部の溶接を行った後に第1の横継部を含む部分、及び/又は、第2の横継ぎ部を含む部分を除去することによって溶接形鋼を製造する方法において、所定の断面形状に組み合わされる前のウェブ素材の少なくとも一方の表面、及び/又は、所定の断面形状に組み合わされる前のフランジ素材の少なくとも一方の表面であって、突き合せ部の溶接用の溶接電極の接触位置を除いた、第1の横継部の近傍、及び/又は、第2の横継部の近傍に、刻印を設ける刻印工程と、この刻印工程により設けられた刻印を検出することによって、第1の横継部の位置、及び/又は、第2の横継部の位置を検出する検出工程とを有し、第1の横継部を含む部分、及び/又は、第2の横継部を含む部分は、検出工程により検出された位置に基づいて、除去されることを特徴とする溶接形鋼の製造方法である。
【0013】
別の観点からは、本発明は、2枚の鋼帯の接合部である第1の横継部を有するウェブ素材である第1の鋼帯と、2枚の鋼帯の接合部である第2の横継部を有するフランジ素材である第2の鋼帯とを連続して送給しながら所定の断面形状に組み合わせる送給機構と、ウェブ素材及びフランジ素材の突き合せ部の溶接を行う溶接機と、所定の断面形状に組み合わされる前のウェブ素材の少なくとも一方の表面、及び/又は、所定の断面形状に組み合わされる前のフランジ素材の少なくとも一方の表面であって、突き合せ部の溶接用の溶接電極の接触位置を除いた、第1の横継部の近傍、及び/又は、第2の横継部の近傍に、刻印を設ける刻印機構と、この刻印機構により設けられた刻印を検出することによって、第1の横継部の位置、及び/又は、第2の横継部の位置を検出する検出機構と、検出機構により検出された位置に基づいて、第1の横継部を含む部分、及び/又は、第2の横継部を含む部分を除去する横継部除去機構とを備えることを特徴とする溶接形鋼の製造装置である。この本発明に係る製造装置における検出機構は、ウェブ素材及び/又はフランジ素材に存在する表面疵を検出する疵探傷装置であることが好ましい。
【0014】
これらの本発明における刻印は、
(A)第1の横継部の延設方向、及び/又は、第2の横継部の延設方向に対して、±45°交差する方向により囲まれた領域に設けられること、
(B)第1の横継部の延設方向、及び/又は、第2の横継部の延設方向へ、5mm以上の長さを有すること、
(C)ウェブ素材、及び/又は、フランジ素材の複数の箇所に設けられること
がそれぞれ好ましい。
【0015】
これらの本発明では、ウェブ素材における第1の横継ぎ部を含む位置、及び/又は、フランジ素材における第2の横継部を含む位置に対して、溶接が行われた後であって第1の横継部を含む部分、及び/又は、第2の横継部を含む部分の除去が行われる前に、第1の横継部及び/又は第2の横継部に、目視可能なマーキングを行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば溶接H形鋼といった溶接形鋼のウェブ素材やフランジ素材の横継部を、低コストで簡便かつ高精度で、さらに定量化して確実に検出及び除去して溶接形鋼を製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る溶接H形鋼の製造装置を概略的に示す説明図である。
【図2】図2は、ウェブ素材である第1の鋼帯の表面に存在する表面疵を例示する説明図である。
【図3】図3(a)は、溶接機による高周波抵抗溶接を行われる前のウェブ素材である第1の鋼帯に刻設された刻印を示す説明図であり、図3(b)は、溶接機による高周波抵抗溶接を行われた溶接H形鋼に残存する刻印を示す説明図であり、図3(c)は、後述する検出機構により撮影画像を示す説明図であり、さらに、図3(d)は、刻印を拡大して示す説明図である。
【図4】図4は、探傷装置の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を、添付図面を参照しながら、説明する。以降の説明では溶接形鋼が溶接H形鋼である場合を例にとるが、本発明は、例えば溶接溝形鋼や溶接T形鋼といった溶接H形鋼以外の溶接形鋼にも同様に適用される。
