説明

溶接缶溶接部の補正方法

【課題】溶接缶溶接部に補正テープを重ねて圧着ロールで圧着して補正する際に、金属板露出部が生じることを防止して溶接部の補正を適正に行うことが可能な接缶溶接部の補正方法を提供すること。
【解決手段】溶接缶溶接部4を加熱した上で、溶接缶の周方向に沿った幅方向の両端部を前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げてなる補正テープ1を、圧着ロール5によって溶接缶溶接部4に圧着すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接缶溶接部(本明細書において単に「溶接部」と略称する場合もある)を補正するための補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板材を角筒状または円筒状に丸めて缶体に成形する場合、缶体の接合は半田や接着剤等で行われてきたが、近年、強度やコスト面を考慮して、溶接が多用されるようになってきた。これらの溶接缶体においては、溶接予定部を除いて金属板材に予め塗料を塗装したり樹脂フィルムを被覆することが行われている。
【0003】
溶接は主として電気抵抗シーム溶接が行われているが、熱による樹脂フィルムへの影響および溶接部の段差やバリ等を考慮して、溶接接合部および接合部の近傍に塗料を塗布したり、樹脂フィルムを被覆して補正することが不可欠となっている。
【0004】
このような樹脂フィルムを被覆して溶接部を補正する際には、熱可塑性樹脂のフィルムからなる補正テープを、熱圧着させやすいように加熱された溶接部に重ね、次いで圧着ロールを当接させることによって、前記補正テープを前記溶接部に圧着させるようになっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−246437号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、溶接部以外の部分に塗料を塗装したり、あるいは樹脂フィルムを積層することにより樹脂膜を被覆した缶体において、特に塗膜や樹脂フィルムが熱可塑性樹脂からなる場合は、溶接部を加熱すると、溶接部近傍の塗膜や樹脂フィルムが融解温度前後にまで加熱されることがある。
【0007】
このような状況で常温の平板状の補正テープを溶接部4に重ねると、図1に示すように、まず補正テープ1における溶接缶の周方向に沿った幅方向の両端部が、缶体10の樹脂膜2に接触する。次いで、図2に示すように、補正テープ1に圧着ロール5を当接させて加圧することによって補正テープ1を缶体10面に圧着すると、この加圧に伴って補正テープ1の両端の接触部が樹脂膜2上を缶体10の断面の曲率に沿って矢印方向に移動する。
【0008】
このとき、補正テープ1の両端部が接していた樹脂膜2の部分が融解温度前後にまで加熱されて溶融状態または半溶融状態になっていると、補正テープ1の両端部によって掻き取られて、缶体10の金属板3が露出した金属板露出露出部6が生じるようになる。
【0009】
このような金属板露出部6が生じると、得られた缶体に腐食性の内容物を充填した場合に、金属板3が腐食されて穿孔に至る場合がある。
【0010】
また、補正テープ1を缶体10面に圧着する際に、補正テープ1に圧着ロール5を当接させて単に加圧した場合、補正部に気泡が残存し、そのため金属部分が露出して、得られた缶体に腐食性の内容物を充填した場合に、金属板3が腐食されて穿孔に至る場合もある。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、溶接缶溶接部に補正テープを重ねて圧着ロールで圧着して補正する際に、金属板露出部が生じることを防止して溶接部の補正を適正に行うことが可能な溶接缶溶接部の補正方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため本発明の請求項1に係る溶接缶溶接部の補正方法は、樹脂膜を有する缶を溶接して作成される溶接缶の溶接部を補正テープで被覆する方法であって、前記溶接部を加熱する第1工程と、前記溶接缶の周方向に沿った幅方向の両端部を前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げてなる補正テープを前記溶接部に重ねる第2工程と、圧着ロールを前記補正テープに当接させ、前記溶接部に前記補正テープを圧着する第3工程とを有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に係る溶接缶溶接部の補正方法は、樹脂膜を有する缶を溶接して作成される溶接缶の溶接部を補正テープで被覆する方法であって、前記溶接部を加熱する第1工程と、前記溶接缶の周方向に沿った幅方向の中央部において前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げてなる補正テープを前記溶接部に重ねる第2工程と、圧着ロールを前記補正テープに当接させ、前記溶接部に前記補正テープを圧着する第3工程とを有することを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項3に係る溶接缶溶接部の補正方法は、樹脂膜を有する缶を溶接して作成される溶接