【0019】
1. 本発明に係る製造装置
図1は、本発明に係る溶接H形鋼の製造装置0を概略的に示す説明図である。
製造装置0は、送給機構15と、溶接機9と、刻印機構4と、検出機構6と、横継部除去機構12とを備えるので、これらを順次説明する。
【0020】
[送給機構15]
アンコイラー(巻き戻し機)1aによりコイルから巻き戻されたウェブ素材である1枚の第1の鋼帯2aは、ルーパー16aを介して溶接機9へ送給される。また、アンコイラー(巻き戻し機)1bによりコイルから巻き戻されたフランジ素材である1枚の第2の鋼帯2bは、ルーパー16bを介してスリッター8へ送給され、スリッター8により2枚に分割された後、溶接機9へ送給される。図1における符号5aは、第1の鋼帯2aのトラッキング処理を行うためのPLGであり、符号5bは、第2の鋼帯2bのトラッキング処理を行うためのPLGである。PLG5a、5bは、検出したデータを後述するトラッキング及び横継取合せ制御装置7へ送信することによって、第1の鋼帯2a、第2の鋼帯2bのトラッキング処理を行う。
【0021】
1枚の第1の鋼帯2aと2枚の第2の鋼帯2bとは、溶接機9の入側で所定のH形の断面形状に組み合わされる。
第1の鋼帯2a及び第2の鋼帯2bをいずれも連続的に供給するために、コイルから巻き戻された第1の鋼帯2aの後端は次のコイルから巻き戻される次の第1の鋼帯2a’の先端に横継機(フラッシュバット溶接機)3aにより接合されるとともに、コイルから巻き戻された第2の鋼帯2bの後端は次のコイルから巻き戻される次の第2の鋼帯2b’の先端に横継機(フラッシュバット溶接機)3bにより接合される。
【0022】
このため、第1の鋼帯2a及び2a’からなるウェブ素材には、フラッシュバット溶接による接合部である第1の横継部23aが存在するとともに、第2の鋼帯2b及び2b’からなるフランジ素材には、フラッシュバット溶接による接合部である第2の横継部23bが存在する。
【0023】
このようにして、送給機構15は、第1の横継部23aを有するウェブ素材である第1の鋼帯2aと、第2の横継部23bを有するフランジ素材である第2の鋼帯2bとを連続して送給しながら所定のH形の断面形状に組み合わせる。
【0024】
[溶接機9]
溶接機9は、所定のH形の断面形状に組み合わされたウェブ素材である1枚の第1の鋼帯2aとフランジ素材である2枚の第2の鋼帯2bとの2箇所の突き合せ部を、高周波抵抗溶接機により溶接することによって、溶接H形鋼24を製造する。
【0025】
なお、溶接機9の下流側には、溶接H形鋼24のトラッキング処理を行うためのPLG11が配設されており、PLG11は、検出したデータをトラッキング及び横継取合せ制御装置7へ送信することにより、溶接H形鋼24のトラッキング処理を行う。
【0026】
このように、溶接機9は、ウェブ素材である1枚の第1の鋼帯2aとフランジ素材である2枚の第2の鋼帯2bとの2箇所の突き合せ部を溶接する。
【0027】
[刻印機構4]
刻印機構4は、横継箇所打刻機4a及び4bを備える。
横継箇所打刻機4aは、送給機構15によって所定のH形の断面形状に組み合わされる前のウェブ素材である第1の鋼帯2aの少なくとも一方の表面であって第1の横継部23aの近傍に、後述する刻印を設ける。この刻印は、フランジ素材である第2の鋼帯2bとの突き合せ部の溶接用の溶接電極の接触位置を除いた位置に設けられる。
【0028】
同様に、横継箇所打刻機4bは、送給機構15によって所定のH形の断面形状に組み合わされる前のフランジ素材である第2の鋼帯2bの少なくとも一方の表面であって第2の横継部23bの近傍に、後述する刻印を設ける。
【0029】
図2は、ウェブ素材である第1の鋼帯2aの表面に存在する表面疵17a〜17cを例示する説明図である。