缶の溶接部を補正テープで被覆する方法であって、前記溶接部を加熱する第1工程と、前記溶接缶の周方向に沿った幅方向の両端部を前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げ、さらに、前記幅方向の中央部において前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げてなる補正テープを前記溶接部に重ねる第2工程と、圧着ロールを前記補正テープに当接させ、前記溶接部に前記補正テープを圧着する第3工程とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、上記のように、幅方向の両端部を前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げ、または、幅方向の中央部において前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げ、もしくは、幅方向の両端部を前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げるとともに幅方向の中央部において前記溶接缶に接する側と反対側にさらに折り曲げることによって形成された補正テープを、圧着ロールを用いて溶接缶溶接部に圧着することによって溶接缶溶接部の補正を行うことにより、溶接缶溶接部への補正テープの圧着の際に、缶体に被覆した樹脂皮膜が補正テープにおける幅方向の両端部によって掻き取られることを有効に防止することができ、この結果、金属板露出部を生じることなく溶接缶溶接部を適正に補正することが可能となる。
【0016】
さらにまた、請求項4に係る溶接缶溶接部の補正方法は、請求項1において、前記補正テープは端からテープ幅の5〜30%の位置で折り返すことを特徴とする。
【0017】
また、請求項5に係る溶接缶溶接部の補正方法は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項において、前記第3の工程では、前記圧着ロールを、そのロール圧着部の中央部に形成された前記溶接部の断面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する凸部を前記補正テープに当接させ、かつ、前記ロール圧着部における前記溶接部の断面の曲率半径とほぼ同一の曲率半径を有する前記凸部の外側の部位を前記補正テープに当接させることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、上記のように圧着部の中央部に凸部が形成された圧着ロールを用いて溶接缶溶接部の補正を行うことにより、溶接缶溶接部への補正テープの圧着の開始時に、補正テープにおける幅方向の両端部のみではなく、中央部に対しても加圧を十分に行うことができるため、缶体に被覆した樹脂皮膜が補正テープにおける幅方向の両端部によって掻き取られにくくすることが可能となり、さらに、中央部においてより大きな加圧力を作用させることによって、気泡の発生を殆ど皆無に抑制して、より適正に溶接缶溶接部を補正することが可能となる。
【0019】
さらに、請求項6に係る溶接缶溶接部の補正方法は、請求項1乃至5のいずれか1項において、前記樹脂膜が溶融状態または半溶融状態になるように前記溶接缶溶接部を加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る溶接缶溶接部の補正方法によれば、溶接缶体の金属板に被覆した樹脂皮膜が補正フィルムの幅方向の両端部によって掻き取られることがなく、また、中央部においてより大きな加圧力が作用して気泡の発生を殆ど皆無に抑制されるので、金属板露出部を生じることなく溶接缶溶接部を適正に補正することができ、ひいては、溶接缶に生じる穿孔等の不良の発生を防止して内容物を安定的に保存することができ、信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る溶接缶溶接部の補正方法の実施形態について、図3乃至図5を参照して説明する。
【0022】
図3の(a)、(b)、(c)はそれぞれ本実施形態における溶接缶溶接部の補正方法に用いる補正テープ1の断面形状、およびそれらを缶体10に重ねる場合の状況を示す概略図である。
【0023】
補正テープ1としては、図3の(a)に示すように、溶接缶の周方向に沿った幅方向の両端部を折曲部1aにおいて溶接缶体と接する側と反対側に折り曲げることによって折返部1bを形成したものを使用する。
【0024】
このように両端部を折り曲げることにより、補正テープ1を溶接部4に圧着する際には、図1に示したような鋭角に切断された端部ではなく、角部のない丸みを帯びた折曲部1aが、溶融状態または半溶融状態の樹脂膜2に接触する。この結果、補正テープ1を圧着ロール5によって加圧することにより、接触部が樹脂膜2上を移動したとしても、樹脂膜2が掻き取られて金属板露出部6が生じることはない。また、万一、折曲部1aによって樹脂膜2が掻き取られて金属板露出部6が生じたとしても、折返部1bによって金属板露出部6を被覆することができるため、金属板露出部6を即時に解消することができる。さらに、補正フィルム1の両端部を折り曲げることによって樹脂膜2に対する両接触部の間隔すなわち前記両折曲部1aの間隔が狭くなっているので、接触部が樹脂膜2上を移動する距離も減少し、それだけ金属板露出部6が生じる可能性が減少することにもなる。