図2に例示するように、ウェブ素材やフランジ素材の表面には、例えば圧延ロールや通板ロールに異物が噛み込むことによって形成された押し込み疵や、第1の鋼帯2aや第2の鋼帯2bの長手方向へ延在する擦り疵といった各種の表面疵17a〜17cが不可避的に存在する。製造装置0では、後述する検出機構6を用いて、刻印機構4による刻印を検出することにより第1の横継部23aや第2の横継部23bの位置を検出するため、横継箇所打刻機4a、4bによる刻印は、表面疵17a〜17cと明確に識別できるように打刻することが好ましい。この内容を説明する。
【0030】
図3(a)は、溶接機9による高周波抵抗溶接を行われる前のウェブ素材である第1の鋼帯2aに刻設された刻印25を示す説明図であり、図3(b)は、溶接機9による高周波抵抗溶接を行われた溶接H形鋼24に残存する刻印25を示す説明図であり、図3(c)は、後述する検出機構6により撮影画像を示す説明図であり、さらに、図3(d)は、刻印25を拡大して示す説明図である。
【0031】
図3(a)及び図3(b)に示すように、横継箇所打刻機4aによる刻印25は、ウェブ素材である第1の鋼帯2aとの突き合せ部の溶接用の溶接電極の接触位置26を除いた位置であって、第1の横継部23aの延設方向に対して、±45°交差する2方向により囲まれた領域の内部に設けられることが好ましく、横継箇所打刻機4bによる刻印は、ウェブ素材である第1の鋼帯2aとの突き合せ部の溶接用の溶接電極の接触位置を除いた位置であって、第2の横継部23bの延設方向に対して、±45°交差する2方向により囲まれた領域に設けられることが好ましい。これにより、検出機構6は、表面疵17a〜17cと明確に識別して、第1の横継部23aや第2の横継部23bの位置を正確に検出することができる。
【0032】
また、図3(c)及び図3(d)に示すように、横継箇所打刻機4aによる刻印25は、第1の横継部23aの延設方向(図3(c)及び図3(d)における左右方向)へ5mm以上の長さを有することが好ましく、横継箇所打刻機4bによる刻印は、第2の横継部23bの延設方向へ5mm以上の長さを有することが好ましい。これにより、横継箇所打刻機4aによる刻印25や横継箇所打刻機4bによる刻印を、表面疵17a〜17cと明確に識別することができる。
【0033】
横継箇所打刻機4aによる刻印25や横継箇所打刻機4bによる刻印(以下、これらを「刻印25等」と総称する)の寸法は、例えば、深さ0.3mm、長さ×5mm程度とすることが特に好ましい。刻印25等の寸法が小さ過ぎると検出機構6による検出が不安定になり、反対に極端に大きいと検出漏れはなくなるものの、後工程である高周波抵抗溶接を行う溶接機9の給電チップ等が刻印25等に引掛かり、設備トラブルが誘発されるおそれがあるからである。刻印25等の寸法をこのように設定することによって、表面疵17a〜17cと確実に識別することができる。
【0034】
さらに、横継箇所打刻機4a、4bによる刻印25等は、ウェブ素材である第1の鋼帯2a、及び/又は、フランジ素材である第2の鋼帯2bの複数の箇所に設けられることが好ましい。これにより、刻印機構4による刻印25等を、表面疵17a〜17cと明確に識別することができる。
【0035】
例えば、少なくとも第1の鋼帯2aや第2の鋼帯2bの進行方向と直交する方向(第1の横継部23aや第2の横継ぎ部23bの延設方向)から±45°交差する2方向により囲まれた領域の内部に、第1の横継部23aや第2の横継ぎ部23bの延設方向への長さが5mm以上である部分を含む刻印25等を、第1の鋼帯2aや第2の鋼帯2bの両面にそれぞれ2箇所ずつ刻設する。このようにして、第1の鋼帯2aや第2の鋼帯2bに刻印25等を設けることにより、後述する検出機構6によって、刻印25等を、表面疵17a〜17cから明確かつ容易に識別することが可能になり、検出機構6の検出精度を格段に向上することができる。
【0036】
[検出機構6]