【0025】
また、補正テープ1としては、上記の構成以外にも、図3の(b)に示すように、溶接缶の周方向に沿った幅方向の中央部において溶接缶体と接する側と反対側に折り曲げたものを使用してもよい。
【0026】
このように中央部において折り曲げることにより、圧着ロールで圧着しても両端部は圧着作業の後期に樹脂膜2に当接するようになるので、樹脂膜2が掻き取られにくくなり、金属板露出部6が生じることがなくなる。
【0027】
さらに、補正テープ1として、図3の(c)に示すように、溶接缶の周方向に沿った幅方向の中央部において溶接缶体と接する側と反対側に折り曲げ、かつ、前記幅方向の両端部を溶接缶体と接する側と反対側にさらに折り曲げたものを使用してもよい。
【0028】
このように中央部において折り曲げることにより、圧着ロールで圧着しても両端部は圧着作業の後期に樹脂膜2に当接するようになるので、樹脂膜2が掻き取にくくなる。また、万一、折曲部1aが樹脂膜2に当接しても、角部のない丸みを帯びた端部であるので、樹脂膜2が掻き取られて金属板露出部6が生じることがない。さらに、万一、折曲部1aによって樹脂膜2が掻き取られて金属板露出部6が生じたとしても、折返部1bによって金属板露出部6を被覆することができる。
【0029】
なお、両端部を折り曲げて折返部1bを形成する場合は、これらの折り返し部1bの寸法は、それぞれテープ幅の5〜30%であることが好ましい。
【0030】
次に、図4は、本実施形態における圧着ロールにおいて、圧着部の断面を示したものである。
【0031】
図4に示すように、本実施形態に用いる圧着ロール5は、前記圧着部51の断面における前記中央部に、前記溶接缶溶接部4の断面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する凸部52が形成され、かつ、前記圧着部51の断面における中央部の外側の部位が、溶接缶溶接部4の断面の曲率半径とほぼ同一の曲率半径を有するように形成された断面形状とされている。
【0032】
ここで、図1〜図3に示した従来の圧着ロール5は、圧着部51の断面が、缶体10の溶接部4の断面の曲率半径とほぼ同一の曲率半径を有するように形成されているが、このような圧着ロール5の断面形状は、圧着終了時に、溶接部4に被覆される補正テープに対して均一な加圧力を負荷することを意図して形成されたものと言える。しかしながら、前記のように平板状の補正テープ1を用いた場合は、圧着開始に際して幅方向の両端部が樹脂膜2に接触し、この接触部が樹脂膜2を掻き取るように樹脂膜2上を移動して行き、最後に補正テープ1の溶接部4の中央部に位置する部分が加圧されて補正作業が終了する。従って、樹脂膜2上を移動移動する両端部に常時加圧力が最初に負荷され、樹脂膜2には掻き取ろうとする力が常時作用し、そのため金属板露出部6が生じやすくなってしまう。
【0033】
これに対し、本実施形態に用いる圧着ロール5は、前述したように、圧着部51の中央部に前記凸部52が形成されているため、圧着開始に際しては、図4に示すように、補正フィルム1の幅方向の端部のみならず、圧着ロール5の中央部に設けた凸部52が樹脂膜2に接触する。次いで、図5に示すように、さらに圧着ロール5で補正フィルム1を加圧すると、幅方向の端部のみならず中央部も加圧される。すなわち、圧着開始から終了まで、補正フィルム1には中央部および両端部に加圧力が負荷され、樹脂膜2上を移動移動する両端部のみに加圧力が常時負荷されることはない。これにより、樹脂膜2に掻き取ろうとする力が作用しにくくなるため、金属板露出部6の発生を防止または少なくとも低減することができる。さらに、中央部においてより大きな加圧力が作用するので気泡の発生を殆ど皆無に抑制することができ、これによって金属板露出部6の発生をさらに有効に防止することができる。
【0034】
次に、本発明に係る溶接缶溶接部の補正方法の実施形態においては、図4に示した圧着ローラ5によって、図3の(a)、(b)または(c)に示した補正テープ1を溶接缶溶接部4に圧着する。
【0035】
すなわち、本実施形態においては、まず、溶接予定部を除いて予め塗料を塗装したり樹脂フィルムを被覆してなる金属板材を、角筒状または円筒状に丸め、溶接して接合して溶接缶体とし、その後、この溶接缶体の溶接接合部および接合部の近傍である溶接缶溶接部4を加熱する。
【0036】
そして、加熱した溶接部4の上に、補正テープ1、すなわち、幅方向の両端部を溶接缶に接する側と反対側に折り曲げ、または、幅方向の中央部において溶接缶に接する側と反対側に折り曲げ、もしくは、幅方向の両端部を溶接缶に接する側と反対側に折り曲げるとともに幅方向の中央部において溶接缶に接する側と反対側にさらに折り曲げてなる樹脂フィルムからなる補正テープ1を重ねる。
【0037】
次いで、前記補正テープ1を、圧着部51の断面における中央部の外側の部位が、溶接缶溶接部4の断面の曲率半径とほぼ同一の曲率半径を有し、かつ、前記圧着部51の断面中央部に、溶接缶溶接部4の断面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する凸部52が形成された断面形状とされた圧着ロール5によって加圧する。