検出機構6は、刻印機構4により設けられた刻印25等の位置を検出することによって、第1の横継部23aの位置、及び/又は、第2の横継部23bの位置を検出する。検出機構6は、ウェブ素材である第1の鋼帯2aの表面に存在する表面疵17a〜17cを検出するための探傷装置6aと、フランジ素材である第2の鋼帯2bの表面に存在する表面疵17a〜17cを検出するための探傷装置6bと、トラッキング及び横継取合せ制御装置7とを有する。
【0037】
図4は、探傷装置6aの構成例を示す説明図である。なお、探傷装置6bは探傷装置6aと同一の構成を有するので、以降の説明は探傷装置6aについて行い、探傷装置6bの説明は省略する。
【0038】
図4に示すように、ウェブ素材である第1の鋼帯2aは、ルーパー16aを介して、探傷装置6aに送給される。探傷装置6aは、架台18に搭載された中空の箱体からなるハウジング19を備える。ハウジング19の内部には、上下一対の搬送ロール20a、20bと、搬送ロール20a、20bの下流側に配置された下搬送ロール20cが配設される。また、ハウジング19の天井には、第1の鋼帯2aの表面疵17a〜17cを撮影するための、レーザやカメラ等の撮像装置21と、撮像装置21によるデータを信号処理する演算装置22とが配設される。演算装置22の演算結果は、図1におけるトラッキング及び横継取合せ制御装置7へ送信される。
【0039】
刻印25等を表面疵17a〜17cと識別するために、上述した刻印の特徴(第1の横継部23aの延設方向、及び/又は、第2の横継部23bの延設方向に対して±45°交差する方向により囲まれた領域内に存在するか否か、第1の横継部23aの延設方向、及び/又は、第2の横継部23bの延設方向への長さが5mm以上であるか否か、刻印25等の寸法が例えば深さ0.3mm、長さ×5mm程度であるか否か、第1の鋼帯2a、及び/又は、第2の鋼帯2bの複数の箇所に設けられているか否か)を閾値として予め演算装置22に設定しておく。例えば、予め、第1の鋼帯2a、第2の鋼帯2bそれぞれの正常部(表面疵17a〜17cや刻印25等が存在しない部分)の凹凸量と、刻印25等が存在する部分の凹凸量との比率を確認し、閾値を例えば20倍として設定する。これにより、表面疵17a〜17cとは異なり自然には発生し難い特徴を有する刻印25等であることを、より容易かつ確実に識別することができる。
【0040】
第1の鋼帯2aに存在する第1の横継部23aが探傷装置6aを通過する時や、第2の鋼帯2bに存在する第2の横継部23bが探傷装置6bを通過する時に、探傷装置6a、6bにより検出された測定対象の凹凸量が、演算装置22に設定された閾値を超える場合には、トラッキング及び横継取合せ制御装置7は、測定対象は、表面疵17a〜17cではなく、刻印25等であると検出する。
【0041】
このように、検出機構6は、刻印機構4により設けられた刻印25等を検出することによって、第1の横継部23aの位置、及び/又は、第2の横継部23bの位置を検出する。なお、以上の説明では、検出機構6の要素として、探傷装置6a、6bを用いる場合を例にとったが、製造装置0は探傷装置に限定されるものではなく、探傷装置6a、6bに替えてCCDカメラ等の画像認識装置や簡便な凹凸計を用いても同様の効果を得ることができる。
【0042】
[横継部除去機構12]
横継部除去機構12は、溶接H形鋼24の切断機により構成される。トラッキング及び横継取合せ制御装置7は、PLG5a、5bとPLG11とから送信されるデータに基づいて、第1の横継部23aや第2の横継部23bを検出した位置(探傷装置6a、6bによる探傷位置)から切断機12までトラッキング処理を行い、第1の横継部23a、及び/又は、第2の横継部23bが切断機12を通過するタイミングで切断機12が第1の横継部23a、及び/又は、第2の横継部23bを含む部分を切断するように、切断機12へ指令を出力する。これにより、第1の横継部23a、及び/又は、第2の横継部23bが製品である溶接H形鋼24に混入することが防止される。