【0038】
このとき、補正テープ1の両端部に圧着開始から終了まで常時加圧力が負荷されることがなく、加熱によって溶融状態または半溶融状態となった溶接缶体に被覆された樹脂膜2上を、この樹脂膜2を掻き取ろうとしながら補正テープ1の両端部が移動することがなくなり、金属板の露出部のない溶接缶体を得ることができる。
【0039】
なお、本発明において、缶体とする金属板としては、各種の金属板、特に各種の表面処理鋼板が使用される。表面処理鋼板としては、冷間圧延鋼板を焼鈍後二次冷間圧延し、亜鉛めっき、アルミニウムめっき、亜鉛−アルミニウム合金めっき、錫めっき、ニッケルめっき、錫−ニッケル合金めっき、電解クロム酸処理、クロム酸処理などの化成処理の1種または2種以上施した鋼板などを用いることができる。好適な表面処理鋼板の一例は、電解クロム酸処理鋼板であり、特に 10〜200mg/mの金属クロム層と 1〜50mg/m(金属クロム換算)のクロム酸化物層とを備えたもので、樹脂フィルムとの接着性や耐食性の組み合わせで特に優れている。
【0040】
好適な表面処理鋼板の他の例は、0.6〜11.2g/mの錫めっき量を有するぶりき板である。このぶりきは、金属クロム換算でクロム量が1〜30mg/mであるクロム酸処理またはクロム酸/リン酸処理が施されていることが好ましい。さらに、他の例としては鋼板上に島状に錫めっきを施し、次いで電解クロム酸処理を施して金属クロム層とクロム酸化物層とを備えた表面処理鋼板も用いることができる。これらの金属板の厚みは、金属板の種類、缶体の用途、缶体のサイズにもよるが、一般に0.17〜0.6mm、特に0.25〜0.4mmであることが好ましい。
【0041】
缶体成型用の金属板は、溶接して接合する部分以外は塗料を塗布したり、樹脂フィルムを積層するなどして予め被覆しておく。そのため、補正テープを構成する樹脂は、金属板を被覆する塗料や樹脂フィルムを構成する樹脂との良好な接着性を有していることが好ましく、無延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。
【0042】
金属板を角筒状または円筒状に丸めた後、接合する溶接方法としては公知の電気抵抗溶接法を用いることができる。すなわち、接合部の対向する端縁部を、対向する電極ローラまたは電極ローラに支持された電極ワイヤを用いて電気抵抗溶接する。溶接雰囲気は窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気としてもよい。
【0043】
缶体に樹脂フィルムを被覆する場合、熱可塑性樹脂、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、またはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン同士のランダム共重合体またはブロック共重合体などのポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体などのエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなどのポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイドなどが用いられる。本発明に用いる補正テープを構成する樹脂は缶体に被覆する上記の樹脂と良好な密着性を有するものが好ましく、缶体に被覆する樹脂に合わせて、上記の樹脂から適宜選択して用いることが好ましい。
【0044】
缶体に被覆する樹脂としては、特性やコストの観点からポリエステル系樹脂が用いられることが多い。この場合、補正テープに用いる樹脂も同様にポリエステル系樹脂であることが好ましい。これらのポリエステル系樹脂としては、特にテレフタル酸を主体とする二塩基酸とエチレングリコールを主体とするジオールとから誘導されたホモポリエステルまたは共重合ポリエステルであることが好ましい。テレフタル酸以外の二塩基酸としてはイソフタル酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などをあげることができる。またエチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物などのグリコール成分をあげることができる。これらの共重合ポリエステルのうち、酸成分としてテレフタル酸およびイソフタル酸を主体としたものが、加工性や機械的物性の点で、また缶体に充填する内容物の香味を変化させずに保持する特性の点で特に好ましい。
【0045】
ポリエステルのホモポリマーおよび共重合体は、フィルムに製膜することが可能な範囲の分子量、すなわち固有粘度を有している必要があり、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度[η]が0.5〜1.6、特に0.6〜1.5の範囲にあることが好ましい。これらの樹脂から製膜したフィルムは無延伸のものでも、一軸延伸のものでも、二軸延伸のものでもよいが、二軸延伸のものが耐熱性、機械的強度、内容物の耐透過性の点で優れている。
【0046】
これらのポリエステル樹脂は単独のホモポリマーや共重合体であってもよいし、これらの2種以上をブレンドした樹脂であってもよい。またこれらの2種以上を積層した多層樹脂であってもよい。
【0047】
金属板に被覆する樹脂層の厚みは一般に10〜100μmであることが好ましく、補正テープとしての厚みは10〜200μmであることが好ましい。また補正テープの幅は溶接部4を完全に被覆し、さらに溶接接合部の両側の被覆樹脂層にまたがり、金属板露出部を生じないことが必要であり、一般に10〜50mm程度の幅を有していることが好ましい。
【0048】
なお、本発明は前記実施形態のものに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来の補正テープおよび圧着ロールを用いた補正方法の一工程を示す概略図
【図2】従来の補正テープおよび圧着ロールを用いた補正方法の他の一工程を示す概略図。
【図3】(a) 本発明に用いる補正テープの断面形状の一例、およびそれを缶体に重ねる場合の状況を示す概略図。
【0050】
(b) 本発明に用いる補正テープの断面形状の他の一例、およびそれを缶体に重ねる場合の状況を示す概略図。
【0051】
(c) 本発明に用いる補正テープの断面形状の他の一例、およびそれを缶体に重ねる場合の状況を示す概略図。
【図4】本発明に用いる圧着ロールにおける圧着部の断面の一例、およびそれを用いた本発明に係る溶接缶溶接部の補正方法の実施形態における一工程を示す概略図。
【図5】本発明に用いる圧着ロールにおける圧着部の断面の他の一例、およびそれを用いた本発明に係る溶接缶溶接部の補正方法の実施形態における他の一工程を示す概略図。
【符号の説明】
【0052】
1 : 補正フィルム
1a: 折曲部
1b: 折返部
2 : 樹脂膜
3 : 金属板
4 : 溶接部
5 : 圧着ロール
6 : 金属板露出部
10 : 溶接缶体
51 : 圧着部
52 : 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂膜を有する缶を溶接して作成される溶接缶の溶接部を補正テープで被覆する方法であって、
前記溶接部を加熱する第1工程と、
前記溶接缶の周方向に沿った幅方向の両端部を前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げてなる補正テープを前記溶接部に重ねる第2工程と、
圧着ロールを前記補正テープに当接させ、前記溶接部に前記補正テープを圧着する第3工程と
を有することを特徴とする溶接缶溶接部の補正方法。
【請求項2】
樹脂膜を有する缶を溶接して作成される溶接缶の溶接部を補正テープで被覆する方法であって、
前記溶接部を加熱する第1工程と、
前記溶接缶の周方向に沿った幅方向の中央部において前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げてなる補正テープを前記溶接部に重ねる第2工程と、
圧着ロールを前記補正テープに当接させ、前記溶接部に前記補正テープを圧着する第3工程と
を有することを特徴とする溶接缶溶接部の補正方法。
【請求項3】
樹脂膜を有する缶を溶接して作成される溶接缶の溶接部を補正テープで被覆する方法であって、
前記溶接部を加熱する第1工程と、
前記溶接缶の周方向に沿った幅方向の両端部を前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げ、さらに、前記幅方向の中央部において前記溶接缶に接する側と反対側に折り曲げてなる補正テープを前記溶接部に重ねる第2工程と、
圧着ロールを前記補正テープに当接させ、前記溶接部に前記補正テープを圧着する第3工程と
を有することを特徴とする溶接缶溶接部の補正方法。
【請求項4】
前記補正テープは端からテープ幅の5〜30%の位置で折り返すことを特徴とする請求項1に記載の溶接缶溶接部の補正方法。
【請求項5】
前記第3の工程では、前記圧着ロールを、そのロール圧着部の中央部に形成された前記溶接部の断面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する凸部を前記補正テープに当接させ、かつ、前記ロール圧着部における前記溶接部の断面の曲率半径とほぼ同一の曲率半径を有する前記凸部の外側の部位を前記補正テープに当接させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶接缶溶接部の補正方法。
【請求項6】
前記樹脂膜が溶融状態または半溶融状態になるように前記溶接缶溶接部を加熱することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の溶接缶溶接部の補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−162701(P2008−162701A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336188(P2007−336188)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【分割の表示】特願2002−298868(P2002−298868)の分割
【原出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】