【0043】
切断された、第1の横継部23a、及び/又は、第2の横継部23bを含む溶接H形鋼24は、リジェクトテーブル14へ排出され、スクラップとして回収される。
なお、溶接機9の出側に、溶接H形鋼24に目視可能なマーキング(例えば着色スプレーマーキング)を行うことができるマーキング装置10を配置しておき、トラッキング及び横継取合せ制御装置7が、溶接H形鋼24における第1の横継部23a、及び/又は、第2の横継部23bがマーキング装置10を通過するタイミングで着色スプレーマーキングを行うように指令をマーキング装置10に出力することにより、検査員が検査テーブル13において、製品である溶接H形鋼24に横継ぎ部23a、23bが含まれていないことを目視検査等で発見し易くなるため、好ましい。
【0044】
このように、横継部除去機構12は、検出機構6により検出された位置に基づいて、第1の横継部23aを含む部分、及び/又は、第2の横継部23bを含む部分を除去する。
製造装置0は、以上のように構成される。次に、製造装置0により溶接H形鋼24を製造する状況を説明する。
【0045】
2.本発明に係る製造方法
図1に示すように、製造装置0では、送給機構15により、第1の横継部23aを有するウェブ素材である第1の鋼帯2aと、第2の横継部23bを有するフランジ素材である第2の鋼帯2bとを連続して送給する。
【0046】
次に、刻印機構4により、所定のH形の断面形状に組み合わされる前の第1の鋼帯2aの少なくとも一方の表面、及び/又は、所定のH形の断面形状に組み合わされる前の第2の鋼帯2bの少なくとも一方の表面であって、突き合せ部の溶接用の溶接電極の接触位置26を除いた、第1の横継部23aの近傍、及び/又は、第2の横継部23bの近傍に、刻印25を設ける。
【0047】
次に、検出機構6により、刻印機構4により設けられた刻印25を検出することによって、第1の横継部23aの位置、及び/又は、第2の横継部23bの位置を検出し、トラッキング処理する。
【0048】
次に、送給機構15により第1の鋼帯2aと、2枚の第2の鋼帯2bとを所定のH形の断面形状に組み合わせる。
次に、溶接機構9により、第1の鋼帯2a及び2枚の第2の鋼帯2bの突き合せ部の溶接を行って溶接H形鋼24を製造する。
【0049】
さらに、横継部除去機構である切断機12により、溶接H形鋼24における第1の横継部23aを含む部分、及び/又は、第2の横継部23bを含む部分を、検出機構6により検出された位置に基づいて、除去することによって、第1の横継部23a及び第2の横継部23bをいずれも含まない製品である溶接H形鋼24を製造する。
【0050】
このようにして、本発明によれば、溶接H形鋼24のウェブ素材2aの横継部23aやフランジ素材2bの横継部23bを、低コストで簡便かつ高精度で、さらに定量化して確実に検出及び除去して、第1の横継部23a及び第2の横継部23bをいずれも含まない製品である溶接H形鋼24を製造することができるようになる。
【符号の説明】
【0051】
0 本発明に係る製造装置
1a、1b アンコイラー(巻き戻し機)
2a ウェブ素材(第1の鋼帯)
2b フランジ素材(第2の鋼帯)
3a、3b 横継機
4 刻印機構
4a、4b 横継個所打刻機
5a、5b PLG
6 検出機構
6a、6b 鋼板表面の探傷装置
7 トラッキング及び横継取合せ制御装置
8 スリッター
9 溶接機(高周波抵抗溶接機)
10 マーキング装置
11 PLG
12 横継部除去機構(切断機)
13 検査テーブル
14 リジェクトテーブル
15 送給機構
16a、16b ルーパー
17 表面疵
18 架台
19 ハウジング
20a〜20c 搬送ロール
21 撮像装置
22 演算装置
23a 第1の横継部
23b 第2の横継部
24 溶接H形鋼
25 刻印
26 溶接電極の接触位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の鋼帯の接合部である第1の横継部を有するウェブ素材である第1の鋼帯と、2枚の鋼帯の接合部である第2の横継部を有するフランジ素材である第2の鋼帯とを連続して送給しながら所定の断面形状に組み合わせ、前記ウェブ素材及び前記フランジ素材の突き合せ部の溶接を行った後に前記第1の横継部を含む部分、及び/又は、前記第2の横継ぎ部を含む部分を除去することによって溶接形鋼を製造する方法において、
前記所定の断面形状に組み合わされる前の前記ウェブ素材の少なくとも一方の表面、及び/又は、前記所定の断面形状に組み合わされる前の前記フランジ素材の少なくとも一方の表面であって、前記突き合せ部の溶接用の溶接電極の接触位置を除いた、前記第1の横継部の近傍、及び/又は、前記第2の横継部の近傍に、刻印を設ける刻印工程と、該刻印工程により設けられた刻印を検出することによって、前記第1の横継部の位置、及び/又は、前記第2の横継部の位置を検出する検出工程とを有し、
前記第1の横継部を含む部分、及び/又は、前記第2の横継部を含む部分は、前記検出工程により検出された位置に基づいて、除去されること
を特徴とする溶接形鋼の製造方法。
【請求項2】
前記刻印は、前記第1の横継部の延設方向、及び/又は、前記第2の横継部の延設方向に対して、±45°交差する方向により囲まれた領域内に設けられる請求項1に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項3】
前記刻印は、前記第1の横継部の延設方向、及び/又は、前記第2の横継部の延設方向へ、5mm以上の長さを有する請求項1又は請求項2に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項4】
前記刻印は、前記ウェブ素材、及び/又は、前記フランジ素材の複数の箇所に設けられる請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項5】
前記ウェブ素材における前記第1の横継ぎ部を含む位置、及び/又は、前記フランジ素材における前記第2の横継部を含む位置に対して、前記溶接が行われた後であって該第1の横継部を含む部分、及び/又は、該第2の横継部を含む部分の除去が行われる前に、該第1の横継部及び/又は該第2の横継部に、目視可能なマーキングを行う請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された溶接形鋼の製造方法。
【請求項6】
2枚の鋼帯の接合部である第1の横継部を有するウェブ素材である第1の鋼帯と、2枚の鋼帯の接合部である第2の横継部を有するフランジ素材である第2の鋼帯とを連続して送給しながら所定の断面形状に組み合わせる送給機構と、
前記ウェブ素材及び前記フランジ素材の突き合せ部の溶接を行う溶接機と、
前記所定の断面形状に組み合わされる前の前記ウェブ素材の少なくとも一方の表面、及び/又は、前記所定の断面形状に組み合わされる前の前記フランジ素材の少なくとも一方の表面であって、前記突き合せ部の溶接用の溶接電極の接触位置を除いた、前記第1の横継部の近傍、及び/又は、前記第2の横継部の近傍に、刻印を設ける刻印機構と、
該刻印機構により設けられた刻印を検出することによって、前記第1の横継部の位置、及び/又は、前記第2の横継部の位置を検出する検出機構と、
前記検出機構により検出された位置に基づいて、前記第1の横継部を含む部分、及び/又は、前記第2の横継部を含む部分を除去する横継部除去機構と
を備えることを特徴とする溶接形鋼の製造装置。
【請求項7】
前記検出機構は、前記ウェブ素材及び/又は前記フランジ素材に存在する表面疵を検出する疵探傷装置である請求項6に記載された溶接形鋼の製造装置。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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